(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】レーダー速度測定システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/58 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
G01S13/58
(21)【出願番号】P 2022078151
(22)【出願日】2022-05-11
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520303070
【氏名又は名称】為昇科科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳宏綸
(72)【発明者】
【氏名】胡毓旺
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522574(JP,A)
【文献】国際公開第2021/090611(WO,A1)
【文献】特開2008-111743(JP,A)
【文献】特表2019-522220(JP,A)
【文献】特表2016-524143(JP,A)
【文献】特表2015-517104(JP,A)
【文献】特開2023-24253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダー速度測定システムにおいて、
放射アンテナおよび受信アンテナを含み、前記放射アンテナは電磁波信号を放射し、前記電磁波信号は第一サブ信号および第二サブ信号から構成され、単一個の前記第一サブ信号と単一個の前記第二サブ信号を放射する時間を放射周期とし、前記放射周期は前記第一サブ信号の第一放射時間および前記第二サブ信号の第二放射時間から構成され、且つ前記第一放射時間は前記第二放射時間と同じではなく、前記受信アンテナはターゲットによって反射された前記電磁波信号のエコー信号を受信するレーダーモジュールと、
前記レーダーモジュールと電気接続し、相互にカップリングしたシーケンスユニット、変換ユニットおよび対比演算ユニットを含み、前記シーケンスユニットは前記エコー信号にもとづき複数個の第一サブ信号を偶数受信シーケンスとして構築し、複数個の第二サブ信号を奇数受信シーケンスとして構築し、前記変換ユニットは前記偶数受信シーケンスおよび前記奇数受信シーケンスに対して時間領域を周波数領域への変換を実施し、第一反射信号および第二反射信号をそれぞれ生成し、
前記第一反射信号および前記第二反射信号の周波数はすべて反射周波数となり、前記対比演算ユニットは対比モデルを含み、前記対比演算ユニットは前記対比モデルによって前記第一反射信号および前記第二反射信号のフェーズ差と対比し、リアル反射周波数を取得するシグナルプロセッサと、を含むことを特徴とする、
レーダー速度測定システム。
【請求項2】
前記電磁波信号は周波数変調連続波(FMCW)であることを特徴とする請求項1記載のレーダー速度測定システム。
【請求項3】
前記第一サブ信号および前記第二サブ信号は三角波であり、前記電磁波信号はのこぎり波として表示されることを特徴とする請求項2記載のレーダー速度測定システム。
【請求項4】
前記レーダー速度測定システムは、そのうち、前記偶数受信シーケンスと前記奇数受信シーケンスに対して時間領域から周波数領域への変換を実施し、前記偶数受信シーケンスと前記奇数受信シーケンスに対してフーリエ変換または高速フーリエ変換を実施することを特徴とする請求項1記載のレーダー速度測定システム。
【請求項5】
前記対比モデルは、(f+2kπ)*(t1/(t1+t2))であり、fは前記反射周波数を表し、その
周波数値は0~2πの間で、t1は前記第一放射時間を表し、t2は前記第二放射時間を表し、kは正整数であり、kの数値を調整して前記対比モデルの数値を前記フェーズ差と等しくした時、前記リアル反射周波数はf+2kπとなることを特徴とする請求項1記載のレーダー速度測定システム。
【請求項6】
前記対比演算ユニットは補間法を介して前記フェーズ差および前記対比モデルを対比することを特徴とする請求項1記載のレーダー速度測定システム。
【請求項7】
前記第一放射時間を前記放射周期で割った比率は0.2~0.8の間であることを特徴とする請求項1記載のレーダー速度測定システム。
【請求項8】
前記シグナルプロセッサは更に速度予測ユニットを有し、前記速度予測ユニットは前記リアル反射周波数にもとづき、前記レーダーモジュールに対する前記ターゲットのリアル速度を算出することを特徴とする請求項1記載のレーダー速度測定システム。
【請求項9】
前記レーダーモジュールは、更に付加放射アンテナを有し、前記付加放射アンテナは付加電磁波信号を放射し、前記付加電磁波信号の放射周期は前記電磁波信号と同じであり、且つ前記付加電磁波信号は第一付加サブ信号を含み、前記第一付加サブ信号は前記第一放射時間において前記第一サブ信号と同時に放射し、前記第一付加サブ信号は隣接する二個の放射周期において異なるフェーズを有することを特徴とする請求項1記載のレーダー速度測定システム。
【請求項10】
前記シーケンスユニットで構築された前記偶数受信シーケンスは、複数個の第一サブ信号および複数個の第一付加サブ信号から構成されることを特徴とする請求項9記載のレーダー速度測定システム。
【請求項11】
前記変換ユニットは、前記偶数受信シーケンスに対して時間領域から周波数領域へ変換した後、更に付加反射信号を取得し、前記付加反射信号の周波数は付加反射周波数であり、前記付加反射周波数は前記反射周波数に相異することを特徴とする請求項10記載のレーダー速度測定システム。
【請求項12】
レーダー速度測定方法において、以下のステップを含み、
ステップS1は、放射アンテナから電磁波信号を放射し、前記電磁波信号は第一サブ信号および第二サブ信号から構成され、単一個の前記第一サブ信号と単一個の前記第二サブ信号を放射する時間を放射周期とし、前記放射周期は前記第一サブ信号の第一放射時間および前記第二サブ信号の第二放射時間から構成され、且つ前記第一放射時間は前記第二放射時間と同じではなく、
ステップS2は、受信アンテナはターゲットによって反射された前記電磁波信号のエコー信号を受信し、シグナルプロセッサは前記エコー信号を処理して複数個の第一サブ信号から構成された偶数受信シーケンスおよび複数個の第二サブ信号から構成された奇数受信シーケンスを生成し、
ステップS3は、前記偶数受信シーケンスと前記奇数受信シーケンスに対して時間領域を周波数領域への変換をそれぞれ実施し、第一反射信号および第二反射信号をそれぞれ取得し、前記第一反射信号と前記第二反射信号の周波数はどちらも反射周波数であるが、前記第一反射信号および前記第二反射信号のフェーズは異なり、
ステップS4は、前記第一反射信号および前記第二反射信号の間のフェーズ差を取得し、更に対比モデルと対比してリアル反射周波数を取得し、並びに前記リアル反射周波数にもとづきリアル速度を算出することを特徴とする、
レーダー速度測定方法。
【請求項13】
前記前記電磁波信号は周波数変調連続波(FMCW)であることを特徴とする請求項12記載のレーダー速度測定方法。
【請求項14】
前記レーダー速度測定方法のステップS1において、前記第一サブ信号と前記第二サブ信号は三角波であり、前記電磁波信号はのこぎり波として表示されることを特徴とする請求項13記載のレーダー速度測定方法。
【請求項15】
前記レーダー速度測定方法のステップS3において、前記偶数受信シーケンスと前記奇数受信シーケンスに対して時間領域から周波数領域への変換を実施し、前記偶数受信シーケンスと前記奇数受信シーケンスに対してフーリエ変換または高速フーリエ変換を実施することを特徴とする請求項12記載のレーダー速度測定方法。
【請求項16】
前記レーダー速度測定方法のステップS4において、前記フェーズ差と
前記対比モデル(f+2kπ)*(t1/(t1+t2))を対比し、fは前記反射周波数を表し、その
周波数値は0~2πの間であり、t1は前記第一放射時間を表し、t2は前記第二放射時間を表し、kは正整数であり、前記対比モデルの数値が前記フェーズ差と等しくなるようにkの数値を調整した時、前記リアル反射周波数はf+2kπとなることを特徴とする請求項12記載のレーダー速度測定方法。
【請求項17】
前記レーダー速度測定方法のステップS4は、補間法を介して前記フェーズ差および前記対比モデルを対比することを特徴とする請求項16記載のレーダー速度測定方法。
【請求項18】
前記第一放射時間を前記放射周期で割った比率は0.2~0.8の間であることを特徴とする請求項12記載のレーダー速度測定方法。
【請求項19】
前記レーダー速度測定方法のステップS1は、更に付加放射アンテナを有し、前記付加放射アンテナは付加電磁波信号を放射し、前記付加電磁波信号の放射周期は前記電磁波信号と同じであり、且つ前記付加電磁波信号は第一付加サブ信号を含み、前記第一付加サブ信号は前記第一放射時間に前記第一サブ信号と同時に放射し、前記第一付加サブ信号は隣接する二個の放射周期において異なるフェーズを有することを特徴とする請求項12記載のレーダー速度測定方法。
【請求項20】
前記レーダー速度測定方法のステップS2において、前記偶数受信シーケンスは複数個の第一サブ信号および複数個の第一付加サブ信号から構成されることを特徴とする請求項19記載のレーダー速度測定方法。
【請求項21】
前記レーダー速度測定方法のステップS3は、前記偶数受信シーケンスに対して時間領域から周波数領域へ変換した後、更に付加反射信号を取得し、前記付加反射信号の周波数は付加反射周波数であり、前記付加反射周波数は前記反射周波数に相異することを特徴とする請求項20記載のレーダー速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダーシステムに関し、特にレーダー速度測定システムおよびその方法に係る。
【背景技術】
【0002】
レーダーシステムは、放射される波形にもとづき、一般にパルスレーダー(Pulsed Rader)および連続波レーダー(Continuous-wave Rader)に分けられる。そのうち、連続波レーダーはレーダーシステムの中で最も早く汎用化されたレーダーである。初期の連続波レーダーはレーダーエコーの有無によって検出範囲内に物体が有るか否かを判断し、その物体の方位を得るもので、上述の連続波レーダーは固定周波数の電磁波を発信するだけで、物体の存在有無を知ることができるが、その距離および相対速度は知ることができない。
【0003】
そのため、更に周波数変調連続波レーダー(FMCW Rader、 Frequency Modulated Continuous Waveform Radar)が生まれた。その周波数変調連続波レーダー(FMCW Rader)の応用の中で、車用レーダーはそのうちの主な応用であり、FMCW Raderは、周波数の変調方式を利用し、周波数が時間の経過とともに変化する電磁波を放射し、更に放射された電磁波とレーダーエコーの周波数の差から車体と物体の相対速度を割り出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、周波数変調連続波レーダーの受信アンテナの受信周波数はサンプリング周波数の範囲に制限があるため、仮に物体反射のレーダーエコーが周波数変調連続波レーダーアンテナのサンプリング周波数範囲よりも低いか、もしくは高いか、または重複周波数で作業する時、周波数帯の重複現象が発生し、そのターゲット速度の混乱をもたらし、ターゲットの真の速度が測れず、レーダー速度の曖昧さ(Velocity Ambiguity)の問題が起こる。
【0005】
レーダー速度の曖昧さの問題を解決するレーダー速度測定システムと方法を提供することを本発明の主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明はレーダーモジュールおよびシグナルプロセッサを含むレーダー速度測定システムを提供する。レーダーモジュールは、放射アンテナおよび受信アンテナを含み、放射アンテナは電磁波信号を放射し、電磁波信号は第一サブ信号および第二サブ信号から構成され、単一個の第一サブ信号と単一個の第二サブ信号を放射した時間を放射周期とする。放射周期は第一サブ信号の第一放射時間および第二サブ信号の第二放射時間から構成され、且つ第一放射時間は第二放射時間と同じではなく、受信アンテナはターゲットから反射された電磁波信号のエコー信号を受信する。シグナルプロセッサはレーダーモジュールに電気接続し、シグナルプロセッサは相互にカップリングしたシーケンスユニット、変換ユニットおよび対比演算ユニットを含み、シーケンスユニットはエコー信号にもとづき複数個の第一サブ信号を偶数受信シーケンスとして構築し、複数個の第二サブ信号を奇数受信シーケンスとして構築する。変換ユニットは偶数受信シーケンスおよび奇数受信シーケンスに対して時間領域から周波数領域への変換を実施し、第一反射信号および第二反射信号をそれぞれ生成し、対比演算ユニットは対比モデルを含み、対比演算ユニットは対比モデルを用いて第一反射信号および第二反射信号のフェーズ差と対比し、リアル反射周波数を取得する。
【0007】
本発明の別の実施例は、レーダー速度測定方法を提供し、それは以下のステップを含む。
ステップS1は、放射アンテナから電磁波信号を放射し、電磁波信号は第一サブ信号および第二サブ信号から構成され、単一個の第一サブ信号と単一個の第二サブ信号を放射した時間を放射周期とする。放射周期は第一サブ信号の第一放射時間および第二サブ信号の第二放射時間から構成され、且つ第一放射時間は第二放射時間と等しくない。
ステップS2は、受信アンテナがターゲットから反射された電磁波信号のエコー信号を受信し、シグナルプロセッサはエコー信号を処理し、複数個の第一サブ信号から構成された偶数受信シーケンス、および複数個の第二サブ信号から構成された奇数受信シーケンスを生成する。
ステップS3は、偶数受信シーケンスと奇数受信シーケンスに対して時間領域を周波数領域への変換をそれぞれ実施し、第一反射信号および第二反射信号をそれぞれ取得し、第一反射信号と第二反射信号の周波数はどちらも反射周波数であるが、第一反射信号および第二反射信号のフェーズは異なる。
ステップS4は、第一反射信号および第二反射信号の間のフェーズ差を取得し、並びに反射周波数と対比し、リアル反射周波数を取得し、リアル反射周波数にもとづきリアル速度を算出する。
【0008】
本発明の更に別の実施例はレーダー装置を提供する。それは放射アンテナおよび受信アンテナを含む。放射アンテナは電磁波信号を放射し、電磁波信号は第一サブ信号および第二サブ信号から構成され、単一個の第一サブ信号と単一個の第二サブ信号を放射する時間を放射周期とする。放射周期は第一サブ信号の第一放射時間および第二サブ信号の第二放射時間から構成され、且つ第一放射時間は第二放射時間と等しくない。そのうち、第一放射時間は放射周期で割った比率を0.2~0.8の間とする。受信アンテナはターゲットから反射された電磁波信号のエコー信号を受信する。
【0009】
以上に拠って、本発明レーダーモジュールは第一サブ信号および第二サブ信号から構成された電磁波信号を放射する。シグナルプロセッサはターゲットによって反射されたエコー信号は偶数受信シーケンスおよび奇数受信シーケンスを構築し、時間領域から周波数領域へ変換した後、第一反射信号および第二反射信号をそれぞれ取得し、その反射信号のフェーズ差を利用して計算しターゲット相對レーダーモジュールに相対するターゲットのリアル速度を取得し、レーダー速度の曖昧さを回避する効果を達成する。
【発明の効果】
【0010】
上述をまとめると、本発明は以下の効果を有する。
【0011】
一つは、本発明は、レーダーモジュール10を介し一個のフレーム(Frame)において第一サブ信号11aおよび第二サブ信号11bから構成された電磁波信号Eを放射し、シグナルプロセッサ20はターゲットによって反射されたエコー信号Rが偶数受信シーケンス21aおよび奇数受信シーケンス21bを構築し、変換ユニット22から変換した後、第一反射信号22aおよび第二反射信号22bをそれぞれ取得する。対比演算ユニット23はトップラー周波数で対比すると、実際の速度が重なって一つになり、レーダーモジュール10に相対するターゲットのリアル速度を取得し、レーダー速度の曖昧さを回避する効果を達成する。
【0012】
二つは、本発明は単一の放射アンテナ11から放射された単一電磁波信号Eがレーダー速度の曖昧さを有効に解決し、この他、一個のフレーム(Frame)からリアル速度を解析し、演算量を明らかに低減させ、解析時間も短くする。
【0013】
三つは、更に本発明がMIMOシステムを応用した時、レーダーモジュール10は電磁波信号Eと放射周期Tが同じ付加電磁波信号E’を放射する。付加電磁波信号E’の第一付加サブ信号13aは隣接する二個の放射周期Tにおいて異なるフェーズを有し、シグナルプロセッサ20はターゲット反射的エコー信号Rを処理すると、放射アンテナ11と付加放射アンテナ13を区別でき、出力周波数帯において分離され、信号の曖昧さを回避する効果、並びに単一個フレーム(Frame)でのリアル速度の解析を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】中国の剰余定理方法でレーダー速度の曖昧さを回避する指示図である。
【
図2】本発明のシステムアーキテクチャーブロック指示図である。
【
図4】本発明の実施例でレーダー速度の曖昧さを回避した指示図である。
【
図5】本発明の実施例でMIMOシステムを応用した電磁波信号と電磁波信号を付加した指示図である。
【
図6】本発明の実施例でMIMOシステムを応用した信号の曖昧さ回避の指示図である。
【
図7】本発明の方法フローのブロック指示図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(一実施形態)
本発明の上述の内容の中心的思想を説明するため、具体的実施例を挙げる。実施例における異なる物品は説明のための比例、サイズ、変形量で表している。拠って、実際の部材の比例とは異なることを先に述べておく。
【0016】
図1に示すのは、中国の剰余定理(Chinese Remainder Theorem、CRT)でレーダー速度の曖昧さを解決する方法の一つである。この方法は放射アンテナを介して二組の信号をそれぞれ放射し、第一信号の放射完了後、続いて第二信号を放射する。そのうち、第一信号は放射周期をt1とする複数個のサブ信号から構成され、第二信号は放射周期をt2とする複数個のサブ信号から構成される。そのうち、放射周期t1と放射周期t2は異なり、二組の信号の速度の解析可能範囲も異なる。
【0017】
上述の二組の放射信号がターゲットを経て反射した後、受信アンテナは二組の反射信号をそれぞれ受信し、上述の二組の反射信号に対して周波数領域分析を行い、第一信号から変換した周波数領域信号と第二信号から変換した別の周波数領域信号をそれぞれ取得する。
第一信号が解析できるトップラー周波数範囲はI1であり、解析した周波数はIaと表示されるが、トップラー周波数範囲の制限により、第一信号の実際上の周波数はおそらくIa+nI1であり、そのうち、nは0の整数より大きいか、もしくは同じである。
第二信号が解析できるトップラー周波数範囲はI2であり、解析した周波数はIbと表示されるが、第二信号の実際上の周波数はおそらくIb+mI2であり、そのうち、mは0の整数より大きいか、もしくは同じである。
周波数範囲I1と周波数範囲I2は、第一信号と第二信号の放射周期にそれぞれ対応し、二組の信号のチャープ信号(Chirp)の数値は同じである。そのため解析したトップラービン(Doppler bin)数も同じであるが、二組の放射信号の周期は同じではないため、解析できる周波数範囲I1と周波数範囲I2も同じではなく、拠って周波数領域分析処理を経た後の周波数Iaは周波数Ibと等しくない。
【0018】
また、この二組の信号の実際はすべて同一のターゲットの反射であるため、第一信号の実際の周波数は第二信号実際の周波数と同じでなければならない。つまり、周波数Ia+nI1は周波数Ib+mI2と同じで、アンテナに相対するターゲットの正確な速度を探し出すためには上述二組の信号ソリューションを介さなければならず、両者の公倍数の概念によって計算し実際のリアル周波数を取得する必要がある。
【0019】
例を上げると、仮に第一信号が解析できる周波数範囲I1が40で、解析した周波数Iaが20、第二信号が解析できる周波数範囲I2が30で、解析した周波数Ibが10の場合、前述のI1、I2、IaおよびIbを公式Ia+nI1=Ib+mI2に入れると、20+n40=10+m30が求められ、それはつまりnが2で且つmが3の時、第一信号と第二信号のリアル周波数はすべて100となり、リアル周波数を求めることに拠って、アンテナに対するターゲットの正確速度を得ることができる。
【0020】
しかしながら、この解析方法は二組の信号をマッチさせてリアル速度が求められるものであるため、環境が悪かったり、信号ノイズが安定しない場合、信号を取得できずペアリング計算できなくなる。この他、二組の信号の解析できるトップラー周波数範囲および解析した周波数にもとづき、その拡張した倍数に基づかなければならないため、何度もループペアリング計算しなければならない。そのため膨大な演算ソースを投入する必要があり、更に第一信号の放射が完了して初めて第二信号を放射できるため、多くの時間がかかってしまう。
【0021】
図2から
図7に示すとおり、本発明はレーダー速度の曖昧さが発生するのを回避するレーダー速度測定システム100を提供する。
図2は本発明のシステムアーキテクチャーブロック指示図で、本発明のレーダー速度測定システム100はレーダーモジュール10およびとその電気接続したシグナルプロセッサ20を含む。
【0022】
レーダーモジュール10は放射アンテナ11および受信アンテナ12を含む。放射アンテナ11は一個のフレーム(Frame)に電磁波信号Eを放射し、受信アンテナ12はターゲットから電磁波信号Eを反射したエコー信号Rを受信する。
図3に示すとおり、電磁波信号Eは第一サブ信号11aおよび第二サブ信号11bから構成され、単一個の第一サブ信号11aと単一個の第二サブ信号11bを放射した時間を放射周期Tとする。放射周期Tは第一サブ信号11aの第一放射時間t1および第二サブ信号11bの第二放射時間t2から構成され、且つ第一放射時間t1は第二放射時間t2と等しくない。
【0023】
本発明の実施例において、放射アンテナ11が放射する電磁波信号Eは周波数変調連続波(FMCW)であり、そのうち、第一サブ信号11aおよび第二サブ信号11bは三角波で電磁波信号Eをのこぎり波とする。
【0024】
シグナルプロセッサ20は、相互にカップリングされたシーケンスユニット21、変換ユニット22、対比演算ユニット23および速度予測ユニット24を含む。
【0025】
図4に示すとおり、シーケンスユニット21はエコー信号Rにもとづき、複数個の第一サブ信号11aを偶数受信シーケンス21a(シーケンス#0、#2….)として構築し、複数個の第二サブ信号11bを奇数受信シーケンス21b(シーケンス#1、#3….)として構築する。
【0026】
変換ユニット22は偶数受信シーケンス21aおよび奇数受信シーケンス21bに対して周波数帯分析を行い、時間領域を周波数領域への変換を実施し、二個の周波数帯において、第一反射信号22aおよび第二反射信号22bをそれぞれ生成する。そのうち、周波数帯の横軸Iは周波数を表し、I=2πとする。
ターゲットの速度が同じであるため、第一反射信号22aおよび第二反射信号22bの周波数はすべて反射周波数fとなる。しかし第一サブ信号11aおよび第二サブ信号11bは放射周期Tにおいて放射した時間が異なるため、周波数領域変換後の第一反射信号22aおよび第二反射信号22bのフェーズも異なる。
本実施例において、時間領域から周波数領域への変換は偶数受信シーケンス21aと奇数受信シーケンス21bに対してフーリエ変換または高速フーリエ変換を実施する。
【0027】
対比演算ユニット23は対比モデル23aを含み、対比演算ユニット23は先ず第一反射信号22aおよび第二反射信号22bの間のフェーズ差を取得し、対比演算ユニット23は補間法で対比モデル23aとのフェーズ差を対比して計算し、リアル反射周波数を得る。そのうち、フェーズ差と第一放射時間t1を放射周期Tで割った比率は正比例し、且つ放射周期Tが大きいほど、システムに必要なフェーズ精度が高くなるので、第一放射時間t1を放射周期Tで割った比率は0.2~0.8の間が良く、第一放射時間t1を放射周期Tで割った比率は0.4~0.6の間が最も良い。
【0028】
本実施例において、対比モデル23aは(f+2kπ)*(t1/(t1+t2))とすることができる。そのうち、fは反射周波数を表し、その数値は0~2πの間で、t1は第一放射時間を表し、t2は第二放射時間を表す。kは正整数であり、対比モデル23aの数値がフェーズ差に等しくなるようにkの数値を調整した時、リアル反射周波数Fはすなわちf+2kπとなる。
【0029】
速度予測ユニット24は対比演算ユニット23で取得したリアル反射周波数F数値にもとづき、レーダーモジュール10に相対するターゲットのリアル速度を算出でき、単一の放射アンテナ11は一個のフレーム(Frame)に放射した単一電磁波信号Eを介してレーダー速度の曖昧さを有効に解決できる。上述から分かるとおり、一個の放射周期Tについてリアル速度を出すことができ、従来の中国の剰余定理と比較して、その演算量が低くなり、解析時間も更に速くなる。
【0030】
アンテナシステムの周波数帯効率並びに通信の品質を有効に高めるため、一般にマルチ入力マルチ出力(Multi-input Multi-output、 MIMO)システムのような複数個のアンテナを運用する。本発明の別の実施例において、MIMOシステムを応用する状況の場合、変換ユニット22がエコー信号Rに変換した後、異なる放射アンテナ11の電磁波信号Eが周波数帯において、すべて反射周波数fになり、受信信号が出力周波数帯において重なり信号を分離するのが困難になることで、反射周波数fがどの放射アンテナ11から発信されたのか区別できなくなる信号の曖昧さの問題を回避するため、本発明では更に以下の方法を提出する。そのうち、本発明レーダーモジュール10は更に付加放射アンテナ13を有する。付加放射アンテナ13は付加電磁波信号E’を放射し、受信アンテナ12はターゲットから反射された電磁波信号Eと付加電磁波信号E’のエコー信号Rを受信する。
【0031】
更に、
図5に示すとおり、本実施例において、放射アンテナ11と付加放射アンテナ13は同一フレーム(Frame)において電磁波信号Eと付加電磁波信号E’をそれぞれ放射し、付加電磁波信号E’の放射周期Tは電磁波信号Eと同じである。付加電磁波信号E’は第一付加サブ信号13aを含み、且つ第一付加サブ信号13aは第一放射時間t1において、第一サブ信号11aと同時に放射する。第一付加サブ信号13aの隣接する二個の放射周期Tは異なるフェーズを有する。
本実施例において、第一付加サブ信号13aの隣接する二個の放射周期Tは逆相し、それはフェーズ変化が180度であるとも言える。言い換えると、シーケンスが#0の時、信号は11a+13aであり、シーケンスが#2の時、第一付加サブ信号13aはすでに変換し逆相信号であるため、仮に逆相信号がマイナス表示である場合、実際の信号は11a-13aとなる。続いてシーケンスが#4の時、信号は更に変更されて11a+13aとなり、以下これに類推される。
【0032】
続いて、MIMOシステムを応用した状況は、
図6に示すとおりである。信号が反射されると、シーケンスユニット21はそのエコー信号Rにもとづき、複数個の第一サブ信号11aと複数個の第一付加サブ信号13aを偶数受信シーケンス21aとして構築し、複数個の第二サブ信号11bを奇数受信シーケンス21bとして構築する。
【0033】
変換ユニット22は偶数受信シーケンス21aおよび奇数受信シーケンス21bに対して周波数帯分析を行い、時間領域から周波数領域への変換を実施し、第一個の周波数帯内で偶数受信シーケンス21aから変換した第一反射信号22aと付加反射信号22cをそれぞれ生成し、更に別の周波数帯内で奇数受信シーケンス21bから変換した第二反射信号22bを生成させる。
【0034】
そのうち、第一反射信号22aと第二反射信号22bの周波数は前述と同じで、すべて反射周波数fである。付加反射信号22cの周波数は付加反射周波数f’であり、それは第一付加サブ信号13aが隣接する二個の放射周期Tにおいてフェーズの変化を有するため、第一付加サブ信号13aの付加反射周波数f’は反射周波数fと異なり、出力周波数帯の中で分離される。これらに拠って、周波数帯内の周波数が異なる信号を観察することにより、放射アンテナ11と付加放射アンテナ13を区別でき、信号の曖昧さ状況の発生を回避でき、一個のフレーム(Frame)でリアル速度を解析できる。
【0035】
図7は本発明の方法フローのブロック指示図である。本発明は他にレーダー速度測定方法を提供し、それは以下のステップを含む。
【0036】
ステップS1として、レーダーモジュール10の放射アンテナ11の一個のフレーム(Frame)から電磁波信号Eを放射する。電磁波信号Eは第一サブ信号11aおよび第二サブ信号11bから構成され、単一個の第一サブ信号11aと単一個の第二サブ信号11bを放射する時間を放射周期Tとする。放射周期Tは第一サブ信号11aの第一放射時間t1および第二サブ信号11bの第二放射時間t2から構成され、且つ第一放射時間t1は第二放射時間t2と等しくない。そのうち、第一放射時間t1を放射周期Tで割った比率は0.2~0.8の間である。
【0037】
ステップS2として、レーダーモジュール10の受信アンテナ12を介してターゲットから反射した電磁波信号Eのエコー信号Rを受信し、シグナルプロセッサ20のシーケンスユニット21はエコー信号Rを処理して、複数個の第一サブ信号11aから構成された偶数受信シーケンス21a、および複数個の第二サブ信号11bから構成された奇数受信シーケンス21bを生成する。
【0038】
ステップS3として、変換ユニット22は偶数受信シーケンス21aと奇数受信シーケンス21bに対してそれぞれ時間領域から周波数領域への変換を実施し、二個の周波数帯において、第一反射信号22aおよび第二反射信号22bを取得する。第一反射信号22aと第二反射信号22bは同じターゲットを検出するため、第一反射信号22aと第二反射信号22bの周波数はどちらも反射周波数fとなるが、第一反射信号22aおよび第二反射信号22bのフェーズは異なる。
【0039】
ステップS4として、対比演算ユニット23は第一反射信号22aおよび第二反射信号22bの間のフェーズ差を取得し、反射周波数fと補間法により対比し、リアル反射周波数Fを取得する。
【0040】
本発明の実施例において、ステップS4は第一反射信号22aおよび第二反射信号22bの間のフェーズ差を対比演算ユニット23に保存されている対比モデル23aと補間法によって対比し、続いてレーダーモジュール10に対するターゲットのリアル速度は、速度予測ユニット24を介しリアル反射周波数Fを計算して取得する。
【0041】
本発明のMIMOを応用した状況において、ステップS1で、更に付加放射アンテナ13を加える。付加放射アンテナ13は付加電磁波信号E’を放射し、付加電磁波信号E’の放射周期Tは電磁波信号Eと同じであり、且つ付加電磁波信号E’は第一付加サブ信号13aを含む。第一付加サブ信号13aは第一放射時間t1と第一サブ信号11aに同時放射し、第一付加サブ信号13aの隣接する二個の放射周期Tは異なるフェーズを有する。
【0042】
続いて、MIMOを応用した状況において、ステップS2で、レーダーモジュール10の受信アンテナ12はターゲットによって反射した電磁波信号Eと付加電磁波信号E’のエコー信号Rを受信する。シグナルプロセッサ20のシーケンスユニット21がエコー信号Rを処理し、複数個の第一サブ信号11aおよび複数個の第一付加サブ信号13aから構成された偶数受信シーケンス21a、および複数個の第二サブ信号11bから構成された奇数受信シーケンス21bを生成する。
【0043】
続いてステップS3において、変換ユニット22は偶数受信シーケンス21aと奇数受信シーケンス21bに対して時間領域を周波数領域への変換をそれぞれ実施し、第一個周波数帯で偶数受信シーケンス21aから変換した第一反射信号22aと付加反射信号22cをそれぞれ生成し、および別の周波数帯で奇数受信シーケンス21bから変換した第二反射信号22bを生成する。
そのうち、付加反射信号22cの周波数は付加反射周波数f’であり、第一反射信号22aと第二反射信号22bの周波数はどちらも反射周波数fであり、付加反射周波数f’は反射周波数fと相異する。
【0044】
周波数帯内の周波数が異なる信号を観察することにより、放射アンテナ11と付加放射アンテナ13を区別でき、アンテナ信号の曖昧さ状況の発生を回避し、後続のステップS4へ進む。
【0045】
以上の実施例は本発明を説明するためだけのものであり、本発明の請求範囲を制限するものではない。本発明の精神に基づく種々の変更または変化はすべて本発明の請求範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0046】
100 レーダー速度測定システム
10 レーダーモジュール
11 放射アンテナ
11a 第一サブ信号
11b 第二サブ信号
12 受信アンテナ
13 付加放射アンテナ
13a 第一付加サブ信号
20 シグナルプロセッサ
21 シーケンスユニット
21a 偶数受信シーケンス
21b 奇数受信シーケンス
22 変換ユニット
22a 第一反射信号
22b 第二反射信号
22c 付加反射信号
23 対比演算ユニット
23a 対比モデル
24 速度予測ユニット
E 電磁波信号
E’ 付加電磁波信号
R エコー信号
t1 第一放射時間
t2 第二放射時間
T 放射周期
S1 ステップ
S2 ステップ
S3 ステップ
S4 ステップ