(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】風力タービン保守に関する改善
(51)【国際特許分類】
F03D 80/50 20160101AFI20240524BHJP
【FI】
F03D80/50
(21)【出願番号】P 2020572699
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 DK2019050169
(87)【国際公開番号】W WO2020001714
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-22
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ショメカ,ジョネス レルケ
(72)【発明者】
【氏名】バウン,トーベン ラデガード
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイト,ニールス ヴィンター
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0136630(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03305658(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/110743(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0084576(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
A62C 2/00-99/00
B64D 1/08; 1/16; 1/22
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(60)に対し、システムからの指示に従って保守作業を実行する方法(100)であって、
前記システムからの指示に従って、保守用の輸送手段(74)が前記風力タービンに近接し
て停止
することと、
前記風力タービン上で
前記システムが保守作業を開始
させること(102)と、
前記システムからの指示に従って、前記保守用の輸送手段
が、前記保守作業に係る人員が緊急の場合に必要とする救助パッケージ(80)を含む荷重物を備えるUAV(20)を配備すること(104)と、
前記システムからの指示に従って、前記救助パッケージを前記風力タービン上に置くように、前記UAV
が位置決めすること(106)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記UAVは、前記風力タービン上の所定のアクセスポイントに前記救助パッケージを置くように位置決めされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のアクセスポイントは、前記風力タービンのナセル(68)上にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定のアクセスポイントは、前記ナセルの昇降口に近接する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記UAV(20)は、前記保守作業の開始に応答して、前記保守用の輸送手段(74)から配備される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記UAV(20)は、緊急信号に応答して前記保守用の輸送手段(74)から配備される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記UAV(20)は、トリガー信号に応答して前記風力タービン内に消火弾を配備するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記UAV(20)は、前記救助パッケージ(80)が前記風力タービン(60)上に置かれた後即座に、前記保守用の輸送手段(74)に戻る、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記UAV(20)は、前記保守作業が完了すると、前記風力タービンから前記救助パッケージ(80)を回収する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記UAV(20)は、前記保守作業中、前記救助パッケージ(80)とともに留まり、前記保守作業が完了した後、前記救助パッケージを前記保守用の輸送手段に戻す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記救助パッケージ(80)は、洋上救命服、除細動器キット、安全降下キット、クライミング器具、消火器、呼吸器具、救急パッケージ、防火服、栄養パッケージのうちの1つ以上を含むことができる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記保守用の輸送手段(74)は、サービス運航船を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
所定の位置において、作業器具を提供するシステムであって、
人員が緊急の場合に必要とする救助パッケージ(80)を含む、関連する荷重物を有するUAV(20)を運ぶ保守用の輸送手段(74)と、
制御ステーション(31)であって、
前記人員による保守作業前、又は前記人員による保守作業中、前記UAV(20)を配備し、
前記UAV(20)を、前記保守作業が実行される風力タービン(60)に対し方向付けし、
前記救助パッケージ(80)を前記風力タービン上に置くように、該風力タービンに対して前記UAV(20)を位置決めする、
ように構成される、制御ステーションと、
を備える、システム。
【請求項14】
前記制御ステーション(31)は、前記風力タービンの所定のアクセスポイントに前記UAV(20)を置くように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御ステーション(31)は、保守イベントの開始に応答して、前記保守用の輸送手段(74)から前記UAV(20)を配備するように構成される、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御ステーション(31)は、緊急信号に応答して、前記保守用の輸送手段から前記UAV(20)を配備するように構成される、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項17】
前記制御ステーション(31)は、前記救助パッケージ(80)が前記風力タービン(60)上に置かれた後即座に、前記UAV(20)を前記保守用の輸送手段(74)に戻すように構成される、請求項13~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
制御ステーション(31)は、前記保守作業が完了すると、前記救助パッケージ(80)を前記風力タービンから回収するように、前記UAV(20)を制御するように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記UAV(20)が、前記保守作業中、前記救助パッケージ(80)とともに留まり、前記保守作業が完了した後、前記救助パッケージ(80)を前記保守用の輸送手段(74)に戻すように、前記制御ステーション(31)は、前記UAV(20)を制御するように構成される、請求項13~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記UAV(20)が、トリガー信号に応答して、消火弾を前記風力タービン内に配備するように、前記制御ステーション(31)は、前記UAV(20)を制御するように構成される、請求項13~19のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に保守手順に関わる乗組員の安全を改善するという観点で、風力タービンのそれらの保守手順を改善する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービン設備の商業的な実現可能性の根底にある重要な要因は、エネルギーの全体コストを削減する必要があることである。したがって、風力タービンの製造業者は、風力タービン器具のコストを削減し、タービンのダウンタイムを削減するようにそれらの器具の信頼性を改善し、設備のコストを削減するように努め続けている。
【0003】
風力発電所の設備コストに加えて、保守の継続的なコストもある。洋上設備への移動が増すことによって、発電所へのアクセスがより問題になるので保守コストがより高くなる。保守のコストを削減することが重要である一方、保守作業に関わる人員の安全を確保することは不可欠である。したがって、保守乗組員は、自身が行う作業について適した資格を持たなければならず、事故のリスクを最小まで削減するために、注意深く策定された保守手順に従う必要がある。予防策として、風力タービンには、防火服、呼吸器具、消防器具、洋上救命服、クライミング器具等の器具を提供する救助パッケージが備えられているのが現在、標準装備である。そのような救助パッケージは、想定外な事故に対処するために、種々の器具を保守乗組員に提供する。しかしながら、そのような器具は高価であり、救助パッケージをウィンドパーク内の全ての風力タービンに提供することは、莫大なコストがかかる。これに加えて、救助パッケージは、一年に一回以上再保証する(re-certified)必要がある場合がある。そのような保証タスクは、個々に風力タービンを訪れる必要がある場合があり、それは、特に洋上環境において、重大な仕事である。
【発明の概要】
【0004】
この背景技術に対して、本発明は考案される。
【0005】
本発明の1つの態様によれば、風力タービン上の保守作業を実行する方法であって、風力タービンに近接して保守用の輸送手段(maintenance vehicle)を停止させることと、風力タービン上で保守作業を開始することと、保守用の輸送手段から、救助パッケージを含む荷重物(payload)を備えるUAVを配備することと、救助パッケージを風力タービン上に置くように、UAVを位置決めすることとを含む、方法が提供される。
【0006】
本発明の結果として、保守作業が継続している場合にのみ、救助パッケージが「要求に応じて」風力タービンに提供される。これによって、各風力タービン上に器具の標準備品として救助パッケージを設ける必要がなくなり、したがって、大幅なコスト削減が達成される。さらに、救助パッケージと関連する通常の保証要件によると、このようにして要求に応じて救助パッケージを提供することで、別個に現場まで訪れ、救助パッケージを再保証する必要がなくなる。なぜならば、必要なときに保守用の輸送手段上で任意の再保証を行うことができるからである。更なる長所として、より多くの器具を含む必要がある場合、救助パッケージを拡張することができ、又は、救助パッケージ内の器具は、保守を受ける風力タービンが位置する特定の環境に合わせることができるということがある。
【0007】
保守人員に、救助パッケージへの早いアクセスを提供するために、好ましくは、風力タービン上の所定のアクセスポイントに救助パッケージを置くために、UAVは風力タービン上に着陸するように位置決めされ、又は制御される。そのアクセスポイントは、通常、ナセルが風力タービン上の最もアクセスしやすいポイントであり、そこでほとんどの保守タスクが実行されるため、ナセル上にあるものとすることができる。緊急時に、保守人員が救助パッケージに、特に容易に、早くアクセスすることを確保するように、所定のアクセスポイントは、ナセルの昇降口に近接する。
【0008】
UAVは、保守作業の開始に応答して、保守用の輸送手段から配備することができる。代替的に、UAVは、緊急通知、緊急信号、緊急メッセージ又は緊急呼に応答して、保守用の輸送手段から配備することができる。
【0009】
1つの実施の形態において、UAVは、救助パッケージが風力タービン上に置かれた後即座に、保守用の輸送手段に戻るように制御される。したがって、このシナリオにおいて、UAVは、保守作業が完了すると、救助パッケージを風力タービンから回収するように制御することができる。有利には、この状況において、UAVは、風力タービンにおいて救助パッケージを降ろし、その後、基地の輸送手段に戻ることができ、そこで、UAVは、更なるミッションを実行するために使用可能となることができる。例えば、UAVは、救助パッケージを、保守を必要とする他の風力タービンに持っていくように制御することができる。
【0010】
代替的な実施の形態において、UAVは、保守作業中、救助パッケージとともに留まり、保守作業が完了した後、救助パッケージを保守用の輸送手段に戻すことができる。
【0011】
救助パッケージは、洋上救命服、除細動器キット、クライミング器具、安全降下キット、消火器、呼吸器具、救急パッケージ、防火服、栄養パッケージのうちの1つ以上を含むことができる。
【0012】
別の態様において、本発明は、風力タービン上の保守作業を実行するシステムであって、救助パッケージを含む、関連する荷重物を有するUAVを運ぶ保守用の輸送手段と、制御ステーションであって、保守作業前、又は保守作業中、UAVを配備し、UAVを、保守が実行される風力タービンに対し方向付けし、救助パッケージを風力タービンの上に置くように、風力タービンに対してUAVを位置決めするように構成される、制御ステーションとを備える、システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態において用いる一例示の無人飛行体システムの概略図である。
【
図2】
図1の無人飛行体システムとともに用いる制御ステーションの概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態が示される或る場面のビューである。
【
図4】本発明の種々の段階を示す、
図3のビューと同様のビューである。
【
図5】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、風力タービン上の保守作業を実行する改善された手法を提供するために、無人航空機システム(UAS:unmanned aircraft systems)及び無人飛行体(UAV:unmanned air vehicles)又はドローンをもたらす。
【0015】
簡潔にするために、この議論は、マルチローター、例えば、トライコプター、クワッドコプター、ペンタコプター、ヘキサコプター、オクトコプター等の比較的小型の回転翼機(rotorcraft)であれ、より大型の無人ヘリコプターであれ、任意のタイプの無人飛行体としての「ドローン」に言及する。
【0016】
本発明の実施形態は、風力タービンの保守作業を改善する新規の手法をもたらす。本発明によって、保守作業が継続しているときのみ、救助パッケージを風力タービンに運搬することができるように、保守作業中に風力タービンの近くにある保守用の輸送手段から「要求に応じて」救助パッケージが提供されることが可能になる。そのような輸送手段は、洋上ウィンドパークの文脈においてサービス運航船(Service Operations Vessel)とすることができる。本発明の1つの長所は、保守用の輸送手段は、保守を受ける風力タービンに救助パッケージを提供することができ、これによって、各風力タービンが専用救助パッケージを備える必要がなくなり、これがコストを大幅に削減するということである。
【0017】
更なる長所は、救助パッケージは、使用されていないときに保守用の輸送手段上に配置されており、これが、救助パッケージを任意の時点で検査し、再保証することができることを意味するということである。これは、風力タービン上のその場所で(in situ)救助パッケージを再保証するために、特定の現場を訪れなければならない既存の状況と対照的である。したがって、本発明によって、風力タービン事業者に対する運用コストを大幅に削減することができる。
【0018】
本発明の文脈において、
図1は、本発明の実施形態の実施態様において用いることができるUAV/ドローン20の典型的なアーキテクチャのシステム図を示している。概して、ドローン20は、制御システム22、1つ以上の推進ユニット24、電力システム26、通信システム27、センサー一式28、ミッション計画システム29及びナビゲーションシステム30を備える。ドローンシステム20は、以下で「制御ステーション」と称される、地上ベース又は遠隔コンピューターシステム31とともに動作することができ、これは、
図2に関して後により詳細に記載される。
【0019】
制御システム22は、センサー一式28及びナビゲーションシステム30からの入力に基づいて推進ユニット24を制御することによって、ドローン20の飛行を制御する主要コンピューティングユニットである。制御システム22は、制御ステーションから受信した制御入力に基づいた遠隔制御飛行、その内部のミッション計画アルゴリズムに基づいた自律飛行、又は、搭載ミッション計画及び地上ベース命令の融合が用いられる半自律飛行を実施することができる。制御システム22の主要な責任は、遠隔制御行動又は自己生成された飛行命令に基づいて、ドローンの位置制御(高度及び側方位置)、姿勢制御(ピッチ、ロール及びヨー)、及び速度制御(水平及び垂直速度)を担当する下層コントローラーとしてのものである。制御システム22は、データバス等、関連する搭載通信機能とともに、プロセッサ32及びメモリ34を有する好適な処理環境を含むので、他の搭載システムと通信することができる。
【0020】
飛行プロファイルを直接制御するために、制御システム22は、1つ以上の推進ユニット24と通信する。ここで、マルチローターであるドローンシステム20と整合するような4つの推進ユニット24が示される。しかしながら、より多くの又はより少ない推進ユニットも適切である。例えば、自律ヘリコプターは、単一の推進ユニットを有する場合があるが、重量物運搬ドローンは、6つ又は8つの推進ユニットを有する場合がある。推進ユニットは、ドローンの制御可能な飛行を可能にする任意の好適なユニットとすることができ、種々のサイズ及び吊り上げ能力を有するマルチローターに一般的であるように、好適なローターブレードを駆動する電気モーターとすることができる。しかしながら、推進ユニット24は、例えば、ガスタービンとすることもできるし、内燃機関とすることもできる。
【0021】
搭載される電力システム26は、推進ユニット24に好適であるように選択される。例えば、電気モーターに関して、該搭載される電力システム26は、バッテリーパック、燃料電池、又はさらには、外部電源から電力を受け取るために外部コンセントである場合がある。逆に、電力システム26は、推進ユニットがガスタービン又はICEである場合、搭載型の燃料タンクとすることができる。
【0022】
通信システム27は、ドローン20の外部にあるシステムに対して、データを送受信する手段をもたらす。例えば、ドローン20は、制御ステーション31にテレメトリーデータを送信することができ、ドローン群の一部として又は独立して作業するように、その領域において動作する他のドローンに位置、姿勢及び速度データを送信することができる。通信システム27は、外部システムからデータを受信することもでき、この文脈で、ドローン20が遠隔制御飛行モードで動作する場合、制御ステーション31から遠隔制御命令を受信することができる。代替的に、通信システム27は、制御ステーション31からミッションデータをアップロードする場合がある。通信システム27は、飛行経路及びミッション目標を、集合的目標を達成するために他のドローンと調整することができるように、他のドローンとの通信の送受信を可能にすることもできる。通信システムは、当技術分野で既知の任意の手段によって信号を向けることができ、その手段は、限定しないが、遠隔制御無線周波数リンク、UHF若しくはL帯周波数リンクにわたるセルラネットワーク若しくは他の電話ベースのネットワーク、マイクロ波周波数リンク、又は他の適切なデータリンク、ネットワーク若しくは通信経路を含む。
【0023】
センサー一式28は、制御システム22に作動的に接続され、ドローンの作業を支援するために、適切なセンサーデータを提供する。例えば、センサー一式28は、例を挙げると、近接検出器、例えば、測位制御のために設定された、差分GPS、RTK-GNSS、PPP-GNSS又は任意の他のローカル測位システムを含む衛星ベースの測位システム、検査及び誘導タスクを実行する光学静止カメラ及びビデオカメラ、慣性ナビゲーションシステムを含む場合がある。通常、そのようなセンサー一式28は、特定のタスクのために必要とされるのに応じて、より多い又はより少ないセンサーを保持するように適合可能である。この文脈において、GPSユニットは、ドローンの位置を求めるために、衛星から直接信号を受信することができるが、直接的GPSと比較してより高い位置精度を可能にするために、地上ベースの差分GPSビーコンから信号を受信する、差分GPSシステム(当技術分野で既知である)を実施する別の選択肢もあることに留意されたい。ここでは、GPSユニット36は、ナビゲーションシステム30と統合されるように示されることに留意されたい。
【0024】
ミッション計画システム29は、ミッション計画システム29において生成されたミッションを記憶するために、リンクを制御ステーション31に提供し、使用時に、ドローンはそのミッションに従う。ミッション計画システム29は、適切な飛行ミッション目標、通過点(waypoint)、動作包絡線(operational envelopes)等を記憶し、提供し、生成するための好適なメモリストレージ及びアルゴリズムを含むことができる。
【0025】
ナビゲーションシステム30は、センサー一式28からのGPSデータからの入力に基づいて、経路追従に関する制御入力を飛行制御システム22に提供する。
【0026】
上述したシステムに加えて、ドローン20は、以下でより詳細に記載されるように、荷重物の搭載のための搭載手段38も備える。
【0027】
搭載手段38は、救助パッケージ等の荷重物を保持又は支持するように構成することができる。そのような荷重物は、ドローン20の主要本体に対して固定位置で保持することもできるし、代替の実施形態において、荷重物を、柔軟な紐、テザー又はスリングによってドローンから吊るすこともできる。運ばれる荷重物のタイプに対する柔軟性をもたらすために、搭載手段38は、荷重物を使用後に取り外すか、又は取り替えることができるように、荷重物をドローン20に解放可能に取り付けるように構成することができる。
【0028】
ドローン20の機能構成要素を記載したが、ここで、議論は、
図2に示されるような制御ステーション31に移る。制御ステーション31は、上述したように、1つ以上のドローン20の制御ハブをもたらし、適切な処理モジュール42及びメモリストレージ44を有するコンピューティングプラットフォーム40を好適に備える。コンピューティングプラットフォーム40は、必要な場合、他のドローンとともに、ドローンを制御及び調整する適切な制御ステーション設備をもたらすように、好適な制御ステーションソフトウェアパッケージ46を実装する。例えば、ソフトウェアパッケージは、テレメトリーフィード、状態情報更新、一人称視点(FPV)フィード、ミッション計画インターフェース及びアルゴリズム等を含む場合がある。ユーザーインターフェース48は、ユーザー/作業者がドローン20に関するデータを視認し、制御及びパラメーターデータを制御ステーション31に入力することを可能にするように設けられる。ユーザーインターフェース48は、ディスプレイスクリーン、オーディオ出力、キーボード、ジョイスティック、マウス、画面上のボタン等のユーザー入力手段又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0029】
制御ステーション31は、ドローン20に対してデータを送受信するために、通信システム50も有する。制御ステーション31は、サービス運航船として既知であるタイプの船等の、保守用の輸送手段において搭載される地上ベースシステムとすることができる。
【0030】
ドローンシステム20の上述した記載は、自律飛行体の主要構成要素の単なる一例として意図され、他の構成要素を典型的なシステムに含めることもできることを理解されたい。一般に、本発明の実施形態において用いられるドローンは、既知であり、遠隔制御飛行モード、半自律及び完全自律飛行モードで実行することができ、他のドローンとの固定した位置関係において調整されながら操縦を実行することができることに留意されたい。
【0031】
上述されたように、本発明は、保守人員がアクセス可能な風力タービン上の位置に救助パッケージを輸送する、ドローン20の使用に関する。このようにして、救助パッケージは、緊急の場合に、保守人員がアクセスすることができるので、救助パッケージを風力タービンナセルの内部に恒久的に固定する必要がない。
【0032】
図3及び
図4は、本発明の一実施形態による可能な作業シナリオを示している。
【0033】
まず
図3を参照すると、風力タービン60は、洋上位置において示されている。風力タービン60は、基礎64によって海面62の上で支持されている。慣習として、風力タービン60は、基礎64によって支持される塔66、及び、塔66の頂上において支持されるナセル68を備える。ナセル68は、複数のブレード72を備えるローター70を支持する。示されるように、風力タービンは、水平軸の風力タービンとして既知であるタイプあるが、他の風力タービンのタイプも適用できる。
【0034】
図示される場面において、風力タービン60は、保守作業を受けようとしており、したがって、サービス運航船、すなわちSOVとして既知である支援船74は、適切な安全距離だけ風力タービン60から離れている。その距離自体は、必須ではないが、適切な地理的な領域内の安全要件によって決定される可能性が高く、約50m程度とすることができる。SOV74は、通常、ダイナミックポジショニングシステム(dynamic positioning system:自動船位保持システム)の使用によって又は係船索(mooring lines)を用いて、保守作業全体にわたってこのステーションに留まることができる。
【0035】
図示されるように、SOV74は、作業のための保守基地の輸送手段として、及びSOV74上に収納されているUAV20のための発射台として役に立つ。この点において、図における種々の部品は、縮尺通りに描かれておらず、したがって、UAV20は、現実の場合よりもSOVに対して大きいものとして示されていることに読者は留意されたい。
【0036】
ここで、UAV20は、SOV74の後部デッキ上に位置決めされているものとして示されている。これは、図示の便宜のためであることを留意されたい。UAV20は、そこから空中に向けて発射することができるSOV74の任意の部分において適切に収納できることを理解されたい。例えば、UAV20は、好適な格納容器(図示せず)内に格納することができ、その格納容器は、通常、海洋環境からの保護をもたらすが、UAV20を配備する必要がある時点で、開くことができる。
【0037】
説明したように、UAV20には制御ステーション31が伴う。ここでもまた、制御ステーション31は、便宜のために、SOV74の後部デッキ上に位置決められるものとして、
図3に示されている。しかしながら、制御ステーション31の電子機器は、代わりに、SOVの乾燥した制御室内に配置することもできるし、実際に、UAV20の格納容器内に配置することもできる。
【0038】
UAV20は、緊急救助パッケージを含む荷重物80に関連付けられる。そのパッケージは、救助パッケージが、事実上、UAV20の一体部分を形成するように、UAV20に対して恒久又は半恒久的に固定することができる。代替的に、UAV20は、制御フック、又は、それ自体を救助パッケージと結合することができる把持ジョー(jaws)の対を備えることができる。選ばれる結合手段が何であるかにかかわらず、救助パッケージ80を空中に吊り上げ、救助パッケージ80を風力タービン60に輸送することができるように、UAV20が救助パッケージ80に関連付けられることを理解されたい。
【0039】
救助パッケージ80は、緊急の場合に、保守人員、技師又は乗組員が必要とする場合がある種々の器具を含むことができる。したがって、救助パッケージ80は、呼吸具/人工呼吸器具、消火装置等の火事に取り組むための好適な器具、救急箱及び除細動器等の救急器具、及び、クライミングシステム、救命服及び救命ボート等の救急避難器具を含むことができる。そのような器具は、単なる例として言及され、限定を意味しないことに留意されたい。
【0040】
図3に示されるように、SOV74は、乗組員輸送船(Crew Transfer Vessel)82、すなわちCTVを風力タービンに向けて派遣した。CTV82は、種々の海洋状態において風力タービンに対して乗組員及び器具を輸送する目的で、風力タービンのより近くに操縦することに、より適している比較的小さい船である。幾つかの場合、SOV74は、CTV82の目的を果たすことができる。
【0041】
この時点で、保守作業が開始した。
図4に進むと、UAV20が発射されるか、又は配備され、風力タービン60に向かって移動していることを「A」において見ることができる。UAV20の配備は、種々の行動によって開始することができる。1つの選択肢は、保守人員が風力タービン60に到着する前に、救助パッケージ80を、好適なアクセスポイントにおいて、風力タービン上に配置することができるように、保守作業の開始時に、UAV20は、制御ステーション31によって命令され、配備されるというものである。そのような配備命令は、そのようなタスクを管理する責任を有する乗組員メンバーによって手動でトリガーすることもできるし、好適な予めプログラムされたミッションプロファイルに基づいて時間でトリガーすることもできる。
【0042】
別の選択肢は、その配備を、緊急イベントの検出によってトリガーすることができるというものである。例えば、風力タービン又は保守人員は、緊急の場合に、UAV20を呼ぶために、好適なトランスポンダーを備えることができる。そのような緊急呼に応答して、UAV20は、制御ステーション31の制御下で発射され、可能な限り迅速に、人員に救助パッケージ80を提供するために、風力タービン60に向かって直接移動する。
【0043】
UAV20は、例えば、SOV74に搭載された制御ステーション31における制御を用いて、好適に訓練されたパイロットによって手動で飛ばすことができる。代替的に、UAV20は、UAV20に格納される好適なミッションプロファイルを実装する制御ステーション31によって、自動で制御することができる。
【0044】
UAV20は、アクセス可能な場所のどこかに救助パッケージ80を置くように適した位置になるまで、風力タービンに対して飛び続ける。これは、
図4において位置「B」に見ることができる。通常、風力タービンナセルは、昇降口を有し、これによって、風力タービン内の人員がナセルの外部にアクセスすることができる。したがって、1つの選択肢は、UAVが、ナセルアクセスハッチ(図示せず)に近接して、救助パッケージを着陸させるというものである。
【0045】
専用の着陸ゾーンは、ナセル68上に設けることができ、これは、人員が救助パッケージにアクセスするためのアクセスポイントをもたらす。この着陸ゾーンは、ナセルアクセスハッチから簡単にアクセスすることができるように、予め選択することができる。着陸ゾーンは、ドローンパイロットが、着陸ゾーンを位置特定し、そのゾーン上にUAV20を正確に設置するのを支援する可視印(visible indicia)を用いてマークすることができる。代替的に、UAV20は、好適なハードウェアを備え、安全な着陸をするために着陸ゾーン及びパイロット自身を認識するルーチンを制御することができる。
【0046】
着陸ゾーンは、UAV20が着陸すると、UAV20のバッテリーを補充するための充電手段を設けることもできる。これは、物理的な充電プラグとドッキングすることによって、又はUAV20を電源にプラグインする任務を負った保守チームのメンバーによって達成することができる。更なる代替形態は、UAV20が、単に着陸ゾーン上の正確な位置において着陸することによってその充電を補充することができるように、着陸ゾーンが、非接触式/ワイヤレスの充電手段を備えるというものである。
【0047】
救助パッケージ80を提供することに加えて、幾つかの実施形態において、UAV20が第2の機能を実行するように構成することができると想定される。例えば、緊急信号が受信される場合、UAV20は、救助パッケージ80を送達しながら、適切な行動をとることができる。ここでの1つの選択肢は、緊急信号が、ナセル68における火事の存在を示す場合、UAV20は、消火手段をナセルに送達するように構成することができるということがある。したがって、UAV20を配備させる緊急信号は、UAV20が火事を消火する行動をとるためのトリガー信号として役目を果たす。UAV20が、既に飛行しているとき、又は、ナセル上に着陸して静止しているとき、受信されたトリガー信号に応答して行動するように構成することもできる。したがって、UAV20は、運搬中、又は配備される前でさえ、トリガー信号に応答することができる。この実施形態において、当技術分野で既知である消火弾は、UAV20によって、アクセスハッチを通して落とすことができる。そのような装置は、国際公開第201403238号に記載されている。
【0048】
上述したように、保守作業中に起こる緊急のリスクは低いので、UAV20は、主に予防措置として、救助パッケージ80を風力タービン60に提供する。したがって、保守作業が完了すると、UAV20は、
図4において「C」及び「D」によって示すように、救助パッケージ80をSOV74に戻す。
【0049】
SOV74に対してUAV20を回収すること又は取り戻すことは、種々の行動によってトリガーすることができる。1つの選択肢は、保守乗組員が、保守作業が終わったことを確認した後、回収を開始するというものである。したがって、制御ステーション31は、自動的に、UAV20を船に戻すように操縦することができる。別の選択肢は、適切な時間で、制御ステーション31を介した手動の制御下で、UAV20が戻るように操縦されるというものである。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態による、風力タービン上の保守作業を実行する方法100のステップを示す図である。プロセス100において示されるステップのうちの幾つか又は全ては、予め計画されたミッションに従って、又は、好適な資格のある作業者とのインタラクションを通して、制御ステーション31によって実行することができる。
【0051】
ステップ102は、保守作業が開始されたことを示し、そのため、制御ステーション31は、ステップ104において、UAV20を配備することによって応答することができ、UAV20は、救助パッケージ80を風力タービン60に運ぶ。上述したように、別の選択肢は、配備呼を受信した後にのみ、例えば、緊急イベントが検出されると、制御ステーション31が、UAV20を風力タービン60に派遣するというものである。
【0052】
UAV20が配備されると、制御ステーション31は、UAV20を風力タービン60に向けて操縦し、したがって、ステップ106において、UAV20を風力タービン60の適切な着陸ゾーン上に着陸させる。上述したように、着陸ゾーンを、好適なアクセスポイントに位置特定することができ、このアクセスポイントにおいて、保守人員には、救助パッケージ80にアクセスするルートが提供される。
【0053】
本方法は、ステップ108において、保守作業が完了すると、UAV20をその基地に取り戻すことをさらに含む。取り戻すステップは、作業が完了したという信号又はメッセージを保守チームから受信することによってトリガーすることができる。その開始は時間ベースとすることもできる。
【0054】
UAVを取り戻すことは、パイロットが適切な制御命令を制御ステーション31に入力することによって達成することができ、及び/又は、操縦のうちの幾つか又は全ては、制御ステーション31の自動制御下におくことができる。
【0055】
示される実施形態の上述の議論において、幾つかの変更形態又は変形形態が言及された。他の形態は、完全性のためにここでは議論されない。
【0056】
示される実施形態において、CTVを用いて、乗組員をSOVから風力タービンに輸送するが、SOVは、好適にサイズ決めされ、乗組員を風力タービンに輸送するように備えることもできることが想定される。
【0057】
CTVが用いられる場合、UAV20及び制御ステーション31のうちの少なくとも1つを、SOVの代わりにCTV上で運ぶことができるという選択肢がある。SOVが、安全性の理由から、風力タービンからかなりの距離をとってステーション内に留まらなければならない場合、CTVからUAVを発射することは、バッテリーの寿命を節約する観点から、有利である場合がある。
【0058】
上述の議論において、UAV20の飛行制御は、船に搭載してある制御ステーション31によってもたらされる。しかしながら、制御ステーションは、風力タービン60内に、例えば、ナセル内に格納することもできると想定される。このようにして、保守人員は、それらの保守作業を開始する準備ができると、UAVをナセルに向けて操縦することができる。またさらに、ナセルベースの制御ステーションは、UAVによって達成することもできる。このようにして、保守人員は、必要に応じて、救助パッケージをピックアップするために、UAVをSOVに向けて飛ばし、保守作業が完了すると、UAVを船に戻すことができる。
【0059】
このシナリオの代替形態として、船又は風力タービン上に格納するのではなく、1つ以上のUAV及び関連する制御ステーションは、代わりに、ウィンドパーク内の好適な位置に、例えば変電所に格納することができる。したがって、UAVは、適宜、SOVと風力タービンとの間で、救助パッケージを渡す(ferry)ように用いられる、一般的な「ワーカードローン(worker drone:働き蜂)」である。
【0060】
上述のシナリオの更なる代替形態として、本方法及びシステムは、陸上ウィンドパークにおいて実行することができる。