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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】自動車両駆動部用改装キットおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/00 20060101AFI20240524BHJP
   F02N 15/02 20060101ALI20240524BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20240524BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240524BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20240524BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20240524BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240524BHJP
【FI】
F02N11/00 G
F02N15/02 K
F02N11/08 Z
F02N11/00 J
F02N11/00 Z
B60K6/48 ZHV
B60K6/26
B60K6/40
B60K6/547
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020563809
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019052459
(87)【国際公開番号】W WO2019149866
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】102018201614.3
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520286485
【氏名又は名称】ハイドル,ローラント
【氏名又は名称原語表記】HEIDL,Roland
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ハイドル,ローラント
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-289476(JP,A)
【文献】特開2005-126021(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119128(WO,A1)
【文献】特開2008-239123(JP,A)
【文献】特開2006-168600(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012214457(DE,A1)
【文献】特開2011-213341(JP,A)
【文献】独国実用新案第202017002410(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/00
F02N 15/02
F02N 11/08
B60K 6/48
B60K 6/26
B60K 6/40
B60K 6/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(6)で駆動される既存の自動車両を、追加の電気駆動部を用いて改装することを可能にする改装キットであって、電動機(5)と、前記既存の自動車両の自動車両トランスミッション(動力取出し軸を備える自動車両トランスミッションを除く)用の、係合窓(18)を有するトランスミッションハウジング(1)、または係合窓(18)を有するトランスミッションハウジングのパーツ(2、3、4)と、前記電動機(5)が、前記既存の自動車両の前記自動車両トランスミッションのギヤ、または前記既存の自動車両の出力シャフトに連結されることを可能にする電動機-トランスミッション連結部(16)とを備える改装キット。
【請求項2】
前記電動機(5)および前記電動機-トランスミッション連結部(16)が、前記電動機(5)のみで駆動される少なくとも500kgの空車重量の自動車両が、少なくとも時速50kmで永続的に駆動できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の改装キット。
【請求項3】
前記改装キットが、前記電動機(5)をバッテリに接続することを可能にする、電気接続部と共に導電体を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の改装キット。
【請求項4】
少なくとも3kWh、好ましくは少なくとも5kWh、さらに好ましくは少なくとも10kWhの、バッテリ容量を有するバッテリが備えられていること、および/または前記バッテリの重量が80kg未満、好ましくは60kg未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の改装キット。
【請求項5】
前記改装キットが、前記係合窓(18)を有する前記トランスミッションハウジングのパーツ(3)に前記電動機(5)を固定することを可能にする固定手段(21)を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の改装キット。
【請求項6】
前記電動機(5)の、意図した運転電圧が、少なくとも30V、好ましくは少なくとも40V、さらに好ましくは48V、および/または100V未満、好ましくは60V未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の改装キット。
【請求項7】
前記改装キットが、エンジンオイル、トランスミッションオイル、さらには冷却水によっても、前記電動機(5)を冷却することを可能にする、1つ以上のホース(22)およびホース接続手段および/またはホース固定手段を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の改装キット。
【請求項8】
前記改装キットが、2つの電動機(5)を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の改装キット。
【請求項9】
既存の自動車両(動力取出し軸を備えるトランスミッションを備える既存の自動車両を除く)を、電気駆動部を用いて改装する方法であって、前記既存の自動車両のスタータが電動機(5)に置き換えられ、前記電動機(5)がトランスミッションのギヤ、または出力シャフトに連結されることを可能にする連結部が設置される、方法。
【請求項10】
2つの前記電動機(5)が前記既存の自動車両に設置されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2の電動機が、スタータ位置の横に配置されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2の電動機が、スタータピニオンまたは第1の電動機に連結されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を有する既存の自動車両、および内燃機関と電気駆動部とを備える自動車両用の駆動部のための改装キット、ならびに内燃機関を有する既存の自動車両を改装する方法に関する。
【0002】
内燃機関を有する既存の自動車両は、内燃機関によって駆動され、電気駆動部用の電動機を備えていない自動車両を意味する。既存の車両には、しばしば、例えば、内燃機関を始動するため(スタータ)、またはフロントガラス用のワイパーのために、使用される電動機が含まれている。しかし、このような電動機は、自動車両を駆動させることを可能にしない。したがって、このような電動機は、本発明における電気駆動部用の電動機ではない。
【0003】
本発明における、既存の自動車両の内燃機関では、例えば、シリンダ内に移動可能に設けられたピストンを動かすために、シリンダ内燃料と空気の混合気を燃焼させる。また、点火可能混合気は、シリンダ内の吸気および圧縮のストロークによって形成される。
【0004】
このような内燃機関は、ピストンの運動がクランクシャフトを回転させるような方法で、連接棒によってピストンに連結されたクランクシャフトを備えている。逆に、クランクシャフトの回転運動はピストンを駆動することができる、すなわち、ピストンを前後に動かすことができる。
【0005】
このような内燃機関は、アイドルストロークおよび死点を通るため、均一に回転しない。このため、このような内燃機関のクランクシャフトには、フライホイールが取り付けられる。回転しているフライホイールは、フライホイールの慣性により、内燃機関がアイドルストロークおよび死点を通っても、回転し続ける。したがって、フライホイールは、内燃機関の速度変動を補償する。
【0006】
内燃機関のクランクシャフトは、個々のシリンダのピストンが吸気および圧縮のストロークを通れるようにするために、回転しなければならない。このために必要となる回転運動は、スタータとしても知られる電動スタータモータによって、始動時に生成される。
【0007】
通常、スタータはフライホイールの近くに配置される。始動するために、スタータのシャフトは、以下スタータ-フライホイール連結部と呼ばれる連結部によって、フライホイールに連結される。一般的なスタータ-フライホイール連結部は、ピニオンを、初期位置から、フライホイールと噛み合わせて連結する位置まで移動させる磁気スイッチを備える。スタータのピニオンをフライホイールと噛み合わせると、スタータの電動機が作動されて、ピニオンを介してクランクシャフトを回転させる。この動作でピストンが動く。それによって、シリンダ内で点火可能混合気が生成され、点火される。このように内燃機関が始動されると、例えば、スタータ-フライホイール連結部のバイアスばねによって、ピニオンはその初期位置に戻るように動かされる。スタータ-フライホイール連結部は、内燃機関を始動させるためのみに、電動機からフライホイールにトルクが伝達されるような方法で連結され、連結解除される。
【0008】
通常、フライホイールは、トランスミッションも収容するハウジング内に配置される。このような場合、スタータはしばしば、トランスミッションハウジングに固定される。スタータは、電動機が配置されたハウジングに、固定されてもよい。
【0009】
クランクシャフトの速度を変換し、したがって、内燃機関の速度を、自動車両を駆動するために適した駆動速度に変換するために、内燃機関またはクランクシャフトは、以下クランクシャフト-トランスミッション連結部と称するクラッチまたは連結部によってトランスミッションに連結されている。クランクシャフト-トランスミッション連結部によって、クランクシャフトからトランスミッションへの回転運動の伝達を中断することができる。この場合、クランクシャフトは、トランスミッションと結合されておらず、すなわち、連結解除されており、トランスミッションは内燃機関から独立している。したがって、クランクシャフトの回転運動は、トランスミッションのシャフトに伝達されない。
【0010】
特に、内燃機関を有する、より旧式の自動車両では、運転中に多くの汚染物質が排出される。内燃機関を有する自動車両は、汚染物質排出量が規定限度を超える場合は、大都市で運転できない場合が多くある。
【0011】
内燃機関を有する既存の自動車両を、追加の電気駆動部を用いて改装することで、このような環境問題を解決することは、最先端技術から知られている。例えば、西独国実用新案公開第202017002410号明細書は、1本の車軸に駆動部を有した既存の自動車両用の付加的な電気駆動部を開示している。1つまたは2つの電動機を有する追加の駆動部が、以前では駆動されなかった車軸に、設置される。電気駆動部は、都市の中心部内では、電気駆動部のみによって駆動できるように、構成されている。
【0012】
国際公開第2007/023001号明細書は、内燃機関を有する既存の自動車両を、電気駆動部を用いて改装するための、オルタネータの交換部品を開示している。この公開広報から、その際にスタータが省略されてもよいこともわかる。
【0013】
西独国実用新案公開第102008032286号明細書から、内燃機関を有する既存の自動車両に電動機を装備させることも可能であることが、知られている。
【0014】
内燃機関を有する既存の自動車両が、電動機を用いて改装される場合は、いくつかの要件を観測しなければならない。既存の自動車両には、一般的に、設置可能スペースがほとんどないため、可能であれば、電動機は必要な設置スペースを拡大すべきではない。特に、例えば30年など、製造年代の一定の限度を越えて、クラシックカーとも呼ばれる、極めて旧式の自動車両の元の状態は、可能な限り変更されるべきではない。改装された自動車両を、都市の中心部で問題なく駆動できるようにするためには、電気のみを動力源として運転可能にするべきである。
【0015】
本発明の課題は、前述の要件の1つ以上を満たす内燃機関を有する自動車両を改装することである。好ましくは、ほとんど労力なく元の状態に復元することも可能であるべきである。
【0016】
本発明の課題は、請求項1の特徴を有する改装キット、および第1の付帯請求項の特徴を有する自動車両用の駆動部によって、解決される。本発明は、第2の付帯請求項の特徴を含む、既存の自動車両を改装する方法にも関する。従属請求項は、有利な実施形態に関する。
【0017】
請求項1によると、本発明は、内燃機関で駆動される既存の自動車両を、追加の電気駆動部を用いて改装するための改装キットに関する。この改装キットは、自動車両を駆動する電動機と、係合窓を有するトランスミッションハウジング、または係合窓を有するトランスミッションハウジングのパーツとを備える。本発明の意味における、自動車両を駆動するこの電動機は、以下電動機と呼ぶ。改装キットは、電動機がトランスミッションのギヤに連結されることを可能にする連結部も含む。この連結部は、以下電動機-トランスミッション連結部と呼ぶ。
【0018】
係合窓は、電動機が、係合窓を介して、電動機-トランスミッション連結部を用いてトランスミッションのギヤに連結されることを可能にする。したがって、この係合窓は、適切な大きさのハウジング開口部である。
【0019】
本発明の意味における電動機は、電気のみを動力源として時速数10kmの速度で自動車両が駆動されることが可能であるように、構成されている。したがって、電動機は、相応に高出力密度の電動機である。電力のみを動力源とすることは、内燃機関を用いずに自動車両を駆動できることを、意味する。電動機によって、少なくとも時速50kmの速度が出せることが好ましい。改装(載せ替え)した後に、自動車両は、電気のみを動力源として少なくとも時速50kmの速度で、駆動できる。電動機によって、少なくとも時速70kmの速度は、出せることが好ましい。
【0020】
この速度データは、少なくとも500kg、好ましくは少なくとも1000kg、さらに好ましくは少なくとも1500kgの空車重量の自動車両のデータを、特に参照している。したがって、電動機および電動機-トランスミッション連結部は、このような自動車両が少なくとも時速50km、好ましくは少なくとも時速70kmの速度で走ることができ、永続的にそうあるように、構成される。永続的とは、電動機の、または電動機とトランスミッションのギヤを接続させる電動機-トランスミッション連結部の過負荷によって、走行が中断されないことを意味する。
【0021】
一実施形態において、電動機および電動機-トランスミッション連結部は、電動機および電動機-トランスミッション連結部が装備された自動車両が時速80kmより速く走れないように、設けられる。これは特に、2000kgを超過しない空車重量の自動車両に当てはまる。
【0022】
この電動機はさらに、既存の自動車両の内燃機関用のスタータとしても役立つことができる。したがって、既存の自動車両のスタータは、電動機に置き換えられてもよい。こうすることで、元の状態と比較して、改装による設置スペースの増加を避けられる、あるいは、少なくともごく小規模なスペースに維持される。
【0023】
この改装キットは、一実施形態において、電動機をバッテリに接続できるようにする導電体および電気接続部を備える。この改装キットは、一実施形態において、少なくとも3kWh、好ましくは少なくとも5kWh、さらに好ましくは少なくとも10kWhのバッテリ容量のバッテリを備える。このようなバッテリ容量があることで、原則として電気のみを動力源として、少なくとも20kmの、したがって都市の中心部での走行距離の、走行が可能となる。
【0024】
本発明の一実施形態において、改装された自動車両の重量を決定的に増やさないために、このバッテリは、100kg以上、好ましくは70kg以上、さらに好ましくは60kg以上の、重量を有さない。
【0025】
本発明の一実施形態において、既存の車両のトランク内、ならびに/または既存の車両のシートの後ろおよび/もしくは下に、このバッテリは設置される。代替的、または追加的に、このバッテリはスペアホイールの凹部に設置される。スペアホイールは、本実施形態では省略されている。特に、十分な重量配分を達成するために、自動車両内でバッテリが分散されて設置されており、例えば、トランク内と、客室内の1つ以上のシートの下および/もしくは後方との両方、ならびに/またはスペアホイールの凹部に、設置されている。バッテリが分散されて設置されている場合は、これらの総重量は好ましくは100kg、より好ましくは70kg、さらに好ましくは60kgを、超過すべきではない。また、その総容量は、好ましくは少なくとも3kWh、より好ましくは少なくとも5kWh、さらに好ましくは少なくとも10kWhである。この客室は、人の輸送用に使用され、したがって人が用いるシートが配置された、自動車両の内装部である。「シートの後方」とは、それぞれのシートから見たときの、自動車両の前方移動方向に対する反対側を意味する。
【0026】
この電動機は、バッテリを充電するための発電機として使用されることができる。例えば、電動機は、ブレーキを支持し、それにより発電しバッテリを充電することが可能である。したがって、とりわけ、改装キットは、一実施形態において、バッテリ充電を制御することができる、電動機をバッテリに接続するための電子制御装置および導電体を含む。
【0027】
改装キットは、一実施形態において、バッテリの充電だけでなく、自動車両の電力駆動用の電力の取り出しを制御することを可能にする電子制御装置を備える。こうすることは、改装キットを用いて改装した後、自動車両が電気のみを動力源として駆動されることを確実にすることに役立つ。
【0028】
一実施形態において、改装キットは、電力の取り出しが、アクセルペダルの位置に応じて制御されるように、電子制御装置を既存のアクセルペダルに接続する接続手段を備える。したがって、駆動速度は、自動車両の運転者が慣れている方法で制御されることができる。既存のアクセルペダルは、改装する前の、既存の自動車両に既に存在するアクセルペダルを意味する。
【0029】
一実施形態において、改装キットは、電動機の連結と連結解除が制御されることを可能にするスイッチングデバイスを備える。スイッチングデバイスは、電気のみを動力源とした前進駆動位置、電気のみを動力源とした逆方向駆動位置、およびニュートラル位置のための、少なくとも3つの作動要素、または、少なくとも3つの作動可能要素を基本的に備える。ニュートラル位置において、電動機-トランスミッション連結部は連結解除位置にある。この場合、電動機のクランクシャフトの回転運動は、トランスミッションのシャフトに伝達されることができない。その他2つの位置において、電動機-トランスミッション連結部は、連結位置にあり、好ましくは同じ連結位置にある。電動機-トランスミッション連結部が、その他2つの位置にいて同じ連結位置にある場合は、この電動機は、反対方向に駆動されたとき反対方向に回転するように制御される。前進または逆方向に駆動されることができるように作動されたとき、内燃機関を用いた駆動のための伝統的な意味で、ギヤが係合されないように、トランスミッションは、好ましくはニュートラル位置に設定される。したがって、技術的な労力を小さくしておくことができる。さらに、不必要な電力損失も避けられる。
【0030】
好ましくは、この電動機は、トランスミッションハウジングを設けるための固定手段を備える。電動機とトランスミッションとの間の距離は、可能な限り短くしておくことが有利である。したがって、改装するための技術的労力と必要となる設置スペースを、最小限にしておくことができる。
【0031】
特に、電動機の固定手段は、電動機をハウジングにねじ留めすることができる、穴のあるフランジを備える。特に、このフランジは、また、既存の車両における既存のスタータのフランジの設計と同じように、設計される。この電動機は、また、既存の自動車両に固定されたときと同じように、かつ同じ場所に、固定される。したがって、技術的労力を最小限にしておくことができる。したがって、改装に必要となる設置スペースの拡大は、さらに改善された方法で避けられる。
【0032】
一実施形態において、改装キットの電動機-トランスミッション連結部は、電気のみを動力源とした駆動のために、既存の自動車両トランスミッション、すなわち元のトランスミッションと噛み合わせることができる、駆動ピニオンなどの駆動ギヤホイールを備える。駆動ギヤホイールを用いることで、この電動機は、時速数10kmの速度での電気のみを動力源とした駆動ができるように、ほとんど技術的労力なく、トランスミッションと連結されることができる。
【0033】
一実施形態において、この電動機-トランスミッション連結部は、トランスミッション入力シャフトのアイドラホイール、または駆動シャフトの固定ホイールにトルクを伝達する。
【0034】
トランスミッション入力シャフトのアイドラホイールとは、回転が固定される方法で、トランスミッション入力シャフトに接続することができる、トランスミッションのギヤホイールである。トランスミッション入力シャフトのアイドラホイールは、回転が固定される方法で、トランスミッション入力シャフトに接続されない位置にあることもできて、そうすることでトランスミッション入力シャフト、およびアイドラホイールが互いから独立して回転可能にできる。このようなトランスミッションにおいて、このようなアイドラホイールは、トランスミッションの駆動シャフトの固定ホイールに、永続的に噛み合わされる。クランクシャフト-トランスミッション連結部が連結されたとき、クランクシャフトの回転運動は、トランスミッション入力シャフトに伝達される。また、このアイドラホイールが、回転が固定される方法でトランスミッション入力シャフトに接続された場合は、固定ホイールと噛み合っていることから、この回転運動は駆動シャフトに伝達される。この駆動シャフトの回転運動は、対応する自動車両のホイールに伝達される。電気のみを動力源として駆動することが望ましい場合は、電気のみを動力源として自動車両を駆動するために、電動機-トランスミッション連結部を、トランスミッション入力シャフトのアイドラホイールに連結することで十分である。特に、容易に、かつ電力損失がまったくなく、電気のみを動力源として駆動できるようにするために、電気のみを動力源とした駆動は、回転運動がトランスミッション入力シャフトから駆動シャフトに伝達できるような方法で挿入されるギヤがないように制御されることが有利である。特に、アイドラホイールは、回転が固定される方法でトランスミッション入力シャフトに接続されない位置にある。
【0035】
駆動シャフトの固定ホイールとは、回転が固定される方法で、駆動シャフトに永続的に接続された、トランスミッションのギヤホイールである。このようなトランスミッションにおいて、このような、駆動シャフトの固定ホイールは、トランスミッションのトランスミッション入力シャフトのギヤホイールに、永続的には噛み合わされない。クランクシャフト-トランスミッション連結部が連結された状態にあるとき、クランクシャフトの回転運動は、トランスミッション入力シャフトに伝達される。駆動シャフトの固定ホイールが、このトランスミッション入力シャフトの関連するギヤホイールに対して適切に動かされた場合は、そのときに噛み合いが存在することからトランスミッション入力シャフトの回転運動は駆動シャフトに伝達される。駆動シャフトの回転運動は、関連する自動車両のホイールに伝達される。電気のみを動力源として駆動することが望ましい場合は、電気のみを動力源として自動車両を駆動するために、電動機-トランスミッション連結部を、駆動シャフトの固定ホイールに連結することで十分である。特に、容易に、かつ電力損失がまったくなく、電気のみを動力源として駆動できるようにするために、電気のみを動力源とした駆動は、回転運動がトランスミッション入力シャフトから駆動シャフトに伝達できるような方法で挿入されるギヤがないように制御されることが有利である。特に、固定ホイールは、トランスミッション入力シャフトのギヤホイールと噛み合っていない位置にある。
【0036】
本発明の有利な一実施形態において、このシフトレバーのギヤシフトレバーは、電気のみを動力源とした駆動中、適切な制御装置によって固定される。これにより、ユーザが、そのときに不都合な方法でギヤを使用することを防止できる。
【0037】
本発明の一実施形態において、この電動機は、関連する導電体の導体断面が不必要に大きくなることを避けるために、意図した運転電圧は、少なくとも30V、好ましくは少なくとも40V、さらに好ましくは48Vである。
【0038】
好ましくは、この電動機を運転するのに必要となる電圧は、追加で電気安全上の注意をする必要がないように、例えば96Vなどの100V未満、さらに好ましくは60V未満である。これにより、技術的労力を小さくしておくこと、および設置スペース要件の拡大を避けることができる。
【0039】
普通の車両の設計では、スタータが、トランスミッションハウジング、またはエンジンハウジング(エンジンブロック、またはクランクケースとも呼ばれる)に沿って配置されている。
【0040】
トランスミッションハウジングに沿って配置された場合(例えば、ポルシェ型)は、本発明の1例の電動機は、出力のために設計され、配置された2つのシャフト端部を持つ。第1のシャフト端部には、基本的には、標準的なスタータピニオンが装備され、始動のために、フライホイールのスタータリングギヤ内に設けられた状態で係合する。そして、電動機は、内燃機関を始動してもよい。したがって、この機能は、既存の車両のスタータと同一である。内燃機関を始動するために、通常、フランジ側に配置される第1のシャフト端部が使用される。
【0041】
運転中に、第2のシャフト端部は、車両のトランスミッションに、すなわち、トランスミッションのギヤホイールの1つに電動機のトルクを伝達する。技術的に簡易な一実施形態において、シャフトの第2の端部には、駆動用を意図したギヤホイールも装備される。これは、ピニオンであってもよく、以下駆動ピニオンと呼ぶ。
【0042】
有利な一実施形態において、元のスタータ連結部は、より改善された方法で技術的労力を最小限にしておくために、全体として、または部分的に、電動機-フライホイール連結部として用いられる。したがって、スタータ連結部および電動機-フライホイール連結部は、同一であってもよい。基本的には、これら2つの連結部は、構造において同一、または少なくとも本質的に同一である。したがって、スタータを、既存の自動車両を始動するためのフライホイールと連結できるスタータ連結部が用いられなくなった場合は、変形形態に変更する労力を最小化するために、元のスタータ連結部と構造において同一である電動機-フライホイール連結部が設けられることが好ましい。電動機-フライホイール連結部は、連結状態で、電動機のシャフトの回転運動を、内燃機関を始動するためのフライホイールに伝達する。
【0043】
以下の実施形態は、一方側でスタータピニオンを係合し、他方側で駆動ピニオンを係合するのに特に適切である。
【0044】
・実施形態1において、駆動ピニオン用の、別々に制御できるシフト装置が、従来の、スタータの伝磁気スイッチと同様に、電動機の第2のシャフト端部に取り付けられる。したがって、2つのピニオンがあり、各々がシフト装置を備え、一方はスタータピニオン用で、他方は駆動ピニオン用である。したがって、別々に制御できるシフト装置、および駆動ピニオンは、電動機をトランスミッションのギヤホイールに連結可能にするための、電動機-トランスミッション連結部の一部である。
【0045】
・第2実施形態において、電動機の2部式モータシャフトが設けられる。この2部式モータシャフトは、2つの別々の同心円状に回転するシャフトに分割され、これらはお互いに対して長手方向に移動することができ、長手歯部を介して回転が固定される方法で接続される。スタータピニオンまたは駆動ピニオンを作動位置にすることができるように、2部式モータシャフトの一方のパーツを、別々に制御できる変位駆動部がある。作動位置とは、トルクの伝達が可能となる連結状態をいう。本実施形態は、電動機-トランスミッション連結部および/または電動機-スタータ連結部を設けることを助ける。
【0046】
一実施形態において、スタータフランジに合う、電動機を固定するためのフランジ接続部が、固定およびトルクサポートのために、フライホイール側に配置される。したがって、電動機は、元々存在していたスタータフランジと同じように設けられる。加えて、第2の固定部が設けられる。例えば、中央または最後のトランスミッションハウジングの出力側に、トランスミッションハウジングに電動機が確実に固定されるように、電動機用の第2の固定部が設けられる。第2の固定部は、トランスミッションハウジングにねじ留めされるフランジも備えてもよい。トランスミッションハウジングがいくつかのパーツからなる場合は、係合窓を備えるハウジングのパーツが、このような固定部のために構成されることが好ましい。したがって、さらに改善された方法で、技術的労力を最小限にしておくことができる。
【0047】
スタータが、車両の異なる構成(例えば、メルセデス)において、エンジンハウジングに沿って配置されている場合は、フライホイールによる始動プロセス、およびトランスミッションへのトルク導入のための2つのピニオンが設けられている、一方のシャフト端部で十分である。2つのピニオンは、前述の構成におけるのと同様に、基本的には別々に制御でき、トランスミッションへの動力の導入は、電動機がトランスミッションハウジングに設けられる構成におけるのと同じように、制御されてもよい。
【0048】
特に、以下の運転機能がある。
【0049】
・電動機は、車両を駆動する。車両は、都市の中心部でのみ、電力を動力源として運転されることが好ましいので、最大速度は時速約70kmしかない。
【0050】
電動機は、前進走行のほかに、回転の方向を逆方向にすることで、逆方向走行を実現する。これは、電動機を連結するためには、1つのギヤしか必要がないことを意味する。
【0051】
・推力モード(例えば、ブレーキをかけたとき、もしくは、ガスを抜いたとき/アクセルペダルを上げたとき)において、電動機は、電力回復のための発電機としての機能を果たす。
【0052】
電動機からトランスミッションへの動力導入は、以下の実施形態による技術的に特に簡易的な方法で、実現されることができる。これらの構成部品は、本発明の改装キットの一部であってもよい。
【0053】
・トランスミッションのギヤホイールに対する、トランスミッション内の電動機の係合のために、係合窓が、トランスミッションハウジングの開口部の形で設けられる。
【0054】
・電動機のシャフトと、トランスミッション入力シャフトなどのトランスミッションのシャフトとの間のアキシャルオフセットは、一実施形態において、中間シャフトおよび中間ギヤによって、差を埋められる。中間シャフトおよび中間ギヤは、この改装キットに含まれてもよい。
【0055】
・代替的に、この改装キットに含まれてもよい、チェーン駆動部、ウォーム駆動部、またはメインシャフト(垂直シャフト、ベベルシャフト)が、アキシャルオフセットの差を埋めるために使用される。
【0056】
電動機のハウジングは、磁気スイッチを用いたスタータのハウジングと同様の、ベアリングシールド(エンドプレート)のような固定手段を用いた独立したシリンダ型ハウジングであると、有利である。その場合、電動機は、設置スペースを拡大する必要なく、スタータに置き換えることができる。
【0057】
本発明の一実施形態において、係合窓、すなわちトランスミッションハウジングの開口部の上に、フード、またはある種のキャップ(カウル)が配置され、これにより、トランスミッションハウジングの内装部内に動力を導入する装置を、シャフト通路、中間ギヤ、またはチェーンと共に密閉する。
【0058】
本発明は、現在のすべてのマニュアルトランスミッションに適用することができ、適切な変形を加えれば、オートマチックトランスミッションにも適用できる。
【0059】
本発明は、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン、ならびに乗用自動車両およびライトトラックに用いることができる。
【0060】
電動機は、有利な実施形態において、冷却装置によって冷却されてもよい。この冷却装置は、内燃機関のエンジンオイルが冷却液として役立つように、設計されることが好ましい。これにより、エンジンオイルを運転温度に保つことができる。一方で、技術的労力、および必要となる設置スペースを小さくしておくために、追加の機能が想定される。本実施形態を用いて、車両の常温始動中に、エンジンオイルの予熱も実現されてもよい。常温始動のフェーズにおいて、車両は、電気のみを動力源として駆動されることが好ましい。内燃機関は、より速い速度に達したときに、または所定距離の走行後にのみ、スイッチが入れられ、それによって内燃機関の寿命を向上させる。
【0061】
エンジンオイルは、直接的または間接的に、冷却剤として働く。
【0062】
本実施形態を実現するために、一実施形態において、オイルタンクと電動機との間にエンジンオイルを循環させ、電動機用の別の冷却装置を不要とするために、適切な接続ホースまたはパイプが配置される。この配置に要求される技術的労力は小さい。必要となる設置スペースも小さい。
【0063】
この課題を解決するために、内燃機関およびトランスミッションを有する自動車両用の駆動部も設けられ、内燃機関とトランスミッションとは第1の内燃機関-トランスミッション連結部によって連結される。この駆動システムは、内燃機関が始動されることを可能にする電動機を備える。第2の電動機-トランスミッション連結部があり、それを介して電動機をトランスミッションに連結することができる。
【0064】
第1の内燃機関-トランスミッション連結部によって内燃機関とトランスミッションとを連結することができるので、内燃機関からトランスミッションへのトルク伝達は連結解除することにより防止すれることができ、あるいは内燃機関からトランスミッションへのトルク伝達は連結することにより達成することができる。
【0065】
第2の電動機-トランスミッション連結部によって電動機とトランスミッションとを連結することができるので、電動機からトランスミッションへのトルク伝達は連結解除することにより防止することができ、あるいは電動機からトランスミッションへのトルク伝達は連結することにより達成することができる。
【0066】
したがって、トランスミッションは、選択的に、電動機によってまたは内燃機関によって駆動することができる。このような駆動部を用いることで、自動車両は、電気のみを動力源として、または内燃機関のみによって駆動することができる。電動機が2つの機能を実行するので、電動機のために必要となる追加の設置スペースは、少なくとも非常に小さい。一方で、電動機は、従来のスタータと同様に、内燃機関を始動するように働く。さらに、電動機は、自動車両が電気のみを動力源として駆動できるようにする。
【0067】
原則として、電動機は、トランスミッションのいずれのギヤホイールと連結されてもよい。本発明の一実施形態において、電動機-トランスミッション連結部は、トランスミッションの第2のギヤ、第3のギヤ、または逆行ギヤに電動機を連結できるようにする。マニュアルトランスミッションの場合、電動機は、連結状態で、トランスミッションの第2のギヤ、第3の、さらには以降の第4の、第5の、第6の、もしくは逆行ギヤのギヤホイールに、トルクを伝達する。このように設けられた電動機-トランスミッション連結部は、都市の中心部内で観測されるような、時速70kmを越えることはごく稀である中程度の速度で、電気のみを動力源としで駆動することに理想的である。これらのギヤは、都市の中心部で走行されるような比較的短距離の定期的な駆動を可能にする距離のために設計されている。
【0068】
マニュアルトランスミッションでは、変速比は、ギヤホイールの対によって実現される。これらのギヤホイールは、トランスミッション入力シャフトおよび駆動シャフト、もしくはメインシャフトおよびカウンタシャフトと呼ばれる、トランスミッションのシャフトに取り付けられる。例えば、マニュアルトランスミッションのメインシャフトに設けられたギヤホイールは、ギヤチェンジのために、1つのギヤホイールがマニュアルトランスミッションのカウンタシャフトに設けられた反対側のギヤホイールと係合するように移動される。代替的に、メインシャフトはトランスミッション入力部に爪連結部を介して接続されてもよい。これは、まさに第3のギヤの場合である。ギヤのシフトは、トランスミッションのシフト機構によって行われる。トランスミッションにおけるこの機構は、リンク部またはケーブル引き出しによってシフトレバーに接続される。本発明は、このようなマニュアルトランスミッションに特に適している。
【0069】
好ましくは、技術的労力を小さくしておくために、トランスミッションの1つのギヤのみ、したがって、例えば第2のギヤのみ、第3のギヤのみ、または逆行ギヤのみが第2の連結部を介して電動機と連結されてもよい。
【0070】
本発明の一実施形態において、電動機はトランスミッションが配置されたハウジングに固定される。このハウジングは、フライホイールも含む。このような実施形態は、前述の、スタータが既存の車両トランスミッションハウジングに既に固定されていて、したがって、既存の駆動部の近くに固定されている場合をいう。このような場合において、改装は、電動機用の追加スペースを提供することを必要とせずに可能である。したがって、従来のスタータは、ハウジング内部において、第2の連結部を介してトランスミッションの1つのギヤと連結されることができる、適切に設計された電動機に置き換えることができる。特に、より旧式のスタータでは、元の旧式のスタータの容量を超過する容量を有する電動機を使用する必要はない。
【0071】
スタータがトランスミッションに(の近くに)ではなく、内燃機関に(の近くに)ある自動車両が存在する。このような場合、電動機は、スタータモータと置き換わることができ、したがってフライホイールおよびトランスミッションと係合できることが好ましい。このような場合、電動機は、電動機から延びる一方のシャフト端部のみを主に備える。
【0072】
電動機の駆動シャフトは、有利な実施形態において、2つのパーツに分割される。このシャフトの2つのパーツは、長手歯部(参照符号25)を介して、回転が固定される方法で、かつ長手方向に変位できる方法で、共に連結される。他の連結可能要素も可能である。例えば、爪連結部は、トランスミッション内のギヤホイール(アイドラホイール)のために用いられるので、内部シャフト端部に設けられてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態において、電動機は100V未満、好ましくは50V未満の電圧で運転できるよいように構成されている。電動機の運転用の高い電圧を不要にすることによって、設置スペース提供の必要が生じる追加の安全対策をとる必要がない。これにより、従来のスタータのために提供される設置スペースと比較して、追加の設置スペースが事実上不要にもできるようになる。
【0074】
改装のために、係合窓を有する変形されたトランスミッションハウジングが、概してトランスミッションのギヤホイールのうちの1つに動力を適用するために設けられる。したがって、改装は、既存の自動車両トランスミッションハウジングの少なくとも1つのハウジングパーツを、係合窓を有するハウジングパーツに置き換えることを含む。電動機は、トランスミッションのギヤホイールのうちの1つに連結され、固定される。
【0075】
必要な電力が増加した場合、または、トランスミッションとアンダーボディとの間の利用可能スペースが望まれる出力の電動機のためには小さすぎる場合は、有利な実施形態において、2つの電動機が駆動部として設けられる。これら2つの電動機は、有利には、共に小さい設置スペース内で、車両駆動部用の動力を提供するために、互いに連結されてもよい。
【0076】
第2の電動機は、一実施形態において、スタータ位置内に配置された第1の電動機の横に配置される。本実施形態では特に、第1の電動機と第2の電動機とは、車両駆動部用の動力を共に提供するために互いに連結される。
【0077】
第2の電動機は、一実施形態において、スタータ位置側に配置される。ここでは通常、十分なスペースが利用可能である。この場合は、第2の電動機は、車両駆動部用の動力を提供するために、スタータピニオンと特に連結される。
【0078】
第2の電動機は、電動機-トランスミッション連結部によって、出力シャフトに連結されてもよい。本実施形態は、オートマチックトランスミッションを有する車両のためを特に意図している。
【0079】
オートマチックトランスミッションを有する車両の中には、シフト機構からの出力動力は、外部のいわゆるサイドシャフトを介してディファレンシャルギヤに伝達される車両がある。いくつかの車両の型において、サイドシャフトは、車両外側底部にトランスミッションハウジングに対して横方向に平行に、配置されている。このようなトランスミッションは、Tiptronic(登録商標)という商標名で知られる。本発明にしたがって、動力は、電動機からこの外部のサイドシャフトに有利に導入される。
【0080】
また、このサイドシャフトへの動力伝達は、有利な実施形態において、技術的に特に複雑ではない、ベルト駆動部またはチェーン駆動部を介して、実行されることができる。本実施形態は、トランスミッションがそれに沿って引っ張られる必要がないように、車両が電力を動力源として駆動するとき連結解除される、サイドシャフトの流れにおいて連結部を提供することが有利である。利点は、いくつかの車両の型では、電動機およびサイドシャフトがトランスミッションの同じ側に配置されることである。
【0081】
いくつかの車両トランスミッションの型では、スタータ位置およびサイドシャフトは、トランスミッションの同じ側になく、スペースの制約のために、電動機からサイドシャフトへの動力伝達が複雑であるか、あるいはまったく不可能である。これらの場合には、既存のスタータを保持しながら、電動機は別の場所に配置されてもよい。この場合は、スタータ機能および電動機の対応する構成要素は必要とならない。したがって、トランスミッションハウジングへの電動機の設置が変更される。制御の観点から、一実施形態において、この目的に特に適している回路の変形形態が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】トランスミッション側フランジ設置のための電動機を有するトランスミッションの図である。
図2】モータ部側のフランジ設置のための電動機を有するモータ区画の図である。
図3】トランスミッション側フランジ設置のための電動機の図である。
図4】モータ側フランジ設置のための電動機の図である。
【0083】
図1は、いくつかのハウジングパーツ2、3、4でできている、金属からなるトランスミッションハウジング1を有するトランスミッションを示す図である。ハウジングパーツ2、3、4は、ねじ接続部によって、着脱可能に互いに接続される。スタータの代わりに、電動機5がトランスミッションハウジング1にねじ留めされている。この電動機5は、標準的な自動車両を電気のみを動力源として地域の速度で駆動するように構成されている。電動機5を運転するために必要とされる電圧は48Vである。
【0084】
トランスミッションは、金属からなるエンジンハウジング内に配置された内燃機関6に接続されている。クランクシャフト7は、エンジンハウジング内に配置され、内燃機関6によって駆動される。フライホイール8は、クランクシャフト7の一端部で、回転が固定される方法でクランクシャフト7に接続される。フライホイールは、エンジン-トランスミッション連結部9に接続され、このエンジン-トランスミッション連結部9は、クランクシャフト7をトランスミッション入力シャフト10に連結することができる。エンジン-トランスミッション連結部9は、連結(係合)位置および連結解除(係合解除)位置をとることができる。連結位置においては、回転運動がクランクシャフト7からトランスミッション入力シャフト10に伝達され、したがってトルクが伝達される。連結解除位置においては、クランクシャフト7の回転運動は、トランスミッション入力シャフト10に伝達されない。
【0085】
トランスミッションは、駆動シャフト11を備える。ギヤホイール12、13はトランスミッション入力シャフト10に設けられ、ギヤホイール14、15は駆動シャフト11に設けられる。ギヤホイール12、15は、永続的に互いに連動し、したがって永続的に連結され、ギヤホイール12、15両方が同時にのみ回転することができる。ギヤホイール13は、スライド運動によってギヤホイール14と噛み合わせられてもよい。ギヤホイール13がギヤホイール14と噛み合わせられる場合は、2つの連結されたギヤホイール13、14は同時にのみ回転することができる。
【0086】
ギヤホイール12は、アイドラホイールである。ギヤホイール12は、適切な連結手順によって回転が固定される方法で、トランスミッション入力シャフト10に接続されてもよい。逆に、回転が固定された接続は、対応する連結手順によって解放されてもよい。すると、アイドラホイール12は、トランスミッション入力シャフト10から独立して回転することができる。
【0087】
その他のギヤホイール13、14、15は、固定ホイールである。したがって、ギヤホイール14、15は、回転が固定される方法で、永続的に駆動シャフト11に接続される。ギヤホイール13は、回転が固定される方法で、永続的にトランスミッション入力シャフト10に接続される。
【0088】
アイドラホイール12が連結手順によって、回転が固定される方法でトランスミッション入力シャフト10に接続された場合は、回転運動およびトルクは、トランスミッション入力シャフト10から固定ホイール15に伝達され、したがって、駆動出力シャフト11に伝達される。また、この回転運動、および関連する、駆動出力シャフト11のトルクは、関連する、自動車両のホイールに伝達され、これにより、例えば第2のギヤなどの、ギヤを有する自動車両を駆動する結果となり、したがって係合される。
【0089】
ギヤホイール13、14は、連結されると、例えば係合された第3のギヤなどの異なる係合ギヤを形成する。2つのギヤホイール13、14が、図1に示される連結解除位置から、連動するように互いに相対的に動かされると、内燃機関6がクランクシャフト7を駆動し、エンジン-トランスミッション連結部9が連結されたとき、関連する自動車両は、第3のギヤで駆動する。
【0090】
電動機-トランスミッション連結部16は、一方で電動機5のシャフト17に接続され、他方で駆動シャフト11の固定ホイール14に接続される。電動機-トランスミッション連結部16が連結状態であるとき、電動機5のシャフト17の回転運動および対応するトルクは、固定ホイール14に伝達される。固定ホイール14は回転が固定される方法で駆動シャフト11に常に接続されているので、自動車両を駆動するために、電気のみを動力源としてこのように駆動され得る駆動シャフト11も回転する。
【0091】
駆動シャフト11が電力を動力源として駆動される場合は、制御装置が、トランスミッション内で係合ギヤがないことを保証する。したがって、ギヤホイール13、14は互いに噛み合わせられない。アイドラホイール12は解放位置にあり、この解放位置においては、アイドラホイール12は、回転が固定される方法でトランスミッション入力シャフト10に接続されていない。この場合は、不利な電力損失を避けるために、駆動シャフト11の回転は、トランスミッション入力シャフト10に伝達され得ない。
【0092】
電動機5がトランスミッションに連結できるようにするために、ハウジングパーツ3は係合窓18、すなわち、それを介して電動機-トランスミッションの構成要素16の少なくとも1つの構成要素が通ることができる開口部を備える。
【0093】
電動機-フライホイール連結部19は、電動機のシャフト17をフライホイール8と連結するために設けられる。これは、一般的にスタータに用いられる連結部である。電動機-フライホイール連結部19が連結されると、シャフト17の回転運動、およびトルクはフライホイール8に伝達される。電動機-フライホイール連結部19が連結解除されると、シャフト17の回転運動はフライホイール8に伝達されない。
【0094】
電動機5は、一端面にフランジ20を備え、このフランジ20は、ねじ留めの目的で設けられたハウジングパーツ2に、スタータのための通常の方法で、ねじを用いてねじ留めされている。電動機5は、固定装置21によって中央のハウジングパーツ3にさらに固定される。ホースまたはパイプ22は、電動機5の周囲に配置され、モータオイルリザーバに接続されて、電動機がオイルによって冷却されることを可能にし、逆に、モータオイルが電動機5によって加熱されることを可能にする。
【0095】
本発明による改装キットは、フランジ20、電動機-トランスミッション連結部16、中央のハウジングパーツ3、固定装置21、およびホースまたはパイプ22と共に、電動機5を備える。本発明による改装キットは、さらに、電動機-フライホイール連結部19を、全体としてまたは部分的に、備えてもよい。中央のハウジングパーツ3は、固定装置21の1つ以上の構成要素に、永続的および固定的に接続されてもよい。電動機5も、固定装置21の、1つ以上の構成要素に、永続的および固定的に接続されてもよい。
【0096】
図2は、金属からなるエンジンハウジングと、いくつかのハウジングパーツ2、3、4からなるトランスミッションとを有する内燃機関6を示す。ハウジングパーツ2、3、4は、ねじ接続部によって、着脱可能に互いに接続される。電動機5は、スタータの代わりに元のスタータと同じようにねじ留めされる。電動機5は、図1に示された場合とは対照的に、内燃機関6の近くに配置される。電動機5は、有利には、さらに内燃機関6のハウジングに固定されてもよい。この目的のために、電動機5は、図4に示されたように固定装置21を備えてもよい。動力を導入する機能は、他の構成(「トランスミッションに設けられた電動機」)の機能と同様に実現される。図1に示された場合と対照的に、シャフト17は電動機5の一方側からのみ延出する。
【0097】
図3は、図1の場合に用いられる電動機5の構成の断面図を示す。電動機の、2部式モータシャフト17が設けられ、2部式モータシャフト17は、2つの別々の同心円状に延びるシャフト17a、17bに分割される。2つの別々の同心円状に延びるシャフト17a、17bは、長手方向に互いに対して軸方向に変位可能である。シャフト17a、17bは、長手歯部25によって回転が固定される方法で接続されてもよい。図示されていない、2部式モータシャフト17の一方のパーツ17aまたは17b用の、別々に制御できる変位駆動部がある。この変位駆動部は、スタータピニオン23および/または駆動ピニオン24が連結状態となるように一方のパーツ17aまたは17bを制御し、作動位置でトルクの伝達を可能にする。
【0098】
図4は、図2の場合に用いられる電動機5の構成の断面図を示す。電動機5の2部式モータシャフト17が設けられ、これは2つの別々の同心円状に回転するシャフト17a、17bに分割される。これら2つのシャフトは、長手方向において、お互いに対して軸方向に変位可能であって、長手歯部25を介して回転が固定される方法で接続されてもよい。図示されていない、2部式モータシャフト17の一方のパーツ17aまたは17b用の、別々に制御できる変位駆動部がある。この変位駆動部は、スタータピニオン23および/または駆動ピニオン24が連結状態となるように一方のパーツ17aまたは17bを制御し、作動位置でトルクの伝達を可能にする。電動機5は、フランジを備えてもよい固定装置21によって、内燃機関6のハウジングに固定される。また、元のスタータの固定方法と同一の固定を可能にするフランジ20がある。
図1
図2
図3
図4