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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6476 20110101AFI20240524BHJP
【FI】
H01R13/6476
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020087581
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182517
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英生
(72)【発明者】
【氏名】大熊 誉仁
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-222576(JP,A)
【文献】特開2010-033714(JP,A)
【文献】特開2007-141870(JP,A)
【文献】特開2012-059385(JP,A)
【文献】特開2009-151939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物と電気的に接触する接触部を有している端子と、
前記接続対象物と嵌合方向に沿って嵌合する嵌合部と、前記接触部の接触面を露出させた状態で前記端子を収容する端子収容部と、を有しているハウジングと、
を備え、
前記端子は、前記接触部の少なくとも一部を含む部位に形成されて厚さ方向の寸法が他の部位の厚さ方向の寸法よりも小さく設定されている薄板部を有し、
前記ハウジングの前記端子収容部には、前記薄板部の前記接触面側とは厚さ方向反対側の面である薄板部裏面の一部と当接する受け部が形成されると共に、前記薄板部裏面における前記一部以外の部分と離間して対向する非接触部が設けられている、コネクタ。
【請求項2】
前記端子は、前記嵌合方向に沿って延設されており、
前記薄板部は、少なくとも前記接触部の全域から前記端子の先端までの範囲に形成されている、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子は、前記ハウジングの前記端子収容部の一部を構成する被圧入部に圧入された圧入部を有しており、
前記薄板部は、前記圧入部以外の範囲に形成されている、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記非接触部は、前記受け部よりも前記被圧入部側に位置してかつ前記受け部と連接する部位において前記被圧入部側へ向けて前記薄板部裏面に対して離間する側に傾斜した傾斜部を備える、請求項3に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、端子のインピーダンスの調整方法及びその構造に関する発明が開示されている。この端子は、コネクタの内部に設けられていると共に、コンタクト部が接触面側から見て一部切り欠かれた形状とされている。これにより、端子のコンタクト部の容量が減少してコンタクト部のインピーダンスを上昇させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-339921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に開示された構成では、端子のコンタクト部が接触面側から見て一部切り欠かれた構成とされているため、他のコネクタと嵌合させた際に相手コネクタ(接続対象物)の端子との接触面積を十分に確保できなくなることで、電気的な導通状態を確保できなくなる可能性がある。したがって、上記先行技術はこの点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、接続対象物との接続信頼性に優れると共に、端子における接触部のインピーダンスを上昇させることができるコネクタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るコネクタは、接続対象物と電気的に接触する接触部を有している端子と、前記接続対象物と嵌合方向に沿って嵌合する嵌合部と、前記接触部の接触面を露出させた状態で前記端子を収容する端子収容部と、を有しているハウジングと、を備え、前記端子は、前記接触部の少なくとも一部を含む部位に形成されて厚さ方向の寸法が他の部位の厚さ方向の寸法よりも小さく設定されている薄板部を有する。なお、「接触部」とは、「接触面」を厚さ方向一方側の面に備える部位を指す。
【0007】
上記第1の態様では、コネクタは、接続対象物と嵌合する嵌合部を有するハウジングを備えており、このハウジングには、端子を収容する端子収容部が設けられている。端子の接触部は、端子収容部から露出された接触面にて接続対象物と電気的に接触する。ここで、端子は、接触部の少なくとも一部を含む部位に形成されて厚さ方向の寸法が他の部位の厚さ方向の寸法よりも小さく設定されている薄板部を有している。薄板部における厚さ方向に沿って切断した際の断面積は、端子のそれ以外の部位に対して減少することから、接触部の少なくとも一部のインピーダンスを上昇させることができる。また、薄板部は、端子における接触面の嵌合方向と直交しかつ厚さ方向と直交する方向(以下、単に「幅方向」と称する。)の寸法の減少を抑制した上で断面積を減少させることから、端子が接続対象物と電気的に接触する際の接触面積を確保しながら接触部の少なくとも一部のインピーダンスを上昇させることができる。
【0008】
第2の態様に係るコネクタは、第1の態様において、前記端子は、前記嵌合方向に沿って延設されており、前記薄板部は、少なくとも前記接触部の全域から前記端子の先端までの範囲に形成されている。なお、端子の先端とは、端子の端末のうち接触部の先端側に位置する端末を意味する。
【0009】
上記第2の態様では、端子は、前記嵌合方向に沿って延設されていると共に、薄板部は、少なくとも前記接触部の全域から端子の先端までの範囲に形成されている。これにより、端子の延設方向に直交する断面積が広い範囲にて減少し、接触部の全域のインピーダンスを上昇させることができる。
【0010】
第3の態様に係るコネクタは、第1または第2の態様において、前記端子は、前記ハウジングの前記端子収容部の一部を構成する被圧入部に圧入された圧入部を有しており、前記薄板部は、前記圧入部以外の範囲に形成されている。
【0011】
上記第3の態様では、薄板部は、圧入部以外の範囲に形成されていることから、端子における圧入部の厚さは減少されていない。したがって、圧入部の曲げ剛性が低下するのを抑制することができることから、端子を被圧入部に圧入する際に圧入部が変形して端子収容部ひいてはハウジングに対する端子の位置のずれが発生するのを抑制することができる。
【0012】
第4の態様に係るコネクタは、第1~第3のいずれか一つの態様において、前記ハウジングの前記端子収容部には、前記薄板部の前記接触面側とは厚さ方向反対側の面である薄板部裏面の一部と当接する受け部が形成されると共に、前記薄板部裏面における前記一部以外の部分と離間して対向する非接触部が設けられている。
【0013】
上記第4の態様では、ハウジングの端子収容部に形成された受け部は、薄板部の接触面側とは厚さ方向反対側の面である薄板部裏面の一部と当接する。また、ハウジングの端子収容部に設けられた非接触部は、薄板部裏面における前記一部以外の部分と離間して対向する。これにより、薄板部裏面における前記一部以外の部分と、端子収容部の非接触部との間には空気層が形成される。空気層は、ハウジングと比べて誘電率が低いため、この空気層により薄板部におけるインピーダンスを上昇させることができる。
【0014】
第5の態様に係るコネクタは、第3の態様における第4の態様において、前記非接触部は、前記受け部よりも前記被圧入部側に位置してかつ前記受け部と連接する部位において前記被圧入部側へ向けて前記薄板部裏面に対して離間する側に傾斜した傾斜部を備える。
【0015】
上記第5の態様では、非接触部は、受け部よりも被圧入部側に位置してかつ受け部と連接する部位に傾斜部を備えており、この傾斜部は、被圧入部側へ向けて薄板部裏面に対して離間する側に傾斜している。したがって、端子を端子収容部内へ取り付けるために端子を端子収容部の延在方向に沿って被圧入部、非接触部の近傍、受け部の近傍の順に移動させる際に、端子の先端側が傾斜部に当接しても、傾斜部がガイドとなって受け部に端子の薄板部裏面を当接させることができる。つまり、端子をハウジングへ取り付ける際に、受け部と非接触部との境界付近に端子の先端側が引っ掛かることに起因して端子が座屈してしまうのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明は、接続対象物との接続信頼性に優れると共に、端子における接触部のインピーダンスを上昇させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図2図1におけるA-A線に沿って切断した状態を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る端子の一部を裏面側斜め方向から見た斜視図である。
図4図1におけるB部を拡大して示す拡大図である。
図5図2におけるC部を拡大して示す拡大図である。
図6】第2実施形態におけるコネクタの一部を拡大して示す図4に対応した拡大図である。
図7】第2実施形態に係る第2端子の一部を接触面側斜め方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1図5を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0019】
なお、以下の説明では、各図に示す矢印Xをコネクタ前方向、矢印Yをコネクタ幅方向一方側(右側)、矢印Zをコネクタ上方向として説明する。また、特記なく前後、上下、幅(左右)という語を用いる場合は、コネクタ前後方向の前後、コネクタ上下方向の上下、コネクタ幅方向(左右方向)の幅(左右)を示すものとする。これらの方向は、コネクタの使用状態での方向とは無関係である。また、各図においては、図面を見易くする意図で、一部の符号を省略している場合がある。
【0020】
(全体構成)
図1に示されるように、本実施形態に係るコネクタ10は、所謂プラグとされており、ハウジング12と複数の端子14を含んで構成されかつ下側が図示しない回路基板に固定されている。そして、コネクタ10は、接続対象物としての図示しないソケットにZ方向にて嵌合可能とされている。本実施形態において、嵌合方向Zは、コネクタ10の上下方向と一致しており、以下の説明では、嵌合方向Zを「上下方向」と称する場合がある。また、「コネクタ10の嵌合方向」は「嵌合方向」と略す。
【0021】
(ハウジング)
ハウジング12は、略矩形筒状(略直方体状)に形成されており、一例として上側構成ハウジング12Aと、上側構成ハウジング12Aより下方側を構成する下側構成ハウジング12Bとで構成されている。このハウジング12は、例えば合成樹脂等の絶縁性材料によって製造されたものである。なお、ハウジング12における左右方向の寸法は、端子14の数によって適宜変更される構成とされている。
【0022】
上側構成ハウジング12Aは、左右方向を長手方向としかつ上方側へ開口された嵌合孔18を形成する周壁部30を備える。図2に示されるように、周壁部30の下部は底壁18Aによって繋がれており、底壁18Aの中央部からは中央壁部20が上方側へ突出している。そして、嵌合孔18を形成する周壁部30、底壁18A及び中央壁部20によって、前記ソケット(接続対象物)と嵌合方向に沿って嵌合する嵌合部16が形成されている。図1に示されるように、中央壁部20は、左右方向に延在されており、中央壁部20の左右両端は周壁部30から離間している。
【0023】
図4に示される中央壁部20の前後面側には、それぞれ複数の上部溝22Aが左右方向に等間隔に並んで形成されている。上部溝22Aは、端子14を収容する端子収容部22の上側の部位を構成して上下方向に延びている。また、端子収容部22は、上部溝22Aの下方側に連続して形成された被圧入部としての圧入孔22Bを有しており、この圧入孔22Bは、底壁18A(図2参照)に上下方向にて貫通して形成されている。
【0024】
上部溝22Aは、長手方向に直交する断面形状が側壁としての左右一対の側部保持面22AAと、左右一対の側部保持面22AAの前後方向内側端部を左右方向に繋げる底部保持面22ABとで前後方向外側へ向けて開口された形状とされている。なお、前後方向内側は、中央壁部20における前後方向内側の方向を指し、前後方向外側は中央壁部20における前後方向外側の方向を指している。一方の側部保持面22AAから他方の側部保持面22AAまでの寸法は、端子14の接触面14Aにおける幅寸法と略同一とされている。
【0025】
上部溝22Aには、端子14の上下方向上側の接触面14Aを含む部位が外部に露出された状態で配置されており、ソケットに設けられた図示しない相手側端子と電気的に接触される端子14の後述する接触部14Xが配置されている。なお、接触部14Xと相手側端子とは、前後方向を当接方向として当接される。
【0026】
底部保持面22ABは、受け部としての上側受け部22ACと、下側受け部22ADと、傾斜部22AEとを有している。上側受け部22ACは、底部保持面22ABの上部を構成している。一方、下側受け部22ADは、上側受け部22ACの下方側に設けられていると共に、上側受け部22ACに対して中央壁部20における前後方向内側に配置されている。
【0027】
傾斜部22AEは、上側受け部22ACと下側受け部22ADとの間に設けられている。この傾斜部22AEは、上側受け部22ACの下方側の端部と下側受け部22ADの上方側の端部とを繋ぐように形成されており、具体的には上側受け部22ACの下方側の端部から下方側(圧入孔22B側)へ向けて中央壁部20における前後方向内側に向かうように傾斜されている。
【0028】
また、底部保持面22ABには、凹部22AFが形成されている。凹部22AFは、左右一対の凹部側面22AGと、一対の凹部側面22AGの前後方向内側端部同士を左右方向に繋ぐ非接触部としての凹部底面22AHとで前後方向外側へ開口された凹形状とされており、底部保持面22ABにおける左右方向の略中央部に形成されている。換言すると、底部保持面22ABは、凹部22AFを挟んで左右一対に形成されており、端子14の接触面14A側とは厚さ方向反対側の面である裏面14G(図3参照)の左右方向(幅方向)の端部にそれぞれ当接している。この凹部22AFの深さ、すなわち、前後方向の寸法は、上側受け部22ACに対して下側受け部22AD側が浅く(小さく)されている。
【0029】
凹部22AFの嵌合方向での下端部は、底部保持面22ABにおける圧入孔22Bに対応した任意の位置に配置されている(不図示)。一方、凹部22AFの嵌合方向での上端部は、端子14の後述する先端ガイド部14Eより下方側に配置されている。つまり、凹部22AFは、端子14が端子収容部22に収容されている状態では、外部から目視できない構成とされている。
【0030】
(端子)
図4に示されるように、端子14は、導電性を有する金属板が嵌合方向Zを長手方向とする長尺状の所定の形状に打ち抜かれて製造されたものであり、前後一対の端子列を構成している(図示)。前後の端子列は、それぞれ端子14の厚さ方向が前後方向に沿う向きにて複数の端子14が左右方向に等間隔に並べられた構成とされている。前側の端子列が有する複数の端子14と、後側の端子列が有する複数の端子14とは、同一の形状に形成されているが、互いに前後逆向きの姿勢で配置されている(不図示)。前側の端子列が有する複数の端子14は、嵌合部16の中央壁部20の前面側に設けられており、後側の端子列が有する複数の端子14は、嵌合部16の中央壁部20の後面側に設けられている。
【0031】
各端子14は、端子収容部22に保持され、端子収容部22の上部溝22Aに位置する端子14における接触部14Xと、接触部14Xの下方側に設けられており圧入孔22B内に圧入された圧入部14Bと、圧入部14Bにおける接触部14Xとは反対側の端部から下方側に延出されて更に前後方向外側に曲げられて回路基板に固定される接続部14C(図2参照)と、接触部14Xと圧入部14Bとの間に位置する一般部14Dとを有している。なお、図4では、端子収容部22の内部をわかり易くするため、端子14を一部省略して図示している。
【0032】
接触部14Xの接触面14Aは、圧入部14Bの前後方向外側面と一般部14Dの前後方向外側面と接続部14Cの一部の前後方向外側面と連続した略平面状に形成されている。また、接触部14Xと圧入部14Bとの間の一般部14Dにおける幅寸法は、接触面14Aの幅寸法よりも小さく設定されている。なお、接触部14Xの上方側、すなわち、端子14の上部の先端には、上方側へ向かうに連れて幅寸法及び厚さ寸法が小さくなるように形成された先端ガイド部14Eが形成されている。
【0033】
(薄板部)
図3に示されるように、端子14には、薄板部14Fが形成されている。この薄板部14Fは、端子14の圧入部14Bの近傍かつ圧入部14Bの上方側(一般部14D)から先端ガイド部14Eまでの範囲(つまり接触部14Xの全域を含む範囲)に形成されており、厚さ方向の寸法が他の部位の厚さ方向の寸法より小さく設定されている。薄板部14Fの接触面14A側とは厚さ方向反対側の面である薄板部裏面14F1は、端子14の裏面14Gにおける他の部位よりも、端子14の厚さ方向内側に配置されている。
【0034】
図5に示されるように、薄板部裏面14F1の一部は、底部保持面22ABの上側受け部22ACに当接されている。具体的には、薄板部14Fの裏面14Gにおける先端ガイド部14Eに対応する部位から一般部14Dの上方側近傍の部位までの範囲が上側受け部22ACに当接されている。また、端子収容部22の上部溝22Aには、上側受け部22ACに対して下方側において薄板部裏面14F1における前記一部以外の部分と離間して対向する非接触部としてのサイド非接触部22AZが設けられている。なお、前述した凹部底面22AH(図4参照)も薄板部裏面14F1における前記一部以外の部分と離間して対向している。
【0035】
サイド非接触部22AZは、上側受け部22ACよりも下方側(圧入孔22B(図4参照)側)に位置してかつ上側受け部22ACと連接する部位に前述した傾斜部22AEを備えており、傾斜部22AEは、下方側(圧入孔22B側)へ向けて薄板部裏面14F1に対して離間する側に傾斜している。すなわち、傾斜部22AE及び下側受け部22ADの一部によってサイド非接触部22AZは構成されている。そして、サイド非接触部22AZと薄板部裏面14F1の下部との間には、空間SAが形成されている。
【0036】
(第1実施形態の作用効果)
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0037】
本実施形態では、図1に示されるように、コネクタ10は、ソケット(接続対象物)と嵌合する嵌合部16を有するハウジング12を備えており、嵌合部16の中央壁部20には、図4に示されるように、端子14を収容する端子収容部22が設けられている。端子14は、端子収容部22から露出された接触面14Aにてソケットと電気的に接触すると共に、薄板部14Fを有している。薄板部14Fは、接触部14Xを含む部位に形成されて厚さ方向の寸法が他の部位の厚さ方向の寸法よりも小さく設定されている。したがって、端子14の薄板部14Fにおける厚さ方向に沿って切断した際の断面積は、端子14のそれ以外の部位に対して減少することから、接触部14Xのインピーダンスを上昇させることができる。また、薄板部14Fは、端子14における接触面14Aの幅方向の寸法の減少を抑制した上で断面積を減少させることから、端子14がソケットと電気的に接触する際の接触面積を確保しながら接触部14Xのインピーダンスを上昇させることができると共に、端子14の幅減少部にソケットが嵌まり込んで導通状態を確保できなくなることを防ぐことができる。これにより、本実施形態のコネクタ10は、ソケット(接続対象物)との接続信頼性に優れると共に、端子14の接触部14Xのインピーダンスを上昇させることができる。
【0038】
また、端子14は、嵌合方向に沿って延設されていると共に、薄板部14Fは、接触部14Xの全域を含む部位から先端ガイド部14Eまでの範囲に形成されている。これにより、端子14の延設方向に直交する断面積が広い範囲にて減少し、接触部14Xの全域を含む部位から先端ガイド部14Eまでの範囲のインピーダンスを上昇させることができる。
【0039】
さらに、薄板部14Fは、圧入部14B以外の範囲に形成されていることから、端子14における圧入部14Bの厚さは減少されていない。したがって、圧入部14Bの曲げ剛性が低下するのを抑制することができることから、端子14を圧入孔22Bに圧入する際に圧入部14Bが変形して端子収容部22ひいてはハウジング12に対する端子14の位置のずれが発生するのを抑制することができる。
【0040】
また、図5に示されるハウジング12の上部溝22Aに形成された上側受け部22ACは、薄板部裏面14F1の一部と当接する。また、ハウジング12の上部溝22Aに設けられた凹部底面22AH(図4参照)及びサイド非接触部22AZは、薄板部裏面14F1における前記一部以外の部分と離間して対向する。これにより、上部溝22Aの凹部底面22AH(図4参照)及びサイド非接触部22AZと、薄板部裏面14F1の一部との間には空気層が形成される。空気層は、ハウジング12と比べて誘電率が低いため、この空気層により薄板部14Fにおけるインピーダンスを上昇させることができる。
【0041】
さらに、サイド非接触部22AZは、上側受け部22ACよりも下方側(圧入孔22B(図2参照)側)に位置してかつ上側受け部22ACと連接する部位に傾斜部22AEを備えており、この傾斜部22AEは、下方側(圧入孔22B(図2参照)側)へ向けて薄板部裏面14F1に対して離間する側に傾斜している。したがって、端子14を端子収容部22内へ取り付けるために端子14を端子収容部22の延在方向に沿って下方側から圧入孔22B(図2参照)、サイド非接触部22AZの近傍、上側受け部22ACの近傍の順に移動させる際に、端子14の先端ガイド部14Eが傾斜部22AEに当接しても、傾斜部22AEがガイドとなって上側受け部22ACに端子14の薄板部裏面14F1を当接させることができる。つまり、端子14をハウジング12へ取り付ける際に、上側受け部22ACとサイド非接触部22AZとの境界付近に端子14の先端ガイド部14Eが引っ掛かることに起因して端子14が座屈してしまうのを抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、図4に示される一般部14Dは、接触部14Xよりも幅方向の寸法を小さくすることで側部保持面22AAとの間に隙間を形成してインピーダンスを高めている。一方、接触部14Xは幅方向の寸法を小さくしていないので、接触面14Aがソケットに接触する際の接触面積を確保することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、図6図7を用いて、本発明の第2実施形態に係るコネクタについて説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0044】
この第2実施形態に係るコネクタ60は、基本的な構成は第1実施形態と同様とされ、端子62の接触面62A側に段差が形成されている点に特徴がある。
【0045】
(全体構成)
すなわち、図6に示されるように、本実施形態に係るコネクタ60は、所謂プラグとされており、ハウジング64と複数の端子62を含んで構成されかつ下側が図示しない回路基板に固定されている。そして、コネクタ60は、接続対象物としての図示しないソケットにZ方向にて嵌合可能とされている。本実施形態において、嵌合方向Zは、コネクタ60の上下方向と一致しており、以下の説明では、嵌合方向Zを「上下方向」と称する場合がある。また、「コネクタ60の嵌合方向」は「嵌合方向」と略す。
【0046】
(ハウジング)
ハウジング64は、略矩形筒状(略直方体状)に形成されている。このハウジング64は、例えば合成樹脂等の絶縁性材料によって製造されたものである。なお、ハウジング64における左右方向の寸法は、端子62の数によって適宜変更される構成とされている。
【0047】
ハウジング64には、第1の実施形態の嵌合部16(図1参照)と概ね同様の嵌合部66が設けられている。嵌合部66は、第1の実施形態の底壁18A(図2参照)と概ね同様の底壁68における中央部から上方側へ突出している中央壁部70を含んで構成されている。中央壁部70は、第1の実施形態の中央壁部20(図4参照)と概ね同様の構成部とされる。中央壁部70の前後面側には、それぞれ複数の上部溝72Aが左右方向に等間隔に並んで形成されている。上部溝72Aは、端子62を収容する端子収容部72の上側の部位を構成して上下方向に延びている。また、端子収容部72は、上部溝72Aの下方側に連続して形成された圧入孔22Bを有している。
【0048】
上部溝72Aは、長手方向に直交する断面形状が側壁としての左右一対の側部保持面22AAと、左右一対の側部保持面22AAの前後方向内側端部を左右方向に繋げる平面状の底部保持面72AAとで前後方向外側へ向けて開口された形状とされている。また、底部保持面72AAには、凹部22AFが形成されている。
【0049】
上部溝72Aには、端子62の上下方向上側の接触面62Aを含む部位が外部に露出された状態で配置されており、ソケットに設けられた図示しない相手側端子と電気的に接触される端子62の後述する接触部62Xが配置されている。なお、接触部62Xと相手側端子とは、前後方向を当接方向として当接される。
【0050】
(端子)
図7に示されるように、端子62は、導電性を有する金属板が嵌合方向Zを長手方向とする長尺状の所定の形状に打ち抜かれて製造されたものであり、前後一対の図示しない端子列を構成している。前後の端子列は、それぞれ端子62の厚さ方向が前後方向に沿う向きにて図6に示される複数の端子62が左右方向に等間隔に並べられた構成とされている。前側の端子列が有する複数の端子62と、後側の端子列が有する複数の端子62とは、同一の形状に形成されているが、互いに前後方向にて逆向きの姿勢で配置されている。前側の端子列が有する複数の端子62は、嵌合部66の中央壁部70の前面側に設けられており、後側の端子列が有する複数の端子62は、嵌合部66の中央壁部70の後面側に設けられている。
【0051】
各端子62は、嵌合部66の端子収容部72に保持され、端子収容部72の上部溝72Aに位置する端子62における接触部62Xと、接触部62Xから下方へ延出され圧入孔22B内に圧入された圧入部14Bと、圧入部14Bにおける接触部62Xとは反対側の端部から下方側に延出されて更に前後方向外側に曲げられて回路基板に固定される接続部14C(図2参照)と、接触部62Xと圧入部14Bとの間に位置する一般部62Dとを有している。なお、図6では、端子収容部72の内部をわかり易くするため、端子62を一部省略して図示している。
【0052】
接触部62Xと圧入孔22Bとの間の一般部62Dにおける幅寸法は、接触面62Aの幅寸法よりも小さく設定されている。なお、接触部62Xの上方側、すなわち、端子62の上部の先端には、上方側へ向かうに連れて幅寸法及び厚さ寸法が小さくなるように形成された先端ガイド部62Eが形成されている。
【0053】
(薄板部)
図7に示されるように、端子62には、薄板部62Bが形成されている。図6に示されるように、この薄板部62Bは、端子62の圧入孔22Bの近傍かつ圧入孔22Bの上方側(一般部62D)から先端ガイド部62Eまでの範囲に形成されており、厚さ方向の寸法が他の部位の厚さ方向の寸法より小さく設定されている。薄板部62Bの接触面62A側の面は、圧入部14Bにおいて同じ側を向く面よりも端子62の厚さ方向内側に配置されており、端子62の接触面62A側には、段差が形成されている。一方、端子62の裏面62C(図7参照)は、平面状に形成されている。
【0054】
薄板部62Bの接触面62A側とは厚さ方向反対側の面である薄板部裏面62B1(図7参照)の一部は、上部溝72Aにおける受け部としての底部保持面72AAに当接されている。これにより、薄板部裏面62B1(図7参照)の前記一部以外の部分と、凹部22AFの凹部底面22AHとの間には、空間SBが形成されている。
【0055】
(第2実施形態の作用・効果)
次に、第2実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0056】
上記構成によっても、端子62の接触面62A側に段差が形成されている点以外は第1実施形態のコネクタ10と同様に構成されているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、ハウジング64の底部保持面72AAは、段差がない端子62の裏面62Cに対応して平面状とされていることから、製造が容易となる。
【0057】
(実施形態の補足説明)
なお、上述した第1、2実施形態では、薄板部14F、62Bが端子14、62の圧入部14Bの近傍から先端ガイド部14E、62Eまでの範囲に形成されているが、薄板部は、接触部14X、62Xの一部に設けられてもよいし、接触部14X、62Xの一部を含む部位に設けられてもよい。
【0058】
また、薄板部14F、62Bは、端子14、62の圧入部14B以外の部位に形成されているが、これに限らず、接触部14X、62Xと圧入部14Bとを含む部位に形成されてもよい。
【0059】
さらに、一般部14D、62Dは薄板部14F、62Bよりも幅方向の寸法が小さく設定されているが、このような設定に限定されない。
【0060】
さらにまた、上述した第1実施形態の上側受け部22ACの下端位置を図5に示す位置よりも上方側に設定してもよい。その場合、空間SAがより大きくなって接触部14Xのインピーダンスをより高めることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 コネクタ
12 ハウジング
14 端子
14X 接触部
14A 接触面
14B 圧入部
14E 先端ガイド部(端子の先端)
14F 薄板部
14F1 薄板部裏面
16 嵌合部
22 端子収容部
22AC 上側受け部
22AE 傾斜部
22AH 凹部底面(非接触部)
22AZ サイド非接触部
22B 圧入孔(被圧入部)
60 コネクタ
62 端子
62X 接触部
62A 接触面
62B 薄板部
62B1 薄板部裏面
62E 先端ガイド部(端子の先端)
64 ハウジング
72 端子収容部
72AA 底部保持面(受け部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7