(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 67/00 20060101AFI20240524BHJP
A01D 63/04 20060101ALI20240524BHJP
A01D 57/22 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A01D67/00 C
A01D63/04
A01D57/22 A
(21)【出願番号】P 2020214263
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】種市 遥香
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004760(JP,A)
【文献】実開昭57-033135(JP,U)
【文献】実開昭62-045930(JP,U)
【文献】特開2014-011961(JP,A)
【文献】実開昭59-182125(JP,U)
【文献】実開昭54-164246(JP,U)
【文献】実開昭53-041230(JP,U)
【文献】特開2011-239727(JP,A)
【文献】特開2007-330168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0116020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00-69/12
A01D 57/00-57/30
A01D 63/00-65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、
前記刈取部に、左右方向に並ぶ複数の引起し装置と、前記複数の引起し装置の左右方向両側の横側方を覆う左右のサイドカバーと、前記刈取部の左右方向一方側端部に設けられ、未刈穀稈を機体から遠ざけるように分草案内する分草杆と、が備えられ、
前記分草杆は、上下揺動することにより、左右方向外方へ張り出す使用状態と、左右中央側へ引退して機体外側へ張り出さない格納状態と、に切り換え可能に支持され、
前記サイドカバーの下部に、前記サイドカバーの上部に対して左右方向中央側に向けて凹入する凹入空間が形成され、
前記分草杆は、前記格納状態において、後上がり傾斜形状で前記凹入空間に入り込むように構成され、
前記サイドカバーは、前記凹入空間の上端縁が後上がりの傾斜状に延び
、かつ、前記サイドカバーにおける機体側面視で前記分草杆と重複する領域が前記サイドカバーの上部に対して左右方向中央側に向けて凹入する状態で、前記サイドカバーの下部が前記サイドカバーの上部に対して左右方向中央側に近づくような形状に設けられているコンバイン。
【請求項2】
前記サイドカバーは、前記上部が平坦な第一面にて構成され、前記下部が平坦な第二面にて構成され、
前記第二面は段差部を介して前記第一面よりも左右方向中央側へ引退している請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記段差部は、後上がりの傾斜形状に設けられている請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記段差部は、機体側面視で前記サイドカバーの上端縁に対して平行に延びる状態で、前記サイドカバーの前部から後部に亘っている請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記上部に、前記サイドカバーを機体側固定部に取り付ける取付具が備えられている請求項2から4のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記取付具が複数備えられ、
機体側面視で、前記取付具の並び方向と、前記サイドカバーの上端縁と、後上がりの傾斜形状に設けられる前記段差部とが、平行に延びている請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記分草杆は、前記格納状態において、前記凹入空間に入り込んで、全体が機体外端位置より左右方向中央側に収まっている請求項2から6のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記分草杆における揺動可能に支持される基端部は、前記格納状態において、前記分草杆における遊端部よりも左右方向内方側に位置しており、
前記サイドカバーの前記第二面のうち前記基端部の近辺が対応する箇所に、更に左右方向中央側へ凹入する第二凹入部が形成されている請求項2から7のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記分草杆の揺動支点が、前記サイドカバーの前記第二面に対して左右方向で略同じ位置あるいは前記第二面よりも左右方向中央側の位置に位置している請求項2から8のいずれか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、刈取部に、左右方向に並ぶ複数の引起し装置と、複数の引起し装置の左右方向両側の横側方を覆うサイドカバーと、が備えられているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンバインにおいて、従来では、サイドカバーは、上下方向の略全域にわたって平坦な面を形成するように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、サイドカバーは平坦な面を備えて上下方向に延びているので、サイドカバーの下端部が横外方に出っ張る状態となる。その結果、機体前部側に位置している分草具とサイドカバーとの間で左右方向の段差が生じ、その段差によって分草案内される作物の株元がサイドカバーの下部に接当して作物が折れ曲がったり、倒されてしまう等の不利な面があった。
【0005】
そこで、刈取部の横側端部において作物を傷めることがないようにすることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、前記刈取部に、左右方向に並ぶ複数の引起し装置と、前記複数の引起し装置の左右方向両側の横側方を覆う左右のサイドカバーと、前記刈取部の左右方向一方側端部に設けられ、未刈穀稈を機体から遠ざけるように分草案内する分草杆と、が備えられ、前記分草杆は、上下揺動することにより、左右方向外方へ張り出す使用状態と、左右中央側へ引退して機体外側へ張り出さない格納状態と、に切り換え可能に支持され、前記サイドカバーの下部に、前記サイドカバーの上部に対して左右方向中央側に向けて凹入する凹入空間が形成され、前記分草杆は、前記格納状態において、後上がり傾斜形状で前凹入空間に入り込むように構成され、 前記サイドカバーは、前記凹入空間の上端縁が後上がりの傾斜状に延び、かつ、前記サイドカバーにおける機体側面視で前記分草杆と重複する領域が前記サイドカバーの上部に対して左右方向中央側に向けて凹入する状態で、前記サイドカバーの下部が前記サイドカバーの上部に対して左右方向中央側に近づくような形状に設けられている点にある。
【0007】
本発明によれば、サイドカバーの下部がサイドカバーの上部に対して左右方向中央側に近づくような形状になっているから、サイドカバーの機体前部側に位置している分草具とサイドカバーとの間での段差が無くなるか、あるいは、少ないものになる。その結果、作物が分草具からサイドカバーにわたって滑らかに案内され易くなり、作物が損傷を受けるおそれが少なくなる。
【0008】
従って、刈取部の横側端部において作物を傷めることがないようにすることが可能となった。
又、分草杆は、格納状態にあるときは、サイドカバーの凹入空間に入り込む状態となる。その結果、サイドカバーの形状を有効利用して、分草杆を格納させて、機体横外方への突出量を少なくすることができる。
【0009】
【0010】
さらに、サイドカバーの下部が凹入する形状であるから、左右方向中央側への入り込みが急となり、下側への位置の変化が少ない割には左右方向中央側への入り込み量を大きくすることができる。
【0011】
本発明においては、前記サイドカバーは、前記上部が平坦な第一面にて構成され、前記下部が平坦な第二面にて構成され、前記第二面は段差部を介して前記第一面よりも中央側へ引退していると好適である。
【0012】
本構成によれば、広い範囲にわたり湾曲するような形状に比べて、左右方向におけるサイドカバーの出っ張りをできるだけ少なくしながら、下部を左右方向中央側へ近づけることができる。
【0013】
本発明においては、前記段差部は、後上がりの傾斜形状に設けられていると好適である。
【0014】
本構成によれば、前部側では株元から分草案内される作物を、後上がりの傾斜形状の段差部によって徐々に上方に向けて立ち上げるように滑らかに案内することができる。
【0015】
本発明においては、前記段差部は、機体側面視で前記サイドカバーの上端縁に対して平行に延びる状態で、前記サイドカバーの前部から後部に亘っていると好適である。
【0016】
本構成によれば、前部から後部に亘っていることによって、サイドカバーに対する強度を補強する補強リブとして機能させることができる。
【0017】
本発明においては、前記上部に、前記サイドカバーを機体固定部に取り付ける取付具が備えられていると好適である。
【0018】
本構成によれば、取付具が上部に位置していることにより、作業者が腰を屈めたりすることなく、立ち姿勢のまま容易に操作することができる。
【0019】
本発明においては、前記取付具が複数備えられ、機体側面視で、前記取付具の並び方向と、前記サイドカバーの上端縁と、後上がりの傾斜形状に設けられる前記段差部とが、平行に延びていると好適である。
【0020】
本構成によれば、折り曲げ形状等の強度補強が施されている上端縁と、補強リブとして機能する段部部とによって挟まれた領域に取付具があるので、取付具を操作する際において、上下両側から強度補強することができて変形のおそれが少なくなる。
【0021】
【0022】
【0023】
本発明においては、前記分草杆は、前記格納状態において、前記凹入空間に入り込んで、全体が機体外端位置より左右方向中央側に収まっていると好適である。
【0024】
本構成によれば、機体走行中において、機体横側箇所に他物が接当するようなことがあっても、分草杆が他物と接触するおそれが少なく、分草杆が損傷する等のおそれを回避できる。
【0025】
本発明においては、前記分草杆における揺動可能に支持される基端部は、前記格納状態において、前記分草杆における遊端部よりも左右方向内方側に位置しており、前記サイドカバーの前記第二面のうち前記基端部の近辺が対応する箇所に、更に左右方向中央側へ凹入する第二凹入部が形成されていると好適である。
【0026】
本構成によれば、分草杆の基端部が第二凹入部に入り込むことにより、分草杆全体が横外方に出っ張ることをできるだけ少なくすることができる。
【0027】
本発明においては、前記分草杆の揺動支点が、前記サイドカバーの前記第二面に対して左右方向と略同じ位置あるいは前記第二面よりも左右方向中央側の位置に位置していると好適である。
【0028】
本構成によれば、分草杆の基端部をできるだけ左右方向内方側に寄せて他物との干渉のおそれを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】左端の分草フレームの着脱状態を示す斜視図である。
【
図4】右端の分草フレームの着脱状態を示す斜視図である。
【
図5】端部の分草具の取付状態を示す分解斜視図である。
【
図6】端部の分草具の姿勢変更状態を示す図である。
【
図7】左側のサイドカバーの取り付け状態を示す左側面図である。
【
図12】左側のサイドカバーの支持状態を示す縦断正面図である。
【
図13】右側のサイドカバーの取り付け状態を示す左側面図である。
【
図14】右側のサイドカバーの支持状態を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印「F」の方向を「機体前側」、矢印「B」の方向を「機体後側」(
図1参照)とし、矢印「L」の方向を「機体左側」、矢印「R」の方向を「機体右側」(
図2参照)とする。
【0031】
〔全体構成〕
図1に示すように、本発明に係るコンバインは、走行機体1と、7条の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部2とを備えている。刈取部2は、横軸芯P1まわりで揺動昇降可能に走行機体1に連結され、昇降用油圧シリンダ3により駆動昇降可能に設けられている。
【0032】
走行機体1は、左右のクローラ走行装置4が備えられ、機体前部の右側(左右方向一方側)に運転部5が備えられている。運転部5の後方に、刈取部2にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置6と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク7とを機体横方向に並ぶ状態で備えられている。運転部5はキャビン8にて覆われている。脱穀装置6は、図示はしないが、刈取部2から搬送される刈取穀稈の株元を脱穀フィードチェーン9により挟持して搬送しながら、扱室内部で穂先側を扱き処理し、扱室の下部に備えられた選別部にて穀粒と塵埃に選別処理する。穀粒は穀粒タンク7に貯留し、塵埃は機外に排出する。穀粒タンク7に貯留される穀粒を外部に排出可能な穀粒排出装置10と、脱穀処理後の排ワラを細断したのちに機外に排出する細断装置11とが備えられている。
【0033】
刈取部2には、左右方向に間隔をあけて設けられ、かつ、7つの穀稈導入経路に対して各条の植立穀稈を導入すべく分草案内する複数(8個)の分草具12と、全ての穀稈導入経路のそれぞれに対応して左右方向に並ぶ状態で設けられ、かつ、植立穀稈を引き起こす複数(7個)の引起し装置13と、引起された植立穀稈の株元を切断する切断装置としてのバリカン型の刈刃14と、刈り取った刈取穀稈を刈幅方向に合流させて後方に搬送する搬送装置15とが備えられている。
【0034】
引起し装置13は、下端側が機体前部側に位置し且つ上端側ほど機体後方側に位置する後倒れ傾斜状態の起立姿勢で備えられている。引起し装置13は、フレームを兼用する引起しケースの内部に、前後向き軸芯周りで回転する駆動輪体16、テンション輪体17、案内輪体18と、にわたって掛け渡された無端回動チェーン19が備えられ、無端回動チェーン19に、長手方向に沿って所定間隔をあけて複数の引起し爪20が備えられている。引起し爪20が上方に移動する経路において植立穀稈を上方に引起すように構成されている。
【0035】
搬送装置15には、刈刃14により刈り取られた穀稈の株元を後方に掻き込む掻き込み体としての複数のパッカー21、刈取穀稈の株元を挟持して後方に搬送する株元挟持搬送装置22、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する穂先係止搬送装置23等、が備えられている。
【0036】
複数の分草具12は、それぞれ、前後方向に延びる前後向きフレームとしての分草フレーム24の前端部に支持されている。そして、複数の分草具12のうちの左右方向最外側に位置する最外側分草具としての左分草具12a及び右分草具12bは、姿勢を変更することにより刈幅を変更可能に構成されている。
【0037】
左分草具12a及び右分草具12bは、
図3に示すように、連結部25が分草フレーム24に対して着脱可能にボルトboで連結されている。
図4に示すように、分草フレーム24に対する連結部25のボルト連結箇所を変更することにより、左右方向の向きを変更して刈幅を変更することができる。
【0038】
〔分草フレーム〕
7条刈りコンバインでは、運搬用のコンテナに積載するときに、刈取部2の横幅をコンテナの幅内に収めるために、左分草具12a及び右分草具12bを支持する分草フレーム24a,24bのそれぞれが、刈取部2全体を支持する刈取フレーム26に対して着脱可能に構成されている。
【0039】
図5に示すように、左端の分草フレーム24aは、第一取付部27、第二取付部28、第3取付部29を有している。第一取付部27と第二取付部28は、分草フレーム24aに対して溶接にて連結されている。第3取付部29は、丸パイプ材からなる支柱部材30を介して分草フレーム24aに対して溶接にて連結されている。
【0040】
刈取部2の固定側には、図示しない駆動軸を内装した筒状の横向きフレーム31と、刈刃14を支持する刈刃フレーム32と、刈刃フレーム32に連結されるとともに、引起し装置13の下部を支持する板状フレーム33と、が備えられている。左端の分草フレーム24aは、横向きフレーム31の端部、板状フレーム33の前後両側にボルトで取り外し可能に連結されている。横向きフレーム31と刈刃フレーム32とが刈取フレーム26に対応している。
【0041】
図6に示すように、右端の分草フレーム24bも同様に、第一取付部34、第二取付部35、第3取付部36を介して、横向きフレーム31の端部、板状フレーム33の前後両側にボルトで取り外し可能に連結されている。第3取付部36は、丸パイプ材からなる支持部材としての支柱部材37を介して分草フレーム24aに対して溶接にて連結されている。
【0042】
〔分草杆〕
刈取部2の左右方向一方側としての左側端部に、未刈穀稈を機体から遠ざけるように分草案内する分草杆38が備えられている。分草杆38は、前側下部に位置する基端部38Aから後方に向けて片持ち状に延びている。
【0043】
分草杆38は、基端部38Aが左端の分草フレーム24aに備えられた支点部材71によって前後軸芯周りで上下揺動可能に支持されている。分草杆38は、上下揺動することにより、左右方向外方へ張り出す使用状態と、左右中央側へ引退して機体外側へ張り出さない格納状態とに切り換え可能に支持されている。そして、分草杆38の前後途中位置に作用して、使用状態と格納状態とに切り換えるための手動操作式の切換操作機構40が備えられている。
【0044】
〔サイドカバー〕
図7,13に示すように、刈取部2には、複数の引起し装置13の左右方向両側の横側方を覆う左右のサイドカバー41が備えられている。左右のサイドカバー41の上方には、左右の前照灯装置42と、前照灯装置42を覆う左右の前照灯カバー43と、が備えられている。尚、以下のサイドカバー41の説明において、サイドカバー41の位置関係、つまり、サイドカバー41の上下の位置関係、前後の位置関係については、刈取部2が最も下降した通常作業状態(
図1で示す状態)にあることを前提として説明する。
【0045】
前照灯カバー43は、刈取部2の左右両側部の上部に備えられた前照灯装置42の周囲並びに複数の引起し装置13の左右方向両側の横側方のうちの上部側部分を覆うように構成されている。
【0046】
左右のサイドカバー41は、複数の引起し装置13の左右方向両側の横側方のうちの下部側部分を覆うように構成されている。左右のサイドカバー41は、左右対象形状であり、後述する一部の構成を除く部分は同じ構成であるから、同じ構成について説明する。
【0047】
図8に示すように、サイドカバー41は、機体側面視で、前側縁部44が引起し装置13の前面に沿って斜め上方に延び、かつ、下側縁部45が分草フレーム24に沿って延びる状態で、前側縁部44と下側縁部45とにより形成される前端部46が先細り状に形成されている。
【0048】
又、サイドカバー41は、上端部47が先細状に設けられ、上端部47の最上部箇所47aと下側縁部45の後端部における角部とを結ぶ仮想線K1よりも後側に向けて張り出す後側膨出部48が設けられている。後側膨出部48は先細り状に形成されている。このように後側膨出部48が設けられることにより、複数のパッカー21のうち左右方向両側端部に位置するパッカー21の横側方を覆う構成となっている。
【0049】
上端部47の最上部箇所47aは、下側縁部45の後端部における角部から鉛直方向に延びる鉛直仮想線K2よりも後側に位置している。また、上端部47の最上部箇所47aから下側縁部45の後端部にわたる後側縁部に、その上下途中において、上側に位置する第一の角部49と、下側に位置する第二の角部50とが形成されている。第二の角部50における内角は第一の角部49における内角よりも小さくなっている。
【0050】
図9,10に示すように、サイドカバー41は、サイドカバー41の下部がサイドカバー41の上部に対して左右方向中央側に近づくような形状に設けられている。後部側においては、
図10に示すように、サイドカバー41は、上部が略平坦でかつ上下方向に延びる第一面51にて構成され、下部が平坦でかつ上下方向に延びる第二面52にて構成され、第二面52は段差部53を介して第一面51よりも中央側へ引退している。従って、サイドカバー41は、下部が上部に対して左右方向中央側に向けて凹入している。
【0051】
図1,7,8に示すように、第一面51と第二面52との間に形成される段差部53は、前部側では低い位置にあり、後側ほど漸次高くなるように後上がりの傾斜形状に設けられている。段差部53は、機体側面視でサイドカバー41の上端縁に対して平行に延びる状態で、サイドカバー41の前部から後部に亘っている。
【0052】
図2に示すように、サイドカバー41の下部と左右方向最外側に位置する最外側分草具(左分草具12a及び右分草具12b)とが、正面視において、下部の左右方向外方側の端縁と、最外側分草具の左右方向外方側の端縁とが、滑らかに連続的に連なっている。
【0053】
上述したように、左分草具12a及び右分草具12bは姿勢を変更することにより刈幅を変更可能であるが、変更し得るいずれかの姿勢において、下部の左右方向外方側の端縁と、分草具12の左右方向外方側の端縁とが、滑らかに連続的に連なる状態となる。左分草具12aは、
図17に示すように、正面視において、サイドカバー41Lの下部の左右方向外方側の端縁t1の任意箇所の接線と、左分草具12aの左右方向外方側の端縁t2の任意箇所の接線と、が一致する又は略一致する状態となっている。また、左分草具12a及び右分草具12bは、いずれのものも、姿勢変更させても、常に、正面視で、サイドカバー41の下部の左右方向外方側の端縁と、分草具12の左右方向外方側の端縁とが、交差する状態となるように構成されている。
【0054】
図7、12に示すように、サイドカバー41には、カバー本体41Aと、カバー本体41Aに支持され、分草フレーム24に支持された第二受け部材としての下側保持具54に対して係止する非可動式の第一フック部材55と、カバー本体41Aに支持され、引起し装置13及び刈取部側の支持体に支持された第一受け部材としての上側保持具56(機体側固定部)に対して係止する状態と係止解除する状態とに姿勢切り換え可能な可動式の第二フック部材57(取付具の一例)が備えられている。
【0055】
サイドカバー41は、下側保持具54に対して第一フック部材55が係止している状態で、第一フック部材55に対する係止位置を軸心として機体内外方向に揺動可能である。そのように、第一フック部材55が下側保持具54に係止された状態で第二フック部材57が上側保持具56に近づくようにサイドカバー41を揺動させて、第二フック部材57が上側保持具56に係止することで位置保持される。また、第二フック部材57が上側保持具56から係止解除されることで位置保持状態が解除される。
【0056】
第二フック部材57は、カバー本体41Aに装着された保持部材58に前後軸芯周りで揺動可能に支持され、図示しないバネにより上側保持具56に係止する側(上側)に揺動付勢されている。第二フック部材57を手動操作により揺動させるための操作レバー59が備えられている。
【0057】
第一フック部材55が下側保持具54に係止している状態で、第二フック部材57を上側保持具56に対応する位置まで内方側に揺動させると、第二フック部材57はバネの付勢力に抗して揺動して自動的に係止状態に切り換わり、サイドカバー41を位置保持する状態となる。そして、バネの付勢力に抗して操作レバー59により揺動操作して第二フック部材57の係止状態を解除することでサイドカバー41を取り外すことができる。
【0058】
左右のサイドカバー41には、それぞれ第二フック部材57が2個備えられている。前側の第二フック部材57が下側に位置し、後側の第二フック部材57が上側に位置するように、側面視で斜め方向に並ぶ状態で備えられている。
【0059】
機体側面視で、2個の第二フック部材57の並び方向と、サイドカバー41の上端縁60と、後上がりの傾斜形状に設けられる段差部53とが、平行に延びている。
【0060】
図12に示すように、第一フック部材55には、下側保持具54に係止する係止部61と、カバー本体41Aに沿って上下方向において係止部61よりも第二フック部材57が設けられる側とは反対側、すなわち、下側に延び、かつ、左右方向において係止部61における下側保持具54に係止する係止箇所とカバー本体41Aとの距離よりも小さい幅に構成された延設部62と、が備えられている。
【0061】
第一フック部材55は、カバー本体41Aの内面から縦向き姿勢で左右中央側に帯びる板状の部材からなり、係止部61に、丸棒材からなる下側保持具54が入り込み係止する凹入部が形成されている。延設部62における係止部61から下側に連なる箇所は、下側保持具54に係止する係止箇所とカバー本体41Aとの距離とほぼ同じ幅を有しているが、下側に向かうほど順次幅狭となり、さらに下側では同一幅の幅狭部分が下方に延びている。第一フック部材55の延設部62における幅狭部分によって形成された空間に、板状フレーム33が位置する状態となっている。
【0062】
このように第一フック部材55は、左右端の分草フレーム24a,24bを着脱可能に支持するために設けられる板状フレーム33との干渉を回避しながら,カバー本体41Aに対する受止め部分を上下方向に長くして支持強度を確保するように構成されている。
【0063】
図5に示すように、左右のサイドカバー41のうちの左側のサイドカバー41Lの第一フック部材55が係止する下側保持具54は、棒状部材を略逆U字状に曲げた形状であり、前後両側端部が板状フレーム33に溶接にて連結されている。左側のサイドカバー41Lに対応する下側保持具54は、分草フレーム24aに対して少し左右方向内方側に寄った位置に設けられる。
【0064】
図6に示すように、左右のサイドカバー41のうちの右側のサイドカバー41Rの第一フック部材55が係止する下側保持具54は、棒状部材を略逆U字状に曲げた形状であり、前後端部が第3取付部36の上端部と、右端の分草フレーム24bの後側箇所とに、溶接にて連結されている。第3取付部36は、支柱部材30により分草フレーム24bに支持されている。このような支持構成が、一方の受け部材を支持する支持部に対応する。右側のサイドカバー41Rに対応する下側保持具54は、分草フレーム24bに支持されるので、左右方向で分草フレーム24bと略同じ位置に設けられる。
【0065】
サイドカバー41における前後方向の端部に、軸芯の方向と交差する状態で端部面が形成されている。後側の端部面63のうち、上下方向において第一フック部材55に対して第二フック部材57が設けられた側、すなわち、上側の縁部は、軸芯方向(前後方向)に沿って見て、左右方向内方側箇所ほど軸芯からの距離が短くなるよう形成されている。
【0066】
説明を加えると、
図15,16に示すように、サイドカバー41のうち後側の端部面63は、上下方向の全範囲にわたって左右方向内方側に向けて延びている。このように後側の端部面63が設けられることにより、機体後方外方側から刈取部2のパッカー21等の回転体が見えないように覆われている。
【0067】
後側の端部面63の上側の縁部には、左右方向内方側ほど前照灯カバー43の下端から離れるように傾斜する傾斜部64が備えられている。傾斜部64は、前後方向に沿って見て、左右方向内方側箇所ほど軸芯からの距離が短くなる形状になっている。このように傾斜部64を設けることにより、サイドカバー41を装着するときに、サイドカバー41の上側の縁部が前照灯カバー43の下端部に引っ掛かるおそれが少ない。
【0068】
サイドカバー41の上側の端縁部には、前端から後側の端部面にわたって左右方向内方側に折り返した折り返し部65が形成されている。後側の端部面63では、上側の縁部のうち、左右方向外方側の箇所に、折り返し部65に一連に連なる状態で端部面を前後方向向きに折り返した水平面部66が備えられている。このように水平面部66を備えることで、後側の端部面63を補強することができる。
【0069】
〔右側のサイドカバー〕
図15に示すように、右側のサイドカバー41Rのうち、上下方向において第一フック部材55に対して第二フック部材57が設けられた側とは反対側、すなわち、下側の端部に、機体内方側に向けて延びる内向き延設部67が形成されている。このような内向き延設部67を設けることにより、補強リブとして機能してサイドカバー41Rの下部側での支持強度を向上させるとともに、下方側からの作物や泥土の降り掛かり等を防止することができる。
【0070】
内向き延設部67には機体外方側に向けて凹入する凹入部68が形成されている。
図14に示すように、右側のサイドカバー41Rのうち、このサイドカバー41Rが位置保持されている状態における支柱部材37に対応する箇所に凹入部68が形成されている。支柱部材37は下側保持具54の下方側に位置している。サイドカバー41Rが位置保持されている状態から第二フック部材57を揺動して位置保持状態を解除させると、右側のサイドカバー41Rの上部が左右方向外方側に移動し、右側のサイドカバー41Rのうち下側保持具54に対する係止位置よりも下側の箇所は、左右方向外方側に少し移動することになる。そのとき、凹入部68が備えられることにより、内向き延設部67が支柱部材37に接当することがなく、良好に取り外し操作を行える。
【0071】
右側のサイドカバー41Rの後側には運転部5が備えられ、運転部5はキャビン8にて覆われている。
図13に示すように、運転部5に、運転者が搭乗する搭乗空間を有する上側部分5Aと、運転者が足を置く床部5Bにより搭乗空間と仕切られる状態で下側に位置する下側部分5C、が備えられている。運転部5の下側部分
5Cの前面に位置する下側前壁部69が、下側ほど機体後部側に位置する前倒れ姿勢に設けられている。
【0072】
図13に示すように、右側のサイドカバー41Rは、上下方向において下側前壁部69と重複する高さまで延びており、サイドカバー41Rの後端部は、刈取作業時において、側面視で下側前壁部69の傾斜に沿う形状となっている。
【0073】
〔左側のサイドカバー〕
分草杆38は、格納状態において、左側のサイドカバー41Lの段差部53に形成された凹入空間70に入り込んで、全体が機体外端位置より左右方向中央側に収まるように構成されている。分草杆38における揺動可能に支持される基端部38Aは、格納状態において、分草杆38における遊端部よりも左右方向内方側に位置している。
【0074】
第3取付部29を分草フレーム24aに支持する支柱部材30に、分草杆38の基端部38Aを上下揺動可能に支持する支点部材71が溶接されている。支点部材71によって形成される分草杆38の揺動支点は、サイドカバー41Lの第二面52に対して左右方向と略同じ位置に位置している。
【0075】
図7,9,11に示すように、左側のサイドカバー41Lの第二面52のうち基端部38Aの近辺が対応する箇所に、左右方向中央側へ凹入する第二凹入部72が形成されている。第二凹入部72は、分草杆38が格納状態にあるときに、分草杆38の基端部38Aが左右方向内方側に入り込むように斜め後上方に延びる溝状に形成されている。
【0076】
分草杆38の揺動支点を分草フレーム24aにて安定的に支持するようにしながら、分草杆38の基端部38Aが第二凹入部72に入り込むことにより、基端部38Aをできるだけ左右方向内方側に寄せて、分草杆38が横側外方に張り出すことを抑制することができる。
【0077】
【0078】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、段差部53が、機体側面視でサイドカバー41の上端縁60に対して平行に延びる状態で、サイドカバー41の前部から後部に亘っている構成としたが、この構成に代えて、段差部53が前後方向の途中まで設けられる構成でもよく、サイドカバー41の上端縁60に対して傾斜状態で設けられるものでもよい。
【0079】
(2)上記実施形態では、取付具(第二フック部材57)が2個備えられ、機体側面視で、取付具の並び方向と、サイドカバー41の上端縁60と、段差部53とが、平行に延びる構造としたが、この構成に代えて、取付具が3個以上設けられるものでもよく、取付具の並び方向が、上端縁や段差部に対して交差する方向になるものでもよい。
【0080】
【0081】
(3)上記実施形態では、サイドカバー41に第二凹入部72が形成される構成としたが、このような第二凹入部72が備えられていない構成としてもよい。
【0082】
(4)上記実施形態では、分草杆38の揺動支点が、サイドカバー41の第二面52に対して左右方向で略同じ位置に位置する構成としたが、この構成に代えて、分草杆38の揺動支点が第二面52よりも左右方向中央側の位置に位置しているものでもよい。また、分草杆38の揺動支点が第二面52よりも左右方向外央側の位置に位置しているものでもよい。
【0083】
(5)上記実施形態では、サイドカバー41は、第一面51と第二面52が平坦な面からなり、サイドカバー41の下部が上部に対して左右方向中央側に向けて凹入している構成としたが、このような構成に代えて、例えば、サイドカバー41が下側に位置するほど徐々に左右方向中央側に向けて変形する構成、サイドカバー41全体が円弧状に形成される構成、サイドカバー41全体が波型状に曲げられる構成等、種々の形態で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、自脱型のコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0085】
2 刈取部
13 引起し装置
38 分草杆
38A 基端部
41 サイドカバー
51 第一面
52 第二面
53 段差部
56 上側保持具56(機体側固定部)
57 取付具(第二フック部材)
60 上端縁
70 凹入空間
72 第二凹入部