IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォンダッツィオーネ・テレソンの特許一覧 ▶ フォンダッツィオーネ・セントロ・サン・ラッファエーレの特許一覧 ▶ オスペダーレ・サン・ラッファエーレ・エッセエッレエッレの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】操作された樹状細胞の生産及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240524BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240524BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20240524BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240524BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240524BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240524BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240524BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240524BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/12 ZNA
C12N15/24
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N5/0783
A61K35/15
A61P37/06
A61P37/08
A61P3/10
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P21/04
A61P11/06
A61P43/00 105
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021520459
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019066284
(87)【国際公開番号】W WO2019243461
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】18178595.7
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511197958
【氏名又は名称】フォンダッツィオーネ・テレソン・エティエッセ
(73)【特許権者】
【識別番号】520503599
【氏名又は名称】フォンダッツィオーネ・セントロ・サン・ラッファエーレ
(73)【特許権者】
【識別番号】517423431
【氏名又は名称】オスペダーレ・サン・ラッファエーレ・エッセエッレエッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・アンノーニ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィア・アドリアーナ・グレゴーリ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/024895(WO,A1)
【文献】Gagliani N. et al.,Nat Med,2013年,Vol. 19,pp. 739-46
【文献】Koch N. et al.,Immunol Today,2000年,Vol. 21,pp. 546-50
【文献】Matsuda R. et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci,2012年,Vol. 53,pp. 7235-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
A61K35/00-39/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸構築物で修飾されている、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞であって、前記構築物が、
- MHCIIと相互作用する配列としてCLIPを含むヒトインバリアント鎖であって、少なくとも1つの抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片に融合したヒトインバリアント鎖からなるキメラタンパク質をコードする、核酸配列a)であって、第1のプロモーターに機能可能に連結され、及び、第1の転写調節配列に連結された、又は、連結されない、核酸配列a)、
並びに、
- IL-10である少なくとも1つの免疫調節タンパク質をコードする核酸配列b)であって、第2のプロモーターに機能可能に連結された、又は、連結されない、及び、第2の転写調節配列に機能可能に連結された、又は連結されない、核酸配列b)
を含む、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項2】
配列a)が、その3’末端に、miR155及びmiR146aから選択される少なくとも1つのmiRNA標的配列を更に含む、請求項1に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項3】
前記第1のプロモーター及び第2のプロモーターが同一であるか又は異なる、請求項1又は2に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項4】
前記核酸構築物が、マーカーをコードする配列を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項5】
ヒトインバリアント鎖がlip33、lip41、lip35、又はlip43である、請求項1から4のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項6】
前記抗原性ペプチド又は抗原性タンパク質又はその抗原性断片が、自己抗原及び/又は無害な抗原及び/又はアレルゲンに由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項7】
前記抗原性ペプチド又は抗原性タンパク質又はその抗原性断片が、Table 2(表2)に記載される免疫優性ペプチドの群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項8】
前記核酸構築物が、ベクターに挿入されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項9】
医学的使用のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞を含む組成物。
【請求項10】
移植片対宿主病、臓器拒絶、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性又は自己炎症性疾患、遺伝子療法によって誘発される免疫応答からなる群から選択される状態の予防及び/又は治療のための請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
自己免疫疾患が、1型糖尿病、自己免疫性腸症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、自己免疫性筋炎、乾癬、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本病、重症筋無力症、血管炎、悪性貧血、セリアック病、自己免疫性肝炎、円形脱毛症、尋常性天疱瘡、白斑、再生不良性貧血、自己免疫性ぶどう膜炎、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)、強直性脊椎炎、抗GBM腎炎、抗リン脂質症候群、変形性関節症、自己免疫性活動性慢性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、バロー病、ベーチェット病、バージャー病、水疱性類天疱瘡、心筋症、慢性疲労免疫不全症候群、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、大腸炎、頭蓋動脈炎、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、皮膚筋炎及びJDM、デビック病、湿疹、本態性混合型クリオグロブリン血症、好酸球性筋膜炎、線維筋痛-線維筋炎、線維化性肺胞炎、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー疾患、ギラン・バレー症候群、橋本病、肝炎、ヒューズ症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、川崎病、扁平苔癬、ルポイド肝炎、ループス/SLE、ライム病、メニエール病、混合性結合組織病、筋炎:若年性筋炎(JM)、若年性皮膚筋炎(JDM)、及び若年性多発性筋炎(JPM)、骨粗しょう症、扁平部炎、尋常性天疱瘡、多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、レイノー症候群、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、強膜炎、強皮症、粘性血液症候群、スティル病、スティッフマン症候群、シデナム舞踏病、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、並びにウィルソン症候群からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
自己免疫疾患が、1型糖尿病、自己免疫性腸症、又は自己免疫性ぶどう膜炎である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
アレルギー性疾患が、喘息、アトピー性アレルギー、又はアトピー性皮膚炎である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
炎症性又は自己炎症性疾患が慢性炎症性疾患である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
慢性炎症性疾患が、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
タンパク質補充療法に対する免疫応答の予防のための、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
- MHCIIと相互作用する配列としてCLIPを含むヒトインバリアント鎖であって、少なくとも1つの抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片に融合したヒトインバリアント鎖からなるキメラタンパク質をコードする核酸配列a)であって、第1のプロモーターに機能可能に連結され、及び、第1の転写調節配列に連結された、又は、連結されない、核酸配列a)
並びに、
- IL-10である少なくとも1つの免疫調節タンパク質をコードする核酸配列b)であって、第2のプロモーターに機能可能に連結された、又は、連結されない、第2の転写調節配列に機能可能に連結された、又は、連結されない、核酸配列b)
を含む、核酸構築物。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸構築物を含むベクター。
【請求項19】
レンチウイルスベクターであり、Vpxを発現するエンベロープウイルス粒子を使用して生産され、及び/又は、CD47の発現を低下させるように遺伝子操作されているパッケージング細胞を使用して生産される、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
請求項1から8のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞を生産するためのインビトロでの方法であって
a.PBMCからCD14+細胞を単離する工程であって、前記PBMCは対象から単離されたものである工程
b.前記単離されたCD14+細胞と有効量のVpxとをインキュベートする工程、
c.前記単離されたCD14+細胞に、請求項18又は19に記載のベクターを形質導入する工程
を含む、インビトロでの方法。
【請求項21】
工程cが、有効量の少なくとも1つの作用物質の存在下で行われる、請求項20に記載のインビトロでの方法。
【請求項22】
作用物質が、IL-4又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)又はIL-10である、請求項21に記載のインビトロでの方法。
【請求項23】
IL-4、GM-CSF、及びIL-10の量が、1から1000ngの間である、請求項22に記載のインビトロでの方法。
【請求項24】
PBMCが、末梢血から、又は白血球除去療法から単離される、請求項20から23のいずれか一項に記載のインビトロでの方法。
【請求項25】
ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項20から24のいずれか一項に記載のインビトロでの方法。
【請求項26】
請求項20から25のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能な、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞。
【請求項27】
IL-10を生産するCD49b+LAG-3+Tr1細胞を生産するための、インビトロでの方法であって、
a)対象の血液サンプルからPBMCを単離する工程、
b)前記単離されたPBMCを、適切な培養条件下で、有効量の請求項1から8又は26のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞に曝露させる工程
を含む、インビトロでの方法。
【請求項28】
PBMC:遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆体の比が、5:1から10:1の間である、請求項27に記載のインビトロでの方法。
【請求項29】
請求項1から8及び26のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された細胞及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項30】
治療物質を更に含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つの抗原由来ペプチド及び少なくとも1つの免疫調節分子を発現する遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆体、その医学的使用、並びに調製方法に関する。本発明はまた、IL-10を生産するCD49b+LAG-3+Tr1細胞又は抗原特異的FOXP3+T細胞を生産するためのインビトロでの方法、並びに関連する医学的使用及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原(Ag)特異的な病原性T細胞応答を選択的に制御する及びT細胞介在性の疾患におけるトレランスを促進する/回復させるように設計された新規なアプローチの同定は、ヒトにおける自己免疫疾患の管理及び臓器移植のための意欲的目的の1つである。この流れで、「逆ワクチン接種」又は「寛容原性ワクチン接種」とも呼ばれる新規な形のワクチン接種は、不応答性の免疫学的状態を誘発すること又は回復させることを目的としており、これは、異種抗原(すなわち、タンパク質治療薬、アレルゲン、若しくは導入遺伝子)又は自己抗原のいずれかに対するものであり得る(1)。寛容原性戦略の全体的な目的は、抗原特異的なTeff細胞の欠失/阻害/逸脱を介して、不都合な応答を弱めること、並びに、フォークヘッドボックスP3(FOXP3)を発現する制御性T細胞(Treg)(FOXP3+Treg)(2)又はIL-10を生産する1型制御性T(Tr1)細胞(3)のいずれかである抗原特異的なTregの誘発及び/又は増殖をサポートすることである。以下のような多くの異なるアプローチが、逆ワクチン接種として提案されてきている。
i)異なる細胞集団を標的化するモノクローナル抗体(すなわち、抗CD3、抗CD20、抗CD52、CTLA-4Ig)若しくは炎症誘発性サイトカイン(すなわち、抗TNFα、抗IL-1β)での、又は免疫調節化合物(すなわち、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル)での、非抗原特異的な免疫療法、
ii)自己抗原又はアレルゲンでの抗原特異的な免疫療法。
【0003】
寛容原性戦略の主体として、制御性細胞が細胞療法ツールとして提案されている。揃ってきているエビデンスによって、天然の又は実験的に誘発された、異なる樹状細胞(DC)小集団が、組織のホメオスタシスの維持及び免疫寛容の促進において重要な役割を有すること((4~7)において概説されている)、したがって、制御性細胞として作用することが示されている。DCの制御能力はその未成熟状態に依存し、免疫抑制性メディエーター、遺伝子操作、又は他の免疫細胞からのシグナルによって誘発され得る。寛容原性DC(tolDC)は抗原を提示し、抗原特異的T細胞をプライムし、そして、抗原特異的Tregの誘発もし得る(8)。tolDCの、並びにこれらの誘発、活性、及び柔軟性を制御するメカニズムの生物学についてのより良い理解は、インビトロでのtolDCの生成に適したプロトコルの開発と共に、これらの使用を免疫介在性疾患における免疫療法として解釈することの可能性を開いた(8~12)。DCは、i)抗原特異的なTregを促進する、ii)抗原特異的な病原性T細胞を調節する、iii)長期の抗原特異的な不応答性の維持を持続させる抗炎症性メディエーターに富んでいる寛容原性微小環境を生じさせるため、抗原特異的免疫寛容を促進する/回復させるという目的を達成するための最適な寛容原性細胞である。原理証明臨床試験は、これまで完了しているところでは、臓器移植後の移植片拒絶の予防において、及び自己免疫疾患において、tolDCに基づく免疫療法の安全性及び実現可能性を実証した(10、11、13~15)。しかし、注入されたDCの安定性及びこれらの寛容原性特性の維持は依然として、DCに基づく成功裏の細胞療法の安全性及び有効性を改善するための未解決の課題である。
【0004】
最適なtolDCは、活性化していない状態で、又は抗炎症性サイトカイン若しくは阻害分子に富んだ微小環境で、抗原を提示しなければならない。これらの状態を安定化させるために、本発明者らは、安定且つ有効な寛容原性DCの生成を確実にする、最先端のレンチウイルスベクター(LV)技術に基づいた新規な戦略の使用を提案する。レンチウイルスベクター(LV)はヒトDC前駆体に形質導入し(16)、強力且つ永続的な抗腫瘍T細胞応答を誘発する(17)。更に、LV介在性のDC形質導入は、DC活性化の状態を大きくは変化させず(18)、このことは、免疫原性DC又は寛容原性DCを生成するためにLV介在性の安定且つ効率的な抗原提示を利用することの可能性をサポートしている。これまで、LVは、免疫原性DCに基づく治療法のためにDCを遺伝子修飾するために使用されてきている。腫瘍関連抗原をコードするLVを形質導入されたDCは、腫瘍特異的CD8+T細胞を生成する(17)。LVを形質導入されたDCによるCD4+T細胞のプライミングは、LVがコードする抗原がMHCクラスII提示経路にアクセスする場合にのみ生じる。オボアルブミン(OVA)と融合したインバリアント鎖(Ii)をコードするLV(LV.IiOVA)が、インビボで注射されてDCに形質導入され、このDCは、コードされるOVAをMHCクラスIIの状況において提示しOVA特異的なCD4+T細胞を促進する能力を獲得した(19)。DCに形質導入するための、直接的なインビボでのLV投与は、細胞操作を必要としない、及び、ベクター自体が、アジュバント効果をもたらす急性炎症を引き起こすという、いくつかの利点をもたらすが、細胞標的化の高い特異性はもたらし得ない。逆に、インビトロでのLV介在性のDC形質導入は、オフターゲットの形質導入を最小化することによって、及び移入された細胞の寿命が限られていることによって、安全性を大きく改善することができる。更に、インビトロで生成された、LVを形質導入されたDCの投与によって、繰り返しの細胞投与が可能となる。
【0005】
多くの作用物質が、インビトロでヒトtolDCを分化させるために利用されている(20)。インビボで使用するための最適な寛容原性DCを規定するために、インビトロで分化したtolDCの異なる亜集団の、これらの安定性、サイトカイン生産プロファイル、及び抑制活性を調べる比較分析が最近報告された(20、21)。結果は、IL-10調節型の成熟DCが、寛容原性DCに基づく治療法のための最適な細胞であることを示した。本発明者らのグループは、IL-10を、強力な寛容原性DCの分化を促進するための鍵となる因子として同定することに寄与し、IL-10の存在下で末梢血単球からインビトロで誘発され得、大量のIL-10を分泌する能力を特徴とする、DC-10という名の細胞小集団を記載した。DC-10は、HLA-G、ILT3、及びILT4を含む一組の免疫調節分子を発現する成熟骨髄細胞であり、これらの免疫調節分子によって、DC-10は、インビトロで抗原特異的Tr1細胞の強力な誘導因子となる(22、23)。DC-10は、活性化されてもそれらの寛容原性活性を維持するため、安定な細胞である(24)。興味深いことに、自己DC-10でのアレルゲン特異的T細胞の刺激は、IL-10を生産する抑制性T細胞へのこれらの変換を促進し(25)、このことは、DC-10が、エフェクターT細胞をTregに変換するための良好な候補であることを示している。IL-10の過剰発現は、マウス骨髄由来のDCをtolDCに変換し、tolDCは、インビボで移入させると、アレルギー性接触性皮膚炎を予防する(26)。DCに寛容原性特性を付与するための代替的な候補は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)、トリプトファン異化酵素、いくつかの病的状態における免疫調節因子の誘発である。IDOの発現は、形質細胞様DC及び骨髄DCを含む抗原提示細胞において、いくつかの手段によって促進されている((27)、WO2013/040552、WO2018037108、及びWO2017192786)。概して、これらの方法は、処置された細胞において、IDOの安定且つ持続性の過剰発現を促進しない。
【0006】
臨床医の主要な目的の1つは、臓器移植後の移植片拒絶を予防するための代替的な処置を同定することである。同種臓器移植後の拒絶を予防するために使用される免疫抑制療法処置の改善は、急性拒絶の制限において利益を示すが、長期の免疫抑制レジメンに伴う副作用(以下のTable 1(表1)の承認薬を参照されたい)は、慢性的な生着不全の主な原因の1つである。標準的な免疫抑制レジメンが効果的である。しかし、これらのレジメンには、多くの副作用を伴う長期の処置が必要であり、腎臓移植された患者を含む移植された患者の現在の余命は、依然として、一般的な集団の余命と比較して著しく短い(van Sandwijk MSら、Neth J Med. 2013)。免疫抑制処置は毎日行われ、1年で14000ドルの費用がかかる。
【0007】
【表1】
【0008】
制御性細胞免疫療法に基づく代替療法は、ここ10年間で臨床段階に入っており、その目的は、減量型の免疫抑制である(28)。とりわけ、制御性T細胞(Treg)に基づく治療法である。これまで、移植片拒絶を予防するための、新たに単離された又はインビトロで増殖させたポリクローナルTregを使用する、最大30の異なる臨床試験が、完了しているか又は進行中である(29)。Tregに基づく治療法での進行中の臨床試験は、アプローチの安全性及びある程度の臨床的利益を実証した。しかし、以下のようないくつかの未解決の課題が依然としてある:
- インビトロで増殖したポリクローナルTregが、インビボで全体的免疫抑制を仲介する可能性(30);この理由から、抗原特異的Tregを生成してこの副作用を制限するために、前臨床研究が進行中である、
- 注入されたTregが、インビボで強力な炎症状態で不安定化され、そして病原性エフェクターT細胞の表現型及び機能を採り、これによって、移植片拒絶を恐らく仲介する可能性;感染及び悪性腫瘍に対する妨害性の免疫性に対する、持続性のTregの全体的な影響(29)。
【0009】
Tregに基づく治療法のための興味深い代替的及び補足的アプローチの代表は、骨髄制御性細胞(MRC)に基づく治療法である。MRC(すなわち、Mreg及びTolDC)は、抗原特異的エフェクターT細胞の枯渇、組織の修復及び再生プロセスの促進を含む、Tregと比較して異なるメカニズムを介して、免疫制御効果を発揮する。更に、MRCは、生理学的様式で、インビボで抗原特異的Tregを誘発する。わずかな患者しか、MRC(すなわち、Mreg又はTolDC)で処置されていない。これまで、少数の移植患者についての公開されたデータが、このアプローチの安全性を実証し、腎臓移植患者におけるドナー由来のMregの注入によって、免疫抑制レジメンの減量及びインビボでのTregの誘発が可能となることを示した(31)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2013/040552
【文献】WO2018037108
【文献】WO2017192786
【文献】WO2004094642
【文献】WO2010125471
【文献】WO2007131575
【文献】WO2013192215
【文献】米国特許第6,395,876号
【文献】米国特許第6,451,840号
【文献】WO08/147482
【文献】WO04/084933
【文献】WO98/10088
【文献】US2016/0046910A1
【文献】WO2016146542
【非特許文献】
【0011】
【文献】van Sandwijk MSら、Neth J Med. 2013
【文献】Johnsonら、Immunotherapy、1(4):645~661(2009)
【文献】Boshartら、Cell, 41 :521~530(1985)
【文献】Noら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93:3346~3351 (1996)
【文献】Gossenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:5547~5551 (1992)
【文献】Gossenら、Science、268:1766~1769 (1995)
【文献】Harveyら、Curr. Opin. Chem. Biol.、2:512~518 (1998)
【文献】Wangら、Nat. Biotech.、15:239~243 (1997)
【文献】Wangら、Gene Ther.、4:432~441 (1997)
【文献】Magariら、J. Clin. Invest.、100:2865~2872 (1997)
【文献】Sandigら、Gene Ther.、3: 1002~9 (1996)
【文献】Arbuthnotら、Hum. Gene Ther.、7: 1503~14 (1996)
【文献】Steinら、Mol. Biol. Rep.、24: 185~96 (1997)
【文献】Chenら、J. Bone Miner. Res.、11:654~64 (1996)
【文献】Hansalら、J. Immunol.、161: 1063~8 (1998)
【文献】Andersenら、Cell. Mol. Neurobiol.、13:503~15 (1993)
【文献】Piccioliら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88:5611~5 (1991)
【文献】Piccioliら、Neuron、15:373~84 (1995)
【文献】Grahamら(1973) Virology、52:456
【文献】Sambrookら(1989) Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York
【文献】Davisら(1986) Basic Methods in Molecular Biology
【文献】Elsevier、及びChuら(1981) Gene 13: 197
【文献】Santoni de Sioら、JACI 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、自己免疫疾患、炎症性疾患、移植片対宿主病の処置のための細胞療法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
未成熟DCによる抗原提示は、末梢の免疫寛容を誘発するための周知の天然のメカニズムであり(32)、本発明者らは、未成熟の遺伝子修飾されたDCによる抗原提示を確実にするために免疫調節性の制御を利用することを提案する。
【0014】
本発明において、驚くべきことに、i)少なくとも1つの抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片に融合したヒトインバリアント鎖からなるキメラタンパク質をコードする配列と、ii)少なくとも1つの免疫調節タンパク質をコードする配列との組み合わせを含む核酸で修飾されている、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆体が、治療用途に特に有利であることが分かった。
【0015】
核酸はまた、少なくとも1つのmiRNA標的配列を更に含み得る。
【0016】
miRNAは小さな非コードRNAであり、これは、転写後レベルでの特異的標的遺伝子の発現を負に制御する(33)。miRNAが3’非翻訳領域(3’UTR)で標的メッセンジャーRNA(mRNA)配列に対して部分的に相補的である場合、miRNAは、標的mRNAの安定性を低減させ、翻訳を阻害する。或いは、miRNAがそのmRNA標的に対してほぼ完全に相補的である場合、miRNAはmRNAを切断し、mRNAの大規模な破壊、ひいてはタンパク質発現の欠如を引き起こす。miRNAは、異なる組織及び細胞型において別個の発現プロファイルを有し、これは、遺伝子の転写プロファイル及び細胞機能を差別的に制御して、細胞特異的及び発生段階特異的な遺伝子発現の制御をもたらす(34)。miRNAは、細胞の分化及びホメオスタシス、サイトカイン応答、病原体との相互作用、並びに免疫寛容の誘発を含む、免疫系内の多くのプロセスの制御において、極めて重要な役割を有する。DCの発生、分化、及び機能は、miRNAの特異的発現プロファイルによって制御される。特に、miR-155及びmiR-146aの発現は、ヒト及びマウスの両方においてDCの成熟と関連する(35~38)。したがって、2つのmiR155標的配列及び2つのmiR146a標的配列(miR155T.mir146aT)を、所望の抗原の選択された部分と融合したインバリアント鎖(Ii)をコードするLVカセット(LV.IiAg)の3’UTR領域に挿入することによって、本発明者らは、活性化プログラムに入るLV-DCにおける、導入遺伝子の発現の抑制、ひいては抗原提示を達成した。
【0017】
本明細書において提供される方法は、LVがコードする抗原に対する寛容原性応答を誘発するように設計されている。DC及びこれらの前駆体へのLV介在性の遺伝子移入の有効性は、DCの機能的柔軟性を、自己免疫及び移植体の両方における免疫寛容の誘発のための特異的免疫療法を設計するために利用するための、いくつかの臨床的に適用可能な機会を提供する。
【0018】
本発明の実施形態に従うと、LV-IL-10操作DC(DCIL-10)は、臓器移植後の移植片拒絶の予防において有用であり得る。
【0019】
DC(DCIL-10)におけるIL-10のLV介在性の遺伝子移入は、以下のことを行うであろう医薬品を生じさせるため、Tregに基づく治療法の主要な制限を克服する可能性、及び他のMRCと比較してより効果的となる可能性を有している:
- エフェクターT細胞において、アロ特異的な免疫学的非応答性を誘発する、
- 生理学的様式でインビボでアロ特異的Tregを誘発して、自己強化型の末梢制御を促進する、
- インビボでの寿命が限られており(最大14日間)、感染及び悪性腫瘍に対する免疫性に対する持続性の影響を全体的に制限する、
- T細胞、骨髄細胞、及び自然免疫細胞を調節し、長期の免疫寛容を維持する、IL-10に富んだ局所的微小環境の生成を確実にする、IL-10の安定な過剰発現を促進する。
【0020】
本発明は、免疫寛容を誘発する又は制御性免疫細胞による抗原に対する免疫応答を抑制するための方法であって、免疫細胞が、抗原由来ペプチド又は抗原性ペプチド及び寛容原性誘発性分子の発現を可能にする、新たに開発された寛容原性ベクターによって、好ましくは、エピトープ等の抗原由来ペプチド又は抗原性ペプチドをコードするLVによって遺伝子修飾されている、方法を提供する。一部の実施形態において、寛容原性細胞は個体に送達され、抗原の提示は免疫寛容を誘発し、及び/又は抗原に対する免疫応答を抑制する。一部の実施形態において、寛容原性細胞は、細胞に基づくアプローチに適切な抗原特異的Tregを促進するためにインビトロで使用される。
【0021】
本発明は、ベクター、好ましくはレンチウイルスベクター(LV)を用いて、操作された免疫細胞を生成して、抗原由来ペプチド(エピトープ)及び寛容原性誘発性分子の発現をもたらすことを含む、個体において抗原に対する免疫寛容を誘発するための方法を提供する。本発明者らは、2つの導入遺伝子の協調発現(二方向性(bd)LV(39、40)、参照によって組み込まれるWO2004094642)、及び/又は、内在性miRNAによって仲介される転写後制御を利用することによる、特異的細胞小集団への標的化された導入遺伝子の発現(miRNAによって制御されるLV(41、42)、参照によって組み込まれるWO2010125471)を可能にする、いくつかのLVに基づく遺伝子移入ツールを開発した。更に、本発明者らは、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)の遍在的プロモーターの制御下で抗原に融合しているインバリアント鎖(Ii)(PGK.Ii-Ag)をコードするLVを生成し(43)、これは、内因性抗原としてのMHCクラスIの状況におけるコードされている抗原の安定な提示を確実にするが、外因性抗原としてのMHCクラスIIの状況における抗原のプロセシング及び提示も可能にし、CD4+T細胞及びCD8+T細胞の両方の刺激をもたらす。
【0022】
本発明は、以下の点で有利である
- DC前駆体又はDCのベクター介在性の形質導入は、コードされるペプチドの安定な発現を可能にし、これにより、得られたDCが、T細胞への抗原の提示において、より効果的となる、
- miRNA標的配列を含めることによって、コードされる抗原の負の転写後制御を可能にし、DC-Ag.miRNAによって未成熟段階での抗原提示を制限し、炎症性微小環境における抗原提示を防ぐ、
- ベクターによって仲介されるIDO又はIL-10の安定な過剰発現が、IDO又はIL-10に富んだ微小環境における抗原提示を確実にする、
- ヒトDC前駆体は、ベクター、特にLVを安定的に形質導入される、
- 複数の特異性を有する操作されたDCの集団を使用することができる、
- 異なる操作されたDCを組み合わせて、寛容原性活性を最大化することができる、
- DC-IL-10/Ag及びDC-Ag.miRNA-T(又はDC-Ag.miRNA、すなわち、miRNA標的配列を含有する)は、インビボで抗原特異的Tr1細胞の分化を促進する、
- 操作されたDCは生存が短い細胞であり、複数のDC注射を可能にする、
- 特異的抗原を発現させるためのIi-Ag構築物の非常に多用途の生成。
【0023】
本発明に従うと、3つの異なるアプローチで例示されているように、エフェクターT細胞の強力な阻害及び/又は制御性T細胞の強力な活性化がもたらされる。
【0024】
本明細書に記載されるLVの好ましい実施形態に従うと、
- プロモーターは遍在的であり得る(PGK等)
- アプローチがDC-IL-10/Ag又はDC-IDO/Agである場合、ベクターは二方向性であり得る。
【0025】
好ましい実施形態に従うと、本発明の寛容原性DCの使用に基づく臨床的プロトコルは、以下のことをもたらす:
- 修飾された自己/同種DCが、1回から複数回の注入を介して患者に投与されて、特異的抗原に対する安定な免疫寛容を再確立させる/誘発する、
- 自己/同種DCが、異なる抗原断片(既知の抗原ライブラリーに従う)及び/又は異なる寛容原性誘発性分子をコードするLVの1つ又は混合物の形質導入を介して修飾されて、複数の特異性を網羅する寛容原性応答を再確立させる/誘発する。
【0026】
別の好ましい実施形態に従うと、WO2007131575(参照によって組み込まれる)に記載されるプロトコルに従って、DC-IL-10/Agをインビトロで同時に使用して、抗原に特異的な制御性T細胞1型(Tr1)を生成させることができる。このような抗原特異的Tr1細胞は、WO2013192215(参照によって組み込まれる)に記載されるプロトコルに従って、インビトロで精製することができ、次いで、抗原に対する寛容原性応答を最大化するために、本発明の修飾された寛容原性DCの注入と組み合わせて患者に注入することができる。
【0027】
こうして、本発明は、核酸構築物で修飾されている、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞であって、前記構築物が、
- 第1のプロモーターに機能可能に連結され、場合によって第1の転写調節配列に機能可能に連結された、少なくとも1つの抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片に融合したヒトインバリアント鎖からなるキメラタンパク質をコードする核酸配列a)、及び
- 場合によって第2のプロモーターに機能可能に連結され、場合によって第2の転写調節配列に連結された、少なくとも1つの免疫調節タンパク質をコードする核酸配列b)
を含む、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞を提供する。
【0028】
前駆細胞は樹状細胞の前駆細胞であり、また、遺伝子修飾もされている。
【0029】
そのため、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆体は、少なくとも1つの抗原由来ペプチド(又は抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質若しくはこれらの抗原性断片)及び少なくとも1つの免疫調節分子を構成的に発現する。このような修飾された細胞は、細胞表面上若しくは細胞内部で少なくとも1つの分子を提示するか、又は少なくとも1つの分子を生産する及び/若しくは分泌する。
【0030】
修飾は、形質導入、形質転換、又はエレクトロポレーションによって導入することができる。
【0031】
第1のプロモーター及び第2のプロモーターは、同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
プロモーターとしては、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)のファミリーのプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)、脾フォーカス形成ウイルス(SSPV)、ヒト伸長因子1α(EF1α)、骨髄関連タンパク質8(MRP8)、骨髄特異的プロモーター(MSP)、ニワトリβ-アクチンプロモーターに連結したCMV前初期エンハンサーからなるCAGプロモーター、合成骨髄特異的プロモーター(146gp61)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、CD11b、タンパク質-チロシンキナーゼ(c-Fes)、シトクロムB-245ベータ鎖(CYBB)、及び受容体チロシンキナーゼ(TEK)が含まれる。
【0033】
第1の転写調節配列及び第2の転写調節配列は、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
抗原性ペプチド又は抗原性タンパク質又これらの抗原性断片はまた、抗原性ペプチド又は抗原性タンパク質のバリアントも指す。
【0035】
核酸はまた、免疫優性ペプチド及びその可変フランキング領域をコードする配列を含み得、前記フランキング領域の各々は、5から10個のアミノ酸からなる。
【0036】
好ましくは、前記配列a)は、その3’末端に、少なくとも1つのmiRNA標的配列を更に含む。
【0037】
好ましくは、前記核酸構築物は、Vpxをコードする配列を更に含む。
【0038】
好ましくは、前記核酸構築物は、マーカーをコードする配列を更に含む。好ましくは選択マーカーであり、好ましくは、マーカーは、GFP、ΔNGFR、ΔCD19である。
【0039】
好ましくは、ヒトインバリアント鎖は、lip33、lip41、lip35、又はlip43である。
【0040】
好ましくは、前記抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片は、自己抗原及び/又は無害な抗原及び/又はアレルゲンに由来する。
【0041】
好ましくは、前記抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片は、Table 2(表2)に記載される免疫優性ペプチドの群又はこれらのバリアントから選択される。バリアントは、抗原性バリアントである。
【0042】
好ましい実施形態において、前記免疫調節タンパク質は、IL-10、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、PDL-1、PDL-2、ILT-3、ILT-4、HO-1、ICOS-L、Gal9、HVME、HLA-G、HLA-E、IL-35、TGF-b、CTLA-4Ig、PGE2、TNFR、Arg1からなる群から選択され、好ましくは、IL-10、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、又はこれらの混合物である。
【0043】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのmiRNA標的配列は、miR-15a、miR-16-1、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b-l、miR-21、miR-29a、miR-29b、miR-29c、miR-30b、miR-31、miR-34a、miR-92a-l、miR-106a、miR-125a、miR-125b、miR-126、miR-142-3p、miR-146a、miR-150、miR-155、miR-181a、miR-223、及びmiR-424を標的化する群から選択され、好ましくは、miR155、miR146a、又はこれらの混合物であり、好ましくは、前記miRNA標的配列は反復している。好ましくは、miR155標的配列が2回反復しており、miR146a標的配列が2回反復している。
【0044】
好ましくは、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞は、以下の特性:CD4+及びCD8+T細胞応答を調節する特性、インビトロ及び/又はインビボでの抗原特異的CD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖を調節する特性、制御性DCの生成に都合が良い特性、抗原特異的Tr1細胞及び/又はFOXP3+Treg細胞の増殖に都合が良い特性、寛容原性である特性、MHCクラスI及びクラスIIの両方の状況において抗原を提示する特性の少なくとも1つを示す細胞である。
【0045】
好ましくは、前記核酸構築物は、ベクター、好ましくはレンチウイルスベクター、更に好ましくは一方向性又は二方向性ベクターに挿入されている。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明に従った遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞は、医学的使用のため、好ましくは、移植片対宿主病、臓器拒絶、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性又は自己炎症性疾患、遺伝子療法によって誘発される免疫応答からなる群から選択される状態の予防及び/又は治療に使用するためのものである。
【0047】
好ましくは、自己免疫疾患は、1型糖尿病、自己免疫性腸症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、自己免疫性筋炎、乾癬、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本病、重症筋無力症、血管炎、悪性貧血、セリアック病、自己免疫性肝炎、円形脱毛症、尋常性天疱瘡、白斑、再生不良性貧血、自己免疫性ぶどう膜炎、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)、強直性脊椎炎、抗GBM腎炎、抗リン脂質症候群、変形性関節症、自己免疫性活動性慢性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、バロー病、ベーチェット病、バージャー病、水疱性類天疱瘡、心筋症、慢性疲労免疫不全症候群、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、大腸炎、頭蓋動脈炎、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、皮膚筋炎及びJDM、デビック病、湿疹、本態性混合型クリオグロブリン血症、好酸球性筋膜炎、線維筋痛-線維筋炎、線維化性肺胞炎、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー疾患、ギラン・バレー症候群、橋本病、肝炎、ヒューズ症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、川崎病、扁平苔癬、ルポイド肝炎、ループス/SLE、ライム病、メニエール病、混合性結合組織病、筋炎:若年性筋炎(JM)、若年性皮膚筋炎(JDM)、及び若年性多発性筋炎(JPM)、骨粗しょう症、扁平部炎、尋常性天疱瘡、多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、レイノー症候群、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、強膜炎、強皮症、粘性血液症候群、スティル病、スティッフマン症候群、シデナム舞踏病、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、並びにウィルソン症候群からなる群から選択され、好ましくは、自己免疫疾患は、血管炎、例えば、劇症型抗リン脂質抗体症候群(アシャーソン(Asherson’s)症候群という名でもある)、巨細胞性動脈炎、及び抗ANCA血管炎、又は重症筋無力症、難治性セリアック病、自己免疫性ぶどう膜炎、例えば、ベーチェット病、尋常性天疱瘡、巨細胞性心筋炎、グレーブス病、アジソン病、並びに多発性血管炎を伴う肉芽腫症である。
【0048】
好ましくは、アレルギー性疾患は、喘息、アトピー性アレルギー、又はアトピー性皮膚炎である。
【0049】
好ましくは、炎症性又は自己炎症性疾患は慢性炎症性疾患であり、好ましくは、慢性炎症性疾患は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病からなる群から選択される。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明の遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞は、タンパク質補充療法に対する免疫応答の予防のため、好ましくは、リソソーム蓄積障害又は血友病の処置のためのものである。
【0051】
本発明はまた、
- 第1のプロモーターに機能可能に連結され、場合によって第1の転写調節配列に機能可能に連結された、少なくとも1つの抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片に融合したヒトインバリアント鎖からなるキメラタンパク質をコードする核酸配列a)、並びに
- 場合によって第2のプロモーターに機能可能に連結され、場合によって第2の転写調節配列に連結された、少なくとも1つの免疫調節タンパク質をコードする核酸配列b)
を含む、核酸構築物を提供する。
【0052】
第1のプロモーター及び第2のプロモーターは、上記に示したように、同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
第1の転写調節配列及び第2の転写調節配列は、上記に示したように、同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
好ましくは、ヒトインバリアント鎖は、lip33、lip41、lip35、又はlip43である。
【0055】
本発明はまた、上記で定義した核酸構築物を含むベクターを提供し、好ましくは、前記ベクターはレンチウイルスベクターであり、好ましくは、前記ベクターは、一方向性若しくは二方向性ベクターであり、好ましくは、ベクターは、Vpxを発現するエンベロープウイルス粒子を使用して生産され、及び/又はベクターは、CD47の発現を低下させるように遺伝子操作されているパッケージング細胞を使用して生産される。
【0056】
好ましくは、ベクターは発現ベクターである。
【0057】
本発明はまた、上記で定義された遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞を生産するためのインビトロでの方法であって、
a.対象からPBMCを単離する工程、
b.前記単離されたPBMCからCD14+細胞を単離する工程、
c.前記単離されたCD14+細胞と有効量のVpxとをインキュベートする工程、
d.前記単離されたCD14+細胞に本発明のベクターを形質導入する工程
を含む、インビトロでの方法を提供する。
【0058】
好ましくは、工程dは、有効量の少なくとも1つの作用物質の存在下で行われ、好ましくは、作用物質は、IL-4又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)又はIL-10であり、好ましくは、IL-4、GM-CSF、及びIL-10の量は、1から1000ngの間である。
【0059】
好ましくは、PBMCは、末梢血から、又は白血球除去療法から単離される。
【0060】
更に好ましくは、ベクターはレンチウイルスベクターであり、好ましくは、前記レンチウイルスベクターの量は、1から100MOIの間である。
【0061】
好ましくは、有効量のVpxが、培養の0日目に、及び約1時間から8時間、好ましくは、約6時間から8時間、添加される。
【0062】
本発明はまた、上記のような方法によって得ることが可能な、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞を提供する。
【0063】
本発明はまた、IL-10を生産するCD49b+LAG-3+Tr1細胞を生産するためのインビトロでの方法であって、
a)対象の血液サンプルからPBMCを単離する工程、
b)前記単離されたPBMCを、適切な培養条件下で、有効量の上記で定義された遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞に曝露させる工程
を含む、インビトロでの方法を提供する。
【0064】
好ましくは、PBMC:遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆体の比は、5:1から10:1の間である。
【0065】
本発明はまた、好ましくは医学的使用のための、上記で定義された方法によって得ることが可能な、IL-10を生産するCD49b+LAG-3+Tr1細胞を提供する。
【0066】
好ましくは、前記IL-10を生産するCD49b+LAG-3+Tr1細胞は、1×104から20×107個細胞の間、好ましくは3×105から20×106個細胞の間の異なる濃度範囲で注入される。
【0067】
本発明はまた、抗原特異的FOXP3+T細胞を生産するためのインビトロでの方法であって、
a)対象の血液サンプルからPBMCを単離する工程;
b)前記単離されたPBMCを、適切な培養条件下で、有効量の上記で定義された遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞に曝露させる工程
を含む、インビトロでの方法を提供する。
【0068】
好ましくは、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞は、少なくともインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を発現する。
【0069】
本発明はまた、好ましくは医学的使用のための、上記のような方法に従って得ることが可能な抗原特異的FOXP3+T細胞を提供する。
【0070】
好ましくは、前記抗原特異的FOXP3+T細胞は、1×104から20×107個細胞の間、好ましくは3×105から20×106個細胞の間の異なる濃度範囲で注入される。
【0071】
本発明はまた、本発明の遺伝子修飾された細胞、若しくは上記で定義された、IL-10を生産するCD49b+LAG-3+Tr1細胞、若しくは上記で定義された抗原特異的FOXP3+T細胞、又はこれらの任意の組み合わせ、及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0072】
好ましくは、組成物は更に、治療物質を含む。
【0073】
前記治療物質は、限定はしないが、免疫抑制剤、ステロイド、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ、メトトレキサート、フルダラビン、抗炎症剤、抗アレルギー剤等の、本発明に関する少なくとも1つの状態を処置することが当業者公知の任意の作用物質であり得る。
【0074】
さらなる治療物質としては、限定はしないが、免疫抑制剤(例えば、他のリンパ球表面マーカーに対する抗体(例えば、CD40、アルファ-4インテグリン)、若しくはサイトカインに対する抗体)、他の融合タンパク質(例えば、CTLA-4-Ig(Orencia(登録商標))、TNFR-Ig(Enbrel(登録商標)))、エンブレル、レミケード、シムジア、及びヒュミラ等のTNF-aブロッカー、シクロホスファミド(CTX)(すなわち、Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、メトトレキサート(MTX)(すなわち、Rheumatrex(登録商標)、Trexall(登録商標))、ベリムマブ(すなわち、Benlysta(登録商標))、又は他の免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンA、FK506様化合物、ラパマイシン化合物、若しくはステロイド)、抗増殖剤、細胞傷害剤、或いは免疫抑制を補助し得る他の化合物が含まれる。
【0075】
一部の実施形態において、さらなる治療物質は、別個の経路を介してT細胞の活性化及びサイトカイン生産を阻害する又は低減させるように機能する。1つのこのような実施形態において、さらなる治療物質は、CTLA-4 Ig(アバタセプト)等のCTLA-4融合タンパク質である。CTLA-4 Ig融合タンパク質は、T細胞上の同時刺激受容体であるCD28と、抗原提示細胞上のCD80/CD86(B7-1/B7-2)への結合について競合し、こうして、T細胞の活性化を阻害するように機能する。一部の実施形態において、さらなる治療物質は、ベラタセプトとして公知のCTLA-4-Ig融合タンパク質である。
【0076】
ベラタセプトは、インビボでのCD86へのその親和力を大きく増大させる、2つのアミノ酸置換(L104E及びA29Y)を有する。別の実施形態において、さらなる治療物質は、Maxy-4である。
【0077】
別の実施形態において、第2の治療薬は、IDOの発現を誘発する第2の作用物質である。IDOの発現を誘発する第2の治療薬は、Johnsonら、Immunotherapy、1(4):645~661(2009)、及び米国特許第6,395,876号及び米国特許第6,451,840号に記載される。一実施形態において、IDOの発現を誘発する第2の治療薬は、IDOlポリペプチド又はID02ポリペプチドをコードする発現ベクターをロードされたナノ粒子である。
【0078】
別の実施形態において、第2の治療物質は、慢性的な移植片拒絶又はGvHDを優先的に処置し、このため、処置レジメンは、急性及び慢性両方の移植片拒絶又はGvHDを効果的に標的化する。別の実施形態において、第2の治療薬は、TNF-aブロッカーである。
【0079】
別の実施形態において、第2の治療物質は、血清中のアデノシンの量を増大させる。例えば、WO08/147482を参照されたい。一部の実施形態において、第2の治療薬は、CD73-Ig、組換えCD73、又はCD73の発現を増大させる別の作用物質(例えば、サイトカイン若しくはモノクローナル抗体若しくは低分子)である。例えば、WO04/084933を参照されたい。別の実施形態において、第2の治療物質は、インターフェロン-ベータである。
【0080】
一部の実施形態において、組成物は、Tregの活性又は生産を増大させる化合物と組み合わせて又は連続して使用される。
【0081】
典型的なTreg増強剤としては、限定はしないが、グルココルチコイドフルチカゾン、サルメテロール、IL-12、ΓENγ、及びIL-4に対する抗体、ビタミンD3、並びにデキサメタゾン、並びにこれらの組み合わせが含まれる。他の炎症誘発性分子に対する抗体もまた、開示される組成物と組み合わせて、又はその代わりに使用することができる。例えば、抗体は、IL-6、IL-23、IL-22、又はIL-21に結合することができる。
【0082】
本明細書において使用される場合、用語「ラパマイシン化合物」としては、中性の三環式化合物であるラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体、及びラパマイシンと同一の作用メカニズムを有すると考えられる(例えば、サイトカイン機能の阻害)他のマクロライド化合物が含まれる。「ラパマイシン化合物」という言葉には、ラパマイシンと構造が類似している化合物、例えば、これらの治療効果を増強させるように修飾されている、類似の大環状構造を有する化合物が含まれる。典型的なラパマイシン化合物は、当技術分野において既知である。
【0083】
「FK506様化合物」という言葉には、FK506、並びにFK506の誘導体及び類似体、例えば、FK506に構造が類似している化合物、例えば、これらの治療効果を増強させるように修飾されている、類似の大環状構造を有する化合物が含まれる。FK506様化合物の例は、当技術分野において既知である。好ましくは、本明細書において使用される「ラパマイシン化合物」という言葉は、FK506様化合物を含まない。
【0084】
他の適切な治療薬としては、限定はしないが、抗炎症剤が含まれる。抗炎症剤は、非ステロイド性、ステロイド性、又はこれらの組み合わせであり得る。一実施形態は、約1%(w/w)から約5%(w/w)、典型的には約2.5%(w/w)の抗炎症剤を含有する経口組成物を提供する。非ステロイド性抗炎症剤の代表的な例としては、限定はしないが、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム等のオキシカム;アスピリン、ジサルチド(disalcid)、ベノリレート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサル、及びフェンドサール等のサリチレート;ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパック、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナク、及びケトロラック等の酢酸誘導体;メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、及びトルフェナム酸等のフェナム酸;イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アフミノプロフェン、及びチアプロフェン酸等のプロピオン酸誘導体;フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、及びトリメタゾン等のピラゾールが含まれる。これらの非ステロイド性抗炎症剤の混合物もまた、利用することができる。
【0085】
ステロイド性の抗炎症薬の代表的な例としては、限定はしないが、コルチコステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシル-トリアムシノロン、アルファメチルデキサメタゾン、デキサメタゾンホスフェート、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾン酢酸エステル、ジフルコルトロン吉草酸エステル、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、フルメタゾンピバル酸エステル、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾン酢酸エステル、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、ジフルロゾン酢酸エステル、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン、及びこれらのエステルのバランス、クロロプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルトロン、クレスシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニソロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロピオネート、ヒドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、トリアムシノロン、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0086】
本発明はまた、IL-10をコードする核酸配列を含む核酸構築物で修飾されている、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞であって、前記配列が、プロモーターに、及び場合によって転写調節配列に、及び/又は場合によってマーカー、好ましくは選択マーカーに機能可能に連結された、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞を提供する。
【0087】
本発明はまた、
- 第1のプロモーターに機能可能に連結され、場合によって第1の転写調節配列に機能可能に連結された、少なくとも1つの抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片に融合したヒトインバリアント鎖からなるキメラタンパク質をコードする核酸配列a)、及び
- 場合によって第2のプロモーターに機能可能に連結され、場合によって第2の転写調節配列に連結された、少なくとも1つのmiRNA標的配列をコードする核酸配列
を含む核酸構築物で修飾されている、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞を提供する。
【0088】
第1のプロモーター及び第2のプロモーターは、上記に示したように、同一であっても異なっていてもよい。
【0089】
第1の転写調節配列及び第2の転写調節配列は、上記に示したように、同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
好ましくは、ヒトインバリアント鎖は、lip33、lip41、lip35、又はlip43である。
【0091】
好ましくは、上記で定義された遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞は、臓器移植及び/若しくは骨髄移植で使用するため、並びに/又は移植片対宿主病の予防及び/若しくは処置のため、又は自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、遺伝子療法によって誘発される免疫応答からなる群から選択される状態の予防及び/若しくは処置において使用するためのものである。
【0092】
更に好ましくは、遺伝子修飾された細胞は、異なる抗原断片をコードする単一のベクター又はベクター(例えば、レンチウイルスベクター)の混合物を形質導入することによって得られる(既知の抗原ライブラリーに従う)。
【0093】
好ましい実施形態において、遺伝子修飾された樹状細胞又はその前駆細胞は、自己抗原に対する免疫応答を予防するため、好ましくは、自己免疫疾患及び自己炎症性疾患を処置するために使用される。
【0094】
好ましい実施形態において、遺伝子修飾された細胞は、同種移植後の免疫応答を予防するため、好ましくは、臓器移植の処置のために使用される。
【0095】
当業者はまた、タンパク質又はペプチドをコードする核酸について、保存的なアミノ酸置換を生じさせる突然変異を核酸内で行って、タンパク質又はペプチドの機能的に同等なバリアント又はホモログを提供することができることに気付くであろう。一部の態様において、本開示は、核酸の保存的なアミノ酸置換を生じさせる配列の改変を包含する。
【0096】
本発明をここで、以下の図面を参照して、非限定的な例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】レンチウイルスベクターの設計を示す図である。DC前駆体の形質導入のために設計された二方向性LV構築物。CLIP=クラスII関連インバリアント鎖ペプチド、li=インバリアント鎖、PGK=ホスホグリセリン酸キナーゼ。
図2】骨髄由来DCへのLV.IiOVA介在性の遺伝子移入による、LV.DCの生成を示す図である。骨髄(BM)細胞をGM-CSFの存在下でDCに分化させ、示されているLVを2日目に形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(UNT)を使用した。CD11c、CD80、及びCD86の発現を、FACSによって、分化の8日目に分析した。陽性細胞のパーセンテージが示されている。
図3】DC-IL-10/OVAが低い刺激活性を示すことを示す図である。骨髄(BM)細胞をGM-CSFでDCに分化させ、LV-IiOVA、LV-IL-10/OVA、LV-IDO/OVAを2日目に形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(UNT)を生成した。eFluor標識されたOTII CD4+T細胞を、示されているDCで刺激し、増殖を色素希釈によって3日後に測定した。
図4】DC-IL-10/OVAが抗原特異的な応答性低下を促進することを示す図である。骨髄(BM)細胞をGM-CSFでDCに分化させ、LV-IL-10/OVAを2日目に形質導入した。コントロールとして、DC-OVAを生成した。OTII CD4+T細胞をLV-DCで7日間刺激した。培養した後、DC-OVAで生成された細胞[T(DC-OVA)]及びDC-IL-10/OVAで生成された細胞[T(DC-IL-10/OVA)]をeFluor標識し、DC-OVAで刺激し、そして増殖を色素希釈によって4日後に測定した。
図5】miR155及びmiR146aの活性化依存性の上方調節がDC-OVAmiRNAによるOVAの発現及び提示を制限することを示す図である。骨髄(BM)細胞をGM-CSFでDCに分化させ、LV.OVA.miRNA又はLV-IiOVAを2日目に形質導入した。DCは活性化しないままとしたか、又はLPSで24時間活性化した。コントロールとして、OVAペプチドをパルスしたDC及び形質導入されていないDC(DC UNT)を使用した。eFluor標識されたOTII CD4+T細胞を、LPS活性化されているか又はされていない、示されているDCで刺激した。増殖を色素希釈によって3日後に測定した。
図6】LV-DCの投与がOVA特異的T細胞の増殖を促進することを示す図である。CD45.1(95%)及びOT-II/Fir-Tiger(5%)(A)に由来する骨髄細胞を注射することによって得られたキメラマウスに、DC(DC-IL-10/OVA、DC-IDO/OVA、DC-OVA.miRNA)、及びコントロールとしてのDC-OVA又はDC-GFPを4回注射した。最後のDC注射の5週間後、マウスを屠殺し、脾臓におけるCD45.2 OTII firTiger CD4 T細胞のパーセンテージ(B)を、FACSによって決定した。マン・ホイットニーのU検定で*p<0.05。
図7】DC-IL-10/OVA及びDC-OVAmiRNAによる、IL-10を生産するTr1細胞の誘発を示す図である。CD45.1(95%)及びOT-II/Fir-Tiger(5%)に由来する骨髄細胞を注射することによって得られたキメラマウスに、示されているLV-DCを4回注射した。最後のDC注射の5週間後、マウスを屠殺し、脾臓におけるCD49b+LAG-3+Tr1(A)、IL10を生産するTr1細胞(GFP+)(B)のパーセンテージをFACSによって決定した。マン・ホイットニーのU検定で*P<0.05。
図8】LV-DCによって活性化されるインビボでのT細胞の低増殖性の応答性を示す図である。CD45.1(95%)及びOT-II/Fir-Tiger(5%)に由来する骨髄細胞を注射することによって得られたキメラマウスに、LV-DCを4回注射した。最後のLV-DC注射の5週間後、マウスを屠殺し、脾臓から精製されたCD4+T細胞をefluor670で染色し、そしてDC-OVAで再刺激した(T:DC比は10:1)。増殖を色素希釈によって4日後に測定した。データは刺激指標[(分割したT細胞DC-OVAの%)/(分割したT細胞未処置DCの%)]として報告されている。マン・ホイットニーのU検定で**p<0.005、*<0.05。
図9】OVA特異的なCD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖を可能にするLV構築物の生成を示す図である。骨髄(BM)細胞をGM-CSFでDCに分化させ、2日目に、OTII CD4+T細胞によって認識されるエピトープを含有するIiOVA315~363をコードする、及びOTII CD4+T細胞及びOTI CD8+T細胞によって認識されるエピトープを含有するIiOVA242~363をコードするLVを形質導入した(A)。コントロールは、DCGFP及び形質導入されていないDC(DCUT)である。eFluor標識されたOTII CD4+T細胞又はOTI CD8+T細胞を、示されているDCで刺激した。増殖を色素希釈によって3日後に測定した(B)。
図10】DC-IL-10/InsBが、糖尿病性NODマウスから単離されたCD4+T細胞において応答性低下を促進することを示す図である。NODマウスから単離された骨髄(BM)を、GM-CSFの存在下でDCに分化させ、2日目にLV-IiInsB4~29、LV-IiInsB4~29-miRNA、LV-IL-10/InsB4~29、及びLV-IDO/InsB4~29を形質導入した。コントロールとして、DC-OVAを生成した。eFour標識された、糖尿病性NODマウスから単離された脾臓CD4+T細胞を、示されているLV-DCで刺激した。増殖を色素希釈によって共培養の3日後に測定した。増殖細胞の%を示す。
図11】LV-DCのインビボでの局在化及び寿命を示す図である。Balb/cマウスから単離された骨髄(BM)を、GM-CSFの存在下でDCに分化させ、2日目に、ルシフェラーゼをコードするLVを形質導入した。Balb/cレシピエントマウスにLV-DC(5×106)を静脈内注射又は腹腔内注射した。生体分布及びLV-DCの生存を、示されている時点で、生物発光イメージング(BLI)によってモニタリングした。
図12】T1Dの発病からNODマウスを防御するための自己LV-DC細胞療法を示す図である。NODマウスから単離された骨髄(BM)を、GM-CSFの存在下でDCに分化させ、2日目にLV-IiOVA、LV-IiInsB4~29、LV-IiInsB4~29-miRNA、LV-IL-10/InsB4~29、及びLV-IDO/InsB4~29を形質導入して、DC-OVA、DC-InsB、DC-InsB.miRNA、DC-IL-10/InsB、DC-IDO/InsBを生成した。10週齢のNODメスマウスに、DC-OVA(n=3)、DC-InsB(n=10)、DC-InsB.miRNA(n=6)、DC-IL-10/InsB(n=9)、DC-IDO/InsB(n=11)のi.v.注射を週に3回行い、血中グルコースレベルを週に3回モニタリングして、T1Dの発症を評価した。ログランク(マンテル・コックス)検定で**p<0.005。
図13】ヒトDCに二方向性LVを効率的に形質導入するためのプロトコルの開発を示す図である。健康な対象(n=8)の末梢血から単離されたCD14+細胞を、Vpx-VLPで6~8時間前処理し、次いで、DC分化の間の0日目、2日目、及び5日目にLV-ΔNGFR/GFP(LV-DC vpx)を形質導入した。コントロールとして、LV-ΔNFGR/GFP(LV-DC)を形質導入されたDCを、同一のドナーから分化させた。A.単球由来のDCのLV介在性の形質導入のプロトコル。B.形質導入効率を、分化したDCでのΔNGFRの発現に基づいて定量した。
図14】Vpx及びLV介在性の形質導入での前処置がヒトLV-DCを活性化しないことを示す図である。健康な対象(n=6)の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間前処理し、次いで、DC分化の間の0日目、2日目、及び5日目にLV-ΔNGFR/GFP(LV-DC vpx)を形質導入した。コントロールとして、LV-ΔNFGR/GFP(LV-DC)を形質導入されたDCを、同一のドナーから分化させた。LV-DCの活性化を、CD86の発現によってモニタリングした。LV-DCは、VPXの不存在下(白い記号)又は存在下(黒い記号)で形質導入された。
図15】DCIL-10が、DC-10に表現型が類似していることを示す図である。健康な対象(n=11)の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目にLV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、並びにGM-SCF/IL-4及びIL-10の存在下で同一のドナーから分化したDC-10を使用した。A.形質導入効率を、分化したDCでのΔNGFRの発現に基づいて定量した。B.示されている表面マーカーの発現を、FACSによって評価した。ウィルコクソンの符号順位検定で*P<0.05、**<0.01。
図16】DCIL-10がIL-12の不存在下で高レベルのIL-10を分泌したことを示す図である。健康な対象(n=5)の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目にLV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、並びにGM-SCF/IL-4及びIL-10の存在下で同一のドナーから分化したDC-10を使用した。得られた細胞は活性化しないままとしたか、又はLPS/IFNgで48時間活性化した。IL-10(A)及びIL-12(B)のレベルを、ELISAによって培養上清において測定した(n=5)。ウィルコクソンの符号順位検定で*P<0.05、**<0.01。
図17】DCIL-10が同種CD3+T細胞において低い増殖応答を誘発することを示す図である。健康な対象(n=11)の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目にLV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、並びにGM-SCF/IL-4及びIL-10の存在下で同一のドナーから分化したDC-10を使用した。同種CD3+T細胞をeFlour標識し、示されているDCで5日間刺激した。増殖した細胞のパーセンテージを、増殖色素希釈に基づいて計算した。全部でCD3+T細胞(A)、CD3+CD4+T細胞(B)、及びCD3+CD8+T細胞(C)の増殖が示されている。ウィルコクソンの符号順位検定で*P<0.05、**<0.01。
図18】DCIL-10がアロ特異的なアネルギー性CD4+T細胞を促進することを示す図である。健康な対象(n=7)の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目にLV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)DCを形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、並びにGM-SCF/IL-4及びIL-10の存在下で同一のドナーから分化したDC-10を使用した。同種CD4+T細胞を、示されているDCで10日間刺激した。10日後、T細胞をeFlour標識し、プライミングに使用したDCと同系の成熟DC(mDC)で再刺激した。増殖した細胞のパーセンテージを、増殖色素希釈に基づいて計算した(n=7)。マン・ホイットニーの検定で*P<0.05、**<0.01。
図19】DCIL-10がアロ特異的なIL-10を生産するTr1細胞を促進することを示す図である。健康な対象(n=7)の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、並びにGM-CSF/IL-4及びIL-10の存在下で同一のドナーから分化したDC-10を使用した。同種CD3+T細胞を、示されているDCで10日間刺激した。A.10日後、Tr1細胞(CD49b+LAG-3+)のパーセンテージをFACS染色によって評価した(n=7)。B.10日後、細胞を、プライミングに使用したDCと同系の成熟DC(mDC)で再刺激し、IL-10のレベルを、48時間後にELISAによって評価した(n=7)。マン・ホイットニーの検定で*P<0.05、**<0.01。
図20】DCIL-10の養子移入が移植片対宿主病を遅延させることを示す図である。Balb/c骨髄(BM)細胞をGM-CSFでDCに分化させ、2日目にLV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。Balb/cマウスに致死線量を照射し、C57Bl/6 BM細胞(107)及び脾細胞(5×106)を静脈内注射した。2日目に、マウスにDCGFP又はDCIL-10(2×106)を養子移入した。マウスの体重減少(A)及び生存(B)をモニタリングした。
図21】所与の抗原をコードする二方向性LVをヒトDCに効率的に形質導入するためのプロトコルを示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を無血清培地において培養し、Vpx-VLP(2ul/ウェル)で6~8時間前処置し、次いで、ヒトDC分化の間の0日目にLVを形質導入して、ヒト(h)LV-DCを得る。培地の半分を1日目に交換した(LV希釈)。DCを、IL-4(100ng/ml)及びGM-CSF(100ng/ml)の存在下で分化させた。
図22】DC-SIGNの発現を使用して、インビトロでのLV-DC分化をモニタリングすることができることを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、LV-ΔNGFR/Ag(DC-Ag)、LV-IL-10/Ag(DC-IL-10/Ag)、又はLV-IDO/Ag(DC-IDO/Ag)を形質導入した。コントロールとして、ヒトCLIPをコードするLVを形質導入されたDC(DC-CLIP)を、並行して分化させた。DCの分化を、DC-SIGN及びCD14の発現によってモニタリングした。
図23】DC-IL-10/Agの形質導入効率を示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNGFR/Ag(DC-Ag)、LV-IL-10/Ag(DC-IL-10/Ag)を形質導入した。コントロールとして、同一のドナーから分化した、LV-CLIPを形質導入したDC(DCCLIP)を使用した。A. DC-Agの形質導入効率を、ΔNGFRの発現に基づいて定量した。B. DC-IL-10/Agの形質導入効率をモニタリングするために、DCは刺激しないままであったか、又はLPS(200ng/ml)及びIFN-g(50ng/ml)で24時間刺激した。6時間目にブレフェルジンを細胞に添加した。IL-10の発現を、細胞質内染色によって定量した。陽性細胞のパーセンテージが示されている。
図24】DC-IDO/Agの形質導入効率を示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-DNFGR/Ag、LV-IDO/Ag(DC-IDO/Ag)を形質導入した。コントロールとして、同一のドナーから分化した、LV-CLIPを形質導入したDC(DCCLIP)を使用した。A. DC-Agの形質導入効率を、ΔNGFRの発現に基づいて定量した。B. DC-IDO/Agの形質導入効率を、細胞質内のIDO発現に基づいて定量した。陽性細胞のパーセンテージが示されている。
図25】DC-IL-10/AgがDC-10関連マーカーを発現したことを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNGFR/Ag(DC-Ag)、LV-IL-10/Ag(DC-IL-10/Ag)を形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、又は同一のドナーから分化した、LV-CLIPを形質導入したDC(DCCLIP)を使用した。示されている表面マーカーCD14、CD163+CD141+、ILT4、及びHLA-Gの発現を、FACSによって評価した。
図26】DC-IL-10/Agが高レベルのIL-10を自然発生的に及び活性化で分泌したことを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNGFR/Ag(DC-Ag)、LV-IL-10/Ag(DC-IL-10/Ag)を形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、又は同一のドナーから分化した、LV-CLIPを形質導入したDC(DCCLIP)を使用した。得られた細胞は活性化しないままとしたか、又はLPS/IFNγ(200ng/mlのLPS及び50ng/mlのIFN-g)で48時間活性化した。IL-10のレベルをELISAによって培養上清において測定した。マン・ホイットニーの検定で***P<0.0001、****<0.0001。
図27】DC-IL-10/Agが低レベルのIL-12を活性化で分泌したことを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNFGR/Ag(DC-Ag)、LV-IL-10/Ag(DC-IL-10/Ag)を形質導入した。コントロールとして、形質導入されていないDC(DCUT)、又は同一のドナーから分化した、LV-CLIPを形質導入したDC(DCCLIP)を使用した。得られた細胞をLPS/IFNγ(200ng/mlのLPS及び50ng/mlのIFN-γ)で48時間活性化した。IL-12のレベルを、ELISAによって培養上清において測定した。マン・ホイットニーの検定で*P<0.05。
図28】DC-IL-10/Agが自己CD3+T細胞において低い増殖応答を誘発することを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を、Vpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNFGR/Ag(DC-Ag)、LV-IL-10/Ag(DC-IL-10/Ag)を形質導入した。コントロールとして、同一のドナーから分化した、LV-CLIPを形質導入したDC(DCCLIP)を使用した。HLA-DQ8ドナーを、インスリンBペプチド(InsB)をコードするLV-DCで刺激し、具体的にはLV-ΔNFGR/InsB(DC-InsB)又はLV-IL-10/InsB(DC-IL-10/InsB)を形質導入された細胞が生成され、HLA-DQ2.5ドナーに、グリアジンペプチド(Glia)をコードするLVを形質導入し、具体的にはLV-ΔNFGR/Glia(DC-Glia)又はLV-IL-10/Glia(DC-IL-10/Glia)を形質導入された細胞が生成された。自己CD3+T細胞をeFlour標識し、示されているDCで、10:1の比で6日間刺激した。増殖した細胞のパーセンテージを、増殖色素希釈に基づいて計算した。ウィルコクソンの符号順位検定で*P<0.05。
図29】DC-IL-10/Agが抗原特異的Tr1細胞を促進することを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を、Vpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNFGR/Ag(DC-Ag)(A)、LV-IL-10/Ag(DC-IL-10/Ag)(B)を形質導入した。HLA-DQ8ドナーを、インスリンBペプチド(InsB)をコードするLV-DCで刺激し、具体的にはLV-ΔNFGR/InsB(DC-InsB)又はLV-IL-10/InsB(DC-IL-10/InsB)を形質導入された細胞が生成され、HLA-DQ2.5ドナーに、グリアジンペプチド(Glia)をコードするLVを形質導入し、具体的にはLV-ΔNFGR/Glia(DC-Glia)又はLV-IL-10/Glia(DC-IL-10/Glia)を形質導入された細胞が生成された。自己CD3+T細胞をeFlour標識し、示されているDCで刺激した。10日後、Tr1細胞(CD49b+LAG-3+)及び増殖した細胞を、FACS染色によって評価した。試験した4頭のドナーのうち1頭についての陽性細胞の%が示されている。
図30】DC-IDO/Agが自己CD3+T細胞において抗原特異的増殖を誘発することを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNFGR/Ag(DC-Ag)、LV-IDO/Ag(DC-IDO/Ag)を形質導入した。コントロールとして、同一のドナーから分化した、LV-CLIPを形質導入したDC(DCCLIP)を使用した。HLA-DQ8ドナーを、インスリンBペプチド(InsB)をコードするLV-DCで刺激し、具体的にはLV-ΔNFGR/InsB(DC-InsB)又はLV-IL-10/InsB(DC-IL-10/InsB)を形質導入された細胞が生成され、HLA-DQ2.5ドナーに、グリアジンペプチド(Glia)をコードするLVを形質導入し、具体的にはLV-ΔNFGR/Glia(DC-Glia)又はLV-IL-10/Glia(DC-IL-10/Glia)を形質導入された細胞が生成された。自己CD3+T細胞をeFlour標識し、示されているDCで、10:1の比で6日間刺激した。増殖色素希釈に基づいて計算した、増殖した細胞のパーセンテージが示されている。
図31】DC-IDO/AgがFOXP3+T細胞を促進することを示す図である。HLA-DQ2.5型又はHLA-DQ8型の健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞をVpx-VLPで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNFGR/Ag(DC-Ag)、LV-IDO/Ag(DC-IDO/Ag)を形質導入した。HLA-DQ8ドナーを、インスリンBペプチド(InsB)をコードするLV-DCで刺激し、具体的にはLV-IDO/InsB(DC-IDO/InsB)を形質導入された細胞が生成され、HLA-DQ2.5ドナーに、グリアジンペプチド(Glia)をコードするLVを形質導入し、具体的にはLV-IDO/Glia(DC-IDO/Glia)を形質導入された細胞が生成された。自己CD3+T細胞をeFlour標識し、示されているDCで刺激した。10日後、Treg細胞(FOXP3+CTLA-4+)を、FACS染色によって評価した。
図32】DCIL-10がインビトロでアロ特異的Tr1細胞を促進することを示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を0日目にVpx-VLPで前処置し、DC分化の間に、LV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。並行して、形質導入されていないDCを生成した(DCUT)。7日目に、DCを使用して、末梢血から単離した同種CD4+T細胞を刺激し、10:1の比で培養した。10日後、DCUT[T(DCUT)]、DCGFP[T(DCGFP)]、又はDCIL-10[T(DCIL-10)]と培養したT細胞を、CD4 Miltenyiマイクロビーズを使用して精製し、増殖色素で染色し、その後、初回刺激で使用したDCと同一のドナーから分化したLPS成熟DCで再刺激した。3日後、増殖をフローサイトメトリーによって評価した。培養の最後での増殖細胞のパーセンテージを、全増殖色素希釈によって計算した。各ドットは単一のドナーを表し、データは平均±STDとして示されている。*P≦0.05(ウィルコクソンの符号付き順位検定、両側)。
図33】DCIL-10がインビトロでアロ特異的Tr1細胞を促進することを示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を0日目にVpx-VLPで前処置し、DC分化の間に、LV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。並行して、形質導入されていないDC(DCUT)を生成させた。7日目に、DCを使用して、末梢血から単離した同種CD4+T細胞を刺激し、10:1の比で培養した。10日後、DCUT[T(DCUT)]、DCGFP[T(DCGFP)]、又はDCIL-10[T(DCIL-10)]と培養したT細胞を、CD4 Miltenyiマイクロビーズを使用して精製し、抑制活性を評価した。初回刺激で使用したCD4+細胞に対して自己のCD4+T細胞を、増殖色素で染色し、その後、1:1の比のT(DCIL-10)細胞の存在下又は不存在下で、初回刺激で使用した同一のドナーから分化したmDCで刺激した。培養の最後での増殖細胞のパーセンテージ(左側)を、全増殖色素希釈によって計算した。各ドットは単一のドナーを表し、データは平均±STDとして示されている(A)。1頭の代表的なドナーが示されている(B)。
図34】DCIL-10がhuMiceにおいてアロ特異的T細胞の再活性化を予防することを示す図である。NSGマウスに、2~4×105個のCD34+を移植した。再構成されたhuMiceを、i.v.注射によって、放射線照射した同種APCで免疫化した。7日目に、免疫化されたhuMiceを、形質導入されていない自己DC(DCUT)単独で、又はDCIL-10(DCUT+DCIL-10)若しくはDCGFP(DCUT+DCGFP)と組み合わせてブーストした。PB CD4+細胞の増殖の動態が示されている。
図35】DCIL-10が、表現型が安定な細胞であることを示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を0日目にVpx-VLPで前処置し、DC分化の間にLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。7日目に、DCIL-10を、LPS、加熱殺菌したリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ・ティフィムリウム(S. typhimurium)のフラジェリン、ポリI:C、ODN2006(CpG)、又はサイトカイン(IL-1b、TNF-a、及びIL-6)混合物で活性化した。24時間後、示されている表面マーカーCD1a(A)、CD141(B)、及びCD83(C)の発現を、FACSによって評価した。各ドットは単一のドナーを表し、データは平均±STDとして示されている。*P≦0.05(ウィルコクソンの符号付き順位検定、両側)。
図36】DCIL-10の活性化がILT4の発現を調節することを示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を0日目にVpx-VLPで前処置し、DC分化の間、LV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。7日目に、DCIL-10を、LPS、加熱殺菌したリステリア・モノサイトゲネス、サルモネラ・ティフィムリウムのフラジェリン、ポリI:C、ODN2006(CpG)、又はサイトカイン(IL-1b、TNF-a、及びIL-6)混合物で活性化した。24時間後、示されている表面マーカーHLA-G(A)及びILT4(B)の発現を、FACSによって評価した。各ドットは単一のドナーを表し、データは平均±STDとして示されている。*P≦0.05(ウィルコクソンの符号付き順位検定、両側)。
図37】DCIL-10が機能的に安定な細胞であることを示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を0日目にVpx-VLPで前処置し、DC分化の間に、LV-ΔNGFR/GFP(DCGFP)又はLV-ΔNGFR/IL-10(DCIL-10)を形質導入した。5日目に、DCIL-10及びDCGFPをそれぞれLPS及びLPS又はポリI:Cで活性化した。7日目に、DCを使用して、末梢血から単離した同種CD4+T細胞を刺激し、10:1の比で培養した。10日後、mDCGFP[T(mDCGFP)]、DCIL-10[T(DCIL-10)]、又は刺激されたDCIL-10[T(stimDCIL-10)]と培養したT細胞を、CD4 Miltenyiマイクロビーズを使用して精製した。A. Tr1細胞の頻度。プライミングされたT細胞をCD3、CD4、CD45RA、CD49b、及びLAG-3で染色して、フローサイトメトリーによって、Tr1細胞のパーセンテージを評価した。B. T細胞の増殖。初回刺激されたT細胞を増殖色素で染色し、その後、初回刺激で使用したDCと同一のドナーから分化したLPS成熟DCで再刺激した。3日後、増殖をフローサイトメトリーによって評価した。前駆体集団における増殖細胞のパーセンテージ(右側)をピーク分析で計算し、一方で、培養の最後での増殖細胞のパーセンテージ(左側)を、全増殖色素希釈によって計算した。C.サイトカイン生産プロファイル。細胞培養上清におけるIL-10の生産を、ELISAによって評価した。D.抑制活性。初回刺激で使用したCD4+細胞に対して自己のCD4+T細胞を、1:1の比のT(DCIL-10)細胞又はT(stimDCIL-10)細胞の存在下又は不存在下で、初回刺激で使用したDCと同一のドナーから分化したLPS成熟DCで刺激した。培養の最後での増殖細胞のパーセンテージ(左側)を、全増殖色素希釈によって計算した。各ドットは単一のドナーを表し、データは平均±STDとして示されている。白丸の記号は、LPSで活性化されたDCIL-10で生成した細胞を示し、赤丸の記号は、ポリI:Cで処置されたDCIL-10で刺激された細胞を示す。
図38】ヒトDCへの二方向性LVの効率的な形質導入についての、Vpxの経時的な分析を示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞を5μlのVpx-VLPで1~6時間前処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-ΔNGFR/GFPを形質導入した。形質導入効率を、分化したDCでのΔNGFRの発現に基づいて定量した。
図39】無ヒトCD47LV粒子による増大したトランスジェニック発現を示す図である。健康な対象の末梢血から単離されたCD14+細胞に、DC分化の間の0日目に、LV.PGK.GFPを形質導入した(n=5)。LV.PGK.GFPを、ヒトCD47を過剰発現する(CD47-High LV)又はCD47をノックアウトされている(無CD47 LV)パッケージング細胞系を使用して生成した。コントロールとして、古典的LVを使用した。無ヒトCD47 LV粒子は形質導入効率を増大させ、形質導入効率は、LV粒子huCD47-High又は正常レベルのhuCD47を有する野生型LV粒子と比較した、GFP 293Tの%によって正規化されたGFP+細胞の%として表されている。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当業者の能力の範囲内にある細胞生物学、分子生物学、組織学、免疫学、腫瘍学の従来の技術を利用する。このような技術は文献において説明されている。
【0099】
免疫調節分子
免疫調節分子は、免疫応答を調節する作用物質(タンパク質又は低分子)である。
【0100】
免疫応答は、抗原に対して反応する免疫系の細胞によって仲介されるプロセスである。免疫応答には、病原性微生物及びその生産物に対する免疫性、又は自己抗原に対する自己免疫、アレルゲン性抗原に対するアレルギー、及び同種抗原に対する移植片拒絶が含まれ得る。このプロセスにおいて、関与する主要な細胞は、T細胞及びB細胞、並びにマクロファージ及び樹状細胞を含む抗原提示細胞である。免疫応答は、T細胞の増殖、並びにIL-2、IL-4、IL-10、及びIFNg等のサイトカインの分泌によって測定することができる。
【0101】
免疫調節分子としては、PDL-1、PDL-2、ILT-3、ILT-4、HO-1、ICOS-L、Gal9、HVME、HLA-G、HLA-E等の受容体、IL-10、IL-35、TGF-a、CTLA-4Ig、PGE2、TNFR等の可溶性メディエーター、IDO、Arg1等の酵素、ラパマイシン、デキサメタゾン、ビタミンD3、コルチコステロイド等の薬剤が含まれる。好ましい免疫調節分子は、IL-10及び/又はIDOである。
【0102】
本明細書において使用される場合、用語「増強させる」は、特定の標的の存在又は活性を向上させる、強化する、高める、又は他の様式で増大させる作用を指し得る。例えば、免疫応答の増強は、免疫応答を向上させる、強化する、高める、又は他の様式で増大させることをもたらす任意の作用を指し得る。他の実施例において、核酸の発現の増強としては、限定はしないが、核酸の転写の増大、mRNA量の増大(例えば、mRNAの転写の増大)、mRNAの分解の減少、mRNAの翻訳の増大等が含まれ得る。他の実施例において、タンパク質の発現の増強としては、限定はしないが、タンパク質をコードする核酸の転写の増大、タンパク質をコードするmRNAの安定性の増大、タンパク質の翻訳の増大、タンパク質の安定性の増大等が含まれ得る。
【0103】
マイクロRNA(miRNA)は、転写後のサイレンシングによって細胞の遺伝子発現を制御する、低分子の非コードRNAである。miRNAが標的mRNA配列に部分的に相補的である場合、miRNAは、典型的には、標的mRNAの安定性を低減させ、翻訳を阻害する。逆に、miRNAがこれらのmRNA標的にほぼ完全に相補的である場合、miRNAはmRNAを切断し、その大規模な破壊を引き起こす。miRNAは、全身に送達され遍在的に発現している導入遺伝子の、転写後レベルでの組織特異的な制御を行うことが可能である。miRNAは、異なる組織及び細胞型において別個の発現プロファイルを有しており、これは、細胞遺伝子の転写プロファイル、並びにAPC及び免疫活性化を含む細胞機能を差別的に制御する。したがって、本明細書において提供される方法は、免疫関連miRNA(例えば、APC特異的miRNA)を利用して、免疫細胞(例えばAPC)における導入遺伝子の発現をサイレンシングさせる。
【0104】
miR又はmiRNA標的配列又は「シード配列」は、mRNAへのmiRNAの結合に必須である。標的配列又はシード配列は、miRNAの5’末端から2~7番目の位置にほとんどの場合位置している、保存された7塩基の配列である。miRNAとその標的mRNAとの塩基対合が完全には適合していなくても、「シード配列」は完全に相補的でなければならない。
【0105】
miRNA標的配列は、mRNAの、ひいてはタンパク質の発現を調節する配列である。
【0106】
miR-15a、miR-16-1、miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-20a、miR-19b-l、miR-21、miR-29a、miR-29b、miR-29c、miR-30b、miR-31、miR-34a、miR-92a-l、miR-106a、miR-125a、miR-125b、miR-126、miR-142-3p、miR-146a、miR-150、miR-155、miR-181a、miR-223、及びmiR-424。更に好ましくは、miR155、miR146aがそれぞれ2回反復している。
【0107】
「レシピエント抗原」は、レシピエントによって発現される抗原を指す。本明細書において使用される場合、「エフェクター細胞」は、抗原に対する免疫応答を仲介する細胞を指す。エフェクター細胞の例としては、限定はしないが、T細胞及びB細胞が含まれる。
【0108】
本明細書において使用される場合、用語「免疫応答」としては、T細胞介在性の及び/又はB細胞介在性の免疫応答が含まれる。典型的な免疫応答としては、T細胞応答、例えば、サイトカイン生産及び細胞傷害性、並びにB細胞応答、例えば、抗体生産が含まれる。加えて、免疫応答という用語としては、T細胞の活性化によって間接的に影響を受ける免疫応答、例えば、抗体生産(液性応答)、及びサイトカイン応答性の細胞、例えばマクロファージの活性化が含まれる。免疫応答に関与する免疫細胞としては、B細胞並びにT細胞(CD4+細胞、CD8+細胞、Th1細胞、及びTh2細胞)等のリンパ球;抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞、及び、ケラチン生成細胞、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、オリゴデンドロサイト等の非プロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球等の骨髄細胞が含まれる。
【0109】
抗原は、タンパク質物質に由来するペプチドを認識するT細胞を、及び物質に対する抗体を生産するB細胞を例えば生成することによって免疫系を反応させる、任意の物質である。抗原は1つ又は複数のエピトープを有する。
【0110】
抗原由来ペプチド又は抗原性ペプチド又は抗原性タンパク質は、プロセシングされMHCクラスI分子又はMHCクラスII分子の状況においてT細胞に提示される抗原に由来する、ペプチド又はタンパク質である。これは一般に、9から12個の間のアミノ酸からなる。これは、少なくとも1つの免疫優性ペプチド又はエピトープを有する。抗原由来ペプチドの断片、又は抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質の断片は、抗原性ペプチド又は抗原性タンパク質よりも短い断片であり、ペプチド又はタンパク質の抗原性特性を有する。
【0111】
本明細書において使用される免疫優性ペプチド(又は「エピトープ」)という用語は、B細胞及び/又はT細胞応答を含む免疫応答を引き起こし得る抗原の一部である。抗原は、1つ又は複数の免疫優性ペプチドを有し得る。ほとんどの抗原は多くのエピトープを有し、すなわち、これらは多価である。一部の実施形態において、エピトープは、およそ約10のアミノ酸サイズである。好ましくは、免疫優性ペプチド又はエピトープは、約4~18アミノ酸、更に好ましくは約5~16アミノ酸、更に最も好ましくは6~14アミノ酸、更に好ましくは約7~12、そして最も好ましくは約8~10アミノ酸である。当業者には、一部の状況において、分子の特異的な直鎖状配列よりも三次元構造が抗原性の特異性の主要な基準であり、したがって、1つの免疫優性ペプチド又はエピトープを別の免疫優性ペプチド又はエピトープから区別することが理解される。
【0112】
本発明において、免疫優性ペプチドの正確なプロセシング及び提示を可能にするために、構築物は、免疫優性ペプチド及び可変フランキング領域をコードするヌクレオチド配列を含み、前記フランキング領域の各々は、5から10のアミノ酸からなる。例えば、糖尿病では、免疫優性ペプチドはインスリンB9~23であり、一方、構築物は、インスリンB4~29をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0113】
本発明において、抗原性ペプチド若しくは抗原性タンパク質又はこれらの抗原性断片は、異常な生理学的応答に関連するポリペプチドに由来する。このような異常な生理学的応答としては、限定はしないが、自己免疫疾患、アレルギー反応、及び本発明の他の疾患が含まれる。
【0114】
修飾された抗原由来ペプチド又は抗原性ペプチド
本発明において、抗原由来ペプチド(若しくは抗原性ペプチド)又は免疫優性ペプチド又はエピトープは、例えばT細胞の認識を増強させるように修飾されていてよい。このような修飾としては、限定はしないが、シトルリン化、脱アミド化、メチル化、カルバミル化、グリコシル化、アシル化、アセチル化、ホルミル化、アミド化、ヒドロキシル化が含まれる。
【0115】
例えば、関節リウマチでの抗原由来ペプチド又は免疫優性ペプチド又はエピトープは、有利には、シトルリン化されたペプチドとして修飾されているか、又はグリコシル化されている。セリアック病(グリアジン)での抗原由来ペプチド又は免疫優性ペプチド又はエピトープは、有利には、脱アミド化されたペプチドとして修飾されている。
【0116】
本明細書において使用される用語「抗原」又は「Ag」は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答は、抗体生産又は特異的な免疫適格細胞の活性化のいずれか又は両方を伴い得る。当業者には、事実上全てのタンパク質又はペプチドを含むあらゆる高分子が抗原として機能し得ることが理解される。更に、抗原は、組換えDNA又はゲノムDNAに由来し得る。当業者には、したがって、免疫応答を引き起こすタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分的ヌクレオチド配列を含むあらゆるDNAが、本明細書において使用される用語「抗原」をコードすることが理解される。更に、当業者には、抗原が、遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によって単独でコードされる必要はないことが理解される。本発明が、限定はしないが、2つ以上の遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むこと、及び、これらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を引き起こすために様々な組み合わせで配置されることが、明らかである。更に、当業者には、抗原が「遺伝子」によって全くコードされる必要がないことが理解される。抗原が合成で生成され得るか、又は生体サンプルに由来し得ることが明らかである。このような生体サンプルとしては、限定はしないが、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞、又は生体液が含まれ得る。「抗原提示細胞」(APC)はT細胞を活性化し得る細胞であり、これには、限定はしないが、単球/マクロファージ、B細胞、及び樹状細胞(DC)が含まれる。
【0117】
インバリアント鎖
インバリアント鎖(Ii、CD74)は複数の機能を有するが、主要MHCクラスII(MHCII)シャペロンとして最も良く特徴付けされる。これは、短鎖の細胞質尾部、膜貫通領域、及び内腔ドメインからなるII型タンパク質であり、内腔ドメインは、膜近位の変性領域、主要MHCIIと相互作用する配列(CLIP)、及びC末端三量化ドメインに更に分けることができる(44、45)。マウスは、選択的スプライシングから生じる、2つのIiアイソフォーム、p31及びp41を発現する(46)。ヒトにおいて、対応するアイソフォームは、p33及びp41として公知である。加えて、およそ20%のIi mRNAが、p35及びp43アイソフォームを生成する上流の開始コドンから翻訳される。これらは、強力なジアルギニン(R×R)ER保持モチーフを含む、16アミノ酸の細胞質伸長(cytoplasmic extension)を有する(47~49)。
【0118】
MHCIIと共に合成され、Iiは、(i)MHCII溝へのアクセスを制御するGUARDIAN、(ii)αMHCII鎖及びβMHCII鎖のフォールディング及び対合をアシストするSCAFFOLD、並びに(iii)MHCIIをエンドソーム経路へ向けるLEADER、とみなされ得る。これらのIi機能が、そのCLIP領域がMHCIIのペプチド溝を占める能力に主に依存することが、良く明らかにされている。多くの報告が、エンドソームにおけるIiタンパク質分解によって、HLA-DMがCLIPの溝を放し、わずかな抗原性ペプチドの結合を触媒することが可能となることを示した((50)において概説されている)。
【0119】
MHC II分子のインバリアント鎖(Ii、インバリアント鎖、MHC IIガンマ鎖)は、標的化を仲介することができると文献において最も多く記載されている配列である。ヒトにおけるインバリアント鎖の様々なバリアントが記載されており、IiP33、IiP41、IiP35、及びIiP43とも呼ばれ(51)、これらは、標的化モジュールとして適している。本発明の目的のための標的化モジュールとして適しているさらなる配列は、MHC II分子のベータ鎖である(52)。前記配列の断片もまた、標的化モジュールとして適している。
【0120】
インバリアント鎖は、ヒトにおいてCD74遺伝子によってコードされるタンパク質である。これは、MHCクラスIIタンパク質の形成及び輸送に関与するポリペプチドである。ERにおける新生期のMHCクラスIIタンパク質は、インバリアント鎖(CLIP)のセグメントを結合して、ペプチド結合の溝を形作り、閉じた立体構造の形成を予防する。インバリアント鎖は、ERから、細胞内に取り込まれた抗原タンパク質(外因性経路から)を含有する小胞エンドソームへの、MHCクラスIIの移出を容易にする。
【0121】
ここで、インバリアント鎖という用語は、ヒトインバリアント鎖に対してある程度類似している、全ての天然の又は人工的に生成された完全長の又は断片化された相同遺伝子及びタンパク質を網羅する。
【0122】
Vpx
樹状細胞及びマクロファージ等の骨髄細胞は、骨髄特異的制限因子であるSAMHD1が原因で、ベクター形質導入、特にレンチウイルスベクター形質導入に対して比較的不応性である。SIVmac/HIV-2及び関連するウイルスは、感染の際にSAMHD1の分解を誘発する、ビリオンをパッケージされたアクセサリータンパク質であるVpxをコードすることによって、SAMHD1介在性の制限を緩和する。HIV-1はVpxをコードせず、タンパク質をパッケージすることができない。
【0123】
適切には、Vpxパッケージングモチーフは、レンチウイルスベクタービリオンにパッケージされ得、例えば、レンチウイルスベクタービリオンを生成するために使用されるGag/Pol発現ベクターのp6領域内に置かれ得、レンチウイルスベクタービリオンが次に、高いコピー数でVpxをパッケージする。或いは、Vpxは、Vpxを含有するウイルス様粒子(VLP)で細胞を前処置することによって、DC又はその前駆細胞に提供され得る。
【0124】
マーカー
本発明において、マーカーは、好ましくは、本明細書に記載されるΔNGFR等の選択マーカーであり、そのコード配列は、形質導入された細胞の選択を可能にするために核酸構築物に含まれる。代わりとしては、CD19の細胞質ドメインの欠失によってシグナル伝達経路が無効となっている、トランケート形態のCD19であり得る[93]。
【0125】
バイシストロニック構築物
バイシストロニックベクター又はバイシストロニックベクター構築物は、2つの因子が複数のプロモーターを使用して又は内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントを含んで発現している、構築物である。IRESエレメントは、メッセンジャーRNA(mRNA)配列の中央での翻訳の開始を可能にするヌクレオチド配列である。
【0126】
ベクター
ベクターについて上記で同定された主要なエレメントに加えて、ベクターはまた、プラスミドベクターをトランスフェクトされた細胞又は本開示によって生産されたウイルスに感染している細胞におけるその転写、翻訳、及び/又は発現を可能にする様式で核酸配列に機能可能に連結された、従来の必要な制御エレメントも含む。本明細書において使用される場合、「機能可能に連結された」配列としては、目的の遺伝子と連続している発現制御配列と、トランスで又は少し離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列との両方が含まれる。
【0127】
発現制御配列としては、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、及びエンハンサー配列;スプライシングシグナル及びポリアデニル化(ポリA)シグナル等の効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強させる配列(例えば、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強させる配列;並びに、必要に応じて、コードされた生産物の分泌を増強させる配列が含まれる。ネイティブな、構成的な、誘導性の、及び/又は組織特異的なプロモーターを含む非常に多くの発現制御配列が、当技術分野において既知であり、利用され得る。本明細書において使用される場合、核酸配列(例えば、コード配列)及び調節配列は、調節配列の影響下又は制御下で核酸配列の発現又は転写を行わせるための様式で共有結合している場合、「機能可能に」連結されたと言われる。核酸配列が機能的タンパク質に翻訳されることが望ましい場合、2つのDNA配列は、5'調節配列内のプロモーターの誘発がコード配列の転写を生じさせる場合、及び2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入を生じさせない、(2)プロモーター領域の、コード配列の転写を指示する能力に干渉しない、又は(3)対応するRNA転写産物の、タンパク質に翻訳される能力に干渉しない場合に、機能可能に連結されたと言われる。したがって、プロモーター領域は、プロモーター領域がそのDNA配列の転写に影響し得、その結果、得られた転写産物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳され得る場合、核酸配列に機能可能に連結されている。同様に、2つ以上のコード領域は、こられが、共通のプロモーターからのこれらの転写がインフレームで翻訳されている2つ以上のタンパク質の発現をもたらす様式で連結されている場合、機能可能に連結されている。一部の実施形態において、機能可能に連結されたコード配列は、融合タンパク質をもたらす。一部の実施形態において、機能可能に連結されたコード配列は、機能的RNA(例えば、shRNA、miRNA、miRNA阻害剤)をもたらす。
【0128】
タンパク質をコードする核酸では、ポリアデニル化配列は一般に、核酸配列の後に挿入される。
【0129】
使用され得る別のベクターエレメントは、内部リボソーム侵入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写産物から2つ以上のポリペプチドを生産するために使用される。IRES配列は、2つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を生産するために使用される。これらの及び他の一般的なベクターエレメントの選択は慣習的なものであり、多くのこのような配列が利用可能である。
【0130】
宿主細胞における遺伝子発現に必要な調節配列の詳細な性質は、種、組織、又は細胞型の間で変化し得るが、通常は、必要に応じて、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列、エンハンサーエレメント、及びそれに類するもの等の、それぞれ転写及び翻訳の開始に関与する5’非転写配列及び5’非翻訳配列を含む。特に、このような5’非転写調節配列は、機能可能に繋がれた遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列はまた、必要に応じて、エンハンサー配列又は上流のアクチベーター配列も含み得る。本開示のベクターは、場合によって、5’リーダー配列又はシグナル配列を含み得る。適切なベクターの選択及び設計は、当業者の能力及び裁量の範囲内である。
【0131】
構成的プロモーターの例としては、限定はしないが、レトロウイルスであるラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRプロモーター(場合によってRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によって、CMVエンハンサーを伴う)[例えば、Boshartら、Cell, 41 :521~530 (1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1aプロモーター[Invitrogen社]が含まれる。
【0132】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能とし、また、外因的に供給される化合物によって、温度等の環境因子によって、又は特定の生理学的状態、例えば、細胞の特定の分化状態である若しくは複製中の細胞のみにおける急性期の存在によって、調節され得る。誘導性プロモーター及び誘導系は、限定はしないが、Invitrogen社、Clontech社、及びAriad社を含む、様々な商業的供給源から入手可能である。多くの他の系が記載されており、当業者によって容易に選択され得る。外因的に供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性のヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93:3346~3351 (1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:5547~5551 (1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossenら、Science、268:1766~1769 (1995)、また、Harveyら、Curr. Opin. Chem. Biol.、2:512~518 (1998) も参照されたい)、RU486誘導系(Wangら、Nat. Biotech.、15:239~243 (1997)、及びWangら、Gene Ther.、4:432~441 (1997))、並びにラパマイシン誘導系(Magariら、J. Clin. Invest.、100:2865~2872 (1997))が含まれる。この文脈において有用であり得る更に他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態によって、例えば、温度、細胞の特定の分化状態である又は複製中の細胞のみにおける急性期によって調節されるプロモーターである。
【0133】
別の実施形態において、核酸配列についてネイティブプロモーターが使用される。ネイティブプロモーターは、核酸の発現がネイティブな発現を模倣することが望ましい場合に使用することができる。ネイティブプロモーターは、核酸の発現が経時的若しくは発生的に、又は組織特異的な様式で、又は特異的転写刺激に応答して調節されなくてはならない場合に使用することができる。さらなる実施形態において、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、又はコザックコンセンサス配列等の他のネイティブな発現制御エレメントもまた、ネイティブな発現を模倣するために使用することができる。
【0134】
一部の実施形態において、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能力を付与する。一部のケースにおいて、組織特異的調節配列は、組織特異的な様式で転写を誘発する組織特異的転写因子を結合する。このような組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー等)は、当技術分野において周知である。典型的な組織特異的調節配列としては、限定はしないが、以下の組織特異的プロモーターが含まれる:肝臓特異的なチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、a-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、又は心臓トロポニンT(cTnT)プロモーター。他の典型的なプロモーターとしては、ベータアクチンプロモーター、B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、Gene Ther.、3: 1002~9 (1996);アルファフェトプロテイン(AFP)プロモーター、Arbuthnotら、Hum. Gene Ther.、7: 1503~14 (1996)、骨オステオカルシンプロモーター(Steinら、Mol. Biol. Rep.、24: 185~96 (1997));骨シアロタンパク質プロモーター(Chenら、J. Bone Miner. Res.、11:654~64 (1996))、CD2プロモーター(Hansalら、J. Immunol.、161: 1063~8 (1998));免疫グロブリン重鎖プロモーター;T細胞受容体a-鎖プロモーター、ニューロンプロモーター、例えば、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenら、Cell. Mol. Neurobiol.、13:503~15 (1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioliら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88:5611~5 (1991))、及びニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioliら、Neuron、15:373~84 (1995))が含まれ、これらはとりわけ、当業者に自明である。一部の実施形態において、プロモーターは、筋肉特異的プロモーターであるデスミン460又はトランケート型筋肉クレアチンキナーゼ(tMCK)プロモーターである。
【0135】
当業者にはまた、タンパク質又はポリペプチドをコードする核酸のケースでは、保存的なアミノ酸置換を生じさせる突然変異を核酸配列において行って、タンパク質又はポリペプチドの機能的に同等なバリアント又はホモログを生じさせることが分かる。一部の態様において、本開示は、核酸配列の保存的なアミノ酸置換を生じさせる配列改変を包含する。
【0136】
樹状細胞
樹状細胞は、抗原をプロセシングし、T細胞に提示する能力を有する免疫系のプロフェッショナル抗原提示細胞である。
【0137】
用語「樹状細胞」又は「DC」は、リンパ組織又は非リンパ組織で見られる形態学的に類似の細胞型の多様な集団の任意のメンバーを指す。これらの細胞は、特有の形態学、高レベルの表面MHC-クラスIIの発現を特徴とする。DCは、多くの組織源から単離することができる。DCは、MHC制限型T細胞を感作する高い能力を有し、in situで抗原をT細胞に提示する点で非常に効果的である。
【0138】
抗原は、T細胞の発生及び免疫寛容の間に発現する自己抗原、並びに正常な免疫プロセスの間に存在する異種抗原であり得る。
【0139】
樹状細胞の前駆細胞
樹状細胞の前駆細胞は、CD14を発現する細胞(CD14+)である。
【0140】
自己抗原
免疫優性ペプチドとも呼ばれる自己抗原は、通常、自己免疫疾患に罹患している患者の免疫系によって認識される正常なタンパク質又はタンパク質複合体である。正常な条件下では、これらの抗原は免疫応答を促進しないが、自己免疫疾患においては、これらの抗原は、組織の損傷を生じさせるT細胞応答を促進する。既知の免疫優性ペプチドのリストをTable 2(表2)に示す。
【0141】
自己抗原としては、非特異的な膵島細胞抗原(ICA)、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、インスリノーマ抗原-2(IA-2)、熱ショックタンパク質(HSP)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒性サブユニット関連タンパク質(IGRP)、イモージェン-38、及びβ細胞特異的自己抗原、例えば、亜鉛輸送体-8(ZnT8)、膵臓十二指腸ホメオボックス因子1(PDX1)、クロモグラニンA(CHGA)、並びに膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)を含む、T1Dにおける自己抗原が含まれ、MSにおける自己抗原としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン関連抗原(MAG)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、及び2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(CNPase)、S100βタンパク質、及びトランスアルドラーゼHが含まれ、RAにおける自己抗原としては、免疫グロブリンのFc部分、シトルリン化抗原、カルバミル化抗原、コラーゲン、65-kDa熱ショックタンパク質、軟骨糖タンパク質-アグリカンG1、アグリカンコアタンパク質前駆体(ACAN)、α-フィブリノーゲン(FGA)、ビメンチン(VIM)が含まれ、IBDにおける自己抗原としては、酵素前駆体顆粒膜糖タンパク質2(GP2)、トロポミオシン(TM)、癌胎児性抗原(CEA)が含まれ、血管炎における自己抗原は、ベータ-2-糖タンパク質1(b2GP1)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、プロテイナーゼ3/ミエロブラスチン(PR3)であり、重症筋無力症における自己抗原は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)、筋肉特異的キナーゼ(MuSK)であり、自己免疫性ぶどう膜炎における自己抗原は、網膜S-抗原(PDS抗原)、異種核リボヌクレオタンパク質H3(Hnrph3)、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)、細胞レチンアルデヒド結合タンパク質(cRALBP)であり、尋常性天疱瘡における自己抗原は、デスモグレイン-31(Dsg1)、デスモグレイン-3(Dsg3)、ペンファキシン(PX)である。
【0142】
【表2A】
【0143】
【表2B】
【0144】
【表2C】
【0145】
【表2D】
【0146】
このような既知の免疫優性ペプチドのバリアントもまた、本発明に含まれる。バリアントは、免疫優性ペプチドの抗原性特性を維持する。
【0147】
無害抗原
無害抗原は体内に存在する物質であり、通常は、活性な免疫応答を促進しない(グリアジン、オボアルブミン、ピーナッツ由来のタンパク質、乳由来のタンパク質、小麦由来のタンパク質等を含む食物抗原)。
【0148】
アレルゲン
アレルゲンは、免疫応答を引き起こし、アレルギー反応を生じさせ得る、通常は無害の物質である。アレルゲンとしては、グルテンを含有するシリアル、ピーナッツ由来のタンパク質、チモシーグラスアレルゲン(Phl p 1、2、5a、5b、6)、マメ毒由来のタンパク質、カバノキ花粉(ベツラ・ベルコサ(Betula verrucosa))のBet v 1、チリダニ(ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus))のDer p 1及びDerp 2、梨(セイヨウナシ(Pyrus communis))のPyr c 5、並びにヘーゼルナッツ(セイヨウハシバミ(Corylus avellana))のCor a 1が含まれる。
【0149】
CD4+T細胞及びCD8+T細胞の応答の調節
CD4+T細胞及びCD8+T細胞の応答の調節は、T細胞の、異なるレベルの炎症誘発性(すなわち、IFN-g、IL-2、GM-CSF)又は抗炎症性(すなわち、IL-10、TGF-β)のサイトカイン、グランザイムを生産する、及び受容体(すなわち、CD69、CD25、CTLA-4)を発現する能力に対する影響を指す。
【0150】
炎症誘発性及び抗炎症性サイトカインのレベルは、当技術分野において公知の任意の方法によって測定することができる。
【0151】
インビトロ及び/又はインビボでの抗原特異的CD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖の調節
インビトロ及び/又はインビボでの抗原特異的CD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖の調節は、細胞の、T細胞の活性化及び増殖を阻害する特性を指す。
【0152】
制御性DCの生成
制御性DCの生成は、DCを調節して、DCが高レベルの抗炎症性サイトカイン(すなわち、IL-10)及び少量の炎症誘発性サイトカイン(すなわち、IL-12、TNF-α等)を分泌し得るようにし、また、寛容原性分子(すなわち、HLA-G、ILT4、IDO)を発現し得るようにするための方法を指す。
【0153】
抗原特異的Tr1及び/又はFOXP3+Treg細胞の増殖の促進
抗原特異的Tr1及び/又はFOXP3+Treg細胞の増殖の促進は、細胞の、病原性の活性を有するCD4 T細胞を、T細胞応答を抑制し得る制御性細胞にインビトロ及び/又はインビボで誘発する/転換する特性を指す。
【0154】
寛容原性細胞
寛容原性細胞は、インビトロ及び/又はインビボで制御性細胞の生成を促進する細胞である。
【0155】
MHCクラスI及びクラスIIの両方の状況における抗原提示
MHCクラスI及びクラスIIの両方の状況における抗原の提示は、細胞の、CD4+T細胞及びCD8+T細胞をそのTCRを介して抗原特異的な様式で活性化する特性である。
【0156】
免疫療法剤
これらは、他のラパマイシン、デキサメタゾン、ビタミンD3等の中の、免疫応答を誘発する、増強させる、又は抑制することによって疾患を処置し得る分子のクラスである。
【0157】
細胞の命名
LV-DCは、レンチウイルスベクター(LV)を形質導入されている樹状細胞である。
【0158】
tolDCは、寛容原性活性を有する樹状細胞である。
【0159】
LV.IiOVAは、OVAペプチドと融合したインバリアント鎖をコードするLVである。
【0160】
LV.OVA.miRNAは、OVAペプチド並びにmiRNA155及びmiRNA146aの標的配列と融合したインバリアント鎖をコードする、一方向性LVである。
【0161】
LV-IL-10/OVAは、OVAペプチドと融合したインバリアント鎖及びIL-10を共コードする、二方向性LVである。
【0162】
LV-IDO/OVAは、OVAペプチドと融合したインバリアント鎖及びIDOを共コードする、二方向性LVである。
【0163】
DC-OVAは、OVAペプチドと融合したインバリアント鎖をコードするLV(LV-IiOVA)を形質導入されている樹状細胞である。
【0164】
DC-OVAmiRNAは、OVAペプチド並びにmiRNA155及びmiRNA146aの標的配列と融合したインバリアント鎖をコードするLVを形質導入されている樹状細胞である。
【0165】
DC-IL-10/OVAは、OVAペプチドと融合したインバリアント鎖及びIL-10を共コードするLV(LV-IL-10/OVA)を形質導入されている樹状細胞である。
【0166】
DC-IDO/OVAは、OVAペプチドと融合したインバリアント鎖及びIDOを共コードするLV(LV-IDO/OVA)を形質導入されている樹状細胞である。
【0167】
OTII CD4+T細胞は、OVA323~339ペプチドを認識する、TCRトランスジェニックマウスから単離されたCD4+T細胞である。
【0168】
OTI CD8+T細胞は、OVA242~353ペプチドを認識する、TCRトランスジェニックマウスから単離されたCD8+T細胞である。
【0169】
OVAペプチドをパルスしたDCは、OVAペプチドをパルスした樹状細胞である。
【0170】
DC-UnTは、形質導入されていない樹状細胞である。
【0171】
DC-GFP又はDCGFPは、GFPをコードするLV(LV.GFP)を形質導入されている樹状細胞である。
【0172】
DC-InsBは、InsBと融合しているインバリアント鎖をコードするLV(LV.InsB)を形質導入されている樹状細胞である。
【0173】
DC-InsB.miRNAは、InsB並びにmiRNA155及びmiRNA146aの標的配列と融合しているインバリアント鎖をコードするLV(LV.InsB.miRNA)を形質導入されている樹状細胞である。
【0174】
DC-IL-10/InsBは、InsBペプチドと融合しているインバリアント鎖及びIL-10をコードするLV(LV.IL-10/InsB)を形質導入されている樹状細胞である。
【0175】
DC-IDO/InsBは、InsBと融合しているインバリアント鎖及びIDOをコードするLV(LV.IDO/InsB)を形質導入されている樹状細胞である。
【0176】
LV-ΔNGFR/GFPは、ΔNGFR及びGFPを共コードしている二方向性LVである。
【0177】
LV-GFPは、GFPをコードする一方向性LVである。
【0178】
LV-IL-10は、ΔNGFR及びIL-10を共コードする二方向性LVである。
【0179】
DCIL-10は、ΔNGFR及びIL-10をコードするLVを形質導入されている樹状細胞である。
【0180】
DC-10は、IL-10、IL-4、及びGM-CSFの存在下でCD14+細胞から分化している樹状細胞である。
【0181】
同種CD3+T細胞は、アロ抗原に特異的なT細胞である。
【0182】
アロ特異的なアネルギー性CD4+T細胞は、増殖しないアロ抗原に特異的なCD4+T細胞である。
【0183】
成熟DC(mDC)は、IL-4及びGM-CSFの存在下でCD14+細胞から分化しており、LPSで活性化されている、樹状細胞である。
【0184】
アロmDCは、IL-4及びGM-CSFの存在下で同種CD14+細胞から分化しており、LPSで活性化されている、樹状細胞である。
【0185】
アロ特異的IL-10生産Tr1細胞は、IL-10を生産し、CD49b及びLAG-3を発現するアロ抗原に特異的なT細胞であり、そして、アネルギー性であり、T細胞応答を抑制する。
【0186】
LV-ΔNGFR/Agは、抗原由来ペプチドと融合したインバリアント鎖及びΔNGFRを共コードする、二方向性LVである。
【0187】
LV-IL-10/Agは、抗原由来ペプチドと融合したインバリアント鎖及びIL-10を共コードする、二方向性LVである。
【0188】
LV-CLIPは、インバリアント鎖のCLIPペプチド及びΔNGFRを共コードする、二方向性LVである。
【0189】
DC-IDO/Agは、抗原由来ペプチドと融合したインバリアント鎖及びIDOをコードするLVを形質導入されている樹状細胞である。
【0190】
hLV-DCは、ヒトCD14+細胞から分化しており、LVを形質導入されている、樹状細胞である。
【0191】
DCUTは、IL-4及びGM-CSFの存在下で同種CD14+細胞から分化している樹状細胞である。
【0192】
T(DCUT)細胞は、CD4+T細胞を同種DCUTと10日間培養することによって生成されたT細胞である。
【0193】
T(DCGFP)は、CD4+T細胞を同種DCGFPと10日間培養することによって生成されたT細胞である。
【0194】
T(DCIL-10)Tは、CD4+T細胞を同種DCIL-10と10日間培養することによって生成されたT細胞である。
【0195】
T(stimDCIL-10)は、CD4+T細胞をLPS又はポリI:Cで刺激された同種DCIL-10と10日間培養することによって生成されたT細胞である。
【0196】
一部の態様において、本開示は、トランスフェクトされた又は形質導入された宿主細胞を提供する。用語「トランスフェクション」又は「形質導入」は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために使用され、細胞は、外因性DNAが細胞膜の内部に導入されている場合、「トランスフェクト」又は「形質導入」されている。多くのトランスフェクション/形質導入技術が、一般に、当技術分野において既知である。例えば、Grahamら(1973) Virology、52:456、Sambrookら(1989) Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら(1986) Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、及びChuら(1981) Gene 13: 197を参照されたい。このような技術は、ヌクレオチド組み込みベクター及び他の核酸分子等の1つ又は複数の外因性の核酸を適切な宿主細胞に導入するために使用することができる。
【0197】
「宿主細胞」は、目的の物質を有する又は有し得る、任意の細胞を指す。多くの場合、宿主細胞は哺乳動物細胞である。宿主細胞は、DNA構築物、プラスミド、アクセサリー機能ベクター、又はレンチベクターの生産に関連する他の移入DNAの、レシピエントとして使用することができる。この用語には、トランスフェクト/形質導入されているオリジナル細胞の子孫が含まれる。したがって、本明細書において使用される「宿主細胞」は、外因性のDNA配列をトランスフェクト/形質導入されている細胞を指し得る。天然の、偶発的な、又は意図的な突然変異に起因して、単一の親細胞の子孫がオリジナルの親と形態学的に又は遺伝的に必ずしも完全に同一である必要も、全てのDNAが相補的である必要もないことが理解される。
【0198】
本明細書において使用される場合、用語「細胞系」は、インビトロで連続的な又は長期の成長及び分割が可能な細胞の集団を指す。多くの場合、細胞系は、単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。このようなクローン集団の保管又は移動の際に核型において自然発生的な又は誘発された変化が生じ得ることも更に、当技術分野において既知である。したがって、言及される、細胞系に由来する細胞は、祖先細胞又は培養物と正確に同一でなくてもよく、言及される細胞系は、このようなバリアントを含む。
【0199】
本明細書において使用される場合、用語「組換え細胞」又は「遺伝子修飾された細胞」は、生物学的に活性なポリペプチドの転写又はRNA等の生物学的に活性な核酸の生産をもたらすDNAセグメント等の外因性のDNAセグメントが導入されている細胞を指す。
【0200】
本明細書において使用される場合、用語「ベクター」としては、適正な制御エレメントと結び付くと複製し得、細胞間で遺伝子配列を移動させ得る、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオン等の任意の遺伝子エレメントが含まれる。したがって、この用語としては、クローニング媒体及び発現媒体、並びにウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターが含まれる。一部の実施形態において、有用なベクターは、転写される核酸セグメントがプロモーターの転写制御下にあるベクターであるとされる。「プロモーター」は、遺伝子の特異的転写を開始させるために必要な、細胞の合成機構又は導入された合成機構によって認識されるDNA配列を指す。表現「機能可能に位置する」、「制御下にある」、又は「転写制御下にある」は、プロモーターが、RNAポリメラーゼの開始及び遺伝子の発現を制御するために、核酸に対して正確な位置及び方向にあることを意味する。用語「発現ベクター又は構築物」は、核酸をコードする配列の一部又は全てが転写され得る核酸を含有する、あらゆるタイプの遺伝子構築物を意味する。一部の実施形態において、発現は、例えば、転写された遺伝子から生物学的に活性なポリペプチド産物又は阻害性RNA(例えば、shRNA、miRNA、miRNA阻害剤)を生成させるための、核酸の転写を含む。
【0201】
本発明において、用語「インドールアミンジオキシゲナーゼ」又は「IDO」は、IDO1(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、EC 1.13.1 1.52)又はIDO2(インドールアミン-ピロール2,3ジオキシゲナーゼ様1、EC 1.13.11.-)を意味し、これらは、トリプトファンを異化し得、APCによって発現され得る、2つの異なるタンパク質である。
【0202】
「免疫寛容」は、抗原(自己抗原又は異種抗原)に対する応答の欠如、及び誘発された天然の免疫寛容又は誘発された免疫寛容(すなわち、免疫系の意図的な操作)を意味する。
【0203】
「自己抗原」は、別の生物におけるエフェクターT細胞の応答又は抗体の形成の誘発において抗原として作用するが、親生物の健康な免疫系はそれに対して免疫寛容を有する、生物の任意の分子又は化学基を意味する。ある特定の状況下において、例えば、対象が自己免疫疾患に罹患している又は罹患しやすい場合、親生物は自己抗原に対して免疫寛容を有しておらず、特異的適応免疫応答が自己抗原に対して開始される。
【0204】
「外因性の治療物質」は、対象の外部に由来する、対象を処置するための任意の治療物質を意味する。
【0205】
用語「共培養」は、2つ(以上)の細胞型を互いの存在下で培養することを意味する。
【0206】
当業者には、本明細書に記載される組成物及び方法を、本明細書の他の箇所に記載される疾患及び障害を処置するための現行の治療アプローチと組み合わせて使用することができることが理解される。非限定的な例として、本発明の細胞は、免疫抑制薬療法の使用と組み合わせて使用することができる。細胞を免疫抑制薬と組み合わせて使用することの利点は、移植体レシピエント等の対象における免疫応答の重症度を改善するために本発明の方法を使用することによって、使用する免疫抑制性薬療法の量及び/又は免疫抑制性薬療法の投与頻度が低減され得ることである。免疫抑制薬療法の使用を低減させることの利点は、免疫抑制薬療法に関連する全身的な免疫抑制及び望ましくない副作用が軽減することである。本発明の細胞が、自己免疫疾患若しくは自己免疫障害、炎症性疾患若しくは炎症性障害、又はドナー組織の宿主拒絶若しくは移植片対宿主病等の移植体に関連する疾患若しくは障害等の疾患又は障害の予防又は処置のために、反復して又は「単回」療法として、レシピエントに投与され得ることも検討される。移植体のレシピエントに細胞を単回投与することによって、慢性的な免疫抑制薬療法の必要性がなくなる。しかし、必要に応じて、細胞の複数回の投与もまた利用することができる。
【0207】
本明細書において提供される開示に基づいて、樹状細胞又はその前駆体は、任意の由来源から、例えば、組織ドナー、移植体レシピエント、又は他の無関係の由来源(全く異なる個体若しくは種)から得ることができる。細胞は、T細胞に関して自己であり得る(同一の宿主から得られる)か、又はT細胞に関して同種であり得る。樹状細胞又はその前駆体が同種であるケースでは、細胞は、それに対してT細胞が応答する移植体に関して自己であり得るか、又は、細胞は、T細胞の由来源及びそれに対してT細胞が応答する移植体の由来源の両方に関して同種である哺乳動物から得ることができる。加えて、T細胞は、T細胞に対して異種であり得(異なる種の動物から得られる)、例えば、マウス細胞は、ヒトT細胞の活性化及び増殖を抑制するために使用され得る。
【0208】
本発明の別の態様は、対象への細胞の投与経路を包含する。細胞は、その状況下で適切な経路によって投与することができる。細胞は、全身的に、すなわち、静脈内注射若しくは腹腔内注射によって非経口的に投与することができるか、又は骨髄等の特定の組織又は器官に標的化することができ、細胞は、細胞の皮下移植を介して、又は結合組織内、例えば筋肉内への細胞の注射によって、投与することができる。
【0209】
細胞は、約1×104から約20×107個、好ましくは、約5x106個細胞/mlの濃度で、適切な希釈剤に懸濁することができる。注射溶液のための適切な賦形剤は、緩衝生理食塩水又は他の適切な賦形剤等の、細胞と及びレシピエントと生物学的及び生理学的に適合する賦形剤である。投与のための組成物は、適正な無菌性及び安定性に応じた標準的な方法に従って製剤、生産、及び保管することができる。
【0210】
細胞の投与量は広い限度内で変化し、それぞれの特定のケースにおける対象の要求に応じて調整することができる。使用される細胞の数は、レシピエントの体重及び状態、投与の回数及び/又は頻度、並びに当業者公知の他の変数に応じる。
【0211】
自己免疫疾患
自己免疫疾患は、自己抗原に対する異常な免疫応答から生じる状態であり、1型糖尿病、自己免疫性腸症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、自己免疫性筋炎、乾癬、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本病、重症筋無力症、血管炎、悪性貧血、セリアック病、自己免疫性肝炎、円形脱毛症、尋常性天疱瘡、白斑、再生不良性貧血、自己免疫性ぶどう膜炎を含む。
【0212】
自己免疫疾患としてはまた、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)、強直性脊椎炎、抗GBM腎炎、抗リン脂質症候群、変形性関節症、喘息、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性活動性慢性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、バロー病、ベーチェット病、バージャー病、水疱性類天疱瘡、心筋症、慢性疲労免疫不全症候群、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、大腸炎、頭蓋動脈炎、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、皮膚筋炎及びJDM、デビック病、湿疹、本態性混合型クリオグロブリン血症、好酸球性筋膜炎、線維筋痛-線維筋炎、線維化性肺胞炎、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー疾患、ギラン・バレー症候群、橋本病、肝炎、ヒューズ症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、過敏性腸症候群、川崎病、扁平苔癬、ルポイド肝炎、ループス/SLE、ライム病、メニエール病、混合性結合組織病、筋炎/JM、JDM、及びJA、骨粗しょう症、扁平部炎、尋常性天疱瘡、多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、レイノー症候群、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、強膜炎、強皮症、粘性血液症候群、スティル病、スティッフマン症候群、シデナム舞踏病、高安動脈炎、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、並びにウィルソン症候群が含まれる。
【0213】
好ましい自己免疫疾患としては、血管炎、例えば、劇症型抗リン脂質抗体症候群(アシャーソン症候群という名でもある)、巨細胞性動脈炎、及び抗ANCA血管炎、重症筋無力症、難治性セリアック病、自己免疫性ぶどう膜炎、例えば、ベーチェット病、尋常性天疱瘡、巨細胞性心筋炎、グレーブス病、アジソン病、並びに多発性血管炎を伴う肉芽腫症が含まれる。
【0214】
材料及び方法
対象。全てのプロトコルは、治験審査委員会によって承認されており、サンプルは、ヘルシンキ宣言に従った文書のインフォームドコンセントの下で回収された。
【0215】
細胞の調製及び細胞系。Balb/cマウス、C57Bl/6マウス、又はNODマウスから単離された骨髄細胞を、rmGM-CSF(25ng/mL、R&D Systems社)の存在下で8日間培養し続け、DCに分化させた。
【0216】
末梢血単核球(PBMC)を、勾配で遠心分離することによって調製した。CD4+T細胞をCD4 T細胞単離キット(Miltenyi Biotec社)で精製し、>95%の純度を得た。CD4+T細胞を次いで、抗CD45RO結合磁気ビーズ及びLDネガティブセレクションカラム(Miltenyi Biotech社)を使用して、CD45RO+細胞を枯渇させた。選択された集団におけるCD4+CD45RA+の割合は、一貫して90%よりも大きかった。CD14+T細胞及びCD3+T細胞を、CD14+マイクロビーズ及びCD3+マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)でのポジティブセレクションによって精製し、それぞれ>95%の純度を得た。
【0217】
CD14+単球を、CD14 MicroBeads(Miltenyi Biotech社)を製造者の指示に従って使用して、ポジティブセレクションによってPBMCから単離した。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Lonza社)を添加した、又は5%ヒト血清(HS)(EuroClone社)、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza社、イタリア共和国)、2mMのL-グルタミン(Lonz社、イタリア共和国)を添加したRPMI 1640(Lonza社)(DC培地)において、37℃で、10ng/mlのrhIL-4(R&D Systems社)及び100ng/mlのrhGM-CSF(Genzyme社)及び10ng/mlのrhIL-10(BD, Bioscience社)の存在下で7日間培養して、DC-10を分化させた。5日目の、rhIL-4及びrhGM-CSFと培養した細胞を、1μg/mlのLPS(Sigma社)で更に2日間成熟させて、mDCを生成させた。7日目にDCを回収し、表現型を分析し、そしてT細胞を刺激するために使用した。
【0218】
一部の実験において、HLA-DQ8+細胞又はHLA-DQ2.5+CD14+細胞を、100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Euroclone社)を添加した、無血清DC培地(CellGenix社)と、10ng/mlのrhIL-10(CellGenix社)を有する又は有さない10ng/mlのrhIL-4及び100ng/mlのrhGM-CSF(Miltenyi Biotec社)の存在下で、培養培地1ml当たり106個細胞の密度で培養した。3日目に、細胞に、1mlの無血清培地並びに20ng/mlのrhIL-4及び200ng/mlのrhGM-CSF(Miltenyi Biotec社)を添加した。未成熟DCを、7日目に、その後の表現型及び機能の分析のために回収した。
【0219】
DNAの抽出及びHLA-DQのスクリーニング。HLA-DQ8+及び/又はHLA-DQ2.5+の健康なドナーを選択するために、ゲノムDNAを、QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen社)を製造者の指示に従って使用して、200μlの全血から抽出した。HLA-DQ8又は-DQ2.5対立遺伝子の存在又は不存在を、Eu-GEN Kit(Eurospital社)を製造者の指示に従って使用して、PCRによって判定した。
【0220】
プラスミドの構築。InsB4~29又はOVA315~353をコードする配列に融合したマウスインバリアント鎖(CD74)のコード配列を合成し(GeneArt社)、いくつかのLV骨格にクローニングした:hPGK.XXX.WPRE(84)にクローニングしてLV-IiOVA及びLV-IiInsBを得、hPGK.XXX.WPRE miR155T.mir146aTにクローニングしてLV-IiOVAmiRNA及びLV-IiInsBmiRNAを得、そして、二方向性骨格hPGK.XXX.WPRE.mCMVIL10.SV40PA(85)及びhPGK.XXX.WPRE.mCMVIDO.SV40PAにクローニングしてLV-IL-10/OVA及びLV-IL-10/InsB並びにLV-IDO/OVA及びLV-IDO/InsBをそれぞれ得た。
【0221】
ヒトIL-10のコード配列をpH15C(ATCC番号68192)から切除し、549bpの断片をpBluKSM(Invitrogen社)のマルチクローニング部位にクローニングして、pBluKSM-hIL-10を得た。555bpの断片を、pBluKSM-hIL-10からhIL-10を切除することによって得、1074.1071.hPGK.GFP.WPRE.mhCMV.dNGFR.SV40PA(85)(ここではLV-ΔNGFRという名である)にライゲーションして、LV-IL-10/ΔNGFRを得た。二方向性プロモーター(ヒトPGKプロモーター、及び反対方向でのCMVプロモーターの最小のコアエレメント)の存在によって、2つの導入遺伝子の共発現が可能となる。LV-IL-10/ΔNGFRの配列を、パイロシーケンシング(Primm社)によって検証した。
【0222】
インスリンBペプチド4~29(InsB4~29)又はa2-グリアジン51~80をコードする配列に融合したヒトインバリアント鎖のp33アイソフォーム(lip33)のコード配列を合成し(GeneArt社)、以下の二方向性骨格:hPGK.XXX.WPRE.mCMV.YYYY.SV40PAにクローニングして、LV-lip33Ag/ΔNGFR、LVlip33Ag/IL-10、又はLVlip33抗原/IDOを得た。コントロールとして、抗原をコードする配列を、クラスII関連インバリアント鎖ペプチド(CLIP)で置き換えた。得られたプラスミドの配列を、パイロシーケンシング(GATC社)によって検証した。
【0223】
ベクターの生産及び滴定。VSV-G偽型の3代目のbdLVを、293T細胞へのCa3PO4一過性4プラスミドコトランスフェクションによって生産し、記載された通りに超遠心分離によって濃縮した(40)。力価を限界希釈によって推定し、ベクター粒子を、HIV-1 Gag p24抗原免疫捕捉(NEN Life Science Products社)によって測定し、そしてベクターの感染性を、力価と粒子との間の比として計算した。力価は、5×108から6×109個の形質導入単位/mlの範囲であり、感染性は、1ngのp24当たり5×104から5×105形質導入単位であった。
【0224】
樹状細胞の形質導入。Balb/cマウス、C57Bl/6マウス、又はNODマウスから単離された骨髄細胞を、rmGM-CSF(25ng/mL、R&D Systems社)の存在下でDCに分化させ、2日目に、感染多重度(MOI)3で、LVを形質導入した。
【0225】
CD14+単球を、1~5μlのウイルスタンパク質X(VPX)を含有するウイルス様粒子(VlP)の存在下で、上記に記載した通りに平板培養した。6時間後、LVを、感染多重度(MOI)5で添加した。14~18時間後、半分量の培地を補充した。形質導入細胞の効率を、ΔNGFRの細胞表面発現に基づいて、フローサイトメトリーによって、形質導入されたコントロールで評価した。
【0226】
サイトカインの判定。単球由来のDCを7日目に回収し、PBSで洗浄し、そして、単独の又は200ng/mlのLPS及び50ng/mlのヒトIFNγを添加した新鮮な培地において、50万個細胞/mlの密度で、再び平板培養した。48時間後、上清を回収し、サイトカイン濃度をELISAによって判定した。
【0227】
増殖及び抑制のアッセイ。CD4+T細胞及びCD8+T細胞の抗原特異的増殖を評価するために、OTII細胞及びOTI細胞をeFluor-670増殖色素(Invitrogen社)で製造者の指示に従って標識した。eFluor標識されたT細胞を、単独で又はLV-DCの存在下で(10:1のT:DC比)、200μlの最終容積でU底96ウェルプレートにおいて平板培養した。5日後、T細胞の増殖をフローサイトメトリーによって評価した。細胞は、BD-FACSCanto II分析器を使用して捕捉し、分析は、Flow-Joソフトウェアを使用して行った。
【0228】
抗原特異的増殖を評価するために、単球由来のDCに対して自己のCD4+T細胞を解凍し、1~2時間、37℃で休ませ、そして、efluor-450増殖色素(Invitrogen社)で、製造者の指示に従って標識した。15万個のeFluor標識されたCD4+T細胞を、単独で、又はLV-lip33Ag/ΔNGFR若しくはLVlip33Ag/IL-10若しくはコントロールのLV-lip33-CLIPを形質導入されているDCの存在下で(10:1のT:DC比)、200μlの最終容積で、丸底96ウェルプレート内で平板培養した。6日後、CD4+T細胞の増殖をフローサイトメトリーによって評価した。細胞は、BD-FACSCanto II分析器を使用して捕捉し、分析は、Flow-Joソフトウェアを使用して行った。
【0229】
フローサイトメトリー分析。マウスBM-LVDCの表現型を、分化の最後である8日目にフローサイトメトリーによって決定した。細胞表面抗原の検出のために、以下のモノクローナル抗体(mAb)を使用した:抗CD11c-V450(e-bioscience社)、抗CD86-Pe-Cy7(BD Biosciences社)、抗CD80-PerCPCy5.5(BD Biosciences社)、抗IAb-PE(BD Biosciences社)。OTII細胞を、抗CD4-Pe-Cy7(BD Biosciences社)及び抗CD45.2-パシフィックブルー(BD Biosciences社)を使用して同定した。
【0230】
単球に由来するヒトLV-DCの表現型を、7日目にフローサイトメトリーによって判定した。細胞表面抗原の検出のために、以下のモノクローナル抗体(mAb)を使用した:抗DC-SIGN-Pe(BD Biosciences社)、抗CD14-FITC(BD Biosciences社)、抗HLADR-APC-Cy7(BD Biosciences社)、CD86-PercP-Cy5.5(BD Biosciences社)、CD83-BV421(BD Biosciences社)、DNGFR-APC(Miltenyi Biotec)、CD11c-PE-CY7(BD Biosciences社)。寛容原性分子の細胞表面発現もまた判定した:抗HLAG-PE(ExBio社)、抗ILT4-APC(R&D Systems社)、抗CD163-PcPCy5.5(BD Biosciences社)、抗CD141-BV421(BD Biosciences社)。細胞生存能力を、LIVE/DEAD細胞生存能力アッセイ(Thermo Fisher社)を製造者の指示に従って使用して評価した。IL-10を生産するDCの頻度を評価するために、LV-DCを、14~16時間、200ng/mlのLPS及び50ng/mlのIFNgとブレフェルジンA(10μg/ml)とで刺激した。IL-10の細胞内発現を、抗IL-10-Pe(BD Pharmingen社)を使用して、以前に記載された通りに判定した(Levings JI 2001)。IDOを発現するDCの頻度を評価するために、抗ヒトIDO-Pe(e-bioscience社)での細胞内染色を、2%ホルムアルデヒド溶液(Thermo Fisher社)での20分間の固定及び0.5%サポニン(Sigma社)を含有するPBS 2%FBSでの10分間の透過処理の後に行った。
【0231】
表面染色後のFOXP3(クローン259D、Biolegend社、USA)の検出のために、細胞を固定し、透過処理し、そして、Foxp3染色バッファーセットを製造者の指示に従って(eBioscience社、USA)を用いて染色した。表面染色後のグランザイムB(クローンMHGB04、Invitrogen社、USA)の発現のために、細胞を固定し、透過処理し、そして、BD Cytofix/Cytoperm(商標)キットを製造者の指示に従って用いて(カタログ番号554714、Biolegend、USA)染色した。サンプルは、BD-FACSCantoII又はBD-LSR Fortessa分析器を使用して捕捉し、分析は、Flow-Joソフトウェアを使用して行った。
【0232】
マウス。C57Bl/6マウス、メスNOD(NOD/LtJ)マウス、及びBalb/cマウスを購入し(Charles River Laboratories社)、特定病原体のない条件で飼育した。本発明者らは、本発明者らの実験室において、交配を行い、Foxp3レポーターマウスを得た。本発明者らは、週齢及び性別が適合した、8週齢から12週齢の間の同腹子を使用した。CD45.1細胞(95%)及びCD45.2 OTII/FirTiger(5%)BM細胞を、致死線量を照射したCD45.1マウスに移植することによって、キメラマウスを得た。OTII/FirTiger CD4+T細胞は、OVA323~339を認識し、RFP及びGFPをそれぞれfoxp3及びil10のレポーター遺伝子として発現する、TCRトランスジェニック細胞である。
【0233】
NODマウスは、血中グルコース測定値がBayer BREEZE血中グルコースモニタリングシステム(Bayer社)によって判定すると2日間連続して≧250mg/dlであった場合、糖尿病性であるとみなされた。全ての手順は、San Raffaele Institute、Milan(IUCAC 416及び604)の動物実験委員会(IACUC)によって再検討され、承認された。
【0234】
GvHDモデル:Balb/cマウスに致死線量を照射し、C57Bl/6 BM細胞(107)及び脾細胞(5×106個)を静脈内注射した。2日目に、マウスにDCGFP及びDCIL-10(2x106個)を養子移入し、マウスの体重減少及び生存をモニタリングした。
【0235】
インビトロでヒトTreg細胞を生成するための方法。抗原特異的CD4+Treg細胞を誘発するために、単球由来のDCに対して自己のT細胞を解凍し、1~2時間、37℃で休ませ、そして、efluor-450増殖色素(Invitrogen社)で、製造者の指示に従って標識した。106個のeFluor標識されたCD4+T細胞を、LV-lip33Ag/DNGFR、LVlip33Ag/IL-10、LVlip33Ag/IDO、又はコントロールのLV-lip33-CLIPを形質導入されているDCの存在下で(10:1のT:DC比)、2mlの最終容積で、24ウェルプレート内で平板培養した。10日後、CD4+T細胞の増殖をフローサイトメトリーによって評価し、LVlip33Ag/IL-10のケースでは、TR1細胞の存在をCD49b及びLAG-3の共発現によって評価し、LVlip33抗原/IDOのケースでは、FOXP3+Tregの存在を、増殖細胞でのFOXP3及びCTLA-4の共発現によって評価した。細胞は、BD-FACSCanto II分析器を使用して捕捉し、分析は、Flow-Joソフトウェアを使用して行った。
【0236】
Vpx-VLPの生産。濃縮されたVpx組み込みウイルス様粒子(VLP)を、293T細胞へのCa3PO4一過性2プラスミド(VSV-Gを発現するプラスミド及びサル免疫不全ウイルス由来のパッケージングプラスミドSIV3+)によって生産し、記載された通りに超遠心分離によって濃縮した(86)。力価を限界希釈によって推定した。力価は、5×108から6x109形質導入単位/mlの範囲であった。
【0237】
T細胞の分化及び抑制アッセイ。106個のCD4+T細胞を、105個の同種DC(10:1、T:DC)と共に、5%ヒト血清(Sigma Aldrich社、CA、USA)及び100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza社、スイス連邦)を添加したX-VIVO 15培地(Lonza社、スイス連邦)において培養した。10日後、プライミングされたT細胞を回収し、CD4マイクロビーズ(Miltenyi Biotech社、ドイツ連邦共和国)を使用して精製した。DCUTで刺激したT細胞はT(DCUT)細胞と呼ばれ、一方、DCGFPで刺激したT細胞はT(DCGFP)細胞と呼ばれる。刺激されていないDCIL-10と培養したT細胞はT(DCIL-10)細胞と呼ばれ、一方、LPS又はポリI:Cで刺激したDCIL-10と培養したT細胞はT(stimDCIL-10)細胞と呼ばれる。
【0238】
プライミングされたT細胞をCell Proliferation Dye eFluor(登録商標)670(eBioscience社、CA、USA)で染色し、次いで、プライミングに使用した同一のドナーに由来するDCUTと平板培養した(10:1、T:DC)。刺激の3日後、T細胞を回収し、洗浄し、そして増殖をフローサイトメトリーによって評価した。
【0239】
T(DCIL-10)細胞及びT(stimDCIL-10)細胞の抑制活性を評価するために、本発明者らは、プライミングで使用したT細胞に対して自己の全CD4+T細胞(レスポンダー細胞)を、Cell Proliferation Dye eFluor(登録商標)450(eBioscience社、CA、USA)で染色し、これらの細胞を、プライミングに使用した同一のドナーに由来する成熟DCUTで活性化した。Cell Proliferation Dye eFluor(登録商標)670で染色したT(DCIL-10)細胞又はT(DCIL-10*)細胞に、1:1の比で、レスポンダー細胞を添加した(全体的なT:DC比は10:1である)。4日後、分割したレスポンダーT細胞のパーセンテージを、フローサイトメーターによって増殖色素希釈によって計算した。
【0240】
DCの刺激。一部の実験において、DCを7日目に回収し、単独で又は以下の刺激の存在下で、再び平板培養した:1μg/mlのLPS(Sigma Aldrich社、CA、USA)、108個細胞/mlの加熱殺菌したリステリア・モノサイトゲネス(コードtlrl-hklm、InvivoGen社、CA、USA)、1ug/mlのサルモネラ・ティフィムリウムのフラジェリン(コードtlrl-stfla、InvivoGen社、CA、USA)、10ug/mlのPoli(I:C)(コードtlrl-pic InvivoGen社、CA、USA)、5uMのODN2006(CpG)(コードtlrl-2006、InvivoGen社、CA、USA)、又はIL-1b、TNF-a、及びIL-6の各サイトカインにつき10ng/mlの混合物(R&D Systems社、MN、USA)。24時間後、上清を回収して、ELISAによってサイトカイン分泌プロファイルを評価し、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
【0241】
ヒト化マウスにおける免疫応答の調節。2~5日齢のNSG(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1WjI/SzJ、JAXマウス系統)マウスに亜致死線量を照射し(1.5cGy)、5~7時間後に105個のCD34+(純度≧95%、Lonza社)を、以前に記載された通りに肝内注射した(Santoni de Sioら、JACI 2018)。
【0242】
末梢血中のヒト全細胞及びT細胞のパーセンテージを、移植の8週間後から開始したフローサイトメトリーによってモニタリングした。ヒトへの生着が安定であり、T細胞の再増殖が明らかに検出可能となったら(通常は移植の約11~13週間後)、huマウスを、5×106個の同種CD3細胞の静脈内注射によって免疫化し、ヒト末梢血から磁気的に単離した(Dynabeads CD3 - Thermo Fisher Scientific社)。1週間後、ヒトT細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって評価し、huマウスをランダムに実験群に割り当て、そして、CD3の精製に使用した同一のドナーから単離されたCD14+単球から分化した、3×105個の形質導入されていない樹状細胞(DCUT)、又は3×105個の形質導入されていない樹状細胞、更に3×105個のGFP又はIL-10を形質導入された樹状細胞(それぞれDCGFP及びDCIL-10)を注射した。T細胞の増殖を、末梢血においてKi67染色によって評価した。
【0243】
パッケージング細胞系CD47 hi及びCD47 freeの生成。先に記載された、Cas9及びsgRNAを発現するプラスミド(87)を使用して、293T細胞におけるCD47の発現を中断させた。sgRNAを生成するために使用したCRISPRの配列は、CD47A(CTACTGAAGTATACGTAAAGTGG)(配列番号115)、B(CTTGTTTAGAGCTCCATCAAAGG)(配列番号116)、C(ATCGAGCTAAAATATCGTGTTGG)(配列番号117)である。
【0244】
遺伝子の破壊及びミスマッチ選択的なエンドヌクレアーゼassayGeneの破壊を、示された量の所望のsgRNA発現プラスミド及びCas9発現プラスミドのリン酸カルシウム介在性の一過性トランスフェクションによって行った。記載された通りに、ミスマッチ選択的エンドヌクレアーゼアッセイを使用して、Cas9標的部位での非相同末端結合(NHEJ)の結果生じる突然変異の程度を測定した(88)。PCRを、CD47遺伝子のsgRNA結合部位に隣接するプライマー(フォワード:5’-TTCCTTTCCAGGATCAGCTCAGC-3’(配列番号118)、リバース:5’-TTGATTCAAAGGAGTACCTATCCC-3’)(配列番号119)を使用して行った。
【0245】
SIN RVゲノムを移入された、遺伝子合成されたヒトコドン最適化型のCD47 cDNA(Genewiz社)をコードするPGK.CD47を、GFPと交換して、pRT43.3.PGK.GFP(BamHI-NotI)とし(89)、293T CD47 high細胞を生成させた。293T細胞に、記載された通りに、pRT43.3.PGK.CD47、パッケージングプラスミド pCMV-Gag/Pol(モロニー白血病ウイルス)、及びpMD2.Gをトランスフェクトした(89)。293T細胞CD47 hi及びCD47 freeを使用して、上記のようにLVを生成した。
【0246】
統計分析。平均値は、平均±SEMとして報告されている。本発明者らはマン・ホイットニーの検定及びANOVA検定を使用して、データの統計的有意性を判定した。本発明者らは、有意性を*P≦0.05、**P≦0.005、***P≦0.0005、及び***P<0.0001と定義した。本発明者らは、Prismプログラム5.0(GraphPad Software, Inc.社)で統計的計算を行った。
【0247】
配列
以下のタンパク質において、免疫優性ペプチド又はエピトープは太字で強調されており、脱アミド化された残基は灰色で強調されている。
【0248】
マウスDCのLV構築物
インバリアント鎖(m-Ii、CD74)(DNA)(配列番号120)
【0249】
【化1】
【0250】
インバリアント鎖(m-Ii、CD74)(タンパク質)(配列番号121)
【0251】
【化2】
【0252】
以下にインフレームで融合しているインバリアント鎖
>OVA 315~353、STOP(DNA)(配列番号122)
【0253】
【化3】
【0254】
OVA 315~353、STOP(タンパク質)(エピトープOVA323~339)(配列番号123)
【0255】
【化4】
【0256】
>OVA 242~353.STOP(DNA)(配列番号124)
【0257】
【化5】
【0258】
OVA 242~353.STOP(タンパク質)(エピトープ:OVA257~264、OVA323~339)(配列番号125)
【0259】
【化6】
【0260】
>InsB 4~29.STOP(配列番号126)
【0261】
【化7】
【0262】
InsB 4~29.STOP(タンパク質)(エピトープInsB9~23)(配列番号127)
【0263】
【化8】
【0264】
>InsB 4~29R22E.STOP(DNA)(配列番号128)
【0265】
【化9】
【0266】
InsB 4~29R22E.STOP(タンパク質)(エピトープInsB9~23R22E)(配列番号129)
【0267】
【化10】
【0268】
>GAD65 500~585(DNA)(配列番号130)
【0269】
【化11】
【0270】
GAD65 500~585(タンパク質)(エピトープ:GAD509-528、GAD524~543、GAD561~575)(配列番号131)
【0271】
【化12】
【0272】
>GAD65 202~225(DNA)(配列番号132)
【0273】
【化13】
【0274】
GAD65 202~225(タンパク質)(エピトープ:GAD206~220)(配列番号133)
【0275】
【化14】
【0276】
>IGRP191~218(DNA)(配列番号134)
【0277】
【化15】
【0278】
IGRP195~214(タンパク質)(エピトープ:IGRP195~214)(配列番号135)
【0279】
【化16】
【0280】
W1E14(DNA)(配列番号136)
【0281】
【化17】
【0282】
WE14(融合タンパク質)(組み合わせN末端Cペプチド-ChrA)(配列番号137)
【0283】
【化18】
【0284】
ヒトDCのLV構築物
ヒトインバリアント鎖(hu-Ii、p33、clip)(DNA)(配列番号138)
【0285】
【化19】
【0286】
ヒトインバリアント鎖(hu-Ii、p33、clip)(タンパク質)(配列番号139)
【0287】
【化20】
【0288】
Clip配列を、以下の目的の抗原をコードする配列で置き換える:
hu.InsB 4~29(DNA)(配列番号140)
【0289】
【化21】
【0290】
hu.InsB 4~29(タンパク質)(エピトープInsB9~23)(配列番号141)
【0291】
【化22】
【0292】
hu.InsB 4~29(-14E -21E -22E)(DNA)(配列番号142)
【0293】
【化23】
【0294】
hu.InsB 4~29(-14E -21E -22E)(タンパク質)(エピトープInsB9~2314E -21E -22E)(配列番号143)
【0295】
【化24】
【0296】
hu.PPIプレプロインスリン71~96(DNA)(エピトープPPI71~96)(配列番号144)
【0297】
【化25】
【0298】
hu.PPI(タンパク質)(エピトープC19A3)(配列番号145)
【0299】
【化26】
【0300】
hu.PPIプレプロインスリン13~28(DNA)(PPI13~28)(配列番号146)
【0301】
【化27】
【0302】
hu.PPI(タンパク質)(エピトープPPI17~24)(配列番号147)
【0303】
【化28】
【0304】
I-A2 801~821(DNA)(配列番号148)
【0305】
【化29】
【0306】
I-A2(タンパク質)(エピトープ:I-A2805~820、I-A2806~814)(配列番号149)
【0307】
【化30】
【0308】
a2-グリアジン51~80>(配列番号150)
【0309】
【化31】
【0310】
a2-グリアジン51~80>(タンパク質)(エピトープa2-gli55~76)(配列番号151)
【0311】
【化32】
【0312】
Tレジトープ289(DNA)(配列番号152)
【0313】
【化33】
【0314】
Tレジトープ289(タンパク質)(配列番号153)
【0315】
【化34】
【0316】
以下にクローニングする:
- 一方向性LV骨格(配列番号154)
LV.PGK.Ii
【0317】
【化35A】
【化35B】
【0318】
PGK.IiAg.miR155T.miR146aT(配列番号155)
【0319】
【化36A】
【化36B】
【0320】
二方向性LV骨格(配列番号156)
bd.ΔNGFR.PGK.GFP
【0321】
【化37A】
【化37B】
【0322】
bd.IL10.PGK.GFP(配列番号157)
【0323】
【化38A】
【化38B】
【0324】
bd.huIDO.PGK.IiAg(配列番号158)
【0325】
【化39A】
【化39B】
【0326】
huIL-10(DNA)(配列番号159)
【0327】
【化40】
【0328】
huIL-10(タンパク質)(配列番号160)
【0329】
【化41】
【0330】
huIDO(DNA)(配列番号161)
【0331】
【化42】
【0332】
huIDO(タンパク質)(配列番号162)
【0333】
【化43】
【0334】
gagpolポリプロテインサル免疫不全ウイルス(Vpx)(DNA)(配列番号163)
【0335】
【化44】
【0336】
gagpolポリプロテインサル免疫不全ウイルス(Vpx)(タンパク質)(配列番号164)
【0337】
【化45】
【実施例
【0338】
miR155及びmiR146aの標的配列、DC成熟の既知の調節因子(DC-Ag.miRNA)、IL-10(DC-IL-10/Ag)、又はIDO(DC-IDO/Ag)と結合した特異的抗原由来ペプチドのLV介在性の遺伝子移入に基づく、寛容原性DC(tolLV-DC)を生成するための代替的な戦略が開発されている(図1)。tolLV-DCの作用の態様を規定するために、本発明者らは、オボアルブミン(OVA)をモデル抗原として使用した。TCRトランスジェニックOTII CD4+T細胞によって認識されるOVA323~339を含有する、OVA315~353と融合したIiをコードするLVを生成し、DC分化の間に骨髄(BM)細胞を形質導入するために使用した。LV.liOVA315~353.miR155T.miR146aT、LV.IL-10.IiOVA315~353、LV.IDO.IiOVA315~353、及びコントロールとしてのLV.IiOVA315~353を使用して、以下のLV-DCを得た:DC-OVA、DC-OVA.miRNA、DC-IL-10/OVA、DC-IDO/OVA。LV-DCはCD11c+であり、CD80、CD86、及びMHCクラスIIを、同一レベルの、形質導入されていないDCで発現した(図2)。DC-OVAはOTII CD4+T細胞の増殖を促進し、その一方で、DC-IL-10/OVAは、低いOTII CD4+T細胞増殖応答を誘発した。逆に、DC-IDO/OVAによって誘発された増殖は、DC-OVAによって誘発された増殖と匹敵した(図3)。特に、DC-IL-10/OVAで生成されたT細胞は、二次OVA刺激に対する応答においてアネルギー性であり(図4)、このことは、DCへのLV.IL-10.IiOVAの形質導入が、アネルギー性の抗原特異的T細胞を効率的に促進するIL-10の存在下でインビトロで生成された細胞の集団である、DC-10に機能的に重なり得るDCの集団を促進することを示唆している((22)、WO2007/131575、US2016/0046910A1)。DC-OVA.miRNAはOTII CD4+T細胞の増殖を促進したが、LPSが活性化すると、miR155及びmiR146aによって仲介される転写後調節は、OTII CD4+T細胞の増殖を促進するそれらの能力を無効にし(図5)、このことは、DC-OVAmiRNAがOVAを応答性CD4+T細胞に未成熟様段階でのみ提示することを示している。
【0339】
LV-DCの作用のメカニズムを研究するために、本発明者らは、CD45.1(95%)及びCD45.2 OTII/FirTiger(5%)の骨髄(BM)細胞を、致死線量を照射したCD45.1マウスに移植することによって、キメラマウスを開発した。OTII/FirTiger CD4+T細胞は、OVA323~339を認識し、RFP及びGFPをそれぞれfoxp3及びil10のレポーター遺伝子として発現する、TCRトランスジェニック細胞である。完全な再構成で、循環内に≒5%のOTII/FirTiger CD4+T細胞を有するキメラマウス(図6、左側のパネル)に、LV-DCの異なる小集団を繰り返し注射した。最後のDC注射の5週間後、OVA特異的CD45.2 OTII CD4+T細胞の頻度は、DC-OVAで処置したマウスの脾臓において、DC-GFPを注射したマウスのそれと比較して有意に高かった(図6、右側のパネル)。更に、OVA特異的CD4+T細胞の増殖は、OVAをコードする異なる寛容原性LV-DCを投与されたマウスでは明らかであったが、GFPではそうではなかった。加えて、DC-OVAで、又はOVA及び寛容原性分子を発現する寛容原性LV-DCで処置されたマウスにおいて、本発明者らは、CD4+記憶T細胞の増殖を観察し(示されていない)、このことは、OVA特異的T細胞のインビボでのプライミングが生じていることを示している。本発明者らは次に、レポーター遺伝子を使用して、処置されたキメラマウスにおけるOVA特異的Tregの誘発を調べ、また、Foxp3 TregについてのTr1特異的マーカーCD49b及びLAG-3(90)の発現、並びにCD25の発現を調べた。結果は、DC-OVA.miRNA又はDC-IL-10/OVAの注射が、DC-GFP又はDC-OVAで処置したマウスにおいて観察されたものと比較して、IL-10を生産するCD49b+LAG-3+Tr1細胞の有意に高い増殖を促進したことを示した(図7)。逆に、LV-DC処置のいずれも、FOXP3+Tregの有意な増殖を誘発しなかった(示されていない)。インビトロでDC-OVAで再刺激すると、DC-OVAを注射したマウスから単離したT細胞によって観察されたものと比較して低いOTII CD4+T細胞の増殖能力によって実証されるように、寛容原性LV-DCで処置されたマウスの脾臓から単離したT細胞は低応答性であった(図8)。
【0340】
CD4+T細胞応答及びCD8+T細胞応答の両方を調節することを目的として、本発明者らは、TCRトランスジェニックOTII CD4+T細胞によって認識されるOVA323~339及びTCRトランスジェニックOTI CD8+T細胞によって認識されるOVA257~264(SIINFEKL)を含有する、OVA242~353をコードするLVを生成させた。BM細胞にLV.IiOVA315~353又はLV.IiOVA242~353のいずれかを形質導入し、操作されたDC-OVA315~353及びDC-OVA242~353を使用して、OTII細胞及びOTI細胞を刺激した。両DC-OVAはOTII CD4+T細胞の増殖を促進し、その一方で、DC-OVA242~353はOTI細胞の増殖を促進したが、DC-OVA315~353は促進しなかった(図9)。これらのデータは、CD4+T細胞応答及びCD8+T細胞応答の両方を調節するようにLV-DCを操作することができることを示している。
【0341】
これらの結果は、インバリアント鎖に融合した抗原のLV介在性の遺伝子移入によって、インビトロ及びインビボでの抗原特異的CD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖を示し促進する能力を有するDCが保証されることを示している。更に、高レベルのIL-10及びIDOの存在下での、未成熟様DCによる又はDCによるコードされる抗原の提示を確実にする、LV骨格における寛容原性エレメント(miRNA標的配列、IL-10又はIDO)の付加は、抗原特異的T細胞の応答性低下を促進する、及び抗原特異的Tr1細胞のDC-OVA.miRNA又はDC-IL-10/OVAの増殖のケースにおける、制御性DCの生成に都合が良い。
【0342】
LV-DCがインビトロ及びインビボで糖尿病誘発性のT細胞応答を調節する有効性を研究するために、糖尿病誘発性ペプチドInsB9~23を単独で又はmiRNA155標的配列及び146a標的配列、IL-10、若しくはIDOと組み合わせて含有する、InsB4~29と融合したIiをコードするLVを生成させ、DC分化の間にNODマウスからのBM細胞単離物を形質導入するために使用した。LV.liInsB4~29.miR155T.miR146aT、LV.IL-10.IiInsB4~29、LV.IDO.IiInsB4~29、並びにコントロールとしてのLV.liInsB9~23及びLV.IiOVA315~353を使用して、DC-InsB.miRNA、DC-IL-10/InsB、DC-IDO/InsB、DC-InsB、及びDC-OVAを得た。LV-DCはCD11c+であり、MHCクラスII I-Ag7及びCD86を、形質導入されていないDCによって発現されるものと同様のレベルで発現した(示されていない)。糖尿病性NODマウスから単離したCD4+T細胞は、DC-InsBで刺激すると増殖したが、DC-OVAでは増殖しなかった(図10)。OVAで得られた結果と同様に、DC-IL-10/InsBは、コントロールDC-InsBと比較して、より低いCD4+T細胞増殖を促進した。逆に、DC-InsBmiRNA及びDC-IDO/InsBで刺激したT細胞は、DC-InsBで刺激した細胞と同程度に増殖した(図10)。
【0343】
本発明者らは次に、インビボでのLV-DCの生体分布及び生存を調べた。したがって、DC分化の間の2日目に、Balb/cマウスから単離されたBM細胞に、ルシフェラーゼをコードするLVを形質導入した。LV-DClucをBalb/cレシピエントマウスに静脈内(i.v.)注射又は腹腔内(i.p.)注射し、生体分布及びLV-DClucの生存を、生物発光イメージング(BLI)によってモニタリングした。予想した通り、i.v.注射又はi.p.注射をすると、LV-DClucはそれぞれ肺及び腹膜に局在化した。i.v.注射したLV-DClucは6日目から脾臓に局在化し、その一方で、i.p.注射したLV-DClucは2日目から脾臓に局在化した。注射された細胞は8~10日目までに徐々に消失した(図11)。細胞へのi.p.注射によるT1Dの発病の予防におけるLV-DCの有効性を研究する。この目的のために、10週齢のNODメスマウスに、DC-InsB、DC-InsBmiRNA、DC-IL-10/InsB、DC-IDO/InsB、及びDC-OVAを繰り返し注射した。結果は、DC-IDO/InsBによるIDOの構成的発現が、NODマウスにおいて、DC-OVA(p=0.0028)又はDC-InsB(p=0.0407)で処置したコントロールマウスと比較して、T1Dの発病を有意に低減させたことを示した(図12)。DC-IL-10/InsBの投与の結果、疾患の、より軽度の、しかし大きくはない制御がもたらされたが、一方、DC-InsBmiRNAで処置したNODマウスは、DC-OVAで処置したコントロールと比較して、T1Dの発病の遅延を示した。
【0344】
処置したマウスを最後のDC注射の15週間後に屠殺し、脾臓及び膵臓のリンパ節におけるTregの頻度を分析した。全体として、CD49b+LAG-3+Tr1細胞又はCD25+Foxp3+Tregの特異的誘発は見られず、LV-DC処置したマウスから単離されたCD4+T細胞によるInsB9~23に対する増殖応答における高い多様性が、注射したLV-DCのサブタイプに依存することなく、観察された(示されていない)。
【0345】
結論として、本発明者らは、特異的自己抗原及び寛容原性分子をコードするLVに基づく最先端の技術によって安定且つ効果的な寛容原性DCを生成するための、効率的且つ強力な方法を開発した。
【0346】
LVに基づくアプローチをヒト細胞に転用するために、本発明者らはまず、ヒトDCのbdLV介在性の形質導入を促進するための効率的なプロトコルを開発した。この目的のために、DC分化の間の0日目、2日目、又は5日目に、SAMHD1介在性の制限を妨害するために、CD14+細胞を、サル免疫不全ウイルス(SIV)由来のアクセサリータンパク質Vpx-VPLを含有するウイルス様粒子で前処置したか又はしなかった(図13、左側のパネル)。分析された全ての時点で、Vpx-VPLでの前処置は形質導入効率を向上させ、細胞を0日目にVpx-VPLで前処置した場合、それはより高い効率に達した(図13、右側のパネル)。重要なことに、0日目に行われたVpx-VPLでの前処置は、培養の最後での得られた細胞の活性化に影響しなかった(図14)。経時的な分析は、Vpx-VPLへの1時間の曝露が95%の形質導入効率に達するために十分であることを実証した(図38)。
【0347】
操作されたヒトLV-DCを生成させるための確立されたプロトコルを使用して、本発明者らはまず、IL-10と、Tr1様(CD4IL-10)細胞を生成させるためにこれまでに使用されている選択マーカーであるΔNGFR((40、85)WO2016146542)とを共コードするLVの、DCIL-10を生成する能力を調べた。CD14+細胞をVpx-VPLで6~8時間処置し、次いで、DC分化の間の0日目に、LV-IL-10/ΔNGFR(DCIL-10)又はLV-GFP/ΔNGFR(DCGFP)を形質導入した。コントロールとして、本発明者らは、形質導入されていないDC(DCUT)、並びに、CD14+細胞をそれぞれGM-CSF及びIL-4と、又はGM-CSF、IL-4、及びIL-10と培養することによって同一のドナーから分化したDC-10を使用した。ヒトDCを両ベクターによって効率的に形質導入し、ΔNGFRの発現によって実証されたように、最大98%の形質導入に達した(図15、左側のパネル)。DC-10関連マーカーの発現の分析は、DCIL-10はCD14、CD16、CD141、CD163、ILT4、及びHLA-Gを発現したが、コントロールのDCUT細胞又はDCGFP細胞は発現しなかったことを実証した(図15、右側のパネル)。DCIL-10は、定常状態で及び活性化で、DC-10と比較して有意に高いレベルのIL-10を分泌した。重要なことに、DCIL-10は、DC-10と同様に、活性化でIL-12を生産しなかった(図16)。DCIL-10は、DC-10と同様に、同種T細胞のCD4+T細胞及びCD8+T細胞の両方において、応答性低下を促進した(図17)。本発明者らは次に、DCIL-10の、アネルギー性のアロ特異的Tr1細胞を促進する能力を、DC-10のそれと比較した。この目的のために、同種CD4+T細胞を10日間、DCIL-10で、又は、コントロールとしてのDCGFP、DCUT、及びDC-10で刺激した。試験した全てのドナーにおいて、DC-10で活性化された細胞(T-DC-10)と同様にDCIL-10でプライミングされ、これらのプライミングに使用した同一のアロ抗原で再刺激されたCD4+T細胞(T-DCIL-10)は、DCUT(T-DCUT)又はDCGFP(T-DCGFP)でプライミングしたT細胞と比較してアネルギー性であった(図18)。更に、T-DCIL-10細胞及びT-DC-10細胞は、T-DCUT細胞及びT-DCGFP細胞と比較して有意に高い割合のTr1細胞を含有していた(図19、左側のパネル)。T-DCIL-10細胞は、これらのプライミングに使用した同一のアロ抗原で再刺激すると、T-DC-10細胞、T-DCUT細胞、及びT-DCGFP細胞と比較して有意に高いレベルのIL-10を分泌した(図19、右側のパネル)。
【0348】
全体として、これらの所見は、LV介在性のIL-10遺伝子移入がヒトDCを、同種T細胞を調節する能力及びアネルギー性のアロ特異的Tr1細胞の分化を促進する能力を有するDC-10様細胞に転換することを示す。
【0349】
DCIL-10の、移植片対宿主病(GvHD)を予防する能力を研究するために、本発明者らは、DC分化の間に、Balb/cマウスから単離されたBM細胞にLV-IL-10/ΔNGFRを形質導入することによって、マウスDCIL-10を生成させた。コントロールとして、LV-GFP/ΔNGFR(DCGFP)を形質導入されているBM細胞を生成させた。マウスDCIL-10及びDCGFPを次いで、致死線量照射され、同種(C57Bl/6)BM細胞及び脾細胞を注射された、Balb/cマウスに養子移入した。未処置マウス又はDCGFPで処置したマウスは、致命的なGvHDを発症したが、DCIL-10の単回注射はGvHDを有意に遅延させた(図20)。
【0350】
抗原特異的ヒトLV-DCを生成させるために、本発明者らは、自己抗原由来ペプチドと融合したIip33(MHCクラスII分子のインバリアント鎖p33結合ドメイン)のヒトCLIP配列をコードするLV構築物を設計した。本発明者らは、インスリンB4~29配列(LV.InsB4~29)と又はα2-グリアジン51~80(LV.Glia51~80)と融合したIip33をコードするLVを生成させた。無血清培地におけるVpx-VPLでのCD14+前駆体の前処置を見越した、最適化されたプロトコルを使用して、DCに分化する単球にLVを形質導入した(図21)。分化の後、DCの分化を、DC-SIGNの発現によってモニタリングした。図22に示すように、ヒトLVを形質導入された細胞はDC-SIGN+であり、LV-IL-10/Agを形質導入された細胞(DC-IL-10/Ag)のケースでは、得られたDCはCD14も発現した。形質導入効率を、コントロールのLV-ΔNGFR/Agを形質導入された細胞のケースでは、ΔNGFRの発現で評価した。LV-IL-10/Agを形質導入された細胞のケースでは、形質導入効率は、IL-10の細胞質内染色によってモニタリングした。具体的には、DC-IL-10/Ag及びコントロールとしてのLV-CLIP(DCCLIP)又はLV-ΔNGFR/Ag(DC-Ag)を形質導入されたDCを刺激しないままとしたか、又はLPS/IFN-gで24時間活性化し、IL-10について染色した。結果は、DC-IL-10/Agが定常状態で及び活性化でIL-10を発現し、その一方で、わずか4~10%のDCCLIP及びDC-Agが刺激の後にのみIL-10を発現したことを示した(図23)。LV-IDO/Agを形質導入された細胞のケースでは、形質導入効率はIDOの発現によってモニタリングした。図24に示すように、DC-IDO/AgはIDOを発現し、その一方で、DCCLIP及びDC-AgはIDOをほとんど発現しなかった。
【0351】
DCIL-10と同様に、DC-IL-10/Agは、CD14、CD141、CD163、及びILT4を含む高レベルのDC-10関連マーカーを発現したが、HLA-Gの発現は獲得していない(図25)。逆に、DC-IDO/Agは表現型がDCUT、DCCLIP、及びDC-Agに類似している(示されていない)。DC-IL-10/Agのサイトカイン生産プロファイルは、DCIL-10及びDC-10と同様に、これらの細胞が、定常状態で及びLPS/IFN-g刺激で有意に高いレベルのIL-10及び低レベルのIL-12を分泌したことを実証した(図26及び図27)。DC-IDO/Agは、DCUT、DCCLIP、及びDC-Agのそれに重なり得るサイトカインプロファイルを示した(示されていない)。
【0352】
DC-IL-10/Agの機能的特徴付けは、HLA制限されたT細胞において抗原特異的な増殖応答を一貫して誘発したDC-Agとは対照的に、IL-10の付随する過剰発現が抗原特異的T細胞の増殖を下方調節したことを実証した(図28)。重要なことに、自己T細胞をDC-IL-10/Agで10日間刺激すると、高頻度のCD49b+LAG-3+Tr1細胞を含有する抗原特異的アネルギー性T細胞の誘発が促進された(図29)。DC-IDO/Agは、コントロールDC-Agによって誘発されるものと同様の自己T細胞の増殖を促進し(図30)、自己T細胞をDC-IDO/Agで10日間刺激すると、高い割合のFOXP3+CTLA4+細胞を含有する細胞集団の誘発が促進された(図31)。
【0353】
全体として、これらのデータは、miR155及びmiR146aの複数の標的配列、DC成熟の既知の調節因子(DC-Ag.miRNA)、又はIL-10(DC-IL-10/Ag)、又はIDO(DC-IDO/Ag)と結合した、特異的抗原と融合したインバリアント鎖(Ii)をコードするLVで操作されたDCが、抗原特異的T細胞応答を調節すること並びにインビトロ及びインビボでの抗原特異的Tr1細胞又はFOXP3+T細胞の分化を促進することが可能な寛容原性DCの集団を生成させることを実証した。
【0354】
上記のエビデンスに従うと、エフェクターT細胞の強力な阻害及び/又は制御性T細胞の強力な活性化を、例示されるアプローチを使用して得ることができる。
【0355】
DCIL-10がDC-10に類似していることで、本発明者らは、同種CD4+T細胞を10日間刺激することによって、インビトロでアロ特異的Tr1細胞を促進するDCIL-10の能力を調べた。試験した全てのドナーにおいて、DCIL-10でプライミングされたCD4+T細胞[T(DCIL-10)細胞]は、DCUT及びDCGFPでプライミングされたT細胞[それぞれT(DCUT)細胞及びT(DCGFP)細胞]と比較して高い割合のTr1細胞を含有していた(図19)。プライミングに使用したDCに対して自己の成熟DC(mDC)で再刺激したT(DCIL-10)細胞は、T(DCUT)細胞及びT(DCGFP)細胞と比較して低いレベルで増殖し(図32)、(T-DCUT)細胞及び(T-DCGFP)細胞の両方と比較して有意に高いIL-10レベルをもたらしたが、IFN-γは類似のレベルであった。最後に、T(DCIL-10)細胞は、プライミングに使用した同一のDCドナーのmDCでの自己CD4+T細胞の増殖を抑制し、平均で67%の抑制であった(図33)。全体として、これらの所見は、ヒトDCにおけるLV介在性のIL-10遺伝子移入が、同種T細胞応答を調節する能力及びインビトロでアロ特異的Tr1細胞の分化を促進する能力を有するヒトDCIL-10の生成を促進することを示している。
【0356】
インビボでのDCIL-10の調節活性を評価するために、本発明者らは、ヒト臍帯血CD34+細胞でNSGマウスを再増殖させるための最近開発されたプロトコルを利用した。亜致死線量照射された新生児NSGマウスにおけるヒトCD34+細胞の肝内注射によって、骨髄(BM)におけるヒトCD45+T細胞の効率的な生着、並びに末梢のリンパ(B、Tエフェクター、及びT制御性)並びに骨髄の成熟細胞の分化が可能となった(91)。再構成されたhuNSGマウスを、放射線照射した同種ヒトAPCのi.v.注射によって免疫化し、7日後に、単独の又はDCIL-10(DCUT+DCIL10)若しくはDCGFP(DCUT+DCGFP)と組み合わせた自己DCUTでブーストした(図34)。DCIL-10での処置によって、Ki67染色によって評価され、同種DCUTによって誘発される、CD4+T細胞のインビボでの増殖が予防された(図34)。これらのデータは、ヒトDCIL-10が同種T細胞応答をインビボで調節することを実証した。
【0357】
DCに基づく細胞産物の鍵となる態様の1つは、これら産物の安定性(すなわち、特異的マーカーの発現、サイトカインの分泌、刺激活性、及びTr1細胞の誘発が、活性化の後に維持されている)であり、本発明者らは、したがって、異なるTLRアゴニスト(すなわち、LPS、リステリア、フラジェリン、ポリI:C、及びCpG)で、又は炎症誘発性サイトカイン(IL-1b、TNF-a、及びIL-6)の混合物で、インビトロで刺激した後の、DCIL-10の表現型を評価した。DC-10で得られた以前のデータと同様に(92)、CD163及びCD141は、活性化すると、DCIL-10で確実に発現した(図35)。逆に、CD16の発現は、LPS又はリステリアでの活性化の影響を受ける(図35)。活性化されたDCIL-10において、刺激されていないDCIL-10と比較して、CD14及びCD1aの発現において有意な変化は見られなかった(図35)。CD86の発現は、LPS、リステリア、及びCpGでの刺激で、DCIL-10において大きく上方調節されたが、CD83に対しては影響せず、また、HLA-DRの発現は観察された(図35)。DCIL-10におけるHLA-Gの発現は活性化で安定なままであったが(示されていない)、ILT4の発現は、LPS及びリステリア又はポリI:C及びCpGの刺激でそれぞれ有意に増大及び減少した(図36)。ILT4はTr1細胞のDC-10介在性の誘発に大きく関与するため(22)、本発明者らは、DCIL-10を刺激するためにLPS及びポリI:Cを選択し、インビトロでのこれらの寛容原性活性を調べた。刺激とは関係なく、活性化したDCIL-10は、定常状態及びLPS/IFNg刺激で、IL-12の不存在下で大量のIL-10を分泌した。DCIL-10培養物における誘発されたTr1細胞のパーセンテージはTLR刺激で低かったが、これは、DCGFP培養物と比較して依然として高かった(図36)。T(stim-DCIL-10)は、これらのアネルギー性がT(unstim-DCIL-10)と比較してそれほど明らかではなかったとしても、プライミングに使用したDCに対して自己のmDCで再刺激するとアネルギー性であった。同様に、IL-10生産のレベルは、T(unstim-DCIL-10)と比較してT(stim-DCIL-10)において低かったが、T(DCGFP)と比較して高かった(図37)。Tr1マーカーの発現、アネルギー性、及びサイトカイン生産の違いが観察されたことにかかわらず、T(stim-DCIL-10)の抑制能力は、T(unstim-DCIL-10)のそれと同等であった(図37)。概して、本発明者らは、活性化したDCIL-10によって誘発されたTr1細胞が、刺激されていないDCIL-10によって誘発されたTr1細胞と同程度に強力であり、したがって、TLR刺激がDCIL-10の寛容原性力を変化させないと結論付けた。
【0358】
LV粒子上のCD47と標的細胞上のそのリガンドSirp-αとの間の相互作用は、食作用を介するLV粒子の取り込みの低減によって、形質導入効率を損なわせる。したがって、本発明者らは、LV粒子上のCD47の発現が、ヒトDCの形質導入の効率を変化させるかどうかを検証した。この目的のために、本発明者らは、DC前駆体への、表面上に異なるレベルのヒトCD47(huCD47)を有するLV粒子(huCD47-High LV>LV>HuCD47を有さないLV)の形質導入を行った。興味深いことに、Sirp-aを発現するDC前駆体のLV介在性の形質導入は、huCD47を有さないLV粒子を使用して有意に増大した(図39)。
【0359】
[参考文献]
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
【配列表】
0007493497000001.app