(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】被検体の位相イメージングデータを取得するためのシステム、方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/50 20240101AFI20240524BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240524BHJP
【FI】
A61B6/50 517
A61B6/00 520R
(21)【出願番号】P 2021549780
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2020053339
(87)【国際公開番号】W WO2020173695
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-09
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロシェンコ アンドリー
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マーク ハンス‐インゴ
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012030(JP,A)
【文献】特開2017-213010(JP,A)
【文献】特開2016-096831(JP,A)
【文献】特開平11-151233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0343494(US,A1)
【文献】国際公開第2012/057046(WO,A1)
【文献】特開平06-154198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相ステッピングを用いた被検体の位相イメージングデータの取得の間においてX線撮像システムを制御するための制御モジュールであって、前記位相ステッピングの間において各々が前記被検体に対する干渉パターンの異なる位相を持つ複数のステップ画像がX線撮像システムにより取得され、前記位相イメージングデータは該ステップ画像を有し、当該制御モジュールが、
前記位相イメージングデータを取得するために前記位相ステッピングの間に取得されるよう計画されたステップ画像の計画量を示すステップ画像量を
記憶又は検索するためのステップ画像量供給ユニットと、
目標検出器線量を
記憶又は検索するための検出器線量供給ユニットであって、該目標検出器線量が、前記位相イメージングデータの取得の間に検出器の少なくとも一部によって吸収され
る放射線量
の目標値に対応する検出器線量供給ユニットと、
各ステップ画像の取得
の開始から現在までの間に前記検出器の前記少なくとも一部によって吸収された放射線量を示す供給検出器線量を決定するための供給検出器線量決定ユニットと、
各ステップ画像の取得の間に前記X線撮像システムを前記供給検出器線量、前記目標検出器線量及び前記ステップ画像量に基づいて制御するためのステップ画像取得制御ユニットであって、前記制御が、各ステップ画像が取得される取得パラメータの制御を含むステップ画像取得制御ユニットと
を有する、制御モジュール。
【請求項2】
前記検出器線量供給ユニットは更に各ステップ画像に関するステップ線量を
前記ステップ画像取得制御ユニットに供給し、該ステップ線量は
前記目標検出器線量を前記ステップ画像量で除したものであり、前記ステップ画像取得制御ユニットが各ステップ画像の取得を該ステップ線量
に基づいて制御する、請求項1に記載の制御モジュール。
【請求項3】
前記検出器線量供給ユニットが前記ステップ線量を前記ステップ画像量及び前記目標検出器線量に基づいて
決定する、請求項2に記載の制御モジュール。
【請求項4】
前記ステップ画像取得制御ユニットが、前記ステップ画像の取得を、前記ステップ画像の取得の間に前記供給検出器線量が前記ステップ画像のステップ線量に到達した場合に該取得が終了されるように制御する、請求項2又は請求項3に記載の制御モジュール。
【請求項5】
前記ステップ画像量供給ユニットは、更に、前記ステップ画像の取得により超過されてはならない時間を示す計画取得時間を
前記ステップ画像取得制御ユニットに提供し、前記ステップ画像取得制御ユニットが、前記ステップ画像の取得を、前記ステップ画像の取得の間に前記計画取得時間に達した場合又は前記供給検出器線量が前記ステップ画像のステップ線量に達した場合に終了されるように制御する、請求項4に記載の制御モジュール。
【請求項6】
前記ステップ画像取得制御ユニットは、前記ステップ画像の取得の終了
が前記ステップ線量に達したことに起因する
場合に、後続のステップ画像の取得を
、前記後続のステップ画像が前記終了された画像と同じ取得パラメータで取得されるように制御する、請求項5に記載の制御モジュール。
【請求項7】
前記ステップ画像取得制御ユニットはステップ画像に対して決定された前記供給検出器線量と該ステップ画像に関して供給された前記ステップ線量との間の差を決定し、前記ステップ画像取得制御ユニットが後続のステップ画像の取得を更に該差に基づいて制御する、請求項2又は請求項3に記載の制御モジュール。
【請求項8】
前記ステップ画像取得制御ユニットが、前記後続のステップ画像の取得を、前記供給検出器線量が前記ステップ線量を超える場合又は前記差が所定の閾値を超える場合に前記決定された供給検出器線量が後続の各ステップ画像に対して減少されるように制御する、請求項7に記載の制御モジュール。
【請求項9】
前記ステップ画像取得制御ユニットは、更に、最初に取得されたステップ画像に対して決定された
前記供給検出器線量である適用検出器線量及び前記ステップ画像量
の積として、予想される目標線量を決定し、前記ステップ画像取得制御ユニットが、更に、該予想される目標線量に基づいて前記X線撮像システムを制御する、請求項1から8の何れか一項に記載の制御モジュール。
【請求項10】
前記ステップ画像取得制御ユニットは、前記予想される目標線量が前記目標検出器線量より少ないと判定された場合に、前記
適用検出器線量及び前記目標検出器線量に基づいて新たなステップ画像量を決定し、該新たなステップ画像量は、後続のステップ画像が前記最初のステップ画像と同じ取得パラメータで取得された場合に前記目標検出器線量が当該取得の最後に達せられるように決定され、前記ステップ画像取得制御ユニットが、更に、X線撮像ユニットを、前記新たなステップ画像量及び前記最初のステップ画像の取得パラメータに従って制御する、請求項9に記載の制御モジュール。
【請求項11】
当該制御モジュールは前記位相イメージングデータに基づいて画像を再構成するための再構成ユニットを更に有し、該再構成ユニットが、
位相ステッピングの間に取得された位相イメージングデータに含まれる全てのステップ画像を整えるためのステップ画像
前処理ユニットであって、該ステップ画像
前処理ユニットが、i)前記ステップ画像を、対応するステップ画像を取得するために使用された取得パラメータに基づいて正規化し、及び/又はii)前記ステップ画像を、各ステップ画像の供給検出器線量に基づいて重みを付けするステップ画像
前処理ユニットと、
前記画像を前記正規化された及び/又は重み付けされたステップ画像を含む前記位相イメージングデータに基づいて再構成するための画像再構成ユニットと
を有する、請求項1から10の何れか一項に記載の制御モジュール。
【請求項12】
前記ステップ画像取得制御ユニットが、既に取得されたステップ画像に対して決定された前記供給検出器線量
を合計することで全体の検出器線量を決定すると共に、該全体の検出器線量が前記目標検出器線量を超える場合に前記位相イメージングデータの取得を終了させる、請求項1から11の何れか一項に記載の制御モジュール。
【請求項13】
前記ステップ画像取得制御ユニットは、前記ステップ画像の取得を、ロバストなステッピング順序に従って制御し、該ロバストなステッピング順序とは、前記計画されたステップ画像量よりも少ない量のステップ画像からも、これらステップ画像を含む前記位相イメージングデータに基づいて画像を再構成できるように前記ステップ画像を取得することを指す、請求項1から12の何れか一項に記載の制御モジュール。
【請求項14】
位相ステッピングを用いた被検体の位相イメージングデータの取得の間においてX線撮像システムを制御するための制御方法であって、前記位相ステッピングの間において各々が前記被検体に対する干渉パターンの異なる位相を持つ複数のステップ画像がX線撮像システムにより取得され、前記位相イメージングデータは前記ステップ画像を有し、当該制御方法は、
前記位相イメージングデータを取得するために前記位相ステッピングの間に取得されるよう計画されたステップ画像の計画量を示すステップ画像量を
記憶又は検索するステップと、
目標検出器線量を
記憶又は検索するステップであって、該目標検出器線量が、前記位相イメージングデータの取得の間に検出器の少なくとも一部によって吸収され
る放射線量
の目標値に対応するステップと、
各ステップ画像の取得
の開始から現在までの間に前記検出器の前記少なくとも一部によって吸収された放射線量を示す供給検出器線量を決定するステップと、
各ステップ画像の取得の間に前記X線撮像システムを、前記供給検出器線量、前記目標検出器線量及び前記ステップ画像量に基づいて制御するステップであって、前記制御が、各ステップ画像が取得される取得パラメータの制御を含む、ステップと
を有する、制御方法。
【請求項15】
X線撮像システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、請求項1に記載の制御モジュールにより実行された場合に、該制御モジュールに請求項14に記載の制御方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の位相イメージングデータを取得するための制御モジュール、方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像アプリケーションでは、被検体に供給されるX線放射線量を正確に制御することが重要である。これは、X線放射線の過剰な線量は被検体に有害であり得る一方、X線線量が低すぎると画質の低下につながり得るからである。標準的なX線撮像では、自動被曝制御(AEC)を使用して、正しい放射線量が供給されることを保証する。その場合、AECは、検出器上で所定の放射線量に達すると、放射線源を自動的にオフにする。今日では、標準的X線撮像に加えて、例えば暗視野及び位相コントラスト画像をもたらすX線位相イメージングがより広く使用されるようになっている。X線位相イメージングアプリケーションでは、位相イメージングデータの取得の間に複数のX線画像を取得しなければならないことが多い。現在のところ、このようなX線位相イメージングデータの取得にAECを適用することは不可能であり、したがって、これらのアプリケーションにおいて、撮像される被検体に供給されるX線線量を正確に制御することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、位相イメージングデータの取得の間に被検体に供給される放射線量を正確に制御することを可能にする制御モジュール、方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1態様においては、位相ステッピングを用いた被検体の位相イメージングデータの取得の間においてX線撮像システムを制御するための制御モジュールが提供され、前記位相ステッピングの間において各々が前記被検体に対する干渉パターンの異なる位相を持つ複数のステップ画像がX線撮像システムにより取得され、前記位相イメージングデータは前記ステップ画像を有し、当該制御モジュールは、a)前記位相イメージングデータを取得するために前記位相ステッピングの間に取得されるよう計画されたステップ画像の数を示すステップ画像量を供給するためのステップ画像量供給ユニットと、b)目標検出器線量を供給するための検出器線量供給ユニットであって、該目標検出器線量が、前記位相イメージングデータの取得の間に検出器の少なくとも一部によって吸収される、超過されるべきでない放射線量に対応する検出器線量供給ユニットと、c)ステップ画像の取得の間に前記検出器の前記少なくとも一部によって吸収された放射線量を示す供給検出器線量を決定するための供給検出器線量決定ユニットと、d)各ステップ画像の取得の間に前記X線撮像システムを前記供給検出器線量、前記目標検出器線量及び前記ステップ画像量に基づいて制御するためのステップ画像取得制御ユニットであって、前記制御が、各ステップ画像が取得される取得パラメータの制御を含むステップ画像取得制御ユニットと、を有する。
【0005】
当該制御モジュールは、前記位相イメージングデータの取得の間に前記X線撮像システムを制御するように構成され、特に、該X線撮像システムを各ステップ画像の取得の間に前記供給検出器線量、前記目標検出器線量及び前記ステップ画像量に基づいて制御するように構成されるので、前記位相イメージングデータの取得の間に被検体により受光される放射線量を正確に制御できる。特に、前記X線撮像システムは、前記目標検出器線量が超過されないと同時に、ステップ画像の十分な品質を確保するために必要な放射線を供給するように制御され得る。
【0006】
当該制御モジュールは、被検体(物体)の位相イメージングデータの取得の間にX線撮像システムを制御するように構成される。当該被検体は、例えば、動物又は人間の患者のような生き物であり得、又はスーツケースのような無生物でもあり得る。好ましくは、当該被検体は患者であり、当該位相イメージングデータは医学的前後関係で取得される。位相イメージングは、被検体を通過する放射線ビームの位相の変化に関する情報を取得するために使用される。この情報は、例えば、放射線ビームの位相シフトを画像の強度変化に変換することによって、ユーザに提供することができる。しかしながら、上記位相情報は、例えば、該位相情報から暗視野画像を再構成することによって、他の形態でユーザに供給することもできる。位相イメージングデータとは、X線位相イメージングの間に取得され、例えば、位相コントラスト画像、減衰画像、及び/又は暗視野画像などの画像を再構成するために使用できるデータを指す。
【0007】
当該制御モジュールによって制御されるX線撮像システムは、位相ステッピングを使用して位相イメージングデータを取得するよう構成される。位相ステッピングを使用して位相イメージングデータを取得するための標準的なシステムは、放射線源と、被検体を通過した後の該放射線源の放射線を検出するための検出器とを有する。更に、このようなX線撮像システムは、互いに対して移動することが可能な少なくとも2つの格子を有する。このような標準的システムを使用した位相イメージングでは、干渉パターンを生成するために格子(グレーティング)が使用される。斯かる格子を相互に移動させることにより、被検体に対する干渉パターンの位相を変化させることができる。格子の異なる位置で取得された画像から、被検体を通過した放射線の位相情報に対応する位相イメージングデータを抽出でき、位相コントラスト、減衰、及び/又は暗視野画像を再構成できる。同様の効果は代替のX線撮像システムでも達成することができ、その場合、位相ステッピングを提供するために放射線源のソーススポットが移動される。この種の位相ステッピングは、電磁位相ステッピングとしても知られている。したがって、位相ステッピングを使用して位相イメージングデータを取得するためのX線撮像システムは、複数のステップ画像を取得するための少なくとも1つの可能性を提供するように構成され、その場合、これらステップ画像は、各々、被検体に対する干渉パターンの異なる位相で取得される。
【0008】
当該制御モジュールは、位相ステッピングの間において各ステップ画像の取得を制御するように構成される。該制御モジュールは、前記X線撮像システムの一部として提供することができ、又は、例えばX線撮像システムを制御するために該X線撮像システムに接続されたコンピュータシステム上の外部独立システムとしても提供できる。
【0009】
当該制御モジュールは、ステップ画像量を供給するように構成されたステップ画像量供給ユニットを有する。該ステップ画像量供給ユニットは、ステップ画像量が既に記憶されており、該ステップ画像量を取り出すことができる記憶ユニットであり得る。また、該ステップ画像量供給ユニットは、例えば、ユーザがステップ画像量を入力する入力装置からステップ画像量を取り出すための検索ユニットであり得、その場合、該ステップ画像量供給ユニットは入力されたステップ画像量を供給するように構成される。当該ステップ画像量とは、位相ステッピングの間に取得されねばならないステップ画像の計画された量を指す。更に、該ステップ画像量は、位相イメージングデータの取得の間に格子又はソーススポットが採用する異なる位置の量も定義する。このように、各ステップ画像は格子又はソーススポットの異なる位置に対応する。位相イメージングデータの取得のために、供給されるステップ画像の量は5から10の間にあることが好ましい。しかしながら、より小さいステップ画像量、例えば3、又はより大きいステップ画像量、例えば15も可能である。好ましくは、ステップ画像量は、格子又はソーススポットの3つの異なる位置において少なくとも3つのステップ画像が取得されるように、少なくとも3とする。
【0010】
更に、当該制御モジュールは、目標検出器線量を供給するように構成された検出器線量供給ユニットを有する。該検出器線量供給ユニットは、目標検出器線量が既に記憶されており、該目標検出器線量を取り出すことができる記憶ユニットでもあり得る。該検出器線量供給ユニットは、例えば、ユーザが所望の目標検出器線量を供給する入力ユニットから目標検出器線量を取り出すための検索ユニットでもあり得、その場合、該検出器線量供給ユニットは入力された目標検出器線量を供給するように構成される。当該目標検出器線量は、位相イメージングデータの取得の間に検出器の少なくとも一部によって吸収される最大放射エネルギに対応し、該目標検出器線量は超過されてはならない。該目標検出器線量は、検出器全体に関して、又は検出器の特定の部分に関してのみ供給され得る。例えば、ユーザは、被検体の画像内の或る領域を該被検体の関心領域として示すことができ、その場合、検出器線量供給ユニットは検出器のどの部分が、ユーザによって示された画像内の領域に対応するかを推定するように構成される。例えば、検出器線量供給ユニットは、ユーザによって示された領域が当該被検体に対して何処に位置するかを推定するように構成でき、次いで、検出器に対する当該被検体の位置を推定し又は供給され得る。他の例として、該検出器線量供給ユニットは、目標検出器線量が超過されてはならない検出器の一部を、例えば、該被検体の既知の通常の位置に基づいて、又は検出器上の予想される放射線パターンに基づいて自動的に供給するように構成できる。
【0011】
目標検出器線量が超過されてはならない検出器の部分は、例えば、被検体内の或る構造に対応し得る。好ましくは、該検出器の部分は、肺若しくは心臓のような患者の特定の臓器、又は他の解剖学的構造に対応する。好ましくは、該目標検出器線量は、検出器の決定された部分において平均して超えてはならない平均放射線量を指す。代わりに、該目標検出器線量は、検出器の決定された部分の何処でも超えてはならない最大放射線量にも対応し得る。好ましくは、目標検出器線量は、全体の放射線量、すなわち、位相イメージングデータの完全な取得後に検出器によって取得された放射線量として供給される。
【0012】
当該制御モジュールは、供給された検出器線量を決定するように構成された供給検出器線量決定ユニット決定ユニットを更に有する。該供給検出器線量決定ユニットは、例えば、放射線センサーを介して、供給された検出器線量を直接測定する供給検出器線量測定ユニットでもあり得る。好ましくは、該供給検出器線量決定ユニットは、供給された検出器線量を放射線検出器によって供給される信号に基づいて決定するように構成される。当該供給された検出器線量(供給検出器線量)は、好ましくは、ステップ画像の取得の間に検出器の少なくとも一部によって吸収された放射線量に対応する。好ましくは、該供給検出器線量決定ユニットは、供給検出器線量をリアルタイムで決定するように、すなわち、検出器によって受光される放射エネルギを連続的に積分して、現在既に供給された検出器線量を取得するように構成される。更に、ステップ画像の取得が完了した後、該供給検出器線量は、ステップ画像の全体の供給検出器線量を示し、好ましくは、ステップ画像の全取得の間に検出器により受光された放射線量に対応する。該供給検出器線量決定ユニットは、記憶ユニットを設けることができ、又は取得された各ステップ画像に関する供給検出器線量を記憶するための記憶ユニットに接続できる。好ましくは、該供給検出器線量決定ユニットは、供給検出器線量を、取得されたステップ画像のヒストグラムを計算し、該ヒストグラムに基づいて供給検出器線量を決定することにより決定するように構成される。例えば、上記ヒストグラムの平均値が、供給検出器線量として決定される。他の例として、最初に、取得されたステップ画像をセグメント化でき、被検体を含む領域を決定できる。次いで、被検体に対応しないステップ画像の部分に関してヒストグラムが計算され、例えば、50パーセンタイル又は80パーセンタイルに対応する放射線値が計算され、供給検出器線量として設定される。更に、該供給検出器線量決定ユニットは、検出器に供給された検出器線量を、例えば、検出器素子の現在供給されている放射線値に基づいて直接決定するように構成され得る。
【0013】
更に、当該制御モジュールは、各ステップ画像の取得の間に前記X線撮像システムを制御するように構成されたステップ画像取得制御ユニットを有する。当該制御は、各ステップ画像の取得の間における、取得パラメータ、例えば、取得時間、管電流、放射線源に印加される電圧などの制御を含む。好ましくは、該制御は、取得パラメータとして、取得される各ステップ画像に関する管電流及び取得時間を制御することを含む。該ステップ画像取得制御ユニットは、各ステップ画像の取得を、前記供給検出器線量、目標検出器線量及びステップ画像量に基づいて制御するように構成される。例えば、該ステップ画像取得制御ユニットは、ステップ画像の管電流及び/又は取得時間を、供給される検出器線量が十分な画質で画像を取得するために必要な放射線量に対応するように制御するよう構成できる。更に、該ステップ画像取得制御ユニットは、各ステップ画像の取得を、全てのステップ画像が十分な画質で取得されると同時に、目標検出器線量が超過されないことを保証するように制御するよう構成できる。更に、該ステップ画像取得制御ユニットは、既に取得されたステップ画像の供給検出器線量が、計画された後続のステップ画像の取得の間に目標検出器線量が超過されないことを示す場合に、位相イメージングデータの取得を終了するようにも構成できる。したがって、当該制御モジュールは、被検体に供給される放射線量の正確な制御を保証する。
【0014】
一実施形態において、前記検出器線量供給ユニットは更に各ステップ画像に関するステップ線量を供給するように構成され、該ステップ線量は対応するステップ画像の取得の間に前記検出器の少なくとも一部により吸収されるように計画された放射線量を示し、前記ステップ画像取得制御ユニットは各ステップ画像の取得を該ステップ線量に更に基づいて制御するように構成される。好ましくは、上記ステップ線量は、対応するステップ画像の取得の間に前記検出器の少なくとも一部によって吸収されるように計画された放射線量に対応する。該ステップ線量は、例えば、位相イメージングデータの取得の開始前にユーザによって決定され、前記検出器線量供給ユニットが位相イメージングデータの取得の間に該ステップ線量を供給できるように記憶され得る。該ステップ線量は、全てのステップ画像に対して同じとすることも、ステップ画像の少なくとも幾つかに対して異なるものとすることもできる。好ましくは、前記検出器線量供給ユニットは前記ステップ線量を前記ステップ画像量及び前記目標検出器線量に基づいて供給するよう構成される。例えば、該検出器線量供給ユニットは、各ステップ画像に関するステップ線量を、ステップ画像量及び検出器線量に割り当てられた、異なる既に記憶されたステップ線量に基づいて供給するように構成でき、その場合、該検出器線量供給ユニットは、ステップ線量を、位相イメージングデータの現在の取得のためのステップ画像量及び目標検出器線量に基づいて選択する。好ましくは、該検出器線量供給ユニットは、ステップ線量を、前記ステップ画像量及び検出器線量に基づいて決定するよう構成される。更に一層好ましくは、該検出器線量供給ユニットは、各ステップ画像に対するステップ線量を、目標ステップ線量をステップ画像量により除算することによって計算された該目標ステップ線量の分数に対応するように決定するよう構成される。この場合、前記ステップ画像取得制御ユニットは、該ステップ線量に更に基づいて各ステップ画像の取得を制御するように構成される。
【0015】
一実施形態において、前記ステップ画像取得制御ユニットは、前記ステップ画像の取得を、前記ステップ画像の取得の間に前記供給検出器線量が前記ステップ画像のステップ線量に到達した場合に該取得が終了されるように制御するよう構成される。この場合、該ステップ画像取得制御ユニットは、次のステップ画像で位相イメージングデータの取得を継続するように構成され得る。このように、各ステップ画像に対する計画されたステップ線量が超過されないことが保証され得る。
【0016】
一実施形態において、前記ステップ画像量供給ユニットは前記ステップ画像の取得により超過されてはならない時間を示す計画取得時間を更に供給するように構成され、前記制御ユニットは前記ステップ画像の取得を前記ステップ画像の取得の間に前記計画取得時間に達した場合又は前記供給検出器線量が前記ステップ画像のステップ線量に達した場合に終了されるように制御するよう構成される。この場合、前記ステップ画像取得制御ユニットは、次のステップ画像で位相イメージングデータの取得を継続するように構成され得る。上記の計画された取得時間は、好ましくは、蛍光透視イメージングデータが位相イメージングデータとして取得されるべき用途のために供給される。
【0017】
一実施形態において、前記制御ユニットは前記ステップ画像の取得の終了が前記計画取得時間に達したことに起因するか又は前記ステップ線量に達したことに起因するかを判定するように構成され、該制御ユニットは、更に、後続のステップ画像の取得を、終了されたステップ画像の取得の終了が前記ステップ線量に達したことに起因する場合に前記後続のステップ画像が前記終了された画像と同じ取得パラメータで取得されるように制御するよう構成される。好ましくは、後続のステップ画像の取得は、最初に取得されたステップ画像の取得の終了が前記ステップ線量に達することによって引き起こされた場合、該後続のステップ画像が最初に取得されたステップ画像と同じ取得パラメータで取得されるように制御される。この実施形態では、最初のステップ画像の取得後、以降のステップ画像は最初のステップ画像と同じ取得パラメータ、例えば同じ取得時間及び管電流で取得されるので、供給検出器線量の決定は後続のステップ画像に対して省略でき、したがって該後続のステップ画像の取得の間において、当該供給検出器線量は、最初のステップ画像のステップ線量に実質的に一致するであろう。更に、この実施形態では、全てのステップ画像が同じ取得パラメータを使用して取得され、したがって同じ画像特性を提供するため、取得される位相イメージングデータの品質を容易に保証することができる。
【0018】
一実施形態において、前記ステップ画像取得制御ユニットはステップ画像に対して決定された前記供給検出器線量と該ステップ画像に関して供給された前記ステップ線量との間の差を決定するように構成され、該ステップ画像取得制御ユニットは後続のステップ画像の取得を更に該差に基づいて制御するように構成される。好ましくは、該ステップ画像取得制御ユニットは、後続のステップ画像の取得を、前記供給検出器線量が前記ステップ線量を超える場合に更に上記差に基づいて制御するように構成される。例えば、この実施形態において、該ステップ画像取得制御ユニットは、後続のステップ画像に対する取得パラメータを、該後続のステップ画像が一層低い供給検出器線量で取得されることが期待できるように適合させるよう構成することができる。更に、該ステップ画像取得制御ユニットは、後続のステップ画像の取得を前記差に基づいて、直後の後続ステップ画像のみが異なる取得パラメータを使用して取得されるか、又は全ての後続ステップ画像が異なる取得パラメータを使用して取得されるように制御するよう構成できる。
【0019】
好ましい実施形態において、前記ステップ画像取得制御ユニットは、前記後続のステップ画像の取得を、前記供給検出器線量が前記ステップ線量を超える場合又は前記差が所定の閾値を超える場合に前記決定された供給検出器線量が後続の各ステップ画像に対して減少されるように制御するよう構成される。例えば、該ステップ画像取得制御ユニットは、少なくとも1つの後続のステップ画像の管電流及び取得時間を、管電流-曝露時間積が減少される、したがって、この後続のステップ画像に対する供給検出器線量も減少されるように制御するよう構成できる。更に、前記差と、少なくとも1つの取得パラメータ、好ましくは上記管電流-曝露時間積が前記供給検出器線量を減少させるように適応される因子との間に機能的リンクを設けることができる。前記閾値は、例えば、前記ステップ線量に基づいて決定できる。例えば、該所定の閾値は、係数2を掛けたステップ線量を示すことができ、その結果、前記差がステップ線量自体よりも大きい場合、後続のステップ画像が、減少された供給検出器線量で取得されるようにする。
【0020】
一実施形態において、当該制御モジュールは、最初に取得されたステップ画像に対して決定された最初に決定された適用検出器線量及び前記ステップ画像量に基づいて、予想される目標線量を更に決定するように構成され、該制御モジュールは、更に、該予想される目標線量に基づいて前記X線撮像システムを制御するように構成される。好ましくは、上記予想される目標線量は、最初に決定された供給検出器線量に前記ステップ画像量を乗算することによって決定される。これにより、位相イメージングデータの取得の間に検出器によって吸収され得る放射線量の良好な推定値が得られる。代わりに、上記の予想される目標線量は、最初に決定された供給検出器線量及びステップ画像量に基づいて、後続の位相イメージングデータの取得に関する更なる仮定を考慮に入れる一層高度な方法を使用して、又は対応する最初に決定された供給検出器線量及びステップ画像量を伴う以前のケースに関して決定された経験値に基づいて、計算することができる。この場合、当該制御モジュールは、予想される検出器線量が目標検出器線量を超えると判定される場合に、例えば、位相イメージングデータ取得を終了させることによって前記X線撮像システムを制御するように、又はユーザからの更なる指示を要求するように構成できる。
【0021】
一実施形態において、当該制御モジュールは、前記予想される目標線量が前記目標検出器線量より少ないと判定された場合に、前記最初のステップ画像の供給検出器線量及び前記目標検出器線量に基づいて新たなステップ画像量を決定するように構成され、該新たなステップ画像量は前記後続のステップ画像が前記最初のステップ画像と同じ取得パラメータで取得された場合に前記目標検出器線量が当該取得の最後に達せられるように決定され、該制御モジュールは、更に、前記X線撮像ユニットを前記新たに決定されたステップ画像量及び前記最初のステップ画像の取得パラメータに従って制御するように構成される。好ましくは、前記新たなステップ画像量は、前記目標検出器線量を前記最初のステップ画像の供給検出器線量により除算することによって決定される。この実施形態において、前記新たなステップ画像量は、以前に計画されたステップ画像よりも多くが取得され得るように、前記供給されたステップ画像量よりも多いであろう。更に、前記ステップ画像量供給ユニットが、更に、各ステップ画像に対して計画された取得時間を供給するように構成される場合、当該制御モジュールは、最初のステップ画像の取得の終了が該取得時間に到達することに起因したと判定することによって、予想される目標線量が目標検出器線量より少ないと判定するように構成することができる。この場合、最初の画像のための計画されたステップ線量に到達しておらず、後続のステップ画像についても、同じ取得パラメータが使用されるなら、ステップ線量に到達しないことが予想されるからである。この実施形態において、ステップ画像の量は、目標検出器線量に達するように決定されるので、ステップ画像を含む位相イメージングデータから再構成される暗視野画像のような画像の画質を高めることができる。更に、後続のステップ画像は同じ取得パラメータで取得されるので、ステップ画像を含む位相イメージングデータから再構成される画像の画質を更に向上させることができる。
【0022】
一実施形態において、当該制御モジュールは前記位相イメージングデータに基づいて画像を再構成するための再構成ユニットを更に有し、該再構成ユニットは、a)位相ステッピングの間に取得された位相イメージングデータに含まれる全てのステップ画像を整えるためのステップ画像前処理ユニットであって、該ステップ画像前処理ユニットが、i)前記ステップ画像を、対応するステップ画像を取得するために使用された取得パラメータに基づいて正規化し、及び/又はii)前記ステップ画像を、各ステップ画像の供給検出器線量に基づいて重みを付けするように構成されたステップ画像前処理ユニットと、b)前記画像を前記正規化された及び/又は重み付けされたステップ画像を含む前記位相イメージングデータに基づいて再構成するための画像再構成ユニットと、を有する。
【0023】
上記再構成ユニットは、位相イメージングデータの取得の間に取得された全てのステップ画像を、取得パラメータ又は供給ステップ線量に基づいて正規化及び/又は重み付けするように構成されるので、前記ステップ画像取得制御ユニットの制御による異なる画像コントラスト等の異なる画像特性を補償できる。したがって、前記画像再構成ユニットは、例えば、位相コントラスト画像、暗視野画像及び/又は減衰画像等の画像を、正規化及び/又は重み付けされたステップ画像を含む位相イメージングデータに基づいて改善された画質で再構成できる。このように、この実施形態において、当該制御モジュールは、被検体に供給される放射線量を正確に制御すると同時に、位相イメージングデータから改善された画質で再構成された画像を提供することを可能にする。
【0024】
前記再構成ユニットは、全てのステップ画像を正規化するように構成できるステップ画像前処理ユニットを有する。特に、該ステップ画像前処理ユニットは各ステップ画像を対応するステップ画像の供給された取得パラメータに基づいて正規化するよう構成でき、これらステップ画像が異なる取得パラメータを用いて取得される場合に、該正規化されたステップ画像が、同じ取得パラメータで取得されたステップ画像に対応するようにする。例えば、該ステップ画像前処理ユニットは、異なる管電流で取得されたステップ画像を、正規化されたステップ画像が同じ管電流で取得されたステップ画像に対応するように正規化するよう構成できる。好ましくは、該ステップ画像前処理ユニットは、全てのステップ画像を、正規化されたステップ画像が同じ管電流-曝露時間積で、すなわち管電流と取得時間との同じ結合係数(一般に,mAsと呼ばれる)で取得されたステップ画像に対応するように正規化するよう構成される。
【0025】
代わりに又は加えて、前記ステップ画像前処理ユニットは、全てのステップ画像を重み付けるように構成できる。特に、該ステップ画像前処理ユニットは、画像再構成の間にステップ画像が重み付けされるべき各ステップ画像のための重みを、対応するステップ画像の供給検出器線量に基づいて決定することによって、ステップ画像を重み付けするように構成される。好ましくは、該ステップ画像前処理ユニットは、より小さい供給検出器線量が決定されたステップ画像に対するよりも、より大きな供給検出器線量が決定されたステップ画像に対して、より大きな重みを決定するように構成される。ステップ画像は供給検出器線量に基づいて重み付けされるので、より大きな供給検出器線量で取得されたステップ画像は、より小さな供給検出器線量でのステップ画像よりも高い画質を有することを考慮に入れることができる。該ステップ画像前処理ユニットによって決定される重みは、ステップ画像の画質、特にノイズと、供給検出器線量との間の所定の数学関数に基づいて決定できる。例えば、ステップ画像の品質は、供給される検出器線量に応じてルート関数として低下されると仮定できる。即ち、2倍大きい供給検出器線量は、√2倍画質を向上させる(即ち、ノイズを減少させる)。このような実施形態において、該ステップ画像前処理ユニットは、各ステップ画像に対する重みを、想定される関数に基づいて、及び全てのステップ画像の供給検出器線量間の関係に基づいて、決定するよう構成できる。更に、ステップ画像の画質と供給検出器線量との間の関数も、当該撮像システムの較正中に決定することができる。例えば、較正イメージングデータは、放射線源と検出器との間に被検体を設けることなく取得することができ、該較正イメージングデータは異なる検出器線量について取得される。次いで、取得された該較正イメージングデータに基づいて、関数を非常に正確に推定できる。加えて又は代わりに、当該重みは、供給検出器線量の範囲に対して供給される所定の重みに基づいて決定でき、これら所定の重みは、例えば、既知の関数に基づいて決定できる。更に、重みを決定するために、意図される再構成アルゴリズムも考慮に入れることができる。
【0026】
前記再構成ユニットは、正規化及び/又は重み付けされたステップ画像を含む位相イメージングデータに基づいて画像を再構成するように構成された画像再構成ユニットを有する。特に、該画像再構成ユニットは画像を、i)正規化されたステップ画像、ii)正規化されたステップ画像及び該ステップ画像に対して決定された重み、又はiii)ステップ画像及び該ステップ画像に対して決定された重みに基づいて再構成するように構成される。該画像再構成ユニットは正規化及び/又は重み付けされたステップ画像に基づいて画像を再構成するように構成されるので、当該制御モジュールの制御によるステップ画像の取得の違いは、再構成された画像の品質に影響を与えない。当該画像は、該画像再構成ユニットにより、正規化及び/又は重み付けされたステップ画像に基づいて、位相イメージングデータに基づき画像を再構成するための任意の既知の再構成方法を使用して再構成できる。好ましくは、該画像再構成ユニットは、正規化及び/又は重み付けされたステップ画像を含む位相イメージングデータに基づいて、位相コントラスト画像、減衰画像及び/又は暗視野画像を画像として再構成するように構成される。このような再構成の例は、F.Pfeiffer他による文献“Hard-X-ray dark-field imaging using a grating interferometer”,Nature Materials, volume 7, pages 134 ~ 137 (2008)、及びT.Koehler他による文献“Slit-scanning differential x-ray phase-contrast mammography: Proof-of-concept experimental studies”,Medical Physics, volume 42, pages 1959 ~ 1965 (2015)に見付けることができる。
【0027】
一実施形態において、前記ステップ画像取得制御ユニットは、既に取得されたステップ画像に対して決定された前記供給検出器線量に基づいて全体の検出器線量を決定すると共に、該全体の検出器線量が前記目標検出器線量を超える場合に前記位相イメージングデータの取得を終了させるように構成される。好ましくは、上記全体の検出器線量は、既に取得されたステップ画像の供給検出器線量を合計することによって決定される。したがって、該全体の検出器線量は、当該位相イメージングデータの現在の取得の間に被検体に既に供給されている放射線量を指す。このように、該ステップ画像取得制御ユニットは、被検体に供給される放射線量が前記目標検出器線量を超えないことを保証できる。
【0028】
一実施形態において、前記ステップ画像取得制御ユニットは前記ステップ画像の取得をロバストなステッピング順序に従って制御するように構成され、該ロバストなステッピング順序とは、前記計画されたステップ画像量よりも少ない量のステップ画像からも、暗視野画像のような画像を再構成できるように前記ステップ画像を取得することを指す。例えば、前記ステップ画像量が10として供給される場合、すなわち10枚のステップ画像が取得されるべきである場合、該ステップ画像取得制御ユニットは、当該ステップ画像取得を、特にステップ画像を取得するために使用される前記X線撮像システムを、3つのステップ画像を取得した後でも既に画像を再構成できるように制御するよう構成され得る。例えば、該ステップ画像取得制御ユニットは、当該ステップ画像取得を、X線撮像システムの格子又はソースポイントの動きを、計画されたステップ画像量よりも少ない量の後でも既に画像を再構成できるように制御することによって、制御するよう構成できる。
【0029】
好ましい実施形態において、前記ステップ画像取得制御ユニットは、ステップ画像の取得に使用されるX線撮像システムの格子の動きを更に制御するように構成され、該格子の制御は、各ステップ画像の取得の間において該格子を該格子の格子周期の黄金比を示す距離にわたり移動させることを含む。格子の格子周期とは、一般的に、該格子の周期性の長さを指す。したがって、格子周期の黄金比を示す距離は、格子について知られている格子周期を黄金比係数で、すなわち、g=5.5・(-1+√5)で乗算することにより定義することができる。この実施形態では、当該ステップ画像量供給ユニットが、ステップ画像量としてフィボナッチ数、例えば5、8又は13を供給するように構成されることが更に好ましい。このことは、該ステップ画像取得制御ユニットが格子の動きを該格子の格子周期の黄金比に基づいて制御するように構成される場合に特に有利である。特に、番号jのステップ画像のステップ位置djは、p・gとなるように選択でき、ここで、pはステップ画像の間でテップ移動される格子の周期である。これら位置は、格子の動きの範囲を1格子周期のみに制限するために、pを法として計算することができる。当該ステップ画像量供給ユニットがステップ画像の量としてフィボナッチ数Nを供給した場合、距離j・p/Nで等距離に配置されたN個の画像ステップを提供し、ステップの順序を、i・p・gmodpを最も近い位置i・p/N(ここで、i=1,…N)に丸めることに基づいて選択することが有益であり得る。
【0030】
他の態様では、位相ステッピングを用いて被検体の位相イメージングデータを取得するように構成されたX線撮像システムを制御するための制御方法が提供され、前記位相ステッピングの間において各々が前記被検体に対する干渉パターンの異なる位相を持つ複数のステップ画像が前記X線撮像システムにより取得され、前記位相イメージングデータは前記ステップ画像を有し、当該制御方法は、a)前記位相イメージングデータを取得するために前記位相ステッピングの間に取得されるべきステップ画像の計画量を示すステップ画像量を供給するステップと、b)目標検出器線量を供給するステップであって、該目標検出器線量が、前記位相イメージングデータの取得の間に検出器の少なくとも一部によって吸収される、超過されるべきでない放射線量に対応するステップと、c)ステップ画像の取得の間に前記検出器の前記少なくとも一部によって吸収された放射線量を示す供給検出器線量を測定するステップと、d)各ステップ画像の取得の間に前記X線撮像システムを前記供給検出器線量、前記目標検出器線量及び前記ステップ画像量に基づいて制御するステップであって、前記制御が、各ステップ画像が取得される取得パラメータの制御を含むステップと、を有する。
【0031】
他の態様においては、X線撮像システムを制御するためのコンピュータプログラムが提供され、このコンピュータプログラムは、該コンピュータプログラムが前記制御モジュールによって実行された場合に請求項1の制御モジュールに請求項14に記載の方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を有する。
【0032】
請求項1の制御モジュール、請求項14の方法及び請求項15のコンピュータプログラムは、特に従属請求項で定義されているような類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有すると理解されたい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態と、対応する独立請求項との任意の組み合わせとすることもできると理解されたい。
【0034】
本発明のこれら及び他の態様は、後述される実施形態から明らかとなり、斯かる実施形態を参照して解説されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、X線撮像システムを制御するための制御モジュールの実施形態を概略的かつ例示的に示す。
【
図2】
図2は、目標検出器線量が定義されている検出器の一部をどのように示すことができるかを概略的に示す。
【
図3】
図3は、X線撮像システムを制御するための方法の一実施形態を例示的に示したフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、X線撮像システムを制御するための制御モジュールの実施形態を概略的かつ例示的に示している。以下の実施形態において、制御モジュール110は、被検体(被写体)の位相イメージングデータの取得の間においてX線画像システム140を制御するように適合されている。この実施形態において、位相画像データが取得される被検体は患者テーブル131上に横たわる患者130であり、該患者130の関心領域の位相イメージングデータを、X線撮像システム140を使用して取得できるようにする。X線撮像システム140は、位相ステッピングを使用することにより患者130の位相イメージングデータを取得するように適合される。特に、X線撮像システム140は、放射線源141、検出器144及び少なくとも2つの格子142、143を有する。格子142、143は、放射線源141により検出器144に供給される放射線の干渉パターンが検出器144上で観察され得るように配置される。更に、格子142、143のうちの少なくとも一方は他方の格子142、143に対して、干渉パターンが患者130に対して位相を変化させるように移動可能である。以下の実施形態において患者130の位相イメージングデータを取得するために、X線撮像システム140は格子142、143が互いに対して移動されるように制御され、格子142、143の新たな位置ごとに、検出器144によりステップ画像が取得される。
【0037】
X線撮像システム140を制御するために使用される制御モジュール110は、ステップ画像量供給ユニット111、検出器線量供給ユニット112、供給検出器線量決定ユニット113、ステップ画像取得制御ユニット114及び再構成ユニット121を有する。
【0038】
この実施形態において、ステップ画像量供給ユニット111はステップ画像量を供給するように構成され、ここで、テップ画像量とは、位相イメージングデータの取得の間に取得されるべきステップ画像の量、及び該画像を取得するために使用されるべき格子142、143の位置の量を指す。この実施形態において、以下の例ではステップ画像量供給ユニット111が10なるステップ画像量を供給すると仮定する。したがって、この例では、位相コントラスト画像等の画像を再構成するために10個のステップ画像を取得することが望ましいと仮定する。ステップ画像量はステップ画像量供給ユニット111により、例えば、システム100のユーザによるステップ画像量の入力に基づいて、又はシステム100に記憶された一般的に供給されるステップ画像量に基づいて供給され得る。
【0039】
検出器線量供給ユニット112は、目標検出器線量を供給するように適合される。この実施形態において、目標検出器線量とは、検出器144の特定の領域において超えてはならない該検出器144に供給される放射線量を指す。検出器線量供給ユニット112は、更に、上記目標検出器線量を超えてはならない検出器144の領域を供給するように構成される。例えば、検出器線量供給ユニット112は、患者130の関心領域の以前に取得されて保存された医療画像をユーザに供給し、該ユーザに目標検出器線量が定義されるべき該画像の一部を供給するように促すことができる。このような画像の一例が、例えば、
図2に示されている。
図2に示された画像200は、患者130の肺220のX線画像を示している。該X線画像200において、ユーザは、目標検出器線量が定義されるべき患者130の肺220内の領域を示す2つの部分を有する領域210を描いている。画像200に示された領域210に基づいて、検出器線量供給ユニット112は、画像200の領域210に対応する検出器144の一部を決定し、したがって目標検出器線量が超過されてはならない検出器144の部分を決定するように適合される。
【0040】
更に、検出器線量供給ユニット112は、目標検出器線量を記憶された目標検出器線量に基づいて又はユーザによって実施される目標検出器線量に基づいて供給するように適合させることができる。以下の例において、目標検出器線量は肺の撮像にとり合理的な値である2.5mGyを示すと仮定される。更に、検出器線量供給ユニット112は、好ましくは各ステップ画像の取得の間に検出器144により該検出器144の一部において受光される放射線量を指すステップ線量を供給するように適合され得る。この例において、該ステップ線量は、目標検出器線量及びステップ画像量の商として決定される。したがって、ここに提示される例において、各ステップ画像に対する、すなわち10個のステップ画像全てに対するステップ線量は、0.25mGyを示す。
【0041】
制御モジュール110は、供給された検出器線量を決定するように構成された供給検出器線量決定ユニット113を更に有する。特に、該供給検出器線量決定ユニット決定ユニット113は、検出器144の各検出器素子に対する放射線量を該検出器144により供給される信号に基づいて決定するように構成され得る。この場合、該供給検出器線量決定ユニット113は、検出器144の目標検出器線量を超えてはならない部分における該検出器144の検出器素子により受光された平均放射線量を、供給された検出器線量として決定するように構成され得る。好ましくは、供給検出器線量決定ユニット決定ユニット113は、供給された検出器線量をリアルタイムで決定するように、すなわち、各ステップ画像に対して現在の既に供給された検出器線量を供給するように構成される。ステップ画像の取得が完了した後、ステップ画像の供給検出器線量は供給検出器線量決定ユニット決定ユニット113により記憶され得る。
【0042】
更に、制御モジュール110はステップ画像取得制御ユニット114を有し、該ユニットは各ステップ画像の取得の間においてX線撮像システム140を制御するように構成される。当該システム100の一実施形態において、ステップ画像取得制御ユニット114は、ステップ画像の取得の間において管電流-曝露時間積を制御することにより各ステップ画像の取得を制御するように構成され得る。特に、ステップ画像取得制御ユニット114は、放射線源141の管電流及びステップ画像が取得される取得時間を制御するように構成され得る。管電流と取得時間との積は、管電流-曝露時間積と呼ばれ、この積は、放射線源141から検出器144に供給される放射線の量に影響を与える。更に、ステップ画像取得制御ユニット114は、この実施形態では、ステップ画像の取得を、供給された検出器線量、目標検出器線量及びステップ画像量に基づいて制御するように構成される。特に、各ステップ画像の取得の間において、ステップ画像取得制御ユニット114は、現在供給されている検出器線量である供給検出器線量を、目標検出器線量及びステップ画像量に基づいて決定されるステップ線量と比較する。ステップ画像取得制御ユニット114が、供給検出器線量がステップ線量に到達したと、この例では、供給検出器線量が0.25mGyに達したと決定した場合、該ステップ画像取得制御ユニット114は該ステップ画像の取得を終了することになる。ステップ画像の取得の終了に続いて、X線撮像システム140は、格子142、143を互いに対して移動させ、次の後続のステップ画像の取得を開始するように構成される。更に、ステップ線量は目標検出器線量及びステップ画像量に基づいて決定されたものであり、ステップ画像取得制御ユニット144は供給検出器線量がステップ線量に等しい場合にステップ画像の取得を終了するように構成されているので、目標検出器線量を超えてはならない検出器144の部分がステップ画像の取得の間において目標検出器線量を超えないことが保証され得る。
【0043】
代替の又は追加の実施形態において、ステップ画像取得制御ユニット114は供給された検出器線量がステップ線量に達した場合にステップ画像の取得を通常は終了しないように構成される。この実施形態においては、所定の閾値がステップ画像取得制御ユニット114により設けられる。この場合、ステップ画像取得制御ユニット114はステップ画像の供給検出器線量と該ステップ画像に対して計画されたステップ線量との間の差分を決定するように構成される。当該ステップ画像の供給検出器線量とステップ線量との間の該差分が上記所定の閾値を超える場合、ステップ画像取得制御ユニット114は後続のステップ画像を該後続のステップ画像に対する供給検出器線量が以前に供給された検出器線量に対して減少されるように制御する。例えば、ステップ画像取得制御ユニット114は、後続のステップ画像の管電流-曝露時間積を該後続のステップ画像に対する供給検出器線量が減少されるように制御するよう構成できる。前記の具体的な例示的値を使用すると、一例において、ステップ画像取得制御ユニット114は後続の各ステップ画像に対する管電流-露光時間積を、該ステップ画像取得制御ユニット114がステップ画像の取得の間において供給検出器線量がステップ線量を2倍超過した、即ち、供給検出器線量とステップ線量との間の差分が少なくとも0.25mGyに相当すると判断した場合に、1.5倍減少させるように構成され得る。
【0044】
他の代替的又は付加的実施形態において、検出器線量供給ユニット112は、更に、計画された取得時間を供給するように構成され、ステップ画像取得制御ユニット114は第1のステップ画像の取得を、上記計画された取得時間に達したとき又は前記供給検出器線量がステップ画像の収集の間においてステップ画像のステップ線量に達したときの何れかの場合に該取得が終了されるように制御するよう構成される。この実施形態において、ステップ画像取得制御ユニット114は、更に、当該ステップ画像の取得がa)ステップ線量に到達したため、又はb)計画された取得時間に到達したために終了されたかを決定するように構成される。
【0045】
ステップ線量に達したために当該取得が終了された場合、ステップ画像取得制御ユニット114は、後続のステップ画像の取得を、これら画像が前記第1のステップ画像と同じ取得パラメータで、特に同じ管電流-露光時間積で取得されるように制御する。この場合、供給検出器線量の更なる決定は省略できる。これは、後続のステップ画像が第1のステップ画像と同じ供給ステップ線量で取得され、したがって、目標検出器線量は到達されるではあろうが、当該ステップ線量が目標検出器線量及びステップ画像量の商として供給される場合には超過されないことが予想されるためである。
【0046】
当該取得が計画された取得時間に達したために終了された場合、ステップ画像取得制御ユニット114は、ステップ線量が目標検出器線量及びステップ画像量の商として供給される場合、予想される目標線量が目標検出器線量よりも小さいと決定するように構成される。この場合、ステップ画像取得制御ユニット114は、更に、例えば目標検出器線量を第1のステップ画像の供給検出器線量で除算することによって、該第1のステップ画像の供給検出器線量及び目標検出器線量に基づいて新たなステップ画像量を決定する。この場合、ステップ画像取得制御ユニット114は、後続のステップ画像の取得を、これらステップ画像が第1のステップ画像と同じ取得パラメータで、特に、同じ管電流-曝露時間積で取得されるように制御することができ、上記新たなステップ画像量に従ってステップ画像が取得されるようになる。
【0047】
更に、ステップ画像取得制御ユニット114は、例えば既に決定された全ての供給検出器線量を合計することによって、既に取得されたステップ画像の既に決定された供給検出器線量に基づいて全体の検出器線量を決定するように構成され得る。ステップ画像取得制御ユニット114が全体の検出器線量が目標検出器線量以上であると決定した場合、該ステップ画像取得制御ユニット114は位相イメージングデータの取得を終了する、すなわち、後続の全ての計画されたステップ画像の取得を取り消すことができる。好ましくは、このような実施形態の場合、ステップ画像取得制御ユニット114はステップ画像の取得を、計画されたステップ量よりも少ないステップ画像の量からも位相イメージングデータを再構成できるように制御するよう構成される。例えば、ステップ画像量供給ユニット111がステップ画像量としてフィボナッチ数、例えば13を供給する一方、ステップ画像取得制御ユニット114がステップ画像の取得を、格子142、143のうちの一方が各ステップ画像の取得の間に格子142、143の格子周期の黄金比に対応する距離だけ移動されるように制御するよう構成されることが有利である。
【0048】
ステップ画像取得制御ユニット114は、各ステップ画像の取得に使用された取得パラメータを記憶するように構成できる。好ましくは、ステップ画像取得制御ユニット114は、管電流-曝露時間積を記憶するように、すなわち、各ステップ画像を取得するために使用される管電流と取得時間との積を記憶するように構成される。代わりに、ステップ画像取得制御ユニット114が取得パラメータを記憶するように構成されるのではなく、X線撮像システム140の収集パラメータ記憶ユニットのような他のユニットが収集パラメータを記憶するように構成され得る。前記例の例示的な値を使用すると、最初の3つのステップ画像の放射強度は、例えば、100mAs、150mAs及び200mAsに対応し得る。
【0049】
この実施形態において、制御モジュール110は、更に、取得されたステップ画像を含む位相イメージングデータに基づいて画像を再構成するための再構成ユニット121を有する。再構成ユニット121は、ステップ画像前処理ユニット122及び画像再構成ユニット123を有し得る。ステップ画像前処理ユニット122は、ステップ画像が異なる取得パラメータを使用して取得される場合、位相画像データに含まれる全ての取得されたステップ画像を、供給された取得パラメータに基づいて正規化するように構成され得る。この例において、ステップ画像前処理ユニット122は、各ステップ画像を、各ステップ画像の全ての画像値を対応する取得パラメータ、例えば、管電流-曝露時間積で除算することによって正規化するように構成することができる。前記の例示的な値を使用すると、ステップ画像前処理ユニット122は、第1のステップ画像の全ての画像値を100で除算し、第2のステップ画像の全ての画像値を150で除算し、第3のステップ画像の全ての画像値を200で除算するように構成され得る。更に、ステップ画像前処理ユニット122は、ステップ画像を供給検出器線量に基づいて重み付けするよう構成され得る。この実施形態において、ステップ画像前処理ユニット122は、各ステップ画像に対する重みを決定するように構成され、ステップ画像は、再構成の間に該決定された重みで重み付けされる。各ステップ画像に対する重みは、ステップ画像の画質、特にノイズと、該ステップ画像の供給検出器線量との間の所定の関数に基づいて決定できる。この場合、重みは、ステップ画像間の品質差を補償するように、例えば、より高い画質を持つステップ画像に対して、より低い画質を持つステップ画像に対してよりも大きな重みが決定されるように決定される。このように、正規化及び重み付けされたステップ画像を含む結果として得られる位相イメージングデータにおいて、ステップ画像の取得の間における差は、正規化及び重み付けにより補償される。
【0050】
この場合、画像再構成ユニット123は、既知の再構成アルゴリズムに従って、正規化されたステップ画像及び該ステップ画像に対する重みを含む位相イメージングデータに基づいて、すなわち、正規化及び重み付けされたステップ画像に基づいて画像を再構成するように構成される。例えば、画像再構成ユニット123は、正規化及び重み付けされたステップ画像を含む位相イメージングデータに基づいて、位相コントラスト、暗視野及び/又は減衰画像を再構成するように構成できる。
【0051】
以下では、被検体(この例では患者130)の位相イメージングデータの取得の間にX線撮像システム140を制御するための方法300の実施形態を、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。該制御方法300は、当該位相イメージングデータを取得するための位相ステッピングの間に取得されるべきステップ画像の計画された量を示すステップ画像量を供給する第1のステップ311を有する。第2のステップ312においては、例えば、患者130の画像においてユーザにより示された当該検出器の一部に基づいて目標検出器線量が供給され、ここで、該目標検出器線量は当該位相イメージングデータの取得の間に該検出器の上記の示された部分において超過されてはならない。第3のステップ312においては、供給された検出器線量が各ステップ画像の取得の間において決定され、ここで、該供給された検出器線量は、好ましくは、当該ステップ画像の取得の間に検出器144により受光された放射線量を指す。当該制御方法310の最後のステップ314においては、X線撮像システム140が、各ステップ画像の取得の間において上記供給検出器線量、目標検出器線量及びステップ画像量に基づいて制御される。該制御は、各ステップ画像を取得するために使用される取得パラメータの制御、例えば、ステップ画像を取得するために使用される管電流及び取得時間を制御することによる管電流-曝露時間積の制御を含む。
【0052】
オプションとして、当該方法300は再構成方法321を更に含み、該再構成方法は、位相イメージングデータの取得の間に取得された全てのステップ画像が、i)供給された取得パラメータに基づいて、例えば、管電流-露光時間積に基づいて正規化される、及び/又はii)各ステップ画像に対する供給検出器線量に基づいて該ステップ画像の取得の間の差が補償され得るように重み付けされる第1のステップ322を含む。更に、該再構成方法321はステップ323を含み、該ステップにおいては、正規化及び/又は重み付けされた画像を含む位相イメージングデータに基づいて画像が再構成される。
【0053】
X線撮影及び蛍光透視法における最適な画質のためには、例えば患者等の画像化されるべき被検体に予め定められた最適な放射線量を供給することが有利である。過剰な放射線量は患者に有害であり得る一方、供給される放射線量が低すぎると、取得された画像は高い画像ノイズを被り得る。したがって、十分な画質を提供するには、最適な放射線量を供給することが有利である。従来の放射線撮影、すなわちX線撮像において所定の最適な放射線量が供給されることを保証するために、画像取得中において検出器上で特定の放射線量に達したら放射線源を自動的にオフにするAECを使用するのが標準的である。肺領域で超えてはならない典型的な放射線量は、例えば、2.5mGyである。
【0054】
X線暗視野及び位相コントラスト放射線撮影、すなわちX線位相イメージングは、例えば格子(グレーティング)干渉計として構成されたX線撮像システムにより取得された一連の画像、例えば、5~10枚の画像を必要とする。位相イメージングデータの取得の間において、該位相イメージングデータを取得するために使用されるX線撮像システム内に設けられた格子の1つは他方の設置格子に対して移動され、位相ステッピング法のステッピング曲線、すなわち複数のステップ画像を取得するようにする。取得されたステップ画像は、次いで、透過信号、位相コントラスト信号及び暗視野信号を抽出するために使用できる。即ち、減衰、位相コントラスト及び暗視野画像等の画像を、上記一連のステップ画像に基づいて再構成できる。
【0055】
現在のところ、X線位相イメージングは、ステッピング曲線の各ステップ画像の取得のために、所定の管電流-曝露時間積値、すなわち、管電流に取得時間を乗算することによって得られる値を供給することにより実行されている。しかしながら、臨床的応用においては、検出器により受光される放射線量を、供給された管電流-曝露時間積に基づいて推定することは非常に困難であり、所定の放射線強度に基づいた検出器により受光される放射線量は正確に予測できない。したがって、ここに提示される本発明は、完全なX線位相コントラスト及び暗視野イメージング、すなわち位相イメージングのためのAECのためのシステム及び方法を提供する。
【0056】
本発明においては、例えば、肺又は他の標的臓器が臨床的に位置する領域に対応する検出器の一部に対する目標検出器線量が、例えば、2.5mGyとして定義されることが提案される。次いで、ステッピング曲線におけるステップの量、すなわちステップ画像量が、例えば、10として定義される。次いで、平均ステップ線量が、好ましくは、目標検出器線量とステップ画像量との比として、例えば0.25mGyとして、計算される。このステップ線量は、次いで、位相イメージングデータの取得の間に全てのステップ画像を取得するために使用され得る。位相イメージングデータの取得の間において、ステップ線量を達成するために各ステップ画像の取得の間に供給される管電流-曝露時間積は記録され、画像取得後に、全てのステップ画像は、ステップ画像を取得するために使用された強度によりスケーリング、すなわち正規化される。例えば、第1、第2及び第3のステップ画像のために使用された強度が、各々、100mAs、150mAs及び200mAsである場合、全ての画像ピクセル値、すなわち画像値は、例えば、当該画像値を第1、第2及び第3の画像に対して100、150及び200により各々除算することによって正規化される。更に、ステップ画像の異なる画像品質、特にノイズレベルを考慮に入れるために、各ステップ画像に対して、記録されたステップ線量に基づいて重みを与えることができる。これらの補正された、すなわち正規化された画像及び重みに基づいて、位相コントラスト画像のような画像を、従来の処理方法を使用して再構成できる。このようなアプローチは、X線位相コントラスト及び暗視野イメージング、即ち位相イメージングのためのAECを可能にさせ、より良い画質を得るのに役立つ。
【0057】
上述した本発明一実施形態では、検出器上の関心領域、すなわち、当該検出器における目標検出器線量及び/又は供給検出器線量が評価される一部を定義することが有利であり得る。このことは、例えば、目標臓器が位置すると予想される関心領域を検出器上に配置することによって行うことができる。代わりに、検出器領域全体を関心領域として、すなわち検出器の一部として定義することもできる。
【0058】
画像取得のための選択された標的領域、すなわち検出器の一部に対して、目標検出器線量、例えば、2.5mGyが定義され、ステップの量、すなわち、ステップ画像量(例えば、10)が供給される。次いで、ステップ線量が、例えばステップ画像量により除算された目標検出器線量として、例えば2.5mGy/10=0.25mGyとして与えられる。このステップ線量は、次いで、ステッピング曲線の取得のために、即ち各ステップ画像の取得のために使用でき、その間において、このステップ線量を達成するために使用された管電流-曝露時間積設定値が記録される。最後に、これらステップ画像は、各ステップ画像を取得するために使用された管電流-曝露時間積によって正規化され得る。該スケーリングされた画像、すなわち正規化された画像は、各ステップ画像に対して決定された重みとともに、従来のX線位相コントラスト及び暗視野画像再構成のために使用できる。
【0059】
更に、暗視野及び位相コントラストイメージング、すなわち位相イメージングのためのAECが、例えば、患者に対して管電流-曝露時間積設定値を選択すること、各ステップ画像に対して当該ステップ画像が取得されるべき管電流-曝露時間積を有すること、及び斯かる管電流-曝露時間積設定値を位相イメージングに使用されるX線撮像システムに入力することに基づくものであることが提案される。この管電流-暴露時間積設定値は、次いで、ステッピング曲線の取得、すなわちステップ画像の取得に使用される。1つのステップ画像に対して検出器の関心領域の各ピクセル、すなわち検出器素子に供給される平均放射線量から決定される供給検出器線量が、計算されたステップ線量、例えば、0.25mGyを例えば2倍超過する場合、該管電流-曝露時間積設定値は、後続のステップ画像取得のために、例えば1.5倍だけ自動的に減少される。全体の検出器線量、すなわち、既に取得された全てのステップ画像の間に検出器により受光された放射線量が、目標検出器線量、例えば2.5mGyに達する場合、当該位相イメージングデータの取得は終了される。また、この実施形態において、ステップ画像を画像化するために使用される放射線強度は記録され、後に画像をスケーリングする、すなわち正規化するために使用される。したがって、補正された画像、すなわち正規化された画像を、更なる処理のために直接使用できる。
【0060】
終了される取得に対して良く備えるために、ロバストなステッピング順序を用いた取得を、すなわち、3~10の間の如何なる量のステップ画像からも適切な位相回復、すなわち位相コントラスト画像の再構成を可能にするような取得を実行することが望ましい。ロバストなステップ順序において、当該X線撮像システムによって提供される格子は、2つの連続するステップ画像の間でg・pの倍数だけ移動され得、ここで、pは当該格子の格子周期を表し、gは黄金比を表す。ステップ画像量がフィボナッチ数、例えば5、8、13を示す場合に、及びg・pの増分による当該ステッピングスキームの適切な丸めを使用して、n個のステップで、即ち各ステップ画像量で位置を均等に分散することにより、格子にとり特に有利なステッピングシーケンスを生成できる。
【0061】
上記の実施形態では、取得パラメータ、特に管電流-曝露時間積は変動する、すなわち、取得されるステップ画像ごとに異なる。これらの変動は、再正規化及び重み付け手順により除去できる。
【0062】
他の例として、AECが第1のステップ画像取得にのみ使用される実施形態が、以下で提案される。例えば、透視モードにおいて、取得時間、すなわち露光ウィンドウは制限される。例えば、該露出ウィンドウは30ミリ秒の最大継続時間を有し得る。当該患者が十分に痩せている場合、第1のステップ画像のAECの結果、露光時間は最大露光ウィンドウよりも短くなる。患者が十分に痩せていない場合、AECは露出を終了させないが、最大露出ウィンドウにより終了される。この場合、位相イメージングデータの取得の間において、目標露光、即ち目標検出器線量(μGy単位)には到達しない。
【0063】
第1のケースでは、撮影(ショット)の目標量、すなわちステップ画像量、例えば10が使用され、全てのステップ画像は、最初のショット(すなわちステップ画像)の管電流-曝露時間積で撮影されることが提案される。したがって、続く露光ではAECの使用は省略できる。
【0064】
第2のケースでは、最初のステップの画像のヒストグラムが評価され、データが線量に変換されて、該最初のステップ画像の供給ステップ線量を決定することが提案される。この場合、新たなステップ画像量が目標検出器線量、例えば2.5mGyを最初の画像の供給ステップ線量で除算することにより計算され、後続のステップ画像は、該新たなステップ画像量に達するまで最初のステップ画像と同じ取得パラメータで取得される。
【0065】
両方のケースにおいて、各ショット(即ち、ステップ画像)に対する取得パラメータ、特に管電流-曝露時間の積は変動しない。最初の露光のヒストグラムからステップ画像の量を導出するこの方法は、前述した2つの第1の実施形態にも適用できる。
【0066】
上述した実施形態では、画像化されるべき被検体は医療環境における患者であったが、他の実施形態において、画像化されるべき被検体は、動物又はスーツケースのような無生物であり得る。更に、本発明は、医療環境のために提供されるだけでなく、産業用アプリケーション又はセキュリティアプリケーションのような他のアプリケーションの前後関係で提供することもできる。
【0067】
上述した実施形態において、X線撮像ユニットは格子を互いに対して移動するように構成されたが、他の実施形態において、該X線撮像ユニットは電磁位相ステッピングを提供するように、すなわち、放射線のソーススポットを格子に対して移動させるように構成され得る。
【0068】
上述した実施形態において、目標検出器線量が定義される検出器の部分は、ユーザにより関心領域の画像に基づいて示されたが、他の実施形態において、該検出器の部分は、例えば検出器に対する患者の既知の位置又は検出器に対する患者の標準的な位置に基づく目標検出器線量によって自動的に決定され得る。
【0069】
上述した実施形態において、再構成ユニットは制御ユニットの一部であったが、他の実施形態において、再構成ユニットは省略され得るか、又は、例えば、異なるコンピュータシステム上に設けられる別個のユニットであり得る。
【0070】
開示された実施形態に対する他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載の本発明を実施するに際して、図面、当該開示及び添付の請求項の精査から理解及び実施することができる。
【0071】
請求項において、「有する」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。
【0072】
単一のユニット又は装置は、請求項に記載された幾つかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
【0073】
1つ又は幾つかのユニット又は装置によって実行されるX線撮像システムの制御又は位相イメージングデータに基づく画像の再構成のような手順は、他の任意の数のユニット又は装置によって実行することもできる。例えば、これらの手順は単一の装置により実行できる。これらの手順及び/又は位相イメージングデータを取得するためのシステムの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、及び/又は専用ハードウェアとして実施することができる。
【0074】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又はその一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体により保存/配布することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように、他の形式で配布することもできる。
【0075】
請求項内の参照記号は、当該範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0076】
本発明は、位相イメージングのためのステップ画像の取得の間においてX線撮像システムを制御するための制御モジュールに関するものである。該制御モジュールは、ステップ画像量を供給するためのステップ画像量供給ユニット、目標検出器線量を供給するための検出器線量供給ユニット、ステップ画像の取得の間において検出器の一部により吸収される供給検出器線量を決定するための供給検出器線量決定ユニット、及び各ステップ画像の取得の間において前記X線撮像システムを前記供給検出器線量、目標検出器線量及びステップ画像量に基づいて制御するためのステップ画像取得制御ユニットを有する。当該制御モジュールは、前記X線撮像システムを、前記目標検出器線量が超過されないと同時に、前記ステップ画像の十分な品質を保証するように制御することを可能にする。