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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】緑化システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20240524BHJP
【FI】
A01G9/02 101N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021047340
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146406
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏美
(72)【発明者】
【氏名】井上 純大
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-215687(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145658(WO,A1)
【文献】特開2009-207494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0066524(US,A1)
【文献】特表2009-513132(JP,A)
【文献】特開2010-193853(JP,A)
【文献】特開2015-130848(JP,A)
【文献】特表2020-528732(JP,A)
【文献】特開2006-307536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A01G 20/00
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の植栽容器を並び設けて構成される植栽領域と、
前記植栽領域において前記植栽容器の下部内を通過して植物育成の用に供された液体を排水側に案内する案内流路構成体と、
前記案内流路構成体の排水側に対し、接続部材を介して、接続される排水流路構成体とを備えてなる、緑化システムであって、
前記接続部材は、前記案内流路構成体に接続される第一管部と、前記排水流路構成体に接続される前記第一管部よりも管径を大きくする第二管部とを、前記第一管部の下端と前記第二管部の下端とが仮想の同一の平面上に位置するように、前記第二管部の側部に前記第一管部の一方の管端を接続させた構成となっていると共に、
前記第二管部の上端側に通気部を形成させてなる、緑化システム。
【請求項2】
前記接続部材の前記第一管部の少なくとも一部が前記植栽容器内に位置するようになっていると共に、前記第一管部の前記植栽容器内に位置される部分の上端側に前記液体の受入部を形成させてなる、請求項1に記載の緑化システム。
【請求項3】
前記通気部を、前記第二管部の管軸方向に長いスロットとしてなる、請求項1又は請求項2に記載の緑化システム。
【請求項4】
前記接続部材は、並列状に配される二つの前記第一管部と、一つの前記第二管部とを、前記第一管部の管軸に対し前記第二管部の管軸が直交するように一体化させてなる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の緑化システム。
【請求項5】
前記排水流路構成体から得られる前記液体を、前記植栽容器に環流させる環流手段を備えてなる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の緑化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緑化システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋上などに、複数の植栽容器を並び設けることで、かかる屋上などの緑化をなす技術として特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この種の技術では、前記植栽容器から生じるいわゆる余剰水、すなわち、植物育成の用に供された液体の余剰分を、植栽領域外の屋上面などに漏らし出させることなく、適切に集め、排水できるようにすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/145658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、複数の植栽容器を含んで構成される緑化システムにおける前記植物育成の用に供された液体の余剰分に関わる課題を適切かつ合理的に解決する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、緑化システムを、複数の植栽容器を並び設けて構成される植栽領域と、
前記植栽領域において前記植栽容器の下部内を通過して植物育成の用に供された液体を排水側に案内する案内流路構成体と、
前記案内流路構成体の排水側に対し、接続部材を介して、接続される排水流路構成体とを備えてなる、緑化システムであって、
前記接続部材は、前記案内流路構成体に接続される第一管部と、前記排水流路構成体に接続される前記第一管部よりも管径を大きくする第二管部とを、前記第一管部の下端と前記第二管部の下端とが仮想の同一の平面上に位置するように、前記第二管部の側部に前記第一管部の一方の管端を接続させた構成となっていると共に、
前記第二管部の上端側に通気部を形成させてなる、ものとした。
【0007】
前記接続部材の前記第一管部の少なくとも一部が前記植栽容器内に位置するようになっていると共に、前記第一管部の前記植栽容器内に位置される部分の上端側に前記液体の受入部を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記通気部を、前記第二管部の管軸方向に長いスロットとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記接続部材を、並列状に配される二つの前記第一管部と、一つの前記第二管部とを、前記第一管部の管軸に対し前記第二管部の管軸が直交するように一体化させたものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記排水流路構成体から得られる前記液体を、前記植栽容器に環流させる環流手段を備えたものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、緑化システムにおいて、植栽容器から生じる植物育成の用に供された液体の余剰分を、植栽領域外の屋上面などに漏らし出させることなく、適切に集め、排水することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる緑化システム(第一例)の平面構成図である。
図2図2は、前記第一例の要部縦断面構成図である。
図3図3は、図2において一点鎖線で囲われた箇所の拡大構成図である。
図4図4は、前記第一例を構成する接続部材の斜視構成図である。
図5図5は、前記接続部材の平面構成図である。
図6図6は、前記接続部材の側面構成図である。
図7図7は、図6におけるA-A線位置での断面図である。
図8図8は、前記接続部材の側面構成図である。
図9図9は、図8におけるB-B線位置での断面図である。
図10図10は、この発明の一実施の形態にかかる緑化システム(第二例)の平面構成図である。
図11図11は、検討例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図10に基づいて、この発明の一実施の形態にかかる緑化システム1について、説明する。この実施の形態にかかる緑化システム1は、屋上緑化などの建物緑化、建物外の広場や公園などの緑化に利用可能なものである。
【0014】
かかる緑化システム1は、植栽領域2と、案内流路構成体3と、排水流路構成体4と、接続部材5とを、最小限の構成要素とする。
【0015】
植栽領域2は、複数の植栽容器2aを並び設けて構成される。これが植栽領域2の最小限の条件である。
図示の例では、各植栽容器2aは、底面部2bと、この底面部2bを囲繞する側面部2cとを有し、上部2dを開放させている。植栽容器2aの開放された上部2dと底面部2bとの間には、植栽容器2a内を上下に二分する隔壁2eが形成されている。この隔壁2eの上側に培地Mが保持される。隔壁2eは、植物育成の用に供された液体(水、あるいは、肥料を含んだ水、植栽領域2が屋外に備えられるときは天水も含む。)は通過させる構成になっている。培地Mに供給された植物育成の用に供された液体の余剰分は、隔壁2eを通過して、隔壁2eの下側に貯留されるようになっている。
図示の例では、植栽容器2aは、平面視四角形状を呈している。図示の例では、緑化対象面の水上WUから水下WDに向かう水の流れ方向xにおいて、水上WU側に位置される植栽容器2aの下側の側面部2cが水下WD側に位置される植栽容器2aの上側の側面部2cに向き合うようにして、複数の植栽容器2aからなる一つの容器列2fを構成させると共に、前記水の流れ方向xに直交する方向において、隣り合う前記容器列2fの水の流れ方向xに沿った側部同士が向き合うようにして、複数の容器列2fを並び設けることにより、複数の植栽容器2aによって植栽領域2を形成させている。
なお、図1及び図2中、符号2gで示すのは、植栽領域2の外周に備えられた見切り材である。また、図1中、符号8は弁手段の開弁によって植栽領域2を構成する各植栽容器2aの培地Mに前記液体を滴下などして供給する供給管である。
【0016】
案内流路構成体3は、前記植栽領域2において前記植栽容器2aの下部2h内を通過して植物育成の用に供された液体を排水側に案内する構成となっている。これが案内流路構成体3の最小限の条件である。
図示の例では、一つの前記容器列2fに、前記水の流れ方向xに管軸を沿わせた管状をなす案内流路構成体3が、二つづつ、備えられている。各案内流路構成体3は、植栽容器2aの隔壁2e下にあって、その上端3aと前記隔壁2eとの間に間隔を開けると共に、その下端3bを植栽容器2aの底面部2bに近接させるようにして、配されている。
また、各案内流路構成体3は、一つの容器列2fを構成する各植栽容器2a内に位置される案内管エレメント3c同士を、継ぎ手体3dを介して接続することで、構成されている。図示の例では、一つの容器列2fは三つの植栽容器2aからなり、したがって、一つの案内流路構成体3は三つの案内管エレメント3cと、二つの継ぎ手体3dとを備えている。水上WU側に位置する案内管エレメント3cの水下WD側の管端に水下WD側に位置される案内管エレメント3cの水上WU側の管端が継ぎ手体3dを介して接続される。継ぎ手体3dは、水上WU側の管端3eと、水下WD側の管端3fと、両者間において管上端から上方に突き出す分岐管3gとを持った構成となっている。継ぎ手体3dの水上WU側の管端3eに水上WU側に位置される案内管エレメント3cが接続され、継ぎ手体3dの水下WD側の管端3fに水下WD側に位置される案内管エレメント3cが接続される(図2参照)。
植栽容器2aの隔壁2e下の液位が継ぎ手体3dの分岐管3gの上端に至ると、継ぎ手体3d内を経由して案内流路構成体3内に前記液体の余剰分が流入するようになっている。
なお、図示の例では、一つの容器列2fのうち、最も水下WDに位置される植栽容器2a内の案内管エレメント3cの水下WD側の管端は後述の接続部材5の第一管部5aに接続されると共に、最下方に位置される植栽容器2aのこの第一管部5aに形成された受入部5hからこの第一管部5a内に前記液体の余剰分が流入するようになっている。
これにより、図示の例では、一つの案内流路構成体3を構成する最も水下WDに位置される案内管エレメント3cには前記のような継ぎ手体3dは備えられていない。
【0017】
排水流路構成体4は、前記案内流路構成体3の排水側(水下WD側の端末)に対し、接続部材5を介して、接続される構成となっている。これが、排水流路構成体4の最小限の条件である。
図示の例では、排水流路構成体4は、隣り合う容器列2fの後述の接続部材5同士を接続する排水管エレメント4aと、この排水管エレメント4aに流入した前記液体の余剰分を排水ドレン6に案内する延長管エレメント4b(図1)とから、あるいはまた、環流手段9に案内する延長管エレメント4b(図10)とから、構成される。
【0018】
前記接続部材5は、前記案内流路構成体3に接続される第一管部5aと、前記排水流路構成体4に接続される前記第一管部5aよりも管径を大きくする第二管部5cとを、前記第一管部5aの下端5bと前記第二管部5cの下端5dとが仮想の同一の平面上に位置するように、前記第二管部5cの側部5eに前記第一管部5aの一方の管端を接続させた構成となっている。それと共に、前記第二管部5cの上端5f側に通気部5gを形成させている。これが、接続部材5の最小限の条件である。
【0019】
この実施の形態にあっては、前記接続部材5の前記第一管部5aの少なくとも一部が前記植栽容器2a内に位置するようになっていると共に、前記第一管部5aの前記植栽容器2a内に位置される部分の上端側に前記液体の受入部5hを形成させている。
より詳細には、前記通気部5gは、前記第二管部5cの管軸方向に長いスロットとなっている。
また、前記接続部材5は、並列状に配される二つの前記第一管部5aと、一つの前記第二管部5cとを、前記第一管部5aの管軸に対し前記第二管部5cの管軸5i(図3参照)が直交するように一体化させた構成となっている。
【0020】
図示の例では、第一管部5aおよび第二管部5cはいずれも、管軸に直交する向きの断面を円形としている。また、第二管部5cは第一管部5aよりも内外径を共に大きくしている。
【0021】
第一管部5aは、その上端を、第二管部5cの管軸5iと実質的に同じレベルか、それよりやや上方または下方に位置させるようにして、その水下WD側の管端を第二管部5cの側部5eに連通・一体化させている。
また、第一管部5aは、その水上WU側の管端をもって、最も水下WD側に位置される案内管エレメント3cに接続されるようになっている。
また、第一管部5aの水上WU側の管端と水下WD側の管端との間に、第一管部5aの上端から上方に突き出す分岐管5jが設けられている。この分岐管5jが前記受入部5hとして機能するようになっている。
【0022】
また、接続部材5は二つの第一管部5aを有しており、一つの容器列2fに備えられる二つの案内流路構成体3のそれぞれが、対応する第一管部5aに接続されるようになっている。
【0023】
また、接続部材5は、第二管部5cを、一つの容器列2fを構成する最も水下WDに位置される植栽容器2aの外側に位置させるように配される。隣り合う容器列2fの一方の接続部材5の第二管部5cの一端と他方の接続部材5の第二管部5cの一端とが前記排水管エレメント4aにより接続される。図1に示される例では、最も右側に位置される容器列2fに接続された接続部材5の第二管部5cの他端と、最も左側に位置される容器列2fに接続された接続部材5の第二管部5cの他端とがそれぞれ、前記延長管エレメント4bに接続されている。このように接続された排水管エレメント4aと延長管エレメント4bの下端は、第二管部5cの下端5dと実質的に同じレベルに位置される。
【0024】
第二管部5cは第一管部5aより管径を大きくすることから、図11に示されるように、第二管部5cの下端5dより第一管部5aの下端5bが上方に位置されるようにすれば、第二管部5cにおける第一管部5aの下端5b下に位置される箇所100を前記液体の余剰分の受容に利用可能となる。しかし、このようにした場合、第一管部5aの下端5b下に図11に符号101で示される台座部などを形成せざるを得なくなる。
【0025】
この実施の形態にあっては、第一管部5aよりも管径を大きくする第二管部5cに対して第一管部5aを、第一管部5aの下端5bと第二管部5cの下端5dとを仮想の同一の平面上に位置させるように接続させていることから、前記のような台座部を要しない。
一方、このようにすると、第二管部5c内に第一管部5aの下端5b下に位置される箇所100(図11参照)がなくなることから、第二管部5c内の液位が第一管部5aの上端に達し易くなり、第二管部5cの気相部と第一管部5aの気相部とが分断される事態が生じやすくなることから、第二管部5c内の内圧が上昇しやすくなる。第二管部5cの内圧の上昇は、円滑な排水を阻害すると共に、第一管部5a側への逆流を生じさせ得るものであり、逆流が生じた場合、植栽容器2aにおける植物Pの植え込み状態を乱したり、その培地Mを容器外に流出させるなどの不具合を生じさせる。しかるに、この実施の形態にあっては、前記通気部5gによって第二管部5cの気相を常時大気圧に一致させるようにすることができるので、このような不具合を可及的に防止することができる。また、植栽領域2が屋上などに設けられる場合において、想定を超える降雨があったようなときは、通気部5gからのオーバーフローを生じさせて、植栽領域2側にオーバーフローが生じないようにすることができる。
【0026】
図10は、前記排水流路構成体4から得られる前記液体を、前記植栽容器2aに環流させる環流手段9を備えさせてなる緑化システム1を示している。図10中、符号9aは図示しない制御手段により制御される公知のポンプ手段、符号9bは図示しない制御手段により制御される公知の弁手段、符号9cは前記ポンプ手段9aと弁手段9bとを連絡する環流管、符号9dは弁手段9bの開弁によって植栽領域2を構成する各植栽容器2aの培地Mに前記液体を滴下などして供給する供給管である。前記ポンプ手段9aと弁手段9bを所定の時間毎に排水流路構成体4内の前記液体を前記供給管9dから培地Mに供給されるように動作させることで、前記液体を環流させての植物の育成が可能となる。
【0027】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0028】
1 緑化システム
2 植栽領域
2a 植栽容器
2b 底面部
2c 側面部
2d 上部
2e 隔壁
2f 容器列
2g 見切り材
2h 下部
3 案内流路構成体
3a 上端
3b 下端
3c 案内管エレメント
3d 継ぎ手体
3e 管端(水上WU側)
3f 管端(水下WD側)
3g 分岐管
4 排水流路構成体
4a 排水管エレメント
4b 延長管エレメント
5 接続部材
5a 第一管部
5b 下端
5c 第二管部
5d 下端
5e 側部
5f 上端
5g 通気部
5h 受入部
5i 管軸
5j 分岐管
6 排水ドレン
7 弁手段
8 供給管
9 環流手段
9a ポンプ手段
9b 弁手段
9c 環流管
9d 供給管
M 培地
P 植物
WU 水上
WD 水下
x 水の流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11