(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 17/04 20060101AFI20240524BHJP
A01D 34/47 20060101ALI20240524BHJP
B62D 55/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B60K17/04 D
A01D34/47
B62D55/02
(21)【出願番号】P 2020216959
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中塚 晶基
(72)【発明者】
【氏名】大辻 恭平
(72)【発明者】
【氏名】栗山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】寺井 勇人
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-005933(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/04
A01D 34/47
B62D 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のクローラ走行装置によって支持される走行機体と、
前記走行機体の前部に設けられた作業部と、
前記走行機体に設けられたエンジンと、
前記エンジンよりも前側または後側に設けられ、前記左右一対のクローラ走行装置の駆動輪体を駆動可能に支持するトランスミッションと、
前記エンジンと前記トランスミッションとの間に設けられ、かつ、前記エンジンに備えられた出力軸と前記トランスミッションに備えられた入力軸とを連動連結するギヤ連動機構が収容された伝動ケースと、
前記伝動ケースを前記エンジンに支持させる連結機構と、が備えられ、
前記連結機構は、前記エンジンおよび前記伝動ケースとは別部材に形成されて前記エンジンと前記伝動ケースとの間に介在される連結部材と、前記連結部材を前記エンジンに締結する第1締結具と、前記伝動ケースを前記連結部材に締結する第2締結具と、を有
し、
前記連結部材は、板状であり、かつ前記出力軸が挿通する貫通孔を有し、
前記連結部材は、前記貫通孔の縁部に前記第1締結具を取り付け、前記第1締結具よりも前記連結部材の外周側の部位に前記第2締結具を取り付けるように構成されている作業車。
【請求項2】
左右一対のクローラ走行装置によって支持される走行機体と、
前記走行機体の前部に設けられた作業部と、
前記走行機体に設けられたエンジンと、
前記エンジンよりも前側または後側に設けられ、前記左右一対のクローラ走行装置の駆動輪体を駆動可能に支持するトランスミッションと、
前記エンジンと前記トランスミッションとの間に設けられ、かつ、前記エンジンに備えられた出力軸と前記トランスミッションに備えられた入力軸とを連動連結するギヤ連動機構が収容された伝動ケースと、
前記伝動ケースを前記エンジンに支持させる連結機構と、が備えられ、
前記連結機構は、前記エンジンおよび前記伝動ケースとは別部材に形成されて前記エンジンと前記伝動ケースとの間に介在される連結部材と、前記連結部材を前記エンジンに締結する第1締結具と、前記伝動ケースを前記連結部材に締結する第2締結具と、を有し、
前記入力軸が前記出力軸よりも高い位置に配置され、
前記伝動ケースは、前記出力軸が連結されるように前記伝動ケースの下部に形成されたエンジン側部と、前記入力軸が連結されるように前記伝動ケースの上部に形成されたミッション側部と、を備え、
前記伝動ケースと前記連結部材との前記第2締結具による連結は、前記エンジン側部および前記ミッション側部のうちの前記エンジン側部のみにおいて行われ
る作業車。
【請求項3】
前記伝動ケースは、前記出力軸の軸芯に沿う方向において2つの分割ケースに分割されており、
前記2つの分割ケースは、前記第1締結具および前記第2締結具とは別の第3締結具によって連結するように構成されている請求項
1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記ギヤ連動機構は、前記出力軸の動力を逆転して前記入力軸に伝達するように構成されている請求項1から
3のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車には、左右一対のクローラ走行装置によって支持される走行機体と、前記走行機体の前部に設けられた作業部と、前記走行機体に設けられたエンジンと、が備えられたものがある。この種の作業車としては、例えば特許文献1に示される草刈機がある。草刈機では、作業部としての草刈装置が備えられている。
【0003】
特許文献1に示される草刈機では、左右一対のクローラ走行装置それぞれにクローラ走行装置を駆動する油圧モータが備えられ、エンジンによって駆動されて油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたものに代えて、エンジンの動力をクローラ走行装置に効率よく伝達する状態でクローラ走行装置を駆動できるように構成することが要望されている。
【0006】
本発明は、エンジンの動力をクローラ走行装置に効率よく伝達できるのみならず、動力伝達系の組付けを行い易い作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による作業車は、
左右一対のクローラ走行装置によって支持される走行機体と、前記走行機体の前部に設けられた作業部と、前記走行機体に設けられたエンジンと、前記エンジンよりも前側または後側に設けられ、前記左右一対のクローラ走行装置の駆動輪体を駆動可能に支持するトランスミッションと、前記エンジンと前記トランスミッションとの間に設けられ、かつ、前記エンジンに備えられた出力軸と前記トランスミッションに備えられた入力軸とを連動連結するギヤ連動機構が収容された伝動ケースと、前記伝動ケースを前記エンジンに支持させる連結機構と、が備えられ、前記連結機構は、前記エンジンおよび前記伝動ケースとは別部材に形成されて前記エンジンと前記伝動ケースとの間に介在される連結部材と、前記連結部材を前記エンジンに締結する第1締結具と、前記伝動ケースを前記連結部材に締結する第2締結具と、を有し、前記連結部材は、板状であり、かつ前記出力軸が挿通する貫通孔を有し、前記連結部材は、前記貫通孔の縁部に前記第1締結具を取り付け、前記第1締結具よりも前記連結部材の外周側の部位に前記第2締結具を取り付けるように構成されている。
【0008】
本構成によると、エンジンの出力軸の動力がギヤ連動機構によって入力軸に伝達されてトランスミッションに入力され、左右のクローラ走行装置の駆動輪体がトランスミッションによって駆動されるので、エンジンの動力を左右のクローラ走行装置に効率よく伝達できる。
【0009】
連結部材を第1締結具によってエンジンに連結し、次に、連結部材に伝動ケースを第2締結具によって連結するという組付け方法を採用することによって伝動ケースをエンジンに組付けることができるので、伝動ケースをエンジンに組み付け易い。
本構成によると、エンジンに連結した状態にある連結部材に伝動ケースを連結する際、連結部材のうち、既に取り付けてある第1締結具よりも連結部材の外周側に位置する部位に第2締結具を取り付けるので、第2締結具を取り付けることに対する障害に第1締結具がならない状態で第2締結具を取り付けることができ、伝動ケースを連結部材に連結し易い。
【0010】
別の本発明による作業車は、
左右一対のクローラ走行装置によって支持される走行機体と、前記走行機体の前部に設けられた作業部と、前記走行機体に設けられたエンジンと、前記エンジンよりも前側または後側に設けられ、前記左右一対のクローラ走行装置の駆動輪体を駆動可能に支持するトランスミッションと、前記エンジンと前記トランスミッションとの間に設けられ、かつ、前記エンジンに備えられた出力軸と前記トランスミッションに備えられた入力軸とを連動連結するギヤ連動機構が収容された伝動ケースと、前記伝動ケースを前記エンジンに支持させる連結機構と、が備えられ、前記連結機構は、前記エンジンおよび前記伝動ケースとは別部材に形成されて前記エンジンと前記伝動ケースとの間に介在される連結部材と、前記連結部材を前記エンジンに締結する第1締結具と、前記伝動ケースを前記連結部材に締結する第2締結具と、を有し、前記入力軸が前記出力軸よりも高い位置に配置され、前記伝動ケースは、前記出力軸が連結されるように前記伝動ケースの下部に形成されたエンジン側部と、前記入力軸が連結されるように前記伝動ケースの上部に形成されたミッション側部と、を備え、前記伝動ケースと前記連結部材との前記第2締結具による連結は、前記エンジン側部および前記ミッション側部のうちの前記エンジン側部のみにおいて行われる。
【0011】
本構成によると、伝動ケースにおけるエンジン側部のみを連結部材に連結するだけで迅速に伝動ケースをエンジンに組み付けることができる。
【0012】
【0013】
【0014】
本発明においては、
前記伝動ケースは、前記出力軸の軸芯に沿う方向において2つの分割ケースに分割されており、前記2つの分割ケースは、前記第1締結具および前記第2締結具とは別の第3締結具によって連結するように構成されていると好適である。
【0015】
本構成によると、2つの分割ケースが第3締結具によって連結された組立て状態にある伝動ケースを連結部材に連結できるので、伝動ケースを連結部材に連結し易い。
【0016】
本発明においては、
前記ギヤ連動機構は、前記出力軸の動力を逆転して前記入力軸に伝達するように構成されていると好適である。
【0017】
本構成によると、出力軸の動力をトランスミッションに入力するべき適正な回転方向の動力にギヤ連動機構によって変換してトランスミッションに伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】原動部および走行伝動装置を示す右側面図である。
【
図6】原動部および走行伝動装置を示す平面図である。
【
図8】連結部材および伝動ケースを取り外した状態におけるエンジンの正面図である。
【
図9】連結部材を取り付けた状態におけるエンジンの正面図である。
【
図11】連結部材および伝動ケースを取り付けた状態におけるエンジンの正面図である。
【
図12】走行伝動装置および作業伝動装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、草刈機(作業車の一例)の走行機体に関し、
図1,2,3に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、
図1,2,4に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、
図3,4に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0020】
〔草刈機の全体の構成〕
図1,2,3に示されるように、草刈機は、左右一対のクローラ走行装置1によって支持される走行機体2を備えている。走行機体2の前部に、作業部としての草刈装置3が設けられている。走行機体2の後部に、エンジン4を有する原動部5が設けられている。左右のクローラ走行装置1は、クローラ走行装置1とエンジン4とに亘って設けられた走行伝動装置6によってエンジン4からの動力が伝達されて駆動される。草刈装置3は、草刈装置3の横側部に連結された作業伝動装置7によってエンジン4からの動力が伝達されて駆動される。走行機体2には、クローラ走行装置1および草刈装置3の制御を行う制御装置(図示せず)が搭載されている。制御装置は、無線操縦装置(図示せず)からの制御指令を受信し、受信した制御指令に基づいて走行機体2の操縦、草刈装置3の駆動、停止等の操作を行うように構成されている。草刈機は、無線操縦装置による遠隔操作が可能に構成されている。草刈機は、いわゆるラジコン草刈機に構成されている。
【0021】
〔クローラ走行装置の構成〕
図1,2に示されるように、左右のクローラ走行装置1は、走行機体2の前後方向に延びるトラックフレーム10を備えている。トラックフレーム10は、機体フレーム8の下部に支持されている。トラックフレーム10の前後方向に並ぶ3箇所に、接地輪体11が回転可能に支持されている。3箇所の接地輪体11のうちの最も後の接地輪体11よりも後側に緊張輪体12が設けられている。緊張輪体12は、トラックフレーム10の後部に回転可能に支持されている。トラックフレーム10の前後方向での中央部の上方に、駆動輪体13が設けられている。駆動輪体13は、走行伝動装置6に備えられたトランスミッション20に駆動可能に支持されている。3箇所の接地輪体11、緊張輪体12および駆動輪体13にわたってクローラベルト14が巻回されている。
【0022】
〔草刈装置の構成〕
図1,2,3に示されるように、草刈装置3は、機体フレーム8に昇降連結機構30を介して連結されており、走行機体2の横幅方向に延びる昇降軸芯Pを揺動支点にして揺動昇降可能な状態で走行機体2に設けられている。草刈装置3の後部に備えられた後部フレーム40と、機体フレーム8に備えられたシリンダ支持部8aとに昇降シリンダ35が連結されている。草刈装置3は、昇降シリンダ35の伸縮作動によって昇降操作される。
【0023】
昇降連結機構30は、
図1,2,3に示されるように、草刈装置3の右側部分と機体フレーム8とを連結する連結リンク31、および、草刈装置3の左側部分と機体フレーム8とを連結する左連結部32とを備えている。
【0024】
連結リンク31は、
図2,3に示されるように、草刈装置3の後部に備えられた後部フレーム40と、機体フレーム8に備えられたリンク支持部8bとに連結されている。連結リンク31は、昇降軸芯Pを揺動支点にして上下揺動可能な状態でリンク支持部8bに支持されている。
【0025】
左連結部32は、走行機体2の横幅方向に延びる状態で機体フレーム8の前部に支持された伝動筒33、および、伝動筒33の左端部と草刈装置3の左横側部とに連結された伝動ケース34と、を備えている。伝動ケース34は、昇降軸芯Pを揺動支点にして上下揺動可能な状態で伝動筒33に支持されている。
【0026】
草刈装置3は、
図1,2,3に示されるように、刈刃ハウジング41を備えている。刈刃ハウジング41の内部に、走行機体2の横幅方向に沿う方向に延びる支軸42を有する刈刃43が設けられている。刈刃ハウジング41の前部の左右2箇所に接地ゲージ輪44が設けられている。左右2箇所の接地ゲージ輪44は、刈刃ハウジング41よりもの前側において接地する状態で設けられている。刈刃43は、支軸42の軸芯を回転中心にして回転可能な状態で設けられている。支軸42の外周部に、ナイフ刃45が設けられている。ナイフ刃45は、支軸42の軸芯に沿う方向に並べて、かつ、支軸42の周方向に並べて設けられている。草刈装置3は、フレールモアに構成され、ナイフ刃45による草刈および刈り草の破砕を行う。
【0027】
〔原動部の構成〕
原動部5は、
図1,2,3に示されるように、エンジン4、エンジン4の上方に設けられたエンジン用の燃料タンク9a、燃料タンク9aの横側方に設けられたエンジン用のエアクリーナ9b、エアクリーナ9bよりも前側において燃料タンク9aの横側方に設けられたエンジン用の排気マフラー9cを有している。
【0028】
エンジン4は、走行機体2の後端部に設けられている。エンジン4は、クランクケース部4a、クランクケース部4aから横外斜め上向きに延びるシリンダー部4bを有している。クランクケース部4aは、クランクケース部4aの後部に形成されたフライホィール部4cを有している。エンジン4は、クランクケース部4aの下部が機体フレーム8に備えられたエンジン搭載部8cに連結されることによって機体フレーム8に支持されている。
【0029】
〔冷却風導入部の構成〕
エンジン4は、空冷式に構成され、エンジン冷却風を導入する冷却風導入部50を有している。冷却風導入部50は、
図5,7に示されるように、エンジン本体としてのクランクケース部4aから走行機体2の後向きに突出する状態で設けられている。
【0030】
具体的には、
図7に示されるように、冷却風導入部50は、回転ファン51と、回転ファン51の外周囲に位置する導風カバー52と、導風カバー52から後向きに突設された吸気カバー53と、を有している。
【0031】
回転ファン51は、エンジン4のフライホィール54の後部に一体形成されており、クランク軸55によって駆動される。導風カバー52は、フライホィールケースによって構成されている。本実施形態では、フライホィール54に一体形成された回転ファン51を採用しているが、フライホィール54とは別部材に構成された回転ファンを採用したものであってもよい。
【0032】
図4,5,7に示されるように、冷却風導入部50は、防塵ケース56によって覆われている。詳述すると、冷却風導入部50のうち、吸気カバー53が位置する部位が防塵ケース56によって覆われている。防塵ケース56には、冷却風導入部50が導入する冷却風の防塵ケース内への流入を許容し、冷却風に混入する刈り草などの塵埃の防塵ケース内への流入を防ぐ複数の通気穴56aが備えられている。防塵ケース56は、冷却風導入部50が導入する冷却風の除塵を行う。
【0033】
図7に示されるように、防塵ケース56の内部に、エンジン4を始動させるリコイルスタータ装置57が設けられている。リコイルスタータ装置57は、クランク軸55に連結され、かつ、始動用索58が備えられたスタータ装置本体57aと、スタータ装置本体57aを覆うスタータケース59と、を有している。吸気カバー53は、スタータケース59によって構成されている。
【0034】
始動用索58は、
図1に示されるように、吸気カバー53に設けられた貫通穴、および、防塵ケース56に設けられた貫通穴56bを通して防塵ケース56の外部に引き出され、防塵ケース56の外部に位置する始動用索58の端部にスタータグリップ58aが備えられている。防塵ケース56は、
図7に示されるように、縦壁部56cと、縦壁部56cの周部から前向きに延びる側壁部56dと、を有している。側壁部56dは、縦壁部56cの全周にわたって設けられている。始動用索58が挿通するように防塵ケース56に設けられた貫通穴56bは、防塵ケース56の側壁部56dに開口されている。貫通穴56bは、
図1に示されるように、防塵ケース56の取り外しが行われる際、始動用索58が貫通穴56bから切欠き口側(前側)に自ずと抜け出るように切欠き穴に構成されている。切欠き穴は、側壁部56dにおいて、防塵ケース56の開口側の側壁部56dの端縁から防塵ケース56の底側に向かって延びている。
【0035】
防塵ケース56は、
図7に示されるように、支持部材60に脱着可能に支持されるように構成されている。支持部材60は、導風カバー52に取付けられている。防塵ケース56の支持部材60への脱着可能な支持は、防塵ケース56の外部から防塵ケース56を挿通させて支持部材60に係合させる連結ボルトによって行われる。支持部材60は、防塵ケース56の側壁部56dが外嵌されるベース部60aと、ベース部60aから後向きに延ばされ、縦壁部56cの内面側が当て付けられるアーム部60bと、を有している。支持部材60は、防塵ケース56が取り付けられた状態において、側壁部56dによって形成される防塵ケース56の開口のうちの吸気カバー53から外れて位置する部位をベース部60aによって塞ぐように構成されている。
【0036】
冷却風導入部50においては、回転ファン51がクランク軸55によって駆動され、駆動される回転ファン51の送風作用により、防塵ケース56の外部に位置する空気が防塵ケース56の通気穴56aを通して除塵されて防塵ケース56の内部に導入され、さらに吸気カバー53の通気穴を通して吸気カバー53の内部に導入されて冷却風を発生させ、発生した冷却風が回転ファン51によってフライホィール54の周りを通してエンジン4に導入される。
【0037】
〔走行伝動装置の構成〕
図5,6に示されるように、走行伝動装置6は、エンジン4よりも前側に設けられたトランスミッション20、および、エンジン4とトランスミッション20との間に設けられた伝動ケース21を備えている。トランスミッション20には、
図6に示されるように、左右一対のクローラ走行装置1の駆動輪体13が駆動可能に支持されている。伝動ケース21には、
図10,12に示されるように、エンジン4の出力軸4dとトランスミッション20の入力軸20aとを連動連結するギヤ連動機構22が収容されている。出力軸4dは、エンジン4の前部から前向きに突出されている。入力軸20aは、トランスミッション20の後部から後向きに突出されている。
【0038】
走行伝動装置6においては、エンジン4の出力軸4dからの動力がギヤ連動機構22によって入力軸20aに伝達されてトランスミッション20に入力され、トランスミッション20によって左右の駆動輪体13に伝達される。
【0039】
具体的には、
図10,12に示されるように、ギヤ連動機構22は、出力軸4dに連動連結されて出力軸4dと一体に回転する出力軸側ギヤ23と、入力軸20aに連動連結されて入力軸20aと一体に回転する入力軸側ギヤ24と、を備えている。出力軸側ギヤ23の出力軸4dに対する連動連結は、出力軸側ギヤ23の支軸23aが出力軸4dに連動連結されることによって行われる。入力軸側ギヤ24の入力軸20aに対する連動連結は、入力軸側ギヤ24の支軸24aが中継軸25を介して入力軸20aに連動連結されることによって行われる。出力軸側ギヤ23と入力軸側ギヤ24とが噛み合わされており、ギヤ連動機構22は、出力軸4dの動力を逆転させて入力軸20aに伝達する。
【0040】
トランスミッション20は、
図6,12に示されるように、入力軸20aを有する入力分配部20Xと、入力分配部20Xの左側部に連結され、左の駆動輪体13を駆動可能に有する左走行駆動部20Lと、入力分配部20Xの右側部に連結され、右の駆動輪体13を駆動可能に有する右走行駆動部20Rと、を備えている。
【0041】
入力分配部20Xは、
図12に示されるように、入力軸20aを有する他、入力軸20aの動力がギヤ機構26aを介して伝達され、伝達された動力を左走行駆動部20Lと右走行駆動部20Rとに分配して伝達する分配伝達軸26を有している。
【0042】
左走行駆動部20Lおよび右走行駆動部20Rは、
図12に示されるように、分配伝達軸26の動力が入力される無段変速部27、無段変速部27によって変速された動力を駆動輪体13に伝達するギヤ伝達機構28を有している。無段変速部27は、静油圧式の無段変速装置によって構成されている。
【0043】
図5,6に示されるように、伝動ケース21は、連結機構65によってエンジン4に連結され、連結機構65を介してエンジン4に支持されるように構成されている。
【0044】
連結機構65は、
図5,6,9,11に示されるように、エンジン4と伝動ケース21との間に介在される連結部材66と、連結部材66をエンジン4に締結する第1締結具としての第1連結ボルト67と、伝動ケース21を連結部材66に締結する第2締結具としての第2連結ボルト68と、を備えている。
【0045】
図9に示されるように、連結部材66の中央部に、出力軸4dが挿通する貫通孔69が設けられている。貫通孔69の径は、出力軸4dの軸芯を中心とする円形状でエンジン4の前部に形成された凸部が嵌入する大きさにされている。連結部材66における貫通孔69の縁部に、第1連結ボルト67を取り付ける第1ボルト孔67aが設けられ、第1ボルト孔67aよりも連結部材66の外周側に位置する部位に、第2連結ボルト68を取り付ける第2ボルト孔68aが設けられている。連結部材66における第1連結ボルト67の取付けは、貫通孔69の縁部に行うように構成され、連結部材66における第2連結ボルト68の取付けは、第1連結ボルト67よりも連結部材66の外周側に位置する部位に行うように構成されている。第1連結ボルト67及び第2連結ボルト68は、複数箇所に取付けるように構成されている。
【0046】
伝動ケース21は、
図10,11,12に示されるように、出力軸4dの軸芯に沿う方向において2つの分割ケース21Aに分割されている。2つの分割ケース21Aの連結は、第1連結ボルト67および第2連結ボルト68とは別の第3締結具としての第3連結ボルト70によって行うように構成されている。
【0047】
入力軸20aと出力軸4dとは、機体上下方向において、かつ、機体横方向において異なる位置に位置するように配置されている。具体的には、入力軸20aは、出力軸4dよりも高い位置に配置されている。平面視において、入力軸20aは、走行機体2の左右方向での中心線CLの上に位置するように配置されている。出力軸4dは、入力軸20aよりも機体横側に位置するように配置されている。伝動ケース21は、
図10,11に示されるように、出力軸4dが連結されるように伝動ケース21の下部に形成されたエンジン側部21Eと、入力軸20aが連結されるように伝動ケース21の上部に形成されたミッション側部21Mと、を備えている。伝動ケース21と連結部材66との第2連結ボルト68による連結は、
図10に示されるように、エンジン側部21Eおよびミッション側部21Mのうちのエンジン側部21Eのみにおいて行うように構成されている。
【0048】
図10,11に示されるように、伝動ケース21に、ブリーザバルブ71が接続されている。
図10に示されるように、2つの分割ケース21Aのうちの一方の分割ケース21Aにおけるフランジ部21fに、ブリーザバルブ71を接続するブリーザ口72が開口されている。ブリーザ口72に向かう潤滑油の流動を防止する壁部73が分割ケース21Aの内部に突設されている。伝動ケース21の内部に位置する潤滑油が走行機体の傾斜あるいは揺れ動きによってブリーザバルブ71に漏れ出ることが壁部73によって防止される。
【0049】
伝動ケース21をエンジン4に支持するのには、次の取付け方法に基づいて行うことが可能である。
2つの分割ケース21Aを第3連結ボルト70によって連結した組み立て状態に伝動ケース21をしておく。
図9に示されるように、連結部材66をエンジン4に第1連結ボルト67によって連結する。次に、
図11に示されように、伝動ケース21のエンジン側部21Eを連結部材66に第2連結ボルト68によって連結する。
【0050】
〔作業伝動装置の構成〕
作業伝動装置7は、
図12に示されるように、トランスミッション20のミッションケースの内部に設けられた作業クラッチ74、トランスミッション20よりも前側に設けられた中継伝動装置75、草刈装置3の横側部に前部が連結された伝動ケース34、伝動ケース34の後部と中継伝動装置75とに亘って設けられた伝動筒33と、を備えている。
【0051】
作業クラッチ74は、エンジン4からトランスミッション20の入力軸20aに伝達された動力がギヤ連動機構76および伝動軸77を介して入力されるように構成されている。中継伝動装置75は、作業クラッチ74の出力が伝動軸78を介して入力され、入力された動力をギヤ連動機構79によって伝動軸80に伝達するように構成されている。伝動ケース34は、伝動軸80の動力が入力され、入力された動力をベルト伝動機構81によって刈刃43に伝達するように構成されている。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、エンジン4よりも前側にトランスミッション20が設けられた例を示したが、エンジン4よりも後側にトランスミッション20が設けられたものであってもよい。
【0053】
(2)上記した実施形態では、入力軸20aと出力軸4dとが機体上下方向において、かつ、機体横方向において異なる位置に位置する例を示したが、出力軸4dと入力軸20aとが機体上下方向において異なる位置に位置し、機体左右方向において同じ位置に位置するもの、あるいは、出力軸4dと入力軸20aとが機体上下方向において同じ位置に位置し、機体左右方向において異なる位置に位置するものであってもよい。
【0054】
(3)上記した実施形態では、草刈装置3が作業部として備えられた例を示したが、除雪装置など各種の作業装置が作業部として備えられたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、左右一対のクローラ走行装置によって支持される走行機体と、走行機体の前部に設けられた作業部と、走行機体に設けられたエンジンと、が備えられた作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 クローラ走行装置
2 走行機体
3 作業部(草刈装置)
4 エンジン
4d 出力軸
13 駆動輪体
20 トランスミッション
20a 入力軸
21 伝動ケース
21A 分割ケース
21E エンジン側部
21M ミッション側部
22 ギヤ連動機構
65 連結機構
66 連結部材
67 第1締結具(第1連結ボルト)
68 第2締結具(第2連結ボルト)
69 貫通孔
70 第3締結具(第3連結ボルト)