(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】動作停止解除装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2020099733
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】照沼 智明
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】関根 英則
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0181544(US,A1)
【文献】特開2006-326229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作停止解除装置であって、
自律ロボットに配備された緊急停止スイッチと、
前記緊急停止スイッチが使用されたことをトリガに前記自律ロボットの動作の停止指令を行う緊急停止指令部と、
前記自律ロボットの動作が停止した状態から動作の再開指令を行う緊急停止指令解除部と、
前記自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢か否か確認する姿勢確認部と、
前記自律ロボットに配備された少なくとも一つのセンサが正常か否かのチェックを行うセンサ情報確認部と、
を備え、
前記緊急停止指令解除部は、前記姿勢確認部が前記自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢であることを確認できた後、
前記センサ情報確認部が前記自律ロボットに配備された少なくとも一つのセンサが正常か否かのチェックを行い、正常であることが確認できた後、緊急停止を解除する、
ことを特徴とする動作停止解除装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動作停止解除装置であって、
前記自律ロボットは加速度センサを備え、
前記姿勢確認部は該加速度センサの情報に基づき、該自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢か否か確認する、
ことを特徴とする動作停止解除装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の動作停止解除装置であって、
前記自律ロボットは、少なくとも近接センサ、カメラ、接触センサのいずれかを含む複数のセンサを備え、
前記センサ情報確認部は、前記複数のセンサが正常か否かをチェックする、
ことを特徴とする動作停止解除装置。
【請求項4】
請求項1に記載の動作停止解除装置において、
前記自律ロボットは、少なくとも近接センサ、カメラ、接触センサのいずれかを含む複数のセンサを備え、
前記複数のセンサのいずれかのセンサが動作し、他のセンサが非動作であるパターンを予め記憶しておき、記憶された該パターンに合致するか否かに基づき、前記緊急停止指令解除部が緊急停止を解除する、
ことを特徴とする動作停止解除装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の動作停止解除装置において、
該動作停止解除装置は、ネットワークを介した遠隔解除手段を含む、ことを特徴とする動作停止解除装置。
【請求項6】
動作停止解除方法であって、
自律ロボットに配備された緊急停止スイッチが使用されたことをトリガに前記自律ロボットの動作の停止指令を行う緊急停止ステップと、
前記自律ロボットの動作が停止した状態から動作の再開指令を行う緊急停止解除ステップと、を含み、
前記緊急停止解除ステップに先立ち、前記自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢か否かを確認する姿勢確認ステップと、
前記自律ロボットに配備されたセンサが正常か否かの確認を行うセンサ確認ステップ、とを行う、
ことを特徴とする動作停止解除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動可能な情報処理装置の動作停止解除技術に関する。
【背景技術】
【0002】
公共空間で案内を行うロボットなどの自律移動可能な情報処理装置は、利用者の安全を確保するため、停止スイッチを設けている。このような非常停止手段を備えたロボットは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、多関節型ロボットの任意の容姿において動作を非常停止させるスイッチが開示されている。また、ロボットの各所に設けられた非常停止スイッチを再度操作することにより、非常停止解除を行うことができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロボットにあっては、誰でも容易に停止解除が可能なため、例えば、子供がいたずらで停止スイッチを解除した場合、ロボットが突如動き出し、危険を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決し、停止スイッチを解除した場合に危険を及ぼす可能性のない自律移動可能な情報処理装置の動作停止解除装置、及び解除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明においては、動作停止解除装置であって、自律ロボットに配備された緊急停止スイッチと、緊急停止スイッチが使用されたことをトリガに自律ロボットの動作の停止指令を行う緊急停止指令部と、自律ロボットの動作が停止した状態から動作の再開指令を行う緊急停止指令解除部と、自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢か否か確認する姿勢確認部と、自律ロボットに配備された少なくとも一つのセンサが正常か否かのチェックを行うセンサ情報確認部と、を備え、緊急停止指令解除部は、姿勢確認部が自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢であることを確認できた後、センサ情報確認部が自律ロボットに配備された少なくとも一つのセンサが正常か否かのチェックを行い、正常であることが確認できた後、緊急停止を解除する、動作停止解除装置を提供する。
【0007】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、動作停止解除方法であって、自律ロボットに配備された緊急停止スイッチが使用されたことをトリガに自律ロボットの動作の停止指令を行う緊急停止ステップと、自律ロボットの動作が停止した状態から動作の再開指令を行う緊急停止解除ステップと、からなり、緊急停止解除ステップは、緊急停止スイッチの解除を含む複数の停止解除トリガにより、中断していた動作の再開指令を行う動作停止解除方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、緊急停止の解除の際に、センサを用いた複数の停止解除トリガを設けることにより、誰でも容易に停止解除することを防止し、自律ロボットの動作の安全性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る、自律ロボットの動作停止解除装置の処理フローを示す図である。
【
図2】実施例1に係る、動作停止解除装置付きの自律ロボットの正面、背面を示す外観構成図である。
【
図3】実施例1に係る、動作停止解除装置付きの自律ロボットの機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の態様を図面に従い順次説明するが、本明細書において、センサには、接触センサ、超音波センサ、TOF方式(Time of Flight方式)センサなどの各種のセンサ、更には固体撮像素子などのカメラを含むものとする。
【実施例1】
【0011】
実施例1は、自律移動可能な情報処理装置である自律ロボットの動作停止解除装置、及び動作停止解除方法の実施例である。
【0012】
すなわち、自律ロボットに配備された緊急停止スイッチと、緊急停止スイッチが使用されたことをトリガに自律ロボットの動作の停止指令を行う緊急停止指令部と、自律ロボットの動作が停止した状態から動作の再開指令を行う緊急停止指令解除部と、を備え、緊急停止指令解除部は、緊急停止スイッチの解除を含む複数段の緊急停止解除手段により、中断していた動作の再開指令を行う構成の動作停止解除装置の実施例である。また、自律ロボットに配備された緊急停止スイッチが使用されたことをトリガに自律ロボットの動作の停止指令を行う緊急停止ステップと、自律ロボットの動作が停止した状態から動作の再開指令を行う緊急停止解除ステップと、からなり、緊急停止解除ステップは、緊急停止スイッチの解除を含む複数の停止解除トリガにより、中断していた動作の再開指令を行う動作停止解除方法の実施例である。
【0013】
以下、
図1-
図3を用いて本実施例に係る自律ロボットの動作停止解除装置の構成、及び動作停止解除方法を説明する。
【0014】
まず、
図2を使って自律ロボットの外観構成の一例を説明する。自律ロボットは、外部の計算機であるパーソナルコンピュータ(PC)203からの指令を受けて動作する。PC203は、自律ロボットの機能構成図に示したロボット指令生成部301として機能する。自律ロボットは、ロボット指令生成部301からの指令を受け動作する。
【0015】
自律ロボットは、本体201の内部に停止解除方法を実行するプログラムなどを処理する中央処理部(CPU)202を備えている。本体201には超音波センサなどの近接センサ204、205、加速度センサ210、更にはカメラ等の各種のセンサを備えている。自律ロボットの脚部208は、図示を省略した脚モータ部、腕部209は図示を省略した腕モータ部を備えている。脚部208には接触センサ206、207が付けられている。更に、図示が省略されているが、本体201の背面に緊急停止スイッチが付けられている。また、脚部にはTOF方式(Time of Flight方式)の近接センサが付けられている。
【0016】
そして、自律ロボットの電源がオン(ON)後、イニシャル処理を実行し、サービスを開始する。ここで、付設された緊急停止スイッチが押されると、動力をカットする緊急停止動作を行う。その後、緊急停止スイッチが解除された場合、複数の停止解除トリガにより、中断していた動作の再開指令を行う。例えば、膝の接触センサがオン(ON)し、超音波センサで前方に障害物が無い場合、保守員が操作したと判断し、緊急停止を解除する。この時、背面カメラで背面側を撮影し、画像診断で解除した人を判断しても良い。緊急停止解除後、自律ロボットはサービスを再開する。
【0017】
図1は、CPU202で動作するプログラム実行される、本実施例の自律ロボットの停止解除装置の複数のステップからなる処理フローの一例を示している。同図に示すように、スタート後、イニシャル処理(S101)がなされ、サービス開始される(S102)。すると、緊急停止スイッチがオン(ON)か否か検出され(S103)、オン(YES)の場合、緊急停止動作が行われる(S104)。
【0018】
その後、自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢か否か確認され(S105)、予め定められた姿勢(YES)の場合、各種のセンサが正常か否かの健全性チェックがなされる(S106)。すなわち、緊急停止解除ステップに先立ち、自律ロボットの姿勢が予め定められた姿勢か否かを確認する姿勢確認ステップと、自律ロボットに配備されたセンサが正常か否かの確認を行うセンサ確認ステップ、とが実行される。
【0019】
正常(YES)の場合に緊急停止スイッチのオン(ON)か否か(OFF)を確認し(S107)、オフ(OFF)の場合、緊急停止解除動作のオン(ON)、オフ(OFF)を確認し(S108)、オン(ON)の場合に緊急停止解除がなされ(S109)、自律ロボットのサービス再開がなされ(S110)、最後にサービスが終了(S111)となる。
【0020】
続いて、
図3を使って、本実施例の停止解除装置付きの自律ロボットの機能構成の一例を説明する。同図において、自律ロボット302は、ロボット制御部306を備え、ロボット制御部306に、上述したロボット指令生成部301からの指令、並びにセンサ303、304、加速度センサ305からのセンサ出力が入力される。加速度センサ305の出力は姿勢確認部309に入力され、本体201の姿勢が予め定められた姿勢か否か確認される。センサ303、304の出力はセンサ情報確認部308に入力され、センサが正常か否かがチェックされると共に、センサ情報の種々の利用がなされる。センサ情報確認部
308と姿勢確認部309からの出力は、緊急停止指令解除部310に入力される。
【0021】
緊急停止指令解除部310は、緊急停止スイッチの解除(OFF)、及びセンサ情報確認部308からの出力を含む複数段の緊急停止解除手段により、中断していた動作の再開指令を行う。たとえば、複数段の緊急停止解除手段は、緊急停止スイッチ307の解除(OFF)後に、一つのセンサが動作することで、自律ロボットの動作の再開を可能とする。あるいは、複数段の緊急停止解除手段は、緊急停止スイッチの解除後に、複数のセンサが動作することで、自律ロボットの動作の再開を可能とする。更には、複数段の緊急停止解除手段は、複数のセンサの少なくとも1つ以上の決められたセンサの動作と、少なくとも1つ以上のセンサの非動作で、自律ロボットの動作の再開を可能とする。あるいはまた、複数段の緊急停止解除手段の一つは、図示を省略したネットワークを介した遠隔解除手段であっても良い。なお、センサの非動作とは、センサ出力がない、或いはカメラに所望の映像が映っていない場合等を意味する。
【0022】
一方、緊急停止スイッチ307の出力は、緊急停止指令解除部310、緊急停止指令部311、更には各種の駆動部に入力される。緊急停止指令部311は緊急停止スイッチ307のオン(ON)を受け、ロボット動作指令部312に緊急停止指令を出力する。それを受け、ロボット動作指令部312は車輪駆動部313,腕部駆動部314に駆動信号を出力し、車両モータ部315、腕モータ部316を駆動する。
【0023】
更に緊急停止指令部311は緊急停止指令解除部310からの停止指令解除指令を受け、緊急停止の解除を行う。以上詳述したように、本実施例の自律ロボットの動作停止解除装置、及び方法により、緊急停止の解除の際に、センサを用いた複数の停止解除トリガを設けることにより、誰でも容易に停止解除することを防止し、自律ロボットの動作の安全性を図ることができる。
【0024】
本発明は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0025】
更に、上述した各構成、機能、CPU等は、それらの一部又は全部を実現するプログラムを作成する例を中心に説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。すなわち、処理部の全部または一部の機能は、プログラムに代え、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路などにより実現してもよい。
【符号の説明】
【0026】
201 本体
202 CPU
203 PC
204、205 近接センサ
206、207 接触センサ
208 脚部
209 腕部
210 加速度センサ
301 ロボット指令生成部
302 自律ロボット
303、304 センサ1、センサ2
305 加速度センサ
306 ロボット制御部
307 緊急停止スイッチ
308 センサ情報確認部
309 姿勢確認部
310 緊急停止指令解除部
311 緊急停止指令部
312 ロボット動作指令部
313 車輪駆動部
314 腕部駆動部
315 車輪モータ部
316 腕モータ部