IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザテック、インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-携帯型誘電分光装置 図1
  • 特許-携帯型誘電分光装置 図2
  • 特許-携帯型誘電分光装置 図3
  • 特許-携帯型誘電分光装置 図4
  • 特許-携帯型誘電分光装置 図5
  • 特許-携帯型誘電分光装置 図6
  • 特許-携帯型誘電分光装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】携帯型誘電分光装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20240524BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G01N27/22 B
G01N27/02 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021523420
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019061368
(87)【国際公開番号】W WO2020106536
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】62/769,593
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521167914
【氏名又は名称】ザテック、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】アーテル、ジョンソン、アール
(72)【発明者】
【氏名】デリンジャー、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ティルク、ジェイスン、グラント
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-020367(JP,A)
【文献】特表平10-508375(JP,A)
【文献】実開昭63-096455(JP,U)
【文献】特開2009-145290(JP,A)
【文献】特開2011-006258(JP,A)
【文献】特表2001-515599(JP,A)
【文献】特開2018-096806(JP,A)
【文献】米国特許第06028433(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0180570(US,A1)
【文献】特表2018-505680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - A61B 5/398
G01N 22/00 - G01N 22/04
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/404
G01N 27/414 - G01N 27/416
G01N 27/42 - G01N 27/49
G01N 33/48 - G01N 33/98
G01N 35/00 - G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取外し可能なセンサ受信機区画を含む装置ハウジング、
前記取外し可能なセンサ受信機区画内または隣接して配置された少なくとも1つの装置側電気接点、
前記装置ハウジング内にあり、前記少なくとも1つの装置側電気接点と連通し、インピーダンスアナライザを含む計算機システム、
前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられるように構成された取外し可能なセンサ受信機ハウジングを含む取外し可能なセンサ受信機組立体を具え、
前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが、テストされる液体サンプルが充填された付属のセンシング装置を受入れるように構成され、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、前記付属のセンシング装置と前記少なくとも1つの装置側電気接点の間を電気的に接続するように構成されたセンシング装置受入部を含
前記計算機システムと連通し、前記付属のセンシング装置のための付属のキャップの相対的な位置を検出するように構成された、少なくとも2つの位置センサを含む、
携帯型誘電分光(DS)装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの位置センサが、前記付属のキャップが前記付属のセンシング装置の第一端部で前記付属のセンシング装置と接続されているかどうかを検出するように構成された第一位置センサと、前記第一位置センサから間隔を空けて配置され、前記付属のキャップが前記付属のセンシング装置の第二端部で前記付属のセンシング装置と接続されているかどうかを検出するように構成された第二位置センサを含む、請求項に記載の携帯型DS装置。
【請求項3】
前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが、バックパネルと移動可能に接続された蓋を含み、前記バックパネルが、前記少なくとも2つの位置センサのそれぞれの位置センサと位置合わせされた少なくとも2つの位置センサ開口部を含む、請求項に記載の携帯型DS装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの位置センサのそれぞれが、前記バックパネルに対する前記蓋の相対的な位置を検出するようにさらに構成されている、請求項に記載の携帯型DS装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの位置センサが前記装置ハウジングに取付けられ、前記少なくとも2つの位置センサのそれぞれとそれぞれ位置合わせされた少なくとも2つの位置センサ孔が、前記取外し可能なセンサ受信機区画の前記装置ハウジングに設けられ、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、前記少なくとも2つの位置センサ孔が、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングのそれぞれの位置センサウィンドウと位置合わせされている、請求項に記載の携帯型DS装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの装置側電気接点が、前記計算機システムと連通する少なくとも1つの装置側コントロール電気接点を含み、該少なくとも1つの装置側コントロール電気接点が、ヒータの作動をコントロールするように構成されている、請求項1に記載の携帯型DS装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの装置側コントロール電気接点が、前記取外し可能なセンサ受信機区画に設けられた複数のポゴピンを含み、前記複数のポゴピンが、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングに設けられたRSR側コントロール電気接点と接するように構成されている、請求項に記載の携帯型DS装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの装置側コントロール電気接点が、前記インピーダンスアナライザと連通する少なくとも2つの装置側インピーダンスアナライザ接点をさらに含む、請求項に記載の携帯型DS装置。
【請求項9】
前記取外し可能なセンサ受信機組立体が、少なくとも2つのRSR側インピーダンスアナライザ接点を含み、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、前記少なくとも2つの装置側インピーダンスアナライザ接点のそれぞれが、前記少なくとも2つのRSR側インピーダンスアナライザ接点のそれぞれのRSR側インピーダンスアナライザ接点と電気的に接する、請求項に記載の携帯型DS装置。
【請求項10】
前記取外し可能なセンサ受信機区画の前記装置ハウジングから延びる少なくとも1つのスタンドオフをさらに具え、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが、少なくとも1つのスタンドオフ開口部を含み、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記取外し可能なセンサ受信機区画内に受入れられたときに、前記少なくとも1つのスタンドオフの各スタンドオフ開口部が、前記少なくとも1つのスタンドオフのそれぞれのスタンドオフを受入れる、請求項1に記載の携帯型DS装置。
【請求項11】
前記取外し可能なセンサ受信機区画に対して開かれた少なくとも1つのロケータタブ開口部をさらに具え、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが、少なくとも1つのロケータタブを含み、前記少なくとも1つのロケータタブ開口部の各ロケータタブ開口部は、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、前記少なくとも1つのロケータタブのそれぞれのロケータタブを受入れる、請求項1または10に記載の携帯型DS装置。
【請求項12】
付属の携帯型誘電分光(DS)装置とともに使用するための取外し可能なセンサ受信機組立体であって、
テストされる液体サンプルが充填された付属のセンシング装置を受入れるように構成されたセンシング装置受入部を含む取外し可能なセンサ受信機ハウジングと、
前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングに設けられた少なくとも2つのRSR側電気接点を具え、
前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが、バックパネルに移動可能に接続された蓋を含み、
前記バックパネルが、前記バックパネルに対する前記蓋の相対的な位置を検出するように構成された前記付属の携帯型DS装置の位置センサのそれぞれと位置が合うように構成された、少なくとも2つの位置センサ開口部を含み、
前記少なくとも2つのRSR側電気接点が、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記付属の携帯型DS装置の取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、前記付属のセンシング装置と前記付属の携帯型DS装置の付属のインピーダンスアナライザの間を電気的に接続する、
取外し可能なセンサ受信機組立体。
【請求項13】
前記バックパネルが、隆起した床面に凹部を画定し、該凹部が、前記センシング装置受入部を画定し、前記凹部内の凹んだ床面が、前記付属のセンシング装置のための付属のキャップの相対的な位置を検出するように構成された前記付属の携帯型DS装置の位置センサのそれぞれと位置が合うようにそれぞれ構成された、少なくとも2つの位置センサ開口部を含む、請求項12に記載の取外し可能なセンサ受信機組立体。
【請求項14】
前記蓋が、該蓋が閉位置にあるときに内張り内面から下方に延びる、少なくとも1つのセンサ接触フランジを含み、該少なくとも1つのセンサ接触フランジが、前記蓋が閉位置にあるときに、前記付属のセンシング装置と接して、前記付属のセンシング装置を前記少なくとも2つのRSR電気接点に向かって押圧するように構成されている、請求項12に記載の取外し可能なセンサ受信機組立体。
【請求項15】
前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記付属の携帯型DS装置の前記取外し可能なセンサ受信機区画に受け入れられたときに、前記少なくとも2つのRSR側電気接点が、前記付属のセンシング装置の付属のヒータと前記付属の携帯型DS装置の付属のコンピュータシステムの間を電気的に接続し、前記付属のヒータをコントロールする、請求項12に記載の取外し可能なセンサ受信機組立体。
【請求項16】
前記付属のセンシング装置の前記付属のヒータと前記付属の携帯型DS装置の付属のコンピュータシステムの間を電気的に接続し、前記付属のヒータをコントロールする前記少なくとも2つのRSR側電気接点が、前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングと接続された回路基板に取付けられたポゴピンである、請求項15に記載の取外し可能なセンサ受信機組立体。
【請求項17】
テストされる液体サンプルを受入れるように構成された液体センシング装置と、
携帯型DS装置を具え、
該携帯型DS装置が、取外し可能なセンサ受信機区画を有する装置ハウジング、前記取外し可能なセンサ受信機区画内または隣接して配置されたなくとも1つの装置側電接点、前記装置ハウジング内にあり前記少なくとも1つの装置側電気接点と連通しインピーダンスアナライザを含む計算機システム、および前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられるように構成された取外し可能なセンサ受信機ハウジングを含む取外し可能なセンサ受信機組立体を具え、
該取外し可能なセンサ受信機組立体がセンシング装置受入部を含み、該センシング装置受入部が、前記液体センシング装置を受入れるように構成され、前記取外し可能な受信機組立体の前記センシング装置受入部に前記液体センシング装置が受入れられた状態で前記取外し可能なセンサ受信機ハウジングが前記取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、前記液体センシング装置と前記少なくとも1つの装置側電気接点の間を電気的に接続するように構成され、
前記液体センシング装置および前記取外し可能なセンサ受信機区画が、前記液体センシング装置が前記取外し可能なセンサ受信機区画内に1つの方向のみで受入れられるようにそれぞれ構成され、
前記液体センシング装置が、前記液体センシング装置の両側の端部に受入れられるキャップを含み、
前記計算機システムと連通し、前記キャップの相対的な位置を検出するように構成された、少なくとも2つの位置センサを含む、
携帯型誘電分光(DS)システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
誘電分光(Dielectric spectroscopy:DS)は,ラベルフリー(label-free)、非破壊、およびリアルタイムの方法として、生物医学(biomedical)分野における有用な分析ツールとされ、最小限の試料調製で、RF/マイクロ波分野と生物/生化学試料との相互作用が研究されてきた。ヒトの血液、脊髄液、乳房組織、皮膚などの生体物質の分子特性は、病気の検出や臨床診断への応用のために、DSを用いて研究されている。しかしながら、一般的なDSシステムは、大型で高価なものが多く、状況によってはコスト的に厳しいものがある。
【背景技術】
【0002】
米国特許第9,995,701号公報には、誘電率を測定するDSシステムが記載されている。DSシステムは、センシング装置と、センサインターフェースシステムを含む。センサインターフェースシステムは、センシング装置の液体チャネル内に配置された電極と接続されたセンサ回路を、RF入力信号で駆動する。センサ回路は、液体チャネル内の液体に応じた誘電率を持つように構成されている。同じく液体チャネルに配置された別の電極は、対応するRF出力信号を、計算機システムに接続されたセンサインターフェースシステムの受信機に送る。計算機システムは、受信機からのRF出力データに応じて誘電率を計算する処理アルゴリズムでプログラムされている。
【0003】
より直感的で使い勝手の良いシステムにするための改良が前述のDSシステムに加えられ得る。
【発明の概要】
【0004】
上記の観点から、本発明の携帯型DS装置は、装置ハウジング、装置側電気接点、計算機システム、および取外し可能なセンサ受信機組立体を含む。装置ハウジングは、取外し可能なセンサ受信機区画を含む。装置側電気接点は、取外し可能なセンサ受信機区画内またはそれに隣接して配置される。計算機システムは、装置ハウジング内にあり、装置側電気接点と連通しており、インピーダンスアナライザを含む。取外し可能なセンサ受信機組立体は、取外し可能なセンサ受信機区画に選択的に受入れられ、取外し可能なセンサ受信機区画から取外されるように構成された取外し可能なセンサ受信機ハウジングを含む。取外し可能なセンサ受信機ハウジングは、テストされる液体が充填された付属の液体センシング装置を受入れるように構成された液体センシング装置受入部を含む。また、取外し可能なセンサ受信機組立体は、取外し可能なセンサ受信機ハウジングが、取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、付属の液体センシング装置と装置側電気接点の間が電気的に接続されるように構成されている。
【0005】
また、携帯型DS装置とともに使用するための取外し可能なセンサ受信機組立体は、取外し可能なセンサ受信機ハウジングと、取外し可能なセンサ受信機ハウジングに設けられた少なくとも2つの電気接点を含む。取外し可能なセンサ受信機ハウジングは、テストされる液体が充填された液体センシング装置を受入れるように構成された液体センシング装置受入部を含む。取外し可能なセンサ受信機ハウジングが、携帯型DS装置の取外し可能なセンサ受信機区画に受入れられたときに、液体センシング装置と携帯型DS装置のインピーダンスアナライザの間が電気的に接続されるように、電気接点が、取外し可能なセンサ受信機ハウジングに設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、それぞれのドッキングステーションを具えた携帯型誘電分光(DS)装置の正面がわの斜視図。
図2図2は、携帯型DS装置にまだ搭載されていない取外し可能なセンサ受信機(RSR)組立体を有する携帯型DS装置の斜視図。
図3図3は、RSR組立体が携帯型DS装置に搭載され、2つの液体センシング装置がRSR組立体に搭載されていない状態の携帯型DS装置の斜視図。
図4図4は、携帯型DS装置にRSR組立体が搭載されていない状態の携帯型DS装置の概略断面図。
図5図5は、RSR組立体が携帯型DS装置に搭載された状態の携帯型DS装置の一部の概略断面図。
図6図6は、携帯型DS装置にRSR組立体がまだ搭載されていない状態の携帯型DS装置の背面がわの斜視図。
図7図7は、携帯型DS装置にRSR組立体が搭載された状態の携帯型DS装置の一部の別の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1には、周波数に対する物質の複素誘電率の定量的な測定に有用な携帯型誘電分光(DS)装置20が模式的に示されている。携帯型DS装置20は、血液の凝固速度に影響を与える可能性のある特定の薬物が血液サンプル中に見出されるかどうかを判断するのに役立つように、これに限定されないが、血液を含む液体の化学分析に使用され得る。このように、携帯型DS装置20は、携帯型凝固計として使用されてもよい。しかしながら、携帯型DS装置20は、他の定量的な測定に使用されてもよい。
【0008】
引き続き図1を参照して、携帯型DS装置20は、携帯型DS装置20の内部構成要素を収容することができる装置ハウジング22を含む。装置ハウジング22は、以下でより詳細に説明する電気部品を収容するために、任意の適切な材料で作られてよい。装置ハウジング22は、人間の手で容易に把持および操作できるように、わずかに大きいものの、携帯電話と同様の大きさとすることができ、これにより、携帯型DS装置20を片手で持てる装置にし得る。
【0009】
図2を参照して、装置ハウジング22は、以下でより詳細に説明される、取外し可能なセンサ受信機(RSR)組立体28のRSRハウジング26を受入れるように構成されたRSR区画24を含む。RSR組立体28、ひいてはRSRハウジング26は、RSR区画24に挿入可能であり、かつRSR区画24から取外し可能であり、これにより、携帯型DS装置20をきれいにすることが容易になるとともに、以下でより詳細に説明する他の利点も可能となる。
【0010】
図3を参照して、RSRハウジング26は、テストされる液体サンプル32(図3に概略的に示されている。)が充填されている液体センシング装置30を受入れる。液体センシング装置30は、テストされる液体サンプル32が入っている区画に在る回路を含む。回路は、テストされる液体サンプル32に応じた誘電率を有するように構成されている。センサ回路は、米国特許第9,995,701号公報および米国仮特許出願第62/832,933号に詳細に記載されている。テストされる液体サンプル32が血液である場合、例えば、RSR組立体28を装置ハウジング22から取外し可能にすることで、携帯型DS装置20をきれいにすることが容易になるが、携帯型DS装置20と液体センシング装置30の液体サンプル32の間に電気的接続が生じることを考慮しなければならない。
【0011】
図4を参照して、充電式バッテリ34が装置ハウジング22内に設けられる。充電式バッテリ34は、充電接点36と電気的に接してもよい。携帯型DS装置20は、他の小型携帯型電子機器と同様の方法で携帯型DS装置20を充電するために、従来の方法で電気コンセントと接続することができるドッキングステーション38(図1)上に置かれてもよい。
【0012】
引き続き図4を参照して、携帯型DS装置20は、計算機システムをさらに含み、この計算機システムは、プログラミング可能な集積回路、SOM(system on modules)ボード、FPGA(field-programmable gate arrays)、および以下に説明する電気部品を作動させるための同様の装置を含んでよい。図4には、FPGAを搭載した主回路基板42、SOM基板44、電源基板46、スキャナ/デコーダ基板48、およびミニチュアインピーダンスアナライザコンポーネント50(図5)を含む計算機システムの一例が示されている。計算機システムの各部品は、バッテリ34から電力を受け取るように、バッテリ34と電気的に接続されている。なお、図4および図5では、複数の基板を含む計算機システムの一例を示しているが、以下に説明する機能を実行できる任意の計算機システムも採用可能である。
【0013】
図示された実施形態では、ミニチュアインピーダンスアナライザコンポーネント50は、ミニチュアインピーダンスアナライザコンポーネント50とRSR区画24内でテストされている液体サンプル32の間の電気的連通に関する干渉およびノイズの可能性を抑制するように、RSR区画24に近接して配置される。ある特定の実施形態では、ミニチュアインピーダンスアナライザコンポーネント50は、テストが実行されているときには、RSR区画24内でテストされている液体の1cm以内に配置される。米国特許第9,995,701号公報に説明されているように、液体に対してインピーダンス解析を実行するとき、測定信号はミニチュアインピーダンスアナライザコンポーネント50内で増幅され、故に、干渉および他のノイズ信号の最小化は非常に有用である。ミニチュアインピーダンスアナライザコンポーネント50は、液体センシング装置30内の液体サンプル32のインピーダンスおよび誘電率を測定するための米国特許第9,995,701号公報に記載されたものと同様のものを使用してもよい。
【0014】
携帯型DS装置20は、装置ハウジング22に設けられた表示画面60をさらに含む。表示画面60は、携帯型DS装置20のユーザに情報を示すのに有用である。表示画面60は、携帯電話で使用されているようなTFT(Thin-Film-Transistor)ディスプレイであってもよい。表示画面60は、前述の計算機システムと電気的に連通し、バッテリ34から電力を受け取る。構造支持体62は、装置ハウジング22内に設けられ、表示画面60の背後で構造上の支持体となり得る。
【0015】
図1に戻って参照して、携帯型DS装置20は、装置ハウジング22上にUSB-Cコネクタ64をさらに含んでもよい。USB-Cコネクタ64は、前述の計算機システムと通信する外部デバイスまたはコンピュータとの電気的接続が可能であってもよく、これにより、携帯型DS装置20の不備な点を探して修正したり(debug)、計算機システムをプログラムしたりすることができる。外部計算デバイスの接続を可能にする他のタイプのコネクタを採用してもよい。
【0016】
図4参照して、携帯型DS装置20は、装置ハウジング22内に配置され、装置ハウジング22から外側に向けられているレンズを含むスキャナカメラ66をさらに含んでよい。スキャナカメラ66は、前述の計算機システムの一部であるスキャナ/デコーダ基板48と電気的に連通しており、バーコードやその他の機械読み取り可能な表示のスキャンを可能にする。これは、携帯型DS装置20によってテストされる液体サンプル32を、特定のサンプルおよび/または患者と関連付けるのに有用である。
【0017】
携帯型DS装置20は、携帯型DS装置20の作動を全体としてコントロールするためのボタンまたは他の同様のユーザインターフェースデバイスをさらに含んでもよく、例えば、携帯型DS装置20のオン/オフ機能をコントロールし、携帯型DS装置20上のスキャナカメラ66および他の構成要素をコントロールすることができるボタン68(図6)を具える。
【0018】
RSR組立体28は、図1、3および5に示されるように、RSR区画24の内部に受入れられるように構成されたRSRハウジング26を含む。RSRハウジング26は、液体センシング装置30を受入れるように構成された液体センシング装置受入部72を含む。RSR組立体28はまた、RSRハウジング26がRSR区画24内に受入れられたときに、装置側電気接点(以下でより詳細に説明する)を介して、液体センシング装置30と計算機システムと小型インピーダンスアナライザコンポーネント50の間が電気的に接続されるように構成されている。
【0019】
RSRハウジング26は、バックパネル82と移動可能に接続された蓋80を含む。蓋80は、内張り内面86と内張り外面88を画定する蓋内張り84を含む。蓋80がバックパネル82に対して閉じられているとき、例えば図2に示されているように、内張り内面86は、液体センシング装置受入部72、および液体センシング装置30がRSR組立体28に搭載されている場合には、液体センシング装置30の方を向いている。周辺リム90は、蓋内張り84、より詳細には内張り内面86から延びている。磁石92は、周辺リム90の近くに設けられ、蓋80がバックパネル82に対して閉じられたときに、バックパネル82と協働して蓋80を閉位置に保持する。蓋80は、蓋80とバックパネル82を枢軸的に接続する軸(見えない。)を受ける軸ハブ94をさらに含む。蓋80は、バックパネル82と枢軸的に接続された状態で示されているが、蓋80は、バックパネル82に対して摺動可能であるなど、他の可動態様でバックパネル82と接続されてもよい。蓋80は、周辺リム90と同じ方向に、蓋内張り84、より詳細には内張り内面86から延びるセンサ接触フランジ96も含む。各センサ接触フランジ96は、蓋80が閉位置(図5)にあるときには、内張り内面86から下向きに延びる。センサ接触フランジ96は、蓋80が閉位置にあるときには、液体センシング装置30と接して、液体センシング装置30を電気接点(以下でより詳細に説明する)に向けて押圧するように構成されている。
【0020】
バックパネル82は、蓋80の軸ハブ94を受入れる軸ハブ受入凹部112を有する周辺隆起部110を含む。周辺隆起部110は、バックパネル82の床部114から延びる。床部114は、隆起した床面122と凹んだ床面118を仕切る凹部116を含む。図示された実施形態では、凹部116は、液体センシング装置受入部72と一致する。液体センシング装置30および凹部116はそれぞれ、液体センシング装置30が1つの方向のみで凹部116内に受入れられるように構成される。液体センシング装置30は、液体センシング装置30の両側の端部に受入れられるキャップ124を含む。図3では、液体サンプル32が液体センシング装置30に充填されていて、テストされる準備ができている構成の液体センシング装置30が、携帯型DS装置20の左側に示されている。また、図3では、液体サンプル32がまだ液体センシング装置30に充填されておらず、キャップ124が反対側の端部にある構成の液体センシング装置30が、携帯型DS装置20の右側に示されている。液体センシング装置30は、キャップ124がいずれかの端部にある状態で凹部116内に受入れられることができるが、液体センシング装置30が凹部116内に適切に受入れられるためには、液体センシング装置30の適切な側が凹んだ床面118に面している必要があり、キャップ124が液体センシング装置30に適切に取付けられている必要がある。小さな突起126が凹部116内に延びてもよく、これにより、液体センシング器具30の位置合わせを容易にし、液体センシング装置30が不適切な向きで凹部116に受入れられるのを防ぐことができる。
【0021】
バックパネル82は、少なくとも2つの位置センサ開口部132を含む。各位置センサ開口部132は、半透明または透明であるそれぞれの位置センサウィンドウ134を受入れる。各位置センサ開口部132は、携帯型DS装置20上のそれぞれの位置センサ136(図2)と位置が合うように構成されている。各位置センサ136は、主回路基板42(図4参照)に搭載されてもよい。それぞれの位置センサ136と位置合わせされた少なくとも2つの位置センサ孔138が、RSR区画24の装置ハウジング22に設けられる。RSRハウジング26がRSR区画24に受入れられると、少なくとも2つの位置センサ孔138はそれぞれ、RSRハウジング26上のそれぞれの位置センサウィンドウ134と位置合わせされる。位置センサ開口部132は、凹部116内に設けられ、凹んだ床面118を通って延びる。位置センサ136は、光学位置センサであってもよく、バックパネル82に対する蓋80の相対的な位置を検出するように構成される。例えば、位置センサ136が、蓋80が開いているか閉じているかのいずれかであることを示す信号を送ってもよい。さらに、液体センシング装置30上のキャップ124の相対的な位置を決定するための検出ができるように、各位置センサ136は、適切な位置に設けられる。上記で示した通り、携帯型DS装置20の左側に示された液体センシング装置30について、キャップ124は、液体センシング装置30の第一端部を覆って示されている。キャップ124はまた、液体センシング装置30の反対側の端部と接続されてもよく、これは、図3の携帯型DS装置20の右側に示された液体センシング装置30に対して示されている。キャップ124が液体センシング装置30の第一端部にあるとき、図2の左の位置センサ136が、キャップ124の存在を検出してもよい。キャップ124が液体センシング装置30の第二端部にある場合(例えば、図3の携帯型DS装置の右側の液体センシング装置に対して示されているような場合)、図2の右の位置センサ136、キャップ124の存在を検出してもよい。
【0022】
コントロール電気接点開口部140が、凹部116内のバックパネル82の床部114を貫通して設けられる。ポゴピンの形態でもよい複数のRSR側コントロール電気接点142が、コントロール電気接点開口部149を通って延びる。RSR側コントロール電気接点142は、バックパネル82の背面146に搭載された小型回路基板144(図6)に取付けられる。RSR側コントロール電気接点142は、液体サンプル32を所望の温度範囲内に維持するために、例えば、液体センシング装置30上のヒータ(図3には示されていない。)をコントロールすることができる液体センシング装置30上の電気部品間を電気的に接続する。また、RSR側コントロール電気接点142が、液体センシング装置30の識別を可能にする信号を送ってもよい。RSR側コントロール電気接点142は、携帯型DS装置20に設けられた、ポゴピンの形態でもよい、装置側コントロール電気接点148(図2)と接続される。装置側コントロール電気接点148はまた、RSR区画24に設けられた開口部152を通って延びるように設けられてもよい。装置側コントロール電気接点148もまた、主回路基板42(図7参照)に取付けられてもよい。
【0023】
図3に戻って参照して、少なくとも2つのRSR側インピーダンスアナライザ接点160はそれぞれ、バックパネル82に設けられたそれぞれのRSR側インピーダンスアナライザ接点開口部162を通って延びる。RSR側インピーダンスアナライザ接点160のそれぞれは、凹部116内に設けられ、凹んだ床面118から上方に延びる。RSR側インピーダンスアナライザ接点160のそれぞれは、ポゴピンの形態であってよい。ここで図2も参照して、少なくとも2つのRSR側インピーダンスアナライザ接点160のそれぞれは、RSRハウジング26がRSR区画24に受入れられたとき、それぞれの装置側インピーダンスアナライザ接点164と電気的に接する。図5を参照して、装置側インピーダンスアナライザ接点164が、主回路基板42上に設けられてもよい小型インピーダンスアナライザコンポーネント50の一部を構成してもよい。
【0024】
図6を参照して、RSRハウジング26のバックパネル82は、スタンドオフ開口部170も含む。図2に戻って参照して、各スタンドオフ開口部170は、RSR区画24に設けられたそれぞれのスタンドオフ172を受入れるように構成される。スタンドオフ開口部170は、スタンドオフ172と協働して、RSR区画24内でRSR組立体28を適切に位置合わせする。さらに、ロケータタブ174は、バックパネル82の床部114から下向きに延びる。各ロケータタブ174は、RSR区画24に設けられたそれぞれのロケータタブ開口部176に受入れられる。RSRハウジング26に設けられたロケータタブ174は、携帯型DS装置20に設けられたロケータタブ開口部176と協働して、RSR区画24内にRSR組立体28を適切に配置する。図3に戻って参照して、蓋80がバックパネル82に対して閉じられたときに、ホール効果(Hall-effect)センサ178は、磁石92と協働して、閉位置を示す。
【0025】
RSR組立体28は、図3に点線で示されているヒータ180をさらに含んでもよい。図3に示された液体センシング装置30は、装置側コントロール電気接点148およびRSR側コントロール電気接点142を介してコントロールされるヒータ(見えない。)を含む。しかしながら、液体センシング装置30がヒータ、すなわちこのヒータに加えてヒータを含まない場合、RSRハウジング26がRSR区画24に受入れられたとき、ヒータ180が、装置側コントロール電気接点148を介してバッテリ34と接続されてもよい。ヒータ180は、凹部116内に設けられてよく、これにより、ヒータが、液体センシング装置30内でテストされる液体サンプル32を所望の温度範囲内に維持することができる。サーミスタ(図示せず)または同様の温度センサが、RSR組立体28に設けられ、RSRハウジング26がRSR区画24に受入れられたときに、装置側コントロール電気接点148を介して計算機システムと連通してもよい。サーミスタまたは同様の温度センサは、テストされる液体の温度を所望の温度範囲内に維持するように、ヒータ180の作動をコントロールしてもよい。
【0026】
操作では、携帯型DS装置20をドッキングステーション38から取外す。携帯型DS装置20が充電を必要とする場合には、携帯型DS装置が充電を必要とする旨のメッセージが表示画面60に表示され、テストが実行できない。携帯型DS装置20が充電を必要としない場合、ユーザは液体センシング装置30を無菌包装から取外す。無菌包装の中にあるとき、キャップ124は、携帯型DS装置20の右側にある液体センシング装置30に対して図3に示された液体センシング装置30の端部と接続される。次いで、ユーザは、図6に示されたオン/オフボタン68と類似若しくは同様のボタン、または表示画面60に設けられた「ボタン」を押して、スキャナカメラ66を作動させ、液体センシング装置30上のデータマトリクスラベル(図示せず)をスキャンしてもよい。その後、ユーザは、RSRハウジング26の蓋80を開けて、図3の携帯型DS装置20の右側に示された態様でキャップ124が接続された液体センシング装置30を凹部116に配置する。
【0027】
その後、蓋80が閉じられ、これは位置センサ136によって確認され得る。携帯型DS装置20上の計算機システムは、携帯型DS装置20上に設けられたサーミスタを介して携帯型DS装置20の温度を決定するように構成されており、装置側コントロール電気接点148およびRSR側コントロール電気接点142を介してサーミスタと電気的に連通する。サーミスタが予め定められた温度範囲外の温度を測定した場合、計算機システムが、液体センシング装置30上のヒータを作動させて(または、オプションのヒータ180を作動させて)、携帯型DS装置20を加熱してもよい。この予熱段階の間、液体センシング装置30が予熱されていることを、表示画面60よって、ユーザに示してもよい。位置センサ136によって液体センシング装置30上のキャップ124の位置を確認してもよい。
【0028】
予熱段階の間に、ユーザは次に、図6に示されたオン/オフボタン68と類似若しくは同様のボタン、または表示画面60に設けられた「ボタン」を押して、スキャナカメラ66を作動させて、液体を吸取られる患者に関連する識別情報をスキャンすることができる。任意で、ユーザが、表示画面60を用いて患者識別情報を手動で入力してもよい。また、患者が最後に薬を飲んだ時間などの他の情報も、表示画面60を介して計算機システムに入力されてもよい。
【0029】
携帯型DS装置20が予熱段階にある間、予熱段階が必要であれば、患者は液体サンプルを取るための準備をしてもよい。例えば、液体サンプルが血液である場合には、患者の指を洗浄し、針などで刺してもよい。液体センシング装置30のサーミスタが所定の温度、例えば、37℃を観測すると、蓋80が開けられ、液体センシング装置30をRSRハウジング26から取外してもよい。位置センサ136があるので、バックパネル82に対する蓋80の相対的な位置が分かる。次に、計算機システムは、液体センシング装置30内の液体サンプルを得、液体センシング装置30にキャップ124を配置して(すなわち、図3の携帯型DS装置の左側に示された位置)、液体サンプル32を覆い、液体センシング装置30をRSR組立体28の凹部116に戻し、蓋80を閉じるための所定の時間、例えば、約30秒から45秒程度の時間をユーザに与えるべく、タイマーを開始してもよい。
【0030】
液体センシング装置30がRSR組立体28の凹部116に戻され、蓋80が閉じられる前に所定の時間が経過した場合、表示画面60は、新しい液体センシング装置30を用いて新しい液体サンプルを得る必要があるという表示をユーザに示してもよい。所定の時間内に、液体センシング装置30がRSR組立体28の凹部116に戻され、蓋80が閉じられた場合、検証手順が行われ得る。
【0031】
検証手順には、適切な液体がテストされているという表示を示すように、テストされる液体について測定されているインピーダンス値が所定の値の範囲内に入るかどうかを計算機システムが判断することが含まれてもよい。検証手順には、計算機システムが、キャップ124が液体サンプル32の上にあるかどうかを判断することも含まれる。位置センサ136が、キャップ124の存在を検出してもよい。検証手順には、計算機システムが、液体センシング装置30上のヒータおよびサーミスタが既知の値を返し、変化する(すなわち、検証可能な速度で増加する)ことを判断することも含まれる。検証手順にはまた、計算機システムが、RSRハウジング26の蓋80が閉じられていることを判断することも含まれ、これは、磁石92およびホール効果センサ178によって判断されてもよい。検証手順には、計算機システムが、RSR組立体28に設けられた(すなわち、液体センシング装置30に設けられていない)サーミスタ(図示せず)または同様の温度センサが、所定の範囲内の値を返すかどうかを判断することも含まれてよい。液体センシング装置30が適切に検証された場合には、液体サンプル32に対する解析テストが行われる。
【0032】
上述した様々な実施形態、他の特徴および機能、またはそれらの代替物若しくは変種が、好ましくは、他の多くの異なるシステムまたはアプリケーションに結合され得ることが理解されるであろう。また、現在予測されていない、または予期されていない様々な代替、修正、変形、または改良が、当業者によって後になされ得るが、それらもまた、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7