(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】車両及びその動力電池の加熱装置と方法
(51)【国際特許分類】
H02P 21/05 20060101AFI20240524BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20240524BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240524BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240524BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240524BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240524BHJP
B60L 58/25 20190101ALI20240524BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20240524BHJP
【FI】
H02P21/05
H02P21/22
B60L3/00 H
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/25
B60L58/27
(21)【出願番号】P 2021536218
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2019127109
(87)【国際公開番号】W WO2020125769
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】201811574151.2
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】廉玉波
(72)【発明者】
【氏名】凌和平
(72)【発明者】
【氏名】潘▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼宇▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼昊
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-165526(JP,A)
【文献】特開2008-189249(JP,A)
【文献】特開平10-337084(JP,A)
【文献】特開2010-200515(JP,A)
【文献】特開2016-019356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/05
H02P 21/22
B60L 3/00
B60L 9/18
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 58/25
B60L 58/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力電池を加熱する動力電池の加熱方法であって、
動力電池の現在の温度値を取得し、前記動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低いことを決定するステップと、
前記動力電池の加熱パワーを取得するステップと、
所定の横軸電流を取得し、かつ、前記動力電池の加熱パワーに基づいて所定の直軸電流を取得する、ステップであって、前記所定の横軸電流は、三相交流モータの出力するトルク値を、
伝動機構の歯車間に力を加えることのみを引き起こし、車両を移動させることができないほど小さい、目標範囲内にさせる、横軸電流である、ステップと、
三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ状態を制御することにより、前記三相交流モータが加熱エネルギー源によって供給された加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、前記動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ、加熱過程において前記所定の直軸電流及び前記所定の横軸電流に基づいて、前記三相インバータを制御して前記三相交流モータの相電流を調整するステップと、
を含み、
前記動力電池の加熱過程において、前記三相インバータ及び前記三相交流モータの温度をリアルタイムに監視し、前記三相インバータ及び前記三相交流モータのいずれか1つの温度が温度限界値を超えると決定すれば、前記所定の直軸電流を減少させるか、又は前記所定の直軸電流をゼロに設定し、かつ、前記所定の横軸電流をゼロに設定する、
動力電池の加熱方法。
【請求項2】
前記動力電池の加熱パワーを取得するステップの前に、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすことを決定するステップをさらに含み、
動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすか否かを決定する前記ステップは、
前記三相交流モータの現在の動作状態が非駆動状態であると決定し、かつ、前記動力電池、前記三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路がいずれも無故障状態であると決定すれば、前記動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすと識別するステップと、
前記三相交流モータの現在の動作状態が駆動状態であると決定するか、又は、前記動力電池、前記三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すれば、前記動力電池の加熱条件が所定の条件を満たさないと識別するステップと、
を含む、
請求項1に記載の動力電池の加熱方法。
【請求項3】
ギアポジション情報及びモータ回転数情報を取得し、かつ前記ギアポジション情報及び前記モータ回転数情報に基づいて前記三相交流モータの現在の動作状態を取得するステップをさらに含む、
請求項2に記載の動力電池の加熱方法。
【請求項4】
前記動力電池、前記三相交流モータ、前記モータコントローラ及び前記伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すれば、前記所定の直軸電流をゼロに設定するステップをさらに含む、
請求項2に記載の動力電池の加熱方法。
【請求項5】
前記動力電池、前記三相交流モータ、前記モータコントローラ及び前記伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定した場合、
前記所定の横軸電流をゼロに設定するステップをさらに含む、
請求項4に記載の動力電池の加熱方法。
【請求項6】
前記動力電池の加熱過程において、前記動力電池の温度をリアルタイムに監視し、前記動力電池の温度が特定の加熱温度に達すれば、前記所定の直軸電流を減少させるステップをさらに含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の動力電池の加熱方法。
【請求項7】
前記加熱エネルギー源は、外部充電装置及び動力電池のうちの少なくとも1つである、
請求項1に記載の動力電池の加熱方法。
【請求項8】
車両の動力電池を加熱する動力電池の加熱装置であって、
加熱エネルギーを供給する加熱エネルギー源の正極及び負極に接続される三相インバータと、
前記三相インバータの3相のアームに、3相のコイルが接続される三相交流モータと、
制御モジュールであって、前記三相インバータ及び前記三相交流モータにそれぞれ接続され、動力電池の現在の温度値を取得し、前記動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低いことを決定し、前記動力電池の加熱パワーを取得し、制御モジュールは、さらに、所定の横軸電流を取得し、かつ、前記動力電池の加熱パワーに対応する所定の直軸電流を取得し、取得された前記所定の横軸電流の値は、前記三相交流モータの出力するトルク値を、
伝動機構の歯車間に力を加えることのみを引き起こし、車両を移動させることができないほど小さい、目標範囲内にさせる横軸電流値である、制御モジュールと、
を含み、
前記制御モジュールは、さらに、前記三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ状態を制御することにより、前記三相交流モータが前記加熱エネルギー源によって供給された加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、前記動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ加熱過程において前記所定の直軸電流及び前記所定の横軸電流に基づいて、前記三相インバータを制御して前記三相交流モータの相電流を調整し、
前記動力電池の加熱過程において、前記三相インバータ及び前記三相交流モータの温度をリアルタイムに監視し、前記三相インバータ及び前記三相交流モータのいずれか1つの温度が温度限界値を超えると決定すれば、前記所定の直軸電流を減少させるか、又は前記所定の直軸電流をゼロに設定し、かつ、前記所定の横軸電流をゼロに設定する、
動力電池の加熱装置。
【請求項9】
前記制御モジュールは、さらに、前記動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすことを決定し、
前記三相交流モータの現在の動作状態が非駆動状態であることを決定し、かつ、前記動力電池、前記三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路がいずれも無故障状態であると決定すれば、前記動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすと識別し、
前記三相交流モータの現在の動作状態が駆動状態であると決定するか、又は、前記動力電池、前記三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すれば、前記動力電池の加熱条件が所定の条件を満たさないと識別する、
請求項8に記載の動力電池の加熱装置。
【請求項10】
前記制御モジュールは、さらに、
ギアポジション情報及びモータ回転数情報を取得し、かつ前記ギアポジション情報及び前記モータ回転数情報に基づいて前記三相交流モータの現在の動作状態を取得する、
請求項9に記載の動力電池の加熱装置。
【請求項11】
前記制御モジュールは、さらに、
前記動力電池、前記三相交流モータ、前記モータコントローラ及び前記伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すれば、前記所定の直軸電流をゼロに設定する、
請求項9に記載の動力電池の加熱装置。
【請求項12】
前記制御モジュールは、さらに、
前記動力電池、前記三相交流モータ、前記モータコントローラ及び前記伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すれば、前記所定の横軸電流をゼロに設定する、
請求項9に記載の動力電池の加熱装置。
【請求項13】
さらに、温度検出ユニットを含み、
前記温度検出ユニットは、前記制御モジュール及び前記三相交流モータに接続され、前記温度検出ユニットは、前記動力電池の加熱過程において、前記三相インバータ及び前記三相交流モータの温度をリアルタイムに監視し、かつ、監視結果を前記制御モジュールにフィードバックし、前記三相インバータ及び前記三相交流モータのいずれか1つの温度が温度限界値を超えると、前記制御モジュールは、前記所定の直軸電流を減少させるか又は前記所定の直軸電流をゼロに設定する、
請求項8~12のいずれか1項に記載の動力電池の加熱装置。
【請求項14】
前記三相インバータ及び前記三相交流モータのいずれか1つの温度が温度限界値を超えると決定する場合、前記制御モジュールは、さらに、前記所定の横軸電流をゼロに設定する、
請求項13に記載の動力電池の加熱装置。
【請求項15】
前記制御モジュールは、さらに、
前記動力電池の加熱過程において、前記動力電池の温度をリアルタイムに監視し、前記動力電池の温度が特定の加熱温度に達すれば、前記所定の直軸電流を減少させる、
請求項8~12のいずれか1項に記載の動力電池の加熱装置。
【請求項16】
請求項8~15のいずれか1項に記載の動力電池の加熱装置を含み、動力電池、冷却液タンク、ポンプ及び管路をさらに含み、前記ポンプは、制御信号に基づいて前記冷却液タンク中の冷却液を前記管路に輸送し、前記管路は、前記動力電池及び前記動力電池の加熱装置を貫通している、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、ビーワイディー カンパニー リミテッドが2018年12月21日に提出した、発明の名称が「車両及びその動力電池の加熱装置と方法」の、中国特許出願第「201811574151.2」号の優先権を主張するものである。
【0002】
本願は、車両の技術分野に関し、特に車両及びその動力電池の加熱装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、新エネルギー車が勢いよく発展しているため、リチウムイオンに基づく動力電池が広く使用されるが、電池の固有特性により、動力電池の充放電能力が低温の場合に大幅に低下するため、寒冷地での車両の使用に影響を与える。
【0004】
この問題を解決するために、従来技術では、主に温度センサにより動力電池の温度をリアルタイムに取得し、かつ動力電池の温度が所定の条件を満たす場合、動力電池によるエネルギーを使用してモータをゼロトルクで動作させるように制御して、動力電池の加熱を実現する。しかしながら、該方法は、動力電池の加熱を実現できるが、モータを制御してゼロトルクを出力し、即ち、トルク電流をゼロに制御する必要がある。トルク電流をゼロに制御するための鍵は、モータのゼロ位置を正確に取得することである。しかしながら、実際の状況では、モータのゼロ位置標定方法の正確性に限界があり、モータのゼロ位置を正確に取得するのは難しく、かつ、電流振幅値が小さい場合に、三相電流センサの良好なサンプリング精度を保証しにくい。この場合には、トルク電流がゼロで一定ではなく、ゼロ付近で振動し、引いては、車両の振動を引き起こし、乗り心地を悪くする。
【0005】
以上より、従来の動力電池の加熱方法には、車両の振動を引き起こしやすいという問題が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本願は、動力電池の加熱方法における、車両の振動を引き起こしやすいという問題を解決するために、車両及びその動力電池の加熱装置と方法を提供する。
【0007】
本願は、以下のように実現されるものであり、本願の第1の態様に係る、車両の動力電池を加熱する動力電池の加熱方法は、前記動力電池の現在の温度値を取得し、前記動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低いことを決定し、かつ動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすことを決定し、前記動力電池の加熱パワーを取得するステップと、値が三相交流モータの出力するトルク値を、ゼロを含まない目標範囲内にさせる横軸電流値である所定の横軸電流を取得し、かつ前記動力電池の加熱パワーに基づいて対応する所定の直軸電流を取得するステップと、三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ状態を制御することにより、三相交流モータが加熱エネルギー源によって供給された加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、前記動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ加熱過程において前記所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、前記三相インバータを制御して前記三相交流モータの相電流を調整するステップとを含む。
【0008】
本願の第2の態様に係る、車両の動力電池を加熱する動力電池の加熱装置は、加熱エネルギーを供給する加熱エネルギー源の正極及び負極に接続される三相インバータと、3相のコイルが前記三相インバータの3相のアームに接続される三相交流モータと、前記三相インバータ及び前記三相交流モータにそれぞれ接続され、動力電池の現在の温度値を取得し、前記動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低いことを決定し、かつ動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすことを決定し、前記動力電池の加熱パワーを取得し、さらに、値が三相交流モータの出力するトルク値を、ゼロを含まない目標範囲内にさせる横軸電流値である所定の横軸電流を取得し、かつ前記動力電池の加熱パワーに基づいて対応する所定の直軸電流を取得し、さらに、三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ状態を制御することにより、三相交流モータが加熱エネルギー源によって供給された加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、前記動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ加熱過程において前記所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、前記三相インバータを制御して前記三相交流モータの相電流を調整する制御モジュールと、を含む。
【0009】
本願の第3の態様に係る車両は、第2の態様に記載の動力電池の加熱装置を含み、動力電池、冷却液タンク、ポンプ及び管路をさらに含み、前記ポンプは、制御信号に基づいて前記冷却液タンク中の冷却液を前記管路に輸送し、前記管路は、前記動力電池及び前記動力電池の加熱装置を貫通する。
【0010】
本願は、車両及びその動力電池の加熱装置と方法を提供し、該動力電池の加熱方法は、動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低いことを決定し、かつ動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすことを決定することにより、三相インバータを制御することにより、三相交流モータが加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつモータの出力するトルク値を適切な値にする所定の横軸電流を取得し、動力電池の加熱パワーに基づいて対応する所定の直軸電流を取得し、さらに加熱過程において所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整することにより、モータ軸が、車両を移動させることができず、車両の伝動機構の部品を損傷することができない、トルク値が非常に小さいマグネットトルクを出力し、モータ出力軸が伝動機構の歯車間に力を加えることのみを引き起こし、噛み合い隙間を除去し、車両の振動の発生を効果的に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本願の実施例における技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明される図面は、本願のいくつかの実施例にすぎず、当業者であれば、創造的な労働をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0012】
【
図1】本開示の実施例に係る動力電池の加熱方法のフローチャートである。
【
図2】本開示の実施例に係る動力電池の加熱装置の概略構成図である。
【
図3】本開示の実施例に係る動力電池の加熱装置の回路図である。
【
図4】本開示の実施例に係る動力電池の加熱装置の別の構成図である。
【
図5】本開示の実施例に係る動力電池の加熱方法における所定の横軸電流の波形の概略図である。
【
図6】本開示の実施例に係る動力電池の加熱装置の制御モジュールの構成図である。
【
図7】本開示の実施例に係る動力電池の加熱装置の座標変換の概略図である。
【
図8】本開示の実施例に係る車両のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願の目的、技術手段及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本願をさらに詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するものではないことを理解されたい。
【0014】
本願の技術手段を説明するために、以下、具体的な実施例により説明する。
【0015】
本開示の実施例に係る動力電池の加熱方法は、車両の動力電池を加熱し、かつ加熱過程において動力電池の伝熱経路と車両のモータの伝熱回路とを接続し互いに連通して伝熱回路を形成し、
図1に示すように、以下のステップS11~S16を含む。
【0016】
ステップS11では、動力電池の現在の温度値を取得し、動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低いことを決定し、かつ動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすことを決定する。
【0017】
本願の実施例では、寒い環境で、車両が長時間に使用されないと、動力電池の温度が環境温度に近づき、温度の低下に伴って、動力電池の性能がさらに低下し、充放電能力がいずれも制限され、さらに車両の性能及び使用に影響を与えるため、動力電池を加熱する必要があり、動力電池を加熱する前に、動力電池の現在の温度値を取得し、かつ該温度値を所定の温度値と比較しなければならず、該現在の温度値が所定の温度値より低ければ、電池の加熱条件が所定の条件を満たすか否かをさらに決定する。
【0018】
具体的には、本願の一実施形態として、ステップS11における動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすか否かを決定することは、具体的には、以下のとおりである。
モータの現在の動作状態が非駆動状態であり、かつ動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路がいずれも無故障状態であると決定すれば、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすと識別し、
モータの現在の動作状態が駆動状態であると決定するか、又は動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すれば、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たさないと識別する。
【0019】
本願の実施例では、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすか否かを決定する場合、具体的には、車両のモータの現在の動作状態、動力電池が故障するか否か、三相交流モータが故障するか否か、モータコントローラが故障するか否か、及び伝熱回路が故障するか否かを確認する必要があり、モータの現在の動作状態が非駆動状態であり、かつ動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路がいずれも故障しなければ、この場合に動力電池を加熱してよいことを示し、モータの現在の動作状態が駆動状態であり、或いは、動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障すれば、この場合に動力電池を加熱しなくてもよいことを示し、なお、本開示の実施例では、伝熱回路の故障は、連通弁の損傷、伝熱回路中の媒体の不足などの問題を含むが、これらに限定されない。
【0020】
さらに、本願の一実施形態として、該動力電池の加熱方法は、
ギアポジション情報及びモータ回転数情報を取得し、かつギアポジション情報及びモータ回転数情報に基づいてモータの現在の動作状態を取得するステップをさらに含む。
【0021】
具体的には、現在のポジションがPポジションかつモータの回転数が0であると判定すると、モータの現在の動作状態が非駆動状態であることを示し、現在のポジションがPポジションではなく、或いは、モータの回転数がゼロではないと判定すると、モータの現在の動作状態が駆動状態であることを示す。
【0022】
本実施形態では、ギアポジション情報及びモータ回転数情報を取得し、かつギアポジション情報及びモータ回転数情報に基づいてモータの現在の動作状態を取得することにより、その後にモータの動作状態に基づいて、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすか否かを判断する場合、ギアポジション情報及びモータ回転数情報に基づいて判断することができ、いずれか1つの条件を満たさないと、動力電池を加熱することができず、車両が正常走行状態で動力電池を加熱して車両の性能に影響を与えることを防止する。
【0023】
ステップS12では、動力電池の加熱パワーを取得する。
【0024】
本願の実施例では、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすと決定すると、動力電池を加熱することができ、この場合、動力電池の加熱パワーを取得する必要があり、該加熱パワーとは、動力電池に必要な加熱パワーを指す。
【0025】
ステップS13では、所定の横軸電流を取得し、かつ動力電池の加熱パワーに基づいて対応する所定の直軸電流を取得し、取得された所定の横軸電流の値が三相交流モータの出力するトルク値をゼロを含まない目標範囲内にさせる横軸電流値である。
【0026】
本願の実施例では、動力電池に必要な加熱パワーを取得した後、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqを取得する必要があり、所定の直軸電流idを取得する場合、前に取得された動力電池の加熱パワーに基づいて検索することができ、即ち、動力電池の加熱パワーと所定の直軸電流idとがマッピング関係を有し、動力電池の加熱パワーを取得すれば、該加熱パワーに基づいて対応する所定の直軸電流idを検索することができ、また、所定の横軸電流iqを取得する場合、取得された所定の横軸電流iqの値に基づいて三相交流モータの出力するトルク値を非常に小さくし、即ち、該トルクは、車両を移動させることができず、車両の伝動機構の部品を損傷することができず、小さい出力トルクを供給して車両の伝動機構の歯車間に力を加えることを完成すればよく、該所定の横軸電流iqが複数回の実験によって取得することができる。
【0027】
ステップS14では、三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ状態を制御することにより、三相交流モータが加熱エネルギー源によって供給された加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ加熱過程において所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整する。
【0028】
本開示の実施例では、加熱エネルギー源は、充電パイルのような外部充電装置であってもよく、動力電池であってもよく、ここでは、具体的に限定しない。
【0029】
さらに、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqを取得した後、この場合、三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ状態を制御することができ、即ち、三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ時間、即ち、パワーデバイスのオン及びオフの時間を制御することにより、三相交流モータが加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ加熱過程において所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整して、加熱パワーの調整を実現する。
【0030】
具体的には、本開示の実施例では、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整する場合、動力電池を加熱する前に、三相交流モータの現在の三相電流値及びモータロータの位置及び角度情報を取得し、かつモータロータの位置及び角度情報に基づいて現在の三相電流値を直軸電流及び横軸電流に変換する必要があり、さらに、加熱過程において、直軸電流、横軸電流、所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整することにより、動力電池を加熱する機能を実現し、かつモータ軸端が小さいトルク値を出力することを保証する。
【0031】
本実施形態では、三相交流モータの加熱前の三相電流値及びモータロータの位置及び角度情報などのパラメータを取得し、さらに、取得されたパラメータに基づいて直軸電流及び横軸電流を取得して、加熱過程において該直軸電流、横軸電流、所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整することにより、加熱パワーの調整を実現する。
【0032】
さらに、本開示の一実施形態として、モータロータの位置及び角度情報及び現在の三相電流値に基づいて直軸電流及び横軸電流を取得する具体的な過程は、以下のとおりである。
動力電池を加熱する前に、三相交流モータの現在の三相電流値及びモータロータの位置及び角度情報を取得した後、現在の三相電流値を自然座標系から静止座標系に変換し、かつモータロータの位置及び角度情報に基づいて、静止座標系における現在の三相電流値を同期回転座標系における直軸電流及び横軸電流に変換する。
【0033】
本実施形態では、現在の三相電流値を自然座標系から静止座標系に変換し、かつモータロータの位置及び角度情報に基づいて、静止座標系における現在の三相電流値を同期回転座標系における直軸電流及び横軸電流に変換することにより、取得された直軸電流及び横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整する場合、同じ座標系にあるという基準に基づいて、調整過程における正確性を向上させることができる。
【0034】
さらに、本開示の一実施形態として、直軸電流及び横軸電流を取得した後、直軸電流及び横軸電流を所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqとそれぞれ比較することにより、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて直軸電流及び横軸電流を調整し、さらに、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて三相インバータを制御する。所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて直軸電流及び横軸電流を調整した後、該調整結果をデカップリングして、デカップリングされたデータに基づいて直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqを取得する。直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqを取得すると、直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqを座標変換して第1の電圧Uα及び第2の電圧Uβを取得して、第1の電圧Uα及び第2の電圧Uβに基づいてスイッチング信号を取得することにより、スイッチング信号に基づいて三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整する。
【0035】
本実施形態では、所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、取得された直軸電流及び横軸電流を調整して、対応する調整結果を取得し、かつ該調整結果を一連変化させて三相インバータのスイッチング信号、即ち、三相インバータにおけるパワーデバイスのオンオフ時間を取得することにより、該スイッチング信号に基づいて三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整し、三相交流モータの閉ループ制御と、加熱パワーの調整とを実現し、動力電池の加熱過程における有効性を強化し、モータなどの部品の損失を低減する。
【0036】
ステップS15では、動力電池の加熱過程において、三相インバータ及び上記三相交流モータの温度をリアルタイムに監視し、三相インバータ及び三相交流モータのいずれか1つの温度が温度限界値を超えると決定すれば、所定の直軸電流を減少させるか、又は所定の直軸電流をゼロに設定する。
【0037】
本願の実施例では、動力電池の加熱過程において、デバイスは温度が高すぎる場合にいずれも損傷するため、三相交流モータ及び三相インバータにおけるパワーデバイスの温度をリアルタイムに監視する必要があり、三相インバータ又は三相交流モータのいずれか1つの温度が温度閾値を超えたことを検出すれば、所定の直軸電流idの電流振幅を減少させるか、又は所定の直軸電流idをゼロに設定する。
【0038】
本願の実施例では、三相インバータ及び三相交流モータのいずれか1つの温度が温度限界値を超えたと決定する場合、所定の横軸電流をゼロに設定することをさらに含む。
【0039】
本実施形態では、動力電池の加熱過程において、三相インバータ及び三相交流モータの温度をリアルタイムに監視することにより、三相インバータ及び三相交流モータのいずれか1つの温度が温度閾値を超えた場合、所定の直軸電流idを減少させるか、又は所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqをゼロに設定することにより、三相交流モータの3相の巻線を流れる相電流が減少するか、又は0になり、このように、モータの発熱パワーが低下して、三相インバータにおけるパワーユニットの温度及び三相交流モータの3相の巻線の温度が低下することにより、加熱効果を保証するとともに車両全体の部品を損傷しない。ステップS16では、動力電池の加熱過程において、動力電池の温度をリアルタイムに監視し、動力電池の温度が特定の加熱温度に達すれば、所定の直軸電流を減少させる。
【0040】
本開示の実施例では、動力電池の温度が特定の加熱温度に達した場合、動力電池を加熱する必要がないことを示し、この場合、動力電池への加熱を停止し、即ち、所定の直軸電流idを減少させる必要があり、所定の直軸電流idをゼロまで減少させてよい。
【0041】
本実施形態では、加熱過程において動力電池の温度をリアルタイムに監視し、かつ動力電池の温度が特定の加熱温度に達した場合、所定の直軸電流idを減少させることにより、動力電池が過熱することを効果的に防止し、動力電池の損傷の発生を防止し、動力電池の耐用年数を延長する。
【0042】
さらに、本願の一実施形態として、該動力電池の加熱方法は、
動力電池の加熱過程において、動力電池に必要な加熱パワーをリアルタイムに取得し、かつ必要な加熱パワーに基づいて、所定の直軸電流の大きさを調整するステップをさらに含む。
【0043】
本願の実施例では、必要な加熱パワーに基づいて、所定の直軸電流の大きさを調整することは、動力電池の所定の目標加熱温度と現在の温度との差に基づいて加熱パワーを調整することであり、差が大きいほど加熱パワーが大きくなり、パワーが大きいほど所定の直軸電流の振幅が大きくなる。具体的には、必要なパワーが大きく、即ち、動力電池の現在の電池温度が低い温度である場合、例えば、加熱して達する目標温度までの温度が10℃を超えると、ハイパワーで加熱し、この場合、所定の直軸電流idの振幅を大きくし、必要なパワーが小さく、即ち、動力電池の現在の電池温度が高い場合、例えば、加熱して達する目標温度までの温度が10℃より小さいと、ローパワーで加熱し、この場合、所定の直軸電流idの振幅を小さくする。本実施形態では、加熱過程において動力電池に必要な加熱パワーをリアルタイムに取得し、かつ該必要な加熱パワーに基づいて所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqを調整することにより、動力電池が過熱することを効果的に防止し、動力電池の損傷の発生を防止し、動力電池の耐用年数を延長する。
【0044】
さらに、本開示の一実施形態として、該動力電池の加熱方法は、
動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定する場合、所定の直軸電流をゼロに設定するステップをさらに含む。
【0045】
本開示の実施例では、動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すると、この場合に動力電池を加熱できないことを示し、動力電池への加熱を停止し、即ち、所定の直軸電流をゼロに設定すべきである。
【0046】
動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定する場合、所定の横軸電流をゼロに設定するステップをさらに含む。
【0047】
本実施形態では、動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定する場合、動力電池への加熱を停止することは、動力電池の損傷の発生を効果的に防止し、動力電池の耐用年数を延長することができる。
【0048】
本願の実施例に係る、車両の動力電池を加熱する車両の動力電池の加熱装置は、
図2に示すように、
加熱エネルギーを供給する加熱エネルギー源10の正極及び負極に接続される三相インバータ11と、
3相のコイルが三相インバータ11の3相のアームに接続される三相交流モータ12と、
三相インバータ11及び三相交流モータ12にそれぞれ接続され、動力電池の現在の温度値を取得し、動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低いことを決定し、かつ動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすことを決定し、動力電池の加熱パワーを取得し、さらに、値が三相交流モータの出力するトルク値を、ゼロを含まない目標範囲内にさせる横軸電流値である所定の横軸電流iqを取得し、かつ動力電池の加熱パワーに基づいて対応する所定の直軸電流idを取得し、さらに、三相インバータ11におけるパワーデバイスのオンオフ状態を制御することにより、三相交流モータ12が加熱エネルギー源10によって供給された加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ加熱過程において所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて、三相インバータ11を制御して三相交流モータ12の相電流を調整する制御モジュール13と、を含む。
【0049】
加熱エネルギー源10は、充電パイルのような外部給電装置を採用してもよく、動力電池自体であってもよく、即ち、加熱エネルギー源10によって供給された加熱エネルギーは、動力電池から出力されたものであってもよく、直流充電器から出力されたものであってもよく、交流充電器から整流して出力されたものであってもよく、ここでは、具体的に限定せず、三相インバータ11は、4つの動作モードを有し、その動作モードが制御モジュール13によって決められ、三相インバータ11は、車両の駆動に用いられる必要がある場合、インバータモードで動作し、昇圧充電に用いられる場合、昇圧モードで動作し、電池を加熱するために用いられる場合、加熱モードで動作し、外部に給電する必要がある場合、変圧モードで動作し、本願の実施例では、三相インバータ11が加熱モードで動作する場合について詳細に説明し、三相インバータ11は、6つのパワースイッチユニットを含み、パワースイッチが、トランジスタ、IGBT、MOSトランジスタなどのデバイスであってよく、2つのパワースイッチユニットが、1相のアームを構成し、合計3相のアームを形成し、各相のアームでの2つのパワースイッチユニットの接続点が三相交流モータ12の1相のコイルに接続され、三相交流モータ12は、中点に接続される3相のコイルを含み、永久磁石同期モータ又は非同期モータなどであってよく、本願は、三相交流モータのタイプについて具体的に限定しない。
【0050】
具体的には、本願の一実施形態として、
図3に示すように(回路の動作原理を容易に理解するために、
図3は、制御モジュール13の部分を省略する)、三相インバータ11は、第1のパワースイッチユニット、第2のパワースイッチユニット、第3のパワースイッチユニット、第4のパワースイッチユニット、第5のパワースイッチユニット及び第6のパワースイッチユニットを含む。各パワースイッチユニットの制御端子は、制御モジュール13(図示せず)に接続され、第1のパワースイッチユニット、第3のパワースイッチユニット及び第5のパワースイッチユニットの第1の端子が共通接続され、第2のパワースイッチユニット、第4のパワースイッチユニット及び第6のパワースイッチユニットの第2の端子が共通接続され、三相交流モータ12の第1相コイルは、第1のパワースイッチユニットの第2の端子及び第2のパワースイッチユニットの第1の端子に接続され、三相交流モータ12の第2相コイルは、第3のパワースイッチユニットの第2の端子及び第4のパワースイッチユニットの第1の端子に接続され、三相交流モータ12の第3相コイルは、第5のパワースイッチユニットの第2の端子及び第6のパワースイッチユニットの第1の端子に接続される。
【0051】
さらに、三相インバータ11において、第1のパワースイッチユニットと第2のパワースイッチユニットは、第1相アーム(U相アーム)を構成し、第3のパワースイッチユニットと第4のパワースイッチユニットは、第2相アーム(V相アーム)を構成し、第5のパワースイッチユニットと第6のパワースイッチユニットは、第3相アーム(W相アーム)を構成する。第1のパワースイッチユニットは、第1の上アームVT1及び第1の上アームダイオードVD1を含み、第2のパワースイッチユニットは、第2の下アームVT2及び第2の下アームダイオードVD2を含み、第3のパワースイッチユニットは、第3の上アームVT3及び第3の上アームダイオードVD3を含み、第4のパワースイッチユニットは、第4の下アームVT4及び第4の下アームダイオードVD4を含み、第5のパワースイッチユニットは、第5の上アームVT5及び第5の上アームダイオードVD5を含み、第6のパワースイッチユニットは、第6の下アームVT6及び第6の下アームダイオードVD6を含み、三相交流モータ12は、永久磁石同期モータ又は非同期モータであってよく、モータの3相のコイルは、それぞれ三相インバータにおけるU、V、W相の上下アームに接続される。
【0052】
さらに、本願の一実施形態として、制御モジュール13は、車両全体コントローラと、モータコントローラの制御回路と、BMS電池マネージャーの回路とを含んでよく、三者がCANバスを介して接続され、制御モジュール13の異なるモジュールは、取得された情報に基づいて三相インバータ11のスイッチユニットのオン及びオフを制御して異なる電流回路のオンを実現し、また、加熱エネルギー源10、三相インバータ11及び三相交流モータ12には互いに連通する冷却液管が設けられ、該冷却液管を冷却液が流れ、冷却液管内の冷却液の温度を調整することにより、動力電池の温度を調整することができる。
【0053】
具体的に実施する場合、
図4に示すように、制御モジュール13は、電池マネージャー131及びモータコントローラ132を含む。電池マネージャー131は、動力電池20に接続され、モータコントローラ132は、動力電池及び三相交流モータ12に接続される。電池マネージャー131は、動力電池の現在の温度を取得し、動力電池の現在の温度を所定の温度値と比較して動力電池が低温の状態であるか否かを判断し、動力電池の現在の温度が所定の温度値より低いことを検出する場合、動力電池を流れる冷却液の温度を上げる方式で動力電池の温度を上げ、三相インバータ11及び三相交流モータ12が動作過程においていずれも熱量を生成するため、モータコントローラ132は、三相インバータ11及び三相交流モータ12が動力電池を流れる冷却液を加熱し、動力電池の温度が所定の温度値に達したことを検出するまで加熱を停止するように制御する。
【0054】
具体的には、三相インバータ11及び三相交流モータ12が動作過程においていずれも熱量を生成するため、モータコントローラ132は、車両のモータの現在の動作状態、動力電池の故障状態、三相交流モータ12の故障状態、モータコントローラ132の故障状態及び伝熱回路の故障状態を取得し、かつ上記故障状態及びモータの現在の動作状態に基づいて動力電池の加熱条件を満たすか否かを決定する。
【0055】
モータの現在の動作状態が非駆動状態であり、かつ動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路がいずれも無故障状態であると決定すれば、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たすと識別し、モータの現在の動作状態が駆動状態であると決定するか、又は動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定すれば、動力電池の加熱条件が所定の条件を満たさないと識別する。
【0056】
さらに、本開示の一実施形態として、モータコントローラ132は、さらに、動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定する場合、所定の直軸電流idをゼロに設定する。
【0057】
動力電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び伝熱回路のいずれか1つが故障状態であると決定する場合、モータコントローラ132は、さらに、所定の横軸電流iqをゼロに設定する。
【0058】
さらに、モータの現在の動作状態を取得する場合、モータコントローラ132は、まず、ギアポジション情報及びモータ回転数情報を取得し、かつギアポジション情報及びモータ回転数情報に基づいてモータの現在の動作状態を取得してよい。
【0059】
具体的には、モータコントローラ132は、現在のポジションがPポジションかつモータの回転数が0であると判定すると、モータの現在の動作状態が非駆動状態であることを示し、現在のポジションがPポジションではなく、或いは、モータの回転数がゼロではないと判定すると、モータの現在の動作状態が駆動状態であることを示し、なお、本開示の実施例では、モータの動作状態及び動力電池の温度という2つの判断条件は、順序がない。
【0060】
本実施形態では、駐車状態でギアポジション情報、モータ回転数情報及び動力電池の温度情報が所定の条件を満たすことを検出した場合、三相インバータ11を制御することにより、三相交流モータ12は、加熱エネルギーに基づいて、動力電池を流れる冷却液を加熱し、車両の駐車状態での動力電池への加熱を実現し、車両が低温条件で正常に起動しやすく、車両が正常走行状態で動力電池を加熱して、車両の性能に影響を与えることを防止する。
【0061】
具体的には、
図3及び
図4を同時に参照すると、モータコントローラ132は、三相インバータ11及び三相交流モータ12が動力電池を流れる冷却液を加熱するように制御する場合、主に、三相インバータ11中の各パワーユニットのオンオフ時間及びスイッチング頻度を制御することにより、三相交流モータ12が加熱エネルギー源10(本実施例では、加熱エネルギー源として、動力電池を例とする)から出力した加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつ加熱過程において、モータコントローラ132は、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて、三相インバータ11を制御して三相交流モータ12の相電流を調整し、なお、本実施形態では、動力電池と三相交流モータ12の伝熱回路とを接続し互いに連通し、冷却媒体は、ポンプ(図示せず)及び連通弁(図示せず)を通過して車両用動力電池(動力電池)及び車両用動力モータ(三相交流モータ12)を流れる。
【0062】
モータコントローラ132が三相インバータ11を制御して三相交流モータ12の相電流を調整する過程において、所定の直軸電流idは、加熱パワーに基づいて予め設定された直軸電流であり、加熱パワーを制御することができることに対して、所定の横軸電流iqは、振幅が一定である横軸電流であり(
図5に示す)、かつ該振幅は、大量の実験により得られ、モータ軸にトルク値が小さいマグネットトルクを出力させ、かつ該マグネットトルクは、車両を移動させることができず、車両の伝動機構の部品を損傷することができず、小さい出力トルクを供給して車両の伝動機構の歯車の隙間の噛み合い又は予負荷力の印加を完成すればよい。
【0063】
本実施形態では、本願の実施例に係る動力電池の加熱装置は、三相インバータ11及び三相交流モータ12を制御して動力電池を流れる冷却液を加熱し、加熱過程において必要な加熱パワーに基づいて直軸電流を制御し、振幅が適切でゼロではない横軸電流を与えることにより、動力電池の加熱過程において、三相交流モータ12のモータ軸は、トルク値が小さいマグネットトルクを出力し、かつ該マグネットトルクは、車両を移動させることができず、車両の伝動機構の部品を損傷することができず、小さい出力トルクを供給すれば車両の伝動機構の歯車の隙間の噛み合い又は歯車間に力を加えることを完成することができ、動力電池の加熱過程における車両の振動の発生を効果的に防止する。
【0064】
さらに、本願の一実施形態として、制御モジュール13が所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて、三相インバータ11を制御して三相交流モータ12の相電流を調整する場合、動力電池を加熱する前に、制御モジュール13は、三相交流モータ12の現在の三相電流値及びモータロータの位置及び角度情報を取得し、かつモータロータの位置及び角度情報に基づいて現在の三相電流値を直軸電流及び横軸電流に変換する必要があり、さらに、加熱過程において、直軸電流、横軸電流、所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、三相インバータ11を制御して三相交流モータ12の相電流を調整する。
【0065】
本実施形態では、三相交流モータの加熱前の三相電流値及びモータロータの位置及び角度情報などのパラメータを取得し、さらに、取得されたパラメータに基づいて直軸電流及び横軸電流を取得して、加熱過程において該直軸電流、横軸電流、所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整することにより、三相交流モータの巻線の発熱量が一定になる。
【0066】
さらに、本願の一実施形態として、
図6に示すように、制御モジュール13は、フィードフォワードデカップリングユニット133、座標変換ユニット134及びスイッチング信号取得ユニット135をさらに含み、フィードフォワードデカップリングユニット133は、座標変換ユニット134に接続され、座標変換ユニット134は、スイッチング信号取得ユニット135及び三相交流モータ12に接続され、スイッチング信号取得ユニット135は、三相交流モータ12に接続されるモータコントローラ132に接続される。
【0067】
具体的には、制御モジュール13は、直軸電流及び横軸電流を取得した後、直軸電流及び横軸電流を所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqとそれぞれ比較することにより、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて直軸電流及び横軸電流を調整して、所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて三相インバータを制御する。所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqに基づいて直軸電流及び横軸電流を調整した後、該調整結果をフィードフォワードデカップリングユニット133に出力し、フィードフォワードデカップリングユニット133は、比較結果をデカップリングして直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqを取得し、座標変換ユニット134は、直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqを座標変換して第1の電圧Uα及び第2の電圧Uβを取得し、スイッチング信号取得ユニット135は、第1の電圧Uα及び第2の電圧Uβに基づいてスイッチング信号を取得し、モータコントローラ132は、スイッチング信号に基づいて三相インバータ11を制御して三相交流モータ12の相電流を調整する。
【0068】
本実施形態では、所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、取得された直軸電流及び横軸電流を調整して、対応する調整結果を取得し、かつ該調整結果を一連変化させて三相インバータのスイッチング信号を取得することにより、モータコントローラは、該スイッチング信号に基づいて三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整して、三相交流モータの閉ループ制御の制御と、加熱パワーの調整とを実現し、動力電池の加熱過程における有効性を強化し、モータなどの部品の損失を低減する。
【0069】
さらに、本願の一実施形態として、制御モジュール13は、モータロータの位置及び角度情報及び現在の三相電流値に基づいて直軸電流及び横軸電流を取得する具体的な過程は、以下のとおりである。
【0070】
動力電池を加熱する前に、制御モジュール13は、三相交流モータの現在の三相電流値及びモータロータの位置及び角度情報を取得した後、座標変換ユニット134は、現在の三相電流値を自然座標系から静止座標系に変換し、かつモータロータの位置及び角度情報に基づいて、静止座標系における現在の三相電流値を同期回転座標系における直軸電流及び横軸電流に変換する(
図7に示す)。
【0071】
本実施形態では、現在の三相電流値を自然座標系から静止座標系に変換し、かつモータロータの位置及び角度情報に基づいて、静止座標系における現在の三相電流値を同期回転座標系における直軸電流及び横軸電流に変換することにより、制御モジュールは、取得された直軸電流及び横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整する場合、同じ座標系にあるという基準に基づいて、調整過程における正確性を向上させることができる。
【0072】
さらに、本願の一実施形態として、
図4に示すように、
動力電池加熱装置には、温度検出ユニットがさらに設けられ、該温度検出ユニットは、制御モジュール中のモータコントローラ132及び三相交流モータ12に接続され、動力電池の加熱過程において、三相インバータ11及び三相交流モータ12の温度をリアルタイムに監視し、かつ監視結果を制御モジュール13にフィードバックし、三相インバータ11及び三相交流モータ12のいずれか1つの温度が温度限界値を超えると、制御モジュール13により所定の直軸電流idを減少させるか、又は所定の直軸電流idをゼロに設定する。
【0073】
三相インバータ11及び三相交流モータ12のいずれか1つの温度が温度限界値を超えた場合、制御モジュール13は、所定の横軸電流iqをゼロに設定する。
【0074】
具体的には実施する場合、温度検出ユニットは、温度センサで実現され、該温度センサは、負の温度係数を有するサーミスタで実現されるものであってもよく、正の温度係数を有するサーミスタで実現されるものであってもよく、ここでは、具体的に限定しない。
【0075】
本開示の実施例では、動力電池の加熱過程において、デバイスは、温度が高すぎる場合にいずれも損傷するため、三相交流モータ及び三相インバータにおけるパワーデバイスの温度をリアルタイムに監視する必要があり、三相インバータ又は三相交流モータのいずれか1つの温度が温度閾値を超えたことを検出すれば、所定の直軸電流idの電流振幅を減少させるか、又は所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqをゼロに設定する。
【0076】
本実施形態では、動力電池の加熱過程において、三相インバータ及び三相交流モータの温度をリアルタイムに監視することにより、三相インバータ及び三相交流モータのいずれか1つの温度が温度閾値を超えた場合、所定の直軸電流idを減少させるか、又は所定の直軸電流id及び所定の横軸電流iqをゼロに設定することにより、三相交流モータの3相の巻線を流れる相電流が減少するか、又は0になり、このように、モータの発熱パワーが低下して、三相インバータにおけるパワーユニットの温度及び三相交流モータの3相の巻線の温度が低下することにより、加熱効果を保証するとともに車両全体の部品を損傷しない。
【0077】
さらに、本開示の一実施形態として、
図4に示すように、制御モジュール13は、さらに、動力電池の加熱過程において、動力電池の温度をリアルタイムに監視し、動力電池の温度が特定の加熱温度に達すれば、動力電池への加熱を停止する。
【0078】
本開示の実施例では、動力電池の温度が特定の加熱温度に達した場合、動力電池を加熱する必要がないことを示し、この場合、動力電池への加熱を停止し、直軸電流及び横軸電流を減少させる必要がある。
【0079】
本実施形態では、加熱過程において動力電池の温度をリアルタイムに監視し、かつ動力電池の温度が特定の加熱温度に達した場合、所定の直軸電流及び所定の横軸電流を減少させることにより、動力電池が過熱することを効果的に防止し、動力電池の損傷の発生を防止し、動力電池の耐用年数を延長する。
【0080】
さらに、本開示の一実施形態として、
図4に示すように、制御モジュール13は、さらに、動力電池の加熱過程において、動力電池に必要な加熱パワーをリアルタイムに取得し、かつ必要な加熱パワーに基づいて、所定の直軸電流idの大きさを調整する。
【0081】
本開示の実施例では、動力電池は、加熱過程の進行に伴ってその自体の温度が絶えず上昇し、温度の上昇により動力電池に必要な加熱パワーが絶えず変化するため、動力電池の加熱過程において、動力電池に必要な加熱パワーをリアルタイムに取得し、かつ必要な加熱パワーに基づいて所定の直軸電流idの大きさを調整する必要がある。
【0082】
本実施形態では、加熱過程において動力電池に必要な加熱パワーをリアルタイムに取得し、かつ該必要な加熱パワーに基づいて所定の直軸電流idを調整することにより、動力電池が過熱することを効果的に防止し、動力電池の損傷の発生を防止し、動力電池の耐用年数を延長する。
【0083】
以下、具体的な回路構造により本願の技術手段を説明する。
【0084】
寒い環境で、車両が長時間に使用されないと、車両用動力電池の温度が環境温度に近づき、温度の低下に伴って、車両用動力電池の性能がさらに低下し、充放電能力がいずれも制限され、さらに新エネルギー車の性能及び使用に影響を与えるため、動力電池を加熱する必要がある。
【0085】
図3及び
図4を同時に参照すると、動力電池を加熱する場合、電池マネージャー131は、動力電池の温度が低すぎることを監視する場合、三相交流モータ12による動力電池の加熱レディー状態に入り、この場合、制御モジュール13は、加熱条件を判断し、即ち、動力電池の温度が低すぎるか否か、モータの回転数がゼロであるか否か及びPポジションであるか否かを判断する必要があり、加熱条件の判断結果がいずれも真であれば、三相交流モータ12を使用して熱量を生成して動力電池を加熱する過程に入ることができる。
【0086】
加熱時、まず、センサは、モータの現在の各変数に対して信号のサンプリングを行い、かつサンプリングの結果を制御モジュール13に送信し、サンプリングされた変数は、主に、三相交流モータ12の巻線を流れる現在の三相電流及びモータロータの位置及び角度情報(モータの現在のロータ位置)である。
図6に示すように、該三相電流値及びモータロータの位置及び角度情報を取得した後、座標変換ユニット134は、clark変換により自然座標系ABCにおける変数を静止座標系α~βにおける変数に変換して、park変換により静止座標系α~βにおける変数を同期回転座標系d~qにおける変数に変換し、かつ座標変換全体において振幅が不変しないという条件に従って、変換マトリックスの前に変換係数2/3を加える。
【0087】
具体的には、座標変換ユニット134は、自然座標系ABCにおける変数を静止座標系
α~βにおける変数に変換する場合、変換マトリックス
【数1】
に基づいて自然座標系ABCにおける変数を変換し、静止座標系α~βにおける変数を同期回転座標系d~qにおける変数に変換する場合、変換マトリックス
【数2】
に基づいて静止座標系α~βにおける変数を変換して、2つの変換
マトリックスを乗算すると、自然座標系ABCから同期回転座標系d~qへの変換マトリックス
【数3】
を取得することができ、式中、θは、三相交流モータ12のロータ直軸と三相交流モータ12のA相巻線との間の夾角(モータロータの位置及び角度情報)であり、変換マトリックスにより自然座標系ABCにおける三相電流を横軸及び直軸電流に変換することができ、直軸電流が励磁電流であり、横軸電流がトルク電流であり、即ち、完全にデカップリングされた前提で、横軸電流のみがモータ軸端の出力トルクに関連するため、三相交流モータ12を使用して動力電池を加熱する過程において、横軸電流を制御すればモータ軸端トルクの出力を制御することができる。
【0088】
三相交流モータ12のモータ軸端の出力トルクの計算式
【数4】
から分かるように、横軸電流がゼロである場合、モータ軸端は、トルクを出力しないが、実際の使用において横軸電流をゼロに制御しようとすれば、即ち、モータのマグネットトルクを生成しなければ、モータのゼロ位置を正確に取得するとともに三相電流センサのサンプリング精度を保証しなければならず、モータのゼロ位置標定方法の正確性及び三相電流センサの電流振幅が小さい場合に良好なサンプリング精度を保証しにくいなどの要因に限定して、モータのゼロ位置が正確でないか、又は三相電流センサの電流振幅が小さい場合に良好なサンプリング精度を保証しにくければ、制御アルゴリズムは、横軸電流を常にゼロに制御することができず、さらに横軸電流値がゼロ付近で変動することを引き起こすことにより、車両全体が振動し、振動の強さも異なる動作状態で異なり、この場合、車両に乗員がいれば、不良な乗り体験を感じるようになり、該欠陥を解消するために、本願では、所定の直軸電流idの振幅を対応する必要な加熱パワーでの大きさにリアルタイムに制御し、所定の横軸電流iqの振幅を一定の適切な値に制御し、該値により、車両を移動させるか又は振動させる傾向及び体験をもたらさず、車両の伝動機構に潜在的な損傷を与えず、モータ軸が小さい振幅を有するトルクを出力することのみを引き起こし、伝動機構の機械的強度の許容範囲内にあり、このように、予負荷力に類似する効果を達成し、伝動機構間の噛み合い隙間を除去し、乗員の良好な体験を保証することができ、車両が動力電池の加熱を正常に完了することを保証することもでき、ここで、T
eは、モータ軸端の出力トルクを示し、pは、モータの極対数を示し、φ
fは、モータ永久磁石の磁束鎖交数を示し、L
dは、直軸インダクタンスを示し、L
qは、横軸インダクタンスを示し、i
dは、直軸電流を示し、i
qは、横軸電流を示す。
【0089】
さらに、収集された変数を座標変換して横軸電流及び直軸電流を取得した後、該横軸電流及び直軸電流を所定の横軸電流iq及び所定の直軸電流idとそれぞれ比較し、比較結果をフィードフォワードデカップリングユニット133にフィードバックし、フィードフォワードデカップリングユニット133は、フィードフォワード補償の方式で変数を完全にデカップリングし、デカップリング完了後に取得された直軸電圧(Ud)及び横軸電圧(Uq)を座標変換ユニット134に再度伝送し、park逆変換マトリックス
【数5】
により静止座標系における電圧変数U
α及びU
βを取得して、U
α及びU
βをスイッチング信号取得ユニット
135に伝送し、スイッチング信号取得ユニット
135は、空間ベクトルパルス幅変調アルゴリズム(SVPWM)により三相インバータ11を制御する6方スイッチング信号を取得し、モータコントローラ132は、該6方スイッチング信号により三相インバータ11中のパワースイッチユニットを制御してスイッチング動作を行うことにより、三相交流モータを流れる三相電流の大きさを制御する。
【0090】
さらに、加熱過程全体において温度センサは、三相交流モータの巻線及び三相インバータのパワースイッチの温度を絶えず監視し、いずれか1つの温度が温度限界値を超えたり、動力電池の現在の温度が所定の加熱目標温度に徐々に近づいたり、動力電池の現在の温度が所定の加熱目標温度に達したり、所定の加熱目標温度を超えたりすれば、モータコントローラは、特定のid値を減少させるか、又はid及びiq値をゼロに設定することにより、三相交流モータの3相の巻線を流れる相電流も減少するか、又は0になり、モータの発熱パワーも低下し、さらに三相インバータのパワースイッチの温度及び三相交流モータの巻線の温度も低下することにより、加熱効果を保証するとともに車両全体の部品を損傷せず、三相交流モータの巻線又は三相インバータのパワースイッチの温度が過温度状態でなくなる場合、動力電池の温度が所定の加熱温度に達すれば、加熱を停止し、そうでなければ、加熱を続け、加熱過程全体において三相交流モータの巻線及びパワースイッチデバイスの温度がいずれも過温度でなければ、電池マネージャーは、電池の温度が所定の加熱温度に達したことを監視すると、加熱を停止する命令を発し、ここまで、三相交流モータが熱量を生成して車両用動力電池を加熱するという過程が終わる。
【0091】
図8に示すように、本願の別の実施例に係る車両1000は、上記実施例に係る動力電池の加熱装置100をさらに含み、動力電池、冷却液タンク、ポンプ及び管路をさらに含み、ポンプは、制御信号に基づいて冷却液タンク中の冷却液を管路に輸送し、管路は、動力電池及び動力電池の加熱装置100を貫通する。
【0092】
本願に係る車両は、動力電池の現在の温度値が所定の温度値より低く、かつ動力電池の加熱条件が所定の条件を満たす場合、三相インバータを制御することにより、三相交流モータが加熱エネルギーに基づいて熱量を生成して、動力電池を流れる冷却液を加熱し、かつモータの出力するトルク値を適切な値にする所定の横軸電流を取得し、動力電池の加熱パワーに基づいて対応する所定の直軸電流を取得し、さらに加熱過程において所定の直軸電流及び所定の横軸電流に基づいて、三相インバータを制御して三相交流モータの相電流を調整することにより、モータ軸が、車両を移動させることができず、車両の伝動機構の部品を損傷することができない、トルク値が非常に小さいマグネットトルクを出力し、モータ出力軸が伝動機構に予負荷力を与えることのみを引き起こし、噛み合い隙間を除去し、車両の振動の発生を効果的に防止する。
【0093】
以上の実施例は、本願の技術手段を説明するためのものに過ぎず、限定するものではなく、前述の実施例を参照して本願を詳細に説明したが、当業者が理解すべきこととして、依然として、前述の各実施例において記載される技術手段を修正するか、又はその技術的特徴の一部に同等置換を行うことができ、これらの修正や置換によって、対応する技術手段の本質は、本願の各実施例に係る技術手段の趣旨及び範囲から逸脱せず、いずれも本願の保護範囲に含まれるべきである。