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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20240524BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240524BHJP
   F01K 13/00 20060101ALI20240524BHJP
   F22B 37/38 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
G01N27/416 341M
F01D25/00 V
F01K13/00 D
F22B37/38 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021012145
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115519
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 彰弘
(72)【発明者】
【氏名】木戸 遥
(72)【発明者】
【氏名】市原 太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤津橋 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】中土 雄太
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-172534(JP,A)
【文献】特開昭63-091545(JP,A)
【文献】特開2002-181801(JP,A)
【文献】特開2009-243972(JP,A)
【文献】特開2008-215753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0346347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00-27/49
F01D13/00-25/36
F01K1/00-21/06
F22B37/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンプラントの試料水の水質を測定する測定システムであって、
前記蒸気タービンプラントにおける異なる複数のサンプリング位置のそれぞれから前記試料水を抜き出すための抜き出し機と、
前記抜き出し機に連通する試料水流通ラインと、
前記試料水流通ラインに設けられた陽イオン交換器と、
前記試料水流通ラインにおいて前記陽イオン交換器よりも下流側に設けられた電気伝導率計と、
一端が前記陽イオン交換器よりも上流側で前記試料水流通ラインに連通するとともに他端が前記陽イオン交換器と前記電気伝導率計との間で前記試料水流通ラインに連通するバイパスラインと、
前記陽イオン交換器を通過した試料水の酸電気伝導率を前記電気伝導率計によって測定する第1測定モードと、前記バイパスラインを通過した試料水の電気伝導率を前記電気伝導率計によって測定する第2測定モードとを切り替える切替装置と、
前記切替装置を駆動する制御装置と
を備える測定システム。
【請求項2】
前記酸電気伝導率及び前記電気伝導率の両方が前記水質の測定に用いられる、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記複数のサンプリング位置のうちの1つだけから前記試料水を抜き出し、そのサンプリング位置からの前記試料水の抜き出しを終了した後に別のサンプリング位置から前記試料水を抜き出すように前記抜き出し機を制御する、請求項1または2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記制御装置は、それぞれのサンプリング位置から前記試料水を抜き出す間に、前記第2測定モードのインターバルが前記第1測定モードのインターバルよりも大きくなるように前記切替装置を制御する、請求項3に記載の測定システム。
【請求項5】
前記複数のサンプリング位置の少なくとも1つから抜き出される試料水は蒸気であり、 前記抜き出し機は、前記蒸気を凝縮するための少なくとも1つの凝縮器を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項6】
前記複数のサンプリング位置の数よりも前記電気伝導率計の数の方が少ない、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービンプラントの試料水の水質を測定する測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本産業規格のJIS B8223(ボイラの給水及びボイラ水の水質)には、障害を防止するためのボイラ給水、ボイラ水及び蒸気の水質基準が定められている。この規格によれば、蒸気タービンプラントの複数の箇所から試料水をサンプリングし、サンプリングした試料水についていくつかの項目の測定を行う必要がある。これらの項目には、強酸性の陽イオン交換樹脂を通過させた試料水について測定した電気伝導率である酸電気伝導率が含まれている。特許文献1には、ボイラ水系の不純物を監視するために酸電気伝導率を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-215753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
JIS B8223では、陽イオン交換樹脂を通過させない試料水の電気伝導率も測定する必要があり、電気伝導率及び酸電気伝導率を測定するための電気伝導率計を別々に設けると、測定システムのコストが上昇してしまう問題点がある。また、酸電気伝導率の測定のための陽イオン交換樹脂は定期的な再生又は交換が必要であるため、陽イオン交換樹脂の再生・交換頻度の低減が望まれている。特許文献1は、酸電気伝導率の測定のみを記載しているため、電気伝導率及び酸電気伝導率の両方を測定するための測定システムのコスト低減策については何の知見も与えておらず、また、陽イオン交換樹脂の再生・交換頻度の低減についても記載していない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、蒸気タービンプラントの試料水の水質を測定する測定システムの運転コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る測定システムは、蒸気タービンプラントの試料水の水質を測定する測定システムであって、前記蒸気タービンプラントにおける異なる複数のサンプリング位置のそれぞれから前記試料水を抜き出すための抜き出し機と、前記抜き出し機に連通する試料水流通ラインと、前記試料水流通ラインに設けられた陽イオン交換器と、前記試料水流通ラインにおいて前記陽イオン交換器よりも下流側に設けられた電気伝導率計と、一端が前記陽イオン交換器よりも上流側で前記試料水流通ラインに連通するとともに他端が前記陽イオン交換器と前記電気伝導率計との間で前記試料水流通ラインに連通するバイパスラインと、前記陽イオン交換器を通過した試料水の酸電気伝導率を前記電気伝導率計によって測定する第1測定モードと、前記バイパスラインを通過した試料水の電気伝導率を前記電気伝導率計によって測定する第2測定モードとを切り替える切替装置と、前記切替装置を駆動する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の測定システムによれば、試料水の電気伝導率及び酸電気伝導率を測定するための電気伝導率計を共用することにより、電気伝導率計の設置個数を低減でき、電気電伝導率を測定しているときは陽イオン交換器には試料水を流さないことにより、陽イオン交換器の再生・交換頻度を低減できるので、測定システムの運転コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る測定システムが設けられる蒸気タービンプラントの構成模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る測定システムの構成模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係る測定システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による測定システムについて、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
<蒸気タービンプラントの構成>
図1に示されるように、蒸気タービンプラント1は、蒸気タービン2(高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンを含む)と、蒸気タービン2を駆動する蒸気を生成するためのボイラ3と、蒸気タービン2を駆動した蒸気を冷却凝縮する復水器4とを備えている。復水器4とボイラ3とは給水ライン11を介して接続されている。ボイラ3と蒸気タービン2とは、低圧蒸気供給ライン17、中圧蒸気供給ライン18及び高圧蒸気供給ライン19のそれぞれを介して接続されている。
【0011】
復水器4は、給水ライン21を介して純水タンク22に接続されている。給水ライン21には、純水タンク22からの給水量を調整するための給水弁23が設けられている。純水タンク22は、純水が製造される純水装置24に連通している。
【0012】
給水ライン11には、復水器4からボイラ3へ復水を給水するための復水ポンプ25が設けられている。復水ポンプ25よりも下流側で給水ライン11にアンモニア水を供給するためのアンモニア水供給装置26が設けられている。アンモニア水供給装置26は、復水のpHを調整するために復水にアンモニア水を供給するためのものであり、アンモニア水を貯留するタンク27と、一端がタンク27に接続されるとともに他端が給水ライン11に接続されるアンモニア水供給ライン28と、アンモニア水供給ライン28に設けられるアンモニア水供給ポンプ29とを備えている。
【0013】
ボイラ3において、給水ライン11には、低圧節炭器30が設けられている。給水ライン11は、低圧節炭器30よりも下流側で低圧給水ライン12と中圧給水ライン13と高圧給水ライン14とに分岐している。低圧給水ライン12には、低圧ドラム31と低圧過熱器32とが、上流側から下流側に向かって順次設けられ、低圧過熱器32は低圧蒸気供給ライン17を介して蒸気タービン2の低圧タービンに接続されている。中圧給水ライン13には、中圧節炭器33と中圧ドラム34と中圧過熱器35とが、上流側から下流側に向かって順次設けられている。蒸気タービン2の高圧タービンは、高圧タービンで使用されて降圧された中圧蒸気を回収する中圧蒸気回収ライン15を介して再熱器41に接続され、再熱器41は、中圧蒸気供給ライン18を介して蒸気タービン2の中圧タービンに接続されている。中圧過熱器35は、中圧蒸気流通ライン16を介して再熱器41よりも上流側で中圧蒸気回収ライン15に接続されている。高圧給水ライン14には、高圧一次節炭器36と高圧二次節炭器37と高圧ドラム38と高圧一次過熱器39と高圧二次過熱器40とが、上流側から下流側に向かって順次設けられ、高圧二次過熱器40は高圧蒸気供給ライン19を介して蒸気タービン2の高圧タービンに接続されている。
【0014】
蒸気タービンプラント1には、蒸気タービンプラント1の様々な箇所を流れる水又は蒸気を試料水としてサンプリングするサンプリング位置P1~P8が決められている。サンプリング位置P1は、給水ライン11において、復水ポンプ25よりも下流側、かつ、アンモニア水供給ライン28の給水ライン11との接続箇所よりも上流側の位置である。サンプリング位置P2は、給水ライン11において、アンモニア水供給ライン28の給水ライン11との接続箇所よりも下流側、かつ、低圧節炭器30の上流側の位置である。サンプリング位置P3は、低圧ドラム31内の水を抜き出し可能な位置である。サンプリング位置P4は、中圧ドラム34内の水を抜き出し可能な位置である。サンプリング位置P5は、高圧ドラム38内の水を抜き出し可能な位置である。サンプリング位置P1~P5のそれぞれからサンプリングされる試料水は液体の水である。
【0015】
サンプリング位置P6は、低圧給水ライン12において、低圧ドラム31と低圧過熱器32との間の位置である。サンプリング位置P7は、中圧給水ライン13において、中圧ドラム34と中圧過熱器35との間の位置である。サンプリング位置P8は、高圧給水ライン14において、高圧ドラム38と高圧一次過熱器39との間の位置である。サンプリング位置P6~P8のそれぞれからサンプリングされる試料水は蒸気である。
【0016】
<本開示の一実施形態に係る測定システムの構成>
図2に示されるように、本開示の一実施形態に係る測定システム50は、サンプリング位置P1~P8のそれぞれから試料水を抜き出すための抜き出し機60と、試料水の各種データを測定するための測定器70とを備えている。
【0017】
抜き出し機60は、サンプリング位置P1~P8のそれぞれにおいて試料水が抜き出される抜出ライン61P1~61P8と、抜出ライン61P1~61P8のそれぞれに設けられた開閉弁62P1~62P8と、開閉弁62P1~62P8のそれぞれを開閉させる開閉機構63とを備えている。サンプリング位置P6~P8のそれぞれから抜き出される試料水は蒸気であるため、開閉弁62P6~62P8のそれぞれの下流側に凝縮器64が設けられている。尚、図2には、抜出ライン61P6~61P8が合流した1本の配管65に1つの凝縮器64が設けられるように描かれているが、抜出ライン61P6~61P8のそれぞれにおいて開閉弁62P6~62P8の下流側に1つずつ凝縮器を設けてもよい。
【0018】
測定器70は、抜き出し機60に連通する試料水流通ライン71と、試料水流通ライン71に設けられた陽イオン交換器72と、試料水流通ライン71において陽イオン交換器72よりも下流側に設けられた電気伝導率計73と、一端が陽イオン交換器72よりも上流側で試料水流通ライン71に連通するとともに他端が陽イオン交換器72と電気伝導率計73との間で試料水流通ライン71に連通するバイパスライン74と、抜き出し機60によって抜き出された試料水が陽イオン交換器72を通過する形態(後述する第1測定モード)と試料水がバイパスライン74を流通する形態(後述する第2測定モード)とを切り替える切替装置75と、制御装置76とを備えている。
【0019】
陽イオン交換器72の構成は特に限定するものではなく、公知の陽イオン交換樹脂を備える交換器であってもよいし、電気式カチオン交換器であってもよい。切替装置75の構成は特に限定するものではなく、例えば、バイパスライン74の試料水流通ライン71との接続箇所と陽イオン交換器72との間で試料水流通ライン71に設けられた開閉弁75aと、バイパスライン74に設けられた開閉弁75bと、開閉弁75a及び75bのそれぞれを開閉させる開閉機構75cとを備える構成であってもよい。制御装置76は、開閉機構63及び75cのそれぞれの動作を制御可能に構成されている。例えば、制御装置76は、開閉機構63及び75cのそれぞれに有線で電気的に接続されてもよいし、開閉機構63及び75cのそれぞれと無線で電気的な信号の授受が可能に構成されてもよい。また、陽イオン交換器72が電気式カチオン交換器の場合には、制御装置76は、陽イオン交換器72に有線又は無線で電気的に接続されてもよい。
【0020】
測定器70は、電気伝導率計73とは別のその他の測定機器をさらに備えてもよい。その他の測定機器としては例えば、pH測定器77が挙げられる。pH測定器77を含むその他の測定機器は、一端が開閉弁75bよりも上流側でバイパスライン74に接続されるとともに他端が電気伝導率計73よりも下流側で試料水流通ライン71に接続される第2バイパスライン78に設けることができる。2つ以上のその他の測定機器を設ける場合には、2つ以上の第2バイパスライン78を並列に設けてもよい。電気伝導率計73とpH測定器77を含むその他の測定機器とはそれぞれ、制御装置76に有線又は無線で電気的に接続され、測定結果を制御装置76に伝送するように構成されている。
【0021】
<本開示の一実施形態に係る測定システムの動作>
次に、本開示の一実施形態に係る測定システム50の動作を図2図3のタイミングチャートとに基づいて説明する。尚、以下の説明では、サンプリング位置P1~P8からサンプリングした試料水をこの順序で測定システム50に供給するようにしているが、任意の順序で試料水を測定システム50に供給してもよい。
【0022】
サンプリング位置P1から試料水を抜き出すために、制御装置76は時刻tにおいて開閉機構63を駆動させて、開閉弁62P1のみを開き、他の開閉弁62P2~62P8は閉じた状態にする。そうすると、サンプリング位置P1から試料水が抜き出されて抜出ライン61P1を流通する。その後、サンプリング位置P1から抜き出された試料水は試料水流通ライン71を流通する。
【0023】
制御装置76は時刻tにおいて開閉機構75cも駆動させて、開閉弁75aを開くとともに開閉弁75bを閉じた状態にする。そうすると、試料水流通ライン71を流通する試料水は、一部が第2バイパスライン78を流通し、残りが陽イオン交換器72に流入する。陽イオン交換器72では、試料水中の水素イオン以外の陽イオンが水素イオンと交換される。陽イオン交換器72を通過した試料水は電気伝導率計73に流入し、電気伝導率計73によって酸電気伝導率が測定される。このようにして電気伝導率計73が試料水の酸電気伝導率を測定するモードを、第1測定モードと定義する。
【0024】
制御装置76は時刻tにおいて開閉機構75cを駆動させて、開閉弁75aを閉じるとともに開閉弁75bを開いた状態にする。そうすると、陽イオン交換器72への試料水の供給は遮断され、試料水流通ライン71を流通する試料水は全てバイパスライン74及び第2バイパスライン78のいずれかを流通するようになる。バイパスライン74を流通した試料水は陽イオン交換器72をバイパスして電気伝導率計73に流入し、電気伝導率計73によって電気伝導率が測定される。このようにして電気伝導率計73が試料水の電気伝導率を測定するモードを、第2測定モードと定義する。
【0025】
第1測定モード及び第2測定モードのいずれであっても、第2バイパスライン78には試料水が流通し、pH測定器77によってpHが測定される。pH測定器77以外のその他の測定機器が設けられていれば、その測定機器によって様々なデータが測定される。測定された酸電気伝導率、電気伝導率、pH等のデータは制御装置76に伝送され、伝送されたデータに基づいて、サンプリング位置P1からサンプリングされた試料水の水質の測定が行われる。
【0026】
第1測定モード及び第2測定モードそれぞれの測定を行うことで、サンプリング位置P1から抜き出された試料水の測定が終了したら、制御装置76は時刻tにおいて開閉機構63を駆動させて、開閉弁62P2のみを開き、他の開閉弁62P1及び62P3~62P8は閉じた状態にし、開閉機構75cを駆動させて、開閉弁75aを開くとともに開閉弁75bを閉じた状態にする。そうすると、サンプリング位置P2から抜き出された試料水が測定器70に流入する。その後の動作は、サンプリング位置P1から抜き出された試料水の測定動作と同じであり、時刻tからtまでは第1測定モードの測定を行い、時刻t以降は第2測定モードの測定を行う。
【0027】
時刻tにおいて、サンプリング位置P2から抜き出された試料水について第2測定モードが終了したら、上述した動作と同様にして、サンプリング位置P3から試料水を抜き出して測定を行う。以下、同様の動作で、サンプリング位置P4~P8それぞれから順次試料水を抜き出して測定を行う。尚、サンプリング位置P1~P5のそれぞれから抜き出される試料水は液体の水であるが、サンプリング位置P6~P8のそれぞれから抜き出される試料水は蒸気であるので、両者の測定動作には若干の違いがある。後者の測定では、試料水流通ライン71に流入する前に凝縮器64で冷却凝縮されて液体の水とすることが含まれるが、それ以外の動作は、サンプリング位置P1~P5のそれぞれから抜き出される試料水の測定動作と同じである。このように、抜き出し機60に凝縮器64を設けることで、試料水としての蒸気の水質を測定することができるようになる。
【0028】
このような測定システム50の動作によれば、試料水の電気伝導率及び酸電気伝導率を測定するための電気伝導率計73を共用することにより、電気伝導率計の設置個数を低減でき、電気電伝導率を測定しているときは陽イオン交換器72には試料水を流さないことにより、陽イオン交換器72の再生・交換頻度を低減できるので、測定システム50の運転コストを低減することができる。特に、複数のサンプリング位置P1~P8から抜き出した試料水についての電気伝導率及び酸電気伝導率の測定を1つの電気伝導率計73で測定できるので、測定システム50における電気伝導率計の個数を低減し、測定システム50の運転コストを低減することができる。
【0029】
上述の動作において、それぞれのサンプリング位置P1~P8から試料水を抜き出す間に、第2測定モードのインターバルが第1測定モードのインターバルよりも大きくなるようにすれば、陽イオン交換器72に試料水を流す時間がさらに短くなるので、陽イオン交換器72の再生・交換頻度をさらに低減でき、測定システム50の運転コストをさらに低減することができる。尚、上述の動作では、それぞれのサンプリング位置P1~P8から抜き出された試料水を測定する際に、第1測定モードを行った後に第2測定モードを行っていたが、第2測定モードを行った後に第1測定モードを行ってもよい。また、それぞれの試料水の測定で、第1測定モード及び第2測定モードの順番を異なるようにしてもよい。
【0030】
測定システム50は1つの測定器70を備える構成であるが、この構成に限定するものではない。例えば、サンプリング位置P1~P5のそれぞれから抜き出される液体の試料水の測定用の測定器70と、サンプリング位置P6~P8のそれぞれから抜き出される蒸気の測定用の測定器70とを別々に設けてもよく、さらに3つ以上の測定器70を設けてもよい。サンプリング位置の個数は任意であるが、サンプリング位置の個数よりも測定器70の個数が少なければ、それぞれのサンプリング位置ごとに測定器70を設ける場合よりも測定器70の個数は少なくなり、測定システム50の運転コストを低減することができる。ただし、本開示の測定器70の構成であれば、サンプリング位置ごとに測定器70を設けても、測定器70において酸電気伝導率及び電気伝導率を測定する電気伝導率計を共用しているので、測定機器の個数を減らす効果はある。
【0031】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0032】
[1]一の態様に係る測定システムは、
蒸気タービンプラント(1)の試料水の水質を測定する測定システム(50)であって、
前記蒸気タービンプラント(1)における異なる複数のサンプリング位置(P1~P8)のそれぞれから前記試料水を抜き出すための抜き出し機(60)と、
前記抜き出し機(60)に連通する試料水流通ライン(71)と、
前記試料水流通ライン(71)に設けられた陽イオン交換器(72)と、
前記試料水流通ライン(71)において前記陽イオン交換器(72)よりも下流側に設けられた電気伝導率計(73)と、
一端が前記陽イオン交換器(72)よりも上流側で前記試料水流通ライン(71)に連通するとともに他端が前記陽イオン交換器(72)と前記電気伝導率計(73)との間で前記試料水流通ライン(71)に連通するバイパスライン(74)と、
前記陽イオン交換器(72)を通過した試料水の酸電気伝導率を前記電気伝導率計(73)によって測定する第1測定モードと、前記バイパスライン(74)を通過した試料水の電気伝導率を前記電気伝導率計(73)によって測定する第2測定モードとを切り替える切替装置(75)と、
前記切替装置(75)を駆動する制御装置(76)と
を備える。
【0033】
本開示の測定システムによれば、試料水の電気伝導率及び酸電気伝導率を測定するための電気伝導率計を共用することにより、電気伝導率計の設置個数を低減でき、電気電伝導率を測定しているときは陽イオン交換器には試料水を流さないことにより、陽イオン交換器の再生・交換頻度を低減できるので、測定システムの運転コストを低減することができる。
【0034】
[2]別の態様に係る測定システムは、[1]の測定システムであって、
前記酸電気伝導率及び前記電気伝導率の両方が前記水質の測定に用いられる。
【0035】
このような構成によれば、蒸気タービンプラントの試料水の水質を測定するための測定システムの運転コストを低減することができる。
【0036】
[3]さらに別の態様に係る測定システムは、[1]または[2]の測定システムであって、
前記制御装置(76)は、前記複数のサンプリング位置(P1~P8)のうちの1つだけから前記試料水を抜き出し、そのサンプリング位置からの前記試料水の抜き出しを終了した後に別のサンプリング位置から前記試料水を抜き出すように前記抜き出し機(60)を制御する。
【0037】
このような構成によれば、複数のサンプリング位置から抜き出した試料水についての電気伝導率及び酸電気伝導率の測定を1つの電気伝導率で測定できるので、測定システムにおける電気伝導率計の個数を低減し、測定システムの運転コストを低減することができる。
【0038】
[4]さらに別の態様に係る測定システムは、[3]の測定システムであって、
前記制御装置(76)は、それぞれのサンプリング位置(P1~P8)から前記試料水を抜き出す間に、前記第2測定モードのインターバルが前記第1測定モードのインターバルよりも大きくなるように前記切替装置(75)を制御する。
【0039】
このような構成によれば、陽イオン交換器に試料水を流す時間がさらに短くなるので、陽イオン交換器の再生・交換頻度をさらに低減でき、測定システムの運転コストをさらに低減することができる。
【0040】
[5]さらに別の態様に係る測定システムは、[1]~[4]のいずれかの測定システムであって、
前記複数のサンプリング位置(P1~P8)の少なくとも1つから抜き出される試料水は蒸気であり、
前記抜き出し機(60)は、前記蒸気を凝縮するための少なくとも1つの凝縮器(64)を備える。
【0041】
このような構成によれば、抜き出した蒸気を凝縮器によって凝縮できるので、試料水としての蒸気の水質を測定することができる。
【0042】
[6]さらに別の態様に係る測定システムは、[1]~[5]のいずれかの測定システムであって、
前記複数のサンプリング位置の数よりも前記電気伝導率計の数の方が少ない。
【0043】
このような構成によれば、サンプリング位置ごとに電気伝導率計を設ける場合よりも電気伝導率計の個数は少なくなるので、測定システムの運転コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 蒸気タービンプラント
50 測定システム
60 抜き出し機
64 凝縮器
71 試料水流通ライン
72 陽イオン交換器
73 電気伝導率計
74 バイパスライン
75 切替装置
76 制御装置
P1 サンプリング位置
P2 サンプリング位置
P3 サンプリング位置
P4 サンプリング位置
P5 サンプリング位置
P6 サンプリング位置
P7 サンプリング位置
P8 サンプリング位置
図1
図2
図3