(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光通信モジュール及び積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20240524BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240524BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240524BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240524BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240524BHJP
【FI】
H05K1/18 K
H05K1/18 S
H01F17/00 D
H01F17/04 F
H01F27/29 123
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2020151184
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2022-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】比留川 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】高井 駿
(72)【発明者】
【氏名】越路 健二郎
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】高野 洋
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186255(JP,A)
【文献】特開2004-200279(JP,A)
【文献】特開2012-160497(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152206(WO,A1)
【文献】特開2019-220909(JP,A)
【文献】特開平10-341027(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030261(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/008530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/18
H01F17/00-17/08
H01F27/28-27/32
H01S5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が金層であるランドを備えた基板と、
前記基板に実装された積層型コイル部品とを備える光通信モジュールであって、
前記積層型コイル部品は、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体と、前記積層体の表面に設けられて前記コイルに電気的に接続された外部電極とを有し、
前記外部電極は、前記外部電極の最外層に位置する金被膜を備えており、
前記外部電極の前記金被膜が、前記基板の前記ランドの前記金層と金スズはんだを介して接合されており、
前記基板には前記積層型コイル部品以外の電子部品としてのICが実装されており、前記ICと前記積層型コイル部品が隣接して実装されており、
周波数60GHz以上の領域で使用されることを特徴とする光通信モジュール。
【請求項2】
前記積層型コイル部品において、
前記積層体は、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、前記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1主面及び第2主面と、前記長さ方向及び前記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有し、
前記外部電極は、前記積層体の前記第1端面の少なくとも一部から前記第1主面の一部にわたって延在する第1外部電極と、前記積層体の前記第2端面の少なくとも一部から前記第1主面の一部にわたって延在する第2外部電極とを有し、
前記第1主面が実装面であり、
前記積層体の積層方向及び前記コイルのコイル軸が前記実装面に平行である、請求項
1に記載の光通信モジュール。
【請求項3】
前記金被膜の厚さは0.4μm以上、1.2μm以下である請求項
1又は2に記載の光通信モジュール。
【請求項4】
前記外部電極は、前記金被膜よりも前記積層体側に位置するニッケル被膜を備えている請求項1~
3のいずれかに記載の光通信モジュール。
【請求項5】
前記ニッケル被膜の厚さは1.5μm以上、4.5μm以下である請求項
4に記載の光通信モジュール。
【請求項6】
前記外部電極は、銀を含み、前記積層体に接する下地電極層を備えている請求項1~
5のいずれかに記載の光通信モジュール。
【請求項7】
前記絶縁層は、フェライト相と、フェライト相を構成するフェライト材料よりも誘電率の低い材料からなる非磁性体相とを有している請求項1~
6のいずれかに記載の光通信モジュール。
【請求項8】
前記フェライト相及び前記非磁性体相の合計体積に対する前記非磁性体相の体積割合は55体積%以上、80体積%以下である請求項
7に記載の光通信モジュール。
【請求項9】
前記非磁性体相の合計体積に対するフォルステライトの体積割合が2体積%以上、8体積%以下である請求項
7又は8に記載の光通信モジュール。
【請求項10】
前記絶縁層は、
BをB
2O
3に換算して4.3重量%以上8.0重量%以下、
SiをSiO
2に換算して27.6重量%以上51.4重量%以下、
MgをMgOに換算して1.1重量%以上2.1重量%以下、
FeをFe
2O
3に換算して24.7重量%以上43.5重量%以下、
NiをNiOに換算して3.3重量%以上5.9重量%以下、
ZnをZnOに換算して7.7重量%以上13.5重量%以下、
CuをCuOに換算して2.0重量%以上3.6重量%以下、含有する請求項1~
9のいずれかに記載の光通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信モジュール及び積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、外部電極とを備える積層型コイル部品が開示されている。
この積層型コイル部品は、高周波特性に優れるものとされており、40GHz、50GHzでの透過係数S21が特定の値以上であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光通信モジュールにおいては、レーザーダイオードやEML(電界吸収型変調器集積型レーザ)などの発光素子を内部に有し、電気信号を光信号に変換して送信する光送信モジュール(TOSA:Transmitter Optical Subassembly)や、内部にフォトダイオードに代表される受光素子を有し、受信した光信号を電気信号に変換する光受信モジュール(ROSA:Receiver Optical Subassembly)や、これらの両方の機能を内包した双方向モジュール(BOSA:Bidirectional Optical Subassembly)などが使用される。
【0005】
TOSAの場合を例にして光通信モジュールの構造の例を説明する。
TOSAには電気信号が伝送(伝達)されるリード端子が挿入され、TOSAに電気信号が導入される。TOSA内には基板が設けられており、基板には電気-光変換器としての電子部品であるICや発光素子が実装されている。
TOSAに導入された電気信号は、基板内の配線、IC及び発光素子を経て光信号に変換される。
【0006】
特許文献1に記載されたような積層型コイル部品は、光通信モジュールにおいて、レーザーダイオード等にDC電圧を印加する際に、高周波信号が電源ラインに流れ込むのを防止するために使用される。この積層型コイル部品は外部電極にニッケル被膜及びスズ被膜を有しており、TOSA等の光通信モジュールがさらに実装されるマザー基板に実装されて、TOSA内の配線と電気的に接続されて使用されている。
【0007】
近年、光通信における使用されるデータ転送レートが高速化し、周波数60GHz以上の領域での損失を低減することが要求されるようになってきた。このような領域では、積層型コイル部品と光通信モジュールとを接続する配線の配線長に起因するインダクタンス成分の影響による損失が無視できなくなる、という問題が生じていた。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、積層型コイル部品を備え、高周波領域での損失が低減された光通信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光通信モジュールは、表面が金層であるランドを備えた基板と、上記基板に実装された積層型コイル部品とを備える光通信モジュールであって、上記積層型コイル部品は、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体と、上記積層体の表面に設けられて上記コイルに電気的に接続された外部電極とを有し、上記外部電極は、上記外部電極の最外層に位置する金被膜を備えており、上記外部電極の上記金被膜が、上記基板の上記ランドの上記金層と金スズはんだを介して接合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の積層型コイル部品は、本発明の光通信モジュールに実装される積層型コイル部品であって、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体と、上記積層体の表面に設けられて上記コイルに電気的に接続された外部電極とを有し、上記外部電極は、上記外部電極の最外層に位置する金被膜を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層型コイル部品を備え、高周波領域での損失が低減された光通信モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の光通信モジュールの内部とその周辺構造を示す模式図である。
【
図2】
図2は、従来の光通信モジュールの内部とその周辺構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光通信モジュール及び積層型コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成及び態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成及び態様を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
TOSA等の光通信モジュールに設けられた基板は、表面が金層であるランドを備えており、当該ランドに対して電子部品が実装される。このランドに対しては、金スズはんだにより電子部品を実装することが一般的である。
特許文献1に記載された積層型コイル部品は、外部電極にニッケル被膜及びスズ被膜を有しているが、このような外部電極を有する電子部品を金スズはんだを介して表面が金層であるランドに実装することはできない。
すなわち、光通信モジュールに設けられた、表面が金層であるランドを備えた基板に対して特許文献1に記載された積層型コイル部品を直接実装することはできない。そのため、積層型コイル部品を当該基板の外部に実装する必要があり、このことが積層型コイル部品と光通信モジュールとを接続する配線の配線長が長くなる原因となっていた。
【0015】
そこで、本発明の光通信モジュールにおいては、外部電極として、外部電極の最外層に位置する金被膜を備えている積層型コイル部品を使用することとした。
外部電極の最外層が金被膜となっていれば、金スズはんだによって、表面が金層であるランドに対する実装を行うことができるため、光通信モジュールが備える基板に積層型コイル部品を直接実装することができる。そのため、積層型コイル部品と光通信モジュールを構成する他の構成要素とを接続する配線の配線長を短くすることができ、配線のインダクタンス成分に起因する損失を低減できる。すなわち、積層型コイル部品を備え、高周波領域での損失が低減された光通信モジュールを提供することができる。
【0016】
このような光通信モジュールの実施形態の例について、以下に説明する。
図1は、本発明の光通信モジュールの内部とその周辺構造を示す模式図である。
図1に示す光通信モジュール100は、マザー基板200に実装されている。光通信モジュール100は、底面が基板60となっている外装体90を有していて、基板60に積層型コイル部品1、IC110、及び、レーザーダイオード120が実装されている。光通信モジュール100は発光素子であるレーザーダイオード120を備えているので光送信モジュール(TOSA)として機能する。
IC110及びレーザーダイオード120は、光通信モジュール100が備える積層型コイル部品1以外の電子部品である。
なお、
図1では外装体90の内部を模式的に示しており、レーザーダイオード120からは発光の矢印を示している。
【0017】
基板60は表面が金層であるランド70を備える。基板60が備えるランド70にIC110、レーザーダイオード120がそれぞれ実装されている。ランド70とIC110の間の接続は金ワイヤ111によりなされており、ランド70とレーザーダイオード120の間の接続は金スズはんだ50によりなされている。これらの電子部品とランドの間の接続形式は上記形式に限定されるものではない。
【0018】
基板60が備える、表面が金層であるランド70の構成は、その表面が金層になっていればその構成は特に限定されるものではない。金層の下にニッケル層があることが好ましい。金層の下にニッケル層が存在すると、はんだ食われを防止することができる。
また、ランド70は、全体が金層からなるランドであってもよい。また、銅からなるランドの上にニッケル層及び金層が設けられた構成であってもよい。
【0019】
基板60に実装される、積層型コイル部品1以外の電子部品としては、IC、レーザーダイオードの他に、LED素子、フォトダイオード、抵抗、キャパシタ等が挙げられる。
光通信モジュールが電子部品としてフォトダイオード等の受光素子を備える場合は、光受信モジュール(ROSA)として機能する。
また、光通信モジュールが電子部品として発光素子と受光素子を備える場合は、双方向モジュール(BOSA)として機能する。
【0020】
基板60には積層型コイル部品1が実装されている。
積層型コイル部品1の構造の詳細については後述するが、積層型コイル部品1は、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体10と、積層体10の表面に設けられてコイルに電気的に接続された外部電極20とを有する。
外部電極20は、外部電極20の最外層に位置する金被膜を備えている。外部電極の層構成の詳細については後述する。
また、積層型コイル部品1は外部電極20として第1外部電極21と第2外部電極22を有している。
【0021】
積層型コイル部品1の外部電極20が備える金被膜は、基板60のランド70の表面の金層と金スズはんだ50を介して接合されている。
積層型コイル部品1は、その外部電極20の最外層が金被膜であることから、金スズはんだ50を使用してランド70の表面の金層との接合を行うことができる。
金スズはんだの組成は、金とスズを含有するものであれば特に限定されるものではないが、Au82Sn18、Au80Sn20、Au79Sn21、AuSn21.5、Au78Sn22等の組成を使用することができる。
【0022】
積層型コイル部品1を表面が金層であるランド70に接合できると、積層型コイル部品1を光通信モジュール100の中に配置することができる。
そのため、積層型コイル部品1と光通信モジュール100の中に配置された他の電子部品とを接続する配線の配線長を短くすることができる。
【0023】
本発明の光通信モジュールでは、基板には積層型コイル部品以外の電子部品が実装されており、電子部品と積層型コイル部品が隣接して実装されていることが好ましい。
本明細書では、電気的に接続される積層型コイル部品のランドと電子部品のランドの間を最短距離で結んだ直線の間に他の電子部品が存在しない場合に、電子部品と積層型コイル部品が隣接しているものとする。
電子部品と積層型コイル部品が隣接して実装されていると、電子部品と積層型コイル部品とを接続する配線の配線長が短いので、配線のインダクタンス成分に起因する損失をより低減することができる。
【0024】
また、本発明の光通信モジュールにおいて、積層型コイル部品と隣接して実装されている電子部品は、ICであることが好ましい。
図1には、積層型コイル部品1が電子部品であるIC110と隣接して実装されている状態を示している。積層型コイル部品1とIC110とを接続する配線の配線長は、積層型コイル部品1が実装されるランド70と、IC110が実装されるランド70とを接続する配線80の長さである。
【0025】
図1に示す配線80の長さと対比するために、従来の光通信モジュールにおける積層型コイル部品と電子部品の間の配線の長さにつき、
図2を参照して説明する。
図2は、従来の光通信モジュールの内部とその周辺構造を示す模式図である。
図2に示す光通信モジュール100´は、マザー基板200に実装されている。積層型コイル部品1´は、光通信モジュール100´の外でマザー基板200に実装されている。
積層型コイル部品1´は、
図1に示す積層型コイル部品1と外部電極の構成が異なり、外部電極20´の最表面がスズ被膜となっている。
積層型コイル部品1´の外部電極20´が備えるスズ被膜は、マザー基板200のランド270に対して、はんだ250を介して接合されている。
マザー基板200のランド270は表面が金層であるランドではないため、積層型コイル部品1´の外部電極20´と、金スズはんだではないはんだ250により接合される。
【0026】
図2に示す態様では、光通信モジュール100´の中に配置された電子部品であるIC110と積層型コイル部品1´とを接続する配線の配線長が長くなる。積層型コイル部品1´とIC110とを接続する配線の配線長は、積層型コイル部品1´が実装されるランド270と、IC110が実装されるランド70とを接続する配線280の長さである。
【0027】
図1に示す配線80の長さと
図2に示す配線280の長さを比べると、
図1に示す配線80の方が短くなる。すなわち、この長さの低減分だけ配線のインダクタンス成分に起因する損失を低減できる。
本発明の光通信モジュールは、このような構成を有することにより、高周波領域での損失が低減された光通信モジュールとなる。この光通信モジュールは、周波数60GHz以上の領域での使用に特に適したものとなる。
【0028】
続いて、本発明の光通信モジュールに使用することができる積層型コイル部品について説明する。
以下に示す積層型コイル部品は、本発明の積層型コイル部品でもある。
本発明の積層型コイル部品は、本発明の光通信モジュールに実装される積層型コイル部品であって、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり内部にコイルが設けられた積層体と、上記積層体の表面に設けられて上記コイルに電気的に接続された外部電極とを有し、上記外部電極は、上記外部電極の最外層に位置する金被膜を備えていることを特徴とする。
【0029】
図3は、積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図3に示す積層型コイル部品1は、積層体10と第1外部電極21と第2外部電極22とを備えている。積層体10は、6面を有する略直方体形状である。積層体10の構成については後述するが、複数の絶縁層が積層方向に積層されてなり、内部にコイルが設けられている。第1外部電極21及び第2外部電極22は、それぞれ、コイルに電気的に接続されている。
【0030】
本明細書における積層型コイル部品及び積層体では、長さ方向、高さ方向、幅方向を、
図3におけるx方向、y方向、z方向とする。ここで、長さ方向(x方向)と高さ方向(y方向)と幅方向(z方向)は互いに直交する。
長さ方向(x方向)は積層方向と平行な方向である。
【0031】
図3に示すように、積層体10は、長さ方向(x方向)に相対する第1端面11及び第2端面12と、長さ方向に直交する高さ方向(y方向)に相対する第1主面13及び第2主面14と、長さ方向及び高さ方向に直交する幅方向(z方向)に相対する第1側面15及び第2側面16とを有する。
【0032】
図3には示されていないが、積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0033】
第1外部電極及び第2外部電極は、積層体の端面の少なくとも一部から積層体の主面にわたって延在する外部電極である。
図3に示す積層型コイル部品1では、第1外部電極21は、積層体10の第1端面11の一部を覆い、かつ、第1端面11から延伸して第1主面13の一部を覆って配置されている。
【0034】
なお、
図3では、積層体10の第1端面11を覆う部分の第1外部電極21の高さは一定であるが、積層体10の第1端面11の一部を覆う限り、第1外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1端面11において、第1外部電極21は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1主面13を覆う部分の第1外部電極21の長さは一定であるが、積層体10の第1主面13の一部を覆う限り、第1外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1主面13において、第1外部電極21は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0035】
図3に示すように、第1外部電極21は、さらに、第1端面11及び第1主面13から延伸して、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1側面15及び第2側面16を覆う部分の第1外部電極21は、いずれも、第1端面11と交わる稜線部及び第1主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第1外部電極21は、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0036】
図3に示す積層型コイル部品1では、第2外部電極22は、積層体10の第2端面12の一部を覆い、かつ、第2端面12から延伸して第1主面13の一部を覆って配置されている。
第1外部電極21と同様、第2外部電極22は、第2端面12のうち、第1主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っている。
【0037】
第1外部電極21と同様、積層体10の第2端面12の一部を覆う限り、第2外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第2端面12において、第2外部電極22は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1主面13の一部を覆う限り、第2外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1主面13において、第2外部電極22は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0038】
第1外部電極21と同様、第2外部電極22は、さらに、第2端面12及び第1主面13から延伸して、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1側面15及び第2側面16を覆う部分の第2外部電極22は、いずれも、第2端面12と交わる稜線部及び第1主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第2外部電極22は、第1側面15の一部及び第2側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0039】
以上のように第1外部電極21及び第2外部電極22が配置されているため、積層型コイル部品1を基板上に実装する場合には、積層体10の第1主面13が実装面となる。
【0040】
また、
図3に示す形態とは異なり、第1外部電極が、積層体の第1端面の全部を覆い、かつ、第1端面から延伸して第1主面の一部、第2主面の一部、第1側面の一部、及び、第2側面の一部を覆っていてもよい。
また、第2外部電極が、積層体の第2端面の全部を覆い、かつ、第2端面から延伸して第1主面の一部、第2主面の一部、第1側面の一部、及び、第2側面の一部を覆っていてもよい。
この場合、積層体の第1主面、第2主面、第1側面及び第2側面のいずれかが実装面となる。
【0041】
外部電極は、外部電極の最外層に位置する金被膜を備えている。
上述したように、外部電極の最外層が金被膜であると、金スズはんだを使用してランドの表面の金層との接合を行うことができる。
【0042】
また、外部電極の金被膜の厚さは0.4μm以上、1.2μm以下であることが好ましい。また、金被膜の厚さは0.7μm以上であることがより好ましい。
【0043】
外部電極は、金被膜よりも積層体側に位置するニッケル被膜を備えていることが好ましい。
金被膜の内側(積層体側)にニッケル被膜を有することにより、ニッケル被膜がバリヤ層として機能してはんだ食われを防止することができる。ここでいうはんだ食われとは、はんだ付けの際に、外部電極におけるニッケル被膜のさらに内側の層(銀を含む下地電極層等)が溶けだしてしまう現象である。
【0044】
外部電極がニッケル被膜を備える場合、ニッケル被膜の厚さは1.5μm以上、4.5μm以下であることが好ましい。
【0045】
外部電極は、銀を含む下地電極層を備えていることが好ましい。この下地電極層は、積層体に接する層であることが好ましい。
そして、外部電極の構成としては、下地電極層の上にニッケル被膜及び金被膜が順に形成されていることが好ましい。
外部電極が下地電極層を有することにより、積層体と下地電極層の接合強度が高いために、積層体と外部電極の接合強度を高くすることができる。
【0046】
積層型コイル部品のサイズは特に限定されないが、0603サイズ、0402サイズ又は1005サイズであることが好ましい。
【0047】
絶縁層は、フェライト相と、フェライト相を構成するフェライト材料よりも誘電率の低い材料からなる非磁性体相とを有することが好ましい。
また、絶縁層がフェライト相のみであってもよく、非磁性体相のみであってもよい。
【0048】
フェライト相はフェライト材料を有する相であり、フェライト材料のみからなる相であってもよい。
【0049】
フェライト相は、Ni-Cu-Zn系フェライト材料で構成されることが好ましい。フェライト相がNi-Cu-Zn系フェライト材料で構成されることにより、積層型コイル部品のインダクタンスが高まる。
【0050】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、40mol%以上、49.5mol%以下のFe2O3と、5mol%以上、35mol%以下のZnOと、4mol%以上、12mol%以下のCuOと、残部であるNiOと、を含むことが好ましい。これらの酸化物は、不可避不純物を含んでいてもよい。
【0051】
Ni-Cu-Zn系フェライト材料は、Mn3O4、Bi2O3、Co3O4、SnO2等の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0052】
また、フェライト相は、元素分析した場合にFeを含む相であり、Fe、Zn、Cu、及び、Niを含んでいることが好ましい。また、フェライト相は、Mn、Bi、Co、Sn等をさらに含んでいてもよい。
【0053】
フェライト相は、Fe2O3換算で40mol%以上、49.5mol%以下のFeと、ZnO換算で2mol%以上、35mol%以下のZnと、CuO換算で6mol%以上、13mol%以下のCuと、NiO換算で10mol%以上、45mol%以下のNiと、を含むことが好ましい。
【0054】
非磁性体相は、フェライト材料よりも誘電率の低い材料からなる相である。
非磁性体相を構成する材料としては、ガラス材料、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ウィルマイト[aZnO・SiO2(aは、1.8以上、2.2以下)]等が挙げられる。ガラス材料としては、ホウケイ酸ガラスが好ましい。
ホウケイ酸ガラスは、SiをSiO2に換算して80重量%以上、85重量%以下、BをB2O3に換算して10重量%以上、25重量%以下、アルカリ金属AをA2Oに換算して0.5重量%以上、5重量%以下、AlをAl2O3に換算して0重量%以上、5重量%以下の割合で含むことが好ましい。アルカリ金属AとしてはK、Na等が挙げられる。
【0055】
フェライト相及び非磁性体相については、以下のようにして区別される。まず、積層型コイル部品の積層体に対して、積層方向に沿う断面を研磨により露出させた後、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(STEM-EDX)で元素マッピングを行う。そして、Fe元素が存在する領域をフェライト相、フェライト相以外の領域を非磁性体相として、両相を区別する。
なお、積層方向に沿う断面は、後述する
図4に示すような断面である。
【0056】
このように区別されるフェライト相及び非磁性体相について、フェライト相を構成するフェライト材料は誘電率が高く、非磁性体相を構成する材料はフェライト材料よりも誘電率が低い。
フェライト材料の比誘電率は、例えば14.5以上であり、15.5以下であってもよい。
また、非磁性体相を構成する材料の比誘電率は、フェライト材料の比誘電率より低ければ限定されるものではないが、例えば7.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。
積層型コイル部品を構成する絶縁層に、フェライト材料よりも誘電率が低い材料からなる非磁性体相が含まれることによって、絶縁層の誘電率が低下する。絶縁層の誘電率が低下することによって積層型コイル部品自体の損失を小さくすることができる。
【0057】
フェライト材料の比誘電率、及び、非磁性体相を構成する材料の比誘電率を特定するためには、上記の元素マッピングによりフェライト相を構成するフェライト材料の構造式を特定し、非磁性体相を構成する材料の構造式を特定する。そして、公知のデータベースから、当該構造式となる化合物の比誘電率を求める。この手順によりフェライト材料の比誘電率及び非磁性体相を構成する材料の比誘電率をそれぞれ特定することができる。
また、フェライト材料を所定の形状に成形した誘電率測定用試料を作製し、これに電極を形成した後所定の条件で静電容量を測定して、静電容量の測定値と誘電率測定用試料の寸法を基にフェライト材料の比誘電率を求めてもよい。同様に、非磁性体相を構成する材料を所定の形状に成形した誘電率測定用試料を作製して非磁性体相を構成する材料の比誘電率を求めてもよい。
【0058】
フェライト相及び非磁性体相の合計体積に対する非磁性体相の体積割合は、55体積%以上、80体積%以下であることが好ましい。
【0059】
フェライト相及び非磁性体相の合計体積に対する非磁性体相の体積割合が55体積%よりも小さい場合、比誘電率が低い材料の量が少ないため、高周波領域での領域の損失を低減させる効果がその分だけ小さくなる。
【0060】
一方、フェライト相及び非磁性体相の合計体積に対する非磁性体相の体積割合が80体積%よりも大きい場合、非磁性体相の割合が多すぎるため、積層体の強度が不足することがある。
【0061】
積層型コイル部品の高周波特性を向上させる観点から、フェライト相及び非磁性体相の合計体積に対する非磁性体相の体積割合は、好ましくは60体積%以上、80体積%以下である。
【0062】
フェライト相及び非磁性体相の合計体積に対する非磁性体相の体積割合は、以下のようにして定められる。まず、積層型コイル部品を構成する積層体に対して、積層方向に対して直交方向における中央部まで研磨を施すことにより、積層方向に沿う断面を露出させる。
次に、露出した断面の中央付近において50μm角の領域を3箇所抽出した後、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析で元素マッピングを行うことにより、上述したようにフェライト相と非磁性体相とを区別する。そして、上述した3箇所の各領域について、得られた元素マッピング画像から、フェライト相及び非磁性体相の合計面積に対する非磁性体相の面積割合を、画像解析ソフトにより測定する。その後、これらの面積割合の測定値から平均値を算出し、この平均値を、フェライト相及び非磁性体相の合計体積に対する非磁性体相の体積割合とする。
【0063】
また、非磁性体相の合計体積に対するフォルステライトの体積割合が2体積%以上、8体積%以下であることが好ましい。
フォルステライトに含まれる元素であるMg元素が存在する領域をフォルステライトが存在する領域として区別し、非磁性体相の面積に対するフォルステライトが存在する領域の面積割合を測定することにより、非磁性体相に含まれるフォルステライトの体積割合を求めることができる。
非磁性体相の2体積%以上、8体積%以下がフォルステライトであると、積層体の強度が向上する。
【0064】
絶縁層は、BをB2O3に換算して4.3重量%以上8.0重量%以下、SiをSiO2に換算して27.6重量%以上51.4重量%以下、MgをMgOに換算して1.1重量%以上2.1重量%以下、FeをFe2O3に換算して24.7重量%以上43.5重量%以下、NiをNiOに換算して3.3重量%以上5.9重量%以下、ZnをZnOに換算して7.7重量%以上13.5重量%以下、CuをCuOに換算して2.0重量%以上3.6重量%以下、含有することが好ましい。
【0065】
絶縁層の組成は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)による分析を行うことにより確認される。
【0066】
続いて、積層型コイル部品を構成する積層体が内蔵するコイルの例について説明する。
コイルは、絶縁層とともに積層方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成される。
【0067】
図4は、積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図であり、
図5は、
図4に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図であり、
図6は、
図4に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
図4は、絶縁層、コイル導体及び連結導体、並びに、積層体の積層方向を模式的に示すものであり、実際の形状及び接続等を厳密には表していない。例えば、コイル導体はビア導体を介して接続されている。
【0068】
図4に示すように、積層型コイル部品1は、絶縁層とともに積層された複数のコイル導体32が電気的に接続されることにより形成されるコイルを内蔵する積層体10と、コイルに電気的に接続される第1外部電極21及び第2外部電極22を備える。
図4には、第1外部電極21及び第2外部電極22が、銀を含む下地電極層23を備えており、下地電極層23の上にニッケル被膜24及び金被膜25が順に形成されていることを示している。
【0069】
積層体10には、コイル導体が配置された領域と、第1連結導体41又は第2連結導体42が配置された領域とが存在する。積層体10の積層方向、及び、コイルの軸方向(
図4中、コイル軸Aを示す)は、第1主面13に対して平行である。
【0070】
図5及び
図6に示すように、積層体10は、
図4中の絶縁層31として、絶縁層31aと、絶縁層31bと、絶縁層31cと、絶縁層31dと、を有している。積層体10は、
図4中の絶縁層35aとして、絶縁層35a
1と、絶縁層35a
2と、絶縁層35a
3と、絶縁層35a
4と、を有している。積層体10は、
図4中の絶縁層35bとして、絶縁層35b
1と、絶縁層35b
2と、絶縁層35b
3と、絶縁層35b
4と、を有している。
【0071】
コイル30は、
図4中のコイル導体32として、コイル導体32aと、コイル導体32bと、コイル導体32cと、コイル導体32dと、を有している。
【0072】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dは、各々、絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dの主面上に配置されている。
【0073】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dの長さは、各々、コイル30の3/4ターンの長さである。つまり、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体の積層数は4である。積層体10においては、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dが1つの単位(3ターン分)として繰り返し積層されている。
【0074】
コイル導体32aは、ライン部36aと、ライン部36aの端部に配置されるランド部37aと、を有している。コイル導体32bは、ライン部36bと、ライン部36bの端部に配置されるランド部37bと、を有している。コイル導体32cは、ライン部36cと、ライン部36cの端部に配置されるランド部37cと、を有している。コイル導体32dは、ライン部36dと、ライン部36dの端部に配置されるランド部37dと、を有している。
【0075】
絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dには、各々、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dが積層方向に貫通するように配置されている。
【0076】
コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと、コイル導体32b及びビア導体33b付きの絶縁層31bと、コイル導体32c及びビア導体33c付きの絶縁層31cと、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dとは、1つの単位(
図5及び
図6中の点線で囲まれた部分)として繰り返し積層されている。これにより、コイル導体32aのランド部37aと、コイル導体32bのランド部37bと、コイル導体32cのランド部37cと、コイル導体32dのランド部37dとは、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dを介して接続される。つまり、積層方向に隣り合うコイル導体のランド部は、ビア導体を介して互いに接続される。
【0077】
以上により、積層体10に内蔵されるソレノイド状のコイル30が構成される。
【0078】
積層方向から平面視したとき、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dで構成されるコイル30は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。積層方向から平面視したとき、コイル30が多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径をコイル30のコイル径とし、多角形の重心を通り積層方向に延伸する軸をコイル30のコイル軸とする。
【0079】
絶縁層35a1、絶縁層35a2、絶縁層35a3、及び、絶縁層35a4には、各々、ビア導体33pが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35a1、絶縁層35a2、絶縁層35a3、及び、絶縁層35a4の主面上には、ビア導体33pに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0080】
ビア導体33p付きの絶縁層35a1と、ビア導体33p付きの絶縁層35a2と、ビア導体33p付きの絶縁層35a3と、ビア導体33p付きの絶縁層35a4とは、コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33p同士がつながって第1連結導体41を構成し、第1連結導体41が第1端面11に露出する。その結果、第1外部電極21とコイル30とが、第1連結導体41を介して互いに接続される。
【0081】
第1連結導体41は、上述したように、第1外部電極21とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第1連結導体41が第1外部電極21とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第1連結導体41を構成するビア導体33p同士が重なっていることを意味し、ビア導体33p同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0082】
絶縁層35b1、絶縁層35b2、絶縁層35b3、及び、絶縁層35b4には、各々、ビア導体33qが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35b1、絶縁層35b2、絶縁層35b3、及び、絶縁層35b4の主面上には、ビア導体33qに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0083】
ビア導体33q付きの絶縁層35b1と、ビア導体33q付きの絶縁層35b2と、ビア導体33q付きの絶縁層35b3と、ビア導体33q付きの絶縁層35b4とは、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33q同士がつながって第2連結導体42を構成し、第2連結導体42が第2端面12に露出する。その結果、第2外部電極22とコイル30(コイル導体32d)とが、第2連結導体42を介して互いに接続される。
【0084】
第2連結導体42は、上述したように、第2外部電極22とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第2連結導体42が第2外部電極22とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第2連結導体42を構成するビア導体33q同士が重なっていることを意味し、ビア導体33q同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0085】
なお、第1連結導体41を構成するビア導体33pと第2連結導体42を構成するビア導体33qとの各々にランド部が接続されている場合、第1連結導体41及び第2連結導体42の形状は、ランド部を除いた形状を意味する。
【0086】
図5及び
図6では、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体の積層数が4である場合、すなわち、繰り返し形状が3/4ターン形状である場合を例示したが、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体の積層数は特に限定されない。
例えば、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体の積層数が2、すなわち、繰り返し形状が1/2ターン形状であってもよい。
【0087】
積層方向から平面視したときに、コイルを構成するコイル導体は互いに重なることが好ましい。また、積層方向から平面視したとき、コイルの形状は円形であることが好ましい。なお、コイルがランド部を含む場合には、ランド部を除いた形状(すなわちライン部の形状)をコイルの形状とする。
また、連結導体を構成するビア導体にランド部が接続されている場合には、ランド部を除いた形状(すなわちビア導体の形状)を連結導体の形状とする。
【0088】
なお、
図5に示すコイル導体は、繰り返しパターンが円形となるような形状であるが、繰り返しパターンが四角形等の多角形となるようなコイル導体であってもよい。
また、コイル導体の繰り返し形状は3/4ターン形状ではなく、1/2ターン形状であってもよい。
【0089】
図4、
図5及び
図6に示すような構成の積層型コイル部品において、積層型コイル部品のサイズが0603サイズである場合、高周波特性をさらに向上させるためには、以下のように設計することが好ましい。
【0090】
コイルのターン数は、36ターン以上、42ターン以下であることが好ましい。ターン数がこの程度であると、コイル導体間のトータルの静電容量を低減することができるため、高周波特性を向上させることができる。
また、コイル長が0.41mm以上、0.48mm以下であることが好ましい。
【0091】
コイル導体の幅は、45μm以上、75μm以下であることが好ましい。コイル導体の幅は
図4に両矢印Wで示す寸法である。
コイル導体の厚みは、3.5μm以上、6.0μm以下であることが好ましい。コイル導体の厚みは
図4に両矢印Tで示す寸法である。
コイル導体間の距離は、3.0μm以上、5.0μm以下であることが好ましい。コイル導体間の距離は
図4に両矢印Dで示す寸法である。
【0092】
コイル導体のランド部の直径は、30μm以上、50μm以下であることが好ましい。コイル導体のランド部の直径は
図6に両矢印Rで示す寸法である。
【0093】
積層体の第1主面が実装面である場合、積層体の第1主面を覆う部分の第1外部電極の長さ、第2外部電極の長さは、それぞれ0.20mm以下であることが好ましい。また、0.10mm以上であることが好ましい。
積層体の第1主面を覆う部分の第1外部電極の長さ、第2外部電極の長さは、
図4にそれぞれ両矢印E
1、両矢印E
2で示す寸法である。
【0094】
また、積層型コイル部品を構成する絶縁層の比誘電率は8.5以下であることが好ましい。また、8.0以下であることが好ましく、6.5以上であってもよい。
積層型コイル部品を構成する絶縁層の比誘電率は以下のようにして測定できる。
絶縁層を所定の形状(例えば円板状)に成形した誘電率測定用試料を作製する。これに電極を形成した後、周波数1MHz、電圧1Vrmsの条件下で静電容量を測定する。そして、静電容量の測定値を基に、円板状の素体の直径及び厚みから比誘電率を算出する。
【0095】
本発明の光通信モジュールに実装される積層型コイル部品は、例えば、以下の方法で製造される。
以下には、絶縁層の材料としてフェライト材料と非磁性材料を混合して使用する例を記載するが、絶縁層の材料としてフェライト材料と非磁性材料のいずれか一方のみを用いてもよい。
【0096】
<フェライト材料作製工程>
Fe2O3、ZnO、CuO、及び、NiOを所定の比率になるように秤量する。各酸化物には、不可避不純物が含まれていてもよい。次に、これらの秤量物を湿式で混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製する。この際、Mn3O4、Bi2O3、Co3O4、SiO2、SnO2等の添加剤を添加してもよい。そして、得られたスラリーを乾燥させた後、仮焼成する。仮焼成温度については、例えば、700℃以上、800℃以下とする。このようにして、粉末状のフェライト材料を作製する。
【0097】
フェライト材料は、40mol%以上、49.5mol%以下のFe2O3と、2mol%以上、35mol%以下のZnOと、6mol%以上、13mol%以下のCuOと、10mol%以上、45mol%以下のNiOと、を含むことが好ましい。
【0098】
<非磁性材料作製工程>
非磁性材料の粉末を秤量する。非磁性材料としてホウケイ酸ガラス粉末とフォルステライト粉末の混合粉末を使用する場合、ホウケイ酸ガラスとしてカリウム、ホウ素、ケイ素、アルミニウムを所定の割合で含有するガラス粉末を準備する。また、フォルステライト粉末を準備する。
【0099】
ホウケイ酸ガラスは、SiをSiO2に換算して80重量%以上、85重量%以下、BをB2O3に換算して10重量%以上、25重量%以下、アルカリ金属AをA2Oに換算して0.5重量%以上、5重量%以下、AlをAl2O3に換算して0重量%以上、5重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0100】
<グリーンシート作製工程>
フェライト材料及び非磁性材料を所定の比率になるように秤量する。次に、これらの秤量物と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、等を混合した後、粉砕することにより、スラリーを作製する。そして、得られたスラリーをドクターブレード法等で、所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、グリーンシートを作製する。
グリーンシートの厚さは20μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0101】
フェライト材料と非磁性材料の合計体積に対する非磁性材料の体積割合が、50体積%以上、80体積%以下となるようにフェライト材料と非磁性材料の体積割合を調整して混合することが好ましい。
【0102】
<導体パターン形成工程>
まず、グリーンシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことにより、ビアホールを形成する。
【0103】
次に、銀ペースト等の導電性ペーストを、スクリーン印刷法等により、ビアホールに充填しつつグリーンシートの表面に塗工する。これにより、グリーンシートに対して、ビア導体用導体パターンをビアホールに形成しつつ、ビア導体用導体パターンに接続されたコイル導体用導体パターンを表面上に形成する。このようにして、グリーンシートにコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成されたコイルシートを作製する。コイルシートについては複数枚作製し、各コイルシートに対して、
図5及び
図6に示したコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、
図5及び
図6に示したビア導体に相当するビア導体用導体パターンとを形成する。
【0104】
また、銀ペースト等の導電性ペーストを、スクリーン印刷法等により、ビアホールに充填することにより、グリーンシートにビア導体用導体パターンが形成されたビアシートを、コイルシートとは別に作製する。ビアシートについても複数枚作製し、各ビアシートに対して、
図5及び
図6に示したビア導体に相当するビア導体用導体パターンを形成する。
【0105】
<積層体ブロック作製工程>
コイルシート及びビアシートを、
図5及び
図6に相当する順序で積層方向に積層した後、熱圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0106】
<積層体・コイル作製工程>
まず、積層体ブロックをダイサー等で所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製する。
【0107】
次に、個片化されたチップを焼成する。焼成温度については、例えば、900℃以上、920℃以下とする。また、焼成時間については、例えば、2時間以上、8時間以下とする。
【0108】
個片化されたチップを焼成することにより、コイルシート及びビアシートのグリーンシートは、絶縁層となる。その結果、複数の絶縁層が、積層方向、ここでは、長さ方向に積層されてなる積層体が作製される。積層体には、フェライト相と非磁性体相とが形成される。
【0109】
個片化されたチップを焼成することにより、コイルシートのコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、コイル導体及びビア導体となる。その結果、複数のコイル導体が積層方向に積層されつつ、ビア導体を介して電気的に接続されてなるコイルが作製される。
【0110】
以上により、積層体と、積層体の内部に設けられたコイルとが作製される。絶縁層の積層方向とコイルのコイル軸の方向とは、積層体の実装面である第1主面に平行になり、ここでは、長さ方向に沿って平行になる。
【0111】
個片化されたチップを焼成することにより、ビアシートのビア導体用導体パターンは、ビア導体となる。その結果、複数のビア導体が長さ方向に積層されつつ電気的に接続されてなる、第1連結導体及び第2連結導体が作製される。第1連結導体は、積層体の第1端面から露出することになる。第2連結導体は、積層体の第2端面から露出することになる。
【0112】
積層体に対しては、例えば、バレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けてもよい。
【0113】
<外部電極形成工程>
まず、銀及びガラスフリットを含む導電性ペーストを、積層体の第1端面及び第2端面に塗工する。次に、得られた各塗膜を焼き付けることにより、積層体の表面上に下地電極層を形成する。より具体的には、積層体の第1端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延在する下地電極層を形成する。また、積層体の第2端面から、第1主面、第2主面、第1側面、及び、第2側面の各面の一部にわたって延在する下地電極層を形成する。各塗膜の焼き付け温度については、例えば、800℃以上、820℃以下とする。
【0114】
その後、電解めっき等により、各下地電極層の表面上に、ニッケル被膜と金被膜とを順に形成する。
【0115】
このようにして、第1連結導体を介してコイルに電気的に接続された第1外部電極と、第2連結導体を介してコイルに電気的に接続された第2外部電極とを形成する。
以上により、積層型コイル部品が製造される。積層型コイル部品の第1外部電極と第2外部電極の最外層には金被膜が位置している。
【0116】
上記手順により製造した積層型コイル部品を、表面が金層であるランドを備えた基板に実装することにより本発明の光通信モジュールを得ることができる。
表面が金層であるランドに金スズはんだを含むクリームはんだを塗り、最外層に金被膜を備える外部電極をクリームはんだに接触させて載置し、リフローを行うことにより積層型コイル部品を基板に実装することができる。
リフローの条件は、金スズはんだを用いた接合において通常用いられる条件とすることができる。
なお、光通信モジュールが備える他の電子部品についても、同様の手順でリフローを行って積層型コイル部品と同時に実装することができる。
【符号の説明】
【0117】
1、1´ 積層型コイル部品
10 積層体
11 第1端面
12 第2端面
13 第1主面
14 第2主面
15 第1側面
16 第2側面
20 外部電極
20´ 表面がスズ被膜の第1外部電極
21 第1外部電極
22 第2外部電極
23 下地電極層
24 ニッケル被膜
25 金被膜
30 コイル
31、31a、31b、31c、31d、35a、35a1、35a2、35a3、35a4、35b、35b1、35b2、35b3、35b4 絶縁層
32、32a、32b、32c、32d コイル導体
33a、33b、33c、33d、33p、33q ビア導体
36a、36b、36c、36d ライン部
37a、37b、37c、37d ランド部
41 第1連結導体
42 第2連結導体
50 金スズはんだ
60 基板
70 表面が金層であるランド
80 配線
90 外装体
100、100´ 光通信モジュール(TOSA)
110 IC
111 金ワイヤ
120 レーザーダイオード
200 マザー基板
250 はんだ
270 ランド
280 ICと積層型コイル部品の間の配線