IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナブテスコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図1
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図2
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図3
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図4
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図5
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図6
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図7
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図8
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図9
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図10
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図11
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図12
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図13
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図14
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図15
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図16
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図17
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図18
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図19
  • 特許-引戸装置及び取得装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】引戸装置及び取得装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020135302
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030961
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】福井 有朋
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-115733(JP,A)
【文献】国際公開第2007/083520(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084307(WO,A1)
【文献】特開2018-058585(JP,A)
【文献】特開2020-104611(JP,A)
【文献】特開2016-114097(JP,A)
【文献】中国実用新案第209129507(CN,U)
【文献】特開2019-098847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0045040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋に対して開閉方向に移動可能な引戸と、
前記戸袋又は前記引戸に固定されたレールであって前記開閉方向に延びる前記レールと、
前記レールと接触する転動体を保持するガイドブロックと、
前記レールと前記転動体との間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
を備え
前記状態情報は、前記レールに付着している前記潤滑剤の膜厚を示す、引戸装置。
【請求項2】
前記状態情報は、前記レールに付着している前記潤滑剤の色を示す、請求項に記載の引戸装置。
【請求項3】
前記状態情報は、前記引戸の開又は閉動作中に前記レール及び前記ガイドブロックに電流を印加したときに計測される抵抗値を示す、請求項1又は2に記載の引戸装置。
【請求項4】
前記引戸の全閉及び全開を検出する開閉検出部を備え、
前記ガイドブロックは、前記引戸の戸先側に設けられた戸先側ガイドブロックと、前記戸先側ガイドブロックと前記開閉方向に並んで前記引戸の戸尻側に設けられた戸尻側ガイドブロックとを含み、
前記状態情報は、前記開閉検出部が前記全開及び前記全閉の少なくとも一方を検出したときに、前記戸先側ガイドブロックと前記戸尻側ガイドブロックとの間に設けられた状態検出部によって検出された前記潤滑剤の状態を示す、請求項1又は2に記載の引戸装置。
【請求項5】
戸袋に対して開閉方向に移動可能な引戸と、
前記戸袋又は前記引戸に固定されたレールであって前記開閉方向に延びる前記レールと、
前記レールと接触する転動体を保持するガイドブロックと、
前記レールと前記転動体との間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
を備え、
前記状態情報は、前記レールから剥離した前記潤滑剤の状態を示す、引戸装置。
【請求項6】
前記状態情報は、前記引戸の前記開閉方向の移動により前記レールから落下した前記潤滑剤の重量、前記潤滑剤が落下した面に対する前記潤滑剤の接触面積、前記落下した潤滑剤の体積、及び前記潤滑剤の落下によって生じた衝撃荷重の累積値のうちの少なくとも1つを示す、請求項に記載の引戸装置。
【請求項7】
前記状態情報は、前記引戸の前記開閉方向の移動により前記レールから落下した前記潤滑剤の色及び前記落下した潤滑剤の粘度のうちの少なくとも1つを示す、請求項に記載の引戸装置。
【請求項8】
前記引戸の前記開閉方向の移動により前記レールから落下した前記潤滑剤を受ける受け部と、
前記ガイドブロックと前記レールとの間の隙間をシールするオイルシールと、を含み、
前記受け部は、前記オイルシールの下に設けられ、
前記状態情報は、前記受け部に溜まった前記潤滑剤の状態を示す、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項9】
前記受け部は、前記オイルシールの下に位置付けられるように前記戸袋又は前記ガイドブロックに設けられる、請求項に記載の引戸装置。
【請求項10】
前記受け部は、前記引戸が全閉したとき及び全開したときの少なくとも一方のときに前記オイルシールの下に位置付けられるように前記引戸に設けられる、請求項に記載の引戸装置。
【請求項11】
前記状態情報は、前記レールの前記開閉方向の移動範囲内における前記レールの下にある前記潤滑剤を撮影する撮像センサを用いて検出された前記潤滑剤の状態を示す、請求項5乃至10のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項12】
前記状態情報に基づいて、前記潤滑剤の残量に関する残量情報を生成する情報生成部を備える、請求項1、3及び6のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項13】
前記状態情報に基づいて、前記潤滑剤の補充の要否を示す補充要否情報を生成する情報生成部を備える、請求項1、3及び6のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項14】
前記状態情報に基づいて、前記潤滑剤の劣化度合いに関する劣化情報を生成する情報生成部を備える、請求項2、3及び7のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項15】
前記状態情報に基づいて、前記潤滑剤の交換の要否を示す劣化要否情報を生成する情報生成部を備える、請求項2、3及び7のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項16】
前記状態情報は、前記戸袋内に設けられた状態検出部によって検出された前記潤滑剤の状態を示す、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項17】
前記状態情報は、前記潤滑剤の状態を示す状態パラメータを含み、
前記引戸装置は、前記状態パラメータの値と基準値との比較に基づいて、前記潤滑剤の残量に関する残量情報、前記潤滑剤の劣化度合いに関する劣化情報、前記潤滑剤の補充の要否を示すための補充要否情報及び前記潤滑剤の交換の要否を示すための交換要否情報のうちの少なくとも1つを生成する情報生成部を含み、
前記基準値は、前記引戸の開閉方向の長さ、所定期間内に前記引戸が開閉される回数、前記引戸装置の設置位置における屋根の有無及び前記設置位置での気温のうちの少なくともいずれか1つに基づいて設定される、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項18】
前記引戸装置は、プラットホーム上に設置されるホームドア装置であり、
前記引戸装置は、前記状態情報に基づいて、前記潤滑剤の残量に関する残量情報、前記潤滑剤の劣化度合いに関する劣化情報、前記潤滑剤の補充の要否を示す補充要否情報及び前記潤滑剤の交換の要否を示す交換要否情報のうちの少なくとも1つを生成する情報生成部と、
前記引戸を開閉させるための開又は閉指令信号を出力する総合制御盤から前記状態情報を取得させるための取得指令を受信する受信部と、
前記総合制御盤に、前記状態情報、前記残量情報、前記劣化情報、前記補充要否情報及び前記交換要否情報とのうちの少なくとも1つを送信する送信部と、を含み、
前記取得部は、前記総合制御盤から前記取得指令を受信したことに応答して、前記状態情報を取得する、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の引戸装置。
【請求項19】
戸袋に対して開閉方向に移動可能な引戸と、
前記戸袋又は前記引戸に固定されたレールであって前記開閉方向に延びる前記レールと、
前記レールと接触する転動体を保持するガイドブロックと、
前記引戸を開閉制御するホームドア制御部と、
を備えたホームドア装置に用いられる取得装置であって、
前記取得装置を前記ホームドア装置に取り付けるための取付部と、
前記ホームドア制御部に前記引戸の開閉動作を開始させるための開及び閉信号の少なくとも一方を受信する取得装置用受信部と、
前記開及び閉信号の少なくとも一方の受信に応答して、前記レールと前記転動体との間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
を備え
前記状態情報は、前記レールに付着している前記潤滑剤の膜厚を示す、取得装置。
【請求項20】
戸袋に対して開閉方向に移動可能な引戸と、
前記戸袋又は前記引戸に固定されたレールであって前記開閉方向に延びる前記レールと、
前記レールと接触する転動体を保持するガイドブロックと、
前記引戸を開閉制御するホームドア制御部と、
を備えたホームドア装置に用いられる取得装置であって、
前記取得装置を前記ホームドア装置に取り付けるための取付部と、
前記ホームドア制御部に前記引戸の開閉動作を開始させるための開及び閉信号の少なくとも一方を受信する取得装置用受信部と、
前記開及び閉信号の少なくとも一方の受信に応答して、前記レールと前記転動体との間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
を備え、
前記状態情報は、前記レールから剥離した前記潤滑剤の状態を示す、取得装置。
【請求項21】
戸袋に対して開閉方向に移動可能な引戸と、
前記戸袋又は前記引戸に固定されたレールであって前記開閉方向に延びる前記レールと、
前記レールと接触する転動体を保持するガイドブロックと、
前記引戸の全閉及び全開の少なくとも一方を検出する開閉検出部と、
前記引戸を開閉制御するホームドア制御部と、
を備えたホームドア装置に用いられる取得装置であって、
前記取得装置を前記ホームドア装置に取り付けるための取付部と、
前記開閉検出部が前記引戸の全閉及び全開の少なくとも一方を検出したことに応答して、前記レールと前記転動体との間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
を備え
前記状態情報は、前記レールに付着している前記潤滑剤の膜厚を示す、取得装置。
【請求項22】
戸袋に対して開閉方向に移動可能な引戸と、
前記戸袋又は前記引戸に固定されたレールであって前記開閉方向に延びる前記レールと、
前記レールと接触する転動体を保持するガイドブロックと、
前記引戸の全閉及び全開の少なくとも一方を検出する開閉検出部と、
前記引戸を開閉制御するホームドア制御部と、
を備えたホームドア装置に用いられる取得装置であって、
前記取得装置を前記ホームドア装置に取り付けるための取付部と、
前記開閉検出部が前記引戸の全閉及び全開の少なくとも一方を検出したことに応答して、前記レールと前記転動体との間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する取得部と、
を備え、
前記状態情報は、前記レールから剥離した前記潤滑剤の状態を示す、取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸装置及び取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道駅のプラットホームに設置され、乗客が列車に乗降する乗降通路を開閉する可動ホーム柵(引戸装置)が記載される。特許文献1の引戸装置は、開閉方向に延設されるレールとレールに摺動自在に係合されるリニアガイドベアリング(ガイドブロック)とを含む。ガイドブロックの内部には、複数の転動体が収容され、この転動体がレールに接して転動するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-98847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レール及びガイドブロックを利用する引戸装置においては、レール及びガイドブロックの各転動面と転動体との間で良好な潤滑を保つ必要がある。レール及びガイドブロックの摩耗を抑制し、長寿命化を図るためである。一般に、引戸装置においては、レール及びガイドブロックの各転動面と転動体との潤滑を保つために、潤滑剤が用いられる。この潤滑剤は適宜補充又は交換される。
【0005】
しかし、引戸の開閉により転動体がレール上の移動を繰り返すにつれて、潤滑剤が減少又は劣化する。この潤滑剤の減少又は劣化により、レール及びガイドブロックの各転動面と転動体との間の摺動抵抗が増加する。その結果、潤滑剤の補充又は交換前に、レール及びガイドブロックが摩耗して、その表面が剥離してしまう場合がある。
【0006】
一方で、潤滑剤の補充又は交換までの期間を短くしすぎると、補充又は交換の回数が多くなる。その結果、補充又は交換作業者の負担が増加してしまう。
【0007】
上記課題を鑑みて、本発明の目的は、潤滑剤の状態を適切に判断することを可能にする引戸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の引戸装置は、戸袋に対して開閉方向に移動可能な引戸と、前記戸袋又は前記引戸に固定されたレールであって前記開閉方向に延びる前記レールと、前記レールと接触する転動体を保持するガイドブロックと、前記レールと前記転動体との間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する取得部と、を備える。
【0009】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、潤滑剤の状態を適切に判断することを可能にする引戸装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のホームドア装置を備えたプラットホームドアシステムを概略的に示すブロック図である。
図2図2(a)は引戸の位置が全閉位置のときのホームドア装置の正面図であり、図2(b)は引戸の位置が全開位置のときのホームドア装置の正面図である。
図3】戸袋の内部構造を示す正面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5】第1実施形態のリニアガイドの斜視図である。
図6】第1実施形態のホームドア装置のホームドア制御部と総合制御盤とを示すブロック図である。
図7】第1実施形態のホームドア制御部の動作を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態における潤滑剤の状態の検出態様を説明するための図である。
図9】第3実施形態における受け部の配置を示す図である。
図10図10(a)は引戸の位置が全閉位置のときの第3実施形態の変形例における受け部の配置を示す図であり、図10(b)は引戸の位置が全開位置のときの第3実施形態の変形例における受け部の配置を示す図である。
図11】第3実施形態の変形例における撮像センサの配置を示す図である。
図12図12(a)は引戸の位置が全閉位置のときの第3実施形態の変形例における撮像センサの配置を示す図であり、図12(b)は引戸の位置が全開位置のときの第3実施形態の変形例における撮像センサの配置を示す図である。
図13】第5実施形態のホームドア装置のホームドア制御部と総合制御盤とを示すブロック図である。
図14】第5実施形態のホームドア制御部の動作を示すフローチャートである。
図15】第6実施形態のホームドア装置のホームドア制御部と総合制御盤とを示すブロック図である。
図16】第6実施形態のホームドア制御部の動作を示すフローチャートである。
図17】第7実施形態の取得装置を示すブロック図である。
図18】第7実施形態の取得装置の動作を示すフローチャートである。
図19】第8実施形態の取得装置を示すブロック図である。
図20】第8実施形態の取得装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
[第1実施形態]
図1を参照して、プラットホームドアシステム1を説明する。プラットホームドアシステム1は、総合制御盤50と、複数のホームドア装置100と、を備える。ホームドア装置100は、引戸装置の一例である。ホームドア装置100は、ホームドア制御部30を含む。
【0014】
複数のホームドア装置100は、駅のプラットホームの上り線及び下り線にそれぞれ設けられる。複数のホームドア装置100は、プラットホームの所定位置に車両61が停止したときに、この車両61の各車両ドアに対応する位置に設けられた乗降口にそれぞれ配置される。
【0015】
総合制御盤50は、プラットホームに1つ設けられ、複数のホームドア装置100の各ホームドア制御部30に接続される。ホームドア装置100の引戸11(図2参照)は、ホームドア制御部30を介して総合制御盤50によって開閉制御される。車両ドアが開くとともに引戸11が開くことによって、乗客の車両61への乗降が可能となる。車両ドアと引戸11とのいずれか一方が閉じることによって、乗客の乗降が制限される。
【0016】
総合制御盤50と各ホームドア制御部30とは、相互に通信できる。例えば、総合制御盤50は、引戸11の開指令信号及び閉指令信号を各ホームドア制御部30に送信する。ホームドア制御部30は、開指令信号に応答して対応する引戸11を開くと、全開信号を総合制御盤50に送信する。ホームドア制御部30は、閉指令信号に応答して対応する引戸11を閉じると、全閉信号を総合制御盤50に送信する。各ホームドア制御部30は、後述の状態情報等を総合制御盤50に送信できる。
【0017】
総合制御盤50と車両61とは、車両情報伝送装置63および地上子62を介して相互に通信できる。車両61は、全てのホームドア装置100の引戸11を開く開要求信号および全てのホームドア装置100の引戸11を閉じる閉要求信号を総合制御盤50に送信できる。総合制御盤50は、全てのホームドア制御部30から全開信号又は全閉信号を受けると、全開確認信号又は全閉確認信号を車両61に送信できる。なお、車両情報伝送装置63および地上子62は、駅によっては設けられていない場合がある。
【0018】
プラットホームドアシステム1の動作を説明する。車両61がプラットホームの所定位置に到達して停止すると、地上子62および車両情報伝送装置63が総合制御盤50に車両61が停止したことを示す停止信号を送信する。これにより、総合制御盤50は、車両61が停止したことを検出する。その後、車両61の乗務員は、地上子62および車両情報伝送装置63を介して総合制御盤50に開要求信号を送信する。この開要求信号を受信すると、総合制御盤50は、各ホームドア制御部30に開指令信号を供給する。各ホームドア制御部30は、この開指令信号に応答して、対応する引戸11を開く。ホームドア制御部30は、後述の全開位置センサ41aから後述の全開位置信号を受信したことに応答して、全開信号を総合制御盤50に送信する。総合制御盤50は、全てのホームドア制御部30から全開信号を受けると、全開確認信号を車両情報伝送装置63および地上子62を介して車両61に送る。車両61の乗務員は、この全開確認信号を受けると、車両ドアを開く。
【0019】
乗客の乗降車が完了して、車両61がプラットホームから出発するとき、車両61の乗務員は、地上子62および車両情報伝送装置63を介して総合制御盤50に閉要求信号を送信する。この閉要求信号を受けると、総合制御盤50は、各ホームドア制御部30に閉指令信号を供給する。各ホームドア制御部30は、この閉指令信号に応答して、対応する引戸11を閉じる。各ホームドア制御部30は、後述の全閉位置センサ41bから後述の全閉位置信号を受信したに応答して、全閉信号を総合制御盤50に送信する。総合制御盤50は、全てのホームドア制御部30から全閉信号を受けると、全閉確認信号を車両情報伝送装置63および地上子62を介して車両61に送る。車両61の乗務員は、この全閉確認信号を受けると、車両ドアを閉じる。なお、駅係員がプラットホームに設けられた駅係員操作盤66を用いて閉要求信号又は開要求信号を総合制御盤50に送信してもよい。
【0020】
図2乃至図4を参照して、ホームドア装置100について説明する。ホームドア装置100は、戸袋10と、戸袋10から開閉方向Dxに移動可能な引戸11と、引戸11の戸先が挿入可能であり挿入された戸先を介して引戸11を支持する戸先側支持部12と、引戸11を開閉方向Dxに案内するリニアガイド20U及び20Lと、ホームドア制御部30と、を有する。
【0021】
ホームドア装置100は、戸袋10と戸先側支持部12との間の空間である乗降口Eを引戸11の移動により開閉する。ホームドア装置100は、引戸11の戸先が戸袋10から離れる方向に移動して引戸11の戸先が戸先側支持部12に挿入されることにより乗降口Eを閉じる(図2(a)参照))。ホームドア装置100は、引戸11の戸先が戸袋10に近づく方向に移動することにより乗降口Eを開く(図2(b)参照))。
【0022】
戸袋10は、正面視において開閉方向Dxを長手方向として構成される。戸袋10は、パネル状の引戸11を進退可能に収納する。戸袋10は、プラットホーム上に配置される。戸袋10には、引戸11を開閉駆動する駆動部13と、ホームドア制御部30と、各種センサとが設けられる。駆動部13は、ホームドア制御部30の制御に応じて引戸11を開閉するモータ13mと、開閉方向Dxの両側でモータ13mに連結される一対の回転体13pと、モータ13mの駆動力を引戸11に伝達する連結部13cと、一対の回転体13pに巻き掛けられる伝達部材13tと、を備える。連結部13cは、引戸11の戸尻側に設けられる。
【0023】
図3を参照する。戸袋10は、開閉方向Dxに間隔を空けて配置された一対の支柱17と、一対の支柱17を開閉方向Dxにおいて連結する連結柱18と、を含む。連結柱18には、駆動部13及びホームドア制御部30が取り付けられる。
【0024】
引戸11は、正面視において開閉方向Dxを長手方向として構成される。引戸11は、引戸11の表面の一部を構成する透明パネル部14と、開閉方向Dxに延びて透明パネル部14を上下方向Dyの両端部を支持する一対の上框15U及び下框15Lと、透明パネル部14の開閉方向Dxの両端部を保持する縦框16と、を含む。透明パネル部14は、例えば、ガラス板、透光性の樹脂板、又はガラス板を透光性の樹脂板で挟み込んだもので構成される。透明パネル部14は、上框15U及び下框15Lに対してその厚さ方向のホーム側よりに配置される。透明パネル部14のホーム側の表側面は、上框15U及び下框15Lのホーム側の表側面と概ね面一に構成される。
【0025】
リニアガイド20U及び20Lは、引戸11が開閉方向Dxに移動するときに一対の上框15U及び下框15Lをそれぞれ支持しながら開閉方向Dxに案内する。リニアガイド20U及び20Lは、一対の上框15U及び下框15Lにそれぞれ取り付けられる。リニアガイド20U及び20Lは、透明パネル部14の裏側面に配置される。
【0026】
リニアガイド20U及び20Lは、開閉方向Dxに延びるレール21U及び21Lと、レール21U及び21Lと接触する転動体22aを保持するガイドブロック22U及び22Lと、をそれぞれ含む。転動体22aは、レール21U及び21Lに対して開閉方向Dxに相対的に移動可能である。レール21U及び21Lは、引戸11の上框15U及び下框15Lにそれぞれ下向きに固定され、上框15U及び下框15Lと平行してそれぞれ延びる。レール21U及び21Lは、開閉方向Dxにおいて引戸11のほぼ全体に亘る長さを有する。
【0027】
ガイドブロック22U及び22Lは、レール21U及び21Lにそれぞれ取り付けられる。ガイドブロック22U及び22Lは、引戸11の戸先側に設けられた戸先側ガイドブロック22Ua及び22Laと、戸先側ガイドブロック22Ua及び22Laと開閉方向Dxに間隔を空けて並んで引戸11の戸尻側に設けられた戸尻側ガイドブロック22Ub及び22Lbとを含む。ガイドブロック22U及び22Lは、レール21U及び21Lにより開閉方向Dxに直交する2つの方向に対してそれぞれ支持される。そのため、ガイドブロック22U及び22Lのレール21U及び21Lに対する相対的な移動は、開閉方向Dxに直交する2つの方向において規制される。本実施形態のガイドブロック22U及び22Lは、戸袋10内に設けられる。
【0028】
なお、リニアガイド20U及び20Lの各々のガイドブロック22U及び22Lの個数は、任意に設定可能である。例えば、リニアガイド20U及び20Lのガイドブロック22U及び22Lの個数が互いに異なってもよい。また、リニアガイド20U及び20Lの一方を省略してもよい。
【0029】
図5を参照して、ガイドブロック22U及び22Lについて詳細に説明する。以下、レール21U及び21Lをレール21と称する場合がある。また、ガイドブロック22U及び22Lをガイドブロック22と称する場合がある。
【0030】
ガイドブロック22の内部には、複数の転動体22aを転動自在に装填した転動体循環路22bが形成される。転動体循環路22bは、転動体転走路22cと、転動体戻し通路22dと、U字状の一対の方向転換路22eと、を含む。一対の方向転換路22eが転動体転走路22c及び転動体戻し通路22dの両端を接続することによって、転動体22aが転動体循環路22bを無限循環することが可能となる。転動体22aは、転動体循環路22bを循環しながら、レール21の転動体転動面21aに接して転動するように構成される。これにより、ガイドブロック22がレール21に対して相対的に往復移動可能となる。
【0031】
なお、全ては図示されないが、本実施形態のガイドブロック22には、レール21の4つの転動体転動面21aに対応するように4つの転動体循環路22bが形成される。これに限定されず、転動体転動面21a及び転動体循環路22bの個数は、リニアガイド20の用途に応じて変更可能である。また、本実施形態の転動体22aは、ボールであるが、ローラやコロ等であってもよい。
【0032】
開閉方向Dxにおけるガイドブロック22の両端部には、一対の蓋部材23が設置される。一対の蓋部材23の各々には、レール21とガイドブロック22との間の隙間をシールする一対のオイルシール24が設置される。オイルシール24は、レール21との接触部分にレール21に対してスライド移動可能に接するリップ部25を有する。オイルシール24のリップ部25がレール21に隙間なく接触することで、ガイドブロック22の内部への異物の浸入やガイドブロック22の内部の潤滑剤の外部への漏出が抑制される。オイルシール24は、ゴムや合成樹脂等で構成される。
【0033】
ガイドブロック22は、レール21と転動体22aとの間に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給部26を含む。潤滑剤供給部26は、潤滑剤供給口26aと、潤滑剤供給経路26bと、を有する。潤滑剤供給口26aは、潤滑剤供給経路26bを介して各転動体循環路22bへと繋がる。潤滑剤供給口26aを介して潤滑剤を供給することにより、潤滑剤を潤滑剤供給経路26bを介して各転動体循環路22bの転動体22aに供給することが可能となる。本実施形態の潤滑剤は、グリース等の半固体状のものであるが、これに限定されず、オイル等の液体状のものやワックス等の固体状のもの、カーボンのような粉体のものであってもよい。なお、本実施形態では、ガイドブロック22に潤滑剤供給部26を設けたが、これに限定されず、ガイドブロック22の外部に潤滑剤供給部26を設けてもよい。この場合、ガイドブロック22の外部の潤滑剤供給部26にオイルシール24が設けられてもよい。
【0034】
このように構成されたリニアガイド20では、レール21上を転動体22aが移動すると、転動体22aは転動体循環路22b内を繰り返し循環移動する。この循環移動により、潤滑剤供給経路26b中に溜まった潤滑剤がレール21と転動体22aとの間に自動的に供給される。これにより、レール21と転動体22aとの間に潤滑剤が行き渡り、転動体22aがレール21上を滑らかに移動することが可能となる。
【0035】
図6を参照して、総合制御盤50について説明する。図6を含む各図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描く。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0036】
総合制御盤50は、状態取得部51と、指令制御部52と、通信制御部53とを備える。状態取得部51は、ホームドア制御部30から状態情報、全開信号及び全閉信号を取得する。指令制御部52は、車両61又は駅係員操作盤66から開要求信号または閉要求信号を受けたとき、開指令信号または閉指令信号をホームドア制御部30のドア制御部32に送信する。通信制御部53は、全開確認信号または全閉確認信号を車両情報伝送装置54に送信する。通信制御部53は、後述の取得指令をホームドア制御部30の取得部33に送信する。
【0037】
また、通信制御部53は、駅務室表示装置64や駅係員操作盤66に設けられている表示装置に所定の情報を送信する。一例として、これらの表示装置は、この情報に基づいて上り線及び下り線の引戸11の異常の有無等を表示する。また、通信制御部53は、駅とは離れた場所に設けられている総合司令室の総合司令室表示装置65に所定の情報を送信する。一例として、総合司令室表示装置65は、この情報に基づいて全ての駅の引戸11の異常の有無等を表示する。
【0038】
図6を参照する。ホームドア装置100は、開閉検出部41と、状態検出部43とを含む。開閉検出部41は、全開位置センサ41aと、全閉位置センサ41bと、を含む。全開位置センサ41aは、引戸11が全開位置に位置しているか否かを検出するセンサであり、引戸11が全開位置に位置することを示す全開位置信号を送信する。全閉位置センサ41bは、引戸11が全閉位置に位置しているか否かを検出するセンサであり、引戸11が全閉位置に位置することを示す全閉位置信号を送信する。例えば、全開位置センサ41a及び全閉位置センサ41bとして、磁気検出型の近接センサや光電センサが使用される。
【0039】
図2及び図3を参照する。本実施形態の状態検出部43は、膜厚センサ43aを含む。膜厚センサ43aは、レール21の表面に付着している潤滑剤の膜厚を測定する。本実施形態の膜厚センサ43aは、光学センサであり、例えば、レール21の表面に光を照射したときのレール21の表面での反射光と潤滑剤の膜表面での反射光との経路差に基づいて、膜厚を検出する。本実施形態の膜厚センサ43aは、戸袋10内に設けられる。本実施形態の膜厚センサ43aは、戸先側ガイドブロック22Ua(22La)及び戸尻側ガイドブロック22Ub(22Lb)との間に設けられる。本実施形態の膜厚センサ43aは、レール21U及び21Lの各々の下方に設けられるが、これに限定されず、レール21の表面に付着している潤滑剤の膜厚を測定可能な位置であればどの位置に設けられてもよい。また、膜厚センサ43aは、レール21U及び21Lの一方のみに設けられてもよい。
【0040】
図6を参照して、本実施形態のホームドア制御部30を説明する。ホームドア制御部30は、受信部31と、ドア制御部32と、取得部33と、送信部34と、を備える。受信部31は、外部から供給される各種信号を受信する。例えば、受信部31は、開閉検出部41から受信した全開位置信号又は全閉位置信号に基づいて、送信部34に全開信号又は全閉信号を供給する。ドア制御部32は、受信部31を介して受信した開指令信号または閉指令信号に応じて駆動部13のモータ13mを制御して引戸11を開閉する。取得部33は、受信部31を介して後述する状態情報を取得する。送信部34は、状態情報、全開信号又は全閉信号を総合制御盤50に送信する。
【0041】
ところで、リニアガイド20を用いたホームドア装置100を使用する際には、レール21及びガイドブロック22の各転動面と転動体22aの間で十分な潤滑を保つ必要がある。潤滑が十分でないまま使用すると、レール21及びガイドブロック22の各転動面と転動体22aとが直接接触して摩耗が増加し、レール21及びガイドブロック22の各転動面にフレーキング(剥離)が発生する場合がある。その結果、寿命の早期化が進む原因になるからである。そのため、ホームドア装置100では、レール21及び転動体22aとの間に潤滑剤を供給して十分な潤滑を保つことで、レール21及びガイドブロック22の摩耗を抑制する。
【0042】
一方で、潤滑剤は、引戸11の開閉等によって転動体22aがレール21上の移動を繰り返すにつれて減少又は劣化する。この減少又は劣化により、潤滑剤の潤滑性能が低下する。そのため、ホームドア装置100においては、潤滑剤を適宜補充又は交換する必要がある。ここで、本実施形態での「潤滑剤の交換」とは、ガイドブロック22自体を交換することで潤滑剤を新しくすることや、ガイドブロック22をオーバーホールして、潤滑剤供給部26に残留している潤滑剤を除去した後に潤滑剤を潤滑剤供給部26に供給することをいう。また、本実施形態での「潤滑剤の補充」とは、ガイドブロック22自体の交換やオーバーホールを行わずに、潤滑剤を潤滑剤供給部26に供給することをいう。
【0043】
良好な潤滑を保つためには、潤滑剤の補充又は交換の期間を短くして頻繁に潤滑剤を補充又は交換すればよい。しかし、この補充又は交換の期間を短くしすぎると補充又は交換作業者の負担が増加してしまう。そのため、適切な期間で補充又は交換を行うことが求められる。
【0044】
ここで、近年、引戸11が大型化し、同じ開閉回数でもガイドブロック22がレール21上を移動する際の移動距離や負荷が大きくなっている。その結果、ホームドア装置100において潤滑剤の補充又は交換前に潤滑剤が枯渇してしまった例がある。また、レール21の設置環境(屋内又は屋外等)によっても潤滑剤の減少度合いや劣化度合いが異なる。このように、潤滑剤の減少度合い及び劣化度合いは、そのリニアガイド20の使用状況や設置環境によってホームドア装置100毎に異なる。そのため、個々のホームドア装置100のリニアガイド20の状態を総合的に判断して、潤滑剤の補充又は交換の期間を定めることが望ましい。
【0045】
リニアガイド20の状態を把握するための方法として、例えば、引戸11を駆動するモータ13mの負荷の大きさを検出し、レール21とガイドブロック22の摺動抵抗の増加が検出された場合、潤滑剤の異常を知らせる方法が想定される。しかし、この摺動抵抗は、引戸11の建付け調整の変化等の潤滑剤の状態以外の要因によっても変化する。そのため、この方法では、摺動抵抗の変化が潤滑の不良によるものであるのか又は他の要因によるものであるのかの区別が難しいという点で改善の余地がある。
【0046】
また、摺動抵抗の増加が検出された時点で、既に潤滑剤の枯渇や潤滑剤への異物の混入が生じており、レール21及びガイドブロック22の摩耗が進行している場合が多い。そのため、リニアガイド20の短寿命化を抑制する点で改善の余地があった。
【0047】
上記を踏まえて、本実施形態のホームドア装置100の動作について説明する。
【0048】
図7のフローチャートを参照して、本実施形態のホームドア装置100のホームドア制御部30による動作S10を説明する。動作S10は、一定の期間(例えば、10ミリ秒)毎に繰り返し実行される。
【0049】
S11で、取得部33は、総合制御盤50から、受信部31を介してホームドア装置100に状態情報を取得させるための取得指令を受信したか否かを判定する。本実施形態では、総合制御盤50は、全てのホームドア制御部30から全閉信号を受けたことに応答して、各ホームドア制御部30の取得部33に取得指令を送信する。取得指令を受信しない場合(S11のN)、動作S10は終了する。取得指令を受信すると(S11のY)、動作S10はS12に進む。なお、総合制御盤50は、1つのホームドア制御部30から全閉信号を受けたことに応答して、そのホームドア制御部30の取得部33に取得指令を送信してもよい。
【0050】
S12で、取得部33は、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する。S12では、取得部33は、状態検出部43に検出指令を供給し、検出指令に応答して状態検出部43から供給された検出データを状態情報として取得する。本実施形態の状態情報は、レール21に付着している潤滑剤の状態を示す。具体的には、本実施形態の状態情報は、レール21に付着している潤滑剤の膜厚を示す。状態情報は、潤滑剤の状態を示す状態パラメータの値を含む。本実施形態の状態パラメータは、レール21に付着している潤滑剤の膜厚である。
【0051】
ここで、上記状態情報において、「レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の状態に関する状態情報を取得する」とは、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の状態を直接的に取得することと、この潤滑剤の状態を間接的に取得することとの両方の態様を含む。「レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤」とは、レール21の表面上の潤滑剤を含む。「レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の状態を間接的に取得する」とは、レール21と転動体22aとの間以外に存在する潤滑剤の状態に基づいて、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の状態を取得することをいう。また、この状態情報は、潤滑剤の状態を推定するためのものであってもよい。
【0052】
次に、本実施形態における膜厚センサ43aの検出態様について説明する。上述したように、リニアガイド20の使用により、レール21の表面には潤滑剤が塗布される。潤滑剤供給部26における潤滑剤の残量が少なくなってレール21と転動体22aとの間への潤滑剤の供給量が減少すると、レール21に付着している潤滑剤の膜厚が薄くなる。従って、この膜厚を測定することにより、潤滑剤供給部26における潤滑剤の残量を把握できる。
【0053】
取得部33は、取得した状態情報を送信部34に供給し、動作S10はS13に進む。
【0054】
S13で、送信部34は、取得した状態情報を総合制御盤50に送信する。本実施形態では、総合制御盤50は、受信した状態情報に基づいて、レール21に付着している潤滑剤の膜厚を駅務室表示装置64および総合司令室表示装置65に表示させる。S13の後、動作S10は終了する。
【0055】
本実施形態によると、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の状態を直接的に取得することができるため、潤滑剤の潤滑性能を精度良く把握することが可能となる。特に、本実施形態では、潤滑剤の状態としてレール21に付着している潤滑剤の膜厚が取得される。そのため、作業員は、潤滑剤供給部26における潤滑剤の残量を把握できることから、潤滑剤の補充作業を行うかどうかを判断できる。
【0056】
本実施形態では、取得部33は、総合制御盤50から、ホームドア装置100に状態情報を取得させるための取得指令を受信したことに応答して状態情報を取得する。送信部34は、取得した状態情報を総合制御盤50に送信する。本構成によると、総合制御盤50と連携して、潤滑剤の状態を監視することが可能となる。また、ホームドア制御部30において状態情報の記憶用に別途記憶部を設けなくてもよいため、ホームドア制御部30の低コスト化が可能となる。
【0057】
本実施形態では、状態検出部43は、戸袋10内に設けられる。この構成によると、潤滑剤にゴミ、埃、雨等の異物が比較的混入しにくい箇所で状態情報を取得することが可能となるため、検出精度の悪化が抑制される。
【0058】
[変形例]
本実施形態では、車両のプラットホームに設置されるホームドア装置100を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、工場の出入り口を開閉する引戸装置であってもよい。
【0059】
本実施形態では、S11及びS12において総合制御盤50が全閉信号を受信したことに応答して取得指令が送信されたが、これに限定されず、総合制御盤50が全開信号を受信したことに応答して取得指令が送信されてもよい。または、全開信号及び全閉信号の各々の受信に応答して取得指令が送信されてもよい。
【0060】
本実施形態では、取得部33は、取得指令の受信に応答して検出指令を供給したが、これに限定されない。取得部33は、開閉検出部41が引戸11の全開及び全閉の少なくとも一方を検出したときに検出指令を供給してもよい。この場合、状態情報は、開閉検出部41が引戸11の全開及び全閉の少なくとも一方を検出したときに、戸先側ガイドブロック22Ua(22La)及び戸尻側ガイドブロック22Ub(22Lb)との間に設けられた状態検出部43によって検出された潤滑剤の状態を示すことになる。本構成によると、1つの状態検出部43を用いる場合であっても、開動作の完了時には戸先側ガイドブロック22Ua(22La)の潤滑の状態を把握でき、閉動作の完了時には戸尻側ガイドブロック(22Lb)の潤滑の状態を把握できる。
【0061】
本実施形態では、レール21は引戸11に固定されたが、これに限定されず、レール21は戸袋10に固定されてもよい。
【0062】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0063】
図2及び図3を参照する。本実施形態では、状態検出部43は、測色センサ43bを含む。測色センサ43bは、潤滑剤に光を照射したときの反射光のスペクトルに基づいて、色度、明度、彩度や色相等の所定の表色系における色値を出力する。測色センサ43bは、レール21上に付着している潤滑剤の色値を測定する。本実施形態の測色センサ43bは、上述の膜厚センサ43aと同様に、戸先側ガイドブロック22Ua(22La)及び戸尻側ガイドブロック22Ub(22Lb)との間に設けられる。本実施形態の測色センサ43bは、光電センサである。
【0064】
本実施形態の状態情報は、レール21上に付着している潤滑剤の色を示す。本実施形態の状態パラメータは、レール21上に付着している潤滑剤の色である。上述したように、リニアガイド20の使用により、レール21の表面には潤滑剤が塗布される。この塗布された潤滑剤は、磨耗粉、水分、塵等の異物の混入により物理的に劣化する場合や、潤滑剤の構成成分の酸化、加水分解等の化学反応を伴う変質等により化学的に劣化する場合がある。レール21上で劣化した潤滑剤の大部分は、引戸11の開閉中にリップ部25によって削がれるため、ガイドブロック22の内部にほとんど混入しない。しかし、劣化した潤滑剤がリップ部25によって削ぎきれずにごく少量だけガイドブロック22の内部に混入してしまう場合がある。その結果、ガイドブロック22の内部の潤滑剤が外部から混入した潤滑剤と混ざり合うことにより劣化してしまう。潤滑剤が劣化すると、その明度が低下する。そのため、本実施形態では、測色センサ43bは、レール21上に付着している潤滑剤の色値を検出する。これにより、潤滑剤供給部26における潤滑剤の劣化度合いを把握できる。これにより、作業員は、潤滑剤の状態に基づいて潤滑剤の交換作業を行うかどうかを判断できる。
【0065】
本実施形態では、状態情報は、1つの状態パラメータ(潤滑剤の色)を含むが、これに限定されず、例えば潤滑剤の膜厚及び色の両方など複数の状態パラメータを含んでもよい。
【0066】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0067】
図8を参照する。本実施形態の状態検出部43は、抵抗検出センサ43cを含む。図8に示すように、レール21及びガイドブロック22を戸袋10や引戸11から絶縁するために、ガイドブロック22上には絶縁材28が設けられる。戸先側ガイドブロック22Ua(22La)及び戸尻側ガイドブロック22Ub(22Lb)には電極27が接続され、この電極27を介して、レール21及びガイドブロック22に電流が印加される。抵抗検出センサ43cは、このようにレール21及びガイドブロック22に電流を印加したときの抵抗値を検出する。
【0068】
本実施形態の状態情報は、レール21及びガイドブロック22に電流を印加したときに計測される抵抗値を示す。本実施形態の状態パラメータは、この抵抗値である。潤滑剤は、抵抗値が比較的高く、電流を流しにくい。そのため、潤滑剤供給部26に潤滑剤が十分に残存しレール21と転動体22aに十分な厚さの潤滑剤の膜が形成される場合、上記抵抗値は比較的高くなる。一方で、潤滑剤の減少によりレール21に付着している潤滑剤の膜厚が薄くなると、上記抵抗値は比較的小さくなる。また、潤滑剤にレール21等の摩耗粉が混入すると、上記抵抗値が小さくなる。従って、この抵抗値を検出することにより、レール21上に付着している潤滑剤の残量及び劣化度合いを把握できる。
【0069】
本実施形態では、引戸11の開又は閉動作中に上記抵抗値が検出される。引戸11の停止状態(引戸11の全閉又は全開状態)では、レール21と転動体22aとの間の潤滑剤が押し出されてレール21と転動体22aとが接触する。そのため、この停止状態では、上記抵抗値は比較的小さい。一方で、引戸11が開又は閉方向に動作すると、レール21と転動体22aとの間に潤滑剤が供給されるため、上記抵抗値は比較的大きい。しかし、潤滑剤供給部26において潤滑剤が不足し潤滑剤の供給量が少なくなると、レール21と転動体22aとの間に潤滑剤の膜厚が小さくなり上記抵抗値が比較的高くなる。
【0070】
本実施形態によると、引戸11の開又は閉動作中に上記抵抗値を検出することにより、開又は閉動作中に潤滑が有効になされているかどうかを確認することが可能となる。また、本実施形態によると、電源と電極のみで装置を構成できるため、安価で信頼性が高いホームドア装置100を実現可能である。
【0071】
なお、レール21及びガイドブロック22に電流を印加したときの電流の周波数を変化させたときに計測される、周波数に対する抵抗値(周波数と抵抗値の特性)を状態情報に含めてもよい。それにより、酸化や水分の混入などの劣化の具体的な状態を推定できる。
【0072】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0073】
図9を参照する。本実施形態の状態検出部43は、重量センサ43dを含む。重量センサ43dは、引戸11の開閉方向の移動によりレール21から落下した潤滑剤の重量を測定する。本実施形態の重量センサ43dは、受け部29に溜まった潤滑剤の重量を測定する。重量センサ43dは、例えばロードセルである。
【0074】
本実施形態では、オイルシール24のリップ部25の下には、引戸11の開閉方向の移動によりレール21から落下した潤滑剤を受ける受け部29が設けられる。例えば、受け部29は、リップ部25によって削がれることによりレール21におけるリップ部25との境界部分から落下した潤滑剤を受けることができる。受け部29は、リップ部25の下に位置付けられるようにガイドブロック22に設けられる。例えば、戸先側ガイドブロック22Ua(22La)に設けられる受け部29は、戸先側ガイドブロック22Ua(22La)の戸先側のオイルシール24のリップ部25の下に位置付けられる。戸尻側ガイドブロック22Ub(22Lb)に設けられる受け部29は、戸尻側ガイドブロック22Ub(22Lb)の戸尻側のオイルシール24のリップ部25の下に位置付けられる。
【0075】
本実施形態の状態情報は、上記実施形態のようなレール21に付着している潤滑剤の状態ではなく、レール21から剥離した潤滑剤の状態を示す。具体的には、本実施形態の状態情報は、受け部29に溜まった潤滑剤の重量を示す。本実施形態の状態パラメータは、受け部29に溜まった潤滑剤の重量である。引戸11の開閉によりリニアガイド20が使用されると、潤滑剤供給経路26b中の潤滑剤がレール21と転動体22aとの間に供給される。そのため、引戸11の開閉毎に潤滑剤供給経路26b中の潤滑剤の残量が減少する。また、引戸11の開閉により転動体22aとの摺動箇所において転動体22aを介してレール21に潤滑剤が塗布される。そのため、レール21の表面には潤滑剤が全体的に付着する。このレール21の表面に付着している潤滑剤は、引戸11の開閉によりレール21に隙間なく密着するリップ部25によって削がれる。レール21上のスライド移動を繰り返すことによってリップ部25によって削がれてオイルシール24に溜まった潤滑剤は、その自重によりレール21又はガイドブロック22から落下する。この落下した潤滑剤の重量分だけ、潤滑剤供給部26における潤滑剤の残量が減少すると考えられる。そのため、本実施形態では、重量センサ43dは、この落下した潤滑剤の重量を測定する。これにより、潤滑剤供給部26における潤滑剤の残量を把握できる。
【0076】
本実施形態では、状態情報としてレール21から落下した潤滑剤の状態を取得することにより、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の状態が間接的に取得される。本実施形態によると、比較的簡単な検出システムを用いて潤滑剤の状態を把握できる。
【0077】
本実施形態では、取得部33は、リップ部25によってレール21に付着している潤滑剤が削がれることによってレール21から落下した潤滑剤の重量を取得する。本構成によると、光学センサ等による複雑な検出システムを用いなくても、簡単な構成により潤滑剤の状態を把握できる。
【0078】
本実施形態の受け部29は、オイルシール24の下(例えば、リップ部25の下)に位置付けられるようにガイドブロック22に設けられる。ここで、引戸11の全開時及び全閉時には、引戸11が停止するため、停止したときの引戸11の振動により、リップ部25から潤滑剤が落下しやすくなる。その結果、ガイドブロック22の下に潤滑剤が溜まりやすくなる。本構成によると、レール21から落下した潤滑剤の重量を精度良く検出することが可能となる。その結果、潤滑剤の残量をより精度良く把握することが可能となる。
【0079】
本実施形態の受け部29は、ガイドブロック22に設けられたが、これに限定されず、戸袋10に設けられてもよい。ガイドブロック22の下の土台やレール21の下の床に受け部29が埋め込まれてもよい。
【0080】
また、引戸11に受け部29が設けられてもよい。この場合、図10(a)及び(b)に示すように、受け部29は、引戸11が全閉したとき及び全開したときにオイルシール24の下に位置付けられるように引戸11の戸先側及び戸尻側にそれぞれ設けられればよい。なお、受け部29は、引戸11において戸先側及び戸尻側の一方のみに設けられてもよい。
【0081】
本実施形態の状態情報は、潤滑剤の重量を示したが、これに限定されない。例えば、状態情報は、レール21から落下した潤滑剤が接触する面に対する潤滑剤の接触面積、レール21から落下した潤滑剤の体積及び潤滑剤の落下によって生じた衝撃荷重の累積値のうちの少なくとも1つを示してもよい。これらによっても、潤滑剤の残量を把握することが可能となる。
【0082】
上記潤滑剤の接触面積又は体積を取得する場合、状態検出部43としてカメラ等の撮像センサ43eを用いてこの接触面積又は体積が検出されればよい。この場合、撮像センサ43eは、レール21の開閉方向の移動範囲内におけるレール21の下にある潤滑剤を撮影可能な位置に配置される。例えば、撮像センサ43eは、乗降口E及び戸袋10内を視野に含むように配置される。具体的には、図11(a)及び(b)、図12に示すように、乗降口Eの床及び戸袋10内の床を受け部29として、これらの受け部29を視野に含むように戸袋10内及び戸先側支持部12に撮像センサ43eを配置すればよい。これにより、開閉動作中にレール21から落下して、乗降口Eの床及び戸袋10内の床に溜まった潤滑剤を監視できる。なお、撮像センサ43eは、下框15Lの上面を撮影可能な位置に配置されてもよい。これにより、レール21Uから落下して下框15Lの上面に溜まった潤滑剤を監視できる。さらに、撮像センサ43eは、図9図10(a)及び(b)に示した位置に配置された受け部29に溜まった潤滑剤を撮影可能な位置に配置されてもよい。これにより、リップ部25から落下して受け部29に溜まった潤滑剤を監視できる。
【0083】
また、衝撃荷重の累積値を取得する場合、受け部29に加わった衝撃荷重を電圧信号に変換する圧電式の衝撃検出センサ(不図示)が用いられればよい。この場合、点検等によって受け部29に溜まった潤滑剤が除去されてから現在までの間の電圧信号の和を求めることにより、衝撃荷重の累積値が検出されればよい。
【0084】
また、状態情報は、受け部29に溜まった潤滑剤の粘度を示してもよい。潤滑剤は、水分の混入や経年変化による分解により劣化し、潤滑剤の粘度が低下するとともに潤滑性能が低減する。従って、潤滑剤の粘度を取得することにより、潤滑剤の劣化度合いを把握できる。この場合、例えば受け部に溜まった潤滑剤を用いて回転式粘度計によって潤滑剤の粘度が検出されればよい。なお、状態情報は、受け部29に溜まった潤滑剤の色を示してもよい。
【0085】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0086】
図13を参照する。本実施形態のホームドア制御部30は、取得部33と、送信部34と、情報生成部35と、記憶部36と、を備える。本実施形態の情報生成部35は、潤滑剤供給部26における潤滑剤の残量を示す残量情報と、潤滑剤の劣化度合いを示す劣化情報と、を生成する。記憶部36は、潤滑剤の膜厚の値とこの膜厚について設定された基準値との差分に対する潤滑剤の残量の対応関係を示す第1対応関係データ36aと、潤滑剤の色値とこの色値について設定された基準値との差分に対する潤滑剤の劣化度合いの対応関係を示す第2対応関係データ36bとを記憶する。
【0087】
図14のフローチャートを参照して、本実施形態のホームドア装置100のホームドア制御部30による動作S30を説明する。動作S30において、S31及びS32の処理は、特に言及する場合を除いて上述したS11及びS12と同様であるため、その説明を省略する。
【0088】
S32において取得部33が状態情報を情報生成部35に供給すると、S33で、情報生成部35は、取得した状態情報における潤滑剤の膜厚の値に基づいて、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の残量を示す残量情報を生成する。具体的には、情報生成部35は、状態情報における潤滑剤の膜厚の値と基準値との比較に基づいて、残量情報を生成する。例えば、情報生成部35は、膜厚の値と基準値との差分を算出し、第1対応関係データ36aに基づいてその差分に対応する潤滑剤の残量の値を求める。情報生成部35は、求めた残量の値を残量情報として生成する。
【0089】
また、S33で、情報生成部35は、取得した状態情報における潤滑剤の色値に基づいて、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の劣化度合いを示す劣化情報を生成する。具体的には、情報生成部35は、状態情報における潤滑剤の色値と基準値との比較に基づいて、劣化情報を生成する。例えば、情報生成部35は、色値と基準値との差分を算出し、第2対応関係データ36bに基づいてその差分に対応する潤滑剤の劣化度合いを求める。情報生成部35は、求めた劣化度合いを劣化情報として生成する。
【0090】
基準値は、例えば、引戸11の開閉方向の長さ、所定期間内に引戸11が開閉される回数、ホームドア装置100の設置位置における屋根の有無及びホームドア装置100の設置位置での気温のうちの少なくともいずれか1つに基づいて設定される。引戸11の開閉方向の長さが大きい場合や所定期間内に引戸11が開閉される回数が多い場合、所定期間中における引戸11の合計移動距離が大きくなることが多いと考えられる。ホームドア装置100の設置位置での気温によって潤滑剤の粘性が変化する。ホームドア装置100の設置位置に屋根がない場合、ホームドア装置100が雨風に晒されることにより、潤滑剤に水分や塵等の異物が混入しやすくなる。したがって、上記長さ、開閉回数、屋根の有無、気温の少なくとも1つに基づいて基準値を設定することにより、上記長さ、開閉回数、屋根の有無、気温の影響を考慮することが可能になるため、潤滑剤の状態を精度よく取得することが可能となる。
【0091】
情報生成部35は、生成した残量情報及び劣化情報を送信部34に供給し、動作S30はS34に進む。S34で、送信部34は、残量情報及び劣化情報を総合制御盤50に送信する。本実施形態では、総合制御盤50は、受信した残量情報及び劣化情報に基づいて、潤滑剤の残量の値と潤滑剤の劣化度合いを駅務室表示装置64および総合司令室表示装置65に表示させる。これにより、作業員は、この残量の値と潤滑剤の劣化度合いに基づいて潤滑剤の補充又は交換作業を行うかどうかを判断できる。
【0092】
本実施形態によると、レール21と転動体22aとの間に存在する潤滑剤の残量と劣化度合いを把握できる。その結果、この潤滑剤の残量と劣化度合いに基づいて、潤滑剤の潤滑性能を具体的に把握することが可能となる。そのため、潤滑剤の補充及び交換の要否をより精度良く早期に判断することが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態では、残量情報及び劣化情報が生成及び送信されたがこれに限定されない。例えば、残量情報及び劣化情報のうちの一方が生成及び送信されてもよい。
【0094】
また、本実施形態では、状態情報における潤滑剤の膜厚の値又は色値と基準値との比較に基づいて、残量情報又は劣化情報が生成されたが、これに限定されない。例えば、基準値とは比較せずに、潤滑剤の膜厚の値又は色値に対する潤滑剤の残量又は劣化度合いの対応関係を示す対応関係データを用いて、膜厚の値又は色値に基づいて残量情報又は劣化情報が生成されてもよい。さらに、潤滑剤の膜厚を用いて残量情報が生成されたが、これに限定されず、潤滑剤の重量、上記抵抗値、上記接触面積、上記体積、上記衝撃荷重が用いられてもよい。潤滑剤の色を用いて劣化情報が生成されたが、これに限定されず、上記粘度、上記抵抗値が用いられてもよい。
【0095】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態の図面および説明では、第5実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第5実施形態と重複する説明を適宜省略し、第5実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0096】
図15を参照する。本実施形態の情報生成部35は、潤滑剤の補充の要否を示す補充要否情報と、潤滑剤の交換の要否を示す交換要否情報と、を生成する。記憶部36は、潤滑剤の膜厚に対する基準値と、潤滑剤の色値に対する基準値とを記憶する。
【0097】
図16のフローチャートを参照して、本実施形態のホームドア装置100のホームドア制御部30による動作S50を説明する。動作S50において、S51及びS52の処理は、特に言及する場合を除いて上述したS11及びS12と同様であるため、その説明を省略する。
【0098】
S52において取得部33が状態情報を情報生成部35に供給すると、S53で、情報生成部35は、取得した状態情報における潤滑剤の膜厚の値に基づいて、補充要否情報を生成する。具体的には、情報生成部35は、状態情報における潤滑剤の膜厚の値と基準値との比較に基づいて、補充要否情報を生成する。例えば、情報生成部35は、膜厚の値が基準値よりも小さい場合に、潤滑剤の補充が必要である旨を示す補充要否情報を生成する。情報生成部35は、膜厚の値が基準値以上である場合に、潤滑剤の補充が不要である旨を示す補充要否情報を生成する。
【0099】
また、S53で、情報生成部35は、取得した状態情報における潤滑剤の色値に基づいて、交換要否情報を生成する。具体的には、情報生成部35は、状態情報における潤滑剤の色値と基準値との比較に基づいて、交換要否情報を生成する。例えば、情報生成部35は、潤滑剤の色値が基準値よりも大きい場合に、潤滑剤の交換が必要である旨を示す交換要否情報を生成する。情報生成部35は、膜厚の値が基準値以下である場合に、潤滑剤の交換が不要である旨を示す補充要否情報を生成する。
【0100】
情報生成部35は、生成した補充要否情報及び交換要否情報を送信部34に供給し、動作S50はS54に進む。S54で、送信部34は、補充要否情報及び交換要否情報を総合制御盤50に送信する。本実施形態では、総合制御盤50は、補充推奨情報及び交換推奨情報に基づいて、潤滑剤の補充及び交換の要否を駅務室表示装置64および総合司令室表示装置65に表示させる。これにより、作業員は、この潤滑剤の補充及び交換の要否に基づいて潤滑剤の補充又は交換作業を行うかどうかを判断できる。このように、本実施形態によると、潤滑剤の補充及び交換の要否を把握することが可能となる。
【0101】
本実施形態では、補充要否情報及び交換要否情報が生成及び送信されたが、これに限定されず、補充要否情報及び交換要否情報のうちの一方が生成及び送信されてもよい。
【0102】
本実施形態では、補充要否情報及び交換要否情報が生成されたが、これに限定されない。例えば、潤滑剤の膜厚の値と基準値との差分に基づいて潤滑剤の補充タイミングを示す補充タイミング情報が生成されてもよく、潤滑剤の色値と基準値との差分に基づいて潤滑剤の交換タイミングを示す交換タイミング情報が生成されてもよい。この場合、記憶部36は、潤滑剤の膜厚の値と基準値との差分に対する潤滑剤の補充までの期間の対応関係や潤滑剤の色値と基準値との差分に対する潤滑剤の交換までの期間の対応関係を示す対応関係データを記憶すればよい。また、情報生成部35は、上記差分を算出し、対応関係データに基づいてその差分に対応する潤滑剤の補充又は交換までの期間を求めることにより、補充タイミング情報又は交換タイミング情報を生成してもよい。
【0103】
また、例えば、情報生成部35は、潤滑剤の膜厚の値が基準値以下である場合には、潤滑剤の補充を推奨する旨を報知するための補充推奨情報を生成してもよい。また、情報生成部35は、潤滑剤の色値が基準値以上である場合には、潤滑剤の交換を推奨する旨を報知するための交換推奨情報を生成してもよい。送信部34は、補充推奨情報及び交換推奨情報のうちの少なくとも1つを総合制御盤50に送信してもよい。
【0104】
なお、情報生成部35は、残量情報、劣化情報、補充要否情報及び交換要否情報のうちの少なくとも1つを生成してもよい。また、送信部34は、状態情報、残量情報、劣化情報、補充要否情報及び交換要否情報のうちの少なくとも1つを総合制御盤50に送信してもよい。
【0105】
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態を説明する。第7実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0106】
図17を参照する。本実施形態の取得装置70は、取得部33と、送信部34と、取得装置用受信部37と、状態検出部43と、取得装置70をホームドア装置100に取り付けるための取付部71と、を備える。本実施形態では、取得装置70は、取付部71を介してホームドア装置100に取り付けられる。取得装置70は、総合制御盤50には接続されずに、車両情報伝送装置63と、駅係員操作盤66と、取得装置用表示装置72と、に接続される。
【0107】
取得装置用受信部37は、車両情報伝送装置63と駅係員操作盤66とから閉要求信号又は開要求信号を受信する。取得部33は、取得装置用受信部37を介して閉要求信号又は開要求信号を受信したことに応答して、状態検出部43に検出指令を供給する。閉要求信号又は開要求信号は、引戸11の開閉動作を開始させるための開又は閉信号の一例である。送信部34は、取得装置用表示装置72に状態情報を送信する。
【0108】
取得装置用表示装置72は、駅務室表示装置64及び総合司令室表示装置65とは独立に設けられる。取得装置用表示装置72は、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、タブレット端末等によって実現される取得装置70専用の表示装置である。
【0109】
図18のフローチャートを参照して、本実施形態の取得装置70による動作S70を説明する。動作S70において、S71及びS72の処理は、特に言及する場合を除いて上述したS11及びS12と同様であるため、その説明を適宜省略する。
【0110】
S71で、取得部33は、取得装置用受信部37を介して閉要求信号又は開要求信号を受信したか否かを判定する。閉要求信号又は開要求信号を受信しない場合(S71のN)、動作S70は終了する。閉要求信号又は開要求信号を受信した場合(S71のY)、動作S70はS72に進む。
【0111】
S72で状態情報が取得された後、S73で、送信部34は、取得した状態情報を取得装置用表示装置72に送信する。本実施形態では、取得装置用表示装置72は、受信した状態情報に基づいて潤滑剤の状態(膜厚等)を表示する。S73の後、動作S70は終了する。
【0112】
本実施形態によると、ホームドア装置100の設置後であっても、取得装置70をホームドア装置100に取り付けることが可能である。そのため、ホームドア装置100がその設置時に状態情報を取得する機能を有さない場合であっても、設置後にその取得機能を付与することが可能となる。
【0113】
また、本実施形態によると、取得装置70は、総合制御盤50と情報を直接やり取りせずに、駅係員操作盤66と車両情報伝送装置63とから閉要求信号又は開要求信号に連動して状態情報を取得する。その結果、総合制御盤50のプログラムのアップデート等の既存の総合制御盤50の改造を要せずに、潤滑剤の状態情報を取得することが可能となる。そのため、本実施形態は、状態情報の取得機能を容易に付与できることから、潤滑剤の状態を一時的に監視する場合などに好適に利用可能である。
【0114】
本実施形態では、状態情報が送信部34によって送信されたが、これに限定されず、記憶部36を設けて記憶部36に状態情報が記憶されてもよい。
【0115】
[第8実施形態]
以下、本発明の第8実施形態を説明する。第8実施形態の図面および説明では、第7実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第7実施形態と重複する説明を適宜省略し、第7実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0116】
図19を参照する。本実施形態の取得装置70は、第7実施形態のように駅係員操作盤66と地上子62および車両情報伝送装置63とには接続されず、ホームドア装置100の開閉検出部41に接続される。取得装置用受信部37は、開閉検出部41から全閉位置信号と全開位置信号とを受信する。取得部33は、引戸11の全閉又は全開が検出されたことに応答して、状態情報を取得する。例えば、取得部33は、取得装置用受信部37を介して全閉位置信号又は全開位置信号を受信した場合に、状態情報を取得する。
【0117】
図20のフローチャートを参照して、本実施形態の取得装置70による動作S80を説明する。動作S80において、S82及びS83の処理は、上述したS72及びS73と同様であるため、その説明を省略する。
【0118】
S81で、取得部33は、開閉検出部41が引戸11の全閉又は全開を検出したか否かを判定する。例えば、取得部33は、開閉検出部41から全閉位置信号又は全開位置信号を受信した場合、引戸11の全閉を検出したと判定する。全閉又は全開が検出されない場合(S81のN)、動作S80は終了する。全閉又は全開が検出された場合(S81のY)、動作S80はS82に進む。
【0119】
本実施形態によると、取得部33は、開閉検出部41が引戸11の全閉又は全開を検出したことに連動して状態情報を取得する。本実施形態は、第7実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0120】
本実施形態では、開閉検出部41が引戸11の全閉を検出した場合に状態情報が取得されたが、これに限定されず、開閉検出部41が引戸11の全閉及び全開の少なくとも一方を検出した場合に状態情報が取得されてもよい。
【0121】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0122】
1 プラットホームドアシステム、 10 戸袋、 11 引戸、 13 駆動部、 20 リニアガイド、 21 レール、 22 ガイドブロック、 22a 転動体、 30 ホームドア制御部、 33 取得部、 34 送信部、 35 情報生成部、 43 状態検出部、 50 総合制御盤、 100 ホームドア装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20