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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】中刳工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/034 20060101AFI20240524BHJP
   B23B 39/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B23B29/034 B
B23B39/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021535622
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2019086287
(87)【国際公開番号】W WO2020127717
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】18214626.6
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フランク, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】リーバウグ, クリスティアン
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104702(JP,A)
【文献】特開2012-206180(JP,A)
【文献】特開2011-016190(JP,A)
【文献】特開昭61-004605(JP,A)
【文献】特表2013-509310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0215598(US,A1)
【文献】米国特許第02998736(US,A)
【文献】米国特許第02990730(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第03222375(EP,A1)
【文献】国際公開第2013/089064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 35/00-49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部(3)および後端部(4)を備え、前記両端部間に中心回転軸(C)が延在し、前記中心回転軸周りに回転方向(R)で回転可能である工具本体(2)と、
切削インサート座(9)に連結され、前記回転軸(C)に対する前記切削インサート座(9)の距離を調節するために、前記回転軸(C)に対して横向きに延在する経路(P)に沿って移動可能に前記工具本体(2)内部に配置された摺動部材(5)と
を備える中刳工具において、
駆動ユニット(12)に連結された楔型拘止部材(14)が、前記工具本体(2)内部に延在軸(E)に沿って配置され、前記延在軸(E)に沿って移動可能であり、前記摺動部材(5)を係止位置に拘止するために前記摺動部材(5)と接触し、
記係止位置で、
記楔型拘止部材(14)が、前記摺動部材(5)を受動的に係止するために付勢ばね(16)を用いて予負荷され、且つ、
記駆動ユニット(12)が、前記回転軸(C)に対する前記切削インサート座(9)の距離を調節するとき前記楔型拘止部材(14)が能動的に解放可能になるように制御可能であり、
前記楔型拘止部材(14)が、前記楔型拘止部材(14)の空洞(15)内にねじ付き陥凹部分を備え、前記空洞(15)が、前記延在軸(E)に沿って延在し、前記空洞にねじボルト(19)が挿入され、前記ねじボルト(19)が、第1の方向に回転させられると、前記付勢ばね(16)の付勢力に対抗して前記楔型拘止部材(14)を動かすことによって前記付勢ばね(16)を圧縮して、前記楔型拘止部材(14)の前記係止位置を解放し、前記ねじボルト(19)が、第2の方向に回転させられると、前記楔型拘止部材(14)を前記摺動部材(5)と拘止係合状態にさせる、
ことを特徴とする、中刳工具。
【請求項2】
前記延在軸(E)が、前記中心回転軸(C)に実質的に平行に延在する、請求項1に記載の中刳工具。
【請求項3】
前記駆動ユニット(12)が、ギア配列(17、18)を介して前記楔型拘止部材(14)に連結される、請求項1または2に記載の中刳工具。
【請求項4】
前記ねじボルト(19)が、前記ギア配列の第1の歯車(17)に連結され、前記第1の歯車(17)と共に回転可能である、請求項に記載の中刳工具。
【請求項5】
前記駆動ユニット(12)が、第2の歯車(18)に連結され、前記第2の歯車が前記第1の歯車(17)に連結される、請求項に記載の中刳工具。
【請求項6】
前記第1の歯車(17)と前記第2の歯車(18)とのギア比が、2:1~10:1である、請求項に記載の中刳工具。
【請求項7】
前記楔型拘止部材(14)の楔角αが、2~10度である、請求項1からのいずれか一項に記載の中刳工具。
【請求項8】
前記摺動部材(5)と接触する前記楔型拘止部材(14)の側面の表面粗さRzが、5~20μmである、請求項1からのいずれか一項に記載の中刳工具。
【請求項9】
前記駆動ユニット(12)が電気モータである、請求項1からのいずれか一項に記載の中刳工具。
【請求項10】
前記駆動ユニット(12)を制御するように構成されたマイクロコントローラ(20)をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の中刳工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、中刳工具に関し、特に、切削インサートを保持する取付座が中刳工具の回転軸に対して移動可能であり、それによって中刳工具の切削直径を調節することができる、中刳工具に関する。
【背景技術】
【0002】
中刳工具は、通常、1つまたは複数の切削インサートを備える工具本体を回転させることによって、すでに存在する孔を拡大するために使用される。その加工は、一般に、正確な寸法、厳しい許容誤差、または確実な表面仕上げを達成するために行われる。通常の中刳工具本体は、半径方向に調節可能な切れ刃を有することが多く、それによって、切削直径を変えることができ、かつまた、切削インサートの摩耗に対する相殺を可能にすることができる。
【0003】
従来、切削直径の調節は、たとえば工具本体の調節スクリューを回すことにより、機械工によって手動で行われている。生産性が厳しく要求される状況において、中刳工具の手動調節は、時間の浪費と見なされ、したがって極めて望ましくないと見なされる。手動調節は、作業者が機械加工工程を物理的に停止し、中刳工具に物理的に手を触れることを必要とする。
【0004】
近年、中刳工具の調節はますます自動化されてきている。そのような自動化中刳工具の一例が、EP3222375に開示され、同出願では、中刳工具が、工具本体内で中刳工具の回転軸に対して横向きに延在する経路に沿って移動可能に配置された摺動部材を備える。モータが、摺動部材に連結され、切削インサートの切れ刃の距離を変化させるために、摺動部材を回転軸に対して横向きに移動させるように制御可能であり、それによって、中刳工具本体の切削直径を調節する。そのような中刳工具は、モータを制御して摺動部材を調節するように構成された制御ユニットをさらに備える。中刳工具にそのようなモータおよび制御ユニットを備えることによって、工具直径を調節するために作業者が機械に物理的に手を出しまたは中刳工具を機械から取り外す必要がなくなる。これは、中刳工具の調節手順が、著しくより迅速に、より手堅く、より安全になることを意味する。
【0005】
米国特許第9,999,928号は、インサートの半径方向位置を調節するために、作動装置が電気アクチュエータを備え、そのアクチュエータがインサートを担持する調節ピンに力を加える、中刳工具用の設定システムを開示する。アクチュエータおよび他の全ての構成要素が、中刳工具に組み込まれている。また、調節ピンを拘止する拘止ユニットも開示される。拘止ユニットは、電圧が掛からなければ調節ピンを拘止するように構成された圧電要素として実現される。圧電要素に電圧を加えると、圧電要素が調節ピンを解放し、その結果、半径方向位置を調節することができる。圧電要素に伴う問題は、圧電要素が、高価、複雑であり、信頼性がそれほど高くないことである。
【0006】
上記に照らして、切削直径を調節する手段の位置を効果的に保持し固定する中刳工具、および特に方式をさらに開発し、それによって、機械加工操作中に切削直径が一定に止まるようにする必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、既知の中刳工具に対して少なくともある態様において改善された、序文で示されたタイプの中刳工具を提供することである。
【0008】
この目的は、前端部および後端部を備え、それら両端部間に中心回転軸が延在し、その中心回転軸周りにある回転方向で回転可能である工具本体を備える中刳工具によって達成される。中刳工具は、切削インサート座に連結され、上記回転軸に対する切削インサート座の距離を調節するために、上記回転軸に対して横向きに延在する経路に沿って移動可能に工具本体内部に配置された摺動部材を備える。中刳工具は、駆動ユニットに連結され、工具本体内部に配置され、摺動部材を係止位置に拘止するために摺動部材と接触する楔型拘止部材をさらに備え、その係止位置において、楔型拘止部材は、摺動部材を受動的に係止するために予負荷され、駆動ユニットは、切削インサート座の距離を調節するとき楔型拘止部材が能動的に解放可能になるように制御可能である。
【0009】
楔型拘止部材が係止位置に向かって予負荷されていることによって、駆動ユニットの役割は、主として拘止部材を所望の位置に運ぶこととなり、拘止力は、予負荷力から得られる。本発明の工具では、係止位置において、駆動ユニットが拘止力を担う必要はない。その結果、有利には、駆動ユニットは、拘止部材を移動させるために作動させることができ、係止位置では、所望の拘止力は、駆動ユニットからの力がなくても確実に存在させられる。
【0010】
例示的実施形態では、楔型拘止部材が、中心回転軸に実質的に平行に延在する延在軸に沿って配置され、その延在軸に沿って移動可能である。別の例示的実施形態では、それに代わって、楔型拘止部材が、摺動部材の横向き延在経路に実質的に平行に延在する延在軸に沿って配置され得、その延在軸に沿って移動可能である。そのような実施形態例では、摺動部材は、インサート座に連結される外側端部から内側端部迄の経路の方向に延在する。拘止部材は、摺動部材の内側端部で摺動部材に向かったり離れたりできるように配置される。別の例示的実施形態では、それに代わって、拘止部材は、中心回転軸および経路の方向に実質的に垂直な延在軸に沿って配置することができる。
【0011】
例示的実施形態では、楔型拘止部材は、付勢ばねを用いて予負荷される。さらに、楔型拘止部材が、その楔型拘止部材の空洞内にねじ付き陥凹部分を備え得、その空洞は、楔型拘止部材の延在軸に沿って延在し、その空洞にねじボルトが挿入され、そのねじボルトが、第1の方向に回転させられると、付勢ばねの付勢力に対抗して楔型拘止部材を動かすことによって付勢ばねを圧縮して、楔型拘止部材の係止位置を解放し、ねじボルトが、第2の方向に回転させられると、楔型拘止部材を摺動部材と拘止係合状態にさせる。
【0012】
すなわち、駆動ユニットが拘止部材を係止位置に向かって動かすように作動させられると、ばねは、第1の組のねじ山側面、すなわちばねに向いているボルトねじ山側面とばねとは反対向きの陥凹ねじ山側面とを互いに押し付けるように働く。拘止部材が係止位置に達した後も駆動ユニットを作動させ陥凹ねじ内でボルトねじを回し続けさせると、第2の組のねじ山側面が互いに係合し押し付け合う。この第2の組の側面は、ばねとは反対向きのボルトねじ山側面とばねに向いている陥凹ねじ山側面とから成る。そのとき結果的に、第2の組の側面間の力が、拘止部材と摺動部材との間の所望の拘止力に対応し得る。しかしながら、有利には、拘止部材が係止位置に達すると、駆動ユニットは、拘止部材を係止位置に止めるためにボルトに力を加え所定の拘止力を確保する必要がなくなる。言い換えると、摺動部材に拘止力を加えるために、ボルトねじ山側面を対応する陥凹ねじ山側面に押し付ける必要がなくなる。その代わりに、ばねによる付勢力で足りる。すなわち、係止位置では、拘止力は、ばねによる付勢力によって充当され、駆動ユニットは遮断することができる。両ねじ山の側面間に遊びがある実施形態では、係止位置では側面同士が係合解除され得る。
【0013】
例示的実施形態では、駆動ユニットは、ギア配列を介して楔型拘止部材に連結される。ねじボルトが、ギア配列の第1の歯車に連結され得、第1の歯車と共に回転可能であり、駆動ユニットが、第2の歯車に連結され得、その第2の歯車が第1の歯車に連結され得る。第1の歯車と第2の歯車とのギア比は、2:1~10:1、好ましくは3:1であり得る。
【0014】
例示的実施形態では、楔型拘止部材の楔角は、2~10度、好ましくは5~6度であり得る。摺動部材と接触する楔型拘止部材の側面の表面粗さは、5~20μm、好ましくは10~12μmである。
【0015】
例示的実施形態では、中刳工具は、電気モータなどの駆動ユニットを制御するように構成された制御ユニットをさらに備える。諸実施形態では、駆動ユニットは工具本体内に配置される。
【0016】
次いで、本発明が、添付図面を参照して例を介して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】中刳工具の概略透視図である。
図2a】中刳工具の側視断面図である。
図2b】中刳工具の側視断面図である。
図3a】楔型拘止部材の摺動部材との相互作用の概略側面図である。
図3b】楔型拘止部材の摺動部材との相互作用の概略側面図である。
図4】楔型拘止部材の上側部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以降、本発明による中刳工具の詳細な説明を行う。本開示においては、中刳工具は、既存の穴を拡張する切屑除去式機械および機械加工用として、金属切削のために使用されるものであると広く理解されるべきである。ここで、図1図2aおよび2b、ならびに図3aおよび3bを並行して参照して、本中刳工具を説明する。全ての図において同じ形体を示すのには同じ参照番号が使用される。本中刳工具は、前端部3および後端部4を備える工具本体2を有し、それら両端部間に中心回転軸Cが延在し、その軸周りに工具本体2が回転方向Rで回転可能である。本中刳工具は、摺動部材5、切削インサート座9、駆動ユニット12、楔型拘止装置14、付勢ばね16、第1の歯車17および第2の歯車18を備えるギア配列、ならびにねじボルト19をさらに具備する。
【0019】
摺動部材5は、工具本体2の内部で回転軸Cに対して横向きに延在する経路P(図2bの破線を参照)に沿って移動可能に配置される。摺動部材5の移動は、電気モータ(図示せず)を用いて行うことができる。本開示の場合、「横向きに」は、殆どの場合それが好ましいものの「垂直に」と解釈すべきでない。摺動部材5の移動性に関しては、摺動部材が、回転軸Cに対して切削インサート座9の距離を調節する方向に移動可能であることが重要である。切削インサート座9は、切削インサート10を支承するように適合され構成される。したがって、切削インサート座9の距離を調節することによって、切削インサートも調節されることになる。切削インサート10は、切れ刃を有し、工具本体の回転軸Cに対して横向きに工具本体から突出し、それによって、回転軸Cの周りに工具本体を回転させると被削物の孔の壁に中刳加工を行う。
【0020】
図2aで分かるように、楔型拘止部材14は、楔型拘止装置14が摺動部材5と接触するように工具本体2の内部に配置される。楔型拘止部材14の目的は、中刳工具の半径を設定する調節が摺動部材5に行われた後に、摺動部材5を固定位置に拘止し係止することである。楔型拘止部材14は、摺動部材5と接触する限り、中刳工具内の様々な位置に配置することができ、摺動部材5を拘止する係止位置と摺動部材5を解放する開放位置との間で移動可能であり、その開放位置では摺動部材が調節可能になる。例示的実施形態では、楔型拘止部材14は、中心回転軸Cに実質的に平行に延在する延在軸Eに沿って配置され、その延在軸Eに沿って移動可能である。この状態が図2aおよび2bに示される。代替実施形態では、それに代わって、楔型拘止部材14は、摺動部材の横向き延在経路Pに実質的に平行に延在する延在軸Eに沿って配置され、その延在軸Eに沿って移動可能である。このように、楔型拘止部材14は、摺動部材5に対してある位置で拘止作用を、別の位置で解放作用を発揮ことができる限り、多様な位置に配置することができる。
【0021】
駆動ユニット12は、楔型拘止部材14を解放位置に移動するために、楔型拘止装置14に連結される。駆動ユニット12が休止状態、すなわち遮断されている間は、楔型拘止部材14は、摺動部材5を係止位置に拘止するように予負荷されている。駆動ユニット12は、通常、楔型拘止部材14に直接連結し、またはギア配列を介して連結することができる電気モータである。楔型拘止部材14に予負荷を掛けることによって、楔型拘止部材は、摺動部材5を固定または係止位置に受動的に係止する。これは、切削インサート座9も固定状態にあり、中刳工具が作動可能であることを意味する。受動係止の利点は、全く動力供給なしに係止できることである。積極係止は、たとえば、中刳工具が作動しているときなど、拘止装置を係止位置に保持するために駆動ユニットに電力供給することを必要とし得る。その場合、給電不良は重大な不具合を生じ得る。
【0022】
例示的実施形態において、摺動部材5を受動的に係止するために楔型拘止部材14に予負荷を掛けることは、付勢ばね16を用いて達成され、付勢ばね16は、楔型拘止部材14を摺動部材5との拘止係合状態に付勢する(図3a)。楔型拘止部材14と摺動部材5との拘止係合を解放するために、駆動ユニット12が、ばね19を圧縮する(図3bを参照)。ばね19の圧縮は、楔型拘止部材14の空洞15内にねじ付き陥凹部分を設けることによって達成する。空洞15は、延在軸Eに沿って延在する。ねじボルト19が、空洞15に挿入される。ねじボルト19を第1の方向に回転させると、楔型拘止部材14を付勢ばね16の付勢力に対抗して移動させることによって、付勢ばね16が、圧縮され、楔型拘止部材14の係止位置を解放する。ねじボルト19を第2の反対方向に回転させると、ねじボルト19が、楔型拘止部材14を摺動部材5と拘止係合させる。
【0023】
ねじボルト19の回転運動は、駆動ユニット12によって行われ、駆動ユニット12は、上記の通り、ねじボルト19に直接、または図2bに示すようにギア配列を介して連結することができる。例示的実施形態では、ねじボルト19が、ギア配列の第1の歯車17に連結され第1の歯車17と共に回転可能であり、第1の歯車17に連結された第2の歯車18に駆動ユニット12が連結される。第1の歯車17と第2の歯車18とのギア比は、2:1~10:1であり、好ましくは3:1である。当業者が理解するように、ギア配列は、状況に応じて、2つ、3つ、またはそれより多くのギアを備え得る。ギア配列を用いて駆動ユニット12を連結することによる利点は、適切なギア比を選択することによって、解放力をばねの付勢力に適合させることができることである。
【0024】
中刳工具は、また、工具本体2の内部に配置されたマイクロコントローラ20の形態の制御ユニットを有する。マイクロコントローラは、摺動部材5を動かすモータ部位、および楔型拘止装置14を能動的に解除する駆動ユニット12を制御するように構成される。マイクロコントローラ20は、また、工具本体2を回転させることによって達成すべき中刳直径の設定値であって、モータ部位を制御して摺動部材5をそれに対応する位置に移動させるべき設定値を受信するために、ラップトップまたはスマートフォンなどの外部装置と通信するように構成することもできる。マイクロコントローラ20は、あらゆるタイプの無線通信手段、好ましくは小電力通信手段によってそのような外部装置と通信するように構成される。また、電池22が、工具本体2の内部に配置され、マイクロコントローラ20、摺動部材5用のモータ部位、および楔型拘止部材14用の駆動ユニット12の作動に電気エネルギーを供給するために接続される。
【0025】
次いで図4に移って、楔型拘止部材14のいくつかの特性が説明される。十分な拘止力を確保するために、本発明者は、2~10度、好ましくは5~6度の楔型拘止部材14の楔角αが適切であることを見い出した。さらに、摺動部材5と接触する楔型拘止部材14の側面の表面粗さRは、5~20μm、好ましくは10~12μmである。
【0026】
上記の説明は複数の特定形態を含んでいるが、これら特定形態は、本明細書に記述された概念の範囲を限定するものと解釈すべきでなく、単に、記述された概念のいくつかの例示的実施形態の説明を行うものと解釈すべきである。本記述の概念の範囲は、当業者にとって明らかになる他の実施形態を完全に包含し、したがって本記述の概念の範囲は限定的ではないことを理解されたい。要素への単数での言及は、そう明言されない限り「1つかつ1つのみ」を意味するものではなく、むしろ「1つまたは複数」を意味する。上記の実施形態の要素に対して当業者に知られるあらゆる構造上および機能上の同等物は、明白に本明細書に組み込まれ、本明細書に包含されるものとする。さらに、中刳工具は、本明細書に包含されるために、本記述の概念によって解決を図る問題の全てに対処する必要はない。例示された図において、破線は全体として、破線内の形体は任意選択であることを意味する。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4