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特許7493473スパイラル慣性濾過を使用する粒子分離及び濃縮
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】スパイラル慣性濾過を使用する粒子分離及び濃縮
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/28 20060101AFI20240524BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20240524BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240524BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20240524BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240524BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B03B5/28 A
B01J19/00 321
C12M1/00 A
C12M1/26
G01N37/00 101
G01N1/04 M
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2021035334
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2018226494の分割
【原出願日】2013-09-30
(65)【公開番号】P2021102209
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】61/707,878
(32)【優先日】2012-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507028217
【氏名又は名称】キヤノン ユー.エス. ライフ サイエンシズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S. LIFE SCIENCES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】バーク,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,イアン
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/109762(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0096327(US,A1)
【文献】特開2009-279403(JP,A)
【文献】特開2009-113035(JP,A)
【文献】特表2010-538241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 1/00-13/06
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
C12M 1/00-3/10
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00-1/44
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
B81L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体処理装置を通って流れる流体から粒子を分離するように構成された流体処理装置であって、
1つ又は複数の粒子サイズを有する粒子を含む流体を受け取るように構成された流体入口と、
主流体チャネルであって、前記流体入口から延在し、スパイラル構成で配置され、前記粒子のサイズに従って、該主流体チャネルを通して該主流体チャネル内の一意の平衡位置内に流れる前記流体内で粒子の選別移動を引き起こし、それにより、該主流体チャネルを通して流れる前記流体内で1つ又は複数の粒子ストリーム及び粒子の無い領域を形成するように構成された主流体チャネルと、
前記主流体チャネルに流体連通し、前記主流体チャネルから流れる粒子ストリームから粒子を受け取るように構成された1つ又は複数の出口と、
1つ又は複数の副チャネルであって、流体入口と1つ以上の出口との間の当該主流体チャネルの長さに沿って、前記主流体チャネルの側面から延在し、前記主流体チャネル内の前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出して、前記主流体チャネルを通して流れる残りの前記流体内で粒子の濃度を増加させるように構成され、ここで、主流体チャネルが不均一な幾何形状を有し、副チャネルから下流の主流体チャネルの部分の幾何形状が幅を縮小して、副チャネルを介した流体の除去の結果として生じる、Uf及びDeの少なくとも一方が、廃棄チャネルの下流の主流体チャネルの条件を修正することによって維持されるように流体体積を補うようになっており、各副チャネルの幅は40から250μmの間である、1つ又は複数の副チャネルと、
を備えている流体処理装置。
【請求項2】
前記1つ又は複数の粒子ストリームのそれぞれの前記粒子が、揚力F及びディーン力Fによって平衡位置に維持される請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項3】
前記1つ又は複数の粒子のサイズが、4.8μm~15μmの範囲にある請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項4】
前記副チャネルは、前記主流体チャネルから前記粒子の無い領域の前記流体の一部を引き出して、前記主流体チャネルを通って流れる流体の体積を10~95%だけ減少させるように構成されている請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項5】
前記粒子が、DNA分子、ウィルス、細菌、真菌、がん細胞、白血球、及び好中球からなる群より選択されるものである請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項6】
前記粒子は、少なくとも2つの異なるタイプの粒子からなり、
前記主流体チャネルは、前記異なるタイプの粒子が該粒子のサイズに従って2つ以上の粒子ストリーム内に集束され、それにより、前記主流体チャネルを通って流れる前記流体内で粒子の無い領域を形成するように構成されており、
前記流体処理装置は、2つ以上の出口であって、前記主流体チャネルに流体連通し、前記主流体チャネルから流れる前記粒子ストリームから前記粒子を受け取って、前記異なるタイプの粒子のそれぞれを濾過するように構成された2つ以上の出口を含み、
前記1つ又は複数の副チャネルは、前記主流体チャネル内で前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出して、前記主流体チャネルを通して流れる残りの前記流体内で残りの粒子の濃度を増加させるように構成されている請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項7】
前記流体入口は、前記主流体チャネルの前記スパイラル構成の内側端部分に配置され、前記1つ又は複数の出口は、前記主流体チャネルの前記スパイラル構成の外側端部分に配置され、前記1つ又は複数の副チャネルは、前記主流体チャネルの前記スパイラル構成の外側ループから半径方向に外方に延在している請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項8】
前記主流体チャネルが、前記主流体チャネルの長さに沿って変動する不均一な幅を有している請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項9】
少なくとも2つの副チャネルを備えており、前記主流体チャネル幅は、それぞれの2つの隣接する副チャネル間で実質的に一定である請求項8に記載の流体処理装置。
【請求項10】
前記主流体チャネルの幾何形状が、副チャネルに従って変更され、該副チャネルによる流体除去を補償する請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項11】
前記主流体チャネルの幾何形状が、副チャネルに従って変更され、前記副チャネルの前及び後で、前記主流体チャネル内で一定の又は実質的に一定の流れ速度を維持する請求項10に記載の流体処理装置。
【請求項12】
前記主流体チャネルの幾何形状が、該主流体チャネル幅を変化させることによって変更され、j番目の副チャネルに続く前記主流体チャネルの新しい幅wm,jは、式:
【数1】
によって決定され、ここで、xm,j-1は、前記j番目の副チャネルを通した流体除去後に前記主流体チャネルに残っている流体の割合であり、wm,jは、前記主流体チャネルの前のセクションの幅である請求項11に記載の流体処理装置。
【請求項13】
前記主流体チャネルの幾何形状が、副チャネルに従って変更され、該副チャネルの前及び後で、該主流体チャネル内で一定の又は実質的に一定のディーン数Dを維持し、
なお、該ディーン数Dは、式:
【数2】
によって与えられ、ここで、ρは流体の密度であり、Uは平均流体速度であり、μは流体動粘度であり、Rは前記主流体チャネルの曲率半径であり、Dは水力直径であり、水力直径Dは、
【数3】
から決定され、ここで、wは前記主流体チャネル幅であり、hは前記主流体チャネルの高さである請求項10に記載の流体処理装置。
【請求項14】
前記主流体チャネルの幾何形状が、前記主流体チャネル幅を変化させることによって変更される請求項10に記載の流体処理装置。
【請求項15】
前記主流体チャネルと前記副チャネルとの間の接合部の下流の角は、フィレット形成されており、前記主流体チャネル幅の段階的な変化を可能にしている請求項14に記載の流体処理装置。
【請求項16】
1つ~5つの出口を備えている請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項17】
1つ~6つの副チャネルを備えている請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項18】
各副チャネルが、前記主流体チャネルの前記スパイラル構成の最も外側のリングの外側エッジから延在している請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項19】
前記1つ又は複数の副チャネルのそれぞれが、前記主流体チャネルを通して流れる前記流体の5%~50%を引き出すように構成されている請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項20】
各副チャネルが蛇行経路を備えている請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項21】
ポリジメチルシロキサンから作製された請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項22】
100μL/分~1250μL/分の流量に対処するように構成された請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項23】
1mL/分のレートで流体を処理するように構成された請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項24】
各副チャネル幅は、式:
【数4】
に従って前記主流体チャネルから前記粒子の無い領域の前記流体の指定された部分を引き出すように設定され、ここで、wは前記副チャネル幅であり、hは前記副チャネルの高さであり、Lは前記副チャネルの長さであり、μは前記流体の動粘度であり、Rは前記副チャネルの流体抵抗である請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項25】
指定されたレートで前記主流体チャネルから流体を引き出すために必要とされる副チャネルの流体抵抗が、関係:
【数5】
を満たし、ここで、Rs,jはj番目のノードのj番目の副チャネルの流体抵抗であり、該j番目の副チャネルは前記主流体チャネルに接続され、Rm,jは、前記j番目のノードの前記主流体チャネルの流体抵抗であり、Rs,j-1は、直前のノードj-1の前記副チャネルの流体抵抗であり、rQ,j-1は、前記主流体チャネル内の流量(Qm,j)の前記j番目のノードの前記副チャネル内の流量(Qs,j)に対する体積流量比である請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項26】
前記主流体チャネルの前記スパイラル構成が、6ループ又は7ループのスパイラルを備えている請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項27】
前記主流体チャネルが、250μmの幅及び50μmの高さを有する請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項28】
単一入口、単一副チャネル、及び分岐出口を備え、スパイラル主流体チャネルが、連続するループ間に250μmギャップを有する請求項26に記載の流体処理装置。
【請求項29】
前記スパイラル構成が、アルキメデスのスパイラルである請求項26に記載の流体処理装置。
【請求項30】
前記副チャネルの長さが19mmである請求項28に記載の流体処理装置。
【請求項31】
各副チャネルが、35μmの幅、50μmの高さ、及び19mmの長さを有する請求項1に記載の流体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフルイディクスの分野に関し、具体的には、試料から関心成分を濃縮することを含むマイクロフルイディクスにおける試料調製の分野に関する。本発明は、血痰等のような生物学的試料から標的成分を分離する方法に関する。本発明によれば、関心成分は、白血球、ウィルス、細菌、真菌、又はその組合せであるとすることができる。幾つかの実施形態では、関心成分は、核を有する細胞であるとすることができる。幾つかの実施形態では、細胞は哺乳類細胞である。幾つかの実施形態では、分離される標的生物は、DNAを遊離させる処理を受け、DNAは、その後回収される。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2012年9月28日に出願された米国仮特許出願第61/707,878号の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その開示内容を引用することにより、その全体が本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
高スループットの粒子分離及び濃縮は、化学、環境、及び生物医学的分野の多くのアプリケーションにとって重要である。特に、幾つかの細胞及び細胞下の浄化及び富化アプリケーションが使用されて、疾病の定量的調査及び診断が可能になる。感染症の診断は、血液ストリーム内又は他の生物学的試料内の比較的少量の感染性生物(例えば、ウィルス、細菌、又は真菌)の検出に頼る。異なるタイプの細胞(例えば、がん細胞、白血球等)を含む他の成分を試料から隔離することも望ましい場合がある。感染性生物又は関心成分は、試料から隔離されると、その後、下流の処理を可能にするため、これらの成分からの核酸の隔離を含む同定に関連する更なるアプリケーションにおいて使用され得る。そのため、ウィルス、細菌、真菌、がん細胞、及び白血球を含む、生物学的試料からの関心成分の濃縮及び浄化を提供する方法についての必要性が存在する。
【0004】
細胞分離、全血分画、及び密度勾配を使用する細胞下分画のための市販の製品が入手可能である。しかし、これらの技法は、不十分な分離分解能を有し、特殊細胞を回収するのに不適切である。市販の蛍光標識細胞分取(fluorescence-activated cell sorting)(FACS)システムは、自動化された細胞分離及び計数を可能にするが、大きな試料体積を処理できず、また、同様に、特殊細胞を回収するのに不適切である。
【0005】
多くのマイクロフルイディック技法は、粒子及び細胞を分類する、濃縮する、又は浄化するために登場した1-20。マイクロフルイディックデバイスに対する細菌の研究は、環境的及び生物学的試料からの微生物回収(microorganism recovery)21、免疫不全診断(immune deficiency diagnosis)のための白血球計数22、及びがん転移診断(metastasis diagnosis)及び予知(prognosis)のための循環性腫瘍細胞(circulating tumor cell)(CTC)計数23,24を含むアプリケーションを使用可能にした。これらの技法のほとんどは、1μL/分~100μL/分の範囲内で働くが、特殊細胞濃縮等の、使用可能な量の標的種を取得するために大量の流体を処理することを必要とするアプリケーションについて、かなり高いスループットが必要とされる。したがって、特殊細胞回収のために設計された方法は、特殊標的粒子を保持しながら、下流のマイクロフルイディックステップを可能にするため、流体の全体積を、mLから100μL以下に大幅に減少させることが可能でなければならない。
【0006】
最近、高スループット分離についての必要性は、1mL/分より大きいスループットを達成することが可能な慣性移動ベース粒子分離方策によって対処されてきた25。これらの方策は、チャネル内の力を平衡させて、所望の長手方向位置に入るよう或る特定のサイズの粒子を配置する。真っ直ぐなチャネル内で、2つの慣性揚力(inertial lift force)(F)は、平衡して、チャネル末梢に沿う離散的な平衡位置に粒子を集束させる26,27。ここで、1つの慣性揚力は放物線流プロファイルにより、他の慣性揚力は粒子と壁との相互作用による。これは、Segre及びSilberberg28によってセンチメートルスケールで最初に示され、マイクロスケールのアプリケーションについては後で他の人によって示された29-32,21,33-37
【0007】
弧状チャネル38-43、非対称蛇紋状チャネル44-46、及びスパイラルチャネル47-56等の曲線幾何形状の使用は、ディーン渦(Dean vortices)として知られる2次流れの形成によって、第3の力、ディーン力Fを導入する。これらの2次流れの大きさは、無次元ディーン数(De)57,58によって記述される。
【数1】
ここで、ρは流体の密度であり、Uは平均流体速度であり、μは流体動粘度であり、Rは曲線チャネルの曲率半径であり、Dは水力直径(hydraulic diameter)である。水力直径Dは、
【数2】
から決定され、ここで、w及びhは、それぞれ、チャネル幅及びチャネル高さである。ディーン渦は、逆回転し、抗力を課すことによってチャネルを横切って横方向に粒子を変位させるように作用する。ディーン力は、組合された揚力と組合されて作用して、集束された粒子の平衡位置を、チャネルの内壁の近くの単一平衡位置に変更する。
【0008】
図1Aは、慣性スパイラルマイクロフルイディクスの原理を示すマイクロフルイディックチャネル断面の概略図である。(紙面に入る)主要な流れは、曲線経路に追従し、ディーン渦(破線)として知られる2次流れの発生をもたらす。分散粒子は、揚力(F)とディーン力(F)の組合せを受け、それが、内壁の近くの一意の平衡位置への粒子の選別移動(differential migration)をもたらす。
【0009】
揚力はF∝a として振舞い、ディーン力はF∝aとして振舞い、aは粒子径である。そのため、平衡位置は、粒子サイズ依存性があり、より大きな粒子(Fによって支配される)は内壁の近くに整列し、より小さな粒子(Fによって支配される)はチャネル中心の近くに整列する47。マイクロフルイディックスパイラルにおける2粒子分離の例は図1Bに示される。1つのサイズ(例えば、15μm)の粒子は、1mL/分の流量において異なるサイズ(例えば、8μm)の粒子から分離される。
【0010】
スパイラル慣性マイクロフルイディックデバイスは、粒子分離47,49,51,54及び細胞分離49、細胞同期50、循環性腫瘍細胞隔離59、並びに電気穿孔55を含む広い範囲のアプリケーションにおいて成功裡に使用されてきた。これらのデバイスは、通常、分岐出口を利用して、濃縮され集束された粒子又は細胞ストリームを収集する。デバイスについての分離効率は、デバイスに入力される粒子の数に対する単一出口において収集される標的粒子の数として規定される。濃度ファクタは、入口粒子濃度に分離効率をかけた値に対する、100%回収を仮定した粒子の濃度として規定される。最終的に、任意の幾何形状の場合、濃度ファクタは、出口の数によって制限される。すなわち、余りにも多くの出口が存在する場合、単一出口を通って流れるように、粒子ストリームを精密に制御できない。最大8チャネルの分岐出口を有するデバイスが示されている49。これは、8Xの濃度ファクタ(すなわち、入口流体の87.5%除去)をもたらした。しかし、分岐出口だけを使用すると、10X(90%の流体除去)より大きい値への濃度ファクタの更なる増加は難題である。例えば、93%除去は、14X濃度ファクタに対応し、14出口を必要とすることになる。出口の幅は、通常、粒子ストリームが単一出口において収集されることを保証するため、粒子径の4~5倍である必要がある。したがって、多数の出口は、出口の前においてチャネル幅の大きな拡張を必要とする。この拡張は、幅広くなり過ぎて、単一出口チャネル内に収集されない流体流線の幅、したがって、粒子ストリームの幅の対応する増加を伴い、粒子損失及び分離効率の減少をもたらす。
【0011】
主チャネルからの流体をマイクロフルイディック廃棄チャネルを通して除去又は「スキミング(skimming)」することによって、マイクロフルイディックデバイス内で粒子濃度及び純度を増加させることが、過去に報告されている。従来のスキミング技法は、チャネル壁の近くでの粒子の無い小領域の自然な形成60-64図2Aに示す)又は幾何形状特徴の近くでの粒子の無い小領域の自然な形成65図2Bに示す)による。1つのアプローチでは、外側壁に配置されたポスト66,67又はダム68が、粒子を濾過するために使用された。流体及びより小さな粒子は、ポスト又はダムフィルタを通過することができ、除去され、一方、より大きな粒子は保持された。これらのデバイスは、低流量(<100μL/分)で動作して、慣性効果及び2次ディーン流れを最小にした。結果として、遠心力が支配し、粒子を曲線チャネルの外側壁に押した。別の設計は、遠心力を利用して、血球を外側壁に押付け、内壁上の廃棄チャネルから血漿を除去した38。最大120μL/分の流量が達成された。第3のアプローチでは、慣性揚力が、標的細胞を壁から離れるように集束させ、標的の無い領域を生成し、標的の無い領域で、廃棄チャネルが流体及び非標的細胞を除去した69,70。すなわち、この設計は>500μL/分を達成した。これらのデバイスは、高濃度の非標的種と比べて標的細胞を富化することに的を絞り、高い濃度ファクタを達成することを目指さなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、試料内の粒子を分離する、例えば、試料内で混合DNAから標的DNAを分離する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
幾つかの非制限的な実施形態では、標的DNAは、ウィルス、細菌(原核生物)、真菌、又はその組合せ等の標的生物内に存在する。幾つかの実施形態では、混合DNAは標的DNA及び非標的DNAを含む。幾つかの実施形態では、非標的DNAは、哺乳類DNAである。幾つかの実施形態では、試料は核を有する細胞を含む。幾つかの実施形態では、細胞は哺乳類細胞である。幾つかの実施形態では、分離された標的生物は、回収することができるそのDNAを遊離するように処理される。
【0014】
本発明の一実施形態では、本明細書で提供されるスパイラル慣性濾過デバイスを設計する方法が提供される。
【0015】
本発明の第2の実施形態では、本明細書で提供されるスパイラル慣性濾過デバイスに試料を導入することを含む、試料から関心成分を分離する方法が提供される。
【0016】
更なる実施形態では、スパイラル慣性濾過デバイスは、デバイスから粒子の無い流体を引き出すように構成される少なくとも1つの廃棄チャネルを備え、それにより、デバイス内に残留する流体(試料)の粒子濃度を増加させる。
【0017】
別の実施形態では、廃棄チャネルは、試料の体積を、約10%から約95%、すなわち、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%減少させる。
【0018】
更なる実施形態では、関心成分は、スパイラル慣性濾過デバイスによって濃縮される。
【0019】
別の実施形態では、関心成分は、ウィルス、細菌、真菌、がん細胞、及び白血球から選択される。更なる実施形態では、関心成分は好中球である。
【0020】
本発明の一実施形態は、本明細書で述べるスパイラル慣性濾過デバイスを提供する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、本明細書で述べるスパイラル慣性濾過デバイスを提供し、デバイスは、同じ試料から2つ以上の関心成分を濃縮及び/又は濾過する。
【0022】
本発明の更なる実施形態は、本明細書で提供されるスパイラル慣性濾過デバイスを使用して試料から2つ以上の関心成分を濃縮及び/又は濾過する方法を提供する。
【0023】
特に、本発明の諸観点は、流体処理装置において具現化され、流体処理装置は、装置を通して流れる流体から粒子を分離するように構成され、流体入口と主流体チャネルと1つ又は複数の出口と1つ又は複数の副チャネルとを備える。流体入口は、1つ又は複数の粒子サイズを有する粒子を含有する流体を受けるように構成される。主流体チャネルは、流体入口から延在し、スパイラル構成で配置され、粒子のサイズに従って、主流体チャネルを通して主チャネル内の一意の平衡位置内に流れる流体内で粒子の選別移動(differential migration)を引き起こし、それにより、主チャネルを通して流れる流体内で1つ又は複数の粒子ストリーム及び粒子の無い領域を形成するように構成される。1つ又は複数の出口は、主流体チャネルに流体連通し、主流体チャネルから流れる粒子ストリームから粒子を受け取るように構成される。1つ又は複数の副チャネルは、主流体チャネルから延在し、主チャネル内の粒子の無い領域から流体の少なくとも一部を引き出して、主チャネルを通して流れる残りの流体内で粒子の濃度を増加させるように構成される。
【0024】
本発明の更なる観点では、前記1つ又は複数の粒子ストリームのそれぞれの前記粒子は、揚力F及びディーン力Fによって平衡位置に維持される。
【0025】
本発明の更なる観点では、前記1つ又は複数の粒子のサイズは、4.8μm~15μmの範囲にある。
【0026】
本発明の更なる観点では、前記副チャネルは、前記主チャネルから前記粒子の無い領域の前記流体の一部を引き出して、前記主チャネルを通して流れる流体の体積を約10~約95%だけ減少させるように構成される。
【0027】
本発明の更なる観点では、前記粒子は、DNA分子、ウィルス、細菌、真菌、がん細胞、白血球、及び好中球からなる群から選択される。
【0028】
本発明の更なる観点では、前記装置を通して流れる前記流体は試料を含み、前記粒子は、前記試料内に2つ以上の関心成分を含み、
前記流体入口は、前記試料を受け取るように構成され、
前記主流体チャネルは、前記関心成分が該成分のサイズに従って2つ以上の成分ストリーム内に集束され、それにより、前記主チャネルを通して流れる前記流体内で成分の無い領域を形成するように構成され、
前記装置は、2つ以上の出口であって、前記主流体チャネルに流体連通し、前記主流体チャネルから流れる前記成分ストリームから前記関心成分を受け取って、前記試料から前記関心成分のそれぞれを濾過するように構成される、2つ以上の出口を含み、
前記1つ又は複数の副チャネルは、前記主チャネル内で前記成分の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出して、前記主チャネルを通して流れる残りの前記流体内で関心成分の濃度を増加させるように構成される。
【0029】
本発明の更なる観点では、前記流体入口は、前記主チャネルの前記スパイラル構成の内側端部分に配置され、前記1つ又は複数の出口は、前記主チャネルの前記スパイラル構成の外側端部分に配置され、前記1つ又は複数の副チャネルは、前記主チャネルの前記スパイラル構成の外側ループから半径方向に外方に延在する。
【0030】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルは、前記主チャネルの長さに沿って変動する不均一な幅を有する。
【0031】
本発明の更なる観点では、前記装置は、少なくとも2つの副チャネルを備え、前記主チャネル幅は、それぞれの2つの隣接する副チャネル間で実質的に一定である。
【0032】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルの幾何形状は、副チャネルに従って変更され、該副チャネルによる流体除去を補償する。
【0033】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルの幾何形状は、副チャネルに従って変更され、前記副チャネルの前及び後で、前記主チャネル内で一定の又は実質的に一定の流れ速度を維持する。
【0034】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルの幾何形状は、該主チャネル幅を変化させることによって変更され、j番目の副チャネルに続く前記主チャネルの新しい幅wm,jは、式:
【数3】
によって決定され、ここで、xm,j-1は、前記j番目の副チャネルを通した流体除去後に前記主チャネルに残っている流体の割合であり、wm,jは、前記主チャネルの前のセクションの幅である。
【0035】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルの幾何形状は、副チャネルに従って変更され、該副チャネルの前及び後で、該主チャネル内で一定の又は実質的に一定のディーン数Dを維持し、
なお、該ディーン数Dは、式:
【数4】
によって与えられ、ここで、ρは流体の密度であり、Uは平均流体速度であり、μは流体動粘度であり、Rは前記主チャネルの曲率半径であり、Dは水力直径であり、前記水力直径Dは、
【数5】
から決定され、ここで、wは前記主チャネル幅であり、hは前記主チャネルの高さである。
【0036】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルの幾何形状は、前記主チャネル幅を変化させることによって変更される。
【0037】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルと前記副チャネルとの間の接合部の下流の角は、フィレット形成されて、前記主チャネル幅の段階的な変化を可能にする。
【0038】
本発明の更なる観点では、前記装置は1つ~5つの出口を備える。
【0039】
本発明の更なる観点では、前記装置は1つ~6つの副チャネルを備える。
【0040】
本発明の更なる観点では、各副チャネルは、前記主チャネルの前記スパイラル構成の最も外側のリングの外側エッジから延在する。
【0041】
本発明の更なる観点では、前記1つ又は複数の副チャネルのそれぞれは、前記主チャネルを通して流れる前記流体の5%~50%を引き出すように構成される。
【0042】
本発明の更なる観点では、各副チャネルは蛇行経路を備える。
【0043】
本発明の更なる観点では、前記装置はポリジメチルシロキサンから作製される。
【0044】
本発明の更なる観点では、前記装置は、100μL/分~1250μL/分の流量に対処するように構成される。
【0045】
本発明の更なる観点では、前記装置は、1mL/分のレートで流体を処理するように構成される。
【0046】
本発明の更なる観点では、各副チャネル幅は、式:
【数6】
に従って前記主チャネルから前記粒子の無い領域の前記流体の指定された部分を引き出すように設定され、ここで、wは前記副チャネル幅であり、hは前記副チャネルの高さであり、Lは前記副チャネルの長さであり、μは前記流体の動粘度であり、Rは前記副チャネルの流体抵抗である。
【0047】
本発明の更なる観点では、指定されたレートで前記主チャネルから流体を引き出すために必要とされる副チャネルの流体抵抗は、関係:
【数7】
を満たし、ここで、Rs,jは前記j番目のノードの前記j番目の副チャネルの流体抵抗であり、該j番目の副チャネルは前記主チャネルに接続され、Rm,jは、前記j番目のノードの前記主チャネルの流体抵抗であり、Rs,j-1は、直前のノードj-1の前記副チャネルの流体抵抗であり、rQ,j-1は、前記主チャネル内の流量(Qm,j)の前記j番目のノードの前記副チャネル内の流量(Qs,j)に対する体積流量比である。
【0048】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルの前記スパイラル構成は、6ループ又は7ループのスパイラルを備える。
【0049】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルは、約250μmの幅及び約50μmの高さを含む。
【0050】
本発明の更なる観点では、前記装置は、単一入口、単一副チャネル、及び分岐出口を備え、前記スパイラル主チャネルは、連続するループ間に250μmギャップを有する。
【0051】
本発明の更なる観点では、前記スパイラル構成は、アルキメデスのスパイラルである。
【0052】
本発明の更なる観点では、前記副チャネル幅は40μm~250μmである。
【0053】
本発明の更なる観点では、前記副チャネルの長さは約19mmである。
【0054】
本発明の更なる観点では、各副チャネルは、約35μmの幅、約50μmの高さ、及び約19mmの長さを含む。
【0055】
本発明の更なる観点は、1つ又は複数の粒子サイズの粒子を含む流体の粒子を濾過及び/又は濃縮する方法において実施される。スパイラル経路内で前記流体が移動され、該移動は、条件であって、前記粒子のサイズに従って、一意の平衡位置内への前記移動する流体内の粒子の選別移動を引き起こし、それにより、前記移動する流体内で1つ又は複数の粒子ストリーム及び粒子の無い領域を形成する条件下で行われる。前記移動する流体の前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部が引き出され、それにより、前記移動する流体の残留物内で粒子の濃度が増加され、前記粒子ストリームのうちの1つ又は複数から粒子が収集される。
【0056】
本発明の更なる観点では、前記収集するステップは、前記スパイラル経路の端部で実施される。
【0057】
本発明の更なる観点では、前記粒子は、試料流体内に1つ又は複数の関心成分を含む。
【0058】
本発明の更なる観点では、前記方法は各関心成分の濃度を増加させることを更に含む。
【0059】
本発明の更なる観点では、前記1つ又は複数の粒子ストリームのそれぞれの前記粒子は、揚力F及びディーン力Fによって平衡位置に維持される。
【0060】
本発明の更なる観点では、前記1つ又は複数の粒子のサイズは、4.8μm~15μmの範囲にある。
【0061】
本発明の更なる観点では、前記引き出すステップは、戦記移動する流体の体積を約10%~約95%だけ減少させる。
【0062】
本発明の更なる観点では、前記粒子は、DNA分子、ウィルス、細菌、真菌、がん細胞、白血球、及び好中球からなる群より選択される。
【0063】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記移動する流体の前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出した後に前記移動する流体の条件を変更することであって、それにより、流体除去を補償することを更に含む。
【0064】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記移動する流体の前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出した後に前記移動する流体の条件を変更することであって、それにより、前記移動する前記流体の前記粒子の無い領域から流体の少なくとも一部を引き出す前及び引き出した後に、前記移動する流体内で一定の又は実質的に一定の流れ速度を維持することを更に含む。
【0065】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記移動する流体の前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出した後に前記移動する流体の条件を変更することであって、それにより、前記移動する前記流体の前記粒子の無い領域から流体の少なくとも一部を引き出す前及び引き出した後に、一定の又は実質的に一定のディーン数を維持することを更に含む。
【0066】
41.前記移動する流体は、100μL/分~1250μL/分の流量を含む請求項33に記載の方法。
【0067】
本発明の更なる観点では、1mL/分レートで1つ又は複数の粒子サイズの粒子を含む流体を濾過及び/又は濃縮することを含む。
【0068】
本発明の更なる観点では、スパイラル経路内で流体を移動させる前記ステップは、流体入口から延在し、スパイラル構成で配置される主流体チャネル内で実施され、
前記移動する流体の前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出す前記ステップは、前記主流体チャネルから延在する1つ又は複数の副チャネル内で実施され、
前記粒子ストリームのうちの1つ又は複数から粒子を収集する前記ステップは、前記主流体チャネに流体連通する1つ又は複数の出口によって実施される。
【0069】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルは、前記主チャネルの長さに沿って変動する不均一な幅を有する。
【0070】
本発明の更なる観点では、前記移動する流体の前記粒子の無い領域から前記流体の少なくとも一部を引き出す前記ステップは、少なくとも2つの副チャネルによって実施され、前記主チャネル幅は、各2つの隣接する副チャネル間で実質的に一定である。
【0071】
本発明の更なる観点では、前記1つ又は複数の副チャネルは、前記主チャネルの前記スパイラル構成の外側ループから半径方向に外方に延在する。
【0072】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記主チャネルの幾何形状を、副チャネルに従って変更することであって、それによって、該副チャネルによる流体除去を補償する。
【0073】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記主チャネルの幾何形状を、前記副チャネルに従って変更することであって、それによって、該副チャネルの前及び後で、該主チャネル内で一定の又は実質的に一定の流れ速度を維持することを更に含む。
【0074】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記主チャネル幅を変化させることによって、該主チャネルの幾何形状を変更することを更に含み、
なお、j番目の副チャネルに続く該主チャネルの新しい幅wm,jは、式:
【数8】
によって決定され、ここで、xm,j-1は、前記j番目の副チャネルを通した流体除去後に前記主チャネルに残っている流体の割合であり、wm,jは、前記主チャネルの前のセクションの幅である。
【0075】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記主チャネルの幾何形状を、副チャネルに従って変更することであって、それによって、該副チャネルの前及び後で、該主チャネル内で一定の又は実質的に一定のディーン数Dを維持することを更に含み、
なお、該ディーン数Dは、式:
【数9】
によって与えられ、ここで、ρは流体の密度であり、Uは平均流体速度であり、μは流体動粘度であり、Rは前記主チャネルの曲率半径であり、Dは水力直径であり、前記水力直径Dは、
【数10】
から決定され、ここで、wは前記主チャネル幅であり、hは前記主チャネルの高さである。
【0076】
本発明の更なる観点では、指定されたレートで前記主チャネルから流体を引き出すために必要とされる副チャネルの流体抵抗は、関係:
【数11】
を満たし、ここで、Rs,jは前記j番目のノードの前記j番目の副チャネルの流体抵抗であり、該j番目の副チャネルは前記主チャネルに接続され、Rm,jは、前記j番目のノードの前記主チャネルの流体抵抗であり、Rs,j-1は、直前のノードj-1の前記副チャネルの流体抵抗であり、rQ,j-1は、前記主チャネル内の流量(Qm,j)の前記j番目のノードの前記副チャネル内の流量(Qs,j)に対する体積流量比である。
【0077】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記主チャネル幅を変化させることによって前記主チャネルの幾何形状を変更することを更に含む。
【0078】
本発明の更なる観点では、前記方法は、1つ~5つの出口によって各粒子ストリームから粒子を収集することを更に含む。
【0079】
本発明の更なる観点では、前記方法は、1つ~6つの副チャネルによって前記移動する前記流体の前記粒子の無い領域から流体の少なくとも一部を引き出すことを更に含む。
【0080】
本発明の更なる観点では、各副チャネルは、前記主チャネルの前記スパイラル構成の最も外側のリングの外側エッジから延在する。
【0081】
本発明の更なる観点では、前記方法は、前記1つ又は複数の副チャネルのそれぞれによって、前記主チャネル内の前記移動する流体の5%~50%を引き出すことを含む。
【0082】
本発明の更なる観点では、前記方法は、各副チャネル幅を、式:
【数12】
に従って前記主チャネルから前記粒子の無い領域の流体の指定された部分を引き出すように設定することを更に含み、ここで、wは前記副チャネル幅であり、hは前記副チャネルの高さであり、Lは前記副チャネルの長さであり、μは前記流体の動粘度であり、Rは前記副チャネルの流体抵抗である。
【0083】
本発明の更なる観点では、前記主チャネルの前記スパイラル構成は、約0.5cmの内径を有する7ループのスパイラルを備え、前記主チャネルは、約250μmの幅及び約50μmの高さを含む。
【0084】
本発明の更なる観点では、前記スパイラル主チャネルは、連続するループ間に250μmギャップを有する。
【0085】
本発明の更なる観点では、各副チャネル幅は40μm~250μmである。
【0086】
本発明の更なる観点では、各副チャネルの長さは約19mmである。
【0087】
本発明の更なる観点では、各副チャネルは、約35μmの幅、約50μmの高さ、及び約19mmの長さを含む。
【0088】
本発明の更なる観点は、試料流体から1つ又は複数の関心成分を分離する方法であって、
スパイラル経路内で前記試料流体を移動させるステップであって、該移動は、条件であって、前記移動する試料流体内の前記関心成分(複数の場合もある)を、成分サイズに従って1つ又は複数の成分ストリーム内に集束させ、それにより、前記移動する試料流体内で、成分の無い領域を形成する条件下で行う、ステップと、
前記移動する試料流体の前記成分の無い領域から前記試料流体の少なくとも一部を引き出すステップであって、それにより、前記移動する試料流体の残留物内で関心成分(複数の場合もある)の濃度を増加させる、ステップと、
前記成分ストリームのうちの1つ又は複数から前記関心成分(複数の場合もある)を収集するステップと、
を含む、方法において実施される。
【0089】
本発明の上記実施形態及び他の実施形態について、添付図面を参照して以下に説明する。
【0090】
本明細書の一部をなし、本明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の種々の実施形態を示す。図面中、同様の参照符号が同一の要素又は機能が類似する要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1A】慣性スパイラルマイクロフルイディクスの原理を示す、マイクロフルイディックチャネルの断面の概略図である。
図1B】粒子のサイズによる一意の平衡位置への粒子の選別移動、それによる、チャネル内での離散的で集束した粒子ストリーム及び粒子の無い領域の形成を示すスパイラルマイクロフルイディックチャネルの一部の上面図である。
図2A】真っ直ぐなチャネル内での粒子の無い流れ領域の生成を示す概略図である。
図2B】拡張チャネル内での粒子の無い流れ領域の生成を示す概略図である。
図3】曲線チャネル内での粒子の無い流れ領域の生成を示す概略図である。
図4】本発明の態様を具現化するスパイラル慣性濾過(spiral inertial filtration)(SIFT)デバイスの概略図である。
図5A】主チャネル及び主チャネルから延在する複数の廃棄又は副チャネルを含むフルイディックネットワークの概略図である。
図5B】本発明の態様を具現化する装置を設計するために使用される等価回路アナロジー(equivalent circuit analogy)の図である。
図6A】主チャネル及び図4に示すデバイスのW2位置に配置された単一廃棄チャネルを有するデバイスの寸法を示す概略図である。
図6B】5%、10%、20%、及び50%流体除去のために設計された廃棄チャネルについての流体流量に対する、廃棄チャネルから除去される実際の流体の依存性を、入口で導入され主チャネル内で流れる流体のパーセンテージとして示すグラフである。
図7】2つの流量(100μL/分及び1250μL/分)における5%(i及びii)、20%(iii及びiv)、及び50%(v及びvi)流体除去のために設計された単一廃棄チャネルを有するSIFTデバイス内に集束された15μm粒子の画像である。
図8A】廃棄チャネルを介した主チャネルからの流体除去に続いてディーン数Deを維持するように主チャネル幅が補正された状態のSIFTデバイスについての粒子集束結果を示す図である。
図8B】廃棄チャネルを介した主チャネルからの流体除去に続いて平均流体速度Uを維持するように主チャネル幅が補正された状態のSIFTデバイスについての粒子集束結果を示す図である。
図9A】入口流体の93%除去のために設計されたSIFTデバイス内での、2つの粒子サイズ、4.8μm及び8μmの分離を示す蛍光画像である。
図9B】デバイスに入力される数に対する、それぞれの出口O1~出口O5又は廃棄チャネルW1~W6において収集された粒子の数として計算された分離効率のグラフである。
図9C】粒子濃度ファクタ(入口濃度に分離効率をかけた値に対する、100%回収を仮定した、それぞれの出口又は廃棄チャネルにおける濃度)のグラフである。
図10】抵抗Rを有する3つの廃棄チャネル及び抵抗Rの3つのセグメントを有する主チャネルを備えるデバイスについての等価回路の図である。
図11】Rm,2、Rm,1、及びRs,1を置換する等価抵抗REQ,2の図である。
図12】入口流体の93%除去のために設計されたSIFTデバイス内での、2つの粒子サイズ、4.8μm(下部)及び8μm(上部)の粒子ストリームへの分離を示す蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明は、複数の実施形態を有し、また当業者に既知の詳細については特許、特許出願及び他の引用文献に依拠する。したがって、特許、特許出願又は他の引用文献を本明細書中で引用する又は繰り返す場合、あらゆる目的でまた記載される陳述のため、引用することによりその全体が本明細書の一部となることを理解されたい。
【0093】
別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語、記号、及び他の技術的な用語又は用語法は、本開示が属する技術分野の専門家によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本節に記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公告された出願、及び他の出版物に記載される定義に反する、又はそうでなければ、それに矛盾する場合、本節で記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる定義に勝る。
【0094】
本発明を説明する文脈における(中でも、添付の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(”a” and "an")」及び「前記/該("the")」という用語並びに類似の指示語の使用は、本明細書中に他に指定されるか又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈される。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「挙げられる(含む)(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、非限定(open-ended:オープンエンド)用語(すなわち、「挙げられる(含む)が、これらに限定されない」を意味する)として解釈されるものとする。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に他に指定のない限り、この範囲内にある各別個の値について個々に言及する省略方法として機能するよう意図されるものに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。例えば、10~15の範囲を開示する場合には、11、12、13及び14も開示される。本明細書中に記載の方法は全て、本明細書中に他に指定のない限り又は文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書中に提示されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(例えば「等(such as)」)の使用は、他に主張のない限り、単に本発明をより良く明白にする(illuminate)ように意図されるものに過ぎず、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書中の言葉は、特許請求がされていない任意の要素を本発明の実施に不可欠なものとして示すものとは解釈されるべきでない。
【0095】
本説明は、コンポーネント、装置、場所、特徴、又はその一部の位置及び/又は配向を記述するときに相対的な空間用語及び/又は配向用語を使用する場合がある。説明の文脈によって具体的に述べられないか又は別途指示されない限り、限定することなく、上部(top)、下部(bottom)、上(above)、下(below)、真下(under)、の上に、上側、下側、の左、の右、の前、の後、の隣、隣接して、の間に、水平の、垂直の、対角の、縦の、横の、等を含むこうした用語は、図面においてこうしたコンポーネント、装置、場所、特徴、又はその一部を参照するときに便宜上使用され、制限的であることを意図されない。
【0096】
更に、別途述べられない限り、本説明で述べる特定の寸法は、本発明の態様を具現化するデバイスの例示的な実装態様を単に示し、制限的であることを意図されない。
【0097】
本発明は、試料内で混合DNAから標的DNA等の粒子を分離する方法に関する。幾つかの実施形態では、標的DNAは標的生物内に存在する。幾つかの実施形態では、標的生物は、ウィルス、細菌(原核生物)、真菌、又はその組合せであるとすることができる。幾つかの実施形態では、混合DNAは標的DNA及び非標的DNAを含む。幾つかの実施形態では、非標的DNAは、哺乳類DNAである。幾つかの実施形態では、試料は核を有する細胞を含む。幾つかの実施形態では、細胞は哺乳類細胞である。幾つかの実施形態では、分離される標的生物は、回収することができるそのDNAを遊離するように処理される。
【0098】
そのため、本発明は、スパイラル慣性濾過(Spiral Inertial FilTration)(SIFT)として知られる新しいアプローチを通して、分岐出口の数についての要件を緩和しながら、スパイラル慣性マイクロフルイディクスの濃度ファクタを増加させる方法を提供する。本技法は、スパイラル幾何形状を有する主マイクロフルイディックチャネル内での慣性マイクロフルイディクスの集束挙動を利用して粒子の無い大きな流れ領域を生成し、粒子の無い大きな流れ領域から、粒子の無い(又は、実質的に粒子の無い)流体の大きな割合を、主チャネルの1つ又は複数の部分から延在する1つ又は複数の廃棄チャネル又は副チャネルを通して「スキミングする(skimmed)」ことができる。上述したスキミング技法の主要な欠点は、性能が流量の増加で低下することである。SIFTでは、粒子は、代わりに、内壁の近くに集束され、外側壁に粒子の無い大きな領域を生成する(図3に示す)。本発明の態様によれば、主スパイラルチャネルの外側壁から離れて延在する側部廃棄チャネルを利用することによって、流体が、粒子の無いこの領域から除去され、したがって、主マイクロフルイディックチャネル内で粒子の濃度を増加させることができる。更に、スパイラル慣性マイクロフルイディクスの集束の性質により、粒子ストリームは、大量の流体を除去することによって最低限にしか乱されない。
【0099】
この概念を活用すると、SIFTシステムは、スパイラルの最も外側のリングの外側エッジから延在する廃棄チャネルを利用して、大きな濃度ファクタを生成する。図4は、本発明の態様を具現化するスパイラル慣性濾過(SIFT)デバイスの概略図である。デバイスは、1つ又は複数のサイズの粒子を含む流体がそこでデバイスに導入される入口、スパイラル構成で巻回されたマイクロフルイディック主チャネル、及び1つ又は複数の出口を含む。示す実施形態では、デバイスは、5つの出口O1~出口O5を含む。しかし、実際には、デバイスは、5つより少ないか又は多い出口を有することができる。示す実施形態では、入口は、主チャネルのスパイラル構成の内側部に配置され、出口O1~出口O5は、スパイラル構成の外側端部分に配置される。流体が、主チャネルを通して入口から出口に向かって流れるにつれて、流体内の粒子は、先に説明したように、粒子のサイズに従って別個の集束ストリームに分離され、それにより、主チャネルを通して流れる流体内に実質的に粒子の無い領域を生成する。流体(粒子の無い又は実質的に粒子の無い)は、出口(複数の場合もある)の最も近くからW1~W6とラベル付けされた1つ又は複数の廃棄又は副チャネルを通して主スパイラルチャネルから除去される。示す実施形態は、6つの副チャネルW1~W6を含む。実際には、デバイスは、6つより少ないか又は多い副チャネルを有することができる。示す実施形態では、廃棄チャネルは、スパイラル構成の最も外側のループから半径方向に外方に延在する。それぞれが異なるサイズの粒子を含む濃縮された粒子ストリームは、出口O1~出口O5のうちの1つの出口を通して収集される。デバイスは、その例が以下で更に詳細に述べられるポリジメチルシロキサン(PDMS)プレポリマー等の材料から作製することができる。他の適した材料は、熱可塑性樹脂(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))(「PMMA」)又は環状オレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copolymer)(COC)及びガラス/シリコンを含む。
【0100】
他の実装態様では、関心の粒子又は成分は、揚力(F)及び/又はディーン力(F)の影響下で一意の平衡位置に容易に移動せず、したがって、図1Bに示すような離散的な粒子ストリームに集束しない。例えば、ウィルス及び細菌は、幾つかの状況において、本明細書で述べる慣性濾過技法を使用して流れストリームから分離することが難しい可能性がある。こうした非集束成分は、副チャネルを通して収集され、他の手段によって集束され、廃棄流体から除去することができる。
【0101】
図4に提示されるSIFT設計概念が、ほぼ完全な分離効率で標的粒子サイズを回収することが可能であり、また、1mL/分の試料処理レートで動作しながら、標的粒子を2桁以上濃縮することが可能であることが立証された。本発明の態様は、特定の流体除去についてSIFTデバイスを設計するための式の開発を含む。設計式の妥当性確認は、チャネル幾何形状を制御することによって(標的粒子を除去することなく)所望の割合の試料流体を除去することによって立証された。試料から除去される流体の量が、流体が除去されるときの、チャネル内の線速度U及びディーン数Deの減少によって引き起こされる粒子位置及び粒子ストリームの変化によって制限されることを実験結果が立証した。
【0102】
本発明の態様は、廃棄チャネルを通した流体除去に続いてU又はDeを維持するように主チャネル幾何形状を補正することによって、大きな流体除去レートに関する制限を克服することができるという判断を更に含む。最後に、2つの粒子サイズ(4.8μm及び8μm)の分離及び回収は、(図4のデバイスの場合と同様に)6つの廃棄チャネル及び5つの出口を有するSIFTデバイスを使用して立証された。選択される粒子サイズは、立証のためのものであり、他のサイズの粒子を濾過及び/又は濃縮するために本発明を実装することができるため、本発明の範囲に関して制限的でない。この設計を使用して、2つの粒子サイズのほぼ100%の分離効率が、入口流体の93%を除去しながら立証され、それは、回収される粒子サイズのそれぞれの13X濃度増加をもたらす。
【0103】
スパイラル慣性濾過設計原理
SIFTデバイスから特定量の流体を除去するために構成される廃棄チャネルを設計するための式を導出するため、等価回路アナロジー60,71が使用された。体積流量(Q)は、
【数13】
を使用して決定された。
ここで、ΔPは圧力低下であり、Rはフルイディック抵抗(fluidic resistance)である。任意の所与の廃棄チャネルによって除去される流れは、廃棄チャネルのフルイディック抵抗と主チャネルのフルイディック抵抗の比によって指定される。図5Aは、主チャネル及び複数の廃棄又は副チャネルW~Wを含むフルイディックネットワークの概略図である。等価電気回路の概略図は図5Bに示される。下付き文字「m」及び「s」は、それぞれ主チャネル及び副チャネルを示す。デバイスの入口の流量は、電流源に類似し、全ての出口は、同じ圧力を有するため、グラウンドで終端する。j番目のノードにおける主チャネル(Qm,j)と側部廃棄チャネル(Qs,j)の体積流量比rQ,jについて、主チャネルと廃棄チャネルとの間の抵抗関係は、
【数14】
を満たす。
ここで、Rs,j及びRm,jは、それぞれj番目のノードにおける廃棄チャネルの抵抗及び主チャネルの抵抗であり、Rs,j-1は、直前のノードj-1における廃棄チャネルの抵抗であり、rQ,j-1は、直前のノードにおける体積流量比である(式(4)の導出については以下を参照)-これは、j=2、3、4、…、n-1、nについて成立つ。j=1の場合、抵抗は単にRs,1=rQ,1m,1である。全回路が、同時に解かれる必要はない。式(4)は、rQ,jが指定されると、任意のノードにおける廃棄チャネルRs,jの抵抗が、主チャネルの抵抗Rm,j、直前の廃棄チャネルの抵抗Rs,j-1、及び直前の廃棄チャネルの流量rQ,j-1のみによって決定されることを示す。この関係を使用して、指定される流体除去を達成するために必要とされる抵抗が、決定され、その関係から、副廃棄チャネルの幾何形状、例えば幅を決定することができる。
【0104】
主チャネルの抵抗及び廃棄チャネルの抵抗が計算されると、チャネル寸法を計算することができる。w>h又はw≒hの場合、正方形ダクトの流体抵抗(hydraulic resistance)は、
【数15】
によって与えられる72
ここで、μは流体動粘度であり、w、h、及びLは、チャネル幅、高さ、及び長さである。w>hである場合、式(5)は、
【数16】
に簡略化される72
【0105】
定数L及びhを仮定すると、式(6)は、廃棄チャネルのフルイディック抵抗が、その幅を変更することによって制御することができることを示す。そのため、副チャネルを通して引き出される流体の量は、副チャネル幅によって制御されることができ、副チャネル幅は、公式:
【数17】
によって与えられる。
【0106】
スパイラルの曲線チャネルセクションについての長さLarcは、
【数18】
を使用して計算された。
ここで、aは角度であり、Rは曲率半径である。
【0107】
式(7)は、w>hの場合についてのみ有効である。しかし、少ない割合の流体だけを除去しようと試みるとき、薄いチャネルが必要とされ、したがって、幅は、高さ未満であるとすることができる。この場合、式(5)そのものが、幅を決定するために解かれるべきであり、それには数値ソルバを必要とする。
【0108】
標的とする性能のためのシステムを設計するため、廃棄チャネル幅は、標的とする割合の試料流体を除去するように設定される。廃棄チャネルを通して除去される流体の割合xs,jは、
【数19】
を通してrQ,jに関連する。
ここで、主チャネル内に残留する流れの割合xm,jは、
【数20】
によって与えられる。
【0109】
主チャネルと廃棄チャネルとの間の体積流量の比(rQ,j)を単に指定することによって、スパイラル慣性濾過デバイスは、指定された割合の入口流体の除去のために設計することができる。
【0110】
設計式の妥当性確認
副又は廃棄チャネルを介した主チャネルからの流体除去のレートは、主チャネル流量と副チャネル流量の指定された流量比(r=Q/Q)について設計することによって制御される。主チャネル(Q)及び副チャネル(Q)を通る相対的体積流量は、チャネル内のフルイディック抵抗を適切に平衡させることによって達成される。そのため、SIFTデバイスから除去される流体の割合は、それぞれの廃棄チャネルにおいて特定の流量rQ,jについて設計することによって制御されることができ、特定の流量rQ,jはフルイディック抵抗を適切に平衡させることによって達成される。先に導出された式によって規定される設計を検証するため、単一廃棄チャネルを通した入口流体の5、10、20、及び50%除去について設計されたデバイスが作製され試験された。廃棄チャネルはW2位置に配置された(図4参照)。廃棄チャネルの概略図は図6Aに示される。上述したように、廃棄チャネル幅ws,jは、主チャネルから除去される流体の量を制御するように設定された。廃棄チャネルの前の主チャネル幅wm,j及び廃棄チャネルの後の主チャネル幅wm,j-1はともに、250μmであった。
【0111】
図6Bは、入口流体の5%、10%、20%、又は50%除去のために設計されたデバイスについての、入口体積流量の関数としての廃棄チャネルを通って除去される流体のパーセンテージを示す。μm単位の主チャネル幅w及び廃棄又は副チャネル幅wが、デバイスのそれぞれについて挙げられる。廃棄チャネルの前の主チャネル幅wm,jは、図6Bに提示するそれぞれのグラフについて、廃棄チャネルの後の主チャネル幅wm,j-1に等しい。しかし、廃棄チャネル幅ws,jは、主チャネルから除去される流体の量に応答してそれぞれのグラフについて異なるものとして示される。特に、廃棄チャネルの前の主チャネル幅wm,j及び廃棄チャネルの後の主チャネル幅wm,j-1は250μmである。エラーバーは、単一デバイスについての3つの実験にわたる標準偏差を示す。作製による変動を測定するため、2つの条件、すなわち、50μL/分における20%流体除去及び1000μL/分における10%流体除去が、複製デバイスに関して試験された。20%の結果は1.5%以内で一致し、10%の結果は0.5%以内であった。
【0112】
低流量では、除去される流体の割合は設計値の2%以内であった。流量を増加すると、割合は減少し、1000μL/分で平坦化したが、除去レートは、依然として6%以内であった。式(4)によれば、流体除去レートは流量に無関係であるはずである。流量依存性は、PDMSの弾性に起因した。PDMSマイクロチャネルの変形が圧力駆動流の下で起こり、チャネルの高さ及び幅の変化をもたらすことが知られている73,74。設計式は、この挙動を反映しなかった。結果として、動作がそこで所望された流量(>750μL/分)の場合、流体除去レートは、設計された値と異なった。廃棄チャネル幅は、PDMS変形を反映するように調整することができるか、又は、熱可塑性樹脂等の圧力下で膨張しない他の材料を使用することができる。
【0113】
式(7)は、5%除去について、廃棄チャネル幅wが廃棄チャネルの高さh未満であっても、これらのデバイスを設計するために使用されたため、この近似は有効でなかった。その5%デバイスの場合、式(5)及び式(7)を解くことによって計算される幅の差は、5μmである。作製公差を考慮すると(上記参照)、幅の5μmの差は、許容可能であると見なされた。図6Bは、±1.5%以内に入る5%流体除去を示す。
【0114】

例1:デバイス作製
設計方法を評価するため、(図4のW2位置に)単一廃棄チャネルを有する一連のSIFTマイクロフルイディックデバイスが作製された。これらのデバイスは、単一入口、廃棄チャネル、及び分岐出口を有する7ループのアルキメデスのスパイラル(0.5cmの内径)からなった。この非制限的な例では、スパイラルチャネルは、250μm×50μm(w×h)であり、連続するループ間に250μmのギャップを有した。選択された評価設計は制限的であることを意図されない。本発明は、7つより少ないか又は多いループを有する主チャネル構成又は述べた寸法のアルキメデスのスパイラル以外の構成を有するように実装することができる。廃棄チャネル幅は、或る特定の割合、例えば、5、10、20、又は50%の流体を除去するため、40μmと250μmとの間に設定された。以下で論じるように、廃棄チャネルによって除去される流れは、そのフルイディック抵抗に依存し、フルイディック抵抗は、チャネル長さをその幅で割った値に比例する。使用されたソフトリソグラフィ技法は、設計幅の2μm~5μm以内の幅を達成した。したがって、異なる量の流体を除去するために設計されたデバイスを区別するため、廃棄チャネル幅は、5μmより大きい値だけ異なる必要があった。この公差を確保することは、19mmの廃棄チャネル長さを必要とし、その廃棄チャネルは、蛇行経路を使用してスパイラルに接して密に嵌合された(図4参照)。
【0115】
その後、分離され回収された粒子についての2桁以上の濃度増加を立証するため、一連の6廃棄チャネルを有するデバイスが作製された。このデバイスは、6ループのアルキメデスのスパイラル、6つの廃棄チャネル、及び5つの分岐出口からなる(図4)ことを除いて、単一廃棄チャネルデバイスと同様であった。この非制限的な例では、廃棄チャネルのそれぞれは、35μmの幅で、50μmの高さで、19mmの長さであった。
【0116】
6つの廃棄チャネル及び5つの出口を含むSIFTデバイスの目的は、2桁以上大きい流体除去レートrを達成することであった。W3~W6の場合、rは5であり、W1及びW2の場合、rは10であった。それぞれが4のrを有する5つの出口が使用されて、回収された粒子から分離される流体の量を更に増加させた。表1は、r及び廃棄チャネルから除去される流体の計算された割合xs,j,calcを挙げ、下付き文字「s」は、副又は廃棄チャネルを指す。
【0117】
これらのrを達成するために必要とされる廃棄チャネル幅ws,j,calcが計算された。式(7)を使用できるために、ws,j,calcはh(50μm)より大きくなければならない。大きくない場合、近似を使用することによるエラーは>10μmであった。所望の流体除去を達成するため、ws,j,calcは<h(50μm)であることになるため、式(5)そのものが、ws,j,calcを計算するために解かれた(w>h又及びw≒hの場合に式(5)を使用することに関する議論については以下を参照)。ws,j,calcは表1に挙げられる。W2を例外として、それらは、互いの4μm以内にあり、先に述べたように、作製公差は2μm~5μmであった。したがって、廃棄チャネルは、全て(W2を含む)35μm幅(ws,j,rev)に作られ、「rev」は、改訂されたパラメータを示す。この値は、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)マイクロチャネルの作製変動又は拡張(以下で論じる)が、所望の流体除去をもたらすチャネルを依然としてもたらすことになることを保証するのに控えめであった。チャネルW3~W6に続く主チャネル幅wm,j-1,calcは、Uを維持し、廃棄チャネルを通して主チャネルから除去される流体を補償するように調整(又は減少)された(以下でより詳細に述べられる)。廃棄チャネルのそれぞれについて35μm幅及びwm,j-1,calcを使用して、廃棄チャネルから除去される流体の割合xs,j,revが決定された(表1)。
【0118】
表1.図4に示すマルチ廃棄チャネルスパイラル慣性濾過デバイスについてのパラメータ及び寸法のリスト(5回のトライアルの標準偏差が±で示される)
【表1】
【0119】
それぞれの廃棄チャネル及び出口から実験的に収集された流体の割合xs,j,expは表1の第5列に与えられる。実験値xs,j,expは、全ての場合に5%未満だけ異なりながら、xs,j,revに厳密に一致した。単一出口から収集された粒子ストリームの場合、これは、粒子の約93%除去及び13の粒子濃度ファクタをもたらすことになる。
【0120】
デバイスは、標準的なソフトリソグラフィを使用して作製された。ポリジメチルシロキサン(PDMS)プレポリマー及び硬化剤(Sylgard184、Dow Corning)の10:1混合物が、シリコンマスター型で鋳造され、2時間の間、50℃で硬化された。マスター型は、フォトレジスト(Shipley1813)を、シリコンウェハ上に3μmの厚さにスピンコーティングし、95℃で1分間プリベークし、13秒間、365nmUVに暴露することによって形成された。フォトレジストは、Microposit現像機CD-30(Shipley)内で75秒間現像された。その後、ウェハは、マスクとしてフォトレジストを使用する深掘り反応性イオンエッチング(deep reactive ion etching)(DRIE)によって約2μm/分のレートでエッチングされた。レジストは、Remover PG(MicroChem Corp.)を使用して剥離された。硬化したPDMSの離型を補助するため、シリコン型は、気相堆積を使用してトリクロロ(1H、1H、2H、2Hペルフルオロオクチル)シラン(Sigma Aldrich)によってシラン化された。入口及び出口は、PDMS基材内に穿孔され、PDMS基材は、PDMSデブリ及びダストを除去するため90分間イソプロパノール内で超音波処理された。PDMS基材は、イソプロパノールを除去するため、2時間、85℃ホットプレート上に設置され、その後、Oプラズマ(0.75トル及び50mWで13秒)を使用してガラスに非可逆的に結合された。タイゴンチューブ(0.02”I.D.、0.06”O.D.)が、結合されたデバイスの入口及び出口に挿入された。
【0121】
例2:流体除去の定量化
廃棄チャネルによって除去される流体の量を決定するため、脱イオン水が、シリンジポンプ(New Era Pump Systems、 Inc.)を使用して特定の流量でデバイス内に圧送された。流量が安定化していることを確保するため、各レートは、5分間保持された。流体は、その後、5分間、廃棄チャネル及び出口から収集され、流体は、収集された量を決定するため秤にかけられた。これは、単一デバイスについて、各流量について3回繰返された。
【0122】
例3:粒子集束
図7は、2つの流量(100μL/分及び1250μL/分)における5%(i及びii)、20%(iii及びiv)、及び50%(v及びvi)流体除去のために設計された単一廃棄チャネルを含むSIFTデバイス内に集束された15μm粒子の画像を示す。実験及び検証のために選択された流量は、制限的であることを意図されない。100μL/分又は1250μL/分と異なる流量を使用することができ、より高い、例えば、最大3mL/分の流量を使用することができる。特定の流体除去レートについて設計できることを図7が示した。しかし、集束された粒子ストリームの濃度及び位置に対する流体除去の影響を求めることが重要である。0.03重量%の濃度の脱イオン水内に分散された、径が15μmの蛍光粒子(14%変動係数(coefficient of variation)(CV))(ThermoFisher Scientific)が、シリンジポンプを使用して、いろいろな幅の単一廃棄チャネルを含むスパイラル慣性濾過デバイスに、流量を増加して注入された。集束された粒子の画像は、12ビットデジタルCCDカメラ(Hamamatsu Photonics、 model ORCA-03G)を装備する反転蛍光顕微鏡(Olympus Corporation、model IX51)を使用して撮影された。3秒露出が、可視粒子トレースを生成するために使用された。15画像のシーケンスが重ねられて、複合画像を生成した。チャネル壁を可視化するため、明視野画像が撮影され、その画像が、ImageJ(米国国立衛生研究所)を使用して反転され(ネガに変換され)、その画像が、粒子集束複合物上に重ねられて、最終画像を生成した。
【0123】
低い流体除去レート(5%)では、集束された粒子ストリームに対する影響はほとんど存在しなかった(図7i及び図7ii)。流量が増加するにつれて、粒子ストリームは、中心の近くの平衡位置(図7i)から内壁に近い新しい平衡位置(図7ii)に移動した。この挙動は、予想され、Martel及びToner51によって最近示された。
【0124】
20%流体除去レート(図7iii及び図7iv)では、集束された粒子ストリームが廃棄チャネルを通過するときに、集束された粒子ストリームの位置の約17μmの顕著な変化が存在した。流体が除去されるにつれて、チャネル内の平均速度Uが、Deとともに減少する。100μL/分(図7iii)の場合、流体の20%が除去された後、Uは0.13m/sから0.11m/sに減少し、Deは0.79から0.63に減少した。これは、粒子ストリームの幅の増加及び粒子ストリーム位置の偏倚を伴った。スパイラルチャネル内の粒子ストリームの幅がUの減少とともに増加することを、過去の報告が示した51。位置偏倚は、大きな流体除去レートによって引き起こされる流体流線の歪による可能性が高く、粒子ストリームを廃棄チャネルに向かって引寄せる。より高い流量(図7iv)では、粒子ストリームに対する廃棄チャネルの影響が減少した。その理由は、粒子が、廃棄チャネルによって影響を受けにくい内壁の近くで流線を占めたからである(図7iv)。更に、流線が歪むにつれて、流線の幅が増加し、粒子ストリームの幅の更なる増加をもたらす。
【0125】
50%流体除去(図7v及び図7vi)では、粒子位置の偏倚及び粒子ストリーム幅の増加は悪化した。100μL/分の流量(図7v)では、粒子ストリーム(約100μm)の歪が、粒子の一部を廃棄チャネルから引き出させた(わずかな粒子トレースは図では容易に目に見えない)。高い流量(図7vi)でも、粒子ストリームは流体除去によって影響を受けた。廃棄チャネルに続いて、粒子ストリームは、スパイラル幾何形状の集束の性質によって部分的に回収された。しかし、それぞれ0.13m/sから0.07m/sへの、また0.79から0.4へのU及びDeの大きな減少は、完全に集束しない幅広い粒子ストリームをもたらした。実際には、これは、結果に悪い影響を及ぼすことなく1つの廃棄チャネルから除去することができる流体の量を約20%に制限する。高い流体除去レートでは、回収及び分離効率の喪失が起こるであろう。
【0126】
チャネル幅補正
粒子が廃棄チャネルを通過するときに、粒子を分散させることなく高い流体除去レートを達成するため、U及びDeの少なくとも一方が、廃棄チャネルの下流の主チャネルの条件を修正することによって維持されなければならない。これは、廃棄チャネルに続く主チャネル幅を変更することによって最も容易に達成することができる。しかし、U及びDeは、チャネル幅に関して異なる依存性を有し、同時に補正することができない。結果として、それぞれを個々に補正する効果が、どのパラメータが集束に最も大きな影響を及ぼしたかを判定するために調査された。
【0127】
Deを維持するため、j番目の廃棄チャネルに続く主チャネル幅wm,j-1は、式(1)をとり、式(2)に代入することによって取得された
【数21】
及び
【数22】
を使用して計算された。
【0128】
3つの除去レートについて単一廃棄チャネル幅及び補正された主チャネル幅を有するデバイスは、Deを維持することに関する式(10)の予測を実験的に確認するために作製された。廃棄チャネルの下流の角が、フィレット形成されて、主チャネルの補正された幅への段階的な変化を可能にした。0.003%の濃度の15μm径の蛍光粒子が、3つのデバイスに注入された。図8Aは、単一廃棄チャネルからの流体除去に続いてディーン数Deを維持するように主チャネル幅が補正された状態のSIFTデバイスについての粒子集束結果を示す。図8Aは、100μL/分及び1250μL/分において5、20、及び50%の流体除去レートの粒子ストリームを示す。低流体除去レートについて予測されるように、5%では、廃棄チャネルの存在による粒子ストリームの位置又は幅に対する顕著な影響は存在しなかった(図8Ai及び図8Aii参照)。低流体除去レートの場合、粒子集束に影響を及ぼすのに十分に大幅にDeが変化しないため、wm,j-1を補正することは不必要である。
【0129】
20%除去では、廃棄チャネルの影響は、幅補正によって効果的に最小化された(図8Aiii及び図8Aivを図7iii及び図7ivと比較されたい)。1250μL/分の流量の場合、廃棄チャネルは、粒子ストリームに影響を全く及ぼさなかった(図8Aiv参照)。100μL/分では、粒子が廃棄チャネルに向かって偏倚したDe補正が無い場合(図7iii参照)と異なり、粒子は内壁に対してほぼ固定位置を維持した(図8Aiii参照)。実際には、wm,j-1の変化の結果として、内壁に向かう粒子ストリームの微小な偏倚(13μm)が図8Aiiiに存在した。これは、Deについての補正のためにwm,j-1を変更することが、廃棄チャネルに続いて異なるチャネルアスペクト比(w/h)をもたらすために起こる。粒子ストリームの幅及び位置がアスペクト比に依存し、より小さなアスペクト比では、粒子が内壁に近い平衡位置を占めることが示された51
【0130】
50%流体除去の場合、100μL/分で粒子ストリームにかなりの歪が存在した(図8Av参照)。しかし、未補正デバイスの場合と異なり、粒子は、廃棄チャネルを出ず、廃棄チャネルに続いて、粒子ストリームは新しい平衡位置に再集束した。再び、集束されるストリームの位置の変化を、アスペクト比の変化によって説明することができ、50%流体除去を補正するため、wm,j-1は250μmから80μmに減少された(5から1.6へのアスペクト比の変化)。全チャネル幅に対する内壁からの距離として規定される正規化粒子位置は、廃棄チャネルの前で0.42であり、配置チャネルの後で0.7であった。20%流体除去の場合(図8Aiii)と異なり、集束位置における結果として得られる偏倚は、チャネルの外側半分に向かった。この挙動は予想されず、基礎になる物理的現象はまだわかっていないが、チャネル幅の突然の大きな変化の前の初期粒子位置が役割を果たすのではないかと思われた。こうした偏倚は、100μL/分の低流量で本方策を使用して除去される流体の量を制限する可能性がある。かなりの割合の流体を除去する第2の廃棄チャネルが更に下流に配置された場合、粒子ストリームが、第2の廃棄チャネルから引き出される可能性がある。100μL/分の場合、これは、流体除去を約50%に制限し、所望される>90%にはるかに及ばない。しかし、1250μL/分の場合、粒子ストリームは廃棄チャネル後に完全に回収される。再び、アスペクト比の変化は、粒子ストリームに顕著な影響を及ぼし、粒子ストリームは、予想されるように、内壁の近くに移動した。この速度では、下流の廃棄チャネルを通して流体を更に除去することが可能であり、高い流体除去と大きな粒子濃度ファクタがともに同時に達成されること、すなわち、本設計の著しい利益を可能にする。
【0131】
Deを維持するようにチャネル幅を調整することについての主要な制限の1つは、流体が連続した廃棄チャネルから除去され(図4)、wm,j-1が、各廃棄チャネル後に調整されるため、最終的に、チャネルが狭くなり過ぎて、継続しなくなることである。アスペクト比(w/h)が1に近づくにつれて、チャネル幅の粒子ストリーム幅に対する比として規定される粒子閉じ込めが減少することをMartel及びToner51が示した。粒子ストリームがチャネルの大きな割合を占める場合、異なるサイズの粒子は、非常に接近するか又は更にオーバラップし、分離を難しくする。
【0132】
流体速度Uを維持するように幅を補正するアプローチは、Deについての補正と比較してこのアプローチが利点を提供するかどうかを判定するために試験された。この場合、新しい幅は、主チャネル内に残る流体の割合xm,j-1及び主チャネルの直前のセクションの幅wm,jにだけ依存する。
【数23】
【0133】
図8Bは、単一廃棄チャネルからの流体除去に続いて流体速度Uを維持するように設計されたデバイス内に15μm蛍光粒子を集束させた結果を示す。廃棄チャネルは、5%除去(図8Bi及び図8Bii参照)及び20%除去(図8Biii及び図8Biv参照)について粒子ストリームにほとんど又は全く影響を及ぼさなかった。その結果は、Deを維持するために取られた結果と同様であった(図8Ai、8Aii、8Aiii、8Aivと比較されたい)。その理由は、5%除去及び20%除去の場合にDe及びUについて補正されたwm,j-1が、それぞれ、わずかに4%及び7%だけ異なったからである。50%流体除去の場合、wm,j-1は、De補正の場合に比べてU補正の場合に36%大きかった。100μL/分の流量では、粒子ストリームは、両方の場合に回収されたが、異なる平衡位置に対してであり(図8Avと図7Bvを比較されたい)、1250μL/分では、2つの結果は、エラー!参照元が見つかりませんAviにおけるDeが廃棄チャネルに続いて9.87であり、図8Bviでは、それは7.83であるものの、ほぼ識別不能であった。
【0134】
図8は、De又はUのための補正が、廃棄チャネルを通した粒子損失をなくし、廃棄チャネル後の集束を改善したことを示す。しかし、U補正にとっての利点が存在する。低流量(100μL/分)の場合、U補正は、廃棄チャネルにおける粒子ストリーム分散を防止した(図8B)。粒子ストリームは、0.45の正規化粒子位置にその軌跡を維持した。更に、Uの場合の補正幅がDeの場合より広いため、より多くの流体を、粒子集束及び分離に悪い影響を及ぼすことなく、連続した廃棄チャネルから除去することができる。
【0135】
代替の実施形態では、デバイスの主チャネルは、主チャネルの長さに沿って変動する不均一な高さを有することができるため、幅を変動させることの代わりに又はそれに加えて高さを変動させることによって実質的に一定のDe又はUを維持するようチャネル幾何形状が変動され得る。2つ以上の副チャネルを有する1つのこうした代替の実施形態では、主チャネルの高さは、それぞれの2つの隣接する副チャネルの間で実質的に一定である。
【0136】
主チャネル1250の幾何形状(例えば、高さ及び/又は幅)を修正することによる、De及びUf以外の又はそれらに加えての、流体除去後に粒子集束を持続させるために行うことができる他の補正は、レイノズル数及び粒子レイノズル数に関するものである。
【0137】
2つ以上の粒子サイズの粒子を含む流体ストリームからの粒子分離を評価するため、0.001重量%の濃度の脱イオン水内に分散された4.8μm(5%CV)(Duke Scientific Corp.)及び8μm(18%CV)(ThermoFisher Scientific)の蛍光粒子が、950μL/分の流量でマルチ廃棄チャネルSIFTデバイス(図4)に注入された。流れは、5分間、平衡することを許容された。流体は、5分間、廃棄チャネル及び出口からバイアルに入るように収集された。各バイアル内の粒子は、血球計数器(hemocytometer)(INCYTO)を使用して計数された。分離は、2つのデバイスに関して5回(1つのデバイスにおいてn=3、また、第2のデバイスにおいてn=2)繰り返された。
【0138】
これらの結果は図9A図9Cに示される。図9Aは、入口流体の93%除去のために設計されたSIFTデバイス内での2つの粒子サイズ4.8μm及び8μmの分離を示す蛍光画像を示す。2つの粒子サイズは、W6において完全に分離された(図9Ai)。主チャネル幅補正(廃棄チャネル後の主チャネル幅が、廃棄チャネル前より小さい)により、粒子ストリームは、廃棄チャネルによって影響を受けなかった。入口流体の63%が除去されたW1においてさえも、粒子ストリームに対する顕著な影響は存在しなかった(図9Aii)。アスペクト比の変化及び粒子閉じ込めの減少のため、2つの粒子ストリーム間の分離は減少したが、2つのサイズは、依然として明確に分離された。チャネルが拡張して(図9Aiii)、2つの粒子ストリームが異なる出口に分離されることが可能になり、8μm(赤)粒子はO1から流出し、4.8μm粒子はO2から流出した(図9Aiv)。
【0139】
図9Bは、デバイスに入力される数に対する各出口で収集される粒子の数として計算される分離効率のグラフである。エラーバーは、2つのデバイスにおける5回の実験(1つのデバイスにおいてn=3、また、他のデバイスにおいてn=2)からの標準偏差である。100.4±6.2及び95.2±9.9の分離効率が、4.8μm及び8μm粒子についてそれぞれ達成された。(100%より大きい分離効率は、血球計数器を使用する粒子計数に伴うエラーに起因する。)図9Cは、粒子濃度ファクタ(入口濃度に分離効率をかけた値に対する、100%回収を仮定した各出口での濃度)のグラフである。再び、エラーバーは、2つのデバイスにおける5回の実験(1つのデバイスにおいてn=3、また、他のデバイスにおいてn=2)からの標準偏差である。各粒子ストリームが、異なる出口に分離されたため、各粒子サイズについて除去された全流体は約93%であり、それは、4.8μm粒子について13.4±0.82の濃度ファクタ及び8μm粒子について12.7±0.99の濃度ファクタに対応する(図9C)。
【0140】
6つの廃棄チャネル及び5つの出口を含むスパイラル慣性濾過(SIFT)デバイス内の2つの粒子サイズ4.8μm及び8μmのストリームは、各廃棄チャネルW1~W6及び出口1~出口5において図12に示される。粒子ストリームは、全ての場所で明確に分離される。
【0141】
廃棄チャネル抵抗式(4)の導出
導出を簡略化するため、3つの廃棄チャネルを有するデバイスを使用する例証が提供される。等価回路が図10に示される。番号付けが、後から前であるため、「第1(first)」は「最後から1番目(first from the end)」を意味することに留意されたい。シリンジポンプによって生成される一定流量が、電流源としてモデル化される。
【0142】
導出は、主チャネルの第1の(エラー!参照元が見つかりません9における右端)脚の抵抗Rm,1及び第1の側部廃棄チャネルの抵抗Rs,1で始まる。圧力低下ΔPが電圧のようなものであり、流体流量Qが電流のようなものである等価回路アナロジーを使用して、ハーゲン・ポアズイユの法則(Hagen-Poiseuille’s law)(ΔP=QR)として知られる圧力駆動流について、オームの法則(V=IR)と類似の表現を書くことが可能である。
【数24】
【数25】
ここで、ΔPs,1及びΔPm,1は、それぞれ廃棄チャネル及び主チャネルにおける圧力低下であり、Qs,1及びQm,1は、それぞれ対応する体積流量である。(多数の例を持つフルイディック等価回路の優れた検討については、Oh等75参照)廃棄チャネル及び主チャネルが、ともに同じ地点で始まり、したがって、それらの左側で同じ圧力を有し、また、それらの右側で大気圧(すなわちグラウンド)である同じ地点でともに終わるため、ΔPs,1=ΔPm,1である。この主チャネルと副チャネルとの間の体積流量比としてrQ,1を定義する。
【数26】
式(13)、(14)、及び(15)は、組合されて、第1の廃棄チャネルの流体抵抗Rs,lをもたらす。
【数27】
【0143】
同様に、グラウンドにも接続する第2の廃棄チャネルについてのΔPs,2は、
【数28】
である。
【0144】
しかし、第2の主チャネルの抵抗Rm,2を決定するため、異なるアプローチが必要とされる。圧力低下ΔPm,2はわかっていない(第2の主チャネルは大気圧で終端されない)ため、Rm,2を直接得ることができない。これを見出すため、Rm,2、Rm,1、及びRs,1を組込む第2の主チャネルセグメント及び第1の2つのチャネルの組合せの両端の等価抵抗REQ,2が規定される。
【数29】
ここで、Rm,1及びRs,1は並列であり、Rm,2は直列である(図11)。
【0145】
式(16)を式(18)に挿入し、並び替えると、
【数30】
が得られる。
【0146】
EQ,2の前後の圧力低下は、
【数31】
である。
ここで、Qm,2は第2の主チャネルの体積流量である。ΔPEQm,2及びΔPs,2が、同じノードで始まり、ともにグラウンドで終端するため、
【数32】
である。
【0147】
式(17)、(19)、(20)、及び(21)を組合せ、rQ,2=Qm,2/Qs,2として体積流量を定義すると、
【数33】
が得られる。
【0148】
第3の側部廃棄チャネルの抵抗Rs,3は同じ方法で見出される。Rs,3の前後の圧力低下は、
【数34】
である。
【0149】
再び、第3の主チャネルの前後の圧力低下ΔPm,3がわかっていないため、等価圧力ΔPEQm,3は、
【数35】
として定義される。
ここで、REQ,3は、等価抵抗であり、
【数36】
によって与えられる。
【0150】
式(22)から、
【数37】
であることがわかるため、式(24)は、
【数38】
として書き直すことができる。
【0151】
再び、ΔPs,3=ΔPEQm,3である。式(23)、(24)、及び(27)を組合せ、rQ,3=Qm,3/Qs,3と定義すると、
【数39】
が得られる。
【0152】
式(22)及び(28)は、j=2、3、4、…、n-1、nについて式(4)に示す一般形
【数40】
で書くことができる。
【0153】
流体抵抗
式(5)が有効であるために、チャネル幅wは高さhより大きくなければならない。先に論じたように、幾つかの場合、式(5)は式(7)に簡略化され得る。式(7)が有効であるかどうかは、システムの特定のパラメータに依存することになる。
【0154】
w<hの場合、式(5)の変形を使用することができる。長方形チャネルの流体抵抗は、その断面積に依存するため、寸法w×hを有する長方形チャネルの抵抗は、「w」と「h」を反転したチャネルの抵抗と同じである。換言すれば、長方形チャネルを90°だけ回転させることは、その抵抗を変化させない。したがって、w<hのチャネルの流体抵抗を求めるため、式(5)は、
【数41】
として、w及びhを反転して書き直すことができる。
【0155】
h=50μm、L=19mm、n=1、及びμ=10-3Pas-1についての調査が実施されて、式(5)、式(7)、及び式(30)が、10μm~200μmの範囲にある幅w(すなわち、0.2から4の範囲にあるアスペクト比)について使用することができる閾値を求めた。結果は表2に示される。
【0156】
表2.種々のw及びh=50μmについて3つの異なる式を使用して計算された流体抵抗。10%以内の結果は強調される。
【表2】
【0157】
NAは計算された抵抗が否定的なものであったことを示している。
【0158】
ここで使用されるパラメータの場合、式(7)は、全てのアスペクト比w/h>1(w>50μm)について良好な近似であった。すなわち、パーセント差は10%未満であった。w/h=1.6を超えると、パーセント差は1%未満であった。予想されるように、w/h≦1について簡略化された式(7)を使用することは、誤差を導入し、誤差の大きさはw/hが減少するにつれて著しく増加した。
【0159】
興味深いことには、式(29)の代わりに式(5)を使用することに伴う誤差は、w<hについてさえもw/h<0.5になるまでの間は小さかった。w/h=2から0.5の場合、式(5)及び式(29)は、3%未満だけ異なったため、両者は交換可能に使用することができた。換言すれば、w≒hの場合、式(5)及び式(29)がともに有効であった。これらのアスペクト比を超えると、正しい式、すなわち、式(5)又は式(29)が使用されなければならない。
【0160】
効率的な回収及び特殊粒子の富化を達成しながら、大量の試料を迅速に処理することができる技法は、後続のマイクロフルイディック処理ステップを可能にするため大幅な体積低減を必要とするラブオンチップ(lab-on-a-chip)(LOC)アプリケーションについて必要である。この作業では、約1mL/分において13Xの粒子濃度ファクタ(入口流体の93%除去)を達成することが可能なスパイラル慣性濾過(SIFT)デバイスが提示された。除去される流体の量は、主流れチャネルと廃棄チャネルとの間で精密に平衡したフルイディック抵抗を持つようにデバイスを設計することによって正確に制御された。主チャネル内の流体速度が、それぞれの流体除去に続いて維持されることを確保することによって、大きな割合の入口流体の除去が、集束される粒子ストリームを乱すことなく可能であり、ほぼ100%の分離効率をもたらした。
【0161】
当然のことながら、本発明の方法及び組成は、様々な実施形態の形で組み込むことができ、そのほんの一部が本明細書中に開示されているに過ぎない。本発明を実施するための本発明者らが知る最良の形態を含む、本発明の実施形態が、本明細書に記載されている。それらの実施形態の変形形態は、上述の説明を読めば当業者には明らかになり得る。本発明者らは、熟練者がこのような変形形態を必要に応じて採用するものと見込んでおり、また本発明者らは、本明細書中に詳細に記載したものとは別の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法により認められるような、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の変更形態及び均等物を全て含む。その上、本明細書中に他に指定のない限り又は文脈により明らかに否定されない限り、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組合せが本発明に包含される。
【0162】
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図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12