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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】熱交換器及びバイナリー発電装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20240524BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F28D7/16 B
F25B39/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020092115
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188781
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-07-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】眞保 英樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】西村 和真
(72)【発明者】
【氏名】松田 治幸
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰平
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】鈴木 充
【審判官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105421(JP,A)
【文献】特開平4-263793(JP,A)
【文献】特開2014-163608(JP,A)
【文献】特開2003-148149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00-13/00
F25B39/00-39/04
F28F 9/00- 9/26
F28F27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイナリー発電装置において作動媒体を蒸発させる蒸発器として用いられる熱交換器であって、
一方向に延びる第1下側伝熱管と、
前記第1下側伝熱管の上方に隣接する第1上側伝熱管と、
前記第1下側伝熱管の側方に隣接する第2下側伝熱管と、
前記第2下側伝熱管の上方に隣接するとともに前記第1上側伝熱管の側方に隣接する第2上側伝熱管と、
前記第1下側伝熱管の管内空間と、前記第2下側伝熱管の管内空間と、前記第1上側伝熱管の管内空間と、前記第2上側伝熱管の管内空間と、を相互に連通させる連通部と、
を備え、
前記連通部は、前記第1下側伝熱管、前記第1上側伝熱管、前記第2下側伝熱管及び前記第2上側伝熱管が固定された管板と、前記管板に固定された半筒形状の覆い部材と、を有し、
前記覆い部材と前記管板とによって区画される空間を狭めるように、前記覆い部材の内側において、上端及び下端が前記覆い部材の内面に溶接される、平板状の仕切り板が設けられ、
前記仕切り板によって狭められた、前記覆い部材と前記管板とによって区画される一側空間を通して、前記第1下側伝熱管の管内空間と、前記第2下側伝熱管の管内空間と、前記第1上側伝熱管の管内空間と、前記第2上側伝熱管の管内空間とが連通する一方で、これら管内空間は前記仕切り板に対する他側の空間を通しては連通しておらず
前記第1下側伝熱管の中を流れた作動媒体及び前記第2下側伝熱管の中を流れた作動媒体の全量が前記仕切り板によって狭められた前記一側空間のみに流入するとともに、前記仕切り板によって狭められた前記一側空間内の作動媒体の全量が前記第1上側伝熱管及び前記第2上側伝熱管に分流するように構成されている、熱交換器。
【請求項2】
前記第1下側伝熱管及び前記第2下側伝熱管の側方に位置する複数の他の下側伝熱管と、
前記第1上側伝熱管及び前記第2上側伝熱管の側方に位置する複数の他の上側伝熱管と、
をさらに備え、
前記第1下側伝熱管、前記第2下側伝熱管及び前記複数の他の下側伝熱管以外にこれら下側伝熱管の側方に配置された伝熱管は存在せず、
前記第1上側伝熱管、前記第2上側伝熱管及び前記複数の他の上側伝熱管以外にこれら上側伝熱管の側方に配置された伝熱管は存在せず、
前記連通部は、前記第1下側伝熱管の管内空間と、前記第2下側伝熱管の管内空間と、前記複数の他の下側伝熱管の管内空間と、前記第1上側伝熱管の管内空間と、前記第2上側伝熱管の管内空間と、前記複数の他の上側伝熱管の管内空間と、を相互に連通させる、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱交換器が、作動媒体を蒸発させる蒸発器として用いられている、バイナリー発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及びバイナリー発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、作動媒体を循環させて行われるランキンサイクルを利用して発電を行うバイナリー発電装置が知られている。バイナリー発電装置には、ポンプ、蒸発器、膨張機及び凝縮器がこの順に配置されて作動媒体が流れる循環路が形成されている。そして、作動媒体が循環路を循環することによってランキンサイクルが行われ、膨張機に接続された発電機が駆動されることによって電力を生成する。
【0003】
蒸発器は、蒸気や温水などの熱源流体とポンプで加圧された液状の作動媒体とを熱交換させて作動媒体を蒸発させるように構成されている。蒸発器は、例えば、伝熱管式の熱交換器によって構成される。伝熱管式の熱交換器には、多数の伝熱管が設けられ、この多数の伝熱管に作動媒体が導入されるように構成されている。上下に隣り合う複数の伝熱管は、U字管によって蛇行状に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-163608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伝熱管がU字管によって蛇行状に接続される場合、伝熱管の一端部にU字管の一端部を溶接し、このU字管の他端部に別の伝熱管の端部を接続することになる。このため、多数の伝熱管が設けられた熱交換器においては、多くの溶接個所が存在することになり、伝熱管式の熱交換器を製造するには多大な手間を要する。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造の手間を軽減できる熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、バイナリー発電装置において作動媒体を蒸発させる蒸発器として用いられる熱交換器であって、一方向に延びる第1下側伝熱管と、前記第1下側伝熱管の上方に隣接する第1上側伝熱管と、前記第1下側伝熱管の側方に隣接する第2下側伝熱管と、前記第2下側伝熱管の上方に隣接するとともに前記第1上側伝熱管の側方に隣接する第2上側伝熱管と、前記第1下側伝熱管の管内空間と、前記第2下側伝熱管の管内空間と、前記第1上側伝熱管の管内空間と、前記第2上側伝熱管の管内空間と、を相互に連通させる連通部と、を備える。前記連通部は、前記第1下側伝熱管、前記第1上側伝熱管、前記第2下側伝熱管及び前記第2上側伝熱管が固定された管板と、前記管板に固定された半筒形状の覆い部材と、を有する。前記覆い部材と前記管板とによって区画される空間を狭めるように、前記覆い部材の内側において、上端及び下端が前記覆い部材の内面に溶接される、平板状の仕切り板が設けられる。前記仕切り板によって狭められた、前記覆い部材と前記管板とによって区画される一側空間を通して、前記第1下側伝熱管の管内空間と、前記第2下側伝熱管の管内空間と、前記第1上側伝熱管の管内空間と、前記第2上側伝熱管の管内空間とが連通する一方で、これら管内空間は前記仕切り板に対する他側の空間を通しては連通していない。前記熱交換器は、前記第1下側伝熱管の中を流れた作動媒体及び前記第2下側伝熱管の中を流れた作動媒体の全量が前記仕切り板によって狭められた前記一側空間のみに流入するとともに、前記仕切り板によって狭められた前記一側空間内の作動媒体の全量が前記第1上側伝熱管及び前記第2上側伝熱管に分流するように構成されている。
【0008】
本発明に係る熱交換器では、互いに隣接する2つの下側伝熱管の管内空間と、互いに隣接する2つの上側伝熱管の管内空間とが、連通部を通して互いに連通している。すなわち、隣接する4つの伝熱管の管内空間同士を連通させる連通部が設けられている。このため、各伝熱管の両端にそれぞれU字管を溶接する場合に比べて、製造の手間を軽減することができ、施工コストを低減することができる。また、本発明に係る熱交換器では、2つの下側伝熱管を流れた作動媒体がいずれも連通部に流入して合流する。このため、仮に下側伝熱管間で加熱ばらつきが生ずることによって作動媒体の蒸発の程度又は作動媒体の温度に差が生じたとしても、連通部において合流することにより、これらの温度ばらつきを低減することができる。そして、ばらつきが抑制された作動媒体を各上側伝熱管に分流することができる。したがって、上側伝熱管において温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0010】
しかも、管板と管板に固定された半筒形状の覆い部材とにより、連通部が構成される。すなわち、汎用の部材である半筒形状の部材を用いるとともに、この部材を管板に固定するだけでよいため、施工コストの低減効果をより高めることができる。
【0012】
また、覆い部材の内側に仕切り板が設けられるため、第1下側伝熱管及び第2下側伝熱管から前記空間に作動媒体が流入したときに、作動媒体の流速が低下することを抑制することができる。したがって、下側伝熱管において作動媒体がガス状になった場合でも、連通部において、このガス状の作動媒体に潤滑油を随伴させ易くすることができる。
【0013】
前記熱交換器は、前記第1下側伝熱管及び前記第2下側伝熱管の側方に位置する複数の他の下側伝熱管と、前記第1上側伝熱管及び前記第2上側伝熱管の側方に位置する複数の他の上側伝熱管と、をさらに備えてもよい。この場合、前記第1下側伝熱管、前記第2下側伝熱管及び前記複数の他の下側伝熱管以外にこれら下側伝熱管の側方に配置された伝熱管は存在せず、前記第1上側伝熱管、前記第2上側伝熱管及び前記複数の他の上側伝熱管以外にこれら上側伝熱管の側方に配置された伝熱管は存在しない。この場合において、前記連通部は、前記第1下側伝熱管の管内空間と、前記第2下側伝熱管の管内空間と、前記複数の他の下側伝熱管の管内空間と、前記第1上側伝熱管の管内空間と、前記第2上側伝熱管の管内空間と、前記複数の他の上側伝熱管の管内空間と、を相互に連通させてもよい。
【0014】
この態様では、横方向に並ぶ全ての下側伝熱管の管内空間と、横方向に並ぶ全ての上側伝熱管の管内空間とが、連通部によって連通される。したがって、施工コストの低減効果をより高めることができるとともに、全ての上側伝熱管間で作動媒体の温度がばらつくことを抑制することができる。
【0015】
本発明は、前記熱交換器が、作動媒体を蒸発させる蒸発器として用いられている、バイナリー発電装置である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、製造の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】バイナリー発電装置の概略構成図である。
図2】(a)バイナリー発電装置に設けられた蒸発器を構成する熱交換器を部分的に示す正面図であり、(b)熱交換器の側面図である。
図3】熱交換器の要部を拡大して示す断面図である。
図4】覆い部材を部分的に示す斜視図である。
図5】流入部を示す図である。
図6】流出部を示す図である。
図7】熱交換器の変形例である。
図8】連通部の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係るバイナリー発電装置1は、ランキンサイクルを利用した発電ユニットであり、図1に示すように、ポンプ8と、蒸発器10と、膨張機14と、凝縮器16とを備えている。ポンプ8、蒸発器10、膨張機14及び凝縮器16はこの順で、作動媒体が循環する循環路4に接続されている。本実施形態によるバイナリー発電装置1では、作動媒体が循環路4を通じてポンプ8、蒸発器10、膨張機14及び凝縮器16を順に流れるという循環回路が構成されている。作動媒体としては、水よりも沸点の低い冷媒が用いられる。
【0020】
ポンプ8は、循環路4における凝縮器16の下流側(蒸発器10と凝縮器16との間)に位置しており、作動媒体を加圧するように構成されている。ポンプ8は、凝縮器16で凝縮された液状の作動媒体を所定の圧力まで加圧して蒸発器10に送り出す。ポンプ8として、インペラをロータとして備える遠心ポンプや、ロータが一対のギアからなるギアポンプ等が用いられる。
【0021】
蒸発器10は、循環路4におけるポンプ8の下流側(ポンプ8と膨張機14との間)に位置している。蒸発器10は、外部の熱源から供給された熱源流体と、ポンプ8で加圧された液状の作動媒体とを熱交換させて、作動媒体の少なくとも一部を蒸発させるように構成されている。熱源流体としては、例えば高温空気、水蒸気、内燃機関に導入される掃気エアー、内燃機関から排出される排ガス等が用いられる。蒸発器10を構成する熱交換器30の詳細については、後述する。
【0022】
膨張機14は、循環路4における蒸発器10の下流側(蒸発器10と凝縮器16との間)に位置している。膨張機14は、図略のロータがケーシング内に配置された構造であり、ケーシング内に導入された作動媒体が膨張することによりロータが回転するように構成されている。詳しくは、膨張機14では、蒸発器10で得られる蒸発圧力から凝縮器16で得られる凝縮圧力までガス状の作動媒体が膨張する過程でロータが駆動される。膨張機14のロータには発電機20が接続されおり、発電機20は、膨張機14においてガス状の作動媒体が膨張することにより駆動する。これにより発電が行われる。なお、膨張機14に流入するガス状の作動媒体には、潤滑油が随伴される。
【0023】
凝縮器16は、循環路4における膨張機14の下流側(膨張機14とポンプ8との間)に位置している。凝縮器16は、膨張機14から排出されたガス状の作動媒体を凝縮させて液状の作動媒体とするものである。凝縮器16は、ガス状の作動媒体が流入する作動媒体流路16aと、冷却水等の冷却流体が流れる冷却流体流路16bとを有している。冷却流体流路16bには、冷却通路22を通して供給される冷却水、海水等の冷却流体が流れる。作動媒体流路16aを流れる作動媒体は、冷却流体流路16bを流れる冷却流体と熱交換することにより凝縮する。
【0024】
バイナリー発電装置1では、ポンプ8が作動すると、液状の作動媒体がポンプ8から吐出され、この液状の作動媒体は循環路4を通じて蒸発器10に流入する。蒸発器10において、液状の作動媒体は、熱源流体によって加熱されて蒸発し、ガス状の作動媒体となる。ガス状の作動媒体は膨張機14に導入されてロータ部を駆動する。これにより、ガス状の作動媒体は、膨張するとともに温度が低下する。一方で、ロータが駆動することにより発電が行われるため、熱源流体の熱を電力として回収することができる。
【0025】
膨張機14において低温低圧となったガス状の作動媒体は凝縮器16に流入する。凝縮器16において、作動媒体流路16aを流れる作動媒体は、冷却流体流路16bを流れる冷却流体によって冷却されて凝縮し、液状の作動媒体となる。液状の作動媒体は、凝縮器16から流出した後、ポンプ8に吸い込まれる。循環路4ではこのような作動媒体の循環が行われる。
【0026】
ここで、蒸発器10を構成する熱交換器30の詳細について説明する。図2(a)(b)に示すように、熱交換器30は、伝熱管式の熱交換器であり、作動媒体が流れる多数の伝熱管32を有している。伝熱管32は、伝熱管32内を流れる作動媒体と、伝熱管32の外側に存する熱源流体とを熱交換させ、伝熱管32内の作動媒体を蒸発させる。
【0027】
多数の伝熱管32は何れも、同じ形状及び太さのパイプからなり、上下方向(又は斜め方向でもよい)及び左右方向に並ぶように配置されるとともに、一方向(水平方向)に延びるように配置されている。多数の伝熱管32には、多数のフィン34が取り付けられている。各フィン34は、熱交換を促進させるためのものであり、例えば平板状に形成されており、全ての伝熱管32に結合されている。
【0028】
多数の伝熱管32には、第1下側伝熱管32aと第2下側伝熱管32bと第1上側伝熱管32cと第2上側伝熱管32dとが含まれている。第2下側伝熱管32bは第1下側伝熱管32aの側方に隣接している。すなわち、第1下側伝熱管32a及び第2下側伝熱管32bは、横方向に並ぶ多数の伝熱管32の内の互いに隣り合う2つの伝熱管である。
【0029】
熱交換器30には、図2(b)に示すように、第1下側伝熱管32a及び第2下側伝熱管32bに対して横方向に並ぶ多数の他の下側伝熱管32eが設けられている。なお、第1下側伝熱管32a、第2下側伝熱管32bを含め横方向に並ぶ多数の伝熱管32をまとめて下側伝熱管32fと称する。
【0030】
第1上側伝熱管32c及び第2上側伝熱管32dは、それぞれ第1下側伝熱管32a及び第2下側伝熱管32bのすぐ上方に隣接している。第2上側伝熱管32dは第1上側伝熱管32cの側方に隣接している。すなわち、第1上側伝熱管32c及び第2上側伝熱管32dは、横方向に並ぶ多数の伝熱管32の内の互いに隣り合う2つの伝熱管である。
【0031】
熱交換器30には、図2(b)に示すように、第1上側伝熱管32c及び第2上側伝熱管32dに対して横方向に並ぶ多数の他の上側伝熱管32gが設けられている。なお、第1上側伝熱管32c、第2上側伝熱管32dを含め横方向に並ぶ多数の伝熱管32をまとめて上側伝熱管32hと称する。
【0032】
全ての伝熱管32は、その両端部において、一対の管板37,38に固定されている。図2(a)は伝熱管32の一端部が固定される一方の管板(以下、第1管板と称する)37を示しており、他方の管板(以下、第2管板と称する)38は図1において簡略的に示されている。
【0033】
第1管板37は、全ての伝熱管32を挿通できるように伝熱管32の数に対応した数の貫通孔が形成されている。そして、図3にも示すように、これらの貫通孔にそれぞれ伝熱管32の一端部が挿入されており、伝熱管32の一端部は、第1管板37の貫通孔を通して第1管板37の外面(図3における右面)に開口している。
【0034】
一方、伝熱管32の他端部は、第2管板38の貫通孔(図示省略)を貫通している。第2貫通孔から突出している伝熱管32の他端部は、上下方向に隣接する伝熱管32の他端部と、U字管40(図1参照)を通して接続されている。
【0035】
図3に示すように、第1管板37の外面には、複数の覆い部材41が固定されている。各覆い部材41は、第1管板37に溶接されることによって第1管板37に取り付けられている。
【0036】
覆い部材41は、半筒形状を有している。すなわち、覆い部材41は、図4に示すように、直管状の部材を半割にした形状の本体部41aと、本体部41aにおける長手方向の両端部を塞ぐ平板状の底板部41bと、を備えた部材によって構成されている。
【0037】
覆い部材41は、本体部41aの長手方向が水平方向になるような姿勢で配設されており、図2(b)に示すように、覆い部材41の水平方向の長さは、水平に並ぶ多数の伝熱管32が配設された領域をカバーする長さとなっている。
【0038】
覆い部材41の上下方向の幅は、横方向に並び作動媒体を下側伝熱管32fから流出させる多数の下側伝熱管32fの端部と、当該下側伝熱管32fのすぐ上に隣接し作動媒体が流入される多数の上側伝熱管32hの端部と、を覆う大きさに設定されている。例えば、図2(b)及び図3に示すように、上下二列で横方向に並んだ下側伝熱管32fにおいては、図3において右方向に作動媒体が流れ、この作動媒体は、下側伝熱管32fにおける第1管板37側の端部から覆い部材41側に流出する。このため、図3において第1管板37の右側に配置された覆い部材41と第1管板37との間の空間には、上下二列の下側伝熱管32fから流出した作動媒体が流入する。
【0039】
覆い部材41と第1管板37との間の空間内の作動媒体は、この空間に開口する上下二列の上側伝熱管32h内に流入する。そして、上下二列で横方向に並んだ上側伝熱管32hにおいては、図3において左方向に作動媒体が流れる。このように、第1管板37と覆い部材41とにより、第1下側伝熱管32aの管内空間と、第2下側伝熱管32bの管内空間と、第1上側伝熱管32cの管内空間と、第2上側伝熱管32dの管内空間と、を相互に連通させる連通部43が構成されている。連通部43は、これらの管内空間を相互に連通するだけでなく、下側伝熱管32fの管内空間及び上側伝熱管32hの管内空間を相互に連通している。
【0040】
なお、図3に示す例では、下側伝熱管32fが上下二列に並び、上側伝熱管32hも上下二列に並んだ構成を示しているが、これに限られるものではない。例えば、下側伝熱管32fが横方向に一列に並ぶとともに上側伝熱管32hも横一列に並び、覆い部材41は、一列に並ぶ下側伝熱管32fの端部と一列に並ぶ上側伝熱管32hの端部とを覆うように設けられていてもよい。
【0041】
覆い部材41の内側には、仕切り板45が設けられている。仕切り板45は、覆い部材41の本体部41aの長手方向に沿って延びる細長い平板状の部材によって構成されている。仕切り板45は、第1管板37の外面との間に所定の幅の空間が形成されるように、覆い部材41の内側に配置されている。これにより、覆い部材41と第1管板37とによって区画される空間(連通部43内の空間)が狭められている。
【0042】
そして、仕切り板45の上端が覆い部材41の内面に溶接されるとともに仕切り板45の下端が覆い部材41の内面に溶接され、また仕切り板45の長手方向の両端部はそれぞれ覆い部材41の底板部41bに溶接されている。これにより、覆い部材41と第1管板37とによって区画された空間に流入した作動媒体は、第1管板37と仕切り板45との間の空間を流れるため、仕切り板45と覆い部材41の本体部41aとの間の空間には流れない。したがって、下側伝熱管32f内において蒸発したガス状の作動媒体は、3m/s以上の流速で覆い部材41の内側の空間を流れることが可能となっている。これにより、下側伝熱管32fから流出した作動媒体が、連通部43内において、潤滑油の随伴を妨げることなく流通させることができる。
【0043】
図2(a)(b)に示すように、熱交換器30には、熱交換器30の外部から伝熱管32に作動媒体を流入させるための流入部と、伝熱管32から熱交換器30の外部に作動媒体を流出させるための流出部48と、が設けられている。
【0044】
流入部47は、図5にも示されているように、パイプ状の流入管部47aと、流入管部47aに接続されたヘッダ部47bと、を有している。流入管部47aは、先端がフランジ状に形成される一方、基端がヘッダ部47bに接続されている。流入管部47aは、ポンプ8の吐出口に繋がる配管が接続される。なお、図5に示す例では、2つの流入管部47aを有しているが、1つの流入管部47aを有する構成であってもよい。
【0045】
ヘッダ部47bは、一方向に長い形状の半筒形状の部材で構成されており、長手方向が水平になる姿勢で第1管板37に固定されている。ヘッダ部47bは、直管状の部材を半割にした形状の本体部47baと、本体部47baにおける長手方向の両端部を塞ぐ平板状の底板部47bbと、を備えた部材によって構成されている。流入管部47aは、ヘッダ部47bの本体部47baに接続されている。
【0046】
水平方向におけるヘッダ部47bの長さは、横方向に並ぶ多数の伝熱管32が配設された領域をカバーする長さとなっている。ヘッダ部47bは、第1管板37との間に空間を区画するように第1管板37に溶接されている。この空間には、最も下側に配置された伝熱管32(最も下側の二列の伝熱管32)の端部が開口している。したがって、流入管部47aを通してヘッダ部47bの内側(ヘッダ部47bと第1管板37とによって区画された空間)に流入した液状の作動媒体は、最も下側に配置された伝熱管32(最も下側の二列の伝熱管32)に分配される。
【0047】
流出部48は、図6にも示されているように、パイプ状の流出管部48aと、流出管部48aに接続されたヘッダ部48bと、を有している。流出管部48aは、先端がフランジ状に形成される一方、基端がヘッダ部48bに接続されている。流出管部48aは、膨張機14の流入口に繋がる配管が接続される。
【0048】
ヘッダ部48bは、一方向に長い形状の半筒形状の部材で構成されており、長手方向が水平になる姿勢で第1管板37に固定されている。すなわち、ヘッダ部48bは、直管状の部材を半割にした形状の本体部48baと、本体部48baにおける長手方向の両端部を塞ぐ平板状の底板部48bbと、を備えた部材によって構成されている。流出管部48aは、ヘッダ部48bの本体部48baに接続されている。
【0049】
水平方向におけるヘッダ部48bの長さは、水平に並ぶ多数の伝熱管32が配設された領域をカバーする長さとなっている。ヘッダ部48bは、第1管板37との間に空間を区画するように第1管板37に溶接されている。この空間には、最も上側に配置された伝熱管32(最も上側の二列の伝熱管32)の端部が開口している。したがって、最も上側に配置された伝熱管32(最も上側の二列の伝熱管32)から流れ出たガス状の作動媒体は、ヘッダ部48bの内側(ヘッダ部48bと第1管板37とによって区画された空間)で合流し、ヘッダ部48bの内側に流入した作動媒体は、流出管部48aから流出する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器30では、互いに隣接する2つの下側伝熱管32a,32bの管内空間と、互いに隣接する2つの上側伝熱管32c,32dの管内空間とが、連通部43を通して互いに連通している。すなわち、隣接する4つの伝熱管32a~32dの管内空間同士を連通させる連通部43が設けられている。このため、各伝熱管の両端にそれぞれU字管を溶接する場合に比べて、製造の手間を軽減することができ、施工コストを低減することができる。また、本実施形態の熱交換器30では、下側伝熱管32fを流れた作動媒体がいずれも連通部43に流入して合流する。このため、仮に下側伝熱管32f間で加熱ばらつきが生ずることによって作動媒体の蒸発の程度又は作動媒体の温度に差が生じたとしても、連通部43において合流することにより、これらの温度ばらつきを低減することができる。そして、ばらつきが抑制された作動媒体を各上側伝熱管32hに分流することができる。したがって、上側伝熱管32hにおいて温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0051】
また本実施形態では、第1管板37と第1管板37に固定された半筒形状の覆い部材41とにより、連通部43が構成されている。すなわち、汎用の部材である半筒形状の部材を用いるとともに、この部材を第1管板37に固定するだけでよいため、施工コストの低減効果をより高めることができる。
【0052】
また本実施形態では、覆い部材41の内側に仕切り板45が設けられているので、第1下側伝熱管32a及び第2下側伝熱管32bから連通部43に作動媒体が流入したときに、作動媒体の流速が低下することを抑制することができる。したがって、下側伝熱管32fにおいて作動媒体がガス状になった場合でも、連通部43において、このガス状の作動媒体に潤滑油を随伴させ易くすることができる。
【0053】
また本実施形態では、水平方向に並ぶ全ての下側伝熱管32fの管内空間と、水平方向に並ぶ全ての上側伝熱管32hの管内空間とが、連通部43によって連通される。したがって、施工コストの低減効果をより高めることができるとともに、全ての上側伝熱管32間で作動媒体の温度がばらつくことを抑制することができる。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、図2(b)に示すように、覆い部材41が、水平方向に並ぶ全ての伝熱管32をカバーする長さに形成されているが、これに限られない。例えば、図7に示すように、覆い部材41は、水平方向に並ぶ伝熱管32のうちの一部をカバーする長さに形成されていてもよい。この場合には、複数の覆い部材41が水平方向に配置され、複数の覆い部材41によって全ての伝熱管32がカバーされる。なお、覆い部材41は、水平方向に並ぶ多数の伝熱管32のうちの一部の伝熱管32のみをカバーする長さに形成されるとともに、残りの伝熱管32は、図略のU字管を通して上下に隣接する伝熱管32と接続されてもよい。この場合でも、覆い部材41は、少なくとも2つの下側伝熱管(第1下側伝熱管32a及び第2下側伝熱管32b)と少なくとも2つの上側伝熱管(第1上側伝熱管32c及び第2上側伝熱管32d)とをカバーする大きさに形成されていればよい。
【0055】
前記実施形態では、第2管板38側の伝熱管32の他端部が、上下に隣接する伝熱管32とU字管40を介して接続される構成としているが、これに限られるものではない。例えば、第2管板38にも、第1管板37側の覆い部材41と同様の構成の覆い部材(図示省略)が固定されていて、この覆い部材と第2管板38の外面とによって区画される空間を通して上下方向に隣接する伝熱管32同士が連通していてもよい。
【0056】
前記実施形態では、半筒形状の覆い部材41と第1管板37とによって、伝熱管32同士を連通させる連通部43が構成されたが、これに限られるものではない。例えば、図8に示すように、水平方向に長い中空状の部材50によって、水平に並ぶ複数の下側伝熱管32fと、水平に並ぶ複数の上側伝熱管32hとを連通させる連通部43が構成されてもよい。この場合、中空状の部材50は、複数の下側伝熱管32fの端部及び複数の上側伝熱管32hの端部を覆うように、これら伝熱管32f,32hに固定される。
【符号の説明】
【0057】
1 バイナリー発電装置
10 蒸発器
30 熱交換器
32 伝熱管
32a 第1下側伝熱管
32b 第2下側伝熱管
32c 第1上側伝熱管
32d 第2上側伝熱管
32e 他の下側伝熱管
32f 下側伝熱管
32g 他の上側伝熱管
32h 上側伝熱管
37 第1管板
41 覆い部材
43 連通部
45 仕切り板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8