(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】2ストロークエンジン及び手持ち式の動力工具
(51)【国際特許分類】
F02B 25/14 20060101AFI20240524BHJP
F02B 25/22 20060101ALI20240524BHJP
F02B 29/00 20060101ALI20240524BHJP
F02B 63/02 20060101ALI20240524BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20240524BHJP
F02M 69/10 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F02B25/14 Z
F02B25/14 A
F02B25/22
F02B29/00 Z
F02B63/02
F02D41/02
F02M69/10
(21)【出願番号】P 2021575034
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 SE2020050623
(87)【国際公開番号】W WO2020256624
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-07
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】511234781
【氏名又は名称】フスクバルナ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ヘードバリ
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス エナンデル
(72)【発明者】
【氏名】トビアス スタルフォーシュ
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-266266(JP,A)
【文献】特開2001-295652(JP,A)
【文献】特開2012-77640(JP,A)
【文献】特開2008-38904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 25/22
F02B 33/04
F02B 63/02
F02M 69/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ストロークエンジン(1)において、
前記2ストロークエンジン(1)は、
シリンダ(2)と、
前記シリンダ(2)内を往復運動するように配置されたピストン(3)と、
クランクケース(5)と、
前記クランクケース(5)に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器(7)と、
前記クランクケース(5)に接続された空気入口(9)と、
前記シリンダ(2)に接続された層状掃気入口(11)であって、前記2ストロークエンジン(1)は、前記空気入口(9)及び前記層状掃気入口(11)に供給される空気の量を制御するように構成されたスロットル(13)を備える、層状掃気入口(11)とを備える、2ストロークエンジン(1)において、
前記スロットル(13)は、前記スロットル(13)が半開位置にあるときに、前記空気入口(9)への空気の流量が、前記層状掃気入口(11)への空気の流量よりも高くなるように配置されており、
前記2ストロークエンジン(1)は、前記スロットル(13)と前記層状掃気入口(11)との間に配置された弁(25)を備え、前記弁(25)は、前記弁(25)が前記層状掃気入口(11)への空気の流れを少なくとも部分的に遮断する状態に制御可能であり、
前記2ストロークエンジン(1)が、前記2ストロークエンジン(1)の回転速度に基づいて前記弁(25)を制御するように構成された制御装置(27)を備え、
前記制御装置(27)は、前記2ストロークエンジン(1)の前記回転速度が10000毎分回転数~15000毎分回転数の範囲内の第1閾値回転速度を上回るときに前記弁(25)が前記層状掃気入口(11)への空気の流れを少なくとも部分的に遮断する状態に前記弁(25)を制御するように構成されている、ことを特徴とする2ストロークエンジン(1)。
【請求項2】
前記2ストロークエンジン(1)が、前記スロットル(13)と前記空気入口(9)と前記層状掃気入口(11)との間に配置されたマニホールド(15)を備える、請求項1に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項3】
前記2ストロークエンジン(1)が、前記空気入口(9)と前記層状掃気入口(11)との間の分離壁(17)を備える、請求項1又は2に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項4】
前記2ストロークエンジン(1)が、前記空気入口(9)と前記層状掃気入口(11)との間の分離壁(17)を備え、前記マニホールド(15)が前記分離壁(17)を備える、請求項2に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項5】
前記マニホールド(15)を通る意図された空気の流れ方向(d)で測定された、前記分離壁(17)の長さ(L1)が、前記マニホールド(15)を通る前記意図された空気の流れ方向(d)で測定された前記マニホールド(15)の長さ(L2)の10%~50%の範囲内などの4%~60%の範囲内にある、請求項4に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項6】
前記マニホールド(15)が弾性材料に設けられている、請求項2、4又は5に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項7】
前記ピストン(3)は、前記シリンダ(2)内の下死点と上死点の間を往復運動するように配置されており、前記2ストロークエンジン(1)は、前記ピストン(3)が下死点の領域にあるときに、前記クランクケース(5)から前記シリンダ(2)に空気燃料混合物を導くように構成された掃気チャネル(19)を備え、前記ピストン(3)は、前記ピストン(3)が上死点の領域にあるときに、前記層状掃気入口(11)と前記掃気チャネル(19)とを重ね合わせるように配置された開口(23)を有するマントル表面(21)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項8】
前記弁(25)がソレノイド制御弁(25)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項9】
前記スロットル(13)は、バタフライ弁要素(13’)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項10】
前記バタフライ弁要素(13’)が、前記空気入口(9)に面する第1の部分(31)と、前記層状掃気入口(11)に面する第2の部分(32)とを備え、前記バタフライ弁要素(13’)が閉鎖位置から開放位置に向かって回転するとき、前記第1の部分(31)が前記空気入口(9)に向かう方向に移動し、前記バタフライ弁要素(13’)の前記第2の部分(32)が前記層状掃気入口(11)から離れる方向に移動するように、前記スロットル(13)が配置されている、請求項9に記載の2ストロークエンジン(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の2ストロークエンジン(1)を備える、手持ち式の
動力工具(50)。
【請求項12】
手持ち式の
動力工具(50)がチェーンソー又はパワーカッターである、請求項11に記載の手持ち式の
動力工具(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、層状掃気装置を備える2ストロークエンジンに関する。本開示は、さらに、2ストロークエンジンを備える手持ち式の動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
2ストロークエンジンとは、クランク軸の1回転だけの間にピストンの2ストロークで動力サイクルを完結させる、内燃機関の一種である。シリンダ内のピストンの最上位置は、通常、上死点と呼ばれ、シリンダ内のピストンの最下位置は、通常、下死点と呼ばれる。2ストロークエンジンは、4ストロークエンジンと比較して、可動部品点数を大幅に削減し、比較的にコンパクトにし、大幅に軽量化することができる。したがって、2ストロークガソリンエンジンは、機械的簡素性、軽量性、及び、高い出力重量比が主な関心事項である用途で使用される。典型的な用途はチェーンソーなどの手持ち式の工具である。
【0003】
ほとんどの小型の2ストロークエンジンは、ピストンの動力行程中にクランクケース内に圧力を蓄積するために、チャージングポンプとしてピストンの下の領域を使用することを意味する、クランクケース掃気エンジンである。2ストロークエンジンは、通常、クランクケースに空気燃料混合物を供給するように配置された気化器を備えている。2ストロークエンジンの動力行程では、燃料の燃焼によって得られるシリンダ内の増加した圧力と温度が、エンジンのクランク軸に供給される機械的仕事に部分的に変換される。同時に、クランクケース内の圧力は、ピストンが下死点に向かって移動する結果として増加する。ピストンが下死点に向かって移動する時にシリンダに対して第1の位置に達したときに、排気ガスをシリンダから流出させるように、シリンダ壁に配置された排気ポートは開放させられる。ピストンは、下死点に向かって移動を続け、第1の位置より下の第2の位置に到達すると、シリンダ壁内に配置された吸気ポートが開放させられる。吸気ポートは、掃気チャネルを介してクランクケースに流体的に接続されている。クランクケース内の空気燃料混合物は、クランクケース内の過圧によって、吸気ポートを介してシリンダ内に流入するように強いられる。
【0004】
従って、上記から理解されるように、この種のエンジンでは、シリンダ内の排気ポートと吸気ポートとが、エンジンの掃気段階、すなわち、ピストンが下死点の領域にあるときに、同時に開いている。その結果、空気燃料混合物のいくらかは、掃気段階で吸気ポートから排気ポートにシリンダを通って流れうる。従って、小型の2ストロークエンジンに関連する問題は、未燃炭化水素すなわち未燃燃料の放散である。この課題に対処する方法は、層状掃気装置を2ストロークエンジンに提供することである。
【0005】
このようなエンジンでは、ピストンは、ピストンが上死点の領域にあるときに、掃気チャネルとシリンダ壁内の層状掃気入口とを重ね合わせるように配置された開口を備えることができる。ピストンがこの位置にあるとき、清浄な空気、すなわち、追加燃料のない空気は、層状掃気入口から掃気チャネルに流れ込むことができる。その結果、ピストンが、吸気ポートが開放された、上述した第2の位置に到達すると、まず、掃気チャネル内をさらに下降する空気燃料混合物がシリンダに到達する前に、清浄な空気がシリンダに入る。このようにして、掃気段階において排気ポートを通って流出する燃料が少なくなり、未燃炭化水素の放散を著しく低減することができる。
【0006】
層状掃気装置を有する欠点は、2ストロークエンジンにコスト、重量、及び複雑性を付加することである。すなわち、チャネル、入口ダクト、スロットル装置等などの必要な構成要素及び構造により、2ストロークエンジンにコスト、重量及び複雑さを増し、一般に、今日の消費者市場において、2ストロークエンジン及び関連製品などの製品が、コスト効率の良い方法で製造及び組立されるのに適した条件及び/又は特性を有していれば、有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した問題及び欠点の少なくとも幾つかを克服するか又は少なくとも緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、前記目的は、シリンダと、該シリンダ内を往復運動するように配置されたピストンと、クランクケースと、該クランクケース内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器と、該クランクケースに接続された空気入口と、該シリンダに接続された層状掃気入口とを備える2ストロークエンジンによって達成される。このエンジンは、空気入口及び層状掃気入口に供給される空気の量を制御するように構成されたスロットルをさらに備える。
【0009】
エンジンは、空気入口及び層状掃気入口に供給される空気の量を制御するように構成されたスロットルを備えるので、空気入口及び層状掃気入口に供給される空気の量の簡単で効率的かつ信頼性の高い制御が提供される。さらに、このエンジンは、燃料をクランクケースに噴射するように構成された燃料噴射器を備えるので、スロットルと空気入口と層状掃気入口との間の共有流路を使用するための条件が提供される。
【0010】
さらに、エンジンは、空気入口に供給される空気の量を制御するように構成されておりかつ層状掃気入口に供給される空気の量を制御するように構成されている1つのスロットルを備えるので、層状掃気入口に供給される空気の量を制御するための別個のスロットル装置の必要性が回避される。その結果、運転中に低量の未燃炭化水素を発生させるための条件を有しつつコスト効率の良い方法で製造及び組立されるのに適した条件及び特性を有する、エンジンが提供される。
【0011】
さらに、層状掃気入口に供給される空気の量を制御するための別個のスロットル装置の必要性が回避されるので、軽量化のための条件を有するエンジンが提供される。また、層状掃気入口に供給される空気の量を制御するために別個のスロットル装置の必要性が回避されるので、保守及び修理を簡素化するための条件を有するエンジンが提供される。一例として、別個のスロットル装置及びエンジンスロットル装置を同期させる必要性が回避される。
【0012】
従って、2ストロークエンジンは、上述した問題及び欠点の少なくとも幾つかを克服するか又は少なくとも軽減するように提供される。その結果、上記の目的が達成される。
【0013】
選択的に、エンジンは、スロットルと空気入口と層状掃気入口との間に配置されたマニホールドを備える。これにより、スロットルから空気入口へそして層状掃気入口への、簡単で信頼性の高い空気の移送が提供される。さらに、層状掃気入口への別個のマニホールドの必要性は回避され、これにより、エンジンの更なる軽量化のための条件が提供される。
【0014】
選択的に、エンジンは、空気入口と層状掃気入口との間の分離壁を備える。これにより、スピットバック(spit back)の発生が簡単かつ効率的に低減される。スピットバックとは、燃料及び/又は空気燃料混合物がクランクケースから空気入口を介して層状掃気入口に移送される事象を記述する用語である。層状掃気入口に短絡するスピンバックによって、エンジンのシリンダ内の燃料量が増加し、エンジンの運転中に発生する未燃炭化水素量が増加しうる。
【0015】
選択的に、マニホールドは、分離壁を備える。これにより、スピットバックの発生が簡単かつ効率的に低減される。さらに、マニホールドを通る意図された空気の流れ方向で測定される分離壁の長さは、シリンダの設計を変更することなく、エンジンの異なる用途の間で変更することができる。このように、エンジンの応答及び特性は、シリンダの設計を変更することなく、エンジンの異なる用途の間で変更することができる。従って、このように、異なる応答及び特性を有する異なる用途のエンジンをコスト効率の良い方法で提供することができる。
【0016】
選択的に、マニホールドを通る意図された空気の流れ方向で測定される分離壁の長さは、マニホールドを通る意図された空気の流れ方向で測定されるマニホールドの長さの4%~60%の範囲、例えば10%~50%の範囲内である。これにより、エンジンのより高い回転速度において、スピットバックの発生を簡単かつ効率的に低減することが保証される。さらに、分離壁の長さによって得られる良く設計されたスピットバック量により、エンジン低速トルクと加速を改善できる。
【0017】
選択的に、マニホールドは、弾性材料内に設けられる。これにより、エンジンの運転中に、低量の振動がシリンダからスロットルに伝達され、それにより、スロットルに取り付けることができる空気フィルタ装置にも伝達される。
【0018】
選択的に、ピストンは、シリンダ内の下死点と上死点との間を往復運動するように配置されており、エンジンは、ピストンが下死点の領域にあるときに、クランクケースからシリンダに空気燃料混合物を導くように構成された掃気チャネルを備え、ピストンは、ピストンが上死点の領域にあるときに、層状掃気入口と掃気チャネルとを重ね合わせるように配置された開口を備えたマントル表面を備える。これにより、運転中に低量の未燃炭化水素を発生させるための条件を有しかつコスト効率の良い方法で製造及び組立されるのに適した条件及び特性を有する、エンジンが提供される。
【0019】
選択的に、エンジンは、スロットルと層状掃気入口との間に配置された弁を備え、この弁は、弁が層状掃気入口への空気の流れを少なくとも部分的に遮断する状態に制御可能である。これにより、層状掃気入口に供給される空気の量を簡単かつ効率的に制御できるエンジンが提供される。更なる結果として、エンジンの応答を簡単で効率的な方法で制御することができるエンジンが提供される。一例として、層状掃気入口への空気の流れを弁が少なくとも部分的に遮断する状態に弁を制御するだけで、エンジンの回転速度を制限できるエンジンが提供される。
【0020】
選択的に、弁は、ソレノイド制御弁である。これにより、層状掃気入口に供給される空気の量を簡単かつ効率的に制御できるエンジンが提供される。
【0021】
選択的に、エンジンは、エンジンの回転速度に基づいて弁を制御するように構成された制御装置を備える。これにより、エンジンの応答が簡単かつ効率的に制御されるエンジンが提供される。
【0022】
選択的に、制御装置は、エンジンの回転速度が閾値回転速度を上回るときに、層状掃気入口への空気の流れを弁が少なくとも部分的に遮断する状態に弁を制御するように構成されている。これにより、エンジンの回転速度を簡単かつ環境に優しい形で制限したエンジンが提供される。なぜなら、層状掃気入口への空気の流れの少なくとも部分的な遮断により、シリンダ内のより高い燃料比率をもたらし、シリンダ内の燃焼温度を低下させ、エンジンの出力を低下させるからである。従来、2ストークエンジンの回転速度は、通常、エンジンのスパークプラグの点火を中止することによって制限されていた。このようなエンジンの回転速度の制限は、かなりの量の未燃炭化水素を引き起こす。
【0023】
選択的に、スロットルは、スロットルが半開位置にあるときに、空気入口への空気の流量が、層状掃気入口への空気の流量よりも高くなるように配置される。これにより、エンジン応答を改善するための条件を有しつつ運転中に低量の未燃炭化水素を発生させる、エンジンが提供される。
【0024】
選択的に、スロットルは、バタフライ弁要素を備える。これにより、空気入口及び層状掃気入口へ供給される空気の量の簡単で効率的な制御が提供される。
【0025】
選択的に、バタフライ弁要素は、空気入口に面する第1の部分と、層状掃気入口に面する第2の部分とを備え、バタフライ弁要素が閉鎖位置から開放位置に向けて回転させられるときに、第1の部分が空気入口に向かう方向に移動させられかつバタフライ弁要素の第2の部分が層状掃気入口から離れる方向に移動させられるように、スロットルは配置されている。これにより、エンジン応答を改善するための条件を有しかつ運転中に低量の未燃炭化水素を発生させるエンジンが提供される。さらに、始動を容易にするための条件を有するエンジンが提供される。これは、スロットルが少なくとも部分的に閉鎖された位置にあるとき、層状掃気入口に向かうものよりも多くの空気が空気入口に向かうためである。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、本発明の目的は、本開示の幾つかの実施形態に係るエンジンを備える手持ち式の動力工具によって達成される。
【0027】
手持ち式の動力工具は、幾つかの実施形態に係るエンジンを備えるので、運転中に低量の未燃炭化水素を発生させるための条件を有しつつ、コスト効率の良い方法で製造及び組立てされるのに適した条件及び特性を有する、手持ち式の動力工具が提供される。
【0028】
従って、上述の問題及び欠点の少なくとも一部を克服するか又は少なくとも軽減する、手持ち式の動力工具が提供される。その結果、上記目的が達成される。
【0029】
選択的に、手持ち式の動力工具はチェーンソー又はパワーカッターである。
【0030】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の請求項及び以下の詳細な説明を読む際に明らかになる。
【0031】
本発明の特定の特徴及び利点を含む、本発明の様々な態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面で論じられる実施例から容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は幾つかの実施形態に係る2ストロークエンジンの斜視図を示す。
【
図2】
図2は幾つかの実施形態に係る2ストロークエンジンの断面図を示す。
【
図3】
図3は、エンジンのピストンが上死点に示される、
図2に示されるエンジンの断面図を示す。
【
図4】
図4は
図1~
図3に示される実施形態に係るエンジンのピストンの斜視図を示す。
【
図5】
図5は、ピストンが上死点に示される、
図2に示されるエンジンの第2断面図を示す。
【
図7】
図7は幾つかの実施形態に係るマニホールドの断面図を示す。
【
図8】
図8は本開示の幾つかの実施形態に係る吸気装置を示す。
【
図9】
図9は幾つかの実施形態に係る手持ち式の
動力工具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで、本発明の幾つかの態様をより完全に説明する。同じ参照番号は全体を通して同じ要素を指す。周知の機能又は構造は、簡潔性及び/又は明瞭性のために必ずしも詳細に説明されないであろう。
【0034】
図1は、幾つかの実施形態に係る、2ストロークエンジン1の斜視図を示す。図示の実施形態によれば、2ストロークエンジン1は、小型のクランクケース掃気2ストロークエンジン1である。本明細書でさらに説明するように、エンジン1は、手持ち式の
動力工具の工具に動力を供給するように構成されている。簡潔性と明瞭性の理由から、2ストロークエンジン1は、本明細書では「エンジン1」と呼ぶ場所もある。
図1において、エンジン1の幾つかの構成要素、例えば、スパークプラグ8と、スロットル13と、マニホールド15と、掃気チャネル19が見える。以下では、これらの構成要素の機能及び特徴についてさらに説明する。
【0035】
図2は
図1に示すエンジン1の断面図を示す。エンジン1は、シリンダ2と、シリンダ2内を往復運動するように配置されたピストン3とを備える。エンジン1は、クランクケース5と、クランクケース5内で回転するように配置されたクランク軸10とをさらに備える。さらに、エンジン1は、ピストン3をクランク軸10に連結する連接棒12を備え、クランク軸10の回転時にピストン3が下死点BDCと上死点TDCとの間でシリンダ2内を往復運動するようになっている。
図2では、ピストン3が下死点に示されている。
【0036】
エンジン1は、クランクケース5に直接的に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器7をさらに備える。燃料噴射器7は、低圧タイプとしうる。さらに、エンジン1は、クランクケース5に接続された空気入口9と、シリンダ2に接続された層状掃気入口11とを備える。さらに、エンジン1は、空気入口9及び層状掃気入口11に供給される空気の量を制御するように構成されたスロットル13を備える。図示の実施形態によれば、エンジン1は、スロットル13と空気入口9と層状掃気入口11との間に配置されたマニホールド15を備える。本明細書でさらに説明するように、
図1及び
図2に示す掃気チャネル19は、ピストン3が下死点の領域にあるときに、クランクケース5からシリンダ2に空気燃料混合物を導くように構成されている。
【0037】
図3は、エンジン1のピストン3が上死点に図示されている、
図2に図示されているエンジン1の断面を示す。
図3に示すように、ピストン3が上死点にあるとき、空気は、スロットル13からマニホールド15及び空気入口9を介してクランクケース5に流入することができる。さらに、ピストン3がこの位置にあるとき、燃料噴射器7は、燃料をクランクケース5内に直接的に噴射することができる。さらに、本明細書でさらに説明するように、
図3に示すように、ピストン3が上死点の領域にあるとき、空気は、層状掃気入口11と、ピストン3のマントル表面内の凹部23と、
図2に示す掃気チャネル19の吸気ポート19’とを介して、スロットル13から
図2に示す掃気チャネル19内に流入することができる。
図3から分かるように、ピストン3のマントル表面の凹部23は、ピストン3が上死点の領域にあるときに、層状掃気入口11と重ね合わさる。
【0038】
図4は、
図1~
図3に示す実施形態に係るエンジン1のピストン3の斜視図を示す。
図4に示すように、ピストン3はピストン頂面14を備える。ピストン頂面14は、ピストンがシリンダ2内に配置されたときに、シリンダ2の燃焼室に面する。さらに、ピストンは、マントル表面21を備える。以下において、
図4と
図2を同時に参照する。マントル表面21は、ピストン3がシリンダ2内に配置されているとき、シリンダ2のシリンダ壁2’に面する。マントル表面21には、ピストン3が上死点の領域にあるときに、層状掃気入口11と掃気チャネル19の吸気ポート19’とを重ね合わさるように配置された開口23が設けられている。
【0039】
図5は、ピストン3が上死点に図示されている、
図2に図示されたエンジン1の第2の断面を図示する。
図5から分かるように、ピストン3が上死点の領域にあるとき、ピストン3のマントル表面の凹部23は、シリンダ2内の掃気チャネル19を重ね合わさる。
【0040】
以下では、2ストローク中、すなわち、クランク軸10の1回転中において、
図2~
図5を併せて参照してエンジン1の運転を説明する。上述したように、
図3に示すように、ピストン3が上死点の領域にあるとき、空気は、スロットル13からマニホールド15及び空気入口9を介してクランクケース5に流入することができる。さらに、ピストン3が上死点の領域にあるとき、燃料噴射器7は、燃料をクランクケース5に直接的に噴射することができる。幾つかの実施形態によれば、燃料噴射器7は、連続的な方法で燃料をクランクケース5内に噴射することができる。さらに、ピストン3が上死点の領域にあるとき、空気は、スロットル13から、層状掃気入口11と、ピストン3のマントル表面の凹部23と、掃気チャネル19の吸気ポート19’とを介して、
図2に示す掃気チャネル19内に流入することができる。
【0041】
ピストン3が上死点から下死点に向かって移動するとき、クランクケース5に面するピストン3の下面が、クランクケース5内の圧力を増加させるポンプとして作用する。さらに、ピストン3が上死点から距離を置いて移動するとき、ピストン3のマントル表面21が空気入口9と層状掃気入口11とを塞ぐ。
【0042】
シリンダ2のシリンダ壁2’に配置された排気ポート16が開放されており、ピストン3が下死点に向かってシリンダ2に対して第1位置に達したときに、排気ガスがシリンダ2から流出するようになっている。ピストン3は、下死点に向かって移動を続け、第1の位置より下の第2の位置に到達するとき、シリンダ壁2’内に配置された吸気ポート19’が開放される。吸気ポート19’は、掃気チャネル19を介してクランクケース5に流体的に接続されている。クランクケース5内の空気燃料混合物は、クランクケース5内の過圧によって、吸気ポート19’を介してシリンダ2に流入するように強いられる。
【0043】
図2から分かるように、この種のエンジン1では、エンジン1の掃気段階、すなわち、ピストン3が下死点の領域にあるときに、シリンダ2内の排気ポート16と吸気ポート19’とが同時に開いている。その結果、空気燃料混合物のいくらかが、掃気段階で、吸気ポート19’からシリンダ2を通って排気ポート16に流れることができる。しかしながら、ピストン3が上死点の領域にあったときに、清浄な空気、すなわち、追加燃料のない空気が吸気ポート19’を介して掃気チャネル19に流入したので、清浄な空気は、吸気ポート19’が掃気段階で開放されたときに、まずシリンダ2に入ることになる。このように、エンジン1から発生する未燃炭化水素の量が著しく減少する。これは、掃気段階において、空気燃料混合物のより少ない量が、吸気ポート19’から排気ポート16にシリンダ2を通って流れることになるからである。
【0044】
ピストン3が下死点から上死点に向かって移動するとき、ピストン3のマントル表面21が吸気ポート19’を閉じ、次いで排気ポート16を閉じ、ピストン3が上死点に向かう移動によってシリンダ内の空気燃料混合物が圧縮させられる。ピストンがシリンダ2のある位置、通常は上死点の前の数度のクランク角度に到達するとき、空気燃料混合物はスパークプラグ8によって点火させられる。シリンダ2内の増加した圧力及び温度は、ピストン3が上死点から下死点に向かって移動する間において、クランク軸10に供給される機械的仕事に部分的に変換される。
図2及び
図3において参照番号18で示す構成要素は、エンジン1の圧縮を低減することによってエンジン1の始動を容易にするために使用される減圧弁18である。
【0045】
エンジン1は、空気入口9に供給される空気の量を制御するように構成されておりかつ層状掃気入口11に供給される空気の量を制御するように構成されている1つのスロットル13を備えるので、層状掃気入口11に供給される空気の量を制御するための別個のスロットル装置の必要性が回避される。その結果、運転中に低量の未燃炭化水素を発生させる条件を有しつつコスト効率の良い方法で製造及び組立されるのに適した条件及び特性を有する、エンジン1が提供される。
【0046】
また、層状掃気入口11に供給される空気の量を制御するための別個のスロットル装置の必要性が回避されるので、軽量化の条件を有するエンジン1が設けられる。さらに、層状掃気入口11に供給される空気の量を制御するために別個のスロットル装置の必要性が回避されるので、保守及び修理を簡素化するための条件を有するエンジン1が設けられる。
【0047】
図6は、
図1~
図3に示される実施形態に係る、マニホールド15の斜視図を示す。以下において、
図6と
図1~
図5を同時に参照する。マニホールド15は、シリンダ2に接続するための第1のフランジ20と、
図2及び
図3に示すスロットル13に接続するための第2のフランジ20’とを備えている。第1のフランジ20は、空気入口開口9’と、2つの層状掃気入口開口11’とを備える。空気入口開口9’は、エンジン1の空気入口9に面して接続するように配置されており、2つの層状掃気入口開口11’の各々は、エンジン1の層状掃気入口11に面して接続するように配置されている。図示の実施形態によれば、エンジン1は、2つの層状掃気入口11と、ピストン3のマントル表面21内の2つの凹部23と、2つの掃気チャネル19とを備える。これらの構造は、同一であるが、鏡像の設計としうる。簡潔性と明瞭性の理由から、2つの層状掃気入口11と、2つの凹部23の内の1つと、2つの掃気チャネル19の内の1つは、ここで言及される幾つかの場所にある。さらに、本開示のさらなる実施形態によれば、エンジン1は、1つの層状掃気入口11と、ピストン3のマントル表面21内の1つの凹部23と、1つの掃気チャネル19とを備えることができる。
【0048】
図示の実施形態によれば、マニホールド15は、例えばニトリルブタジエンゴム(NBR)などのゴム、又は、当該分野で公知の任意の他の適当な材料などの弾性材料内に設けられる。このように、低量の振動が、シリンダ2からスロットル13に伝達され、それによって、スロットル13に取り付けられ得る空気フィルタ装置にも伝達される。
【0049】
さらに、
図6に見られるように、マニホールド15は、空気入口9と層状掃気入口開口11’との間の分離壁17を備える。本明細書でさらに説明するように、分離壁17は、簡単かつ効率的な方法でスピットバックの発生を減少させる。スピットバックは、燃料及び/又は空気燃料混合物がクランクケース5から空気入口9を介して層状掃気入口11に移送される事象を記述する用語である。スピットバックは、通常、エンジン1のシリンダ2内でより高い燃料比率を引き起こし、これは、今度は、エンジン1の運転中に発生する未燃炭化水素の量を増加させうる。
【0050】
図7は、幾つかの実施形態に係るマニホールド15の断面を示す。以下において、
図7と
図1~
図6を同時に参照する。図示された実施形態によれば、マニホールド15を通る意図された空気の流れ方向dで測定された、分離壁17の長さL1は、マニホールド15を通る意図された空気の流れ方向dで測定された、マニホールド15の長さL2の約40%である。さらなる実施形態によれば、マニホールド15を通る意図された空気の流れ方向dで測定された、分離壁17の長さL1は、マニホールド15を通る意図された空気の流れ方向dで測定された、マニホールド15の長さL2の4%~60%の範囲、例えば10%~50%の範囲内としうる。さらに、本開示の幾つかの実施形態によれば、マニホールド15を通る意図された空気の流れ方向dにおいて測定された、分離壁17の長さL1は、マニホールド15を通る意図された空気の流れ方向dにおいて測定された、マニホールド15の長さL2の60%~100%の範囲内としうる。したがって、本開示の幾つかの実施形態によれば、分離壁17は、空気入口9及び層状掃気入口11からスロットル13まで完全に延在しうる。
【0051】
分離壁17の長さL1により、スピットバックの量を制御し、スピットバックが起こるであろうエンジン1の回転速度で制御するであろう。本明細書で参照されるマニホールド15は、分離壁17の異なる長さL1を有する異なる型で設けることができる。すなわち、本明細書で言及されるマニホールド15は、分離壁17の短い長さL1を有する型で設けることができ、これにより、クランクケース5から層状掃気入口11へより多くのスピットバックが提供され、これにより、エンジン1のより低い回転速度でより高い燃料比率が得られる。さらに、本明細書で言及されるマニホールド15は、分離壁17の長さL1がより長い型に設けることができ、これにより、クランクケース5から層状掃気入口11へのより少ないスピットバックが提供され、これにより、エンジン1のより低い回転速度でより希薄な空気燃料混合物が得られる。このように、エンジン1の応答及び特性は、シリンダ2の設計を変更することなく、エンジン1の異なる用途の間で変更することができる。このように、異なる応答及び特性を有する異なる用途のためのエンジン1をコスト効率の良い方法で提供することができる。
【0052】
本開示のさらなる実施形態によれば、エンジン1は、マニホールド15内ではないエンジン1の別の位置に配置された、空気入口9と層状掃気入口11との間の分離壁を備えることができる。
【0053】
図8は、本開示の幾つかの実施形態に係る吸気装置15’を概略的に示す。
図1~
図7を参照して説明した実施形態に係るエンジン1は、
図8に示す吸気装置15’を備えることができる。したがって、以下では、
図1~
図8を同時に参照する。吸気装置15’は、マニホールド15及びスロットル13を備える。
図8並びに
図2及び
図3に示される実施形態によれば、スロットル13はバタフライ弁要素13’を備える。
図8に示すように、バタフライ弁要素13’は、回動軸線axの回りに回動可能に配置されている。バタフライ弁要素13’は、スロットルアクチュエータに接続されており、スロットルアクチュエータの作動を介して閉鎖位置と開放位置との間で変位させることができる。
図8において、バタフライ弁要素13’は、部分的に開放した位置で示されている。
【0054】
バタフライ弁要素13’は、空気入口9に面する第1の部分31と、層状掃気入口11に面する第2の部分32とを備える。スロットル13は、バタフライ弁要素13’が閉鎖位置から開放位置に向かって開放方向Odに回動させられるとき、第1の部分31が空気入口9に向かう方向に移動させられ、バタフライ弁要素13’の第2の部分32が層状掃気入口11から離れる方向に移動させられるように配置されている。これにより、エンジン応答を改善するための条件を有しかつ運転中に低量の未燃炭化水素を発生させる、エンジン1が提供される。さらに、始動を容易にするための条件を有するエンジン1が設けられている。これは、バタフライ弁要素13’が少なくとも部分的に閉鎖された位置にあるとき、層状掃気入口11に向かうものよりも多くの空気が空気入口9に向かうためである。また、スロットル13の開度を変化させるとき、空気入口9に供給される空気と層状掃気入口11に供給される空気の割合が変化する、エンジン1が設けられている。さらなる実施形態によれば、スロットル13は、スロットルアクチュエータの作動時に直線運動で移動するように配置された弁要素などの、バタフライ弁要素13’とは別の種の弁要素を備えうる。また、当該実施形態によれば、スロットルが少なくとも部分的に閉鎖された位置にあるときに層状掃気入口11に向かうものよりも多くの空気が空気入口9に向かうように、かつ/又は、スロットル13の開度を変更するときに空気入口9に供給される空気と層状掃気入口11に供給される空気の比率が変更されるように、かつ/又は、スロットル13が半開位置にあるときに空気入口9への空気の流量が層状掃気入口11への空気の流量よりも高くなるように、スロットルは配置されうる。さらに、スロットル13から空気入口9及び層状掃気入口11までの距離、並びに、分離壁17の長さは、上述の効果を得るか又は強化するように適合されうる。
【0055】
図8に示す実施形態によれば、エンジン1は、スロットル13と層状掃気入口11との間に配置された弁25を備える。弁25は、層状掃気入口11への空気の流れを弁25が少なくとも部分的に遮断する状態に制御可能である。図示の実施形態によれば、弁25はソレノイド制御弁25である。さらに、
図8に示す実施形態によれば、エンジン1は、エンジン1の回転速度に基づいて弁25を制御するように構成された制御装置27を備える。これにより、エンジン1の応答が簡単かつ効率的に制御される、エンジン1が設けられる。
【0056】
制御装置27は、エンジン1の回転速度が第1閾値回転速度を上回るときに、層状掃気入口11への空気の流れを弁25が少なくとも部分的に遮断する状態に弁25を制御するように構成することができる。純粋に一例として、第1閾値回転速度は、10000毎分回転数~15000毎分回転数の範囲内、又は、14000毎分回転数~15000毎分回転数の範囲内とすることができる。このように、エンジン1の回転速度を簡単かつ環境に優しい方法で制限したエンジン1が設けられる。なぜなら、層状掃気入口11への空気の流れの少なくとも部分的な遮断により、シリンダ2内のより高い燃料比率をもたらし、シリンダ2内の燃焼温度を低下させ、エンジン1の出力を低下させるからである。従来、2ストークエンジンの回転速度は、通常、エンジンのスパークプラグの点火を中止することによって制限されていた。このようなエンジンの回転速度の制限により、かなりの量の未燃炭化水素を引き起こす。
【0057】
上述に代わるものとして又は加えて、制御装置27は、エンジン1の回転速度が第2閾値回転速度を下回るときに、層状掃気入口11への空気の流れを少なくとも部分的に弁25が遮断する状態に弁25を制御するように構成することができる。純粋に一例として、第2閾値回転速度は、20毎秒回転数~50毎秒回転数の範囲内、又は、25毎秒回転数~45毎秒回転数の範囲内としうる。このように、エンジン1の始動を容易にすることができるエンジン1の始動時により多くの燃料が得られる。
【0058】
図9は、幾つかの実施形態に係る手持ち式の
動力工具50を示す。手持ち式の
動力工具50は、
図1~
図8を参照して説明した実施形態に係るエンジン1を備えることができる。図示の実施形態によれば、手持ち式の
動力工具50はチェーンソーである。さらなる実施形態によれば、本明細書で言及される手持ち式の
動力工具50は、
動力カッター、ヘッジトリマー、リーフブロワー、マルチツールなどの別の種類の携帯用工具としうる。
【0059】
以上のことは、様々な実施例の例示的な実施形態であり、本発明は添付された請求の範囲によってのみ規定されることを理解されたい。添付された請求の範囲に規定されるように、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態を修正することができ、かつ、例示的な実施形態の異なる特徴を組み合わせて、本願明細書に記載された実施形態以外の実施形態を作成することができることを当業者は理解するであろう。
【0060】
本明細書で使用される「備える(comprising)」又は「備える(comprises)」という用語は、無制限の意味であり、1つ又は複数の記載された、特徴、要素、ステップ、構成要素又は機能を含むが、1つ又は複数の他の特徴、要素、ステップ、構成要素、機能又はそれらのグループの存在又は追加を除外するものではない。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
2ストロークエンジン(1)において、
前記2ストロークエンジン(1)は、
シリンダ(2)と、
前記シリンダ(2)内を往復運動するように配置されたピストン(3)と、
クランクケース(5)と、
前記クランクケース(5)に燃料を噴射するように構成された燃料噴射器(7)と、
前記クランクケース(5)に接続された空気入口(9)と、
前記シリンダ(2)に接続された層状掃気入口(11)であって、前記2ストロークエンジン(1)は、前記空気入口(9)及び前記層状掃気入口(11)に供給される空気の量を制御するように構成されたスロットル(13)を備える、層状掃気入口(11)とを備える、2ストロークエンジン(1)において、
前記スロットル(13)は、前記スロットル(13)が半開位置にあるときに、前記空気入口(9)への空気の流量が、前記層状掃気入口(11)への空気の流量よりも高くなるように配置される、ことを特徴とする2ストロークエンジン(1)である。
第2の態様は、
前記2ストロークエンジン(1)が、前記スロットル(13)と前記空気入口(9)と前記層状掃気入口(11)との間に配置されたマニホールド(15)を備える、第1の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第3の態様は、
前記2ストロークエンジン(1)が、前記空気入口(9)と前記層状掃気入口(11)との間の分離壁(17)を備える、第1の態様又は第2の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第4の態様は、
前記マニホールド(15)が前記分離壁(17)を備える、第2の態様又は第3の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第5の態様は、
前記マニホールド(15)を通る意図された空気の流れ方向(d)で測定された、前記分離壁(17)の長さ(L1)が、前記マニホールド(15)を通る前記意図された空気の流れ方向(d)で測定された前記マニホールド(15)の長さ(L2)の10%~50%の範囲内などの4%~60%の範囲内にある、第3の態様又は第4の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第6の態様は、
前記マニホールド(15)が弾性材料に設けられている、第2の態様、第3の態様又は第5の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第7の態様は、
前記ピストン(3)は、前記シリンダ(2)内の下死点と上死点の間を往復運動するように配置されており、前記2ストロークエンジン(1)は、前記ピストン(3)が下死点の領域にあるときに、前記クランクケース(5)から前記シリンダ(2)に空気燃料混合物を導くように構成された掃気チャネル(19)を備え、前記ピストン(3)は、前記ピストン(3)が上死点の領域にあるときに、前記層状掃気入口(11)と前記掃気チャネル(19)とを重ね合わせるように配置された開口(23)を有するマントル表面(21)を備える、第1の態様~第6の態様のいずれか1つにおける2ストロークエンジン(1)である。
第8の態様は、
前記2ストロークエンジン(1)は、前記スロットル(13)と前記層状掃気入口(11)との間に配置された弁(25)を備え、前記弁(25)は、前記弁(25)が前記層状掃気入口(11)への空気の流れを少なくとも部分的に遮断する状態に制御可能である、第1の態様~第7の態様のいずれか1つにおける2ストロークエンジン(1)である。
第9の態様は、
前記弁(25)がソレノイド制御弁(25)である、第8の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第10の態様は、
前記2ストロークエンジン(1)が、前記2ストロークエンジン(1)の回転速度に基づいて前記弁(25)を制御するように構成された制御装置(27)を備える、第8の態様又は第9の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第11の態様は、
前記スロットル(13)は、バタフライ弁要素(13’)を備える、第1の態様~第10の態様のいずれか1つにおける2ストロークエンジン(1)である。
第12の態様は、
前記バタフライ弁要素(13’)が、前記空気入口(9)に面する第1の部分(31)と、前記層状掃気入口(11)に面する第2の部分(32)とを備え、前記バタフライ弁要素(13’)が閉鎖位置から開放位置に向かって回転するとき、前記第1の部分(31)が前記空気入口(9)に向かう方向に移動し、前記バタフライ弁要素(13’)の前記第2の部分(32)が前記層状掃気入口(11)から離れる方向に移動するように、前記スロットル(13)が配置されている、第11の態様における2ストロークエンジン(1)である。
第13の態様は、
第1の態様~第12の態様のいずれか1つにおける2ストロークエンジン(1)を備える、手持ち式の動力工具(50)である。
第14の態様は、
手持ち式の動力工具(50)がチェーンソー又はパワーカッターである、第13の態様における手持ち式の動力工具(50)である。