(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】溶融金属用鍋内の固化金属塊を分離する固化金属塊分離方法
(51)【国際特許分類】
F27D 99/00 20100101AFI20240524BHJP
【FI】
F27D99/00
(21)【出願番号】P 2020140970
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】大出 哲也
(72)【発明者】
【氏名】榎田 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】中島 和也
(72)【発明者】
【氏名】古長 達廣
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩利
(72)【発明者】
【氏名】浜田 元
(72)【発明者】
【氏名】池田 信秀
(72)【発明者】
【氏名】奧村 裕之
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-126304(JP,A)
【文献】特開2020-2386(JP,A)
【文献】特開2011-74462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 99/00
F27D 25/00
C21B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属用鍋の鉄皮の内方に存在する耐火物に取り囲まれて固化した溶融金属の塊である固化金属塊を前記鉄皮から分離する固化金属塊分離方法であって、
前記耐火物の全周に亘って、前記耐火物の上面から底部に達するまで延びる孔を、間隔を開けて形成する工程と、
前記固化金属塊を前記鉄皮に対して引き上げて、前記固化金属塊と前記鉄皮とを分離する工程とを備えることを特徴とする固化金属塊分離方法。
【請求項2】
前記耐火物の底部は、前記溶融金属用鍋の鉄皮の内側底面から、該底面を覆う前記耐火物の上端面までの高さの範囲内にある部分であることを特徴とする請求項1に記載の固化金属塊分離方法。
【請求項3】
前記耐火物に形成された前記孔の間の隙間を、高圧水を噴射することにより破断する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の固化金属塊分離方法。
【請求項4】
前記固化金属塊にアンカーを設置し、前記アンカーを用いて前記固化金属塊を前記鉄皮に対して引き上げることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の固化金属塊分離方法。
【請求項5】
前記固化金属塊を前記鉄皮から分離した後、前記溶融金属用鍋の内部に残った耐火物を除去し、ついで新たな耐火物を前記溶融金属用鍋の鉄皮の内方に設置することを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の固化金属塊分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属用鍋の鉄皮の内方に存在する耐火物に取り囲まれて固化した溶融金属の塊である固化金属塊を前記鉄皮から分離する固化金属塊分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所などにおいて、溶銑を搬送するための溶銑鍋、溶鋼を搬送するための溶鋼鍋及び溶鋼を鋳型に注入する際に介在するタンディッシュなどの溶融金属用鍋(取鍋又は溶湯取鍋と称する場合がある)が用いられている。溶融金属用鍋は、鉄皮の内側に、搬入された溶融金属の高温に耐えられるように耐火レンガなどの耐火物が張り付けられて構成されている。
【0003】
地震や落雷などの天災による停電などの際に、安全確保のために製鉄工程の操業を長時間に亘って停止させた場合、溶融金属用鍋に収容されている溶融金属が固化して塊となる。溶融金属用鍋は、作製に長期間を要し、且つ操業工程毎の専用品である。そのため、操業を早期に再開するためには、内部に溶融金属が固化した溶融金属用鍋を再利用することが好ましい。溶融金属用鍋を再利用するためには、少なくとも溶融金属用鍋の内部で固化した溶融金属を除去する必要がある。しかし、固化した溶融金属の塊を除去することは、非常に手間であって作業完了まで長期間を要するため、通常は行われていなかった。
【0004】
容器内の固化金属塊を解体・搬出する技術として、以下の特許文献1,2に開示されている技術が知られている。特許文献1には、高炉内の残銑を解体する技術が開示されている。この技術においては、残銑の外周を取り囲む耐火レンガを撤去して代わりに砂などを満たし、この砂などをクッション材として残銑を発破することによって破壊している。
【0005】
また、特許文献2には、高炉内部の耐火レンガを解体除去する技術が開示されている。この技術においては、研磨材と高圧水からなる混合流体を噴射して耐火レンガを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4932972号公報
【文献】特開平9-53107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、固化した溶融金属の塊を除去することにより溶融金属用鍋を再利用することが望まれていた。なお、上記特許文献1に開示されている技術においては、発破解体を用いるため、容器である高炉に損傷を与えるおそれが高い。また、上記特許文献2に開示されている技術においては、耐火レンガが露出していて、研磨剤と高圧水とからなる混合流体を直接吹き付けことが可能な状態である必要がある。したがって、これらの技術を溶融金属用鍋に適用することは容易ではない。
【0008】
ところで、溶融金属用鍋を再利用するためには、少なくとも固化した溶融金属の塊、すなわち固化金属塊を溶融金属用鍋から分離する(除去する)必要がある。ただし、単に溶融金属用鍋から固化金属塊を分離すればよいのではなく、溶融金属用鍋の鉄皮に破損などの不具合をなるべく生じさせないように分離作業を行う必要がある。溶融金属用鍋の鉄皮に破損などの不具合を生じさせずに溶融金属用鍋から固化金属塊を分離することができれば、その後に簡易な作業(例えば耐火物の張替え等)を行うことによって溶融金属用鍋を再利用することができる。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、溶融金属用鍋の鉄皮になるべく不具合が生じないように固化した溶融金属の塊を除去することにより、溶融金属用鍋を再利用しやすい状態とすることが可能な固化金属塊分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、溶融金属用鍋の鉄皮の内方に存在する耐火物に取り囲まれて固化した溶融金属の塊である固化金属塊を前記鉄皮から分離する固化金属塊分離方法であって、前記耐火物の全周に亘って、前記耐火物の上面から底部に達するまで延びる孔を、間隔を開けて形成する工程と、前記固化金属塊を前記鉄皮に対して引き上げて、前記固化金属塊と前記鉄皮とを分離する工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の方法によれば、鉄皮から固化金属塊が分離されるので、鉄皮を再利用して新たな溶融金属用鍋を再生産(再利用)することが可能となる。より具体的に説明すると、耐火物に形成された孔は鉄皮に達しておらず、且つ、固化金属塊と鉄皮とを分離する際も耐火物が破断されるだけであるので、鉄皮に破損などの不具合が生じない。このため、固化金属塊を分離した後は、溶融金属用鍋の内部で耐火物を張り替える(すなわち、溶融金属用鍋の内方に残留した耐火物を除去し、ついで新たな耐火物を溶融金属用鍋の内方に設置する)ことで溶融金属用鍋を良好に再利用することができる。すなわち、本発明の方法により、溶融金属用鍋を再利用しやすい状態とすることが可能となる。また、間隔を開けて耐火物に孔を形成するので、連続して孔を形成する場合に対して、孔を形成する作業の削減を図ることが可能となると共に、所定の位置に傾斜せずに孔を形成することが容易となる。
【0012】
本発明の方法において、例えば、前記耐火物の底部は、前記溶融金属用鍋の鉄皮の内側底面から、該底面を覆う前記耐火物の上端面までの高さの範囲内にある部分であってもよい。
【0013】
この場合、溶融金属用鍋の鉄皮の内側底面の破損をより確実に防止することができる。
【0014】
本発明の方法において、前記耐火物に形成された前記孔の間の隙間を、高圧水を噴射することにより破断する工程をさらに含むことが好ましい。
【0015】
この場合、高圧水を噴射することにより、耐火物に形成された孔の間を簡易に破断することが可能となる。さらに、この部分を破断させることによって、固化金属塊と鉄皮とを分離する工程において、破断すべき耐火物が少なくなるので、固化金属塊を引き上げる力の削減を図ることが可能となる。
【0016】
また、本発明の方法において、前記固化金属塊にアンカーを設置し、前記アンカーを用いて前記固化金属塊を前記鉄皮に対して引き上げることが好ましい。
【0017】
この場合、固化金属塊を鉄皮に対して引き上げる作業の容易化を図ることが可能となる。
【0018】
また、本発明の方法において、前記固化金属塊を前記鉄皮から分離した後、前記溶融金属用鍋の内部に残った耐火物を除去し、ついで新たな耐火物を前記溶融金属用鍋の鉄皮の内方に設置してもよい。
【0019】
この場合、所謂耐火物の張り替えを行うだけで、溶融金属用鍋を再利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の上記観点によれば、溶融金属用鍋の鉄皮になるべく不具合が生じないように固化した溶融金属の塊を除去することにより、溶融金属用鍋を再利用しやすい状態とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る、固化金属塊が内部に残存した溶融金属用鍋の耐火物に孔を形成した状態を示す模式水平断面図。
【
図2】固化金属塊が内部に残存した溶融金属用鍋の耐火物に孔を形成している状態を示す模式縦断面図。
【
図3】隣り合う孔の間に存在する耐火物を破断させた状態を示す模式水平断面図。
【
図4】隣り合う孔の間に存在する耐火物を破断させた状態及び固化金属塊を引き上げる状態を示す模式縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る方法について図面を参照して説明する。
【0023】
溶融金属用鍋10は、製鉄所などにおいて、溶銑を搬送するための溶銑鍋、溶鋼を搬送するための溶鋼鍋及び溶鋼を鋳型に注入する際に介在するタンディッシュなどの溶融金属が収容される容器であり、取鍋、溶湯取鍋、溶融金属用容器などとも称される。
【0024】
図1及び
図2に示すように、溶融金属用鍋10は、鉄皮11の内側に、搬入された溶融金属の高温に耐えられるように耐火レンガなどの耐火物12が張り付けられて構成されている。溶融金属用鍋10は、上方が開口しており、この開口から溶融金属が注入される。溶融金属用鍋10は、ここでは、上方が開口した大略円柱形状であるが、その形状は用途などに応じて異なる。また、鉄皮11と耐火物12との間にライニング材などが存在していてもよい。
【0025】
製鉄所などが停電などの際に、安全確保のために操業を長期間に亘って停止させた場合、溶銑、溶鋼などの溶融金属が固化して、耐火物12の内部に固化した溶融金属が塊り(以下、固化金属塊という)Aとなって残存する。
【0026】
本発明は、鉄皮11を再利用して溶融金属用鍋10を再生産するために、溶融金属用鍋10内に残存した固化金属塊Aを鉄皮11から分離する方法に関する。本方法は、削孔工程、破断工程及び引上工程を備えている。
【0027】
まず、耐火物12の開口側の全周に亘って、削孔装置20を用いて、隣り合う孔12a同士に所定の間隔を開けて削孔する削孔工程が行われる。孔12aは、底部に位置する耐火物11の少なくとも上面に達するまで形成する。これにより、固化金属塊Aの外側に全周に亘って不連続な孔12aが形成される。耐火物12の底部とは、溶融金属用鍋10の鉄皮11の内側底面から、該底面を覆う耐火物11の上端面までの高さの範囲内にある部分である。この場合、溶融金属用鍋10の鉄皮11の内側底面の破損をより確実に防止することができる。なお、孔12aは、鉄皮11を損傷しないように、その内面に達する直前まで形成することが好ましい。さらに、孔12aは、耐火物12の厚さ方向の略中央部分に設けられることが好ましい。
【0028】
孔12aの直径は耐火物12の厚さ未満として、鉄皮11を良好に再利用することが可能なように鉄皮11を損傷させないことが好ましい。また、削孔装置20が破損しないように、固化金属塊Aを切削しないことが好ましい。
【0029】
なお、本願における孔12aとは、1台の削孔装置20を用いた1回の削孔作業において開く孔を意味する。図示しないが、1台の削孔装置が複数個のビットを備えており、1回の削孔作業において連続した複数個の孔が開けられる場合、これら連続した複数個の孔はまとめて本願における1個の孔となる。
【0030】
なお、孔12aを隙間を介在させずに連続して開けると、後で開ける孔12aが既に開いている孔12aの方に傾いて形成されるおそれが高まるので好ましくない。隣り合う孔12a同士の間隔は、破断工程において孔12aの間が破断して確実に連続することが可能なように定めればよい。なお、隣り合う孔12a同士の間隔は、このような間隔以下であれば、相違していてもよく、孔12aの直径と比較して大きくとも小さくともよい。
【0031】
削孔装置20として、例えば、山岳トンネル工事において岩盤にダイナマイト等の火薬類を充填するための発破孔を削孔する際などに使用するクローラードリル20を使用することが好ましい。クローラードリル20は、例えば、溶融金属用鍋10の上端と同程度の高さの作業架台30に走行可能に設置すればよい。
【0032】
クローラードリル20は、クローラー式の走行体21に穿孔装置22を搭載したものである。ここでは、走行体21に設置された旋回アーム23の先端に案内支柱24が取り付けられており、この案内支柱24に沿って、打撃力及び回転によって穿孔する穿孔機25が進退するように構成されている。
【0033】
そして、穿孔機25は、案内支柱24に摺動可能に設けられたドリフター26を備えており、このドリフター26は、中空ロッド27を打撃する機構及び回転させる機構を有すると共に、供給される圧縮空気が中空ロッド27を経てその先端のビット28の空気吐出
口から排出される。これにより、ビット28の打撃力及び回転力により耐火物A地盤を穿孔すると共に、粉砕粉を吹き飛ばす。これによって孔12aの上端まで吹き上げられた粉砕粉は、図示しないバキュームによって吸引され、回収されることが好ましい。
【0034】
次に、
図3及び
図4に示すように、隣り合う孔12aに存在する耐火物12を破断させる破断工程が行われる。この破断工程においては、隣り合う孔12aに存在する耐火物12を破断させて、鉄皮11と固化金属塊Aとの間に全周に亘って隙間12bを生じさせる。ただし、鉄皮11と固化金属塊Aとの間に部分的に耐火物12が破断されずに連続する部分が存在していてもよい。
【0035】
耐火物12の破断は高圧水を噴射することによって行うことが好ましい。具体的には、例えば山岳トンネル工事において発破孔の両側にノッチを設ける際に使用する高圧水噴射装置40を用い、この高圧水噴射装置40を孔12aの中に挿入した状態で高圧水を噴射することにより耐火物12を破断させればよい。
【0036】
高圧水噴射装置40として、例えば、給水管を兼ねた棒状のランス41の先端部に、左右2方向に高圧水噴射孔が形成された噴射部42が設置されたものを用いる。このように両方向に高圧水を噴射する高圧水噴射装置40を用いた場合、1つの孔12aに挿入することにより両方向に隣り合う孔12aとの間に存在する耐火物12を破断可能であるので、1つおきの孔12aに高圧水噴射装置40を挿入させればよいため、作業効率に優れたものとなる。噴射する高圧水の圧力は、耐火物12を破壊可能な程度とする。
【0037】
高圧水噴射装置40は、高圧水を噴射させながら孔12aの底部から上方に向って順次連続的に移動させることが好ましい。これにより、隣り合う孔12aの間に残存する耐火物12の全長に亘って隙間12bを形成して破断することができる。また、高圧水を噴射させながら孔12aの上部から下方に向って順次連続的に移動させることと比較して、移動が容易であるので、作業の簡易化を図ることが可能となる。なお、高圧水噴射装置40は、耐火物12の上面で作業を行う作業者が高圧水に触れてけがをすることのないよう、安全のために、耐火物12の上面より下方において高圧水の噴射を停止することが好ましい。
【0038】
また、破断工程は、引上工程と同時に行ってもよい。すなわち、高圧水で隙間12bを形成することなく、引上工程において、固化金属塊Aを引き上げた際に、隣り合う孔12aの間に存在する耐火物12に隙間12bが生じて破断するものであってもよい。
【0039】
次に、固化金属塊Aを鉄皮11に対して引き上げる引上工程が行われる。この引上工程においては、固化金属塊Aをこれの外周表面に残存した耐火物12と共に、外皮11及びこれの内周表面に残存像した耐火物12に対して引き上げることによって、分離させる。引上工程の開始時には、固化金属塊Aの底面と鉄皮11の底部の上面との間には耐火物12がほぼ全面に亘って残存している。この残存した耐火物12が引きちぎれる、又は引き裂かれるなどによって破断するように、固化金属塊Aを大型クレーンなどの引上装置50を用いて引き上げる。
【0040】
固化金属塊Aから分離された鉄皮11は、破損などの不具合などがないので、内面に残存する耐火物12などを除去したうえで良好に再利用することができる。なお、
図4においては、破断工程において用いる高圧水噴射装置40と引上工程において用いる引上装置50などが共に存在しているが、これは単なる図示であり、これらが共に使用されることはない。
【0041】
そして、固化金属塊Aにアンカー51を設置して、このアンカー51を利用して引上装置50で固化金属塊Aを引き上げることが好ましい。アンカー51は、例えば、固化金属塊Aが溶鋼が固化した塊の場合、溶接によって固化金属塊Aに設置すればよい。また、固化金属塊Aが銑鉄が固化した塊の場合、固化金属塊Aに穴を形成し、この穴に溶剤の入ったカプセルを挿入し、アンカー51によってカプセルを破壊することにより、溶剤の化学反応を起こしてアンカー51を固定させるケミカルアンカー(登録商標)を用いて固化金属塊Aにアンカー51を設置すればよい。
【0042】
また、図示しないが、削孔工程で耐火物12に形成した孔12a又は破断工程で破断させた耐火物12の隙間12bにジャッキなどの伸縮装置を設置し、これら孔12a又は耐火物12の隙間12bを拡げることによって、固化金属塊Aの底面と鉄皮11の底部の上面との間に残存する耐火物12の少なくとも一部を破断させることも好ましい。さらに、固化金属塊Aに設置したアンカー51と鉄皮11との間にジャッキなどの伸縮装置を設置し、これらの間の間隔を拡げることによっても、残存する耐火物12の少なくとも一部を破断させることも好ましい。
【0043】
なお、引上工程において、固化金属塊Aを引き上げることが可能な引上装置50を用意できない場合、又は、固化金属塊Aの底面と鉄皮11の底部の上面との間に残存する耐火物12を破断できる程度の引き上げ力を有する引上装置50が用意できない場合、固化金属塊Aを複数個に切断すればよい。この際、固化金属塊Aを切断することが可能な切断装置(例えばワイヤーソー)を用いて、固化金属塊Aの全高さに亘って切断する。
【0044】
そして、切断した個々の固化金属塊にアンカー51などを設置し、引上装置50を用いて、固化金属塊を引き上げて、個々の固化金属塊の底面と鉄皮11の底部の上面との間に残存する耐火物12を破断して、個々の固化金属塊を個別に引き上げる。
【0045】
本実施形態の方法によれば、上述したように、鉄皮11から固化金属塊Aが分離されるので、鉄皮11を再利用して新たな溶融金属用鍋10を再生産(再利用)することが可能となる。より具体的に説明すると、耐火物12に形成された孔12aは鉄皮11に達しておらず、且つ、固化金属塊Aと鉄皮11とを分離する破断工程及び引上工程を行う際も耐火物12が破断されるだけであるので、鉄皮11に破損などの不具合が生じない。このため、その後は、溶融金属用鍋10の内部で耐火物12を張り替える(すなわち、溶融金属用鍋10の内方に残留した耐火物12を除去し、ついで新たな耐火物12を溶融金属用鍋10の内方に設置する)ことで溶融金属用鍋10を良好に再利用することができる。すなわち、本実施形態によって固化金属塊Aを除去することで、溶融金属用鍋10を再利用しやすい状態とすることが可能となる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した方法に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。例えば、削孔装置20はクローラードリルではなく、スロットドリルやコアカッタでもよい。また、必ずしも走行体21は必要ではなく、穿孔機25が移動・設置可能な形態であればよい。
【符号の説明】
【0047】
10…溶融金属用鍋、 11…鉄皮、 12…耐火物、 12a…孔、 12b…隙間、 20…削孔装置、クローラードリル、 21…走行体、 22…穿孔装置、 23…旋回アーム、 24…案内支柱、 25…穿孔機、 26…ドリフター表示部、 27…中空ロッド、 28…ビッド、 30…作業架台、 40…高圧水噴射装置、 41…ランス、 42…噴射部、 50…引上装置、 51…アンカー、 A…固化金属塊。