(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】免疫を工学操作するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20240524BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240524BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20240524BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240524BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20240524BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240524BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240524BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240524BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20240524BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C07K16/30
C07K16/22
C12N5/10
C12N5/077
C12N5/074
C12N15/55
A61K35/28
A61K35/407
C12N15/864 100Z
C12N15/13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021122424
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2018526570の分割
【原出願日】2016-11-21
【審査請求日】2021-07-27
(32)【優先日】2015-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シー. ホームズ
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット イー. レイリー
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-513695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174169(US,A1)
【文献】特表2014-526279(JP,A)
【文献】特開2015-051009(JP,A)
【文献】特表2006-525784(JP,A)
【文献】ZHANG, Ningyan et al.,mAbs,2011年05月01日,Vol. 3, No. 3,pp. 289-298
【文献】ISMAILI, Ahmad et al.,BIOTECHNOLOGY AND APPLIED BIOCHEMISTRY,2007年05月01日,Vol. 47, No. Part 1,pp. 11-19
【文献】SAKUMA, Tetsushi et al.,INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR SCIENCES,2015年10月09日,Vol. 16, No. 10,pp. 23849-23866
【文献】COMPTE, M et al.,CANCER GENE THERAPY,2007年01月12日,Vol. 14,pp. 380-388
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
C07K 1/00-19/00
Google Scholar
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において抗体を発現させるための組成物であって、
(i)抗体をコードする導入遺伝子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターと、該抗体が、C末端の血液脳関門標的化モチーフを有する単鎖可変断片(scFv)を含み、該単鎖可変断片(scFv)は、がん抗原、細胞受容体、サイトカイン、成長因子、成長因子受容体、キナーゼ阻害剤、インテグリン、α-シヌクレイン、アミロイドタンパク質および補体タンパク質からなる群から選択されるタンパク質と結合可能であり、および
(ii)前記導入遺伝子が
単離された肝細胞または幹細胞に組み込まれ、および
単離された肝細胞または幹細胞が前記抗体を産生し分泌するように、
単離された肝細胞または幹細胞中の内因性アルブミン遺伝子を切断する、1対のジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする配列を含む1または2以上のAAVベクターによって改変された、ヒト胚性幹細胞ではない単離された
肝細胞または幹細胞を含み、
前記抗体が被験体の脳において発現されるタンパク質に結合する、組成物。
【請求項2】
前記導入遺伝子の発現が内因性アルブミンプロモーターによって駆動される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体が、導入遺伝子によりコードされ、および内因性アルブミン遺伝子によりコードされるアミノ酸を含む融合タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記AAVベクターが、AAV2ベクターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記AAV2ベクターが、AAV2/6ベクターまたはAAV2/8ベクターである、
請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2015年11月23日に出願された米国仮出願第62/258,864号および2016年10月7日に出願されたた米国仮出願第62/405,521号の利益を主張し、これらの開示は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
本開示は、ゲノム編集の分野にある。
【背景技術】
【0003】
遺伝子治療は、ヒト治療学の新しい時代の莫大な潜在性を秘める。これらの方法論は、標準医療行為によって対処可能ではなかった状態のための処置を可能にする。遺伝子治療は、遺伝子座の破壊もしくは補正、および導入遺伝子に融合させた特異的外因性プロモーターによって、またはゲノムへの挿入部位で見出される内因性プロモーターによって制御することができる発現可能な導入遺伝子の挿入などの、ゲノム編集技術の多くの変形を含むことができる。
【0004】
導入遺伝子の送達および挿入は、この技術のいかなる真の実施のために解決されなければならない障害物の例である。例えば、様々な遺伝子送達方法が治療的使用のために潜在的に利用可能であるが、全ては安全性、耐久性と発現レベルとの間の実質的なトレードオフを伴う。エピソームとして導入遺伝子を提供する方法(例えば、塩基性アデノウイルス、AAVおよびプラスミドをベースとした系)は一般的に安全であり、高い初期の発現レベルを得ることができるが、これらの方法は堅牢なエピソーム複製を欠き、そのことは有糸分裂が活発な組織における発現の持続時間を制限する可能性がある。対照的に、所望の導入遺伝子のランダムな組込みをもたらす送達方法(例えば、レンチウイルスの組込み)はより永続的な発現を提供するが、ランダムな挿入の非標的化的性質のために、レシピエント細胞における調節されない成長を引き起こすことがあり、ランダムに組み込まれた導入遺伝子カセットの近くでのオンコジーンの活性化を通して悪性疾患をもたらすおそれがある。さらに、導入遺伝子の組込みが、複製によって駆動される喪失を回避するとしても、それは導入遺伝子に融合した外因性プロモーターの最終的なサイレンシングを防止しない。時間がたつと、そのようなサイレンシングは、大多数のランダム挿入事象の導入遺伝子発現の低減をもたらす。さらに、導入遺伝子の組込みがあらゆる標的細胞において起こることは稀であり、そのことは、所望の治療効果を達成するために目的の導入遺伝子の十分に高い発現レベルを達成することを困難にする可能性がある。
【0005】
近年、選択されたゲノム遺伝子座への挿入を偏らせるための部位特異的ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TAL-エフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、特異的切断をガイドするための工学的に操作された(engineered)crRNA/tracrRNA(「シングルガイドRNA」)によるCRISPR/Cas系など)による切断を使用する、導入遺伝子組込みのための新しい戦略が開発された。例えば、米国特許第9,255,250号;9,200,266号;9,045,763号;9,005,973号;9,150,847号;8,956,828号;8,945,868号;8,703,489号;8,586,526号;6,534,261号;6,599,692号;6,503,717号;6,689,558号;7,067,317号;7,262,054号;7,888,121号;7,972,854号;7,914,796号;7,951,925号;8,110,379号;8,409,861号;米国特許出願公開第20030232410号;20050208489号;20050026157号;20050064474号;20060063231号;20080159996号;201000218264号;20120017290号;20110265198号;20130137104号;20130122591号;20130177983号;20130196373号;20140120622号;20150056705号;20150335708号;20160030477号および20160024474号を参照のこと。さらに、標的化ヌクレアーゼはアルゴノート系に基づいて開発されており(例えば、T.thermophilusから、「TtAgo」として公知、Swartsら(2014年)Nature 507巻(7491号):258~261頁を参照のこと)、それは、ゲノム編集および遺伝子治療における使用のための可能性も有し得る。古典的な組込みアプローチと比較して、導入遺伝子組込みへのこのヌクレアーゼ媒介アプローチは、改善された導入遺伝子発現、安全性の増加および発現の持続性の見込みを提供するが、その理由は、それが、遺伝子サイレンシングまたは近くのオンコジーンの活性化のリスクが最小限であるために、正確な導入遺伝子の配置を可能にするからである。
【0006】
1つのアプローチは、その同族遺伝子座への導入遺伝子の組込み、例えば、変異体遺伝子を補正するための内因性遺伝子座への野生型導入遺伝子の挿入を含む。あるいは、導入遺伝子は、その有益な特性のために特異的に選択される非同族遺伝子座に挿入することができる。例えば、第IX因子(FIX)導入遺伝子の標的化挿入に関する、米国特許出願公開第20120128635号を参照のこと。内因性調節エレメントによって発揮される発現制御をなお維持しつつ、内因性遺伝子の発現を導入遺伝子で置き換えることを望む場合は、同族遺伝子座を標的にすることが有益であり得る。内因性遺伝子座の中でまたはその近くで切断する特異的ヌクレアーゼを使用することができ、相同組換え修復(HDR)を通して、または非相同末端結合(NHEJ)の間の末端捕捉によって、導入遺伝子を切断部位に組み込むことができる。組込みプロセスは、ドナーと内因性遺伝子座との間の導入遺伝子ドナーにおける相同領域の使用または不使用によって決定される。
【0007】
あるいは、導入遺伝子は、そのセーフハーバー遺伝子座で見出されるプロモーターを利用することができるか、または、挿入の前に導入遺伝子に融合される外因性プロモーターによる導入遺伝子の発現調節を可能にすることができる、ゲノム中の特異的「セーフハーバー」位置に挿入することができる。マウス細胞におけるAAVS1、CCR5、Rosa26およびアルブミンを含むいくつかのそのような「セーフハーバー」遺伝子座が記載されている(例えば、米国特許第7,951,925号;8,771,985号;8,110,379号;7,951,925号;米国特許出願公開第20100218264号;20110265198号;20130137104号;20130122591号;20130177983号;20130177960号;20150056705号および20150159172号を参照のこと)。上記のように、セーフハーバー遺伝子に特異的なヌクレアーゼは、導入遺伝子構築物がHDRまたはNHEJのいずれかによって駆動されるプロセスによって挿入されるように利用することができる。
【0008】
ワクチン接種または受動免疫を通した工学的に操作された免疫の分野は、ヒトの健康における莫大な進歩につながった。集団のワクチン接種だけでも、痘瘡の地球規模の根絶をもたらし、ジフテリア、麻疹、おたふく風邪、百日咳、灰白髄炎、風疹および破傷風の発生率を低下させた。受動免疫は、一時的な免疫のためにナイーブ患者への血清または精製抗体の投与を含み(DealおよびBalazs(2015年)Curr Opin in Immunol 35巻:113~122頁)、狂犬病またはヘビ毒などの脅威への曝露を迅速に処置するために使用されている。
【0009】
抗体は、多様な範囲の治療の開発のためにその結合柔軟性が活用されている、分泌タンパク質生成物である。治療抗体は、疾患を直接的に引き起こす標的タンパク質(例えば、黄斑変性症におけるVEGF)の中和、ならびにその持続性および複製が宿主を危険にさらす細胞(例えばがん細胞、ならびに自己免疫疾患におけるある特定の免疫細胞またはウイルス感染細胞)の高度に選択的な殺滅のために使用することができる。そのような適用では、治療抗体は、抗体の標的抗原を有する標的タンパク質または細胞の選択的殺滅、中和またはクリアランスを達成するために、それ自身の抗体への体の正常な応答を利用する。したがって、抗体療法は、腫瘍学、リウマチ学、移植および眼の疾患を含む多くのヒトの状態に広く適用されている。抗体治療薬の例には、黄斑変性症の処置のためのLucentis(登録商標)(Genentech)、非ホジキンリンパ腫の処置のためのRituxan(登録商標)(Biogen Idec)および乳がんの処置のためのHerceptin(登録商標)(Genentech)が含まれる。
【0010】
現代の治療抗体には、様々な構成がある。モノクローナル抗体は、典型的には、標準の2本の軽鎖、2本の重鎖IgGタイプの分子の正確なコピーである。他の例には、Fab、Fab2およびFab3抗体断片、ミニボディ、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ラクダ抗体に基づく抗体、およびトランスフェリン構造などの他のドメインを分子の基礎として使用する新規「抗体」が含まれる(Goswamiら(2013年)Antibodies(2巻):452頁)。単一のオープンリーディングフレームによってコードされる抗体の1タイプは、単鎖抗体または単鎖可変断片(scFv)と呼ばれる。これらのscFvは、相補性決定領域(CDR)を含有する軽鎖(V
L)および重鎖(V
H)の可変領域がフレキシブルリンカーによって連結されるように、伝統的なモノクローナル抗体の最小の抗原結合ドメインを含む(
図1)。scFvは標準のモノクローナル抗体よりはるかに小さく、高い標的結合親和性を有して工学的に操作することができ、したがって、固形腫瘍および脳などの他の複雑な組織をより容易に貫通することができる。scFvのライブラリーが酵母およびファージに存在し、高度に特異的である抗体の選択を可能にし、これらの高度に特異的な抗体をコードする遺伝子は、ウイルス形質導入ベクターに挿入することができる。別の単鎖抗体タイプはscFv-Fc抗体であり、ここで、抗体上のV
LおよびV
Hコード部分は単一のオープンリーディングフレームにクローニングされる。このタイプの抗体は、scFvの特徴(組織貫通性、単一のポリペプチド鎖)を有するのに十分小さいという利点を有するが、そのタンパク質が、補体依存性細胞傷害(CDC)などの典型的な抗体依存性プロセスを刺激することを可能にする抗体のFc部分も有する(例えば、Hongら、(2012年)Immune Network 12巻(1号):33頁を参照のこと)。
【0011】
しかし、現在の抗体療法は、それらの欠点を有する。治療抗体はしばしば哺乳動物細胞の大規模培養で産生しなければならず、広範の精製技術にかけなければならないので、それらの産生費用はかなり高くなり得る。治療的処置は、相当な量の抗体(例えば、1用量につき6~12gのリツキシマブ)をしばしば必要とする。治療抗体の一部の機能的限界には、不十分な薬物動態および組織到達可能性、ならびに免疫系との相互作用の減少が含まれる(Chamesら(2009年)Br. J Pharm 157巻:220頁)。
【0012】
アルブミンは、肝臓で産生され、血液中に分泌されるタンパク質である。ヒトでは、血清アルブミンは血液で見出されるタンパク質の60%を占め、その機能はコロイド浸透圧を調節することによって血液量(blood volume)を調節することのようである。それは、低い溶解性の分子、例えば、脂溶性ホルモン、胆汁酸塩、遊離脂肪酸、カルシウムおよびトランスフェリンのためのキャリアとしての役目もする。さらに、血清アルブミンは、ワルファリン、フェノブタゾン、クロフィブレートおよびフェニトインを含む治療薬を運ぶ。ヒトでは、アルブミン遺伝子座は高度に発現され、毎日概ね15gのアルブミンタンパク質の生成をもたらす。アルブミンはオートクリン機能を有さず、単一対立遺伝子性ノックアウトに関連したいかなる表現型はないようであり、二対立遺伝子のノックアウトについて軽度の表現型の観察だけが見出される(Watkinsら(1994年)Proc Natl Acad Sci USA 91巻:9417頁を参照のこと)。
【0013】
治療薬の血清中半減期を増加させるために治療試薬にカップリングさせる場合にも、アルブミンが使用されている。例えば、Osbornら(J Pharm Exp Thera(2002年)303巻(2号):540頁)は、血清アルブミン-インターフェロンアルファ融合タンパク質の薬物動態を開示しており、融合タンパク質がおよそ140倍遅いクリアランスを有し、そのため融合物の半減期がインターフェロンアルファタンパク質単独より18倍長かったことを実証している。最近開発中のアルブミン融合物である治療的タンパク質の他の例には、Albulin-G(商標)、Cardeva(商標)およびAlbugranin(商標)(Teva Pharmaceutical Industries、それぞれインスリン、bタイプナトリウム利尿薬またはGCSFに融合)、Syncria(登録商標)(GlaxoSmithKline、グルカゴン様ペプチド-1に融合)およびAlbuferon α-2B、IFN-アルファに融合、が含まれる(Current Opinion in Drug Discovery and Development、(2009年)、第12巻、2号、288頁を参照のこと)。これらの場合、Albulin-G(商標)、Cardeva(商標)およびSyncria(登録商標)は、全て、アルブミンが融合物のN末端で見出される融合タンパク質であるが、Albugranin(商標)およびAlbuferonアルファ2Gは、アルブミンが融合物のC末端にある融合物である。
したがって、所望の抗体導入遺伝子を発現させるために使用することができるさらなる方法および組成物の必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書で、抗体導入遺伝子の標的化挿入および部分配列発現、例えば肝臓などの分泌組織からの抗体の発現のための方法および組成物が開示される。一態様では、抗体(例えば、scFv、ダイアボディ、イントラボディなど)は、肝細胞のセーフハーバー遺伝子(例えば、アルブミン遺伝子)へのヌクレアーゼ媒介標的化組込みの後にin vivoの細胞中で発現される。ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN、CRISPR/Casヌクレアーゼ系などであってよい。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、セーフハーバー遺伝子(例えば、AAVS1、CCR5、Rosa、アルブミン)中の標的部位、例えば、表1に示す順番の認識ヘリックスドメインを有するアルブミン標的化ジンクフィンガータンパク質または表3に示すアルブミン標的化シングルガイドRNAを認識するDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガードメイン、TALEまたはシングルガイドRNA)を含む。したがって、本明細書で、細胞(例えば、肝細胞、筋肉細胞、または幹細胞、例えば造血幹細胞もしくは人工多能性幹細胞)の中で、がん抗原、細胞受容体、サイトカイン、増殖因子、増殖因子受容体、キナーゼ阻害剤、インテグリン、α-シヌクレイン、アミロイドタンパク質および補体タンパク質の群から選択されるタンパク質に結合する抗体(例えば、単鎖可変断片(scFv)、イントラボディまたはダイアボディ)を発現させる方法であって、細胞が抗体を産生するように、抗体をコードする導入遺伝子を細胞のセーフハーバー遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子)に組み込むことを含む方法が開示される。導入遺伝子の発現は、内因性プロモーターまたは外因性プロモーター(例えば、導入遺伝子の一部である)によって駆動させることができる。導入遺伝子は、内因性セーフハーバー(例えば、アルブミン配列)と発現させることができ、および/またはアルブミンコード配列を含むことができる。被験体の細胞は、in vivoで(生きている被験体中で)またはex vivo(導入遺伝子は単離細胞に組み込まれ、単離細胞は生きている被験体に投与される)で改変することができる。導入遺伝子は、非ウイルス性の(例えば、プラスミドまたはmRNA)ベクターまたはウイルスベクター(例えば、AAV、Adなど)を使用して送達することができる。本明細書に記載される方法によって産生される遺伝子改変細胞も提供され、その細胞は、セーフハーバー遺伝子座に組み込まれた抗体をコードする導入遺伝子を含む。本明細書に記載される方法(ex vivo、または、in vivo)のいずれでも、抗体は被験体の細胞または組織(例えば、肝臓、血清および/または脳)で発現され、さらに、抗体はがん、自己免疫疾患、神経障害、疼痛および/もしくは骨関節炎を処置ならびに/または予防する。がん、自己免疫疾患、神経障害、疼痛および/または骨関節炎を処置する方法で使用するための1つまたは複数のヌクレアーゼおよび1つまたは複数の抗体コード導入遺伝子も提供され、この方法は、それを必要とする被験体に1つまたは複数のヌクレアーゼおよび1つまたは複数の導入遺伝子を投与して、抗体を産生する細胞を生成することを含み、ここで、抗体は、がん、自己免疫疾患、神経障害、疼痛および/または骨関節炎に関与するタンパク質に結合し、導入遺伝子は天然に存在しないヌクレアーゼを使用して細胞の内因性セーフハーバー(例えば、アルブミン)遺伝子座に組み込まれ、細胞は抗体を産生する。
【0016】
ある特定の実施形態では、抗体コード導入遺伝子の標的化組込みのために使用される組成物は、1つまたは複数のジンクフィンガー、TALEおよび/またはCRISPR/Casヌクレアーゼ(または、ヌクレアーゼの1つまたは複数の構成成分をコードするポリヌクレオチド)を、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む。ヌクレアーゼ(その構成成分)および/または導入遺伝子は、ポリヌクレオチドの形で、mRNAとして、またはプラスミドの形で細胞(in vitroまたはin vivo)に送達することができる。一部の態様では、mRNAは化学改変されてもよい(例えば、Kormannら、(2011年)Nature Biotechnology 29巻(2号):154~157頁を参照のこと)。他の態様では、mRNAは、ARCAキャップを含むことができる(米国特許第7,074,596号および第8,153,773号を参照のこと)。さらなる実施形態では、mRNAは、未改変のおよび改変されたヌクレオチドの混合物を含むことができる(米国特許出願公開第20120195936号を参照のこと)。なおさらなる実施形態では、mRNAは、WPREエレメントを含むことができる(米国特許出願第15/141,333号を参照のこと)。
【0017】
ヌクレアーゼ(または、その構成成分)は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含む1つまたは複数の発現ベクターを使用して送達することもできる。一実施形態では、発現ベクターはウイルスベクターである。一態様では、ウイルスベクターは、組織特異的向性を呈示する。
【0018】
別の態様では、本明細書で、ヌクレアーゼを使用してセーフハーバー遺伝子(例えば、アルブミン)に組み込まれた抗体(例えば、scFv、ダイアボディ、イントラボディなど)をコードする導入遺伝子を含む、遺伝子改変宿主細胞が記載される。抗体は、例えばがん抗原、細胞受容体、サイトカイン、増殖因子、増殖因子受容体、キナーゼ阻害剤、インテグリン、α-シヌクレイン、アミロイドタンパク質および補体タンパク質の群から選択されるタンパク質を含む任意の標的(抗原)に結合して、がん、自己免疫疾患、神経障害、疼痛および/もしくは骨関節炎を処置ならびに/または予防することができる。宿主細胞は、1つまたは複数のヌクレアーゼおよび導入遺伝子(複数可)によって、安定して形質転換すること、もしくは一時的にトランスフェクトすること、またはその組合せが可能である。ヌクレアーゼおよび導入遺伝子(複数可)(ドナー(複数可)は、in vivoまたはex vivoの細胞に導入することができる。一実施形態では、宿主細胞は胚性幹細胞である。抗体コード導入遺伝子が組み込まれる好適な細胞の非限定的な例には、真核生物の細胞または細胞株、例えば、分泌細胞(例えば、肝細胞、粘膜細胞、だ液せん細胞、下垂体細胞など)、血液細胞(例えば、赤血球、B細胞、T細胞)、幹細胞などが含まれる。本明細書に記載される実施形態のいずれでも、宿主細胞は、非ヒト胚細胞、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物の胚細胞を含むことができる。ある特定の実施形態では、抗体コード配列(例えば、scFv、ダイアボディ、イントラボディなど)は、ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALENおよび/またはCRISPR/Casヌクレアーゼ)標的部位(複数可)および/または切断部位でまたはその近くで、例えばヌクレアーゼ標的部位(米国特許第9,394,545号;9,150,847号;米国特許出願公開第20160060656号および配列番号11、12、13、15、17、19、21に示すヌクレアーゼ標的部位を限定されずに含む)もしくは切断部位の中で、またはヌクレアーゼおよび/もしくは切断部位の1~50塩基対(または、その間の任意の値)の中で、アルブミン遺伝子に導入される。
【0019】
別の態様では、本明細書で、抗体(例えば、scFv、ダイアボディ、イントラボディなど)をコードする導入遺伝子を、細胞中のセーフハーバー遺伝子(例えば、アルブミン遺伝子)に導入する方法であって、細胞に、(i)セーフハーバー(例えば、アルブミン遺伝子)中の標的部位に結合する1つまたは複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALENおよび/またはCRISPR/Cas系)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド、ならびに(ii)導入遺伝子を、ヌクレアーゼ(複数可)が発現され、導入遺伝子がセーフハーバー(例えば、アルブミン遺伝子)に組み込まれるような条件下で導入することを含む方法が記載される。
【0020】
導入遺伝子(ドナー)配列は、別個のベクター(例えば、mRNA、Ad、AAVまたはLVベクター)に存在するヌクレアーゼを含む送達ベクターに存在することができるか、または、代わりに、異なる核酸送達機構を使用して細胞に導入することができる。標的遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子、他のセーフハーバー遺伝子など)へのドナーヌクレオチド配列のそのような挿入は、標的遺伝子座(例えば、アルブミン)の遺伝子制御エレメントの制御下でドナーが運ぶ抗体導入遺伝子の発現をもたらすことができる。一部の態様では、導入遺伝子は外因性プロモーターの制御下にあるが、他の態様では、導入遺伝子は挿入部位のプロモーター(例えば、アルブミン遺伝子に挿入されるときはアルブミンプロモーター)の制御下にある。他の態様では、例えばアルブミン遺伝子への抗体導入遺伝子の挿入は、インタクトな外因性抗体タンパク質配列の発現をもたらし、内因的に(例えば、アルブミン)コードされるいかなるアミノ酸も欠く。他の態様では、発現される外因性抗体タンパク質は融合タンパク質であり、抗体導入遺伝子およびセーフハーバー(例えば、nアルブミン)遺伝子(例えば、内因性の標的遺伝子座からの、または代わりに、導入遺伝子上のアルブミンコード配列からの)によってコードされるアミノ酸を含む。一部の場合には、アルブミン配列は外因性抗体タンパク質のアミノ(N)末端部分に存在するが、他の場合には、アルブミン配列は外因性抗体タンパク質のカルボキシ(C)末端部分に存在する。他の場合には、アルブミン配列は外因性抗体タンパク質のNおよびC末端部分両方に存在する。アルブミン配列は完全長野生型または変異体アルブミン配列を含むことができるか、または代わりに、部分的アルブミンアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の実施形態では、アルブミン配列(完全長または部分的)は、それが融合する抗体導入遺伝子によって発現される抗体の血清中半減期を増加させる役目をし、および/またはキャリアとしての役目をする。一部の態様では、抗体導入遺伝子は、T細胞またはB細胞中においてセーフハーバー(例えば、アルブミン遺伝子)に挿入される。一部の実施形態では、抗体導入遺伝子は、T細胞またはB細胞特異的プロモーターによって調節される。好ましい実施形態では、抗体導入遺伝子はB細胞のセーフハーバー(例えば、アルブミン)に挿入され、B細胞特異的プロモーター(例えば、CD19もしくはB29または免疫グロブリンカッパ軽鎖)によって調節される。他の好ましい実施形態では、抗体導入遺伝子はT細胞のセーフハーバーに挿入され、T細胞特異的プロモーター(例えば、Pmed1、TRBC)によって調節される(Heusohnら(2002年)J. Immunol 168巻:2857頁)。一部の実施形態では、抗体導入遺伝子は、造血幹細胞に挿入され、ここで、導入遺伝子構築物は、導入遺伝子が幹細胞分化の後に発現されるように細胞型特異的プロモーターを含む。他の実施形態では、Tおよび/またはB細胞はドナーから収集され、抗体導入遺伝子構築物がex vivoで導入され、次に、工学的に操作された細胞はドナーに、またはそれを必要とする患者に再導入して戻される。好ましい実施形態では、導入遺伝子構築物は、ヌクレアーゼ(ZFN、TALEN、CRISPR/Cas)によって駆動される標的化組込みを使用して、Tおよび/またはB細胞のゲノムに組み込まれる。
【0021】
別の態様では、本発明は、in vivoでセーフハーバー遺伝子(例えば、アルブミン)プロモーター(例えば、内因性のプロモーターまたは導入遺伝子の一部である外因性のプロモーター)の制御下で抗体導入遺伝子を発現させるために使用することができる方法および組成物を記載する。一部の態様では、抗体導入遺伝子は、治療抗体、例えば、その標的(抗原)に結合するときに障害を有する被験体において臨床上の(治療的)利点を提供する抗体をコードすることができる。ある特定の実施形態では、抗体はがん抗原を認識し、がんの処置および/または予防をもたらすことができる。がん抗原の非限定例には、CD20、CD22、CD19、CD33、CD40、CD52、CCR4、WT-1、HER2、CD137、OX40、EGFR、VEGF、EPCAM、アルファフェトプロテイン(AFP)、CEA、CA-125、Muc1、上皮腫瘍抗原(ETA)およびチロシナーゼが含まれる(より広範なリストについては、PolanskiおよびAnderson(2006年)Biomarker Insights 2巻:1~48頁を参照のこと)。さらに、腫瘍学適用のために有益な抗体には、PD1およびCTLA4などのチェックポイント阻害剤が含まれる(Sureshら(2014年)J Hematol Oncol 7巻:58頁)。他のがん標的には、例示のためだけであるが、多数のCT抗原のうちのほんのいくつかを挙げると、MAGE-A-A4、MAGE-C1、SSX2、SSX4、NY-ESO-1、SCP1、CT7.NH-SAR-35、OY-TES-1、SLCO6A1、PASD1、CAGE-1、KK-LC-1を含む、がん/精巣(CT)抗原が含まれる(CabelleroおよびChen(2009年)Cancer Sci 100巻(11号):2014~2021頁)。他の実施形態では、組み込まれた導入遺伝子によってコードされる抗体は、炎症性応答調節因子を認識し、自己免疫療法のために有益である。これらの抗体によって処置することができる状態には、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、潰瘍性大腸炎、喘息、乾癬、糖尿病性網膜症、グレーブス病、橋本病、多発性硬化症、ループス、I型糖尿病、緑内障、視神経脊髄炎、血管炎および強皮症が少なくとも含まれる。炎症性状態の処置のために有益な抗体標的の非限定例には、サイトカイン(IL-2、IL-8、IL-6R、IL-12、IL-23、IL-17、IL-22、IL-26、RANKL)、Jakキナーゼ阻害剤、TGF-β、α4β7インテグリン、α4β1インテグリン、TNFα、CD52、CD25、CD20、アネキシンA2およびC1qを含む古典的補体経路が含まれる(Tanidaら(2015年)World J Gastro 21巻(29号):8776~86頁;Neurath(2014年)Nature 7巻(1号):6頁;Riceら(2015年)J Clin Invest 125巻(7号):2795頁;Palmer(2013年)Br J Clin Pharm 78巻(1号):33~43頁)。
【0022】
一部の実施形態では、抗体は治療抗体であり、受容体を標的にし(結合し)、がんの処置のために有益である(Zhuら(2015年)Lancet 16巻(15号)e543~e554頁)。一部の実施形態では、治療抗体は、他の細胞受容体を標的にする(例えば、Notch受容体(Wuら(2010年)Nature 464巻:1052~1057頁)、Gタンパク質共役受容体(Joら、(2016年)Exp Mol Med.48巻(2号))。他の実施形態では、抗体は増殖因子受容体を認識し(結合し)、がん、神経障害および精神障害のために有益である(Turnerら(2015年)Semin Cell Dev Biol.、10月8日、pii: S1084-9521(15)00188-3. doi: 10.1016/j.semcdb.2015.10.003)。一部の実施形態では、抗体はヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)を標的にし、がんの処置のために有益である(Sasadaら(2016年)Front Pharmacol.7巻:405頁、eCollection 2016)。他の非限定的な抗体標的例には、パーキンソン病および多系統萎縮症などのシヌクレイノパチーの処置のためのα-シヌクレイン、アルツハイマー病のためのアミロイドβ(Aβ)(Liuら(2015年)J Neuroinflam 12巻:153頁)、疼痛および/またはアルツハイマー病の処置のためのNGFおよびTrkA(Hiroseら(2015年)、Pain Pract doi:10.1111)、慢性疼痛および片頭痛のためのCGRP(Bigalら(2015年)Lancet Neurology 14巻(11号):1091頁、ならびに骨関節炎のためのNGF(Gowら(2015年)Arthritis Res Ther doi:10.1186)が含まれる。
【0023】
他の実施形態では、抗体は自己認識マーカーに結合し、移植の間の治療のために有益である。例えば、van den Hoogen(2011年)Immunotherapy 3巻(7号):871~80頁を参照されたい。抗体処置のために有益なさらなる治療領域には、喘息、乾癬、心臓虚血、ウイルス感染症およびヘモグロビン尿症が含まれる(Susukiら(2015年)J Tox Pathol 28巻:133頁を参照のこと)。治療抗体の他の使用には、薬物習慣性の処置が含まれる(Stevensら(2014年)mAbs 6巻:2号:547頁;Harrisら(2015年)PLOS ONE doi:10.1371/journal.pone.0118787)。
【0024】
したがって、本方法は、抗体の供給によって処置および/または予防することができる任意の障害を処置および/または予防するin vivoまたはex vivoの方法を含む。ある特定の実施形態では、in vivo方法は、抗体が被験体において発現されるように、セーフハーバー遺伝子(例えば、アルブミン)を標的にした1つまたは複数のヌクレアーゼおよび1つまたは複数の治療抗体コード導入遺伝子を被験体に投与することを含む。ある特定の実施形態では、抗体は第1の部位(例えば、肝臓)に投与され、被験体の1つまたは複数の二次性の部位(例えば、脳、血清、骨格筋、心臓など)においても見出される。
【0025】
なおさらなる実施形態では、導入遺伝子によって産生される抗体は、工学的に操作された細胞内抗体断片(イントラボディ)である。そのようなイントラボディは、タンパク質によって媒介される細胞内プロセスを阻害するのに有益である。例えば、本発明の方法および組成物によって産生されるイントラボディは、変異体α1-抗トリプシンを標的にし、その重合を防止することができ、こうして関連する肝傷害を予防または処置することができ(Ordonezら(2015年)FASEB J 29巻:2667頁を参照のこと)、または、プロテアーゼ阻害剤耐性C型肝炎ウイルスレプリコンおよび感染性ウイルスを標的にして、耐性C型肝炎の複製を阻害することができる。
【0026】
一部の態様では、抗体をコードする導入遺伝子は、単一のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖が単一のポリペプチドにコードされ、切断配列(例えば、2aペプチド)によって分断される。一部の実施形態では、切断に続いて、露出したポリペプチド配列は、コンジュゲーション反応に関与するために利用可能である。好ましい実施形態では、コンジュゲーション反応は、抗体の発現、切断およびコンジュゲーションの際に、抗体-小分子コンジュゲートが産生されて、分泌されるように、抗体鎖に低分子を連結することに関与する。
【0027】
他の実施形態では、導入遺伝子ポリペプチドは、scFv抗体をコードする。なおさらなる実施形態では、ポリペプチドは、scFv-Fc抗体をコードする。一部の実施形態では、2つのscFv抗体が産生されるように、2つの導入遺伝子が挿入される。他の実施形態では、抗体は2つの融合scFvを含み、ここで、1つのscFvは目的の抗原(例えば、がん抗原)を認識し、他はT細胞抗原、いわゆる「BiTE」または二重特異的T細胞エンゲージャーを認識し、こうしてがん細胞のT細胞によって駆動される溶解を再誘導する(例えば、HoffmanおよびGore(2014年)Front Oncol 4巻:63頁を参照のこと)。他の実施形態では、抗体をコードする導入遺伝子は、単鎖ダイアボディをコードする。これらは、3つのリンカーによって接続される同じかまたは2つの抗体の可変重鎖および軽鎖ドメインで構成される組換え分子である(Storkら(2009年)J Biol Chem 284巻(38号):25612~25619頁)。一部の場合には、ダイアボディは二重特異的ダイアボディである(KontermannおよびBrinkmann(2015年)Drug
Dis Today 20巻(7号):38頁)。
【0028】
一部の態様では、抗体コードドナーは、抗体の発現を調節するためのスイッチをさらに含む。一部の実施形態では、スイッチは、小分子の調節可能なリボザイムの使用を含む。一部の実施形態では、リボザイムは安全スイッチとして作用し、導入遺伝子ドナーの3’末端に付加される。リボザイムは小分子によって調節され、小分子の存在下ではリボザイムは自己切断から阻害される(Kennedyら(2014年)NAR 42巻(19号):12306頁を参照のこと)。他の実施形態では、スイッチは誘導性プロモーターへのリガンドアプタマーの結合を含み、リガンドの存在下ではプロモーターの発現がオンにされる。なおさらなる実施形態では、遺伝子発現の誘導のためにトランス活性化因子の結合に依存する遺伝子スイッチ系を使用することができ、ここで、トランス活性化因子の結合はテトラサイクリンもしくはドキシクライン(tet OFF)などの小分子への結合によって阻害され、または、トランス活性化因子の結合は、プロモーター領域に首尾よく結合するために小分子に依存する(tet-ON)。
【0029】
一部の態様では、本発明は、それを必要とする被験体における状態を予防または処置するのに有用であり得る組成物を記載する。一部の実施形態では、組成物は、in vivoでの染色体への組込みのための標的化ヌクレアーゼおよび特異的導入遺伝子を含むウイルスベクター送達系を含む。他の実施形態では、導入遺伝子の発現が体内への調節因子の導入によって制御可能であるように、導入遺伝子は調節スイッチを含む。好ましい実施形態では、調節因子は小分子である。一部の実施形態では、処置される状態は、がんである。他の実施形態では、状態は、ウイルス障害または自己免疫障害である。さらなる実施形態では、状態は周期的(「再燃する」)であり、状態の症状は被験体の生存期間(数週、数ケ月、数年)にわたって増減する。一部の実施形態では、導入遺伝子は疾患再燃(disease flare)の初期期間中に、遺伝子スイッチの活性化によってオンにされる。処置または予防することができる再燃している状態の非限定例には、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、ループス、喘息、大腸炎、多発性硬化症、COPDおよび湿疹が含まれる。一部の実施形態では、導入遺伝子は、細胞外の因子を検出して細胞による応答をもたらす、膜貫通センサーをコードする。一部の場合には、センサーは、疾患再燃の間に生成される因子を検出する。
【0030】
一部の実施形態では、本発明の方法は、トランスジェニック動物系においてin vivoで使用することができる。一部の態様では、トランスジェニック動物は、モデルの開発で使用することができ、そこでは、導入遺伝子は慢性状態を処置するために使用されるであろう抗体をコードする。一部の場合には、トランスジェニック動物は、疾患(例えば、がん)に関係があるモデル系であってよい。そのようなトランスジェニックモデルは、状態の処置または予防(treatment of prevention)のためにこれらの抗体の治療的使用を評価するために使用することができる。他の態様では、トランスジェニック動物は、産生目的のために、例えば抗体を産生するために使用することができる。ある特定の実施形態では、動物は小さい哺乳動物、例えば、イヌ、ウサギ、またはラット、マウスもしくはモルモットなどのげっ歯動物である。他の実施形態では、動物は非ヒト霊長類である。まだその上さらなる実施形態では、動物は、ウシ、ヤギまたはブタなどの家畜である。一部の態様では、抗体導入遺伝子は、選択された遺伝子座(例えば、アルブミン)に、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、肝臓の幹細胞など)に、または本明細書に記載される方法のいずれかによって得た動物の胚に組み込まれ、その後、生きた動物が生まれるように胚が植え込まれる。動物は、次に性的成熟まで育てられて子孫を生むことができ、ここで、子孫の少なくとも一部は組み込まれた抗体導入遺伝子を含む。
【0031】
なおさらなる態様では、本明細書で、染色体の内因性遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子)、例えば胚の染色体への、抗体をコードする核酸配列の部位特異的な組込みのための方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、(a)胚に、(i)少なくとも1つのDNAベクターであって、組み込まれる抗体をコードする核酸配列に隣接している上流配列および下流配列を含むDNAベクター、ならびに(ii)標的遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子座)における組込み部位を認識するジンクフィンガー、TALEおよび/またはCRISPR/Casヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのRNA分子を注射するステップ、および(b)ジンクフィンガー、TALEおよび/またはCRISPR/Casヌクレアーゼの発現を可能にするために胚を培養するステップであって、核酸配列を染色体に組み込むように、ヌクレアーゼによって組込み部位に導入される二本鎖切断が、DNAベクターによる相同組換えを通して修復される、培養するステップ、を含む。
【0032】
適する胚は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類および魚類の種を含む、いくつかの異なる脊椎動物種に由来することができる。一般的に言って、適する胚は、ヌクレアーゼの発現を可能にするために収集し、注射し、培養することができる胚である。一部の実施形態では、適する胚には、小さい哺乳動物(例えば、げっ歯動物、ウサギなど)、伴侶動物、畜産動物および霊長類からの胚を含めることができる。げっ歯動物の非限定例には、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミおよびモルモットを含めることができる。伴侶動物の非限定例には、ネコ、イヌ、ウサギ、ハリネズミおよびフェレットを含めることができる。畜産動物の非限定例には、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラマ、アルパカおよびウシを含めることができる。霊長類の非限定例には、ノドジロオマキザル、チンパンジー、キツネザル、マカク、マーモセット、タマリン、クモザル、リスザルおよびベルベットサルを含めることができる。他の実施形態では、適する胚には、魚類、爬虫類、両生類または鳥類からの胚を含めることができる。あるいは、適する胚は、昆虫の胚、例えば、Drosophilaの胚またはカの胚であってもよい。
【0033】
本明細書に記載される方法または組成物のいずれでも、工学的に操作された遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子座)を含有する細胞は、幹細胞であってよい。本発明の方法および組成物で使用することができる具体的な幹細胞型には、胚性幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)および肝性または肝臓の幹細胞が含まれる。iPSCは、患者試料に由来するおよび正常対照に由来することができ、ここで、患者由来のiPSCは目的の遺伝子において正常な遺伝子配列へと変異させることができ、または、正常細胞は目的の遺伝子において公知の疾患対立遺伝子へと変更することができる。同様に、肝性幹細胞は、患者から単離することができる。これらの細胞は、目的の導入遺伝子を発現するように次に工学的に操作され、拡張され、次に患者に再導入される。
【0034】
一部の実施形態では、本方法および組成物は、抗体の産生および分泌のために細胞株を工学的に操作するために使用される。これらの細胞株は、治療的使用、診断的使用または工業的使用のために多量の抗体を産生するために使用される。一部の実施形態では、細胞はマウス細胞であり、他の実施形態では、それらはハムスター細胞である。さらなる実施形態では、細胞が由来する動物系は、その目的のために最適のものである。一部の実施形態では、抗体は細胞から分泌される。他の実施形態では、抗体は細胞の中に保持される(それらは抗体を単離するために溶解することができ、または、ex vivo治療で患者に投与することができる)。
【0035】
少なくとも1つのDNAベクターを含む胚も提供され、ここで、DNAベクターは、組み込まれる抗体をコードする核酸配列に隣接している上流配列および下流配列、ならびに組込みの染色体部位を認識するヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのRNA分子を含む。本明細書に記載される胚のいずれかに由来する生物体も提供される(例えば、性的成熟まで発達させ、後代を産むことが可能な胚)。
【0036】
別の態様では、本発明の方法および組成物は、障害、例えば抗体を使用して処置および/または予防することができる障害に罹患した動物の処置で使用するための、薬物ライブラリーおよび/または他の治療組成物(すなわち、抗体、構造的RNAなど)のスクリーニングにおける細胞、細胞株および動物(例えば、トランスジェニック動物)の使用を提供する。そのようなスクリーニングは、操作された細胞株または初代細胞を用い細胞レベルで開始することができ、動物全体(例えば、ヒト)の処置のレベルまで進行することができる。
【0037】
抗体コード導入遺伝子および/またはヌクレアーゼ(ZFN、TALENおよび/またはCRISPR/Cas系)を含むキットも、提供される。キットは、ZFN、TALENまたはCRISPR/Cas系(例えば、適する発現ベクターに含有されるヌクレアーゼ(複数可)をコードするRNA分子遺伝子)をコードする核酸、ドナー導入遺伝子分子、適する宿主細胞株、本発明の方法を実行するための指示などを含むことができる。
【0038】
これらおよび他の態様は、全体として開示に照らして当業者にとって容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、抗体構造の簡略化された概観を表す。略記号の意味は、図の最下部に示す。
【0040】
【
図2】
図2は、内因性セーフハーバー遺伝子座における工学的に操作された抗体の工学的に操作されたヌクレアーゼ媒介挿入を表す概略図である。「SA」は、スプライスアクセプター部位を指す。「pA」は、ポリアデニル化シグナルを指す。「Ex1」は、内因性セーフハーバー(例えば、アルブミン)遺伝子座のエクソン1を指す。「ScFv」は単鎖可変断片を指し、「ScFv-Alb」は、ScFv配列ならびにアルブミン配列を含むキメラタンパク質を指す。「BiTE」は、二重特異的T細胞エンゲージャーを指す。
【0041】
【
図3】
図3A~3Eは、例示的な抗体ドナーおよびヌクレアーゼデザインを表す一連の概略図である。
図3Aは、ドナー分子の例示的な単鎖可変断片(ScFv)デザインを示す。
図3Bは、ダイアボディドナーの例示的なデザインを示す。
図3Cは、ScFv-アルブミン融合ドナーの例示的なデザインを示す。
図3Dは、ダイアボディ-アルブミン融合ドナーの例示的なデザインを示す。
図3A~3Dに表す抗体ドナーは、プロモーター/エンハンサー領域を欠く。
図3Eは、C末端の血液脳関門標的化モチーフを有する例示的なScFvドナーデザインを示し、この例では、ヒトアポリポタンパク質B-100低密度リポタンパク質の残基3371~3409を使用した。「ITR」は、AAVウイルスベクター由来の逆方向末端反復を指す。「HA」はホモロジーアームを指し、「SA」はスプライスアクセプター配列を指す。「V
H」および「V
L」は、それぞれ抗体重鎖または軽鎖由来の抗体可変領域を指す。「(G
xS)
n」は、2つの可変ドメインの間のリンカー配列を指す。「ApoB LDLR」は、ヒトアポリポタンパク質B-100低密度リポタンパク質(ApoB LDL)残基3371~3409であり、「pA」はポリアデニル化シグナルを指す。
【0042】
【
図4】
図4は、ヌクレアーゼデザインを表す概略図を示す。抗体ドナーの標的化組込みのためのセーフハーバー切断のために使用される対の各ZFNのための別個のベクターのデザイン。「ApoE-hAAT」は、ApoEエンハンサー配列に融合させるhAATプロモーターを指す。全ての他の略記号は、
図3における通りである。
【0043】
【
図5】
図5Aおよび5Bは、内因性アルブミン遺伝子座への示された抗体コード導入遺伝子ドナーの標的化組込みの後の、工学的に操作された抗体のin vitro産生を示すグラフを表す。
図5Aは、Hepa1-6細胞へのアルブミン標的化ZFNおよび抗体ドナーの投与の後の、Hepa1-6細胞上清において検出される工学的に操作された抗体の全レベルを示す。この実験では、Her2 C6.5ダイアボディを、工学的に操作された抗体ドナーとして使用した。
図5BはHer2に結合するHer2 C6.5ダイアボディを表すグラフであり、アルブミン遺伝子座から産生された抗体が適切に折り畳まれ、目的の標的に結合したことを実証する。ZFN:ドナーについて示されたデータは、n=3の生物学的反復のデータである。エラーバーは、技術的反復の標準偏差を表す。
【0044】
【
図6】
図6Aおよび6Bは、内因性アルブミン遺伝子座への示された抗体コード導入遺伝子のヌクレアーゼ媒介組込みの後の、工学的に操作された抗体-アルブミン融合物のin vitro産生を示すグラフである。
図6Aは、Hepa1-6細胞へのアルブミン標的化ZFNおよび抗体-アルブミンドナーの投与の後の、Hepa1-6細胞上清において検出される工学的に操作された抗体-アルブミン融合物の全レベルを示す。この実験では、Her2 C6.5ダイアボディ-MSA(マウス血清アルブミン)融合物を、抗体ドナーとして使用した。
図6BはHer2に結合するHer2 C6.5ダイアボディ-MSAを表すグラフであり、アルブミン遺伝子座から産生された抗体が適切に折り畳まれ、目的の標的に結合することを実証する。ZFN:ドナーについて示されたデータは、n=3の生物学的反復のデータである。エラーバーは、技術的反復の標準偏差を表す。
【0045】
【
図7】
図7は、内因性アルブミン遺伝子座への示した抗体コード導入遺伝子の標的化組込みの後の、工学的に操作されたアルファ-シヌクレイン抗体のin vitro産生を表すグラフである。Hepa1-6細胞へのアルブミン標的化ZFNおよび抗体ドナーの投与の後の、Hepa1-6細胞上清において検出される工学的に操作された抗体の全レベル。この例では、アルファ-シヌクレインD5E(Syn D5E)ScFvの様々なバージョンを、工学的に操作された抗体ドナーとして使用した。Syn D5E ApoB LDLは、C末端のヒトアポリポタンパク質B-100低密度リポタンパク質ペプチド、LDLペプチド、Syn D5Eリンカー、Syn D5Eを含有し、Syn D5E myc-3X FlagはC末端のApoB LDLペプチドを含有しない。Syn D5Eリンカーは、Syn D5E ApoB LDLドナーに存在するC末端のリンカーを保持するが、Syn D5EおよびSyn D5E myc-3X Flagは保持しない。Syn D5E 3X Flag構築物は、おそらくELISAレベルアッセイにおける3X Flagの増加した結合能力のために、より大きなレベルをもたらす。ZFN:ドナーについて示されたデータは、n=3の生物学的反復のデータである。エラーバーは、技術的反復の標準偏差を表す。
【0046】
【
図8】
図8A~8Eは、内因性マウスアルブミン遺伝子座への抗体コード導入遺伝子の標的化組込みの後の、工学的に操作された抗体のin vivo産生を示すグラフである。
図8Aは、マウスへのアルブミン標的化ZFNおよび様々なC6.5抗体ドナーの投与の後の、様々な工学的に操作されたC6.5抗体のレベルを表すグラフである。表1に表すように、AAV2/8-ZFNおよびAAV2/8-ドナーを投与した(実施例を参照のこと)。血漿収集スケジュールは、表5に概説した(実施例を参照のこと)。
図8B(C6.5ダイアボディ導入遺伝子)、8C(C6.5 ScFv-MSAドナー導入遺伝子)、8D(C6.5ダイアボディ-MSA)および8E(C6.5ダイアボディ-HSA(ヒト血清アルブミン)導入遺伝子)は、様々な工学的に操作されたC6.5抗体ドナーのレベルを経時的に表すグラフである。
【0047】
【
図9】
図9は、示した抗体コード導入遺伝子ドナーのin vivoヌクレアーゼ媒介導入の後の、in vivo遺伝子改変(%インデル)のレベルを表すグラフである。示されたデータは、試験品投与から28日後のマウス研究の%インデルを反映する。
【0048】
【
図10】
図10は、示した抗体コード導入遺伝子ドナーのin vivoヌクレアーゼ媒介導入の後の、in vivo内因性アルブミン工学的に操作された抗体転写物のレベルを表すグラフであり、ここで、内因性アルブミン-C6.5 mRNAのレベルは定量的RT-PCRによってアッセイした。5’プライマーおよびプローブは内因性マウスアルブミン遺伝子座の中に位置し、3’プライマーは工学的に操作された抗体ドナーの中に位置する。
【0049】
【
図11】
図11は、実施例3に記載される研究で使用された全てのin vivo投与群を示す表である。
【0050】
【
図12】
図12A~12Dは、例示的な抗体ドナーおよびcDNA構築物を表す概略図である。
図12Aは、C末端の血液脳関門標的化モチーフを有する例示的な単鎖可変断片(ScFv)デザインを示し、この例示的な構築物では、ヒトアポリポタンパク質B-100低密度リポタンパク質の残基3371~3409を使用した。この例は、アルファ-シヌクレインD5E ScFvを表す。
図12Bは、例示的なScFv-GBA融合物のデザインを示す。この例示的な構築物では、アルファ-シヌクレインScFvは、GBAに融合させた。
図12Cは例示的なScFv cDNAを表し、それは、エンハンサー(CRMSBS2)、プロモーター(TTRm)およびイントロン(SBRIntron 3)を含む、肝臓特異的プロモーターモジュールによって駆動されるcDNA骨格中のアルファ-シヌクレインScFv D5Eを含む。シグナルペプチドは、この例ではアルブミンに由来する。ポリアデニル化シグナルは、合成ポリアデニル化シグナルである。
図12Dは例示的なScFv GBA cDNAを示し、そこでは、アルファ-シヌクレインScFv D5Eは、エンハンサー(CRMSBS2)、プロモーター(TTRm)およびイントロン(SBRIntron 3)を含む、肝臓特異的プロモーターモジュールによって駆動されるcDNA骨格の中にある。ScFvは、GBAに融合される。シグナルペプチドは、この例ではアルブミンに由来する。ポリアデニル化シグナルは、合成ポリアデニル化シグナルである。CRMは、シス調節モジュールを指す。SBS1/2は、Sangamo Biosciences 1および2を指す。TTRmは、トランスチレチン最小プロモーターを指す。SBSは、Sangamo Biosciencesを指す。SPは、シグナルペプチドを指す。ITRは、逆方向末端反復を指す。SPAは、合成ポリアデニル化配列を指す。GBAは、グルコセレブロシダーゼを指す。使用される肝臓特異的構築物は、米国特許出願第15/209,363号に詳述される。
【0051】
【
図13】
図13Aおよび13Bは、内因性アルブミン遺伝子座への標的化組込みの後の、工学的に操作されたアルファ-シヌクレイン単鎖抗体のin vivo産生を表すグラフである。
図13Aは、マウスへのアルブミン標的化ZFNおよびアルファ-シヌクレインD5E抗体ドナーの投与の後の、工学的に操作されたアルファ-シヌクレインD5E抗体の循環血漿中レベルを表すグラフである。表6に表すように、AAV2/8-ZFNおよびAAV2/8-ドナーを投与した。血漿収集スケジュールは、表7に概説した。
図13Bは、マウスへのアルブミン標的化ZFNおよびアルファ-シヌクレインD5E抗体ドナーの投与の後の、工学的に操作されたアルファ-シヌクレインD5E GBA抗体の循環血漿中レベルを表すグラフである。GBAは、グルコセレブロシダーゼを指す。表6に表すように、AAV2/8-ZFNおよびAAV2/8-ドナーを投与した。血漿収集スケジュールは、表7に概説した。
【0052】
【
図14】
図14Aおよび14Bは、in vivo遺伝子改変(%インデル)のレベルを表すグラフである。
図14Aは、28日および試験品投与後のマウス研究の%インデルを示し、
図14Bは試験品投与の56日後の%インデルを示す。コホート1(28日目)およびコホート2(56日目)を、表8に概説する。
【0053】
【
図15】
図15は、示された処置(ドナーおよび/またはZFN)を受けたアルファ-シヌクレイントランスジェニックline61マウスからの皮質の代表的な免疫組織化学像を示す。切片をGFAP(グリア線維酸性タンパク質)で、続いてHRPコンジュゲート二次抗体で染色し、DABで可視化した。アストログリオーシスの疾患エンドポイント、GFAPの低減は、本明細書に記載されるドナーおよび/またはZFN処置を受けたマウスで示される。
【0054】
【
図16】
図16Aおよび16Bは、D5E(+/-GBA)抗体転写物のin vivoレベルを表すグラフである。
図16Aは、肝臓において発現されるD5E(+/-GBA)抗体mRNAのレベルが、抗体の重鎖内に含有されるプライマー/プローブを使用して定量的RT-PCRによって測定されたことを示す。
図16Bは、肝臓において発現される内因性アルブミン-D5E(+/-GBA)融合物のmRNAのレベルが、定量的RT-PCRによって測定されたことを示す。5’プライマーおよびプローブは内因性マウスアルブミン遺伝子座の中に位置し、3’プライマーは工学的に操作されたD5E(+/-GBA)抗体ドナー重鎖の中に位置する。D5E(+/-GBA)抗体cDNAはアルブミンシグナルペプチドを含有し、したがって、プライマープローブは、組み込まれた抗体からのハイブリッドアルブミン-D5E(+/-GBA)mRNAと、D5E(+/-GBA)cDNA mRNAの両方も検出する。
【0055】
【
図17】
図17Aおよび17Bは、抗体レベルと皮質神経網および線条体における低減したアルファ-シヌクレインとの間の相関を示すグラフである。
図17Aは、皮質神経網におけるアルファ-シヌクレインの補正された光学密度と皮質における抗体レベル(mycによって表す)との間の比較を表すグラフである。製剤群を分析に含めた(除くと、有意性は増加した)p値=0.0448。
図17Bは、線条体におけるアルファ-シヌクレインの補正された光学密度と線条体における抗体レベル(mycによって表す)との間の比較を表すグラフである。製剤群を分析に含めた(除くと、有意性は増加した)p値=0.0399。
【0056】
【
図18】
図18Aおよび18Bは、アルファ-シヌクレイン陽性細胞およびアストログリオーシスマーカーGFAPのCNS蓄積の低減を示すグラフである。
図18Aは、皮質中のアルファ-シヌクレイン陽性ニューロンの分析を示す。cDNA抗体処置群の両方について皮質中のアルファ-シヌクレイン陽性ニューロンの総数の低減があったが、これはD5E GBA抗体cDNA群においてのみ統計的に有意であった。統計的差(
*)は、事後分析による一元配置ANOVAで決定されたp<0.05。
図18Bは、アストログリオーシスマーカーGFAPを調べた、全CNSの定量的RT-PCR分析の結果を示す。両cDNA群についてGFAPの低減があったが、D5E GBA抗体cDNA群においてのみ統計的に有意であった。p値=0.021。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書で、内因性遺伝子座で、例えばアルブミン遺伝子などのセーフハーバー遺伝子において抗体を発現させるための組成物および方法が開示される。トランスジェニック抗体は血流への分泌のために肝臓中のアルブミン遺伝子座で発現させることができ、または、イントラボディとして細胞の中で維持することができる。抗体の発現の調節は、発現スイッチによって調節することができる。抗体は、治療上の恩恵を提供する抗体を含む、任意の抗体をコードすることができる。
【0058】
したがって、本発明の方法および組成物は、分泌組織中の高度に発現される遺伝子座から治療的に有益な抗体タンパク質を(導入遺伝子から)発現させるために使用することができる。例えば、抗体導入遺伝子は、例えば血液の障害、および様々な他の一遺伝子性疾患の処置または予防のために有用な抗体としてコードすることができる。一部の実施形態では、抗体導入遺伝子は、抗体導入遺伝子の発現がアルブミン発現制御エレメントによって制御され、導入遺伝子でコードされる抗体の高い濃度での肝臓特異的発現をもたらすように、内因性アルブミン遺伝子座に挿入することができる。発現させることができる抗体は、腫瘍学、リウマチ学、移植および眼の疾患の処置において有用な、ある特定の抗原を標的にすることができる。
【0059】
さらに、分泌組織への最終的な植え込みで使用するために、任意の導入遺伝子を患者由来の細胞に、例えば患者由来の人工多能性幹細胞(iPSC)または他のタイプの幹細胞(非限定的なセットとして、胚性、造血性、神経または間葉性)に導入することができる。導入遺伝子は、アルブミン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子を限定されずに含むこれらの細胞中の、任意の目的領域に導入することができる。これらの改変された幹細胞は、例えば肝細胞に分化させて、肝臓に植え込むことができる。あるいは、導入遺伝子は、特異的組織を標的にするウイルス送達系または他の送達系を用いることにより、所望により分泌組織に向かわせることができる。例えば、送達ビヒクルとしての肝臓栄養(liver-trophic)アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターAAV8の使用は、特異的ヌクレアーゼが導入遺伝子と共送達されるときに所望の遺伝子座での導入遺伝子の組込みをもたらすことができる。
一般
【0060】
本明細書に開示される方法の実施、ならびに組成物の調製および使用は、別途指示がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNAおよび当技術分野の範囲内である関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、文献において詳細に説明される。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年および第3版、2001年;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、1987年および定期の最新版;シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY、Academic Press、San Diego;Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、第3版、Academic Press、San Diego、1998年;METHODS IN ENZYMOLOGY、第304巻、「Chromatin」(P.M. WassarmanおよびA. P. Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999年;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、第119巻、「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編)、Humana Press、Totowa、1999年を参照のこと。
定義
【0061】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は互換的に使用され、直鎖状または環状の立体配座の、および一本鎖または二本鎖の形のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限するものと解釈されるべきでない。これらの用語は、天然のヌクレオチドならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が修飾されるヌクレオチドの公知の類似体を包含することができる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有する;すなわち、Aの類似体はTと塩基対合する。
【0062】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられて、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または改変誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0063】
「結合」は、巨大分子の間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的、非共有結合的相互作用を指す。結合相互作用が全体として配列特異的である限り、該結合相互作用の全ての構成成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要があるわけではない。そのような相互作用は、10-6M-1またはそれより低い解離定数(Kd)によって一般的に特徴付けられる。「親和性」は、結合の強さを指す。結合親和性の増加はより低いKdと相関する。
【0064】
「結合性タンパク質」は、別の分子に非共有結合で結合することができるタンパク質である。結合性タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合性タンパク質)、RNA分子(RNA結合性タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合性タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合性タンパク質の場合、それはそれ自体に結合することができ(ホモダイマー、ホモトリマーなどを形成する)、および/またはそれは1つまたは複数の異なるタンパク質の1つまたは複数の分子に結合することができる
。結合性タンパク質は、1つより多いタイプの結合活性を有することができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質はDNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
【0065】
「ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質」(または、結合ドメイン)は、その構造が亜鉛イオンの配位を通して安定する結合ドメインの中のアミノ酸配列の領域である、1つまたは複数のジンクフィンガーを通して配列特異的な様式でDNAに結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質の中のドメインである。用語ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPとしてしばしば略される。
【0066】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、TALEの、そのコグネイト標的DNA配列への結合に関与する。単一の「反復単位」(「反復(repeat)」とも呼ばれる)は、長さが一般的に33~35アミノ酸であり、天然に存在するTALEタンパク質の中の他のTALE反復配列と少なくとも一部の配列相同性を示す。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第20110301073号を参照のこと。
【0067】
ジンクフィンガードメインおよびTALE結合ドメインは、例えば天然に存在するジンクフィンガータンパク質またはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の工学操作(engineering)(1つまたは複数のアミノ酸を改変する)を通して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「工学的に操作する」ことができる。したがって、工学的に操作されたDNA結合性タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。DNA結合性タンパク質を工学操作するための方法の非限定例は、デザインおよび選択である。デザインされたDNA結合性タンパク質は、そのデザイン/組成物が合理的な基準から主に生じる、天然に存在しないタンパク質である。デザインの合理的な基準には、既存のZFPおよび/またはTALEデザインおよび結合性データの情報を保存するデータベース中の情報を処理するための、置換規則およびコンピュータ化アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号;6,453,242号;および6,534,261号を参照のこと;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496および米国特許出願公開第20110301073号も参照。
【0068】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その産生がファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験プロセスから主に生じる、天然に見出されないタンパク質である。例えば、US5,789,538;US5,925,523;US6,007,988;US6,013,453;US6,200,759;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197;WO02/099084および米国特許出願公開第20110301073号を参照のこと。
【0069】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチドの間での遺伝情報の交換のプロセスを指す。この開示のために、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同組換え修復機構による細胞中の二本鎖切断の修復の間に起こるそのような交換の特殊化した形態を指す。このプロセスはヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経たもの)の鋳型修復に「ドナー」分子を使用し、「非交叉遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として様々に公知であるが、その理由は、それがドナーから標的への遺伝情報の伝達をもたらすからである。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むことなく、そのような伝達は、切断された標的とドナーとの間で形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、および/または、ドナーが標的の一部になる遺伝情報を再合成するために使用される「合成依存性鎖アニーリング」、および/または関連したプロセスに関与することができる。そのような特殊化したHRは標的分子の配列の変更をしばしばもたらし、そのため、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全体が標的ポリヌクレオチドに組み入れられる。
【0070】
本開示の方法では、本明細書に記載される1つまたは複数の標的化ヌクレアーゼは、所定部位の標的配列(例えば、細胞クロマチン)において二本鎖切断を生じさせ、切断領域のヌクレオチド配列と相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドを、細胞に導入することができる。二本鎖切断の存在により、ドナー配列の組込みを促進することが示された。ドナー配列は物理的に組み込まれてもよいし、または代わりに、ドナーポリヌクレオチドを、相同組換えによる切断の修復のための鋳型として使用し、細胞クロマチンへのドナーの場合のようにヌクレオチド配列の全部または一部の導入をもたらす。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列を改変することができ、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列へと変換することができる。したがって、用語「置き換える」または「置き換え」の使用は、1つのヌクレオチド配列の、別のものによる置き換え(すなわち、情報の意味での配列の置き換え)を表し、1つのポリヌクレオチドの、別のものによる物理的または化学的置き換えを必ずしも必要とするものではないことを理解することができる。
【0071】
本明細書に記載される方法のいずれでも、細胞の中のさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために、ジンクフィンガータンパク質またはTALENタンパク質のさらなる対を使用することができる。
【0072】
細胞クロマチン中の目的領域における配列の標的化組換えおよび/または置き換えおよび/または変更のための方法のある特定の実施形態では、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列による相同組換えによって変更される。切断の領域に相同性の配列が存在するならば、そのような相同組換えは細胞クロマチン中の二本鎖切断の存在によって刺激される。
【0073】
本明細書に記載される方法のいずれでも、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的領域のゲノム配列に相同的であるが同一でない配列を含有することができ、それによって相同組換えを刺激して、目的領域の中に同一でない配列を挿入することができる。したがって、ある特定の実施形態では、目的領域の配列に相同性であるドナー配列の部分は、置き換えられたゲノム配列と約80から99%(または、その間の任意の値)の間の配列同一性を呈示する。他の実施形態では、例えば、101個の連続した塩基対にわたってドナー配列とゲノム配列との間で1ヌクレオチドだけが異なる場合は、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は99%より高い。ある特定の場合には、新しい配列が目的領域に導入されるように、ドナー配列の非相同部分は、目的領域に存在しない配列を含有することができる。これらの場合には、非相同配列は、目的領域の配列に相同性または同一である、10~1,000塩基対(または、その間の任意の整数値)または1,000を超える任意数の塩基対の配列に一般的に隣接する。他の実施形態では、ドナー配列は第1の配列に非相同性であり、非相同組換え機構によってゲノムに挿入されている。
【0074】
本明細書に記載される方法のいずれも、目的の遺伝子(複数可)の発現を破壊するドナー配列の標的化組込みによる、細胞における1つまたは複数の標的配列の部分的または完全な不活性化のために使用することができる。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株も、提供される。
【0075】
さらに、本明細書に記載される標的化組込みの方法は、1つまたは複数の外因性配列を組み込むために使用することもできる。外因性核酸配列は、例えば、1つまたは複数の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意のタイプのコード配列もしくは非コード配列、ならびに1つまたは複数の制御エレメント(例えば、プロモーター)を含むことができる。さらに、外因性核酸配列は、1つまたは複数のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害性RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)など)を産生することができる。
【0076】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を限定されずに含む、様々な方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生をもたらし得る。ある特定の実施形態では、標的化二本鎖DNA切断のために融合ポリペプチドが使用される。
【0077】
「切断半ドメイン」は、第2のポリペプチド(同一のまたは異なる)と共に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第1および第2の切断半ドメイン」、「+および-切断半ドメイン」ならびに「右および左切断半ドメイン」は互換的に使用されて、二量体化する切断半ドメインの対を指す。
【0078】
「工学的に操作された切断半ドメイン」は、別の切断半ドメイン(例えば、別の工学的に操作された切断半ドメイン)と絶対ヘテロダイマー(obligate heterodimer)を形成するように改変された切断半ドメインである。参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第8,623,618号;8,409,861号;8,034,598号;7,914,796号;および7,888,121号も参照されたい。
【0079】
用語「配列」は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それはDNAまたはRNAであってもよく;直鎖状、環状または分枝状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。用語「ドナー配列」は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば2から10,000ヌクレオチド(または、その間のもしくはその上の任意の整数値)の間の長さ、好ましくは約100から1,000ヌクレオチド(または、その間の任意の整数)の間の長さ、より好ましくは約200から500ヌクレオチドの間の長さであってよい。
【0080】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造物である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。大多数の真核生物の細胞クロマチンはヌクレオソームの形で存在し、ここで、ヌクレオソームコアはヒストンH2A、H2B、H3およびH4の各々2つを含む八量体に会合した概ね150塩基対のDNAを含み;リンカーDNA(生物体によって様々な長さの)がヌクレオソームコアの間に延びる。ヒストンH1の分子は、リンカーDNAに一般的に会合している。本開示のために、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の両方の、全てのタイプの細胞核タンパク質の包含を意味するものである。細胞クロマチンには、染色体およびエピソームの両方のクロマチンが含まれる。
【0081】
「染色体」は、細胞のゲノムの全体または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、細胞のゲノムを含む全ての染色体の集合である、その核型によってしばしば特徴付けられる。細胞のゲノムは、1つまたは複数の染色体を含むことができる。
【0082】
「エピソーム」は、複製する核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む他の構造物である。エピソームの例には、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが含まれる。
【0083】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在することを条件に、結合性分子が結合する核酸の一部を規定する核酸配列である。
【0084】
「外因性」分子は、細胞に通常は存在しないが、1つまたは複数の遺伝的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞に導入することができる分子である。「細胞における正常な存在」は、細胞の特定の発達段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発達の間だけに存在する分子は、成体の筋細胞に関しては外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に関しては外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内因性分子の機能バージョンまたは正常機能内因性分子の機能不全バージョンを含むことができる。
【0085】
外因性分子は、とりわけ、小分子、例えばコンビナトリアル化学プロセスによって生成されるもの、または巨大分子、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の改変誘導体、または上記の分子の1つまたは複数を含む任意の複合体であってよい。核酸にはDNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であってよく、直鎖状、分枝状または環状であってよく、任意の長さであってよい。核酸には、二重鎖を形成することが可能な核酸ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合性タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合性タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、脱アセチル化酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、デユビキチナーゼ トポイソメラーゼ、ギラーゼおよびヘリカーゼが限定されずに含まれる。
【0086】
外因性分子は、内因性分子と同じ種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってよい。例えば、外因性核酸は、細胞に導入される感染性のウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞に通常は存在しない染色体を含むことができる。細胞への外因性分子の導入のための方法は当業者に公知であり、脂質媒介伝達(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介伝達およびウイルスベクター媒介伝達が限定されずに含まれる。外因性分子は内因性分子と同じ種類の分子であってもよいが、細胞が由来する種と異なる種に由来してもよい。例えば、マウスまたはハムスターに本来由来する細胞株に、ヒト核酸配列を導入することができる。
【0087】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下で特定の発達段階の特定の細胞に通常存在するものである。例えば、内因性の核酸は、染色体、ミトコンドリアのゲノム、クロロプラストもしくは他のオルガネラ、または天然に存在するエピソーム核酸を含むことができる。さらなる内因性分子には、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含めることができる。
【0088】
「融合」分子は、2つまたはそれより多いサブユニット分子が、好ましくは共有結合で連結される分子である。サブユニット分子は、同じ化学的タイプの分子であってよいか、または異なる化学的タイプの分子であってよい。第1のタイプの融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、タンパク質DNA結合ドメインと切断ドメインとの間の融合)、切断ドメインと作用的に会合したポリヌクレオチドDNA結合ドメイン(例えば、sgRNA)との間の融合、および融合核酸(例えば、融合タンパク質をコードする核酸)が限定されずに含まれる。
【0089】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって生じることができ、ここで、ポリヌクレオチドは転写され、転写物は翻訳されて融合タンパク質を生成する。細胞におけるタンパク質の発現において、トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチドライゲーションが関与することもできる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法は、本開示の他の場所で提示される。
【0090】
本開示のために、「遺伝子」は、遺伝子生成物(下を参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに、そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かを問わず、遺伝子生成物の産生を調節する全てのDNA領域を含む。したがって、遺伝子は、必ずしも限定されずに、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インシュレータ、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位および遺伝子座制御領域を含む。
【0091】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子生成物への変換を指す。遺伝子生成物は、遺伝子の直接転写生成物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他のタイプのRNA)、またはmRNAの翻訳によって生成されるタンパク質であってよい。遺伝子生成物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などのプロセスによって改変されるRNA、ならびに、例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリストイル化およびグリコシル化によって改変されるタンパク質も含まれる。
【0092】
遺伝子発現の「モジュレーション」は、遺伝子の活性の変化を指す。発現のモジュレーションには、遺伝子活性化および遺伝子抑制を限定されずに含めることができる。発現をモジュレートするために、ゲノム編集(例えば、切断、変更、不活性化、ランダム変異)を使用することができる。遺伝子不活性化は、本明細書に記載されるZFPまたはTALENを含まない細胞と比較したときの、遺伝子発現のいかなる低減も指す。したがって、遺伝子不活性化は部分的であるか、または完全であってもよい。
【0093】
「目的領域」は、外因性分子を結合させることが望ましい、例えば、遺伝子または遺伝子の中のもしくはそれに隣接した非コード配列などの細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えのためであってもよい。目的領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または、例えば感染性ウイルスゲノムに存在することができる。目的領域は、遺伝子のコード領域の中、例えばリーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの転写された非コード領域の中、または、コード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域の中にあってもよい。目的領域は、単一のヌクレオチド対と同じくらい小さくてもよく、または最高2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であってもよい。
【0094】
「真核生物」細胞には、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が限定されずに含まれる。
【0095】
「分泌組織」は、生成物を分泌する組織である。胃腸管に局在化する分泌組織の例には、腸、膵臓および胆嚢を覆う細胞が含まれる。他の分泌組織には、肝臓、B細胞、目と関連した組織および粘膜、例えば唾液腺、乳腺、前立腺、下垂体および内分泌系の他のメンバーが含まれる。さらに、分泌組織には、分泌が可能である組織型の個々の細胞が含まれる。
【0096】
用語「抗体」は、別の分子(例えば、抗原)またはその一部に結合することが可能な(本発明により、タンパク質に結合することが可能な)特異的タンパク質を指す。本用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、単鎖抗体(例えば、ScFv、ScFv-Fcなど)、ダイアボディ、イントラボディなどが限定されずに含まれる。
【0097】
用語「作用的連結」および「作用的に(operatively)連結する」(または、「作動可能に(operably)連結する」)は、2つまたはそれより多い構成成分(配列エレメントなど)の並置に関して互換的に使用され、ここで、構成成分は、両構成成分が正常に機能して、構成成分の少なくとも1つが他の構成成分の少なくとも1つにおいて発現する機能を媒介することができるということを可能にするように配置される。例証として、プロモーターなどの転写調節配列は、その転写調節配列が1つまたは複数の転写調節因子の存在または不在に応答してコード配列の転写のレベルを制御するならば、コード配列に作用的に連結されている。転写調節配列はコード配列と一般的にcisで作用的に連結するが、それと直接的に隣接する必要がない。例えば、たとえそれらが近接していなくても、エンハンサーはコード配列に作用的に連結している転写調節配列である。
【0098】
融合ポリペプチドに関して、用語「作用的に連結する」は、構成成分の各々が、そのように連結していない場合にそれがするだろうものと同じ機能を、他の構成成分と連結して実行するという事実を指すことができる。例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合している融合ポリペプチドに関して、融合ポリペプチドにおいて、ZFPまたはTALE DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができ、活性化ドメインが遺伝子発現を上方調節することができるならば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインおよび活性化ドメインは作用的に連結している。ZFPまたはTALE DNA結合ドメインが切断ドメインに融合している融合ポリペプチドの場合は、融合ポリペプチドにおいて、ZFPまたはTALE DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができ、切断ドメインが標的部位の近くでDNAを切断することができるならば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインおよび切断ドメインは作用的に連結している。
【0099】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一でないが、完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は対応する天然分子より多くの、より少ないまたは同じ数の残基を保有することができ、および/または1つまたは複数のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は、周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合性機能は、例えば、フィルター結合性、電気泳動移動性-シフトまたは免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断は、ゲル電気泳動によって試験することができる。上記、Ausubelらを参照のこと。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力は、例えば、共免疫沈降、2ハイブリッドアッセイまたは遺伝子的および生化学的の両方の相補性によって決定することができる。例えば、Fieldsら(1989年)Nature 340巻:245~246頁;米国特許第5,585,245号およびPCT WO98/44350を参照のこと。
【0100】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に移すことが可能である。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子導入ベクター」は、目的の遺伝子の発現に誘導することが可能であり、遺伝子配列を標的細胞に移すことができる任意の核酸構築物を意味する。したがって、本用語は、クローニングおよび発現ビヒクルならびに組込みベクターを含む。
【0101】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」は、好ましくはルーチンのアッセイにおいてとは限らないが、容易に測定されるタンパク質生成物を産生する任意の配列を指す。適するレポーター遺伝子には、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光性または発光性のタンパク質(例えば、緑色蛍光性タンパク質、強化された緑色蛍光性タンパク質、赤色蛍光性タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに強化された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)が限定されずに含まれる。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つまたは複数のコピーが含まれる。「発現タグ」には、目的の遺伝子の発現をモニタリングするために所望の遺伝子配列に作動可能に連結することができるレポーターをコードする配列が含まれる。
【0102】
「スイッチ」または「遺伝子スイッチ」は、導入遺伝子の発現を調節するために使用される任意の系を指す。一部の遺伝子スイッチは、小分子によってオンまたはオフのいずれかへ調節することができる。遺伝子スイッチの最も良く知られている例の1つは、tet-ONおよびtet-OFFとして知られるテトラサイクリン依存性の調節可能な遺伝子発現系である。これらの系では、導入遺伝子の発現調節は、2つのエレメントの相互作用によって制御される:目的の導入遺伝子の上流に挿入されるテトラサイクリン応答エレメント(TRE)、およびテトラサイクリンリプレッサータンパク質(TetR)。TetRはウイルスのトランス活性化因子VP16に融合され、tetRを活性化因子tTAに変換する。tTAは小分子インデューサー、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンに応答性であり、インデューサーの存在下で、tTA-インデューサーはTREに結合して発現を活性化すること(tet-ON)ができるか、または、tTA-インデューサーはTREに結合することができない(tet-OFF)。そのようなスイッチ系のin vivo使用は、導入遺伝子の発現が小分子の存在によって制御されることを可能にする(Goverdhanaら(2005年)Mol Ther 12巻(2号):189~211頁を参照のこと)。
別のスイッチ系は、そのリガンドに結合したときに立体配座を変更する小分子結合アプタマーを利用し、tet-OFF系と一緒に働く。細胞内で作用するようにデザインされるアプタマーはイントラマーとも呼ばれ、一部の実施形態では、イントラマー系の使用はin vivoで導入遺伝子を調節することができる。イントラマーは、そのリガンド(例えばテオフィリン)の存在下で、tTAおよびTREの相互作用を破壊し、したがって導入遺伝子の発現を阻害する核酸配列である(Auslanderら(2011年)NAR 39巻(22号):e155頁)。
ヌクレアーゼ
【0103】
本明細書で、導入遺伝子の挿入のための遺伝子を標的にするのに有益である組成物、特にヌクレアーゼ、例えばアルブミンに特異的なヌクレアーゼが記載される。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは天然に存在する。他の実施形態では、ヌクレアーゼは天然に存在しない、すなわち、DNA結合ドメインおよび/または切断ドメインにおいて工学的に操作される。例えば、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更することができる(例えば、コグネイト結合部位とは異なる部位に結合するように工学的に操作されたメガヌクレアーゼ)。他の実施形態では、ヌクレアーゼは異種DNA結合ドメインおよび切断ドメインを含む(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;TAL-エフェクターヌクレアーゼ;異種切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン、CRISPR/Casヌクレアーゼ系および/またはTtago系)。
A.DNA結合ドメイン
【0104】
本明細書に開示される方法において、任意のDNA結合ドメインを使用することができる。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択された標的部位に結合するように工学的に操作されている点で、天然に存在しない。例えば、Beerliら(2002年)Nature Biotechnol.20巻:135~141頁;Paboら(2001年)Ann. Rev. Biochem.70巻:313~340頁;Isalanら(2001年)Nature Biotechnol.19巻:656~660頁;Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol.12巻:632~637頁;Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol.10巻:411~416頁を参照のこと。工学的に操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。工学操作する方法には、合理的なデザインおよび種々のタイプの選択が限定されずに含まれる。合理的なデザインには、例えば、三つ組(または、四つ組)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各三つ組または四つ組ヌクレオチド配列は、特定の三つ組または四つ組配列に結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、共同所有される米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照のこと。
【0105】
ファージディスプレイおよび2ハイブリッド系を含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,410,248号;6,140,466号;6,200,759号;および6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の増強が、例えば、共同所有されるWO02/077227に記載されている。
【0106】
標的部位の選択;融合タンパク質(および、それをコードするポリヌクレオチド)のデザインおよび構築のためのZFPおよび方法は当業者に公知であり、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第20050064474号および第20060188987号に詳細に記載されている。
【0107】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば長さが5またはそれより多くのアミノ酸のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。長さが6またはそれより多くのアミノ酸の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質には、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。
【0108】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法は、ドナー分子への結合および/または細胞のゲノム中の目的領域への結合のために、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)DNA結合ドメインを用いる。天然に存在するメガヌクレアーゼは15~40塩基対の切断部位を認識し、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーに一般的に分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224~228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol.263巻:163~180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログも参照。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位に結合するように工学的に操作することができる。例えば、Chevalierら(2002年)Molec. Cell 10巻:895~905頁;Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res.31巻:2952~2962頁;Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656~659頁;Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49~66頁;米国特許出願公開第20070117128号を参照のこと。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ全体との関連で変更することができ(すなわち、ヌクレアーゼがコグネイト切断ドメインを含むように)、または異種切断ドメインに融合することができる。
【0109】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物で使用されるヌクレアーゼの1つまたは複数のDNA結合ドメインは、天然に存在するかまたは工学的に操作された(天然に存在しない)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第8,586,526号を参照のこと。Xanthomonas属の植物病原細菌は、重要な作物植物における多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonasの病原性は、植物細胞に25を超える異なるエフェクタータンパク質を注入する、保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。植物転写活性化因子を模倣して植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様(TAL)エフェクターは、これらの注入されるタンパク質の1つである(Kayら(2007年)Science 318巻:648~651頁を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最も良く特徴付けられたTALエフェクターの1つは、Xanthomonas campestgris pv.VesicatoriaからのAvrBs3である(Bonasら(1989年)Mol Gen Genet 218巻:127~136頁およびWO2010079430を参照のこと)。TALエフェクターはタンデムリピートの集中型ドメイン(centralized domain)を含有し、各リピートは概ね34アミノ酸を含有し、それらはこれらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要である。さらに、それらは核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(レビューについては、Schornack Sら(2006年)J Plant Physiol 163巻(3号):256~272頁を参照のこと)。さらに、植物病原細菌Ralstonia solanacearumでは、R.solanacearum次亜種1菌株GMI1000および次亜種4菌株RS1000において、XanthomonasのAvrBs3ファミリーに相同性である、brg11およびhpx17と呼ばれる2つの遺伝子が見出された(Heuerら(2007年)Appl and Envir Micro 73巻(13号):4379~4384頁を参照のこと)。これらの遺伝子はヌクレオチド配列がお互いと98.9%同一であるが、hpx17の反復配列ドメインにおける1,575bpが欠失している点で異なる。しかし、両遺伝子生成物は、XanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第8,586,526号を参照のこと。
【0110】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピートに見出される配列に依存する。反復配列は概ね102bpを含み、そのリピートはお互いと典型的にはに91~100%相同である(Bonasら、同上)。そのリピートの多型は通常12位および13位に位
置し、12位および13位の超可変二残基(hypervariable diresidues)(RVD)の同一性とTALエフェクターの標的配列の中の近接したヌクレオチドの同一性の間に1対1の対応があるようである(MoscouおよびBogdanove、(2009年)Science 326巻:1501頁およびBochら(2009年)Science 326巻:1509~1512頁を参照のこと)。実験的に、12位および13位のHD配列がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに、NNがAまたはGに結合し、INGがTに結合するように、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然のコードを決定した。これらのDNA結合リピートは、新しい配列と相互作用して、植物細胞中の非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子を作製するために、新しい組合せおよび多数のリピートを有するタンパク質に組み立てられた(Bochら、同上)。TALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を得るために、工学的に操作されたTALタンパク質をFokI切断半ドメインに連結した。例えば、米国特許第8,586,526号;Christianら(2010年)<Genetics epub 10.1534/genetics.110.120717)を参照のこと。ある特定の実施形態では、TALEドメインは、米国特許第8,586,526号に記載されるようにN-キャップおよび/またはC-キャップを含む。なおさらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、コンパクトなTALEN(cTALEN)を含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結する単鎖融合タンパク質である。TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに関して位置する場所に依存して、融合タンパク質は、TALE領域によって局在化されたニッカーゼとして作用することができるか、または二本鎖切断を生じることができる(Beurdeleyら(2013年)Nat Comm:1~8頁、DOI: 10.1038/ncomms2782を参照のこと)。任意のTALENを、さらなるTALEN(例えば、1つまたは複数のメガTALを有する1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN))と組み合わせて使用することができる。
【0111】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の一部、例えばDNA標的に結合するシングルガイドRNAである。例えば、米国特許第8,697,359号および米国特許出願公開第20150056705号を参照のこと。その系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化規則的散在性ショートパリンドロームリピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年、Mol. Microbiol.43巻:1565~1575頁;Makarovaら、2002年、Nucleic Acids Res.30巻:482~496頁;Makarovaら、2006年、Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら、2005年、PLoSComput. Biol.1巻:e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組合せ、ならびにCRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントを含有する。
【0112】
II型CRISPRは最も良く特徴付けられた系の1つであり、4つの逐次的ステップで標的化DNA二本鎖切断を実行する。先ず、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAはプレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプレcrRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン-クリック塩基対合を通して、Cas9を標的DNAに向けるが、これは、標的認識のためのさらなる要件である。最後に、Cas9は標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を生じさせる。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップで構成される:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける、将来の攻撃を防止するためのCRISPRアレイへのエイリアンDNA配列の挿入、(ii)関連するタンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、続いて(iii)エイリアン核酸に対するRNA媒介干渉。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかはCRISPR/Cas系の天然の機能に関与し、エイリアンDNAの挿入などの機能における役割を果たすなどである。
【0113】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能的誘導体」であってよい。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通した定性的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、天然配列の断片、天然配列ポリペプチドの誘導体およびその断片が限定されずに含まれるが、ただし、それらは対応する天然配列ポリペプチドと共通する生物学的活性を有する。本明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性改変物およびその融合物を包含する。Casポリペプチドの適する誘導体またはその断片には、Casタンパク質の変異体、融合物、共有結合性改変物またはその断片が限定されずに含まれる。Casタンパク質またはその断片、ならびにCasタンパク質の誘導体またはその断片を含むCasタンパク質は、細胞から、または化学して得ることができるか、あるいはこれらの2つの手順を組み合わせて得ることができる。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、または、Casタンパク質を天然に産生し、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように遺伝子操作されているか、もしくは、内因性Casと同じであるかまたは異なるCasをコードする、外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作されている細胞であってよい。一部の場合には、細胞はCasタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
【0114】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、TtAgo系の一部である(Swartsら、同上;Shengら、同上を参照のこと)。真核生物では、遺伝子サイレンシングはアルゴノート(Ago)ファミリーのタンパク質によって媒介される。このパラダイムでは、Agoは小さい(19~31nt)RNAに結合する。このタンパク質-RNAサイレンシング複合体は、小RNAと標的の間のワトソン-クリック型塩基対を通して標的RNAを認識し、標的RNAをエンドヌクレアーゼ的分解で(endonucleolytically)切断する(Vogel(2014年)Science 344巻:972~973頁)。対照的に、原核生物のAgoタンパク質は小さい一本鎖DNA断片に結合し、外来の(しばしばウイルスの)DNAを検出し、除去する機能をおそらく果たす(Yuanら、(2005年)Mol. Cell 19巻、405頁;Olovnikovら、(2013年)Mol. Cell 51巻、594頁;Swartsら、同上)。例示的な原核生物Agoタンパク質には、Aquifex aeolicus、Rhodobacter sphaeroidesおよびThermus thermophilusからのものが含まれる。
【0115】
最も良く特徴付けられた原核生物Agoタンパク質の1つは、T.thermophilusからのものである(TtAgo;Swartsら、同上)。TtAgoは、5’リン酸基で15ntまたは13~25ntの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoに結合するこの「ガイドDNA」は、タンパク質-DNA複合体がDNAの第三者分子中のワトソン-クリック相補的DNA配列に結合するように誘導する役目をする。これらのガイドDNA中の配列情報が標的DNAの同定を可能にしたら、TtAgo-ガイドDNA複合体は標的DNAを切断する。そのような機構は、その標的DNAに結合する間、TtAgo-ガイドDNA複合体の構造によっても支持される(G. Shengら、同上)。Rhodobacter sphaeroidesからのAgo(RsAgo)は、類似の特性を有する(Olivnikovら、同上)。
【0116】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAを、TtAgoタンパク質にロードすることができる(Swartsら、同上)。TtAgo切断の特異性はガイドDNAによって方向づけられるので、外因性の、調査者によって指定されたガイドDNAで形成されるTtAgo-DNA複合体は、したがって、TtAgo標的DNA切断を相補的な調査者によって指定された標的DNAに導く。この様に、DNAにおいて標的化二本鎖切断を生じさせることができる。TtAgo-ガイドDNA系(または、他の生物体からのオルソログのAgo-ガイドDNA系)の使用は、細胞の中でゲノムDNAの標的化切断を可能にする。そのような切断は、一本鎖または二本鎖であってよい。哺乳動物のゲノムDNAの切断のために、哺乳動物細胞での発現のために最適化されるバージョンのTtAgoコドンを使用するのが好ましいであろう。さらに、in vitroで形成されるTtAgo-DNA複合体で細胞を処理することが好ましい場合があり、ここで、TtAgoタンパク質は細胞貫通性ペプチドに融合される。さらに、37℃で改善された活性を有するように変異誘発を通して変更された、TtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago-RNA媒介DNA切断は、遺伝子ノックアウト、標的化遺伝子付加、遺伝子補正、DNA切断の活用のための当技術分野で標準の技術を使用した標的化遺伝子欠失を含む転帰の一式を実行するために使用できた。
B.切断ドメイン
【0117】
本明細書に記載されるヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Casヌクレアーゼ)は、ヌクレアーゼ(切断ドメイン、切断半ドメイン)も含む。ヌクレアーゼ(複数可)は、標的DNAにおいて二本鎖(DSB)または一本鎖切断(ニック)を誘導することができる。一部の実施形態では、2つのニッカーゼを使用して2つのニックを導入することによりDSBを生じさせる。一部の場合には、ニッカーゼはZFNであり、他の場合には、ニッカーゼはTALENまたはCRISPR/Casニッカーゼである。
【0118】
本明細書に開示される融合タンパク質の切断ドメイン部分は、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインを得ることができる例示的なエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが限定されずに含まれる。例えば、2002~2003年のカタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁を参照のこと。DNAを切断するさらなる酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;ミクロコッカルヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年も参照)。これらの酵素の1つまたは複数(または、その機能的断片)は、切断ドメインおよび切断半ドメインの供給源として使用することができる。
【0119】
同様に、上記のように、切断活性のために二量体化を必要とする切断半ドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその部分に由来することができる。一般に、融合タンパク質が切断半ドメインを含む場合は、2つの融合タンパク質が切断のために必要とされる。あるいは、2つの切断半ドメインを含む単一のタンパク質を使用することができる。2つの切断半ドメインは同じエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができ、または、各切断半ドメインは異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができる。
【0120】
さらに、2つの融合タンパク質のそれらのそれぞれの標的部位への結合が、切断半ドメインを、お互いとの空間配向に置き、切断半ドメインが例えば二量体化によって機能的切断ドメインを形成することを可能にするように、2つの融合タンパク質のための標的部位が、好ましくはお互いに関して配置される。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の近端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド分離している。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に介入することができる(例えば、2から50ヌクレオチド対、またはそれより多い)。一般に、切断部位は標的部位の間にあるが、切断部位から1~50塩基対(または、その間の任意の値)、1~100塩基対(または、その間の任意の値)、100~500塩基対(または、その間の任意の値)、500~1000塩基対(または、その間の任意の値)またはなお1kb超の値を含む、切断部位から1キロベースまたはそれより大きいキロベース離れて存在することができる。
【0121】
上記したように、例えばジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼからの切断ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼからの切断ドメイン、またはCRISPR/Cas系からのDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼからの切断ドメインなど、切断ドメインはDNA結合ドメインに対して異種であってよい。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインを誘導することができる例示的なエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが限定されずに含まれる。DNAを切断するさらなる酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓のDNアーゼI;ミクロコッカルヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ)。これらの酵素の1つまたは複数(または、それらの機能的断片)は、切断ドメインおよび切断半ドメインの供給源として使用することができる。
【0122】
同様に、上記のように、切断活性のために二量体化を必要とする切断半ドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその部分に由来することができる。一般に、2つの融合タンパク質が切断半ドメインを含む場合は、該2つの融合タンパク質が切断のために必要とされる。あるいは、2つの切断半ドメインを含む単一のタンパク質を使用することができる。2つの切断半ドメインは同じエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができ、または、各切断半ドメインは異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができる。さらに、2つの融合タンパク質のそれらのそれぞれの標的部位への結合が、切断半ドメインを、お互いとの空間配向に置き、切断半ドメインが、例えば二量体化によって機能的切断ドメインを形成することを可能にするように、2つの融合タンパク質のための標的部位が、好ましくはお互いに関して配置される。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の近端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド分離している。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に介入することができる(例えば、2から50ヌクレオチド対、またはそれより多い)。一般に、切断の部位は、標的部位の間にある。
【0123】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、DNA(認識部位で)に配列特異的に結合すること、および結合部位またはその近くでDNAを切断することが可能である。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から離れた部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Fok Iは、1本の鎖の上のその認識部位から9ヌクレオチドの位置、および他の鎖の上のその認識部位から13ヌクレオチドの位置で、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLiら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4275~4279頁;Liら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:2764~2768頁;Kimら(1994a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:883~887頁;Kimら(1994b)J. Biol. Chem.269巻:31,978~31,982頁を参照のこと。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、工学的に操作されてもされなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素からの切断ドメイン(または、切断半ドメイン)、および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0124】
その切断ドメインは結合ドメインと分離できる例示的なIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、ダイマーとして活性である。Bitinaiteら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:10,570~10,575頁。したがって、本開示のために、開示される融合タンパク質で使用されるFok I酵素の部分は、切断半ドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー-Fok I融合物を使用した標的化二本鎖切断および/または細胞配列の標的化置き換えのために、各々Fok I切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質を、触媒活性切断ドメインを再構成するために使用することができる。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断半ドメインを含有する単一のポリペプチド分子を使用することもできる。ジンクフィンガー-FokI融合物を使用した標的化切断および標的化配列変更のパラメータは、この開示の他の場所で提供される。
【0125】
切断ドメインまたは切断半ドメインは、切断活性を保持する、または多量体化(例えば、二量体化)して機能的切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であってよい。
【0126】
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み入れられる、国際公開WO07/014275に記載される。さらなる制限酵素も分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを含有し、これらは本開示によって企図される。例えば、Robertsら(2003
年)Nucleic Acids Res.31巻:418~420頁を参照のこと。
【0127】
ある特定の実施形態では、切断ドメインは、例えば、その全ての開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第8,623,618号;8,409,861号;8,034,598号;7,914,796号;および7,888,121号に記載される通り、ホモ二量体化を最小にするかまたは防止する1つまたは複数の工学的に操作された切断半ドメイン(二量体化ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。Fok Iの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537および538位のアミノ酸残基は、全て、Fok I切断半ドメインの二量体化に影響を与えるための標的である。
【0128】
絶対ヘテロダイマーを形成するFok Iの例示的な工学的に操作された切断半ドメインは、第1の切断半ドメインがFok Iの490および538位のアミノ酸残基の変異を含み、第2の切断半ドメインがアミノ酸残基486および499の変異を含む対を含む。
【0129】
したがって、一実施形態では、490での変異はGlu(E)をLys(K)で置き換え;538での変異はIso(I)をLys(K)で置き換え;486での変異はGln(Q)をGlu(E)で置き換え;499位での変異はIso(I)をLys(K)で置き換える。具体的には、本明細書に記載される工学的に操作された切断半ドメインは、1つの切断半ドメインの490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と呼ばれる工学的に操作された切断半ドメインを産生すること、ならびに、別の切断半ドメインの486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と呼ばれる工学的に操作された切断半ドメインを産生することによって調製された。本明細書に記載される工学的に操作された切断半ドメインは、異常な切断を最小にするかまたは無効にする絶対ヘテロダイマー変異体である。例えば、その開示は全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第7,888,121号を参照のこと。
【0130】
1つより多い変異を有する切断ドメインを使用することができ、例えば、1つの切断半ドメインにおける490位(E→K)および538位(I→K)の変異による、「E490K:I538K」と呼ばれる工学的に操作された切断半ドメインを生成すること、ならびに、別の切断半ドメインにおいて486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と呼ばれる工学的に操作された切断半ドメインを生成することによる;486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ、「ELD」ドメインおよび「ELE」ドメインとも呼ばれる);490位、538位および537位(野生型FokIに対して番号付けされる)における変異を含む工学的に操作された切断半ドメイン;例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で、および、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KKK」ドメインおよび「KKR」ドメインとも呼ばれる);ならびに/または、490位および537位(野生型FokIに対して番号付けされる)における変異を含む工学的に操作された切断半ドメイン、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、および、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KIK」ドメインおよび「KIR」ドメインとも呼ばれる)。例えば、その開示は全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第7,914,796号;第8,034,598号および第8,623,618号を参照のこと。他の実施形態では、工学的に操作された切断半ドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey」変異を含む(Guoら、(2010年)J. Mol. Biol.400巻(1号):96~107頁を参照のこと)。
【0131】
あるいは、ヌクレアーゼを、いわゆる「スプリット酵素」技術を使用して核酸標的部位にin vivoで組み立てることができる(例えば、米国特許出願公開第20090068164号を参照のこと)。そのようなスプリット酵素の構成成分は、別個の発現構築物の上で発現させることができるか、または1つのオープンリーディングフレームの中に連結させることもでき、ここで、個々の構成成分は、例えば、自己切断2AペプチドまたはIRES配列によって分離される。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであってよい。
【0132】
ヌクレアーゼは、使用前に、例えば米国特許第8,563,314号に記載される酵母をベースとした染色体系において、活性についてスクリーニングすることができる。
【0133】
Cas9関連のCRISPR/Cas系は、2つのRNA非コード構成成分を含む:tracrRNAおよび同一のダイレクトリピート(DR)が間に入るヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有するプレcrRNAアレイ。ゲノム工学操作を達成するためにCRISPR/Cas系を使用するために、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Congら、(2013年)Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照のこと)。一部の実施形態では、tracrRNAおよびプレcrRNAは、別個の発現構築物を通して、または別個のRNAとして供給される。他の実施形態では、キメラRNAが構築され、そこでは、工学的に操作された成熟crRNA(標的特異性を付与する)がtracrRNA(Cas9との相互作用を供給する)に融合して、キメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッド(シングルガイドRNAとも呼ばれる)を生み出す。(Jinek(2012年)Science 337巻(6096号):816~21頁およびCong(2013年)Science 339巻(6121号):819~23頁を参照のこと)。
標的部位
【0134】
上で詳細に記載されているように、DNAドメインは、遺伝子座、例えばアルブミン遺伝子または他のセーフハーバー遺伝子の選択された任意の配列に結合するように工学的に操作することができる。工学的に操作されたDNA結合ドメインは、天然に存在するDNA結合ドメインと比較して、新規の結合特異性を有することができる。工学操作方法には、合理的なデザインおよび様々な種類の選択が限定されずに含まれる。合理的なデザインには、例えば、三つ組(または、四つ組)ヌクレオチド配列および個々の(例えば、ジンクフィンガー)アミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各三つ組または四つ組ヌクレオチド配列は、特定の三つ組または四つ組配列に結合するDNA結合ドメインの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、共同所有される米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照のこと。TAL-エフェクタードメインの合理的なデザインを、実行することもできる。例えば、米国特許出願公開第20110301073号を参照のこと。
【0135】
DNA結合ドメインに適用可能なファージディスプレイおよび2ハイブリッド系を含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,410,248号;6,140,466号;6,200,759号;および6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。
【0136】
標的部位の選択;融合タンパク質(および、それをコードするポリヌクレオチド)のデザインおよび構築のためのヌクレアーゼおよび方法は当業者に公知であり、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第20050064474号および第20060188987号に詳細に記載されている。
【0137】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質)は、例えば5またはそれより多くのアミノ酸のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。長さが6またはそれより多くのアミノ酸の例示的なリンカー配列については、例えば、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号を参照のこと。本明細書に記載されるタンパク質には、タンパク質の個々のDNA結合ドメインの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。米国特許出願公開第20110301073号も参照されたい。
ドナー
【0138】
上記のように、例えば、変異体遺伝子の補正のための、あるいは野生型遺伝子の発現増加、または、好ましくは、1つもしくは複数の外因性抗体をコードする1つもしくは複数の導入遺伝子の組込みのための、障害の処置および/または予防のための、外因性配列(「ドナー配列」または「ドナー」とも呼ばれる)の挿入。本開示の方法および組成物において使用することができる抗体の非限定例には、以下のものが含まれる:がん抗原を認識する抗体;自己免疫状態、例えば関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、潰瘍性大腸炎、喘息、乾癬、糖尿病性網膜症、グレーブス病、橋本病、多発性硬化症、ループス、I型糖尿病、緑内障、視神経脊髄炎、血管炎および強皮症に関与するタンパク質を認識する抗体;増殖因子に結合する抗体ならびに/または神経学的および精神病学的障害(例えば、シヌクレイノパチー、例えばパーキンソン病および多系統萎縮、ならびにアルツハイマー病の処置のためのα-シヌクレイン)、疼痛(慢性疼痛および片頭痛を含む)、および/または骨関節炎に関与するタンパク質に結合する抗体。
【0139】
したがって、これらの状態を処置するのに有用な抗体標的(導入遺伝子から発現される抗体が結合する)の非限定例には、以下のものに結合する抗体が含まれる:1つまたは複数のがん抗原(例えば、CD20、CD22、CD19、CD33、CD40、CD52、CCR4、WT-1、HER2、CD137、OX40、EGFR、VEGF、EPCAM、アルファフェトプロテイン(AFP)、CEA、CA-125、Muc1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ(より広範なリストについては、PolanskiおよびAnderson(2006年)Biomarker Insights 2巻:1~48頁を参照のこと);PD1およ
びCTLA4(Sureshら(2014年)J Hematol Oncol 7巻:58頁)、がん/精巣(CT)抗原(例えば、MAGE-A-A4、MAGE-C1、SSX2、SSX4、NY-ESO-1、SCP1、CT7.NH-SAR-35、OY-TES-1、SLCO6A1、PASD1、CAGE-1、KK-LC-1);サイトカイン(IL-2、IL-8、IL-6R、IL-12、IL-23、IL-17、IL-22、IL-26、RANKL)、Jakキナーゼ阻害剤、TGF-β、α4β7インテグリン、α4β1インテグリン、TNFα、CD52、CD25、CD20、アネキシンA2、C1qを含む古典的補体経路に関与するタンパク質、増殖因子および/または脳および他の組織に見出されるタンパク質、例えばα-シヌクレイン、アミロイドβ(Aβ)、NGF、TrkA、CGRPおよび/もしくはNGF。例えば、Tanidaら(2015年)World J Gastro 21巻(29号):8776~86頁;Neurath(2014年)Nature 7巻(1号):6頁;Riceら(2015年)J Clin Invest 125巻(7号):2795頁;Palmer(2013年)Br J Clin Pharm 78巻(1号):33~43頁;Turnerら(2015年)Semin Cell Dev Biol.10月8日、pii: S1084-9521(15)00188-3. doi: 10.1016/j.semcdb.2015.10.003);Liuら(2015年)J Neuroinflam 12巻:153頁);Hiroseら(2015年)、Pain Pract doi:10.1111;Bigalら(2015年)Lancet Neurology 14巻(11号):1091頁、Gowら(2015年)Arthritis Res Ther doi:10.1186);CabelleroおよびChen(2009年)Cancer Sci 100巻(11号):2014~2021頁を参照のこと。抗体標的は、処置および/または予防すべき状態を有する被験体において異常に発現されてもまたは発現されなくてもく、例えばがん抗原およびα-シヌクレインなどのようなタンパク質が、がんまたはシヌクレイノパチーを有する被験体において異常に発現され得る。
【0140】
ドナー配列はそれが置かれるゲノム配列と一般的に同一でないことは、容易に明らかである。ドナー配列は、目的の位置で効率的なHDRを可能にするために、2つの相同領域が隣接した非相同性の配列を含有することができる。さらに、ドナー配列は、細胞クロマチンの目的領域に相同性でない配列を含有するベクター分子を含むことができる。ドナー分子は、細胞クロマチンに相同性のいくつかの不連続な領域を含有することができる。例えば、通常は目的領域に存在しない配列の標的化挿入については、前記配列がドナー核酸分子に存在して、目的領域の配列に相同性の領域に隣接することができる。
【0141】
ドナーポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAであってよく、一本鎖または二本鎖であってよく、直鎖状または環状の形で細胞に導入することができる。例えば、米国特許第8,703,489号および第9,255,259号を参照のこと。直鎖状の形態で導入される場合は、ドナー配列の末端は当業者に公知の方法によって(例えば、エキソヌクレアーゼ的分解による(exonucleolytic)分解から)保護することができる。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基が直鎖状分子の3’末端に付加され、および/または自己相補性オリゴヌクレオチドが片方または両方の末端にライゲーションされる。例えば、Changら(1987年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84巻:4959~4963頁;Nehlsら(1996年)Science 272巻:886~889頁を参照のこと。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法には、末端アミノ基(複数可)の付加および改変されたヌクレオチド間連結の使用、例えばホスホロチオエート、ホスホロアミデートおよびO-メチルリボースまたはデオキシリボース残基などが限定されずに含まれる。
【0142】
さらなる配列、例えば複製起点、プロモーターおよび抗生物質耐性をコードする遺伝子などを有するベクター分子の一部として、ポリヌクレオチドを細胞に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、裸の核酸として、リポソームもしくはポロキサマーなどの作用物質(agent)と複合体を形成した核酸として導入することができるか、または、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスおよびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達することができる。
【0143】
ドナーは、一般的にその発現が組込み部位で内因性プロモーターによって、すなわち、アルブミン遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように挿入される。しかし、ドナーはプロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターを含むことができることは明らかである。
【0144】
内因性遺伝子の全てか一部が発現されるかまたはそのいずれも発現されないように、ドナー分子を内因性遺伝子に挿入することができる。例えば、内因性アルブミン配列の一部が例えば導入遺伝子との融合物として発現されるか、またはいずれも発現されないように、本明細書に記載される導入遺伝子をアルブミン遺伝子座に挿入することができる。他の実施形態では、導入遺伝子(例えば、アルブミンコード配列を有するまたは有さない)は、任意の内因性遺伝子座、例えばセーフハーバー遺伝子座に組み込まれる。例えば、米国特許出願公開第20080299580号;第20080159996号および第201000218264号を参照されたい。
【0145】
アルブミン配列(内因性または導入遺伝子の一部)が導入遺伝子で発現されるとき、アルブミン配列は完全長配列(野生型または変異体)または部分配列であってよい。好ましくは、アルブミン配列は機能的である。これらの完全長または部分的アルブミン配列の機能の非限定例には、導入遺伝子(例えば、治療的遺伝子)によって発現されるポリペプチドの血清中半減期を増加させること、および/またはキャリアとして作用することが含まれる。
【0146】
さらに、発現のために必要とされないが、外因性配列には、転写または翻訳の調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インシュレータ、内部リボソーム侵入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列を含めることもできる。
送達
【0147】
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドならびに本明細書に記載されるタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の適する手段によってin vivoまたはex vivoで送達することができる。
【0148】
本明細書に記載されるヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、その全ての開示は参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,453,242号;6,503,717号;6,534,261号;6,599,692号;6,607,882号;6,689,558号;6,824,978号;6,933,113号;6,979,539号;7,013,219号;および7,163,824号に記載される。
【0149】
本明細書に記載されるヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物は、ジンクフィンガータンパク質またはTALENタンパク質の1つまたは複数をコードする配列を含有するベクターを使用して送達することもできる。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどを限定されずに含む、任意のベクター系を使用することができる。参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,534,261号;6,607,882号;6,824,978号;6,933,113号;6,979,539号;7,013,219号;および7,163,824号も参照。さらに、これらのベクターのいずれも、処置のために必要とされる配列の1つまたは複数を含むことができることは明らかである。したがって、1つまたは複数のヌクレアーゼおよびドナー構築物を細胞に導入するとき、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは同じベクターで、または異なるベクターで運ぶことができる。複数のベクターを使用するとき、各ベクターは1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物をコードする配列を含むことができる。
【0150】
ヌクレアーゼをコードする核酸およびドナー構築物を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入するために、従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を使用することができる。非ウイルス性のベクター送達系には、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系にはDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれ、それらは、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する。遺伝子治療手順のレビューについては、Anderson、Science 256巻:808~813頁(1992年);NabelおよびFelgner、TIBTECH 11巻:211~217頁(1993年);MitaniおよびCaskey、TIBTECH 11巻:162~166頁(1993年);Dillon、TIBTECH 11巻:167~175頁(1993年);Miller、Nature 357巻:455~460頁(1992年);Van Brunt、Biotechnology 6巻(10号):1149~1154頁(1988年);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8巻:35~36頁(1995年);KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin 51巻(1号):31~44頁(1995年);Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Boehm(編)(1995年);およびYuら、Gene Therapy 1巻:13~26頁(1994年)を参照のこ
と。
【0151】
核酸の非ウイルス性の送達方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオンおよび作用物質によって強化されたDNAの取込みが含まれる。例えばSonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションを、核酸の送達のために使用することもできる。
【0152】
さらなる例示的な核酸送達系には、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、MA)およびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるものが含まれる、(例えば、US6008336を参照のこと)。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号;4,946,787号;および4,897,355号に記載され、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションのために適するカチオン性および中性脂質には、Felgner、WO91/17424、WO91/16024のものが含まれる。
【0153】
免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal、Science 270巻:404~410頁(1995年);Blaeseら、Cancer Gene Ther.2巻:291~297頁(1995年);Behrら、Bioconjugate Chem.5巻:382~389頁(1994年);Remyら、Bioconjugate Chem.5巻:647~654頁(1994年);Gaoら、Gene Therapy 2巻:710~722頁(1995年);Ahmadら、Cancer Res.52巻:4817~4820頁(1992年);米国特許第4,186,183号、4,217,344号、4,235,871号、4,261,975号、4,485,054号、4,501,728号、4,774,085号、4,837,028号および4,946,787号を参照のこと)。
【0154】
送達のさらなる方法には、送達する核酸をEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)にパッケージすることの使用が含まれる。これらのEDVは、二重特異的抗体の1つのアームが標的組織への特異性を有し、他方がEDVへの特異性を有する二重特異的抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体はEDVを標的細胞表面に運び、次に、EDVはエンドサイトーシスによって細胞に運ばれる。細胞に入ると、内容物は放出される(MacDiarmidら(2009年)Nature Biotechnology 27巻(7号):643頁を参照
されたい)。
【0155】
工学的に操作されたZFPをコードする核酸の送達のための、RNAウイルスベースのまたはDNAウイルスベースの系の使用は、体内の特異的細胞にウイルスを向かわせて、核にウイルスのペイロードを輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接的に(in vivoで)投与することができるか、または、それらは細胞をin vitroで処置するために使用することができ、改変された細胞は患者に(ex vivoで)投与される。ZFPの送達のための従来のウイルスベースの系には、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ワクシニアベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターが限定されずに含まれる。宿主ゲノムへの組込みは、レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルス遺伝子導入方法で可能であり、挿入される導入遺伝子の長期発現をしばしばもたらす。さらに、多くの異なる細胞型および標的組織において、高い形質導入効率が観察された。
【0156】
外来のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的標的集団を拡張することによって、レトロウイルスの向性を変更することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させ、高いウイルス力価を一般的にもたらすことができるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最高6~10kbの外来配列のためのパッケージング能力を有するシス作用性ロングターミナルリピートで構成される。ベクターの複製およびパッケージングのために最小限のシス作用性LTRが十分であり、それらは次に、恒久的導入遺伝子発現を提供するために標的細胞の中に治療的遺伝子を組み込むために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくものおよびそれらの組合せが含まれる(例えば、Buchscherら、J. Virol.66巻:2731~2739頁(1992年);Johannら、J. Virol.66巻:1635~1640頁(1992年);Sommerfeltら、Virol.176巻:58~59頁(1990年);Wilsonら、J. Virol.63巻:2374~2378頁(1989年);Millerら、J. Virol.65巻:2220~2224頁(1991年);PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0157】
一過性の発現が好まれる適用では、アデノウイルスをベースにした系を使用することができる。アデノウイルスをベースにしたベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターで、高い力価および高レベルの発現が得られた。このベクターは、比較的単純な系において大量に産生することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、例えば、核酸およびペプチドのin vitro産生において、ならびにin vivoおよびex vivoの遺伝子治療手順のために、標的核酸で細胞を形質導入するためにも使用される(例えば、Westら、Virology 160巻:38~47頁(1987年);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin、Human Gene Therapy 5巻:793~801頁(1994年);Muzyczka、J. Clin. Invest.94巻:1351頁(1994年)を参照のこと。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol.5巻:3251~3260頁(1985年);Tratschinら、Mol. Cell. Biol.4巻:2072~2081頁(1984年);HermonatおよびMuzyczka、PNAS 81巻:6466~6470頁(1984年);およびSamulskiら、J. Virol.63巻:03822~3828頁(1989年)を含む、いくつかの刊行物に記載されている。
【0158】
臨床試験での遺伝子導入のために少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが今日利用でき、それらは、形質導入剤を生成するためにヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠損ベクターの補完を含むアプローチを利用する。
【0159】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験で使用されたレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood 85巻:3048~305頁(1995年);Kohnら、Nat. Med.1巻:1017~102頁(1995年);Malechら、PNAS 94巻:22 12133~12138頁(1997年))。PA317/pLASNは、遺伝子治療治験で使用された最初の治療的ベクターであった。(Blaeseら、Science 270巻:475~480頁(1995年))。MFG-Sパッケージベクターで、50%またはそれより高い形質導入効率が観察された。(Ellemら、Immunol Immunother.44巻(1号):10~20頁(1997年);Dranoffら、Hum. Gene Ther.1巻:111~2頁(1997年)。
【0160】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損非病原性パルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づく有望な代替遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV 145bp逆方向末端反復だけを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組込みに起因する効率的な遺伝子導入および安定した導入遺伝子送達は、このベクター系の鍵となる特徴である。(Wagnerら、Lancet 351巻:9117 1702~3頁(1998年)、Kearnsら、Gene Ther.9巻:748~55頁(1996年))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV8.2、AAV9、AAV rh10ならびにAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6などの偽型化AAVを含む他のAAV血清型を、本発明に従って使用することもできる。
【0161】
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高い力価で産生することができ、いくつかの異なる細胞型を容易に感染させることができる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1bおよび/またはE3遺伝子を置き換えるように工学的に操作され、その後、複製欠損ベクターは欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増殖する。Adベクターは、肝臓、腎臓および筋肉において見出されるものなどの非分裂、分化細胞を含む、複数の種類の組織をin vivoで形質導入させることができる。従来のAdベクターは、大きな運搬能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド治療を含んだ(Stermanら、Hum. Gene Ther.7巻:1083~9頁(1998年))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例には、Roseneckerら、Infection 24巻:1 5~10頁(1996年);Stermanら、Hum. Gene Ther.9巻:7号、1083~1089頁(1998年);Welshら、Hum. Gene Ther.2巻:205~18頁(1995年);Alvarezら、Hum. Gene Ther.5巻:597~613頁(1997年);Topfら、Gene Ther.5巻:507~513頁(1998年);Stermanら、Hum. Gene Ther.7巻:1083~1089頁(1998年)が含まれる。
【0162】
パッケージング細胞は、宿主細胞を感染させることが可能であるウイルス粒子を形成するために使用される。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージするψ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、ウイルス粒子に核酸ベクターをパッケージするプロデューサー細胞株によって通常生成される。ベクターは、パッケージングおよび以降の宿主への組込み(適用可能な場合)のために必要とされる最小限のウイルス配列を一般的に含有し、他のウイルス配列は発現させるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられる。欠落しているウイルスの機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、宿主ゲノムへのパッケージングおよび組込みのために必要であるAAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列を一般的に所有するだけである。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするが、ITR配列を欠いているヘルパープラスミドを含有する細胞株にパッケージされる。細胞株は、ヘルパーとしてアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して、有意な量でパッケージされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性である熱処理によって低減することができる。
【0163】
多くの遺伝子治療適用では、遺伝子治療ベクターが特定の組織型に高度の特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外部表面のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって所与の細胞型に対して特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型に存在することが公知である受容体に親和性を有するように選択される。例えば、Hanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92巻:9747~9751頁(1995年)は、モロニーマウス白血病ウイルスは、gp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変することができること、および組換えウイルスは、ヒト上皮増殖因子受容体を発現するある特定のヒト乳がん細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス-標的細胞対に拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、選択される事実上いかなる細胞受容体に特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示するように、工学的に操作することができる。上の記載はウイルスベクターに主に適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取込みを有利にする、特異的取込み配列を含有するように工学的に操作することができる。
【0164】
遺伝子治療ベクターは、下記のように、一般的に全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内注入)または局所適用による、個々の患者への投与によってin vivoで送達することができる。あるいは、ベクターは、細胞に、例えば個々の患者から外植される細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、組織生検)、または汎用性ドナー造血幹細胞にex vivoで送達することができ、続いて、通常ベクターを取り込んだ細胞の選択の後に、細胞を患者に再移植することができる。
【0165】
ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)は、in vivoでの細胞の形質導入のために、生物体に直接的に投与することもできる。あるいは、裸のDNAを投与することができる。投与は、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される、注射、注入、局所適用およびエレクトロポレーションを限定されずに含む経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者に利用可能であり、周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路を使用することができるが、特定の経路が別の経路より速く(immediate)、より有効な反応をしばしば提供することがで
きる。
【0166】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドの導入のために好適なベクターには、非組込み型のレンチウイルスベクター(IDLV)が含まれる。例えば、Oryら(1996年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻:11382~11388頁;Dullら(1998年)J. Virol.72巻:8463~8471頁;Zufferyら(1998年)J. Virol.72巻:9873~9880頁;Follenziら(2000年)Nature Genetics 25巻:217~222頁;米国特許出願公開第2009/054985号を参照のこと。
【0167】
薬学的に許容されるキャリアは、一部において、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、下記のように、医薬組成物の多様な、適する製剤が利用可能である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、1989年を参照のこと)。
【0168】
ヌクレアーゼコード配列およびドナー構築物は、同じまたは異なる系を使用して送達することができることは明らかである。例えば、ドナーポリヌクレオチドはプラスミドによって運ぶことができ、一方、1つまたは複数のヌクレアーゼはAAVベクターによって運ぶことができる。さらに、異なるベクターは、同じまたは異なる経路によって投与することができる(筋肉内注射、肝臓に直接的に(例えば、尾静脈注射)、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射)。ベクターは、同時に、または任意の逐次的な順序で送達することができる。
【0169】
ex vivoおよびin vivo投与の両方のための製剤には、液体または乳化液体の懸濁液が含まれる。有効成分は、薬学的に許容され、有効成分に適合する賦形剤としばしば混合される。好適な賦形剤には、例えば、水、食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せが含まれる。さらに、組成物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤または医薬組成物の効果を増強する他の試薬を含有することができる。
適用
【0170】
本発明の方法および組成物は、任意の状況において使用することができ、ここで、抗体が膜貫通ドメインに接続した標的化細胞から分泌され、および/または標的細胞の中のイントラボディとして発現されるように、抗体をコードする導入遺伝子を供給することが望ましい。したがって、この技術は、患者が治療抗体で予防または処置できる状態を有する状態で有用である。患者の免疫系をがん細胞に向かわせるのを助けるために、および免疫モジュレータを弱めるために抗体療法が使用される免疫障害において、がん抗原に対する抗体の発現が本発明で特に有益である。好ましい実施形態には、抗体導入遺伝子の発現を調節するための、小分子制御発現スイッチの使用が含まれる。このタイプの構築物は、定期的な再発によって特徴付けられる疾患の場合に利用することができ、そこにおいて、抗体の発現をオンにすることは再発の重症度および持続時間を減弱させるのを助け得る。他の好ましい実施形態では、抗体は、抗体が血液脳関門を通過するのを可能にするペプチドを含む。これらの抗体は、タウオパチー(例えばアルツハイマー病)、パーキンソン病、多系統萎縮またはリソソーム蓄積症に関連した症状などの脳障害の処置のために有用であり得る。
【0171】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはCRISPR/Cas系を含む本開示の例示的な実施形態に関する。これは例示だけが目的であること、ならびに、他のヌクレアーゼを、例えばTALENと、工学的に操作されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、および/または天然に存在するもしくは工学的に操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(naturally occurring of engineered homing endonucleases)(メガヌクレアーゼ)DNA結合ドメインと異種切断ドメインの融合物を使用することができることが理解される。
【実施例】
【0172】
(実施例1)
アルブミン遺伝子を標的にした工学的に操作されたヌクレアーゼのデザイン、構築および特徴付け
ジンクフィンガータンパク質は、マウスアルブミン遺伝子のイントロン1内の切断部位を標的にするようにデザインされた(米国特許出願公開第20130177983号および第20160060656号を参照のこと、下の表1にも示す)。基本的にUrnovら(2005年)Nature 435巻(7042号):646~651頁、Perezら(2008年)Nature Biotechnology 26巻(7号):808~816頁に記載の通りに、および米国特許第6,534,261号に記載の通りに、対応する発現構築物を組み立てて、プラスミド、AAVまたはアデノウイルスベクターに組み入れた。表1は、例示的なマウスアルブミン特異的ZFPのDNA結合ドメイン内の認識ヘリックスを示し、表2はこれらのZFPのための標的部位を示す。ZFP認識ヘリックスに接触する標的部位のヌクレオチドは、大文字で示され、接触しないヌクレオチドは小文字で示される。
【0173】
ヒトアルブミン遺伝子のイントロン1を標的にするために、S.pyogenesのCRISPR/Cas9系のためのガイドRNAも構築した。さらなるアルブミン標的化ガイドRNAについては、米国特許出願公開第201500566705号も参照されたい。下の表3に、アルブミン遺伝子中の標的配列ならびにガイドRNA配列が示される。他のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALENなど)を表3に示す標的部位に対してデザインすることもできることは明らかである。
【表1】
【表2】
【表3】
(実施例2)
アルブミン特異的ヌクレアーゼの活性
【0174】
マウス細胞の内因性標的配列を切断する能力について表1のZFN対を試験し、活性であることが示された(米国特許出願公開第20160060656号)。
【0175】
ヒトアルブミン特異的CRISPR/Cas9系は、ヒトK562細胞で試験した。CRISPR/Cas9系の活性は、MiSeq分析によって測定した。Cas9による内因性アルブミンDNA配列の切断は、ハイスループット配列決定(Miseq、Illumina)によってアッセイし、結果は下の表4に示す。結果は「パーセントインデル」で表し、ここで、「インデル」は、ヌクレアーゼ誘導二本鎖切断部位での誤りがちなNHEJ修復プロセスの結果として見出される小さい挿入および/または欠失を意味する。
【0176】
これらの実験において、Cas9はpVAXプラスミドに供給され、sgRNAはU6プロモーターの制御下でプラスミドに供給された。プラスミドは各々100ngまたは各々400ngで混合し、一回につき2e5細胞と混合した。細胞は、Amaxa系を使用してトランスフェクトさせた。簡潔には、Amaxaトランスフェクションキットを使用し、標準のAmaxaシャトルプロトコールを使用して核酸をトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞を室温で10分の間静止させ、その後予め温めておいたたRPMIに再懸濁した。次に、細胞を、37℃の標準条件で増殖させた。トランスフェクションの7日後にゲノムDNAを単離し、MiSeq分析にかけ、結果は下の表4に示す。
【0177】
データから分かるように、異なるガイドRNAの活性は、標的化部位での切断を全て誘導した。
【表4】
(実施例3)
マウスアルブミン遺伝子座への組換えscFvの挿入
【0178】
C6.5抗体ドナー構築物は、ヒト抗c-erbB-2免疫グロブリン重鎖V領域についてはGenbank配列U36542.1に基づき、ヒト抗c-erbB-2免疫グロブリン軽鎖V領域についてはU36541.1に、ならびに特許出願公開WO1997000271に基づいた。(Schierら(1995年)、Immunotechnology、73~81頁;Schierら、(1996年)J. Mol. Biol.、255巻、28~43頁;Schierら、(1996年)J Mol. Biol.、263巻、551~567頁も参照)。全体的C6.5抗体ドナー構造は、左右のマウスアルブミンイントロンホモロジーアーム、スプライスアクセプター、ポリA、ならびにC末端のmycおよびFlagエピトープタグを含んで、
図2から3に概説した通りであった。C末端のマウス血清アルブミン(MSA)融合物またはC末端のヒト血清アルブミン(HSA)融合物(
図3Cおよび3Dを参照のこと)については、MSAまたはHSAがC末端のmyc-Flagタグの後に付加された。MSAまたはHSAは、成熟したアルブミンコード領域(プロペプチドおよびシグナルペプチドを欠く)をコードした。
【0179】
アルファ-シヌクレイン抗体ドナー構築物は、アルファ-シヌクレインD5E単鎖抗体についてはGenbank配列JX442980.1に、ヒトアポリポタンパク質B-100低密度リポタンパク質(ApoB LDL)残基3371~3409についてはGenbank X0506.1およびSwi-Prot P04114.2に基づいた。アルファ-シヌクレインD5E構築物は、ApoB LDLRの後にC末端のmyc-Flagタグを全て有し、一例では、Flagは3X-Flagで置き換えられた。ApoB LDLRをコードする核酸配列および得られたアミノ酸配列は、以下の通りである:
【0180】
核酸配列:
5’TCATCTGTCATTGATGCACTGCAGTACAAATTAGAGGGCACCACAAGATTGACAAGAAAAAGGGGATTGAAGTTAGCCACAGCTCTGTCTCTGAGCAACAAATTTGTGGAGGGTAGT(配列番号25)
【0181】
アミノ酸配列:
N’SSVIDALQYKLEGTTRLTRKRGLKLATALSLSNKFVEGS(配列番号26)。
【0182】
次に、標準技術により、ドナーをAAV2/6またはAAV2/8粒子にパッケージした。
【0183】
発現された抗体の検出のために、Hepa1-6細胞上清またはマウス血漿中に分泌されたC6.5抗体のレベルは、C6.5抗体ドナーの上のC末端のmyc-Flagタグを利用するカスタム仕様のELISAを使用して決定した。pH9.4の0.2M炭酸塩重炭酸塩緩衝液(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)中の4μg/mLのマウスモノクローナル抗FlagM2抗体(Sigma Aldrich、St.Louis MO)を用い、1ウェル当たり100μL(最終400ng/ウェル)を使用して、96ウェルストリッププレート(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を4℃で一晩コーティングした。
【0184】
翌日、1×TBST(VWR International、Radnor PA)を使用して、プレートを洗浄した。ブロッキング緩衝液(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を使用して、96ウェルプレートを次に室温で2時間ブロッキングし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。Hepa1-6細胞からの上清(または、in vivo研究では血漿)をプレートに加え、振盪しながら室温で2時間インキュベートし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。ウサギモノクローナルmyc-ビオチン(Cell Signaling Technology、Danvers MA)を加え(ブロッキング緩衝液で1:1000に希釈した)、室温で1時間インキュベートし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。ポリ-ストレプトアビジンHRP(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を加え(ブロッキング緩衝液で1:5000に希釈した、最終100ng/mL)、室温で1時間インキュベートし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。TMBウルトラ(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を加え、10分間進展させ、停止液で反応を停止し、プレートリーダーを使用して450nMで吸光度を読み取った。バックグラウンド吸光度読取りは、無視できた(一般的に0)。
【0185】
Her2標的へのC6.5分泌抗体の結合は、カスタム仕様のELISAを使用して決定した。pH9.4の0.2M炭酸塩重炭酸塩緩衝液(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)中の1μg/mLのHer2細胞外ドメイン(ECD)残基23~652(Novus Biologicals、Littleton CO)を用い、1ウェル当たり100μL(最終100ng/ウェル)を使用して、96ウェルストリッププレート(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を4℃で一晩コーティングした。翌日、1×TBST(VWR International、Radnor PA)を使用して、プレートを洗浄した。ブロッキング緩衝液(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を使用して、96ウェルプレートを次に室温で1.5時間ブロッキングし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。Hepa1-6細胞からの上清をプレートに加え、振盪しながら室温で2時間インキュベートし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。ウサギモノクローナルmyc-ビオチン(Cell Signaling Technology、Danvers MA)をブロッキング緩衝液で1:1000希釈して加え、室温で1時間インキュベートし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。ポリ-ストレプトアビジンHRP(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を加え(ブロッキング緩衝液で1:5000に希釈した、最終100ng/mL)、室温で1時間インキュベートし、続いて1×TBSTで3回洗浄した。TMBウルトラ(Pierce Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を加え、10分間進展させ、停止液で反応を停止し、プレートリーダーを使用して450nMで吸光度を読み取った。バックグラウンド吸光度読取りは、無視できた(一般的に0)。
【0186】
in vitro研究のために、製造業者のガイドライン(ATCC、Manassas VA)により、マウスHepa1-6細胞を維持した。実験日に、Hepa1-6細胞を洗浄し、トリプシン処理し、計数した。使用したZFNは、マウスアルブミンイントロン遺伝子座、左のSBS48641および右のSBS31523に対するものであった。製造業者の推奨(Ambion、Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)に従ってmMessageマシンキットを使用して、in vitroでZFN mRNAを転写した。ZFNはエレクトロポレーション(Amaxa Lonza、Walkersville MD)またはトランスフェクション(Lipofectamine2000、Invitrogen Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)のいずれかによってmRNAとして送達し、続いて時間0と表したその後まもなく、AAV2/6 C6.5抗体ドナーを添加した。使用した一般的な反応は、24ウェルディッシュの1ウェル当たり2E+05細胞について、25~200ngのZFN mRNAおよびAAV2/6 C6.5抗体ドナーMOI 60K~2400Kであった。翌日、培地を交換した。ZFN mRNAおよびAAV2/6ドナーの添加後t4からt10日までの範囲の様々な時点で上記のレベルおよび/またはHer2結合ELISAを使用して、分泌されたC6.5抗体について上清を分析した。
【0187】
結果は
図5、6および7に表し、ここで、
図5は抗体単独として産生された抗体を示し、
図6はscFv-アルブミンまたはダイアボディ-アルブミン融合タンパク質として産生された抗体を示す。
図7は、この系における抗シヌクレイン抗体の良好な発現を表す。結果は、これらの細胞のアルブミン遺伝子座から抗体が発現されて、細胞培地に分泌されたことを実証する。
【0188】
in vivo研究のために8から10週齢のC57BL/6マウスを使用し、ヌクレアーゼおよび導入遺伝子(
図11では「試験品」で表した)を投与した。研究は、動物の人道的管理と使用のための動物福祉法に従った。投与の前に試験品を室温で解凍し、
図11に概説される通り、全ての動物は200μLの単一の静脈内(IV)注射を受けた。使用したZFNは、マウスアルブミンイントロン遺伝子座、左のSBS48641および右のSBS31523に対するものであった(上の表1)。C6.5抗体ドナーは
図11に概説され、これらの構築物のアセンブリーは上に記載される。用量は1:1:8(ZFN:ZFN:ドナー)であり、1.5E+11が各ZFNのために使用され、1.2E+12がドナー、全てのAAV2/8ウイルスのために使用された。全ての動物は、0日目および14日目にシクロホスファミドの200μLのフォローアップ腹腔内注射を受けた。下の表5に概説するように非最終(non-terminal)および最終血液採取を実行し、処理手順を下に記載する。
【表5】
【0189】
血漿 - 7日目(非最終)および28日目(最終)に全てのマウスから血液を採取した。14、21および27日目に、第1群の三匹(3匹)のマウスおよび第2~7群の四匹(4匹)のマウスから血液を採取した。17および24日目に、第1群の残りの三匹(3匹)のマウスおよび第2~7群の残りの四匹(4匹)のマウスから血液を採取した。クエン酸ナトリウムを含有するチューブに全ての血液を採取し、血漿へと処理した。非最終血液採取物は、下顎骨下静脈または後眼窩洞を通して採取した。屠殺時の血液採取物は、心臓穿刺または大静脈を通して採取した。血漿を分離し、上記のELISAアッセイで使用するまで-60~-80℃で保存した。
【0190】
肝臓 - 全ての動物は28日目に屠殺し、肝臓および脾臓を採取して計量した。肝臓の左外側葉を分離し、3つの断片に分割し、肝臓の残りとは別に液体窒素中で急速冷凍した。残りの肝葉および脾臓(全体)を、液体窒素中で急速冷凍した。RNA/DNA抽出のために処理するまで、冷凍検体を-60~-80℃で保存した。
【0191】
結果(
図8を参照のこと)は、組換え抗Her2抗体がマウスの血清で検出可能なことを実証した。ゲノム変更の量(NHEJ活性ならびにドナー配列の組込みを含むことができるインデルとして測定した)を決定するためにも肝臓組織を研究し、それは、工学的に操作されたヌクレアーゼおよびドナーDNAの両方を受けたマウスにおいて、インデルが概ね50%までのレベルで存在したことを示した。
【0192】
したがって、抗体コード導入遺伝子は、in vivo投与の後に発現された。
(実施例4)
in vivo研究
A.方法
【0193】
マウス:Line61アルファ-シヌクレイントランスジェニックマウスモデルは、全ての脳領域におけるThy1プロモーターによって駆動されるヒトアルファ-シヌクレインの過剰発現によって特徴付けられる。系統のバックグラウンドは、C57BL/6およびDBAである。Line61からのマウスは、脳全体に分布する、パーキンソン病(PD)および散在性レビー小体病(DLB)患者の脳で観察されるものと類似の神経細胞内アルファ-シヌクレイン封入体を発生させる。
【0194】
in vivo研究(試験品は表6に表す)のために、概ね2~3ケ月齢のLine61アルファ-シヌクレイントランスジェニックマウスを使用した。
【表6-1】
【表6-2】
【0195】
研究は、動物の人道的管理と使用のための動物福祉法に従った。投与の前に試験品を室温で解凍し、表6に概説される通り、類似の試験品を使用した以前の研究によって使用された方法を反映するためにIP(腹腔内)注射された陽性対照を除いて、全ての動物は200μLの単一の静脈内(IV)注射を受けた(Spencerら、Molecular Therapy 2014年)。
【0196】
使用したZFNは、マウスアルブミンイントロン遺伝子座、左のSBS48641および右のSBS31523に対するものであった。例えば、米国特許出願公開第20160060656号を参照のこと。アルファ-シヌクレインD5E ScFv抗体ドナーおよびアルファ-シヌクレインD5E ScFv cDNAは、
図12に概説する。用量は1:1:8(ZFN:ZFN:ドナー)であり、1.5E+11vg/マウスが各ZFNのために使用され、1.2E+12vg/マウスがドナー、全てのAAV2/8ウイルスのために使用された。cDNAの用量は、1.8E+11vg/マウスであった。表7に概説するように、非最終および最終血液採取を行った。VGは、ベクターゲノムを表す。陽性対照は、Spencerら、同上、で使用された試験品に基づいた。
【表7-1】
【表7-2】
【0197】
免疫染色:マウス屠殺の後に、脳を取り出し、矢状方向に(sagitally)分割し、半分を瞬間冷凍し、半分を4%パラホルムアルデヒドに固定した。固定した脳をビブラトームにより40μm厚の切片にし、抗α-シヌクレイン(SYN1)、抗GFAP、抗NeuNまたは抗mycでプローブした(工学的に操作されたアルファ-シヌクレインD5E抗体を検出するために)。切片をZeiss Imager A2で画像化し、Zeiss Zenソフトウェアで光学密度を決定した。共免疫蛍光については、0.23μm光学切片を用いる共焦分析のために、Zeiss Axio Imager M2を使用した。各マウスについて、合計3つの切片を分析し、各切片について3視野を調べた。ばらつきを低減するために、全ての切片は同じ条件の下で同時に処理した。
【0198】
血漿採取:表6に概説するように非最終および最終血液採取を実行した。7、21、28、42、56日目に、非最終血液(約50~100μL)をマウスから採取した。28日目(コホート1について)および56日目(コホート2について)に、最終血液を採取した。K2-EDTAを含有するチューブ(紫色のチューブ)に全ての血液を採取し、血漿へと処理した。非最終血液採取物は、下顎(mandibal)を通して採取した。屠殺時の血液採取物は、下顎(manidibal)を通して採取した(200~500μL)。採取した血液の概ね半分である血漿は、-60℃から-80℃で保存し、循環するアルファ-シヌクレイン単鎖抗体レベルを測定するために使用した。非最終採取のための血漿容量は概ね50~100μLであり、急速冷凍してから-60℃から-80℃で保存した。
【0199】
百分率(%)インデル(挿入および/または欠失):FastPrep and Lysing Matrix D(MP Biomedicals、Santa Ana CA)を製造業者の指示通りに使用して、マウス組織を溶解した。AllPrep DNA/RNAキットを製造業者の指示(Qiagen、Carlsbad CA)通りに使用して、マウス組織からRNA/DNAを単離した。抽出したDNAをPCRおよびディープシークエンシングのために使用して、マウスアルブミン遺伝子座でインデルを測定した。表8は、コホート1(28日目に屠殺)およびコホート2(56日目に屠殺)を示す。
【表8】
B.結果
【0200】
図13に示すように、マウスへのアルブミン標的化ZFNおよびアルファ-シヌクレインD5E抗体コードドナーのin vivo投与の後の、アルファ-シヌクレインD5E抗体の循環血漿中レベルは、全ての処置被験体で増加した。さらに、28日および56日に、ZFNおよびアルファシヌクレインドナーの両方を受けた被験体において、ゲノム改変(%インデルで決定された)が見られた。
図14を参照のこと。
【0201】
免疫組織化学は、視床のニューロンによるアルファ-シヌクレイン単鎖抗体の取込みを示した。特に、アルファ-シヌクレイン単鎖抗体(ScFvはmycタグ付きである)およびNeuNを検出するための、mycを有するアルファ-シヌクレイントランスジェニックLine61マウスからの視床の二重免疫蛍光染色は、ZFN-アルファシヌクレインドナーのニューロンがアルファ-シヌクレインScFv(myc陽性)およびNeuNの両方を含むことを示した。さらに、
図15に示すように、アルブミン標的化アルファ-シヌクレインドナーを有するマウスは、アストログリオーシス疾患エンドポイント、GFAPの低減を示した。
図16は、定量的RT-PCRによって決定される通り、肝臓におけるD5E(+/-GBA)抗体転写物のin vivoレベルの増加を示し、
図17は、抗体レベルと皮質神経網および線条体における低減したアルファ-シヌクレインレベルとの間の相関を示す。
図18は、D5E GBA抗体cDNA処置群における、アストログリオーシスマーカーGFAPのアルファ-シヌクレイン陽性細胞のCNS蓄積の低減、および皮質におけるアルファ-シヌクレイン陽性ニューロンの総数の低減を示す。したがって、ScFVをコードする遺伝子の付加は、肝臓細胞から発現および放出され、脳に移動して治療的利益を提供することができる。
【0202】
したがって、本明細書に記載される抗体(例えば、単鎖抗体)導入遺伝子の標的化送達は、in vivoで臨床上の(治療的)利益を提供する。
【0203】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願および公開は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0204】
理解の明快性のために開示は例証および例として多少詳細に提供されたが、本開示の精神または範囲から逸脱せずに様々な変更および改変を実施することができることは当業者に明らかである。したがって、上記の記載および実施例は限定するものと解釈されるべきでない。
本願は以下の態様にも関する。
(1)被験体の脳において抗体を発現させるための組成物であって、前記組成物が、
(i)抗体をコードする導入遺伝子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、および(ii)1対のジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする配列を含む1または2以上のAAVベクターによって改変された、
ヒト胚性幹細胞ではない単離された肝臓細胞または幹細胞を含み、
前記導入遺伝子が前記細胞に組み込まれ、および前記細胞が前記抗体を産生し分泌するように、前記1対のジンクフィンガーヌクレアーゼが、前記細胞中の内因性アルブミン遺伝子を切断し、
前記抗体が被験体の脳において発現されるタンパク質に結合する、組成物。
(2) 前記タンパク質が、がん抗原、細胞受容体、サイトカイン、増殖因子、増殖因子受容体、キナーゼ阻害剤、インテグリン、α-シヌクレイン、アミロイドタンパク質および補体タンパク質からなる群から選択される、上記(1)に記載の組成物。
(3) 前記導入遺伝子の発現が内因性アルブミンプロモーターによって駆動される、上記(1)に記載の組成物。
(4) 前記導入遺伝子が、導入遺伝によりコードされ、および内因性アルブミン遺伝子によりコードされるアミノ酸を含む融合タンパク質である、上記(1)に記載の組成物。
(5) 前記AAVベクターが、AAV2ベクターである、上記(1)に記載の組成物。
(6) 前記AAV2ベクターが、AAV2/6ベクターまたはAAV2/8ベクターである、
上記(5)に記載の組成物。
(7) 前記抗体が単鎖可変断片(scFv)、イントラボディまたはダイアボディである、(1)に記載の組成物。
(8) 哺乳動物被験体の脳におけるニューロンへ抗体を投与する方法における使用のための組成物であって、前記方法が被験体に、
(i)抗体をコードする導入遺伝子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、および(ii)1対のジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする配列を含む1または2以上のAAVベクターによって修飾された、
ヒト胚性幹細胞ではない単離された肝臓細胞または幹細胞を投与することを含み、
前記抗体をコードする導入遺伝子が前記肝臓細胞に組み込まれ、および前記肝臓細胞が抗体を産生し分泌し、前記抗体が前記哺乳動物被験体の脳におけるニューロンに取り込まれるように、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼが、前記肝臓細胞中の内因性アルブミン遺伝子を切断する、組成物。
(9) 前記抗体が単鎖可変断片(scFv)、イントラボディまたはダイアボディである、(8)に記載の組成物。
(10) タンパク質に結合する前記抗体は、がん抗原、細胞受容体、サイトカイン、増殖因子、増殖因子受容体、キナーゼ阻害剤、インテグリン、α-シヌクレイン、アミロイドタンパク質および補体タンパク質からなる群から選択される、上記(8)に記載の組成物。
(11) 前記導入遺伝子の発現が内因性アルブミンプロモーターによって駆動される、上記(8)に記載の組成物。
(12) 前記導入遺伝子が、導入遺伝子および内因性アルブミン遺伝子によりコードされるアミノ酸を含む融合タンパク質である、上記(8)に記載の組成物。
(13) 前記(i)および(ii)のAAVベクターは、同時または任意の逐次的な順序で投与される、上記(8)に記載の組成物。
(14) 前記AAVベクターが、AAV2ベクターである、上記(8)に記載の組成物。
(15) 前記AAV2ベクターが、AAV2/6ベクターまたはAAV2/8ベクターである、上記(14)に記載の組成物。
【配列表】