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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】一般複合容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
F17C1/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020132436
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029208
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-04-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391018019
【氏名又は名称】JFEコンテイナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】六川 庄一
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037961(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085054(WO,A1)
【文献】特開2010-270878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部分であるライナーと、
前記ライナーへ高圧ガスを充填させる供給バルブと、を備え、重心が前記ライナー側に位置する一般複合容器であって、
前記ライナーの外周には、複数のフープ層と複数のヘリカル層とを交互に形成することによって構成されている強化層と、単数または複数の繊維層からなる部分強化層とが設けられており、
前記ライナーは、円筒形状の胴部とドーム形状のドーム部とを有し、
前記部分強化層は、前記強化層よりも狭い範囲に設けられており、重心を含む前記ライナーの前記胴部の一部に設けられているものであり、
前記部分強化層は、
前記重心の位置から前記ライナーの長手方向の両側に対して同じ長さである
一般複合容器。
【請求項2】
前記部分強化層は、前記強化層の内側に設けられている
請求項1記載の一般複合容器。
【請求項3】
前記部分強化層は、ヘリカル層で構成されている
請求項1または2に記載の一般複合容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素および水素などの高圧ガスが貯蔵される一般複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素および水素などの高圧ガスが貯蔵される一般複合容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の一般複合容器は、外部から受けた衝撃に対する耐久性(以下、耐衝撃性と称する)を向上させるため、容器の本体部分であるライナーの外周全体に強化樹脂などが巻かれている。そして、この強化樹脂は、必要な耐衝撃性を確保するため、複数層を構成するように一般複合容器のライナーの外周全体に巻かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6120017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来の一般複合容器では、必要な耐衝撃性を確保するため、ライナーの外周全体に複数層が構成されるように強化樹脂が巻かれている。なお、強化樹脂の巻き数を多くして層数を多くするほど強度は向上するが、その分重くなってしまう。しかしながら、このような一般複合容器は、医療用酸素容器、空気呼吸器用容器などの可搬容器、および、ドローン用の燃料タンクなど、軽量化が求められる分野でも使用されるため、必要な耐衝撃性を確保しつつ軽量化する必要があった。
【0005】
本発明では、上記課題が解決されるものであり、必要な耐衝撃性を確保しつつ軽量化することができる一般複合容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一般複合容器は、本体部分であるライナーと、前記ライナーへ高圧ガスを充填させる供給バルブと、を備え、重心が前記ライナー側に位置する一般複合容器であって、前記ライナーの外周には、複数のフープ層と複数のヘリカル層とを交互に形成することによって構成されている強化層と、単数または複数の繊維層からなる部分強化層とが設けられており、前記ライナーは、円筒形状の胴部とドーム形状のドーム部とを有し、前記部分強化層は、前記強化層よりも狭い範囲に設けられており、重心を含む前記ライナーの前記胴部の一部に設けられているものであり、前記部分強化層は、前記重心の位置から前記ライナーの長手方向の両側に対して同じ長さである
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る一般複合容器によれば、ライナーの外周において、重心を含み強化層よりも狭い範囲にのみ部分強化層が設けられている。そのため、必要な耐衝撃性を確保しつつ軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る一般複合容器を示す外観図である。
図2】実施の形態に係る一般複合容器の変形例を示す外観図である。
図3】実施の形態に係る強化層および部分強化層がライナーに設けられた一般複合容器を示す図である。
図4図3に示す一般複合容器のA-A断面図である。
図5図3に示す一般複合容器のB-B断面図である。
図6】実施の形態に係る強化層および部分強化層がライナーに設けられた一般複合容器の第一の変形例を示す図である。
図7図3に示す一般複合容器のライナーに設けられた部分強化層を示す図である。
図8図3に示す一般複合容器のライナーに設けられた部分強化層の変形例を示す図である。
図9】実施の形態に係る強化層および部分強化層がライナーに設けられた一般複合容器の第二の変形例を示す図である。
図10】実施の形態に係る強化層および部分強化層がライナーに設けられた一般複合容器の第三の変形例を示す図である。
図11】実施の形態に係る衝撃監視表示部が取り付けられた一般複合容器を示す外観図である。
図12】実施の形態に係る一般複合容器に取り付けられた衝撃監視表示部が変色した状態を示す外観図である。
図13】実施の形態に係る一般複合容器のアングル落下試験を示す図である。
図14】実施の形態に係る一般複合容器および従来の一般複合容器の各落下試験における破裂圧力の相関関係を示すグラフである。
図15】実施の形態に係る一般複合容器および従来の一般複合容器の重量の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下には、図面に基づいて実施の形態が説明されている。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。さらに、明細書全文に示す構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0010】
実施の形態.
一般複合容器1は、医療用酸素容器、空気呼吸器用容器などの可搬容器、および、ドローン用の燃料タンクなど、様々な分野で使用されるものである。この一般複合容器1には、酸素および水素などが、内部で圧縮されて貯蔵される。つまり、一般複合容器1には、高圧ガスが貯蔵される。
【0011】
図1は、実施の形態に係る一般複合容器1を示す外観図である。図2は、実施の形態に係る一般複合容器1の変形例を示す外観図である。なお、図1および図2では、一般複合容器1から後述する強化層および部分強化層が図示省略されている。
【0012】
図1に示すように、一般複合容器1は、本体部分であるライナー2と、ライナー2へ高圧ガスを充填させる供給バルブ3と、で構成されている。なお、図2に示すように、供給バルブ3は、一般複合容器1内の高圧ガスを減圧させる減圧弁3aを一体化したものでもよい。一般複合容器1のライナー2は、円筒形状の胴部2aとドーム形状のドーム部2bとを有し、例えば、アルミニウム合金またはプラスチックなどで構成されている。また、このライナー2には、少なくとも胴部2aの外周にCFRP(炭素繊維強化樹脂)が巻き付けられている。CFRP(炭素繊維強化樹脂)は、一般複合容器1の耐衝撃性を向上させるために設けられている。なお、ライナー2にCFRP(炭素繊維強化樹脂)を巻き付ける方法は特に限定されないが、例えば、フィラメントワインディング法(FW法)を採用することができる。
【0013】
CFRP(炭素繊維強化樹脂)には、強化材として炭素繊維が用いられており、これに例えばエポキシ樹脂または変性エポキシ樹脂などの樹脂を含浸させて強度を向上させた複合材料であり、例えばPAN系炭素繊維あるいはPITCH系炭素繊維などが用いられる。また、GFRP(ガラス繊維強化樹脂)には、強化材としてガラス繊維が用いられており、これに例えばエポキシ樹脂または変性エポキシ樹脂などの樹脂を含浸させて強度を向上させた複合材料であり、例えばEガラス繊維あるいは石英ガラス繊維などが用いられる。
【0014】
図3は、実施の形態に係る強化層4および部分強化層5がライナー2に設けられた一般複合容器1を示す図である。図4は、図3に示す一般複合容器1のA-A断面図である。図5は、図3に示す一般複合容器1のB-B断面図である。図6は、実施の形態に係る強化層4および部分強化層5がライナー2に設けられた一般複合容器1の第一の変形例を示す図である。図7は、図3に示す一般複合容器1のライナー2に設けられた部分強化層5を示す図である。図8は、図3に示す一般複合容器1のライナー2に設けられた部分強化層5の変形例を示す図である。図9は、実施の形態に係る強化層4および部分強化層5がライナー2に設けられた一般複合容器1の第二の変形例を示す図である。図10は、実施の形態に係る強化層4および部分強化層5がライナー2に設けられた一般複合容器1の第三の変形例を示す図である。
【0015】
一般複合容器1は、図3に示すように、ライナー2の少なくとも胴部2aの外周に設けられた複数の繊維層からなる強化層4を備えている。強化層4は、複数のフープ層と複数のヘリカル層とを交互に形成することによって構成されている。なお、フープ層およびヘリカル層の形成の順序は特に限定されない。すなわち、ライナー2上にフープ層、ヘリカル層、フープ層・・・の順序で形成してもよく、ライナー2上にヘリカル層、フープ層、ヘリカル層・・・の順序で形成してもよい。
【0016】
なお、実施の形態では、図3に示すように強化層4の最も外側の繊維層である最外層がフープ層となっているが、それに限定されず、図6に示すように強化層4の最外層がヘリカル層となっていてもよい。
【0017】
フープ層は、ライナー2に対してCFRP(炭素繊維強化樹脂)を周方向に巻き付けることによって形成される層である。このとき、図3に示すように、フープ層のCFRP(炭素繊維強化樹脂)は、ライナー2の径方向から見たときに、ライナー2の長手方向に延びた軸Xと略垂直(90°)となるように巻き付けられる。
【0018】
ヘリカル層は、ライナー2に対してCFRP(炭素繊維強化樹脂)を傾斜させた状態で周方向に取り囲むように巻き付けることによって形成される層である。このとき、図6に示すように、ヘリカル層のCFRP(炭素繊維強化樹脂)は、ライナー2の径方向から見たときに、ライナー2の軸Xに対して傾斜するように巻き付けられる。ライナー2の軸Xに対する傾斜角は、略20°以上に設定される。
【0019】
図4に示すように、強化層4の内側、かつ、重心Gを含むライナー2の胴部2aの一部(以下、胴部中央部2a1と称する)には、単数の繊維層からなる部分強化層5が設けられている。ここで、重心Gとは、ライナー2と供給バルブ3とを備えた一般複合容器1の重心である。なお、部分強化層5は複数の繊維層で構成されていてもよい。
【0020】
図4および図5に示すように、重心Gを含むライナー2の胴部中央部2a1は、重心Gを含まないライナー2の胴部2aの胴部中央部2a1以外の部分(以下、胴部側部2a2と称する)よりも繊維層の層数が多くなっており、ライナー2の胴部中央部2a1は、ライナー2の胴部側部2a2よりもヘリカル層が多くなっている。例えば、ライナー2の胴部中央部2a1は、ヘリカル層が4層、フープ層が3層の計7層であるのに対し、ライナー2の胴部側部2a2は、ヘリカル層が3層、フープ層が3層の計6層である。そして、ライナー2の胴部中央部2a1は、ライナー2の胴部側部2a2よりも最も内側の繊維層である最内層が1層多くなっており、図7に示すように、部分強化層5がヘリカル層で構成されている。なお、図8に示すように、部分強化層5がフープ層で構成されていてもよい。また、図9および図10に示すように、部分強化層5は、強化層4の外側に設けられていてもよく、その場合、ライナー2の胴部中央部2a1は、ライナー2の胴部側部2a2よりも最外層が1層多くなる。なお、図9は、強化層4の最外層がヘリカル層で構成されており、部分強化層5がフープ層で構成されている一般複合容器1を示している。また、図10は、強化層4の最外層がフープ層で構成されており、部分強化層5がヘリカル層で構成されている一般複合容器1を示している。
【0021】
また、部分強化層5は、重心Gの位置からライナー2の長手方向(軸X方向)において同じ長さの幅に設けられている。つまり、部分強化層5の幅方向の中央に重心Gが位置している。部分強化層5の幅は、例えば100mmであり、重心Gの位置からライナー2の長手方向に50mmずつ設けられている。
【0022】
図11は、実施の形態に係る衝撃監視表示部9が取り付けられた一般複合容器1を示す外観図である。図12は、実施の形態に係る一般複合容器1に取り付けられた衝撃監視表示部9が変色した状態を示す外観図である。なお、図11および図12では、一般複合容器1から強化層4および部分強化層5が図示省略されている。
【0023】
図11および図12に示されるように、一般複合容器1のライナー2には、ライナー2に対して所定値以上の衝撃が加わった際に変化する衝撃監視表示部9が取り付けられている。ここでは、衝撃監視表示部9は、ライナー2に対して所定値以上の衝撃が加わった際に変色する。変色箇所は、衝撃監視表示部9内の中央部9aのみである。変色箇所は、図12のハッチングで示されている。なお、衝撃監視表示部9は、ライナー2に対して所定値以上の衝撃が加わった際に変化するものであればよく、例えばライナー2に対して所定値以上の衝撃が加わった際に変色するのではなく膨らむなどでもよい。
【0024】
衝撃監視表示部9は、文字、図形またはそれらの組み合わせなどの表示によって製造元を表す製造元表示部9bを含んでいる。衝撃監視表示部9は、一般複合容器1のライナー2に取り付けられた状態で上からコーティングを施されている。
【0025】
図13は、実施の形態に係る一般複合容器1のアングル落下試験を示す図である。なお、図13の(a)は一般複合容器1のアングル落下試験の正面を示す図であり、図13の(b)は一般複合容器1のアングル落下試験の側面を示す図である。なお、図13では、一般複合容器1から強化層4および部分強化層5が図示省略されている。
【0026】
アングル落下試験では、図13に示すように、ライナー2に供給バルブ3が設けられた一般複合容器1を水平状態とし、コンクリートまたはこれと同等以上の硬度を有する水平面から3mの高さとなる位置から尖部であるアングル10に落下させる。ここで、アングル10は、略L字状を有し、角部が上となるように水平面に設置される。なお、アングル10は、例えば、一辺の長さが38~40mm、厚さが4.8~5.0mmであるが、それに限定されない。その後、ライナー2内の圧力が上限圧力と下限圧力とを所定時間毎に所定回数繰り返すように加減圧するサイクル試験を行い、サイクル試験後、破裂するまでライナー2内に水圧をかける破裂試験を行う。そして、破裂試験においてライナー2が破裂したときの圧力、つまり破裂圧力が基準値以上であれば、試験合格となる。
【0027】
また、水平落下試験では、ライナー2に供給バルブ3が設けられた一般複合容器1を水平状態とし、コンクリートまたはこれと同等以上の硬度を有する水平面から3mの高さとなる位置から水平面に落下させる。その後、ライナー2内の圧力が上限圧力と下限圧力とを所定時間毎に所定回数繰り返すように加減圧するサイクル試験を行い、サイクル試験後、破裂するまでライナー2内に水圧をかける破裂試験を行う。そして、破裂試験においてライナー2が破裂したときの圧力、つまり破裂圧力が基準値以上であれば、試験合格となる。
【0028】
また、垂直落下試験では、ライナー2に供給バルブ3が設けられた一般複合容器1を鉛直状態とし、コンクリートまたはこれと同等以上の硬度を有する水平面から3mの高さとなる位置から水平面に落下させる。その後、ライナー2内の圧力が上限圧力と下限圧力とを所定時間毎に所定回数繰り返すように加減圧するサイクル試験を行い、サイクル試験後、破裂するまでライナー2内に水圧をかける破裂試験を行う。そして、破裂試験においてライナー2が破裂したときの圧力、つまり破裂圧力が基準値以上であれば、試験合格となる。
【0029】
図14は、実施の形態に係る一般複合容器1および従来の一般複合容器の各落下試験における破裂圧力の相関関係を示すグラフである。図15は、実施の形態に係る一般複合容器1および従来の一般複合容器の重量の相関関係を示すグラフである。なお、図14および図15では、実施の形態に係る一般複合容器1を「本願」とし、従来の一般複合容器は「従来」とする。また、各落下試験に用いる一般複合容器1の総重量は5.3kg、長手方向の長さを500mmとする。
【0030】
図14に示すように、実施の形態に係る一般複合容器1と従来の一般複合容器とでは、各落下試験における破裂圧力が同じ値であり、破線で示す基準値以上である。なお、各落下試験での破裂圧力は、垂直落下試験での破裂圧力>水平落下試験での破裂圧力>アングル落下試験での破裂圧力となっている。これは、高圧ガス保安法の規制を受ける一般複合容器1において、設計上の最も大きな制約はアングル落下試験から受け、アングル落下試験での破裂圧力を規制値に適合させる必要があることを示している。
【0031】
また、図15に示すように、実施の形態に係る一般複合容器1と従来の一般複合容器とでは、実施の形態に係る一般複合容器1の方が従来の一般複合容器よりも重量が軽い。つまり、実施の形態に係る一般複合容器1は、従来の一般複合容器と破裂圧力が同じ値であるにも関わらず、重量が軽い。
【0032】
アングル落下試験時、アングル10が一般複合容器1の重心Gに衝撃が加わった場合は、位置エネルギーが衝撃点である重心Gに集中し、一般複合容器1への損傷が最大となる。一方、アングル10が一般複合容器1の重心Gから外れた位置に衝撃が加わった場合は、位置エネルギーの一部は重心Gを中心とした一般複合容器1の回転方向への仕事量に消費され、一般複合容器1の損傷は一部緩和される。そのため、一般複合容器1の重心G付近を強化することで、一般複合容器1全体の耐衝撃性を向上させることができる。
【0033】
従来では、一般複合容器1のライナー2の外周全体の繊維層の層数を増やして外周全体の繊維強化をすることで耐衝撃性を強化していた。そのため、繊維層の層数の増加に伴って重量が増加してしまっていた。
【0034】
そこで、実施の形態では、一般複合容器1の重心G付近の外周のみの繊維層の層数を増やして重心G付近を集中的に繊維強化することで耐衝撃性を強化するとともに、繊維層の層数の増加に伴う重量の増加を、繊維層の層数が増加する範囲を狭めることで最大限抑制する。
【0035】
落下試験より、重心Gとアングル10の衝撃点とのオフセットが50mmであれば衝撃エネルギーは15%程度低減した。そこで、部分強化層5の幅を100mmとし、部分強化層5を、重心Gの位置からライナー2の長手方向の両側に対して50mmずつ設けるのがよい。
【0036】
以上、実施の形態に係る一般複合容器1は、本体部分であるライナー2と、ライナー2へ高圧ガスを充填させる供給バルブ3と、を備え、重心Gがライナー2上に位置する一般複合容器1であって、ライナー2の外周には、複数の繊維層からなる強化層4と、単数または複数の繊維層からなる部分強化層5とが設けられており、部分強化層5は、重心Gを含み強化層4よりも狭い範囲に設けられている。
【0037】
実施の形態に係る一般複合容器1によれば、ライナー2の外周において、重心Gを含み強化層4よりも狭い範囲にのみ部分強化層5が設けられている。そのため、必要な耐衝撃性を確保しつつ軽量化することができる。
【0038】
また、実施の形態に係る一般複合容器1において、部分強化層5は、重心Gの位置からライナー2の長手方向の両側に対して同じ長さである。
【0039】
実施の形態に係る一般複合容器1によれば、部分強化層5が重心Gの位置からライナー2の長手方向の両側に対して同じ長さであるため、重心G付近の耐衝撃性を効率よく強化させることができる。
【0040】
また、実施の形態に係る一般複合容器1において、部分強化層5は、強化層4の内側に設けられている。
【0041】
実施の形態に係る一般複合容器1によれば、部分強化層5を強化層4の内側に設け、衝撃を受けても壊れにくい最内層の繊維層を多くしているため、重心G付近の耐衝撃性を効率よく強化させることができる。
【0042】
また、実施の形態に係る一般複合容器1において、部分強化層5は、ヘリカル層で構成されている。
【0043】
アングル落下試験時にアングル10によってライナー2の周方向に損傷を受け、周方向と垂直の長手方向に働く力によって破裂に至ることが多い。そこで、実施の形態に係る一般複合容器1によれば、部分強化層5をヘリカル層で構成することで、前記力に対して垂直方向に巻かれるフープ層よりも破裂する際に働く力に対する抵抗力を大きくすることができ、重心G付近の耐衝撃性を効率よく強化させることができる。
【0044】
なお、ヘリカル層のライナー2の軸Xに対する傾斜角が略20°未満となると、ライナー2の外周全体に巻き付ける必要が生じるため、ライナー2の外周の一部にのみヘリカル層を設けることができない。そのため、上記のように、ライナー2の外周の一部にのみヘリカル層を設ける場合は、ヘリカル層のライナー2の軸Xに対する傾斜角を略20°以上とするのがよい。
【符号の説明】
【0045】
1 一般複合容器、2 ライナー、2a 胴部、2a1 胴部中央部、2a2 胴部側部、2b ドーム部、3 供給バルブ、3a 減圧弁、4 強化層、5 部分強化層、9 衝撃監視表示部、9a 中央部、9b 製造元表示部、10 アングル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15