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特許7493459抗薬物抗体(ADA)免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】抗薬物抗体(ADA)免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240524BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240524BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240524BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
G01N33/543 555J
C07K16/18
C07K19/00
C07K14/705
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020564556
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019040950
(87)【国際公開番号】W WO2020014194
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】62/696,016
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】オリベイラ サムナー, ジアーニ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ジーフア
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0226758(US,A1)
【文献】米国特許第03856469(US,A)
【文献】特表2016-530495(JP,A)
【文献】特表2010-527005(JP,A)
【文献】特開昭64-054356(JP,A)
【文献】特開平02-138872(JP,A)
【文献】国際公開第2005/031353(WO,A1)
【文献】Keguan Chen,False-positive immunogenicity responses are caused by CD20+ B cell membrane fragments in an anti-ofatumumab antibody bridging assay,Journal of Immunological Methods,2013年,Vol.394,Page.22-31
【文献】Karen Liao,Inhibition of interleukin-5 induced false positive anti-drug antibody responses against mepolizumab through the use of a competitive blocking antibody,Journal of Immunological Methods,2017年,Vol.441,Page.15-23
【文献】Sheng Dai,Development of a Method That Eliminates False-Positive Results due to Nerve Growth Factor Interference in the Assessment of Fulranumab Immunogenicity,The AAPS Journal,2014年,Vol.16 No.3,Page.464-477
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
C07K 16/18
C07K 19/00
C07K 14/705
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清サンプル中の薬物に対する抗薬物抗体(ADA)の存在を決定するための抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法であって、
前記血清サンプルを
第1の標識で標識された捕捉薬物、
第2の標識で標識された検出薬物、
薬物標的遮断試薬、および
第2の薬物標的遮断試薬と接触させることと、
弱い塩基性pHアッセイ条件下で、前記血清サンプルを前記捕捉薬物、前記検出薬物、および前記薬物標的遮断試薬、ならびに前記第2の薬物標的遮断試薬とともにインキュベートすることと、
前記薬物標的遮断試薬および前記第2の薬物標的遮断試薬を前記サンプル中に存在する前記薬物標的に結合させ、
それにより前記ADA架橋免疫アッセイにおける前記薬物標的の干渉を軽減することと、を含み、
前記弱い塩基性pHが、pH7.5~pH9.5であり、
前記薬物標的遮断試薬が、薬物標的遮断抗体であるか、または、IgG Fcドメインに融合された標的受容体の細胞外部分を含む薬物標的遮断試薬であり、前記第2の薬物標的遮断試薬が、薬物標的遮断抗体であるか、または、IgG Fcドメインに融合された標的受容体の細胞外部分を含む薬物標的遮断試薬であり、前記標的受容体が、前記捕捉薬物および/または前記検出薬物に対する前記薬物標的の結合を防止する、方法。
【請求項2】
前記抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイを実行することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬物標的遮断試薬が薬物標的遮断抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薬物標的が、可溶性タンパク質、可溶性または脱落した多量体薬物標的、あるいはホモ二量体薬物標的であり、前記可溶性タンパク質が、受容体に対するリガンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物標的遮断試薬が、IgG Fcドメインに融合された標的受容体の細胞外部分を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の薬物標的遮断試薬が、薬物標的遮断抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記薬物が、ヒト療法用モノクローナル抗体またはヒト化療法用モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記弱い塩基性pHが、pH8.3~pH8.9である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記血清サンプルが、ヒト血清サンプルである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記インキュベートすることが、室温で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイが、ハイスループットアッセイである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記捕捉薬物が、固体表面に付着している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の標識が、ビオチン標識、タンパク質A標識、タンパク質G標識、およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)標識からなる群から選択される、かつ/または前記第2の標識が、ルテニウム標識、放射線標識、光輝性標識、化学発光標識、蛍光標識、電気化学発光標識、および酵素標識からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記薬物標的遮断試薬および前記第2の薬物標的遮断試薬が薬物標的遮断抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記薬物標的遮断試薬がIgG Fcドメインに融合された標的受容体の細胞外部分を含み、前記第2の薬物標的遮断試薬が薬物標的遮断抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記弱い塩基性pHがpH8.3またはpH8.9である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2018年7月10日に出願された米国仮出願第62/696,016号に対する優先権の利益を主張する。前述の出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物療法(例えば、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチドなどの生物学的薬剤)は、臨床診療において非常に成功していることが証明されている。しかしながら、生物療法薬は、完全にヒト療法用モノクローナル抗体でさえ、薬物曝露の喪失、有効性の喪失、および重篤な有害事象などの所望されない影響を引き起こし得る抗薬物抗体(ADA)を生成する可能性を有する(Koren,E.,et al.Curr Pharm Biotechnol,2002,3(4):p.349-60;Schellekens,H.,Clin Ther,2002,24(11):p.1720-40)。したがって、免疫原性評価は、生物療法薬の安全性試験の重要な部分であり、規制当局からのものを含む、薬物開発の様々な段階での免疫原性試験においていくつかの推奨事項が発行されている(Shankar,G.,et al.,J Pharm Biomed Anal,2008,48(5):p.1267-81、Shankar,G.,et al.Nat Biotechnol,2007,25(5):p.555-61、Mire-Sluis,A.R.,et al.,J Immunol Methods,2004,289(1-2):p.1-16、Swanson,S.J.and J.Bussiere,Curr Opin Microbiol,2012,15(3):p.337-47、European Medicines Agency,C.f.M.P.f.H.U.,Guideline on Immunogenicity Assessment of Biotechnology-Drived Therapeutic Proteins.European Medicines Agency,London,UK,2007、およびUS Department of Health and Human Services,U.F.C.,CBER,Guidance for Industry--Assay Development for Immunogenicity Testing of Therapeutic Proteins(Draft).US Department of Health and Human Services,Washington,DC,USA,2009)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Koren,E.,et al.Curr Pharm Biotechnol,2002,3(4):p.349-60
【文献】Schellekens,H.,Clin Ther,2002,24(11):p.1720-40
【文献】Shankar,G.,et al.,J Pharm Biomed Anal,2008,48(5)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、血清サンプル中の薬物に対するADAの存在の決定に使用される抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法を対象とする。本発明の方法は、血清サンプルを第1の標識で標識された捕捉薬物、第2の標識で標識された検出薬物、および薬物標的遮断試薬と接触させることを含む。次に、この接触ステップに続いて、捕捉薬物、検出薬物、および薬物標的遮断試薬をインキュベートし、薬物標的遮断試薬がサンプル中に存在する薬物標的と相互作用することを可能にし、それによりADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的の干渉を軽減する。これに続いて、抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイが実行され得る。
本発明の一態様では、血清サンプルは、ヒト血清サンプルであり、特定の態様では、サンプルは、薬物で治療されている対象からのものである。
【0005】
別の態様では、薬物標的遮断試薬は、例えば、抗体などの結合分子である。結合分子が抗体である一実施形態では、それは、ヒト定常領域を含み得る。あるいは、別の実施形態では、薬物標的遮断抗体は、マウス定常領域を含む。
【0006】
一態様では、インキュベーションステップは、室温で実行される。別の態様では、インキュベーションは、弱い塩基性pH条件下で実施される。
【0007】
一態様では、本発明の薬物は、モノクローナル抗体(例えば、完全ヒトモノクローナル抗体)などの療法用結合分子または免疫グロブリンFcドメイン、例えば、ヒトを治療するために設計されたIgG1 Fcドメインに融合された受容体タンパク質などの療法用融合タンパク質など、ヒトを治療するために使用される療法用タンパク質である。特定の態様では、薬物は、療法用ヒトモノクローナル抗体である。
【0008】
本発明の一態様では、薬物標的は、例えば、受容体に対するリガンドなどの可溶性タンパク質である。特定の態様では、薬物標的遮断試薬は、IgG Fcドメインに融合された受容体の部分を含む。さらなる態様では、受容体の部分は、受容体の細胞外部分である。IgG Fcドメインは、マウスIgG FcドメインまたはヒトIgG Fcドメインであり得る。
【0009】
別の態様では、本発明の薬物標的は、可溶性、または脱落した二量体もしくは多量体の薬物標的である。特定の態様では、薬物標的は、ホモ二量体の薬物標的である。
【0010】
一態様では、本発明の捕捉薬物は、固体表面に付着している。特定の態様では、固体表面は、マイクロタイタープレートである。別の態様では、固体表面は、ストレプトアビジンでコーティングされている。
【0011】
一態様では、第1の標識は、ビオチン標識、タンパク質A標識、タンパク質G標識、およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)標識からなる群から選択される。別の態様では、第2の標識は、ルテニウム標識、放射線標識、光輝性標識、化学発光標識、蛍光標識、電気化学発光標識、および酵素標識からなる群から選択される。
【0012】
本発明の方法は、血清サンプルを第2の薬物標的遮断試薬と接触させることをさらに含み得る。この第2の薬物標的遮断試薬は、例えば、抗体などの薬物標的遮断結合分子である。一態様では、第2の薬物標的遮断抗体は、ヒト定常領域を含む。あるいは、第2の薬物標的遮断抗体は、マウス定常領域を含む。
【0013】
本発明は、血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するための抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法を提供し、これは、血清サンプルを第1の標識で標識された捕捉薬物、第2の標識で標識された検出薬物、第1の薬物標的遮断結合分子、および第2の薬物標的遮断結合分子と接触させることと、弱い塩基性pHアッセイ条件下で捕捉薬物、検出薬物、第1の薬物標的遮断結合分子、および第2の薬物標的遮断結合分子をインキュベートすることと、第1の薬物標的遮断結合分子および第2の薬物標的遮断結合分子がサンプル中に存在する薬物標的と相互作用することを可能にし、それによりADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的の干渉を軽減することと、を含む。特定の態様では、第1および第2の薬物標的遮断結合分子は、抗体である。
【0014】
本発明は、血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するための抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法をさらに提供し、ここで、薬物標的は、例えば、受容体に対するリガンドなどの可溶性タンパク質であり、本方法は、血清サンプルを第1の標識で標識された捕捉薬物、第2の標識で標識された検出薬物、1つ以上の薬物標的遮断結合分子(例えば、抗体)と接触させることを含み、弱い塩基性pHアッセイ条件下でインキュベーションすることを含み、ここで、捕捉薬物、検出薬物、および1つ以上の薬物標的遮断結合分子は、サンプル中に存在する薬物標的と相互作用し、それによりADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的の干渉を軽減する。
【0015】
本発明は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない以下の図面および詳細な説明により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(図1A~C)架橋免疫原性アッセイにおける可溶性二量体/多量体標的からの干渉を描写する。(A)ヒト血清サンプル中の陽性対照またはADAは、ビオチン化薬物およびルテニル化薬物を架橋し、真陽性ADAシグナルを生成する。(B)しかしながら、二量体/多量体標的はまた、ビオチン化薬物およびルテニル化薬物の両方に結合し、標的媒介偽陽性シグナルを生成し得る。(C)抗標的抗体または他の標的遮断試薬は、二量体標的のビオチン化薬物およびルテニル化薬物への結合を防止し、標的媒介偽陽性シグナルを無効にし得る。(C)の標識試薬は、捕捉薬物(1)、検出薬物(2)、および1つ以上の薬物標的遮断分子(3)を表す。
図2】(図2A~C)標的遮断抗体HuAb1およびアッセイpHのアッセイシグナルに対する影響を描写する。(A)標的遮断抗体がない場合、酸解離は、標的をおそらくその内因性結合タンパク質から放出することにより、ナイーブヒト血清サンプルのバックグラウンドアッセイシグナルを増加させた。(B)中性pH(約3ng/mL~150ng/mL)で100μg/mLのHuAb1を添加すると、標的許容レベルが改善し、HuAb1と弱い塩基性pHとの組み合わせでさらに改善(約1.1μg/mL)した。(C)塩基性アッセイ条件(pH8.3)で100μg/mLのHuAb1を添加すると、ナイーブヒト血清サンプルの標的媒介シグナルが大幅に低減した。
図3-1】(図3A~D)標的遮断抗体HuAb1およびアッセイpH8.3を使用して、異なる対象からの臨床研究サンプルの分析から得られたADAシグナルは、標的レベルと相関したが、それらの薬物動態プロファイルと一致しなかったことを描写する。(A)各臨床サンプルの標的濃度。(B)100μg/mLの標的遮断抗体HuAb1およびpH8.3を使用したADAシグナル。(C)試験された3人の対象の薬物X濃度プロファイル。(D)HuAb1(100μg/mL)および弱い塩基性pHと組み合わせた第2の抗標的抗体(100μg/mLのHuAb2)の添加は、臨床サンプルにおける標的媒介バックグラウンドシグナルを効果的に低減した。
図3-2】同上。
図4-1】(図4A~C)標的干渉を阻害するだけでなく、起こり得る偽陰性シグナルを回避するためにも、さらなるアッセイ最適化後のシグナル対ノイズ比(アッセイバックグラウンドシグナルと比較したサンプルのアッセイシグナル)を描写する。(A)HuSRとHuAb2との組み合わせは、臨床研究サンプル中の標的干渉を軽減する上で、HuAb1とHuAb2との組み合わせと同じくらい効果的であった。(B)および(C)のマウスFcを用いた標的遮断試薬(MsSRおよびMsAb2)はいっそう、臨床研究サンプル中の標的干渉を効果的に軽減する。
図4-2】同上。
図5】(図5)100μg/mLのMsSR、100μg/mLのMsAb2、およびアッセイpH8.3による臨床研究サンプル中の標的干渉の除去を描写する。4つの異なる時点(1日目、29日目、57日目、および113日目)で7人の対象からの臨床研究サンプル中でバックグラウンドアッセイシグナルのみが検出された。
図6-1】(図6A~B)免疫ウサギ血清およびラット毒物学サンプルにおけるポリクローナルADA検出に対する弱い塩基性アッセイpHおよび標的遮断試薬の最小限の影響を描写する。(A)弱い塩基性pH8.3は、薬物Fabで免疫したウサギ血清中のADA検出に悪影響を有しなかった。(B)改善されたアッセイ形式は、標的媒介シグナルを軽減し、ラット毒物学サンプル中の実際のADAシグナルを検出する。
図6-2】同上。
図7-1】(図7A~B)標的遮断試薬の不在下および存在下で、異なるアッセイpHによる標的の薬物への結合を描写する。(A)異なるアッセイ条件による結合会合および解離曲線。波長シフト(Δnm)は、標的の薬物への結合の結果としてバイオセンサーチップの厚さの変化に正比例する。標的の薬物への会合および解離は、pH7.3およびpH8.2で、pH7.3のMsAb2およびMsSRの存在下、ならびにpH8.2のMsAb2およびMsSRの存在下で示される。pH7.3およびpH8.2での緩衝液対照も示される。標的の薬物への結合は、pH8.3のみにより部分的に阻害される。中性アッセイpHのMsAb2とMsSRとの組み合わせは、標的の薬物への結合を大幅に低減し得るが、結合の完全な阻害は、MsAb2、MsSR、および弱い塩基性pHの組み合わせで達成される。(B)臨床サンプル中の標的媒介シグナルは、弱い塩基性pHのみ、または中性pHでのMsAb2およびMsSRの存在により部分的に阻害された。しかしながら、標的干渉の完全な阻害は、MsAb2、MsSR、およびpH8.3の組み合わせにより達成される。
図7-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0017】
医薬品、特に療法用タンパク質の免疫原性は、潜在的に深刻な副作用、有効性の喪失、および薬物曝露の変化につながる可能性があり、毒性、薬力学(PK)データ、および薬力学(PD)データの翻訳の複雑さから、臨床および前臨床研究において重要な課題である。ADAを検出および定量化するための抗抗体薬物(ADA)免疫アッセイは、生物療法薬の免疫原性を決定する上で重要である。しかしながら、薬物標的は、ADA免疫アッセイに干渉し、標的媒介偽陽性の結果をもたらし得る(図1Bを参照されたい)。標的レベルは、酸解離ステップ中の標的上方調節、ならびに標的:薬物および/または標的:結合タンパク質複合体からの標的の放出に基づいて高くなり得、通常、アッセイの薬物許容を改善するためにADAアッセイで用いられる。
【0018】
ADAは、通常、ADAを検出、確認、および力価測定するために、多層アプローチで試験される。スクリーニングアッセイは、通常、フローティングカットポイントを用いて、ADA陽性の可能性のあるサンプルを特定し、確認アッセイは、確認カットポイントを使用して、スクリーニングアッセイで観察された陽性反応が過剰な薬物の存在により阻害され得るかどうかを決定する(サンプルをADA陽性として確認する)。力価カットポイントは、陽性サンプル中のADAのレベルを評価するための力価アッセイで使用される。ADAアッセイは、典型的には、捕捉試薬および検出試薬の両方として薬物を使用する架橋形式を使用する。これらのアッセイは、セットアップおよび実行が比較的簡単で、ほとんどのIgG4を除くほとんどのアイソタイプ応答を検出し、優れた感度を提供する。それらは種特異的ではなく、ハイスループットである。しかしながら、可溶性または脱落した二量体もしくは多量体薬物標的は、アッセイを干渉し、標的媒介偽陽性の結果をもたらし得る。例えば、メポリズマブ治療を受けた患者の投薬後サンプルにおけるIL-5ホモ二量体の上昇は、ADA架橋アッセイで標的媒介偽陽性シグナルを生成することにより、観察されたADAアッセイ陽性の増加に寄与した(Liao,K.,et al.,J Immunol Methods,2017,441:p.15-23)。ホモ二量体であるNGFの存在はまた、ビオチンおよびルテニウム標識フラヌマブを架橋することにより、フラヌマブ投薬患者からのサンプル中に偽陽性アッセイシグナルを作成した(Dai,S.,et al.,AAPS J,2014,16(3):p.464-77)。細胞膜フラグメントに存在するCD20は、オファツムマブのADAアッセイでもマトリックス干渉を引き起こすことが報告された(Chen,K.,et al.,J Immunol Methods,2013,394(1-2):p.22-31)。さらに、酸解離が血清サンプル中の単量体標的を二量体化し、偽陽性シグナルをもたらすことが最近報告された(Zoghbi,J.,et al.,J Immunol Methods,2015,426:p.62-9)。
【0019】
標的の干渉の制限を試みるある特定の方法が報告されている。例えば、標的遮断抗体による前処理または標的結合タンパク質による遮断、ならびに標的免疫枯渇は、可溶性標的干渉を軽減するために使用されてきた(Liao,K.,et al.,J Immunol Methods,2017,441:p.15-23、Dai,S.,et al.,AAPS J,2014,16(3):p.464-77、Zhong,Z.D.,et al.,J Immunol Methods,2010,355(1-2):p.21-8、Weeraratne,D.K.,et al.,J Immunol Methods,2013,396(1-2):p.44-55、およびMaria M,L.J.,Wakshull E,Quarmby V.,AAPS National Biotechnology Conference.Seattle,WA,USA,2009)。ADAの検出に影響を与えることなく高度にグリコシル化された標的タンパク質からの干渉を遮断するための小麦胚芽凝集素(WGA)レクチンの使用を含む他の戦略が報告されている(Carrasco-Triguero,M.,et al.,Bioanalysis,2012,4(16):p.2013-26)。ADAのFc領域を検出するためにヒト可溶性Fcγ受容体I(hsFcγRI)を使用する別の代替アッセイ形式も可溶性標的干渉を軽減することが報告されているが、この形式は、すべての潜在的なADAアイソタイプを検出できない場合がある(Wessels,U.,et al.,Bioanalysis,2016,8(20):p.2135-45)。ADAおよび中和抗体(NAb)アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するためのいくつかの戦略を記載する白書が最近公開されている(Zhong,Z.D.,et al.,AAPS J,2017,19(6):p.1564-1575)。したがって、標的の干渉を克服し、非臨床研究および臨床研究の両方で有効な免疫原性評価を提供し得る信頼性の高い試験方法を開発することが重要である。
【0020】
本発明は、ADA免疫アッセイにおける標的干渉を軽減して、ADA免疫アッセイ、例えば、架橋免疫原性アッセイにおける偽陽性結果を低減するための方法を提供する。特に、本開示は、1つ以上の標的遮断試薬、例えば、抗体または標的受容体IgG Fc融合タンパク質と、弱い塩基性pHアッセイ条件との組み合わせが、有意なADA応答を示さなかったPKプロファイルを有する研究サンプルにおいて組換え標的タンパク質に対する高い許容および偽陽性結果のレベルの低減をもたらすという発見に少なくとも部分的に基づいている。したがって、本明細書に記載の方法は、標準的な酸解離手順および標的遮断抗体だけでは効果がない場合の標的干渉を軽減することを提供する。
【0021】
I.定義
本発明をより容易に理解できるようにするために、ある特定の用語が最初に定義される。さらに、パラメータの値または値の範囲が列挙されるときはいつでも、列挙された値の中間の値および範囲も本発明の部分であることが意図されることに留意されたい。
【0022】
以下の記載では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために、特定の番号、材料、および構成が記載される。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細なしで実施され得ることは当業者には明らかであろう。場合によっては、本発明を曖昧にしないように、周知の特徴が省略または簡略化され得る。
【0023】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0024】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、および2つの軽(L)鎖から構成される免疫グロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化され得、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。
【0025】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、免疫系に抗体またはそれに対する特定の細胞媒介免疫応答を産生させる任意の物質を意味する。疾患関連抗原は、免疫系に抗体またはそれに対する特定の細胞媒介応答を産生させる任意の疾患に関連する任意の物質である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「結合ドメイン」(「結合領域」または「結合部分」とも呼ばれる)は、標的と特異的かつ非共有的に会合、合体、または組み合わされる能力を有する分子またはその部分(例えば、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質)を指す。結合ドメインには、生体分子、分子複合体(すなわち、2つ以上の生体分子を含む複合体)、または他の目的の標的のための、任意の天然に存在する、合成、半合成、または組換えにより産生される結合パートナーが含まれる。例示的な結合ドメインには、一本鎖免疫グロブリン可変領域(例えば、scTCR、scFv)、受容体外部ドメイン、リガンド(例えば、サイトカイン、ケモカイン)、または生体分子、分子複合体、もしくは他の目的の標的に結合する特異的能力について選択される合成ポリペプチドが含まれる。
【0027】
本明細書で理解される場合、「結合分子」は、特定の標的と特異的に相互作用する分子である。そのような結合分子の例には、抗体(モノクローナル抗体を含む)およびそのフラグメント、操作された抗体、融合タンパク質、ならびに当業者に周知の他の同様の抗原結合分子が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本明細書で使用される場合、結合分子という用語は、標的と相互作用し得る受容体または受容体様分子を含む。
【0028】
「抗薬物抗体」または「ADA」は、例えば、可変ドメイン、定常ドメイン、または薬物の糖構造など、薬物の任意の領域に対して向けられ得る抗体である。そのような抗薬物抗体は、患者の免疫原性反応として抗体療法中に発生し得る(Pan,Y.,et al.,FASEB J.9(1995)43-49を参照されたい)。「抗薬物抗体」のほとんどは、薬物の相補的決定領域のうちの1つ以上に結合する。それらの薬物の抗原に対する抗薬物抗体の親和性は、一般に、その標的抗原に対する薬物の親和性と比較して低い。
【0029】
本明細書で使用される場合、「架橋免疫アッセイ」または「ADA架橋免疫アッセイ」という用語は、二価のADAが各々異なり、重複しないかまたは干渉しないADAのエピトープに結合する、2つの異なる結合分子(すなわち、捕捉薬物および検出薬物)により結合されるサンドイッチ型免疫アッセイを意味する。このアッセイでは、捕捉抗体、ADA、および検出抗体を含むサンドイッチが形成され、したがって、ADAはそれに結合する2つの抗体を架橋する(図1Aを参照されたい)。捕捉抗体は、固体表面、例えば、マイクロタイタープレートまたは他の固体表面に付着し得る。架橋免疫アッセイは、ハイスループットアッセイであり得る。一態様では、本明細書に記載のADA架橋免疫アッセイは、2つの抗体薬物、「捕捉薬物」および「検出薬物」を含む。一実施形態では、検出薬物および捕捉薬物は、「同じ」抗体分子を含み、例えば、同じ発現ベクターで組換え的に産生され、同じアミノ酸配列を含む。
【0030】
pHは、水溶液の酸性度または塩基性度を指定するために使用される対数目盛である。これは、水素イオンの1リットルあたりのモル数の単位で測定されるモル濃度の常用対数のほぼ負の値である。より正確には、水素イオンの活性の常用対数の負の値である。pHが7未満の溶液は酸性で、pHが7を超える溶液は塩基性である。アッセイ条件に関して本明細書で使用される場合、「弱い塩基性pH」という用語は、約pH7.5~約pH9.5のpHを指す。一態様では、弱い塩基性pHは、約pH8.0~約pH9.0のpHを含む。別の態様では、弱い塩基性pHは、約pH8.5~約pH9.5のpHを含む。別の態様では、弱い塩基性pHは、約pH7.5~約pH8.5のpHを含む。別の態様では、弱い塩基性pHは、約pH7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、または8.4のpHを含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「薬物」という用語は、疾患の治療のために個体に投与され得る療法用タンパク質またはその療法上有効な部分を指す。一態様では、薬物は、ヒト療法用モノクローナル抗体などのヒト療法用タンパク質、または免疫グロブリンFcドメイン、例えば、IgG1 Fcドメインに融合された受容体タンパク質などのヒト療法用融合タンパク質である。別の態様では、薬物は、ヒト化療法用モノクローナル抗体である。別の態様では、薬物は、キメラ抗体である。さらに別の態様では、薬物は、マウス抗体である。一態様では、療法薬物は、臨床試験で評価されている。
【0032】
抗体薬物などの療法薬物は、腫瘍性疾患、免疫性疾患、中枢神経疾患、血管疾患、および感染症などの様々な疾患の治療に広く使用されている。本発明の方法に含まれる抗体薬物には、規制当局または臨床試験もしくは前臨床試験において承認された任意の療法用抗体が含まれる。2018年現在、米国およびEUで承認されている抗体薬物には、ベズロトクスマブ、アベルマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、オクレリズマブ、ブロダルマブ、レスリズマブ、オララタマブ、ダラツムマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、インフリキシマブ、オビルトキサキシマブ、アテゾリズマブ、セクキヌマブ、メポリズマブ、ニボルマブ、アリロクマブ、イダルシズマブ、エボロクマブ、ジヌツキシマブ、ベバシズマブ、ペンブロリズマブ、ラムシルマブ、ベドリズマブ、シルツキシマブ、アレムツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、オビヌツズマブ、ブレンツキシマブ、ラキシバクマブ、ベリムマブ、イピリムマブ、デノスマブ、オファツムマブ、ベシレソマブ、トシリズマブ、カナキヌマブ、ゴリムマブ、ウステキヌマブ、セルトリズマブペゴル、カツマキソマブ、エクリズマブ、ラニビズマブ、パニツムマブ、ナタリズマブ、カツマキソマブ、ベバシズマブ、オマリズマブ、セツキシマブ、エファリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ファノレソマブ、アダリムマブ、トシツモマブ、アレムツズマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、インフリキシマブ、パリビズマブ、ネシツムマブ、バシリキシマブ、リツキシマブが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の方法で使用される薬物にはまた、開発中であるか、または前臨床もしくは臨床試験を受けている、すなわち、臨床試験で評価されている療法薬物が含まれる。
【0034】
抗体薬物は、例えば、IL-4R、IL-6R、IL-33、PD-1、CD20XCD3、LAG-3、IL-33、Fel d1、C5、ANGPTL-3、ACTIVIN A、GDF8、PCSK9、VEGF、NGF、またはebolaもしくはmers-covなどのウイルス抗原を含む任意の抗原を標的とする抗体を含み得る。
【0035】
本発明の方法で使用され得る追加の療法薬物には、例えば、エビナクマブ、トレボグルマブ、セミプリマブ、アリロクマブ、アフリベルセプト、ファシヌマブ、リロナセプト、およびサリルマブが含まれる。
【0036】
療法薬物には、承認された薬物のバイオシミラーバージョン、例えば、抗体または療法用融合タンパク質も含まれる。例えば、ALT-L9(Alteogen)、M710(Momenta/Mylan)、FYB203(Formycon(DE)/Santo Holding GmbH)、およびCHS-2020(Coherus)を含む開発中のアフリベルセプトバイオシミラー。
【0037】
本明細書で使用される場合、「薬物標的」は、薬物の標的を指す。例えば、一実施形態では、薬物標的は、二量体標的である。一実施形態では、薬物標的は、ホモ二量体薬物標的である。別の実施形態では、薬物標的は、多量体薬物標的である。別の実施形態では、薬物標的は、可溶性または脱落した薬物標的である。薬物標的はADA免疫アッセイにおいて干渉し、偽陽性のアッセイ結果をもたらし得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬物標的遮断試薬」は、免疫アッセイにおいて薬物標的に結合および/または薬物標的を遮断することができ、それにより、薬物標的の捕捉薬物または検出薬物への結合を防止することができる任意の試薬を指す。一実施形態では、薬物標的遮断試薬は、抗標的遮断抗体である。抗標的遮断抗体は、ヒト定常領域またはマウス定常領域を含み得る。別の実施形態では、薬物標的遮断試薬は、標的受容体IgG Fc融合タンパク質であり、ここで、融合タンパク質は、IgG Fcドメインに連結または融合された標的受容体の部分を含む。一態様では、標的受容体の部分は、受容体の細胞外部分である。特定の態様では、IgG Fcドメインは、ヒトIgG Fcドメインである。別の態様では、IgG Fcドメインは、マウスIgG Fcドメインである。本明細書で詳述されるように、ADA免疫アッセイ、例えば、ADA架橋免疫アッセイは、免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減する1つ以上の薬物標的遮断試薬を含み得る。例えば、一実施形態では、免疫アッセイは、1つの薬物標的遮断試薬を含み得る。別の実施形態では、免疫アッセイは、2つの薬物標的遮断試薬を含み得る。一実施形態では、両方の薬物標的遮断試薬は、薬物標的遮断抗体を含み得る。別の実施形態では、アッセイは、1つ以上の薬物標的遮断抗体および1つ以上の標的受容体IgG Fc融合タンパク質を含み得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「標識された」により修飾される実体または試薬(例えば、結合分子、捕捉薬物、検出薬物、抗薬物抗体(ADA)、薬物、タンパク質、酵素、抗体、抗体フラグメント、または関連する種)には、経験的に検出可能(例えば、「検出可能な標識」)である別の分子または化学物質と共役される任意の実体が含まれる。標識された実体の標識として好適な化学種には、ルテニウム、放射線標識、光輝性標識、化学発光標識、蛍光標識、電気化学発光標識、酵素標識、量子ドット、または光学色素標識が含まれるが、これらに限定されない。他の標識には、例えば、ビオチン、タンパク質A、タンパク質G、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)が含まれる。これらの標識は、捕捉薬物抗体を標識するために使用でき、次に固体表面に付着させることができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「蛍光標識」および「フルオロフォア」という用語は交換可能に使用され得、物質が異なる波長(励起波長)の放射により発光されるときに、ある特定の波長(発振波長)で光などの電磁気エネルギーを発振し、サンプル中の目的の分析物と特異的に相互作用または反応して、1つ以上の光シグナルを提供することができる化学的または生化学的分子またはそのフラグメントを包含することを意図する任意の物質を指すことができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「標的許容レベル」は、アッセイで標的媒介偽陽性シグナルを生成するために必要な標的の量として定義される(アッセイシグナルはプレートカットポイントより上である)。
【0042】
「サンプル」という用語は、生物または元は生物であったものからの任意の量の物質を含むが、これらに限定されない。そのような生物には、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、および他の動物が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、そのようなサンプルには、対象からの全血、血清、または血漿が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、サンプル、例えば、血清サンプルは、薬物の臨床試験または前臨床試験中に対象から得られたサンプルである。例えば、サンプルは、臨床試験中に薬物を投与した後に対象から得ることができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトまたは非ヒト生物を指す。したがって、本明細書に記載の方法および融合複合体は、ヒトおよび家畜の両方の疾患および状態に適用可能である。対象は、「患者」、すなわち、疾患もしくは状態のための医療を受けている生存しているヒトもしくは非ヒト生物、または病状もしくは特定の状態の存在/不在の兆候について調査されている定義されていない病気のヒトもしくは非ヒト生物であり得る。対象はまた、対象が試験目的で薬物を投与された、薬物の臨床試験の参加者も含む。
【0044】
「Fcドメイン」または「免疫グロブリンFc」または「Ig Fc」という用語は、免疫グロブリン重鎖の「フラグメント結晶化可能」領域を指すことを意味する。一般に、Fcドメインは、第2のFcドメインと相互作用して、二量体複合体を形成することができる。Fcドメインは、補体系のFc受容体および/もしくはタンパク質と呼ばれる細胞表面受容体に結合することができるか、またはこれらの結合活性を低減もしくは増強するように改変され得る。Fcドメインは、IgG、IgA、IgD、IgM、またはIgE抗体アイソタイプ(本明細書では、それぞれ、IgG Fcドメイン、IgA Fcドメイン、IgD Fcドメイン、IgM Fcドメイン、およびIgE Fcドメインと呼ばれる)に由来し得る。Fcドメインは、オプソニン作用;細胞溶解;肥満細胞、好塩基球、および好酸球の脱顆粒;ならびに他のFc受容体依存性プロセス;補体経路の活性化;ならびにインビボでのタンパク質の安定性を含む免疫活性に影響を与え得る。
【0045】
「ポリペプチド」という用語は、そのサイズに関係なく、20個の天然アミノ酸のいずれかを含む任意のポリマーを指すことを意味する。「タンパク質」という用語は、比較的大きなタンパク質に関連して使用されることが多く、「ペプチド」は、小さなポリペプチドに関連して使用されることが多いが、この分野でのこれらの用語の使用はしばしば重複する。「ポリペプチド」という用語は、特に記載のない限り、一般にはタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。一般に、本開示による有用なペプチドは、一般には、遠心分離またはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの標準的な分子サイジング技法により判断される場合、約0.1~100KD以上~最大約1000KD、好ましくは約0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、30~50KDである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「可溶性」という用語は、融合分子が、約5~37℃を超える温度、かつ低濃度または無濃度の陰イオンまたは非イオン性洗剤の存在下で中性pHまたは中性に近いpHで水溶液中に残留する場合に可溶性であることを意味する。これらの条件下では、可溶性タンパク質は、しばしば、低い沈降値、例えば、約10~50スヴェドベリ単位未満を有するであろう。本明細書で参照される水溶液は、典型的には、pHを確立するための緩衝化合物を有し、典型的には、約5~9のpH範囲内であり、約2mM~500mMのイオン強度範囲である。プロテアーゼ阻害剤または穏やかな非イオン性界面活性剤が添加される場合がある。さらに、必要に応じて、ウシ血清アルブミン(BSA)などの担体タンパク質が数mg/mLまで添加され得る。例示的な水性緩衝液には、標準的なリン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、または他の周知の緩衝液および細胞培地配合物が含まれる。
【0047】
「固体表面」という用語は、非流体物質を意味し、ポリマー、金属(常磁性、強磁性粒子)、ガラス、およびセラミックなどの材料から作製された粒子(微粒子およびビーズを含む)、シリカ、アルミナ、およびポリマーゲルなどのゲル物質;ポリマー、金属、ガラス、および/またはセラミックで作製され得る毛細管;ゼオライトおよび他の多孔質物質;電極;マイクロタイタープレート;固体ストリップ;キュベット、チューブ、または他の分光計サンプル容器を含む。
【0048】
「単離された」という用語は、自然の状態から人間の手により変更された組成物、化合物、物質、または分子を指す。例えば、自然界に存在する組成物または物質は、元の環境から変化または除去された場合、あるいはそれらの両方の場合に単離される。例えば、生きている動物に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、その天然状態の共存材料から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書で用いられる用語のように単離される。
【0049】
II.標的干渉の軽減
以下で詳述されるように、サンプル中のADAを検出するためのADA架橋免疫アッセイは、薬物標的干渉(偽陽性ADA)の影響を受け易い。ADA架橋免疫アッセイでは、サンプルは、捕捉薬物(標識または非標識)、および検出可能な標識を含む検出薬物とともにインキュベートされる。サンプルのインキュベーション後、捕捉薬物、ADA、および検出薬物を含むサンドイッチが形成され、したがって、ADAはそれに結合する2つの薬物を架橋し、結合したADAが検出され得る(図1Aを参照されたい)。ADA架橋アッセイの真陽性シグナルは、ADAが捕捉薬物および検出薬物に二価結合して架橋を形成することから生じる。しかし、二量体または多量体の標的が捕捉薬物および検出薬物を架橋し、それにより標的との架橋を形成する場合、偽陽性の結果が生じる(図1B、および例えば、Liao,K.,et al.,J Immunol Methods,2017,441:p.15-23を参照されたい)。
【0050】
本明細書で提供される実施例に示されるように、本発明は、ADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減し、それにより偽陽性の結果を低減するための方法を提供する。本方法は、弱い塩基性pHアッセイ条件で、サンプルを少なくとも1つの薬物標的遮断試薬とともにインキュベートすることを含む。
【0051】
一実施形態では、本発明は、血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するためのADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法を提供する。本方法は、血清サンプルを捕捉薬物、検出薬物、および1つ以上の薬物標的遮断試薬と接触させることを含む。次に、これらの成分は、弱い塩基性pHアッセイ条件下でインキュベートされ、薬物標的遮断試薬がサンプル中に存在する薬物標的と相互作用することを可能にし、それによりADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的の干渉を軽減する。
【0052】
一態様では、本方法は、以下に記載されるように、ADA架橋免疫アッセイを実行することをさらに含む。
【0053】
別の態様では、1つ以上の薬物標的遮断試薬は、免疫アッセイにおいて薬物標的に結合および/または薬物標的を遮断することができ、したがって、薬物標的の捕捉薬物および/または検出薬物への結合を防止する。特定の態様では、1つ以上の薬物標的遮断試薬は、抗体などの標的遮断結合分子である。さらに別の態様では、標的遮断抗体は、ヒト定常領域を含む。
【0054】
標的遮断結合分子(例えば、抗体)および薬物(例えば、抗体薬物)が同じヒト定常領域を有する場合、薬物のFc領域に特異的である血清サンプル中のADAは、標的遮断ヒト抗体に結合し得、かつアッセイでの検出を損なう可能性がある。標的遮断抗体のヒトIg領域をマウスIg領域で置き換えることにより、ADA検出による薬物標的遮断抗体の干渉の低減がもたらされ得る。したがって、一態様では、標的遮断抗体は、マウス定常領域を含む。
【0055】
ADA架橋免疫アッセイは、1つ以上の薬物標的遮断試薬を含み得る。一態様では、免疫アッセイは、2つの薬物標的遮断試薬を含む。特定の態様では、2つの薬物標的遮断試薬は、薬物標的遮断抗体、例えば、第1の薬物標的遮断抗体および第2の薬物標的遮断抗体である。より特定の態様では、第1および/または第2の標的遮断抗体は、ヒト定常領域を含む。別の特定の態様では、第1および/または第2の標的遮断抗体は、マウス定常領域を含む。さらに別の態様では、第1および第2の標的遮断抗体の両方が、ヒト定常領域を含む。さらに別の態様では、第1および第2の標的遮断抗体の両方が、マウス定常領域を含む。別の態様では、第1の標的遮断抗体はヒト定常領域を含み、第2の標的遮断抗体はマウス定常領域を含む。さらに別の態様では、第1の標的遮断抗体はマウス定常領域を含み、第2の標的遮断抗体はヒト定常領域を含む。
【0056】
一実施形態では、本発明は、血漿サンプルを捕捉薬物、検出薬物、第1の薬物標的遮断抗体、および第2の薬物標的遮断抗体と接触させることを含む、血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するためのADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法を提供する。これらの成分は、弱い塩基性pHアッセイ条件下でインキュベートされ、したがって、第1の薬物標的遮断抗体および第2の薬物標的遮断抗体がサンプル中に存在する薬物標的と相互作用することを可能にし、それによりADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的の干渉を軽減する。
【0057】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、ADA架橋免疫アッセイで使用される標的遮断抗体が、試験される薬物といくつかの共通のCDR VH再配列を共有し得ることを見出した。したがって、これらのVH再配列領域に特異的なADAは、サンプル中の標的遮断抗体に結合し得、かつアッセイでの検出を損なう可能性がある。検出を最適化するために、ヒトIgG Fcに融合した標的受容体を操作し、標的遮断抗体のうちの1つの代わりに本発明の方法で使用した。
【0058】
一実施形態では、本発明の方法で使用される薬物標的遮断試薬のうちの1つ以上は、IgG Fcドメインに融合された標的受容体の部分(標的受容体IgG Fc融合タンパク質)を含む。一態様では、標的受容体の部分は、受容体の細胞外部分である。別の態様では、標的受容体IgG Fc融合タンパク質は、可溶性である。特定の態様では、標的受容体IgG Fc融合タンパク質のIgG Fcドメインは、ヒトIgG Fcドメインである。
【0059】
標的受容体IgG Fc融合タンパク質および薬物がヒトIgGFc領域を有する場合、薬物のFc領域に特異的である血清サンプル中のADAは、標的受容体IgG Fc融合タンパク質に結合し得、かつアッセイでの検出を損なう可能性がある。標的受容体IgG Fc融合タンパク質のヒトIg Fc領域をマウスIg領域で置き換えることにより、ADA検出による標的受容体IgG Fc融合タンパク質の干渉の低減がもたらされ得る。したがって、別の態様では、標的受容体IgG Fc融合タンパク質のIgG Fcドメインは、マウスIgG Fcドメインである。
【0060】
アッセイは、1つ以上の薬物標的遮断抗体および1つ以上の標的受容体IgG Fc融合タンパク質を含み得る。さらに、アッセイは、標的遮断抗体および標的受容体IgG Fc融合タンパク質を含み得る。
【0061】
したがって、一実施形態では、本発明は、血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するためのADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法を提供し、ここで、薬物標的は、例えば、受容体に対するリガンドなどの可溶性タンパク質であり、本方法は、血清サンプルを捕捉薬物、検出薬物、IgG Fcドメインに融合された受容体の細胞外部分を含む薬物標的遮断試薬、および薬物標的遮断抗体と接触させることを含む。これらの成分は、弱い塩基性pHアッセイ条件下でインキュベートされ、薬物標的遮断試薬および薬物標的遮断抗体がサンプル中に存在する薬物標的と相互作用することを可能にし、それによりADA架橋免疫アッセイにおける薬物標的の干渉を軽減する。
【0062】
一態様では、IgG Fcドメインは、マウスIgG Fcドメインである。別の態様では、IgG Fcドメインは、ヒトIgG Fcドメインである。さらに別の態様では、薬物標的遮断抗体は、ヒト定常領域を含む。さらに別の態様では、薬物標的遮断抗体は、マウス定常領域を含む。一態様では、標的受容体IgG Fc融合タンパク質はマウスIgG Fcを含み、標的遮断抗体はマウス定常領域を含む。
【0063】
一実施形態では、標的遮断試薬は各々、約10μg/mL~約200μg/mLのADA架橋免疫アッセイにおける濃度を有する。一態様では、標的遮断試薬は各々、約20μg/mL~約175μg/mLの濃度を有する。別の態様では、標的遮断試薬は各々、約30μg/mL~約150μg/mLの濃度を有する。さらに別の態様では、標的遮断試薬は各々、約40μg/mL~約125μg/mLの濃度を有する。さらに別の態様では、標的遮断試薬は各々、約50μg/mL~約100μg/mLの濃度を有する。別の態様では、標的遮断試薬は各々、約50、60、70、75、80、85、90、95、または100μg/mLの濃度を有する。別の態様では、標的遮断試薬は各々、約100μg/mLの濃度を有する。
【0064】
本明細書に記載の標的干渉を軽減するための方法は、弱い塩基性pHアッセイ条件下でADA免疫アッセイを実行することを含む。弱い塩基性pHは、中性pHよりわずかに高いpH値の範囲を含む。一実施形態では、弱い塩基性pHは、約pH7.5~約pH9.5のpHを指す。一態様では、弱い塩基性pHは、約pH7.5~約pH8.5のpHを含む。一態様では、弱い塩基性pHは、約pH8.5~約pH9.0のpHを含む。一態様では、弱い塩基性pHは、約pH8.0~約pH9.0のpHを含む。別の態様では、弱い塩基性pHは、約pH8.5~約pH9.5のpHを含む。
【0065】
III.ADA免疫アッセイ
免疫アッセイは、当業者に周知されている。そのようなアッセイを実施するための方法、ならびに実際の適用および手順は、当技術分野で周知されており、例えば、Colowick,S.P.and Caplan,N.O.(eds.),“Methods in Enzymology”,Academic Press,dealing with immunological detection methods,especially volumes 70,73,74,84,92,and 121に記載されている。異なる免疫アッセイの原理は、例えば、Hage,D.S.(Anal.Chem.71(1999)294R-304R)により記載されている。免疫アッセイで使用するための抗体の配向固定化について記載しているLu,B.,et al.(Analyst 121(1996)29R-32R)。アビジン-ビオチン媒介免疫アッセイは、例えば、Wilchek,M.,and Bayer,E.A.,in Methods Enzymol.184(1990)467-469により記載されている。
【0066】
一般的に使用されるADAアッセイ法は、架橋免疫アッセイである(例えば、Liao,K.,et al.,J Immunol Methods,2017,441:p.15-23、Dai,S.,et al.,AAPS J,2014,16(3):p.464-77、およびZhong, Z.D.,et al.,AAPS J,2017.19(6):p.1564-1575を参照されたく、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)。ADA架橋免疫アッセイはサンドイッチ型免疫アッセイであり、ここで、多価ADAは2つの異なる抗体薬物(捕捉薬物および検出薬物)に結合し、各々がADAの異なる重複しないかまたは干渉しないエピトープに結合する。特に、このアッセイでは、サンプルは、捕捉薬物(標識または非標識)、および検出可能な標識を含む検出薬物とともにインキュベートされる。サンプルのインキュベーション後、捕捉薬物、ADA、および検出薬物を含むサンドイッチが形成され、したがって、ADAはそれに結合する2つの薬物を架橋し、結合したADAが検出され得る(図1Aを参照されたい)。一態様では、免疫アッセイは、ハイスループットアッセイである。
【0067】
ADA架橋免疫アッセイは、ADAの存在または量を決定することをさらに含む。したがって、本開示は、検出可能な標識に共役された検出薬物を提供する。本発明の方法のいずれかに対する検出可能な標識の非限定的な例には、ルテニウム、放射線標識、光輝性標識、化学発光標識、蛍光標識、フルオロフォア、ハプテン、電気化学発光標識、または酵素標識が含まれる。検出可能な標識は、当業者に既知の機器およびデバイスを使用して測定され得る。
【0068】
本明細書で提供される方法で使用するための代表的なフルオロフォアには、例えば、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、フルオレセイン、フルオレセイン5-イソチオシアネート(FITC)、シアニン色素(Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7)、ボディピー色素(Invitrogen)および/またはAlexa Fluor色素(Invitrogen)、ダンシル、ダンシルクロリド(DNS-C1)、5-(ヨードアセタミダ)フルオレセイン(5-IAF、6-アクリロイル-2-ジメチルアミノナ-フタレン(アクリロダン))、7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イルクロリド(NBD-Cl)、臭化エチジウム、ルシファーイエロー、ローダミン色素(5-カルボキシローダミン6G塩酸塩、リサミンローダミンB塩化スルホニル、ローダミン-B-イソチオシアネート(RITC(ローダミン-B-イソチオシアネート)、ローダミン800);テトラメチルローダミン5-(および6-)イソチオシアネート(TRITC))、テキサスレッド、塩化スルホニル、1-アニリノナフタレン-8-スルホン酸(ANS)および6-(p-トルイジニル)ナフタレン-e-2-スルホン酸(TNS)を含むがこれらに限定されないナフタルアミンスルホン酸、アントロイル脂肪酸、DPH、パリナル酸、TMA-DPH、フルオロニル脂肪酸、フルオレセイン-ホスファチジルエタノールアミン、テキサスレッド-ホスファチジルエタノールアミン、ピレニル-ホスファチジルコリン、フルオレニル-ホスファチジルコリン、メロシアニン540、ナフチルスチリル、3,3’ジプロピルチアジカルボシアニン(ジS-C3-(5))、4-(p-ジペンチルアミノスチリル-1-メチルピリジニウム(ジ-5-ASP)、Cy-3ロドアセタミド、Cy-5-N-ヒドロキシスクシンイミド、Cy-7-イソチオシアネート、IR-125、チアゾールオレンジ、アズールB、ナイルブルー、Alフタロシアニン、オキサキシン1,4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、(DAPI)、Hoechst 33342、TOTO、アクリジンオレンジ、エチジウムホモ二量体、N(エトキシカルボニルメチル)-6-メトキシキノリニウム(MQAE)、Fura-2、カルシウムグリーン、カルボキシSNARF-6、BAPTA、クマリン、ファイトフィオール(phytofiuor)、コロネン、ならびに金属-リガンド複合体が含まれる。
【0069】
本明細書で提供される方法で使用するためのハプテンには、例えば、ジゴキシゲニン、およびビオチンが含まれる。
【0070】
本明細書で提供される方法で使用するための酵素には、例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、大豆ペルオキシダーゼ(SBP)、ウレアーゼ、β-ラクタマーゼ、およびグルコースオキシダーゼが含まれる。
【0071】
一実施形態では、捕捉薬物は、固体表面に共役される。一態様では、捕捉薬物の固体表面への共役は、特定の結合対を介して実行され、ここで、捕捉薬物は、標識または共役される。一態様では、特異的結合対(第1の成分/第2の成分)は、ストレプトアビジンまたはアビジン/ビオチン、ビオチン/ニュートラビジン、ビオチン/カプタビジン、抗体/抗原(例えば、Hermanson,G.T.,et al.,Bioconjugate Techniques,Academic Press,1996を参照されたい)、エピトープ/抗体、タンパク質A/免疫グロブリン、タンパク質G/免疫グロブリン、タンパク質L/免疫グロブリン、GST/グルタチオン、Hisタグ/ニッケル、FLAG/M1抗体、マルトース結合タンパク質/マルトース、カルモジュリン結合タンパク質/カルモジュリン、酵素/酵素基質、レクチン/多糖、ステロイド/ステロイド結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、および受容体-リガンド結合対から選択される。一態様では、捕捉薬物は、ビオチンに共役される(特異的結合対の第1の成分として)。この場合、固相への共役は、固定化されたアビジンまたはストレプトアビジンを介して実行される(図1Aを参照されたい)。
【0072】
いくつかの実施形態では、GlcNac結合タンパク質は、結合対の第1のメンバー(例えば、ビオチン、アビジン、ニュートラビジン、キャプタビッド、抗体、抗原、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質L、GST、Hisタグ、FLAG、MBP、カルモジュリン結合タンパク質、酵素、受容体、またはリガンド)に共役される。
【0073】
一実施形態では、ADA免疫アッセイで試験されるサンプルは、血清サンプルである。一態様では、血清サンプルは、1%~20%の血清を含む。一態様では、血清サンプルは、約1%~約10%の血清を含む。別の態様では、血清サンプルは、約10%~約15%の血清を含む。さらに別の実施形態では、血清サンプルは、約10%~約20%の血清を含む。さらに別の実施形態では、血清サンプルは、約15%~約20%の血清を含む。特定の態様では、血清サンプルは、約1%の血清を含む。一態様では、血清は、ヒト血清である。
【0074】
一実施形態では、ADA架橋免疫アッセイは、酸解離ステップを含む。一態様では、血清サンプルは、酸、例えば、酢酸で10倍に希釈され、捕捉薬物および検出薬物とのインキュベーションの前に室温でインキュベートされる。
【0075】
一実施形態では、捕捉薬物および検出薬物は、免疫アッセイにおいて約0.5μg/mL~約10μg/mLの濃度を有する。一態様では、捕捉薬物および検出薬物は、0.5μg/mL超~10μg/mL未満の濃度を有する。別の態様では、捕捉薬物および検出薬物は、約0.5μg/mL~約5μg/mLの濃度を有する。さらに別の態様では、捕捉薬物および検出薬物は、約0.5μg/mL~約2.0μg/mLの濃度を有する。さらに別の態様では、捕捉薬物および検出薬物は、約0.5μg/mL~約1μg/mLの濃度を有する。好ましい態様では、捕捉薬物および検出薬物は、約0.5μg/mLの濃度を有する。
【0076】
一実施形態では、サンプル、捕捉薬物、および検出薬物のインキュベーションは、室温で実施される。一態様では、サンプル、捕捉薬物、および検出薬物のインキュベーション時間は、少なくとも0.5時間である。別の態様では、インキュベーション時間は、少なくとも1時間である。一態様では、インキュベーション時間は、少なくとも1.5時間である。一態様では、インキュベーション時間は、最大2時間である。さらに別の態様では、インキュベーション時間は、0.5時間~12時間である。一態様では、インキュベーション時間は、0.5時間~5時間である。別の態様では、インキュベーション時間は、1時間~12時間である。一態様では、インキュベーション時間は、1時間~5時間である。別の態様では、インキュベーション時間は、5時間~12時間である。
【0077】
一実施形態では、サンプル、捕捉薬物および検出薬物のインキュベーションに続いて、サンプルは、標識された固体表面、例えば、ストレプトアビジンで標識された固体表面に移され、さらにインキュベートされ、その結果、捕捉薬物は、固体表面に付着する。一態様では、インキュベーションは、室温である。別の態様では、インキュベーションに続いて、サンプルは、標識抗体の検出について当技術分野で既知の任意の方法を使用してADAへの結合について分析され、ここで、検出薬物は、薬物標識、例えば、ルテニウムの検出に基づいて検出される。ADA架橋アッセイの真陽性シグナルは、ADAが捕捉薬物および検出薬物に二価結合して、架橋を形成することから生じる。
【0078】
本明細書に記載の免疫アッセイ用の固体表面は、最新技術で広く記載されている(例えば、Butler,J.E.,Methods 22(2000)4-23を参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。アッセイの固体表面成分は、「固体表面」がその表面上に捕捉薬物と相互作用することを意図する少なくとも1つの部分を含有するという点で、アッセイが接触し得る不活性固体表面とは区別される。固体表面は、チューブ、ストリップ、キュベット、もしくはマイクロタイタープレートなどの固定成分であり得るか、またはビーズおよび微粒子などの非固定成分であり得る。微粒子は、均一な表面形式の固相としても使用され得る。タンパク質および他の物質の非共有付着または共有付着のいずれかを可能にする様々な微粒子が使用され得る。そのような粒子には、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)などのポリマー粒子、金ナノ粒子および金コロイドなどの金粒子、ならびにシリカ、ガラス、および金属酸化物粒子などのセラミック粒子が含まれる。例えば、Martin,C.R.,et al.,Analytical Chemistry-News&Features 70(1998)322A-327Aを参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
本発明は、以下の実施例によりさらに例示されるが、これは、決して限定することを意図するものではない。本出願を通して引用されたすべての参考文献、特許、および公開された特許出願の全内容、ならびに図は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0080】
実施例1:標的遮断試薬および弱い塩基性pHによる架橋免疫原性アッセイにおける標的干渉の軽減
材料および方法
材料および試薬
本明細書に記載の機能的薬物アッセイおよび標的アッセイについて、特に明記しない限り、すべての溶液をアッセイ緩衝液(0.5%BSA、0.05%Tween(登録商標)-20、1X PBS)で調製した。本明細書に記載のADAアッセイについて、特に明記しない限り、すべての溶液を1%BSA、1XPBSで調製した。PBSは、Life Technologies(Grand Island,NY)からのものであった。1.5M Trizmaベースは、Sigma(St Louis,MO)からのものであった。氷酢酸は、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)からのものであった。HBS-EP+(10X)緩衝液は、GE Life Science(Marlborough,MA)からのものであった。ヒト血清は、Bioreclamation(Hicksville,NY)からのものであった。ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロプレートは、Meso Scale Discovery(Rockville,Maryland)からのものであった。組換えヒト標的タンパク質は、R&D System(Minneapolis,MN)からのものであった。黒のマイクロウェルプレート、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役NeutrAvidin(商標)、およびSuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(商標)は、Thermo Fisher Scientific(Rockford,IL)からのものであった。HRP共役ヤギ抗マウスIgG、Fcフラグメント特異的抗体は、Jackson ImmunoResearch(West Grove,PA)からのものであった。AHCバイオセンサー(Anti human IgG Fc Capture)は、Pall ForteBio(Fremont,CA)からのものであった。完全ヒトモノクローナル抗体薬物、マウス抗薬物モノクローナル抗体、ビオチン化薬物、ルテニル化薬物、ならびにすべてのヒトおよびマウス抗標的モノクローナル抗体(本明細書ではHuAb1、HuAb2(ヒト)、およびMsAb2(マウス)と呼ばれる)、可溶性ヒトおよびマウス受容体融合タンパク質(本明細書ではそれぞれHuSRおよびMsSRと呼ばれる)、ならびにビオチン化ヒト抗標的モノクローナル抗体(ADAおよび標的アッセイで使用される)は、Regeneron Pharmaceuticals(Tarrytown,NY)により生成された。
【0081】
pH測定
pH測定を、InLab Expert Pro-ISM(商標)電極を備えた較正済みMetler Toledoメーター(Columbus,Ohio)を使用して実行した。貯蔵ヒト血清を300mM酢酸で10倍に希釈した。次に、酸性化したサンプルを、異なる濃度のトリス塩基溶液で10倍に緩衝した。下の表1に示すように、最終的なアッセイ溶液でpH測定を実行した。
【表1】
【0082】
ADAアッセイ
ヒト血清サンプル中の抗薬物抗体(ADA)を、非定量的ADA架橋免疫アッセイを使用して検出した(図1A~C)。このADA架橋アッセイは、陽性対照としてマウス抗薬物モノクローナル抗体を、架橋成分としてビオチン化薬物およびルテニル化薬物を用いる(図1A)。血清サンプルを300mM酢酸で10倍に希釈することにより酸性化し、室温(RT)で少なくとも10分間インキュベートした。ビオチン化薬物およびルテニル化薬物(0.5μg/mL)を、血清サンプルに添加する前に、60mMのトリス塩基を含有するアッセイ緩衝液で調製した。次に、酸処理した血清サンプルを、標識された薬物溶液で10倍に希釈した。室温で約60分間インキュベートした後、サンプルを遮断した(5%BSA)ストレプトアビジンMulti-Array(商標)96ウェルプレート(MSD)に移し、室温で約60分間インキュベートした。プレートを洗浄し、Read Bufferを添加し、MSDプレートリーダー、例えば、SECTOR Imager 2400を使用してプレートを読み取った。標的媒介の干渉を遮断するために(図1B)、抗標的モノクローナル抗体(100μg/mL)および/または可溶性受容体タンパク質(100μg/mL)も標識薬物溶液に含めた(図1C)。さらに、標識された薬物溶液を60mMのトリスで調製して、pHを弱い塩基性条件に調整することにより、標的のビオチン化薬物およびルテニル化薬物の両方への結合も最小限に抑えられる。
【0083】
標的アッセイ
この手順は、マウス抗標的モノクローナル抗体(1μg/mL)でコーティングされたマイクロタイタープレートを用い、標準物として組換え標的タンパク質を利用する。標準物およびQCを当業者に周知の培地で調製して、ヒト血清からの内因性標的タンパク質による干渉を回避した。標準物、対照、およびサンプルを300mM酢酸で10倍に希釈し、室温で約30分間インキュベートした。酸処理したサンプルを、プレートに添加する前に、抗薬物モノクローナル抗体(100μg/mL)でスパイクした300mMのトリス-塩基溶液を使用して中和(1:2希釈)して、薬物干渉を最小限に抑えた。プレートに捕捉された標的タンパク質を、異なるビオチン化ヒト抗標的モノクローナル抗体(200ng/mL)、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼに共役したNeutrAvidin(商標)(NeutrAvidin-HRP(商標))(100ng/mL)を使用して検出した。ペルオキシダーゼに特異的なルミノール系基質を添加して、総標的濃度に比例するシグナル強度を達成した。
【0084】
機能的薬物アッセイ
機能的薬物アッセイは、標的に結合していないか、または標的に結合しているアームを1つしか有しない抗体薬物のレベルを定量化する。このように、それはまだ標的分子に結合することができる。手順は、標的(0.5μg/mL)でコーティングされたマイクロタイタープレートを用い、標準物として抗体薬物を利用した。プレートに捕捉された薬物を、マウス抗ヒトIgG4モノクローナル抗体(250ng/mL)、続いてFc特異的である西洋ワサビペルオキシダーゼ共役ヤギ抗マウスIgG(抗マウスIgG-HRP)(100ng/mL)を使用して検出した。次に、ペルオキシダーゼに特異的なルミノール系基質を添加して、機能性薬物の濃度に比例するシグナル強度を達成した。
【0085】
バイオレイヤー干渉法
マウス標的遮断抗体MsAb2および可溶性マウス受容体融合タンパク質MsSRの不在下および存在下での抗体薬物への標的結合を、pH7.3または8.3下でOctet RED96システム(Pall Forte Bio)で30°C、1000rpmの振とう速度で研究した。AHCバイオセンサーを、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.02%(v/v)アジ化ナトリウム、1mg/mLの BSAを含有する希釈緩衝液でpH7.3で30分間事前に平衡化した。
【0086】
ローディングステップを、同じ希釈緩衝液で5μg/mLの薬物濃度で20秒間(約0.5nmの厚さを達成するため)で実行し、続いて同じ希釈緩衝液で60秒間のベースラインステップを実行し、その後、バイオセンサーを、pH7.3で60nMのMsAb2およびMsSRを含むかまたは含まない60nMの濃度で200μLの標的を含有するウェルに入れた。同じ手順をpH8.3環境でも実行した。会合曲線を合計で約200秒、続いて約300秒の解離フェーズの間収集した。
【0087】
結果および考察
標的遮断抗体HuAb1を用いた弱い塩基性pHアッセイ条件は、標的許容レベルを増加させ、ヒトナイーブサンプルのバックグラウンドシグナルを低減する。
正常なヒト血清で報告されている標的レベルは、約10ng/mLである。標的は、循環中の抗体薬物およびいくつかの阻害性結合タンパク質との複合体を形成する。抗薬物抗体を、酸解離ステップを用いる架橋ADA免疫原性アッセイで測定した(図1A~C)。酸処理は通常、薬物許容レベルを増加させるが、薬物および任意の標的結合タンパク質と複合形成された標的を放出し、ナイーブヒト血清サンプルにおいて高いバックグラウンドシグナルをもたらす(図2A)。酸前処理を使用してADAおよびフルラヌマブを解離させた場合の同様の所見が以前に報告されている。NGF-フラヌマブ複合体も解離して、遊離NGFを放出し、これがADAアッセイに干渉し、偽陽性の結果をもたらした(Dai,S.,et al.,AAPS J,2014,16(3):p.464-77)。
【0088】
標的遮断抗体を用いず、かつ中性アッセイpH下のADAアッセイでは、組換え標的タンパク質を使用して決定された標的許容レベル(プレートカットポイントを超えるアッセイシグナルを得るために必要な標的の量として定義される)は約3ng/mLである(図2B)。中性アッセイpHで100μg/mLの標的遮断抗体HuAb1の存在下で、標的許容レベルは、約150ng/mLに増加する。興味深いことに、アッセイpH8.3および同じ濃度のヒト標的遮断抗体HuAb1を用いると、標的許容レベルは、約1.1μg/mLに増加した(図2B)。アッセイpHが8.9の場合、標的許容レベルはさらに高く、約7.5μg/mLである。アッセイの感度および薬物許容限界(DTL)値は、中性pHまたはpH8.3のいずれでも同様であった。ナイーブヒト血清サンプルのアッセイシグナルも、100μg/mLのHuAb1および弱い塩基性pHでバックグラウンドレベルに低減した(図2C)。
【0089】
2つの標的遮断試薬と組み合わせた弱い塩基性pHは、臨床研究サンプル中の標的媒介のバックグラウンドシグナルを阻害する。
ヒト標的遮断抗体HuAb1および弱い塩基性pH条件の組み合わせがさらに臨床研究サンプル中の標的干渉を阻害できるかどうかを試験するために、4つの異なる時点(1日目、29日目、57日目、および113日目)での薬物を用いた単回投薬研究からの3人の対象からの第I相臨床サンプルを試験した。社内の標的アッセイで測定した場合、29日目および57日目のサンプルでは、標的レベルにおいて10~12倍の増加が観察され(図3A)、標的レベルは113日目のサンプルのベースラインに近くなった。これらのサンプルで観察された最高の標的濃度は約60ng/mLであり、ADAアッセイの標的許容レベルよりもはるかに低かった。しかしながら、これらのサンプルをADAアッセイで試験した場合、100μg/mLのヒト標的遮断抗体HuAb1をpH8.3で用いると、29日目および57日目のサンプル中で陽性シグナルが検出され、アッセイシグナルは113日目のサンプルのバックグラウンドレベルに近くなった(図3B)。
【0090】
これらの対象は抗体薬物の単回投薬を受け、彼らのPKプロファイルは有意なADA応答を示唆しなかった(図3C)。さらに、これらのサンプルのADAシグナルは、標的レベルと相関しているように見える。続いて、投薬後のサンプルの大規模なグループも試験し、過半数が陽性のADAシグナルを示した。したがって、上昇した標的レベルの存在が、標識された薬物との標的媒介架橋を作成することにより、アッセイにおける陽性シグナルの原因である可能性が高い。
【0091】
これらの臨床サンプルで観察された見かけの標的干渉をさらに軽減するために、第2のヒト標的遮断抗体HuAb2を中性pHまたは弱い塩基性pHのいずれかと組み合わせてHuAb1に添加した。興味深いことに、標的媒介のバックグラウンドシグナルは、ベースラインレベルではないが、中性アッセイpHとともに100μg/mLの標的遮断抗体HuAb1およびHuAb2で用いた場合に著しく減少した。しかしながら、投薬後のサンプルのサブセットは、プレートカットポイントを超えるアッセイシグナルを生成した。これらのサンプルを同じ濃度の標的遮断抗体HuAb1およびHuAb2を用いて再度検査したところ、アッセイpH8.3では、すべてプレートカットポイント未満のアッセイシグナルを有した(図3D)。
【0092】
塩基pHおよび100μg/mLの標的遮断抗体HuAb1を用いた元のアッセイ形式は、約1.1μg/mLの組換え標的タンパク質に耐えることができるようであった(図2A)。しかしながら、標的タンパク質レベルが比較的低い臨床サンプルでは(≦60ng/mL)、標的干渉が観察された。これは、組換え標的タンパク質がアッセイにおいて天然タンパク質と同様に作用し得ない、かつ/または組換えタンパク質と比較した場合に異なる結合特性を有する異なる形態の標的タンパク質が患者で発現され、臨床サンプル中の標的干渉の阻害にあまり効果的ではない標的遮断抗体HuAb1を作製し得ることを示す。組換え型標的タンパク質と内因性の標的タンパク質との間のADAアッセイにおけるこの矛盾した結果は、アッセイの性能を特徴づけるために実際の研究サンプルを使用することの重要性を浮き彫りにする。
【0093】
別の興味深い発見は、標的許容レベルに対する弱い塩基性pHの影響であった。HuAb1とHuAb2との組み合わせは、中性pH条件下でこれらの臨床サンプルの標的干渉を完全には阻害しなかった。標的干渉を完全に排除するには、2つの標的遮断抗体とともにわずかに塩基性であるという条件が必要であった。
【0094】
標的受容体MsSRと標的遮断抗体MsAb2との組み合わせも、標的干渉を軽減する。
標的遮断抗体HuAb1は、療法用抗体薬物といくつかの共通のCDR VH再配列を共有しているため、これらのVH再配列領域に特異的な任意のADAは、標識薬物ではなく、アッセイ緩衝液中のHuAb1に結合し得、かつアッセイでの検出を損なう可能性がある。この潜在的な問題を克服するために、ヒトIgG Fc融合を伴う標的受容体であるHuSRを、当初、標的遮断抗体HuAb1を置き換えるために使用した。図4Aに示すように、100μg/mLのHuAb2と100μg/mLのHuSRとの組み合わせは、第I相臨床サンプル中の標的媒介のバックグラウンドシグナルを効果的に阻害し得る。実際、HuAb2/HuSRの組み合わせまたはHuAb1/HuAb2の組み合わせのいずれかで、同様の標的許容レベルが得られた。
【0095】
さらに、標的遮断抗体HuAb2は抗体薬物と同じヒトIgG4定常領域を有し、標的受容体HuSRはヒトIgG Fcを有する。抗体薬物のFc領域に特異的な患者血清サンプル中の任意の抗薬物抗体は、HuAb2およびHuSRに結合し得、これもアッセイでの検出を損なう可能性がある。この潜在的な問題を克服するために、HuSRのFcドメインおよびHuAb2の定常領域全体をヒトからマウスに変換して、ADA検出における干渉の可能性をさらに低減した。MsAb2(マウス定常領域を有するHuAb2)とMsSR(マウスFcを有するHuSR)との組み合わせは、臨床サンプル中の標的干渉を依然として効果的に軽減した(図4Bおよび図4C)。1日目、29日目、57日目、および113日目の臨床サンプルは、血清中に高レベルの標的を有したにもかかわらず、この新しいアッセイ形式ではバックグラウンドシグナルのみを示した(図5)。
【0096】
弱い塩基性pHおよび標的遮断試薬は、ウサギの出血およびラットの毒物学サンプルにおける実際のADA検出に対して最小限の影響を有する。
弱い塩基性pHおよび標的遮断試薬がADAの安定性および/または検出に対して最小限の影響を有することを確実するために、薬物Fab免疫ウサギからの早期出血を現在のアッセイ形式で分析した。
【0097】
免疫化の約30~40日後に収集した2匹のウサギからの出血1および出血2を、中性pHまたはpH8.3のいずれかで2つの標的遮断試薬を用いてアッセイした。これらの初期のウサギの出血は、通常、低い親和性を有する薬物に対するポリクローナル抗体応答を有し、その検出は、より厳しいアッセイ条件によってより影響を受ける可能性がある。図6Aに示すように、ADA平均カウント値は、アッセイpHに関係なく、各アッセイ条件下で類似しており、これは、弱い塩基性pHおよび標的遮断試薬の添加が、これらのサンプルでADAの安定性または検出に対して最小限の影響を有するかまたはまったく影響を有しなかったことを示している。
【0098】
pH8.3で2つの標的遮断試薬を使用する形式が投薬後のサンプルでADAを検出し得ることをさらに確認するために、毒物学研究の2匹のラットからのラット血清サンプルを標的レベルおよびADAレベルの両方について分析した。標的レベルは、ベースラインサンプルと比較して、ラット1の28日目および85日目のサンプルで少なくとも10倍、ラット2の28日目のサンプルで約10倍増加したが、ADAアッセイシグナルの異常な上昇はこれらのサンプルでは観察されず、これは、標的干渉が軽減されたことを示している。同時に、85日目から両方の動物で始まった高レベルのADAが検出され、これは、2つの標的遮断試薬の添加およびわずかに塩基性のpHアッセイ条件が、ADAの検出に干渉しなかったことを示している(図6B)。
【0099】
弱い塩基性pHおよび標的遮断試薬は、標的の薬物への結合を阻害する。
弱い塩基性pHおよび標的遮断試薬が臨床サンプルの標的干渉を軽減するのに役立ち得るかの理由を理解するために、オクテット実験を実行して、標的遮断試薬の有無にかかわらず、異なるpH条件下で標的の薬物への結合を試験した。結果を図7Aに示す。結合会合曲線からわかるように、MsAb2およびMsSRの不在下では、応答は、pH7.3と比較してpH8.2でわずかに低く、これは、標的と薬物との間の会合がアッセイpHによりわずかに影響を受けることを示している。しかしながら、pH7.3と比較してpH8.2でより速い解離速度が観察され、これは、標的と薬物との間の結合親和性がpH8.2でより弱いことを示している。pH7.3では、MsAb2およびMsSRの存在下で、塩基性pHのみと同様に、より速い解離速度も観察された。しかしながら、標的遮断試薬の存在も、標的の薬物への会合に著しく影響を与えた。最後に、結合の完全な阻害は、pH8.2でのMsAb2とMsSRとの組み合わせで達成される。結合のpH依存性の違いは、弱い塩基性pHでの標的のコンフォメーション変化、またはpH8.2での標的遮断試薬の標的へのより良好な結合のいずれかに起因する可能性があり、したがって、これは標的の薬物への会合の阻害を示している。
【0100】
これらの結合データは、ADAアッセイデータをさらに支持し、これは、塩基性pHのみで、臨床サンプル中の標的媒介のシグナルを部分的に阻害し得ることを示している。中性pHでのMsAb2とMsSRとの組み合わせは、標的媒介のシグナルを著しく阻害するが、標的干渉の完全な阻害は、MsAb2、MsSR、およびpH8.3の組み合わせでのみ得られる(図7B)。
【0101】
リガンド結合アッセイ(LBA)は、人工的なシグナルを生成するか、所望のアッセイの相互作用を遮断することにより、アッセイ結果を混乱し得る干渉分子の影響を非常に受け易くなっている。標的干渉は一般的な問題であり、薬物に対する特異性および各標的タンパク質の非常に多様な生物学のために克服するのが難しい場合がある。標的は、通常、循環中の薬物およびその結合タンパク質と緊密な複合体を形成し、破壊するのが難しい場合がある。さらに、標的レベルは、標的:薬物および標的:結合タンパク質複合体の形成のために、または生物学的経路に固有のフィードバックメカニズムにより、循環において比較的高いレベルに増加し得る。ADA架橋アッセイでは、二量体または多量体の標的の存在が偽陽性の結果につながり、免疫原性の評価を混乱させ得る。この影響は、ADAアッセイで薬物許容を増加するために一般的に使用される戦略である酸解離により悪化し得、これはまた、標的を含有する複合体を破壊し、標的を放出し、標的媒介偽陽性シグナルをもたらし得る。したがって、アッセイの開発時には慎重に検討し、各戦略の利点と潜在的な人為的結果をアッセイに導入するリスクを比較検討する必要がある。生物学に基づいて、アッセイへの干渉を軽減するために、標的に特異的なアプローチを評価する必要がある。
【0102】
標的遮断抗体(単一抗体として、または組み合わせて)、受容体、補因子、ならびに標的結合タンパク質による前処理を使用して、標的干渉を軽減し得る。さらに、アッセイpHは、二量体もしくは多量体の標的に直接影響を与えるか、または標的への薬物結合親和性を変化させることにより、標的干渉を軽減するように変更することもできる。さらに、血清サンプル中の天然の標的タンパク質はその組換えバージョンとは異なる作用を示し得るため、実際の投薬後サンプルを試験することにより選択された標的軽減戦略/アッセイ形式の有効性を評価することが重要である。PKデータおよび標的レベルの使用は、実際のADA応答を標的媒介シグナルから区別するのにも役立ち得る。
【0103】
標的遮断試薬の添加は、標的干渉を軽減するために使用され得る。しかしながら、抗体療法の場合、これらの試薬が薬物と同様のCDR配列を共有しないこと(抗標的抗体の場合)、またはヒトIgG定常配列を含有しないこと(抗体、受容体、および結合タンパク質の場合)を確実にする必要があるが、これは、これらの共有配列が、これらの配列に特異的なADAの検出を低減し得るためである。最後に、薬物に対するポリクローナル応答を伴う低親和性ADA陽性動物サンプルの使用は、アッセイの変更により検出が影響を受ける可能性が高い真の低親和性かつ低力価のADA応答が、最終的なアッセイ条件下でも検出され得ることを確実にするのに役立ち得る。
【0104】
本開示において、薬物標的は、循環中のその阻害性結合タンパク質を有する複数の不活性複合体を形成するホモ二量体である。酸解離はADAアッセイの薬物許容限界(DTL)を増加するが、薬物に結合した標的およびその阻害性結合タンパク質に結合した標的を放出する。放出された標的は、ADAアッセイで標的干渉をもたらす。さらに、薬物によるマウスの治療は、標的発現を上方調節する。標的の前駆体および成熟形態に特異的な抗体を用いたウエスタンブロット分析は、薬物注射の28日後にマウスにおいて異なる形態の標的が上方調節されたことを示した。したがって、可能な限り多くの標的許容を備えた堅牢なADAアッセイが必要である。
【0105】
標的遮断抗体(HuAb1)および弱い塩基性pHアッセイ条件(pH8.3)を含めることにより、本発明者らは、組換え標的タンパク質に対して高い許容レベルを得ることができた。アッセイは、第2の標的遮断抗体HuAb2を添加するように最適化された。これにより、標的許容が著しく改善され、臨床研究サンプルでは陽性率が大幅に低減した。HuAb1抗標的抗体を置き換えることにより、アッセイのさらなる最適化を行った。HuAb1はいくつかの相補性決定領域(CDR)配列を薬物と共有しているため、抗薬物ADAに結合する可能性があり、したがって、ADAの検出が低減する可能性がある。したがって、HuAb1の代わりにヒトIgG Fc(HuSR)に融合した標的受容体の外部部分を使用した。HuAb2と組み合わせることで、HuSRは、標的干渉を遮断することができ、HuAb1/HuAb2の組み合わせも同様である。続いて、HuSRのFcドメインおよびHuAb2の定常領域全体がヒトからマウス(MsAb2およびMsSR)に変換されて、ADA検出で起こり得る干渉がさらに低減した。オクテットシステムを使用した特性評価実験は、標的の薬物への結合が弱い塩基性pHまたは抗標的遮断試薬のみの存在により阻害されることを示した。しかしながら、結合の完全な阻害は、MsAb2、MsSR、および弱い塩基性pHの組み合わせで達成される。免疫ウサギからの低力価ADA陽性出血およびラットでの非臨床研究からの既知のADA陽性サンプルの分析により、ADA陽性サンプルを検出するアッセイの能力、およびADA検出に対する塩基性pHおよび標的遮断試薬の最小限の影響が確認された。
【0106】
これらの発見は、標準的な標的遮断抗体が効果的でない場合に、免疫原性アッセイを架橋する際の標的干渉を克服するための代替戦略を提供する。
【0107】
同等物
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態と同等のものを多く認識するか、または通常の実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。本出願を通して引用されたすべての参考文献、特許、および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するための抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法であって、
前記血清サンプルを
第1の標識で標識された捕捉薬物、
第2の標識で標識された検出薬物、および
薬物標的遮断試薬と接触させることと、
弱い塩基性pHアッセイ条件下で、前記血清サンプルを前記捕捉薬物、前記検出薬物、および前記薬物標的遮断試薬とともにインキュベートすることと、
前記薬物標的遮断試薬を前記サンプル中に存在する前記薬物標的に結合させ、
それにより前記ADA架橋免疫アッセイにおける前記薬物標的の干渉を軽減することと、を含む、方法。
(項目2)
前記抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイを実行することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記薬物標的遮断試薬が薬物標的遮断抗体である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記薬物標的が、例えば、受容体に対するリガンドなどの可溶性タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記薬物標的遮断試薬が、IgG Fcドメインに融合された前記受容体の部分を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記受容体の前記部分が、前記受容体の細胞外部分である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記IgGFcドメインが、マウスIgG Fcドメインである、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記IgGFcドメインが、ヒトIgG Fcドメインである、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記血清サンプルを第2の薬物標的遮断試薬と接触させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記第2の薬物標的遮断試薬が、薬物標的遮断抗体である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記第2の薬物標的遮断抗体が、マウス定常領域を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記薬物が、ヒト療法用モノクローナル抗体である、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記薬物が、ヒト化療法用モノクローナル抗体である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記ヒト療法用モノクローナル抗体または前記ヒト化療法用モノクローナル抗体が、臨床試験で評価されている、項目12または13に記載の方法。
(項目15)
前記薬物標的が、可溶性または脱落した多量体薬物標的である、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記薬物標的が、ホモ二量体薬物標的である、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記弱い塩基性pHアッセイ条件が、約8.3~約8.9のpHの条件を含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記弱い塩基性pHアッセイ条件が、約8.3のpHの条件を含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記弱い塩基性pHアッセイ条件が、約8.9のpHの条件を含む、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記血清サンプルが、ヒト血清サンプルである、項目1~19のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記血清サンプルが、前記薬物で治療されている対象からのものである、項目1~20いずれかに記載の方法。
(項目22)
前記インキュベーションが、室温で行われる、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイが、ハイスループットアッセイである、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記捕捉薬物が、固体表面に付着している、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記固体表面が、マイクロタイタープレートである、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記固体表面が、ストレプトアビジンでコーティングされている、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記捕捉標識が、ビオチン標識、タンパク質A標識、タンパク質G標識、およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)標識からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目28)
前記第2の標識が、ルテニウム標識、放射線標識、光輝性標識、化学発光標識、蛍光標識、電気化学発光標識、および酵素標識からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目29)
血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するための抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法であって、
前記血清サンプルを
第1の標識で標識された捕捉薬物、
第2の標識で標識された検出薬物、
第1の薬物標的遮断抗体、および
第2の薬物標的遮断抗体と接触させることと、
弱い塩基性pHアッセイ条件下で、前記捕捉薬物、前記検出薬物、前記第1の薬物標的遮断抗体、および前記第2の薬物標的遮断抗体をインキュベートすることと、
前記第1の薬物標的遮断抗体および前記第2の薬物標的遮断抗体を前記サンプル中に存在する前記薬物標的に結合させ、
それにより前記ADA架橋免疫アッセイにおける前記薬物標的の干渉を軽減することと、を含む、方法。
(項目30)
血清サンプル中の薬物に対するADAの存在を決定するための抗薬物抗体(ADA)架橋免疫アッセイにおける薬物標的干渉を軽減するための方法であって、前記薬物標的が、可溶性タンパク質であり、前記方法が、
前記血清サンプルを
第1の標識で標識された捕捉薬物、
第2の標識で標識された検出薬物、
IgG Fcドメインに融合された前記受容体の細胞外部分を含む薬物標的遮断試薬、および
薬物標的遮断抗体と接触させることと、
弱い塩基性pHアッセイ条件下で、前記捕捉薬物、前記検出薬物、前記薬物標的遮断試薬、および前記薬物標的遮断抗体をインキュベートすることと、
前記薬物標的遮断試薬および前記薬物標的遮断抗体を前記サンプル中に存在する前記薬物標的に結合させ、
それにより前記ADA架橋免疫アッセイにおける前記薬物標的の干渉を軽減することと、を含む、方法。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】