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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】バックル装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/26 20060101AFI20240524BHJP
   B60R 22/28 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B60R22/26
B60R22/28 107
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021097603
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022189177
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆二
(72)【発明者】
【氏名】水野 義雄
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125010(JP,A)
【文献】実開昭57-120044(JP,U)
【文献】米国特許第06336606(US,B1)
【文献】米国特許第06302346(US,B1)
【文献】実開昭61-158550(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/26
B60R 22/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、
前記バックル本体に先端側が連結されると共に、基端部が折返されて環状部分が設けられる連結部材と、
内部が挿通孔を介して開放されると共に、前記連結部材の環状部分が前記挿通孔に挿通されて内部に係止される状態で前記連結部材が巻取られて前記バックル本体と前記連結部材を介して連結され、前記連結部材の引出しが制限されると共に、前記連結部材の引出許容荷重以上での引出しが許容されて前記バックル本体の延出が許容される巻取軸と、
を備えるバックル装置。
【請求項2】
前記連結部材の基端部が前記巻取軸の径方向内側に折返される請求項1記載のバックル装置。
【請求項3】
前記連結部材の基端が前記連結部材と前記挿通孔の周面との隙間における前記巻取軸の周方向位置に配置される請求項1又は請求項2記載のバックル装置。
【請求項4】
前記連結部材の環状部分と前記挿通孔の周面との間に介在される介在部材を備える請求項1~請求項3の何れか1項記載のバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル本体と巻取軸とが連結部材を介して連結されるバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のバックル装置では、ウェビングがスプールに巻取られる状態で、バックル本体とスプールとがウェビングを介して連結されており、ウェビングのスプールからの引出しが制限されると共に、ウェビングのスプールからの引出許容荷重以上での引出しが許容されてバックル本体の延出が許容される。
【0003】
ここで、このバックル装置では、ウェビングの基端部が折返されて環状部分が設けられており、ウェビングの環状部分にスプールが挿入される状態でウェビングがスプールに巻取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-125010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、連結部材の引出許容荷重を小さくできるバックル装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、前記バックル本体に先端側が連結されると共に、基端部が折返されて環状部分が設けられる連結部材と、内部が挿通孔を介して開放されると共に、前記連結部材の環状部分が前記挿通孔に挿通されて内部に係止される状態で前記連結部材が巻取られて前記バックル本体と前記連結部材を介して連結され、前記連結部材の引出しが制限されると共に、前記連結部材の引出許容荷重以上での引出しが許容されて前記バックル本体の延出が許容される巻取軸と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のバックル装置は、本発明の第1態様のバックル装置において、前記連結部材の基端部が前記巻取軸の径方向内側に折返される。
【0008】
本発明の第3態様のバックル装置は、本発明の第1態様又は第2態様のバックル装置において、前記連結部材の基端が前記連結部材と前記挿通孔の周面との隙間における前記巻取軸の周方向位置に配置される。
【0009】
本発明の第4態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのバックル装置において、前記連結部材の環状部分と前記挿通孔の周面との間に介在される介在部材を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様のバックル装置では、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングがバックル本体に係合される。さらに、バックル本体に連結部材の先端側が連結されると共に、連結部材の基端側が巻取軸に巻取られて、バックル本体と巻取軸とが連結部材を介して連結されており、連結部材の巻取軸からの引出しが制限される。
【0011】
また、連結部材の巻取軸からの引出許容荷重以上での引出しが許容されて、バックル本体の延出が許容される。
【0012】
ところで、連結部材は巻取軸にトルクを作用させて巻取軸からの引出しが許容されるため、連結部材の巻取軸からの引出位置における連結部材と巻取軸との合計半径(以下「連結部材の巻半径」という)が小さいと、連結部材の引出許容荷重が大きい。
【0013】
ここで、連結部材の基端部が折返されて環状部分が設けられると共に、巻取軸内が挿通孔を介して開放されており、連結部材の環状部分が挿通孔に挿通されて巻取軸内に係止される状態で連結部材が巻取軸に巻取られる。このため、連結部材の基端部によって連結部材の巻半径を大きくでき、連結部材の引出許容荷重を小さくできる。
【0014】
本発明の第2態様のバックル装置では、連結部材の基端部が巻取軸の径方向内側に折返される。このため、連結部材の環状部分が巻取軸から引出される際に、連結部材の基端部によって連結部材の巻半径を大きくでき、連結部材の引出許容荷重を小さくできる。
【0015】
本発明の第3態様のバックル装置では、連結部材の基端が連結部材と挿通孔の周面との隙間における巻取軸の周方向位置に配置される。このため、連結部材の環状部分近傍における巻取軸の周方向位置に配置される連結部材が巻取軸から引出される際に、連結部材の巻半径が小さくなることを抑制でき、連結部材の引出許容荷重が大きくなることを抑制できる。
【0016】
本発明の第4態様のバックル装置では、連結部材の環状部分と挿通孔の周面との間に介在部材が介在される。このため、連結部材の環状部分が挿通孔の周面によって損傷することを介在部材によって抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るバックル装置を示す右斜め前方から見た分解斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るバックル装置を示す前方から見た側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るバックル装置を示す後方から見た断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るバックル装置の内部を示す右斜め前方から見た分解斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るバックル装置の内部を示す右方から見た正面図である。
図6】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るバックル装置の内部を示す断面図であり、(A)は、後方から見た図(図5のA-A線断面図)であり、(B)は、下方から見た図(図5のB-B線断面図)である。
図7】(A)~(C)は、本発明の第1実施形態に係るバックル装置におけるベルトのスプールからの引出状況を示す後方から見た断面図であり、(A)は、ベルトのスプールからの引出前を示し、(B)は、ベルトのスプールからの引出途中を示し、(C)は、ベルトのスプールからの引出終了時を示している。
図8】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係るバックル装置の主要部を示す図であり、(A)は、ベルトを示す前斜め右方から見た斜視図であり、(B)は、ベルトのスプールからの引出終了時を示す後方から見た断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るバックル装置におけるベルトの引出許容ストローク(横軸)とベルトの引出許容荷重(縦軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るバックル装置10が右斜め前方から見た分解斜視図にて示されており、図2には、バックル装置10が前方から見た側面図にて示されている。さらに、図3には、バックル装置10が後方から見た断面図にて示されている。なお、図面では、バックル装置10の前方を矢印FRで示し、バックル装置10の右方(表側)を矢印RHで示し、バックル装置10の上方を矢印UPで示している。
【0019】
本実施形態に係るバックル装置10は、車両(自動車)のシートベルト装置12を構成しており、シートベルト装置12は、車室内のシート(図示省略)に適用されている。シートベルト装置12には、巻取装置(図示省略)が設けられており、巻取装置は、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。巻取装置には、長尺帯状のウェビング14(図2参照)が基端側から巻取られており、ウェビング14は、巻取装置への巻取側に付勢されると共に、巻取装置から上側に引出されている。巻取装置には、ロック機構が設けられており、車両の緊急時(衝突時等)には、ロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックする。
【0020】
ウェビング14は、巻取装置よりも先端側において、スルーアンカ(図示省略)に移動可能に貫通されており、スルーアンカは、シート後部の車幅方向外側かつ上側に設置されている。ウェビング14の先端部には、アンカ(図示省略)が固定されており、アンカは、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。ウェビング14は、スルーアンカとアンカとの間において、タング16(図2参照)に移動可能に貫通されている。
【0021】
バックル装置10は、シート後部の車幅方向内側かつ下側に設置されており、バックル装置10の前方、右方及び上方は、それぞれ車両の前方又は後方、車幅方向内方及び上方に向けられている。
【0022】
図1図3に示す如く、バックル装置10の上部には、略直方体状のバックル本体18が設けられている。バックル本体18には、上側からタング16が係合可能にされており、バックル本体18にタング16が係合されて、シートに着座した乗員にウェビング14が装着される。これにより、ウェビング14のスルーアンカとタング16との間の部分(ショルダウェビング)が乗員の肩部から腰部(胸部を含む)に斜め方向に掛渡されると共に、ウェビング14のタング16とアンカとの間の部分(ラップウェビング)が乗員の腰部に横方向に掛渡される。バックル本体18へのタング16の係合は、解除可能にされており、バックル本体18へのタング16の係合が解除されて、乗員へのウェビング14の装着が解除される。
【0023】
バックル本体18の下側部分は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされている。バックル本体18内には、金属製の連結板18Aが設けられており、連結板18Aは、バックル本体18の下側に露出されている。
【0024】
バックル本体18の下側には、連結部材としての帯状のベルト20(ウェビング)が設けられており、ベルト20は、例えばウェビング14と同一の材質にされている。ベルト20の先端側部分(上側部)は、バックル本体18の連結板18Aに貫通されると共に、ベルト20の先端部(上側端部)は、折返されて、ベルト20の先端部近傍と縫合されており、これにより、ベルト20の先端側部分が環状にされてバックル本体18(連結板18A)に連結されている。ベルト20の基端部20A(下側端部)は、右側に折返されて、ベルト20の基端部20A近傍に縫合されており、これにより、ベルト20の基端側部分(下側部)が環状にされている(図4参照)。以下、ベルト20の基端側部分におけるベルト20の基端20B(折返部の先端)までを含む範囲をベルト20の環状部分20Cという。
【0025】
バックル装置10の下部には、支持体としての金属製のフレーム22(図4図5図6の(A)及び(B)参照)が設けられており、フレーム22は、断面U字形板状にされている。フレーム22の左部には、背板22Aが設けられており、フレーム22は、背板22Aの下端部において、車体側(例えばシート下部の後部)に固定されている。フレーム22の前部及び後部には、それぞれ脚板22B及び脚板22Cが設けられており、脚板22B及び脚板22Cは、背板22Aから右方に突出されている。背板22Aの上部には、矩形状の配置孔22Dが貫通形成されており、配置孔22Dは、背板22Aの左右方向略全体に配置されると共に、前側及び後側にそれぞれ脚板22B及び脚板22Cが配置されている。また、背板22Aの配置孔22Dより上側部分は、配置片22Eにされている。
【0026】
フレーム22には、巻取軸としての略円筒状のスプール24が支持されており、スプール24は、金属制にされて、強度が高くされている。スプール24は、フレーム22の脚板22B及び脚板22Cに貫通されており、スプール24は、中心軸線周りに回転可能にされている。スプール24の軸方向は、前後方向に平行にされており、スプール24は、フレーム22(背板22A)の配置孔22Dの右側に配置されている。スプール24の前部を除く部分には、長尺矩形状の挿通孔24Aが貫通形成されており、挿通孔24Aは、スプール24の軸方向に延伸されている。挿通孔24Aは、後側に開放されており、挿通孔24Aの幅方向両端面は、断面半円状に湾曲されて、挿通孔24A側に突出されている。また、スプール24外周の半径は、挿通孔24Aの部分を除き、スプール24の周方向において一定にされている。
【0027】
スプール24内には、係止部材としての金属製で略円柱状のバー26が同軸上に挿入されており、バー26の軸方向両端部は、同軸上に拡径されて、スプール24内に嵌合されている。ベルト20の環状部分20C(基端側部分)は、スプール24の挿通孔24Aに挿通されると共に、内部にバー26の軸方向中間部が挿通されており、これにより、ベルト20の環状部分20Cが、スプール24内にバー26によって係止されて、スプール24に連結されている。ベルト20は、スプール24に略1.5周巻取られており、ベルト20は、基端部20A(折返部)が基端部20A近傍に対しスプール24の径方向内側に配置されている。ベルト20の基端20B(折返部の先端)は、ベルト20の挿通孔24Aからの延出部分と挿通孔24Aの周面との隙間に配置されており、ベルト20の基端20Bは、ベルト20の挿通孔24Aからの延出部分に対し、スプール24の周方向において接近された状態で対向されている。ベルト20のスプール24への巻取部分は、フレーム22(背板22A)の配置孔22Dに挿入されており、ベルト20は、スプール24の左側から上側に引出されている。
【0028】
フレーム22の上部内には、摺動部としての樹脂製で略矩形筒状のプロテクタ28が嵌合されており、プロテクタ28内には、ベルト20が挿通されている。プロテクタ28の前部及び後部は、断面逆L字状にされており、プロテクタ28の前部及び後部における上部は、それぞれフレーム22の脚板22B及び脚板22Cの上側に載置されている。プロテクタ28の左部は、断面U字状にされており、プロテクタ28の左部内は、左側に開放されて、フレーム22の背板22Aの配置片22Eが嵌合されている。プロテクタ28の前部及び後部には、円環板状のリング28Bが一体形成されており、リング28Bは、下側に突出されて、内部にスプール24が嵌合されている。
【0029】
フレーム22(脚板22B)の前側には、金属製で略有底円筒状のケース30が固定されており、ケース30内には、スプール24の前部が挿入されている。ケース30内には、エネルギー吸収部材としての金属製で略円柱状のトーションシャフト32が配置されており、トーションシャフト32の前端部は、ケース30内に相対回転不能に嵌合されている。スプール24前部の内周面は、トーションシャフト32の後端部が嵌合される形状にされており、トーションシャフト32は、後端部がスプール24の前部に相対回転不能に連結されて、スプール24の回転を制限している。
【0030】
バックル本体18からフレーム22までの範囲には、被覆部材としての略矩形筒状のブーツ34(カバー)が設けられており、ブーツ34は、軟質樹脂製にされて、可撓性を有している。ブーツ34の上部は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされており、ブーツ34は、上部内にバックル本体18の下側部分が嵌入されて、バックル本体18の下側へ移動を制限している。ブーツ34の上下方向中間部内には、ベルト20が挿通されており、ブーツ34の下部内は、前側に開放されて、フレーム22(プロテクタ28、スプール24及びバー26を含む)が嵌入されている。ブーツ34には、下部の直上において、矩形枠板状の当接枠34Aが一体形成されており、当接枠34A内には、ベルト20が挿通されている。当接枠34Aの下側には、プロテクタ28の上部が当接されており、これにより、ブーツ34の下側への移動が制限されている。当接枠34Aの右部の下側には、矩形板状の挿入部34Bが一体形成されており、挿入部34Bの左面は、当接枠34A内の右面と面一にされている。挿入部34Bは、プロテクタ28内に挿入されており、挿入部34Bは、プロテクタ28内の右面に当接されると共に、前後方向においてプロテクタ28内に嵌合されている。上述の如く、ベルト20がスプール24に巻取られることで、ベルト20に張力が作用された状態で、ブーツ34がバックル本体18とフレーム22との間で弾性収縮力を作用されており、ブーツ34は、フレーム22を下側に付勢してフレーム22に対し自立されると共に、バックル本体18を上側に付勢して自立させている。
【0031】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0032】
以上の構成のシートベルト装置12では、バックル装置10において、スプール24の回転をトーションシャフト32が制限して、ベルト20のスプール24からの引出し及びバックル本体18の上側への延出が制限されており、バックル本体18にウェビング14のタング16が係合されることで、乗員にウェビング14が装着される。
【0033】
車両の緊急時(衝突時等)には、巻取装置のロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックすることで、ウェビング14によって乗員が拘束される。そして、例えば乗員に慣性力が作用されて、乗員によってウェビング14が引張られた際には、ウェビング14からタング16及びバックル本体18を介してベルト20にスプール24からの引出力が作用されることで、スプール24に回転力が作用される。さらに、スプール24に作用される回転力によって、トーションシャフト32が捩れ変形された際には、スプール24の回転が許容されて、ベルト20のスプール24からの引出しが許容されることで、バックル本体18(タング16を含む)の上側への延出が許容される。このため、ウェビング14から乗員(特に胸部)に作用される荷重が低減される(バックル本体18の延出許容荷重(フォースリミッタ荷重)に制限される)と共に、乗員の運動エネルギーがトーションシャフト32の捩れ変形によって吸収される。
【0034】
ところで、ベルト20はスプール24にトルクを作用させてスプール24からの引出しが許容されるため、ベルト20のスプール24からの引出位置におけるベルト20とスプール24との合計半径(以下「ベルト20の巻半径R」という、図6(A)参照)が小さいと、ベルト20のスプール24からの引出しが許容される荷重(以下「ベルト20の引出許容荷重」という)が大きい。特に、スプール24の半径が小さくされてスプール24の半径に対するベルト20の肉厚の比率が大きいと共に、ベルト20がスプール24に略1.5周巻取られてベルト20の巻半径Rが小さいため、ベルト20の巻半径Rの減少によるベルト20の引出許容荷重の増加比率は大きい。
【0035】
ここで、ベルト20の基端部20Aが折返されて環状部分20Cが形成されており、ベルト20の環状部分20Cがスプール24の挿通孔24Aに挿通された状態で、ベルト20がスプール24に巻取られている。このため、ベルト20のスプール24への2巻目(2周目)が引出される際(図7(A)参照)には、ベルト20の巻半径Rが2枚のベルト20の肉厚とスプール24の半径との合計にされる。さらに、ベルト20のスプール24への1巻目(1周目)が引出される際(図7の(B)及び(C)参照)には、ベルト20の巻半径Rが1枚のベルト20の肉厚とスプール24の半径との合計にされる。これにより、ベルト20の基端部20Aによってベルト20の巻半径Rを大きくできて、ベルト20の引出許容荷重を小さくでき、バックル本体18の延出が許容される荷重(フォースリミッタ荷重)ひいてはウェビング14から乗員に作用される荷重を小さくできて、乗員を良好に保護できる。
【0036】
さらに、ベルト20の基端部20Aがスプール24の径方向内側に折返されている。このため、上述の如く、ベルト20のスプール24への1巻目が引出される際(ベルト20の環状部分20Cがスプール24から引出される際)にも、ベルト20の基端部20Aによってベルト20の巻半径Rを大きくでき、ベルト20の引出許容荷重を小さくできる。
【0037】
また、ベルト20の基端20Bがベルト20の挿通孔24Aからの延出部分と挿通孔24Aの周面との隙間に配置されている。このため、ベルト20の環状部分20C近傍が引出される際に、ベルト20の巻半径Rが小さくなることをベルト20のスプール24への1巻目によって抑制でき、ベルト20の引出許容荷重が大きくなることを抑制できる。
【0038】
さらに、ベルト20の基端20Bが、ベルト20の挿通孔24Aからの延出部分に対し、スプール24の周方向において接近された状態で対向されている。このため、ベルト20の基端20B位置が引出される際に、ベルト20の巻半径Rが小さくなることをベルト20の基端20Bによって抑制でき、ベルト20の引出許容荷重が大きくなることを抑制できる。
【0039】
[第2実施形態]
図8(A)には、本発明の第2実施形態に係るバックル装置50のベルト20が前斜め右方から見た斜視図にて示されており、図8(B)には、バックル装置50におけるベルト20のスプール24からの引出終了時が後方から見た断面図にて示されている。
【0040】
本実施形態に係るバックル装置50は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0041】
図8の(A)及び(B)に示す如く、本実施形態に係るバックル装置50では、ベルト20の基端部20Aに、折返位置(折返部の基端)近傍において、介在部材としての矩形状の保護布52が設けられており、保護布52は、例えばベルト20と同一の材質、布製又は樹脂製にされている。保護布52は、ベルト20の基端部20Aの幅方向全体に配置されており、保護布52は、ベルト20の基端部20Aの幅方向両端部にベルト20の長手方向に沿う縫合52Aにより固定されている。保護布52は、スプール24の挿通孔24Aに挿通されており、保護布52は、ベルト20の基端部20Aと挿通孔24Aの周面との間に介在されると共に、スプール24内及びスプール24の外周に配置されている。
【0042】
ここで、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0043】
さらに、ベルト20の基端部20Aと挿通孔24Aの周面との間に保護布52が介在されている。このため、ベルト20の基端部20Aが挿通孔24Aの周面によって損傷することを保護布52によって抑制できる。
【0044】
また、保護布52がスプール24の外周に配置されている。このため、スプール24の外周に保護布52が配置される周方向位置におけるベルト20が引出される際には、ベルト20の巻半径Rが保護布52によって大きくされて、ベルト20の引出許容荷重が小さくされる(図9参照)。このため、バックル本体18の延出が許容される荷重(フォースリミッタ荷重)を小さくできる。
【0045】
特に、ベルト20のスプール24からの引出終了時(本実施形態ではベルト20の引出許容荷重が急激に上昇する前)に、ベルト20の巻半径Rが保護布52によって大きくされて、ベルト20の引出許容荷重が小さくされる。このため、ベルト20の引出許容荷重の最大値を小さくでき、バックル本体18の延出が許容される荷重の最大値を小さくできて、乗員を良好に保護できる。
【0046】
なお、本実施形態では、保護布52がベルト20に固定される。しかしながら、保護布52がスプール24に固定されてもよい。
【0047】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ベルト20がスプール24に略1.5周巻取られる。しかしながら、ベルト20がスプール24に略1.5周よりも少なく又は多く(例えば2周以上)巻取られてもよい。
【0048】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ベルト20の基端部20Aがベルト20の基端部20A近傍に対しスプール24の径方向内側に配置される。しかしながら、ベルト20の基端部20Aがベルト20の基端部20A近傍に対しスプール24の径方向外側に配置されてもよい。
【0049】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ベルト20の基端20Bがベルト20の挿通孔24Aからの延出部分と挿通孔24Aの周面との隙間におけるスプール24の周方向位置に配置される。しかしながら、ベルト20の基端20Bがベルト20の挿通孔24Aからの延出部分と挿通孔24Aの周面との隙間以外におけるスプール24の周方向位置に配置されてもよい。
【0050】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、トーションシャフト32(エネルギー吸収部材)が捩れ変形されて、スプール24の回転が許容される。しかしながら、曲げられた棒状のエネルギー吸収部材が長手方向に移動されてしごかれる(エネルギー吸収部材の曲げ位置が変位される)ことで、スプール24の回転が許容されてもよい。さらに、エネルギー吸収部材が摩擦力を発生しつつ、スプール24の回転が許容されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10・・・バックル装置、14・・・ウェビング、16・・・タング、18・・・バックル本体、20・・・ベルト(連結部材)、20A・・・基端部、20B・・・基端、20C・・・環状部分、24・・・スプール(巻取軸)、24A・・・挿通孔、50・・・バックル装置、52・・・保護布(介在部材)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9