(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 61/00 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
A01D61/00 301M
(21)【出願番号】P 2020114875
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 実希
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雅行
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-180134(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146995(WO,A1)
【文献】米国特許第03826350(US,A)
【文献】生物生産機械ハンドブック,初版第1刷,日本,株式会社コロナ社,1996年02月20日,pp. 612 - 613
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 61/00
A01F 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、
前記収穫部に連結され、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された作物の全稈を受け入れて脱穀処理する脱穀装置とが備えられ、
前記脱穀装置に、機体前後方向に沿った前後軸芯周りに回転することで、前記搬送装置により搬送された作物を脱穀処理する扱胴が備えられ、
前記搬送装置に、
前記収穫部と前記脱穀装置の入口とに亘って設けられた搬送ケースと、
前記搬送ケースの内部において、前記搬送ケースの前端部と後部とに亘る状態で設けられ、前記搬送ケースの前後方向に沿って回転駆動されることにより、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送機構と、
前記搬送ケースの内部において、前記搬送機構の後端部よりも後側に位置する状態で設けられ、左右方向に沿った左右軸芯周りに回転駆動されることにより、前記搬送機構からの作物を前記脱穀装置の入口に投入する送り部材とが備えられて
おり、
駆動軸が、前記左右軸芯と同芯状に回転可能に支持され、
前記送り部材が、前記駆動軸に取り付けられ、
エンジンの動力が前記駆動軸に伝達され、前記駆動軸により前記送り部材が回転駆動され、
前記駆動軸に逆転動力を伝達可能な逆転機構が備えられており、
前記扱胴は、機体左右方向に沿う第1伝動軸に伝達された前記エンジンの動力が、前記第1伝動軸に連結された第1ベベルギヤと、前記第1ベベルギヤと咬合する第2ベベルギヤと、を介して、前記第2ベベルギヤが連結された前記扱胴の回転駆動軸に伝達されることによって前記前後軸芯周りに回転するように構成されており、
前記駆動軸に前記逆転動力とは逆方向の動力である正転動力が伝達される状態と、前記駆動軸に前記逆転動力が伝達される状態と、の間で状態変更可能に構成されており、
前記駆動軸に前記正転動力が伝達される状態においては、前記第1伝動軸に伝達された前記エンジンの動力が、前記第1ベベルギヤを介することなく、前記正転動力として前記駆動軸に伝達され、
前記駆動軸に前記逆転動力が伝達される状態においては、前記第1伝動軸に伝達された前記エンジンの動力が、前記第1ベベルギヤと、前記第2ベベルギヤと、前記第2ベベルギヤと咬合する第3ベベルギヤと、前記第3ベベルギヤが連結されると共に前記逆転機構に動力を伝達可能であり機体左右方向に沿う第2伝動軸と、前記逆転機構と、を介して、前記逆転動力として前記駆動軸に伝達される収穫機。
【請求項2】
機体の前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、
前記収穫部に連結され、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された作物の全稈を受け入れて脱穀処理する脱穀装置とが備えられ、
前記搬送装置に、
前記収穫部と前記脱穀装置の入口とに亘って設けられた搬送ケースと、
前記搬送ケースの内部において、前記搬送ケースの前端部と後部とに亘る状態で設けられ、前記搬送ケースの前後方向に沿って回転駆動されることにより、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送機構と、
前記搬送ケースの内部において、前記搬送機構の後端部よりも後側に位置する状態で設けられ、左右方向に沿った左右軸芯周りに回転駆動されることにより、前記搬送機構からの作物を前記脱穀装置の入口に投入する送り部材とが備えられ、
駆動軸が、前記左右軸芯と同芯状に回転可能に支持され、
前記送り部材が、前記駆動軸に取り付けられ、
エンジンの動力が前記駆動軸に伝達され、前記駆動軸により前記送り部材が回転駆動され、
前記送り部材が取り外されて、前記搬送機構の後端部が前記駆動軸に取り付けられる状態に切換可能である収穫機。
【請求項3】
前記送り部材に、
左右方向に沿った空間が中心に形成されるように組み合わされ、前記空間から半径方向に沿って外側に延出されるように組み合わされた複数の羽根部材と、
前記駆動軸が前記空間に通された状態で、前記駆動軸と前記羽根部材とが一体で回転するように、前記駆動軸の外面と前記羽根部材とに亘って取り付けられるボス部材とが備えられている請求項
1又は
2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記駆動軸に伝達された動力を前記搬送機構に伝達可能な伝動機構が備えられている請求項
1~
3のうちのいずれか一項に記載の収穫機。
【請求項5】
前記駆動軸に伝達された動力が、前記伝動機構により減速されて前記搬送機構に伝達されることにより、
前記搬送機構が、前記送り部材よりも低速で回転駆動される請求項
4に記載の収穫機。
【請求項6】
前記搬送機構が、前記送り部材よりも低速で回転駆動される請求項1~
4のうちのいずれか一項に記載の収穫機。
【請求項7】
前記収穫部及び前記搬送装置が、前記左右軸芯周りに昇降操作可能に支持されている請求項1~
6のうちのいずれか一項に記載の収穫機。
【請求項8】
前記搬送ケースの上面部に着脱可能に設けられ、前記搬送ケースの右部及び左部に亘って前記上面部を開放可能な天板部材が備えられている請求項1~
7のうちのいずれか一項に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した作物の全稈を脱穀処理する収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫した作物の全稈を脱穀処理する収穫機としては、特許文献1に開示されているように、圃場の作物が、収穫部により収穫され搬送装置により作物が後方に搬送され、搬送装置から脱穀装置の入口に投入されるように構成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送装置は、収穫部により収穫された作物を後方に搬送する後方搬送機能と、後方に搬送されてきた作物を脱穀装置の入口に投入する投入機能の2つの機能を備えている。
後方搬送機能において、作物は搬送装置の前部から後部に亘る比較的長い距離を略直線的に搬送される。投入機能において、作物は放出されるようにして脱穀装置の入口に投入される。
【0005】
これにより、搬送装置において、後方搬送機能と投入機能とは互いに性質が異なるものであるので、後方搬送機能と投入機能とが、互いに影響を及ぼし合うこと少なく、両立するように構成するという面で、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、収穫機において、搬送装置の後方搬送機能と投入機能とが、互いに影響を及ぼし合うこと少なく、両立するように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の収穫機は、機体の前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部に連結され、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送された作物の全稈を受け入れて脱穀処理する脱穀装置とが備えられ、前記脱穀装置に、機体前後方向に沿った前後軸芯周りに回転することで、前記搬送装置により搬送された作物を脱穀処理する扱胴が備えられ、前記搬送装置に、前記収穫部と前記脱穀装置の入口とに亘って設けられた搬送ケースと、前記搬送ケースの内部において、前記搬送ケースの前端部と後部とに亘る状態で設けられ、前記搬送ケースの前後方向に沿って回転駆動されることにより、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送機構と、前記搬送ケースの内部において、前記搬送機構の後端部よりも後側に位置する状態で設けられ、左右方向に沿った左右軸芯周りに回転駆動されることにより、前記搬送機構からの作物を前記脱穀装置の入口に投入する送り部材とが備えられており、駆動軸が、前記左右軸芯と同芯状に回転可能に支持され、前記送り部材が、前記駆動軸に取り付けられ、エンジンの動力が前記駆動軸に伝達され、前記駆動軸により前記送り部材が回転駆動され、前記駆動軸に逆転動力を伝達可能な逆転機構が備えられており、前記扱胴は、機体左右方向に沿う第1伝動軸に伝達された前記エンジンの動力が、前記第1伝動軸に連結された第1ベベルギヤと、前記第1ベベルギヤと咬合する第2ベベルギヤと、を介して、前記第2ベベルギヤが連結された前記扱胴の回転駆動軸に伝達されることによって前記前後軸芯周りに回転するように構成されており、前記駆動軸に前記逆転動力とは逆方向の動力である正転動力が伝達される状態と、前記駆動軸に前記逆転動力が伝達される状態と、の間で状態変更可能に構成されており、前記駆動軸に前記正転動力が伝達される状態においては、前記第1伝動軸に伝達された前記エンジンの動力が、前記第1ベベルギヤを介することなく、前記正転動力として前記駆動軸に伝達され、前記駆動軸に前記逆転動力が伝達される状態においては、前記第1伝動軸に伝達された前記エンジンの動力が、前記第1ベベルギヤと、前記第2ベベルギヤと、前記第2ベベルギヤと咬合する第3ベベルギヤと、前記第3ベベルギヤが連結されると共に前記逆転機構に動力を伝達可能であり機体左右方向に沿う第2伝動軸と、前記逆転機構と、を介して、前記逆転動力として前記駆動軸に伝達される。
【0008】
本発明によると、搬送装置において、収穫部により収穫された作物が、搬送機構により搬送ケースの前端部から後部に亘って略直線的に搬送される。作物が搬送機構の後端部に達すると、作物は搬送機構から送り部材に受け渡され、送り部材により作物は搬送ケースの後端部から脱穀装置の入口に投入される。
【0009】
本発明によると、搬送装置において、搬送機構が後方搬送機能を担うことになり、送り部材が投入機能を担うことになるのであり、後方搬送機能を担う搬送機構と投入機能を担う送り部材とが、別々に構成される。
搬送装置において、搬送機構と送り部材とが別々に構成されることにより、搬送機構を後方搬送機能に適したものに構成することを、送り部材の影響を受けること少なく行うことができる。同様に、送り部材を投入機能に適したものに構成することを、搬送機構の影響を受けること少なく行うことができる。
本発明によると、エンジンの動力が伝達される駆動軸が、左右軸芯と同芯状に支持されて、搬送装置の送り部材が駆動軸に取り付けられることにより、搬送装置の送り部材の回転駆動構造をコンパクトに構成することができる。
本発明によると、搬送装置において、送り部材の付近で作物の詰まり等が発生した場合に、逆転機構により駆動軸(送り部材)を逆方向に回転駆動することにより、作物の詰まり等の解消を行い易い。
【0010】
本発明によると、搬送装置において、後方搬送機能と投入機能とを、互いに影響を及ぼし合うこと少なく両立させることができるのであり、作物が搬送装置により後方に円滑に搬送され、脱穀装置の入口に円滑に投入されるようになって、収穫機の収穫性能を向上させることができる。
【0011】
本発明において、前記搬送機構が、前記送り部材よりも低速で回転駆動されると好適である。
【0012】
本発明によると、搬送装置において、搬送機構が送り部材よりも低速で回転駆動されるのであり、このことについて言い換えると、送り部材が搬送機構よりも高速で回転駆動される。
これにより、搬送装置において、搬送機構から送り部材への作物の受け渡しが円滑に行われるのであり、送り部材による脱穀装置の入口への作物の投入が遅れることなく行われるようになる。
【0013】
本発明において、前記収穫部及び前記搬送装置が、前記左右軸芯周りに昇降操作可能に支持されていると好適である。
【0014】
収穫機では、収穫部及び搬送装置が昇降操作可能に支持されることが多い。
本発明によると、搬送装置の送り部材が回転可能に支持される左右軸芯と、収穫部及び搬送装置が昇降操作される左右軸芯とが同じであるので、収穫部及び搬送装置が昇降操作されても、搬送装置の送り部材の位置は変化しない。
これにより、収穫部及び搬送装置が昇降操作されても、搬送装置の送り部材による脱穀装置の入口への作物の投入が安定して行われる。
【0015】
【0016】
【0017】
本発明において、前記送り部材に、左右方向に沿った空間が中心に形成されるように組み合わされ、前記空間から半径方向に沿って外側に延出されるように組み合わされた複数の羽根部材と、前記駆動軸が前記空間に通された状態で、前記駆動軸と前記羽根部材とが一体で回転するように、前記駆動軸の外面と前記羽根部材とに亘って取り付けられるボス部材とが備えられていると好適である。
【0018】
本発明によると、搬送装置の送り部材において、複数の羽根部材を組み合わせることにより、送り部材を駆動軸に取り付ける為の空間、作物を脱穀装置の入口に投入する為の羽根部材が、適切に構成されるようになって、搬送装置の送り部材の構造の簡素化の面で有利である。
【0019】
本発明によると、駆動軸が羽根部材(送り部材)の空間に挿入された状態で、ボス部材が羽根部材(送り部材)の空間の内部に配置されて、羽根部材(送り部材)が駆動軸に取り付けられるので、羽根部材による作物の投入に対して、ボス部材が影響を及ぼすことは少ない。
【0020】
本発明において、前記駆動軸に伝達された動力を前記搬送機構に伝達可能な伝動機構が備えられていると好適である。
【0021】
本発明によると、搬送装置において、エンジンの動力が駆動軸に伝達されて、送り部材が回転駆動されるのであり、駆動軸の動力が伝動機構を介して搬送機構に伝達されて、搬送機構が回転駆動される。
これにより、搬送装置において、伝動系が送り部材から搬送機構に、直列的に簡素に構成される。
【0022】
本発明において、前記駆動軸に伝達された動力が、前記伝動機構により減速されて前記搬送機構に伝達されることにより、前記搬送機構が、前記送り部材よりも低速で回転駆動されると好適である。
【0023】
本発明によると、搬送装置において、搬送機構が送り部材よりも低速で回転駆動されるのであり、このことについて言い換えると、送り部材が搬送機構よりも高速で回転駆動される。
これにより、搬送装置において、搬送機構から送り部材への作物の受け渡しが円滑に行われるのであり、送り部材による脱穀装置の入口への作物の投入が遅れることなく行われるようになる。
【0024】
本発明によると、搬送機構が送り部材よりも低速で回転駆動されるように構成する場合(送り部材が搬送機構よりも高速で回転駆動されるように構成する場合)、駆動軸に伝達された動力が伝動機構により減速されて搬送機構に伝達される。
これにより、搬送装置において、伝動系が送り部材から搬送機構に直列的に簡素に構成される状態を維持しながら、搬送機構が送り部材よりも低速で回転駆動される構成(送り部材が搬送機構よりも高速で回転駆動される構成)を得ることができる。
【0025】
【0026】
【0027】
本発明の別の収穫機は、機体の前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部に連結され、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送された作物の全稈を受け入れて脱穀処理する脱穀装置とが備えられ、前記搬送装置に、前記収穫部と前記脱穀装置の入口とに亘って設けられた搬送ケースと、前記搬送ケースの内部において、前記搬送ケースの前端部と後部とに亘る状態で設けられ、前記搬送ケースの前後方向に沿って回転駆動されることにより、前記収穫部により収穫された作物を後方に搬送する搬送機構と、前記搬送ケースの内部において、前記搬送機構の後端部よりも後側に位置する状態で設けられ、左右方向に沿った左右軸芯周りに回転駆動されることにより、前記搬送機構からの作物を前記脱穀装置の入口に投入する送り部材とが備えられ、駆動軸が、前記左右軸芯と同芯状に回転可能に支持され、前記送り部材が、前記駆動軸に取り付けられ、エンジンの動力が前記駆動軸に伝達され、前記駆動軸により前記送り部材が回転駆動され、前記送り部材が取り外されて、前記搬送機構の後端部が前記駆動軸に取り付けられる状態に切換可能である。
【0028】
本発明の別の収穫機によると、搬送装置において、後方搬送機能と投入機能とを、互いに影響を及ぼし合うこと少なく両立させることができるのであり、作物が搬送装置により後方に円滑に搬送され、脱穀装置の入口に円滑に投入されるようになって、収穫機の収穫性能を向上させることができる。かつ、作物の種類や、圃場の条件及び天候等の各種の作業条件により、搬送装置において送り部材を備えることが適切ではない場合、搬送装置において、送り部材が取り外されて、搬送機構の後端部が駆動軸に取り付けられる状態に切り換えられる。
これにより、各種の作業条件に応じて、搬送装置に搬送機構及び送り部材が備えられた状態、搬送装置に搬送機構が備えられ送り部材が備えられない状態を設定することができて、収穫機の収穫性能を向上させることができる。
【0029】
本発明において、前記搬送ケースの上面部に着脱可能に設けられ、前記搬送ケースの右部及び左部に亘って前記上面部を開放可能な天板部材が備えられていると好適である。
【0030】
本発明によると、天板部材を取り外すことにより、搬送装置(搬送ケース)の上面部を大きく解放することができるので、搬送装置の内部のメンテナンス作業が行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】脱穀装置及び搬送装置の後部の縦断側面図である。
【
図3】脱穀装置の前部及び搬送装置の後部の縦断側面図である。
【
図10】脱穀装置の前部の右部及び左部に配置された支持フレームの正面図である
【
図15】搬送装置の脱穀装置への取付高さが高位置に設定された状態において、脱穀装置の前部及び搬送装置の後部の縦断側面図である。
【
図16】発明の実施の第1別形態において、脱穀装置の前部及び搬送装置の後部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1~
図16に、収穫機の一例である普通型のコンバインが示されており、
図1~
図16において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0033】
(コンバインの全体構成)
図1に示すように、右及び左のクローラ型式の走行装置2により、機体1が支持されている。作業者が搭乗する運転部3が、機体1の前部の右部に設けられている。脱穀装置4が機体1の後部の左部に設けられ、グレンタンク5が機体1の後部の右部に設けられている。
【0034】
収穫部6が機体1の前部に設けられ、搬送装置7が収穫部6の後部に連結されて斜め後方上方に延出されており、搬送装置7の後部が、左右方向に沿った左右軸芯である軸芯P1周りに昇降可能に、脱穀装置4の前部に取り付けられている。昇降シリンダ8が、機体1と搬送装置7とに亘って接続されており、昇降シリンダ8により、収穫部6及び搬送装置7が軸芯P1周りに昇降操作可能に支持されている。
【0035】
収穫部6に、掻き込みリール9、バリカン状の切断装置10及び横送りスクリュー11が設けられている。機体1の前進に伴って、圃場の作物が掻き込みリール9により掻き込まれて、切断装置10により作物の株元が切断されて刈り取られ、刈り取られた作物が横送りスクリュー11により収穫部6の左右中央側に集められて搬送装置7に供給される。
【0036】
収穫部6から搬送装置7に供給された作物は、搬送装置7により後方に搬送され、搬送装置7により搬送された作物の全稈が、脱穀装置4に投入される。脱穀装置4において作物の脱穀処理が行われるのであり、脱穀装置4で回収された穀粒が、グレンタンク5に貯留される。
【0037】
(搬送装置の構成)
図1に示すように、搬送装置7に、搬送ケース12と、搬送機構13と、回転部材としての送り部材14とが設けられている。
【0038】
図2,3,4に示すように、搬送ケース12は、板材により角筒状に構成されており、収穫部6と脱穀装置4の入口57(後述の(案内部の構成)を参照)とに亘って設けられている。
【0039】
図8に示すように、搬送ケース12の後部の上面部(後述する送り部材14及びスプロケット16の上方の上面部)に、搬送ケース12の右部12a及び左部12bに亘る開口部12cが開口されている。
【0040】
ボルト34によって搬送ケース12の上面部に着脱可能な天板部材33が設けられている。天板部材33に開口部33aが開口されており、開口部33aを閉じる蓋部材33bが、ナット64により天板部材33に着脱可能である。
【0041】
天板部材33が、搬送ケース12の右部12a及び左部12bに亘って、ボルト34により取り付けられることにより、搬送ケース12の開口部12cが天板部材33により閉じられる。天板部材33が取り外されることにより、搬送ケース12の開口部12cが開放される(搬送ケース12の右部12a及び左部12bに亘って、搬送ケース12の上面部が開放される)。
【0042】
図1~
図4に示すように、搬送機構13は、前部の右及び左のスプロケット15、後部の右及び左のスプロケット16、スプロケット15,16に亘って前後方向に沿って取り付けられた右及び左の搬送チェーン17、右及び左の搬送チェーン17に亘って左右方向に沿って取り付けられた多数の搬送体18が設けられており、搬送ケース12の内部において、搬送ケース12の前端部と後部とに亘って設けられている。
【0043】
送り部材14は、搬送ケース12の内部において、搬送機構13の後端部(スプロケット16)よりも後側に設けられている。
図5,6,7に示すように、平板状の3枚(複数)の羽根部材19が設けられて、羽根部材19の外辺部9aが少し曲げられている。左右方向に沿った断面三角形状の空間14aが送り部材14の中心に形成されるように、羽根部材19が組み合わされており、送り部材14の空間14aから半径方向に沿って外側に延出されるように、羽根部材19が組み合わされている。
【0044】
図4,6,7に示すように、断面六角形状の駆動軸20が、軸芯P1(
図1参照)と同芯状に回転可能に支持されている。送り部材14において、六角形状の開口部を有するボス部材21が設けられており、ボス部材21が送り部材14の空間14aにボルト62により取り付けられている。
【0045】
図3,4,9に示すように、搬送ケース12の右部12a及び左部12bの内面に、リング状の右及び左のカバー部材63が取り付けられている。送り部材14の右端部及び左端部がカバー部材63の内側に入り込んでおり、駆動軸20において搬送ケース12の右部12a(左部12b)と送り部材14との間の部分に、作物が巻き付くような状態が防止されている。
【0046】
駆動軸20がボス部材21の開口部に挿入されることによって、駆動軸20が送り部材14の空間14aに通された状態で、駆動軸20と羽根部材19とが一体で回転するように、駆動軸20の外面と羽根部材19とに亘って、ボス部材21が取り付けられる状態となる。これにより、送り部材14が駆動軸20に取り付けられた状態となるのであり、駆動軸20と羽根部材19(送り部材14)とが一体で回転可能な状態となる。
【0047】
(搬送装置の駆動構成)
図2,3,4,9に示すように、伝動軸23
(「第1伝動軸」に相当)が、脱穀装置4の前部に左右方向に沿って支持されており、機体1に搭載されたエンジン22(
図1参照)の動力が、伝動軸23の左部に連結されたプーリー23aに伝達されている。
【0048】
図4及び
図9に示すように、伝動軸23の左部にプーリー23bが連結され、駆動軸20の左部にプーリー20aが連結されて、伝動軸23のプーリー23bと駆動軸20のプーリー20aとに亘って、伝動ベルト24が取り付けられている。伝動ベルト24に対して押圧及び離間操作可能なテンションプーリー25が設けられており、伝動ベルト24及びテンションプーリー25を有する刈取クラッチ26が設けられている。
【0049】
駆動軸20の右部にスプロケット20bが連結され、搬送機構13におけるスプロケット16を支持する駆動軸27に、スプロケット27aが連結されており、駆動軸20のスプロケット20bと駆動軸27のスプロケット27aとに亘って、伝動機構としての伝動チェーン28が取り付けられている。
【0050】
以上の構成により、エンジン22の動力が、伝動軸23及び刈取クラッチ26を介して駆動軸20に伝達されて、駆動軸20が
図1,2,3の反時計方向に回転駆動されるのであり、駆動軸20により送り部材14が軸芯P1周りに、
図1,2,3の反時計方向に回転駆動される。
【0051】
駆動軸20の動力が、伝動チェーン28を介して駆動軸27に伝達されて、搬送機構13に伝達されるのであり、搬送機構13(スプロケット15,16、搬送チェーン17及び搬送体18)が、搬送ケース12の前後方向に沿って
図1,2,3の反時計方向に回転駆動される。
【0052】
駆動軸27にスプロケット27bが連結されており、駆動軸27の動力が駆動軸27のスプロケット27bから収穫部6(掻き込みリール9、切断装置10及び横送りスクリュー11)に伝達される。刈取クラッチ26が遮断状態に操作されると、搬送装置7(搬送機構13及び送り部材14)と、収穫部6(掻き込みリール9、切断装置10及び横送りスクリュー11)とが停止する。
【0053】
この場合、駆動軸20のスプロケット20bよりも、駆動軸27のスプロケット27aが大径に構成されており、駆動軸20の動力が伝動チェーン28により減速されて駆動軸27(搬送機構13)に伝達される。これにより、搬送機構13が送り部材14よりも低速で回転駆動される。このことについて言い換えると、送り部材14が搬送機構13よりも高速で回転駆動される。
【0054】
前述の(コンバインの全体構成)及び
図1,2,3に示すように、収穫部6により収穫され搬送装置7に供給された作物は、搬送機構13が回転駆動されることによって、搬送ケース12の前端部から後部に亘って、搬送ケース12の底部に沿って略直線的に後方に搬送される。
【0055】
作物が搬送機構13の後端部(スプロケット16)に達すると、作物は、搬送ケース12の底部に沿って搬送機構13から送り部材14に受け渡され、送り部材14により搬送装置7の出口7a(搬送ケース12の後端部)から、脱穀装置4の入口57(後述の(案内部の構成)を参照)に投入される。
【0056】
(逆転機構の構成)
後述の(脱穀装置の構成)及び
図4,9に示すように、脱穀装置4に扱胴44が設けられ、扱胴44の駆動軸50
(「回転駆動軸」に相当)に連結されたベベルギヤ50a
(「第2ベベルギヤ」に相当)と、伝動軸23に連結されたベベルギヤ23c
(「第1ベベルギヤ」に相当)とが咬合しており、伝動軸23の動力により扱胴44が回転駆動される。
【0057】
伝動軸29(「第2伝動軸」に相当)が伝動軸23と同芯状に支持されて、伝動軸29に連結されたベベルギヤ29a(「第3ベベルギヤ」に相当)が、駆動軸50のベベルギヤ50aと咬合しており、伝動軸23の動力が、駆動軸50のベベルギヤ50aを介して逆転の動力として伝動軸29に伝達されている。
【0058】
伝動軸29の右部にプーリー29bが連結されて、駆動軸20の右部にプーリー20cが連結されており、伝動軸29のプーリー29bと駆動軸20のプーリー20cとに亘って、伝動ベルト30が取り付けられている。伝動ベルト30に対して押圧及び離間操作可能なテンションプーリー31が設けられており、伝動ベルト30及びテンションプーリー31を有する逆転機構としての逆転クラッチ32が設けられている。
【0059】
逆転クラッチ32は、通常は遮断状態に操作されている。収穫部6や搬送装置7に作物の詰まり等が発生した場合、刈取クラッチ26を遮断状態に操作し、逆転クラッチ32を一時的に伝動状態に操作する。
【0060】
逆転クラッチ32が伝動状態に操作されると、伝動軸29の逆転の動力が、逆転クラッチ32を介して駆動軸20に伝達されて、搬送装置7の搬送機構13及び送り部材14が逆方向に回転駆動されるのであり、収穫部6の掻き込みリール9及び横送りスクリュー11が逆方向に回転駆動される。これにより、収穫部6や搬送装置7の作物の詰まり等が解消される。
【0061】
搬送装置7の後部で作物の詰まり等が発生した場合、作業者は、前述の(搬送装置の構成)及び
図8に示す天板部材33を取り外すことによって、搬送ケース12の開口部12cから、詰まった作物を取り出すことができる。
搬送装置7の後部で作物の詰まり等が発生していない状態において、天板部材33を取り外すことにより、送り部材14や搬送機構13のスプロケット16等の交換作業、メンテナンス作業を行うことができる。
【0062】
(搬送装置における脱穀装置への取り付けの構成)
図9に示すように、脱穀装置4の前部の右部及び左部に、支持フレーム35が上下方向に沿って設けられており、右及び左の支持部36が支持フレーム35に連結されている。駆動軸20(前述の(搬送装置の構成)(搬送装置の駆動構成)及び
図4参照)の右部及び左部が、支持部36により支持されている。
【0063】
図9,11,12に示すように、支持部36に、ボス部36a、連結部36b、補強リブ36c、受け部36d及び開口部36e等が設けられている。支持部36において、平板状の連結部36bの上下中間部にボス部36aが連結されている。補強リブ36cが、ボス部36aと連結部36bの上部及び下部とに亘って連結されており、受け部36dが連結部36b及び補強リブ36cの下端部に連結されている。上下方向に沿った4個の開口部36eが、連結部36bの上部及び下部に開口されている。
【0064】
図10,11,12に示すように、支持フレーム35に、4個の開口部35aと4個の開口部35bとが、上下方向に沿って並ぶように開口されており、開口部35a,35bの両側に4個の開口部35cが開口されている。4本のボルト37が、支持フレーム35の開口部35cに取り付けられて、ボルト37が支持部36の開口部36eに挿入されている。
【0065】
図9~
図12に示す状態は、ボルト37が支持部36の開口部36eの上端部に位置した状態で、ボルト37が締め付けられ、4本のボルト38が、支持部36の連結部36b及び支持フレーム35の開口部35aに挿入されて締め付けられた状態である。
【0066】
図2,3,9に示す状態において、搬送装置7の脱穀装置4への取付高さが低位置に設定されており、8本のボルト37,38により支持部36が支持フレーム35に連結されている。
【0067】
駆動軸20の右部(左部)がボス部36aに回転可能に支持されており、支持部36によって、駆動軸20が軸芯P1と同芯状に支持され、収穫部6及び搬送装置7が、軸芯P1(駆動軸20)周りに昇降操作可能に支持される。
【0068】
(脱穀装置の構成)
図2及び
図3に示すように、脱穀装置4に、扱室43、扱胴44、受網45、選別部46及び唐箕47等が設けられている。
【0069】
扱胴44が、前後方向に沿った前後軸芯である軸芯P2(発明に係る「前後軸芯」に相当)周りに回転可能に、扱室43に支持されており、扱胴44の前部に掻き込み部48が設けられ、扱胴44の後部に扱き処理部49が設けられている。
図4に示すように、扱胴44の前部に駆動軸50が連結されて、駆動軸50のベベルギヤ50aが伝動軸23のベベルギヤ23cと咬合しており、伝動軸23の動力により、扱胴44が
図9の時計方向に回転駆動される。
【0070】
図2及び
図3に示すように、扱胴44の掻き込み部48において、軸芯P2を中心とする円錐状の円筒状の基台部48aが設けられ、螺旋羽根48bが基台部48aの外周部に設けられている。
【0071】
扱胴44の扱き処理部49において、複数の丸パイプ状の棒部材49aが、軸芯P2を中心として円周方向に沿って配置され、前後方向に沿って延出されており、丸棒状の多数の扱歯49bが、棒部材49aに取り付けられて、半径方向の外側に延出されている。
【0072】
以上の構成により、搬送装置7により搬送された作物の全稈が、扱胴44の回転に伴って、掻き込み部48の螺旋羽根48bにより掻き込まれて、扱室43に投入されるのであり、作物は扱胴44の扱き処理部49により脱穀処理される。
【0073】
受網45は、細長い板材及び棒材により格子状に構成され、全体が半円筒状に構成されて、扱胴44の下部の周囲に設けられている。
選別部46が、受網45の下方に設けられ、選別部46に、グレンパン51、チャフシーブ52、ストローラック53、グレンシーブ54、1番物回収部55及び2番物回収部56が設けられている。
【0074】
選別部46の前方に、唐箕47が設けられており、唐箕47から選別部46に選別風が供給される。選別部46において、受網45からの処理物が選別処理され、1番物回収部55に回収された穀粒がグレンタンク5に搬送されて貯留されるのであり、2番物回収部56で回収された処理物が扱室43に戻される。
【0075】
(案内部の構成)
図2,3,9に示すように、右及び左の支持フレーム35の間において、脱穀装置4の入口57が、正面視で横長の矩形状(長方形状)に形成されている。
【0076】
案内部58が、側面視で、扱胴44の掻き込み部48の下方に設けられており、案内部58が、側面視で、搬送装置7(搬送ケース12)の底部の後端部(搬送装置7の出口7aの下辺部)(脱穀装置4の入口57の下辺部57a)と受網45の前端部とに亘って設けられている。
【0077】
図13及び
図14に示すように、案内部58に、平面視及び正面視で三角形状の左右中央部58aと、正面視及び側面視で三角形状の右横部58b及び左横部58cとが設けられており、左右中央部58aが側面視で斜め上方の後方に延出されている。右横部58bの上辺部及び左横部58cの上辺部が、正面視で、掻き込み部48の螺旋羽根48bの回転軌跡に沿うように、円弧状に形成されている。
【0078】
(誘導部の構成)
図13及び
図14に示すように、案内部58の右の角部である左右中央部58aと右横部58bとの接続部分に、案内部58の左右中央部58aに向けて膨出して形成された誘導部59が設けられている。案内部58の右の角部は、扱胴44(掻き込み部48)の回転方向の下手側に位置する。
【0079】
誘導部59の上端部59aが、正面視で、掻き込み部48の螺旋羽根48bの回転軌跡及び案内部58の右横部58bの上辺部に沿うように、傾斜した形状に形成されており、誘導部59の上端部59aが、掻き込み部48の螺旋羽根48bの回転軌跡及び案内部58の右横部58bの上辺部に接近して配置されている。
【0080】
誘導部59における案内部58の左右中央部58aに向く部分に、搬送装置7から投入される作物が案内部58の左右中央部58aに向けて案内されるように、平面視で扱胴44(掻き込み部48)の軸芯P2に対して傾斜した案内面59bが設けられている。誘導部59の上面部59cが、側面視で、扱室43に近くなる後方ほど高くなる傾斜状態に形成されている。
【0081】
(脱穀装置の入口付近の構成)
図2及び
図3に示すように、唐箕47(前述の(脱穀装置の構成)を参照)が、選別部46の前方に設けられ、案内部58の下方に設けられている。案内部58と、唐箕47を収容する唐箕ケース60とが、上下方向で隣り合っている。
図9に示すように、脱穀装置4の入口57に接続される搬送装置7の出口7aの横幅W3が、扱胴44の横幅W4よりも大きなものに設定されている。
【0082】
図2及び
図3に示すように、受網45の下端部と案内部58の後端部とは、側面視で同じ高さに位置している。この場合、側面視で受網45の下端部(案内部58の後端部)から水平方向に沿って前方に延出された仮想線A1を想定する。
【0083】
搬送装置7の送り部材14の軸芯P1が、側面視で、仮想線A1よりも低い位置に配置されており、搬送装置7の送り部材14の軸芯P1が、側面視で、受網45よりも低い位置に配置されている。搬送装置7の送り部材14の軸芯P1が、側面視で、掻き込み部48の螺旋羽根48bの回転軌跡及よりも低い位置に配置されている。
【0084】
側面視で、仮想線A1と案内部58の前端部との間の第1上下間隔W1が、仮想線A1と掻き込み部48の基台部48aの前端部の下端部との間の第2上下間隔W2よりも、大きなものに設定されている。
掻き込み部48の螺旋羽根48bの回転軌跡の下端部が、側面視で、脱穀装置4の入口57の上端部57bよりも低い位置に配置されている。
【0085】
(搬送装置から脱穀装置への作物の流れ)
前述の(搬送装置の駆動構成)及び
図2,3,4に示すように、収穫部6により収穫された作物は、搬送装置7において、搬送機構13により、搬送ケース12の前端部から後部に亘って、搬送ケース12の底部に沿って略直線的に後方に搬送され、送り部材14により、搬送装置7の出口7a(搬送ケース12の後端部)から脱穀装置4の入口57に投入されるのであり、脱穀装置4の入口57から扱室43に向けて斜め上方の後方に投入される。
【0086】
脱穀装置4の入口57に投入された作物は、案内部58に沿って、側面視で、掻き込み部48の下方から、扱胴44の軸芯P2と直交する方向に近い方向に沿って、掻き込み部48の下面に向けて投入されるような状態となる。
【0087】
前述のように作物が投入されると、作物は、掻き込み部48の隣接する螺旋羽根48bと螺旋羽根48bとの間に入り込み易くなるのであり、作物は、案内部58により扱室43に向けて案内されながら、扱胴44の回転に伴って、掻き込み部48の螺旋羽根48bの後面で後方に押されるように扱室43に掻き込まれる。
【0088】
この場合に、
図13及び
図14に示すように、扱胴44(掻き込み部48)の回転により、作物は、掻き込み部48の回転方向の下手側に流れ易く、案内部58の右の角部に滞留し易いと考えられる。案内部58の右の角部は、掻き込み部48の螺旋羽根48bから遠いので、掻き込み部48の螺旋羽根48bが届き難いと考えられる。
【0089】
誘導部59が案内部58の右の角部に設けられているので、誘導部59が存在する分だけ、掻き込み部48の螺旋羽根48bが届き難い部分が少なくなり、掻き込み部48の螺旋羽根48bが作物に届き易くなる。
【0090】
作物が掻き込み部48の螺旋羽根48bにより扱室43に掻き込まれる際、作物が誘導部59の案内面59bにより、案内部58の左右中央部58aに向けて案内される点、並びに、作物が誘導部59の上面部59cに沿って扱室43に向かって流れる点により、作物は掻き込み部48の螺旋羽根48bにより扱室43に円滑に掻き込まれる。
【0091】
(昇降機構の構成)
前述の(搬送装置における脱穀装置への取り付けの構成)に記載の右及び左の支持部36の下方において、
図9,11,12に示すように、右及び左の昇降機構42が設けられている。
【0092】
支持フレーム35における支持部36の下方の部分に、支持板39が連結されて、ナット40が支持板39に取り付けられており、ボルト41がナット40に挿入されている。このように、昇降機構42は、支持板39、ナット40及びボルト41等を有している。
【0093】
以下の説明のように、搬送装置7の脱穀装置4への取付高さを、低位置から高位置に変更することができる。
図9~
図12に示すように、4本のボルト38を取り外し、4本のボルト37を少し緩めることにより、支持部36が支持フレーム35から離れない状態を維持しながら、支持フレーム35に沿って上方に移動可能な状態とする。
【0094】
前述の状態において、ボルト41を回転操作して、ボルト41の上端部により支持部36の受け部36dを上方に押し上げる。支持部36が押し上げられて、ボルト37が支持部36の開口部36eの下端部に達すると、ボルト37を締め付けて、取り外されていた4本のボルト38を、支持部36の連結部36b及び支持フレーム35の開口部35bに挿入して締め付ける。
【0095】
これにより、搬送装置7の脱穀装置4への取付高さが高位置に設定される。搬送装置7の脱穀装置4への取付高さを高位置から低位置に変更する場合、前述と同様な操作を行えばよく、ボルト41を逆方向に回転操作して、支持部36を下降させればよい。
【0096】
以上のように、脱穀装置4の作物の入口57に対して、搬送装置7の作物の出口7aの位置が上下方向に沿って変更されるように、搬送装置7の脱穀装置4への取付高さを変更可能な昇降機構42が設けられている。
【0097】
(搬送装置の脱穀装置への取付高さが高位置に設定された場合の脱穀装置の入口付近の状態)
前述の(昇降機構の構成)に記載のように、搬送装置7の脱穀装置4への取付高さが高位置に設定された場合、断面チャンネル状の下辺部材61を、脱穀装置4の入口57の下辺部57aに取り付けることによって、下辺部材61を脱穀装置4の入口57の下辺部57aとすればよい。これにより、下辺部材61の着脱によって、脱穀装置4の入口57の下辺部57aの高さが変更可能となる。
【0098】
搬送装置7の脱穀装置4への取付高さが高位置に設定された場合、同様に、案内部58を別の案内部58に交換すればよいのであり、案内部58の前端部の高さが変更可能となる。
【0099】
図15に示すように、搬送装置7の脱穀装置4への取付高さが高位置に設定された場合に、下辺部材61の取り付け及び案内部58の交換により、搬送装置7(搬送ケース12)の底部の後端部(搬送装置7の出口7aの下辺部)と、脱穀装置4の入口57の下辺部57a(下辺部材61)と、案内部58の前端部とが、段差少なく連続してつながるように構成することができる。
【0100】
搬送装置7の脱穀装置4への取付高さが高位置に設定された状態でも、搬送装置7の送り部材14の軸芯P1が、側面視で、仮想線A1(
図3参照)よりも低い位置に配置されており、搬送装置7の送り部材14の軸芯P1が、側面視で、受網45よりも低い位置に配置されている。搬送装置7の送り部材14の軸芯P1が、側面視で、掻き込み部48の螺旋羽根48bの回転軌跡よりも低い位置に配置されている。
【0101】
(発明の実施の第1別形態)
図16に示すように、搬送装置7において、送り部材14(
図2及び
図3参照)が駆動軸20から取り外され、搬送機構13のスプロケット16が駆動軸20に取り付けられてもよい。これにより、搬送装置7において、送り部材14が取り外されて、搬送機構13の後端部が駆動軸20に取り付けられる状態に切換可能となる。
この構成において、搬送機構13のスプロケット16及び搬送体18が、搬送装置7の後部に設けられた回転部材となる。
【0102】
(発明の実施の第2別形態)
扱胴44において、掻き込み部48の基台部48aが、円錐状の円筒状ではなく、前後方向で同一の半径を有する円筒状に構成されてもよい。
扱胴44において、掻き込み部48と扱き処理部49との境界部分が、
図2及び
図3に示すように、側面視で受網45の前端部よりも後側(扱室43の内方)に位置するのではなく、掻き込み部48と扱き処理部49との境界部分が、側面視で受網45の前端部と同じ位置に配置されてもよい。
【0103】
(発明の実施の第3別形態)
搬送装置7において、伝動チェーン28による減速が行われずに、送り部材14と搬送機構13とが同じ速度で回転駆動されるように構成されてもよい。
【0104】
(発明の実施の第4別形態)
送り部材14は、4枚の羽根部材19が用いられて構成されてもよく、5枚以上の羽根部材19が用いられて構成されてもよい。
【0105】
(発明の実施の第5別形態)
送り部材14は、丸パイプ状の軸部(図示せず)に、平板状の羽根部材19が放射状に取り付けられて構成されてもよい。
この構成において、駆動軸20が送り部材14の丸パイプ状に軸部に挿入されることにより、送り部材14が駆動軸20に取り付けられるように構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、収穫された作物の全稈を脱穀装置に投入する収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 機体
4 脱穀装置
6 収穫部
7 搬送装置
12 搬送ケース
12a 右部
12b 左部
13 搬送機構
14 送り部材
14a 空間
19 羽根部材
20 駆動軸
21 ボス部材
22 エンジン
23 伝動軸(第1伝動軸)
23c ベベルギヤ(第1ベベルギヤ)
28 伝動チェーン(伝動機構)
29 伝動軸(第2伝動軸)
29a ベベルギヤ(第3ベベルギヤ)
32 逆転クラッチ(逆転機構)
33 天板部材
44 扱胴
50 駆動軸(回転駆動軸)
50a ベベルギヤ(第2ベベルギヤ)
57 入口
P1 左右軸芯
P2 前後軸芯