(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】無線充電装置およびそれを含む移動手段
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240524BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240524BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2022528934
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 KR2021001083
(87)【国際公開番号】W WO2021153985
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0009932
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、テキョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンハク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンファン
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061082(WO,A1)
【文献】特開2017-200334(JP,A)
【文献】特開2016-139694(JP,A)
【文献】特開2018-074053(JP,A)
【文献】特開2017-084865(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170073(WO,A1)
【文献】特開2014-176131(JP,A)
【文献】特開2009-200174(JP,A)
【文献】特開2012-204440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0050382(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0074128(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0019731(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 50/10
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ワイヤを含むコイルと、
前記コイル上に配置されるシールド部と、
前記コイルと前記シールド部との間に配置される磁性パッドとを含み、
前記磁性パッドが、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂内に分散された磁性粉末とを含み、
前記磁性パッドが、前記バインダー樹脂を5重量%~40重量%を含み、
前記磁性パッドが下記式(1)を満足する、無線充電装置:
5.0≧S
TOT/C
MAX≧2.5 (1)
前記式(1)において、
C
MAXは前記磁性パッドを水平方向に切断する際に導出可能な断面積の中で最大断面積であり、S
TOTは前記磁性パッドの全表面積である。
【請求項2】
前記磁性パッドが下記式(2)をさらに満足する、請求項1に記載の無線充電装置:
(S
top+S
bottom)/C
MAX≧2.2 (2)
前記式(2)において、
C
MAXは、前記磁性パッドを水平方向に切断する際に導出可能な断面積の中で最大断面積であり、S
topおよびS
bottomはそれぞれ前記磁性パッドの上面および下面の表面積である。
【請求項3】
前記磁性パッドを水平方向において一辺が1cmの正方形の単位領域に区分するとき、少なくとも1つの単位領域の一面の表面積が1.2cm
2以上である、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項4】
前記磁性パッドが少なくとも一面に複数の突起を備え、
前記複数の突起を備える一面の表面積が前記C
MAXの1.2倍以上である、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項5】
前記磁性パッドは、水平方向の大きさに比べて垂直方向の大きさが小さい形状を有する、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項6】
前記磁性パッドが、立体構造を有するように成形されたものである、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項7】
前記磁性パッドが、モールドにより成形されたものである、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項8】
無線充電装置を含む移動手段であって、
前記無線充電装置が、
導電性ワイヤを含むコイルと、
前記コイル上に配置されるシールド部と、
前記コイルと前記シールド部との間に配置される磁性パッドとを含み、
前記磁性パッドが、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂内に分散された磁性粉末とを含み、
前記磁性パッドが、前記バインダー樹脂を5重量%~40重量%を含み、
前記磁性パッドが下記式(1)を満足する、移動手段:
5.0≧S
TOT/C
MAX≧2.5 (1)
前記式(1)において、
C
MAXは前記磁性パッドを水平方向に切断する際に導出可能な断面積の中で最大断面積であり、S
TOTは前記磁性パッドの全表面積である。
【請求項9】
前記移動手段が電気自動車である、請求項8に記載の移動手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、無線充電装置およびそれを含む移動手段に関するものである。より具体的に、実現例は、放熱構造を適用して充電効率の向上した無線充電装置およびそれを含む電気自動車のような移動手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報通信分野は極めて速い速度で発展しており、電気、電子、通信、半導体などが総合的に組み合わされた多様な技術が持続的に開発される。また、電子機器のモバイル化傾向が増大するにつれ、通信分野においても無線通信および無線電力伝送技術に関する研究が盛んに行われている。特に、電子機器などに無線で電力を伝送する方案に関する研究が活発に進んでいる。
【0003】
前記無線電力伝送は、電力を供給する送信機と、電力供給を受ける受信機との間に物理的な接触なく誘導結合(inductive coupling)、容量結合(capacitive coupling)またはアンテナなどの電磁場共振構造を利用して、空間を介して電力を無線で伝送するものである。前記無線電力伝送は、大容量のバッテリーが求められる携帯用通信機器、電気自動車などに適しており、接点が露出されないため漏電などの危険がほとんどなく、有線方式の充電不良現象を防ぐことができる。
【0004】
一方、最近では電気自動車への関心が急増するにつれ、充電インフラ構築に対する関心が増大している。既に、家庭用充電器を利用した電気自動車充電をはじめ、バッテリー交換、急速充電装置、無線充電装置などと、多様な充電方式が登場しており、新しい充電事業ビジネスモデルも登場し始めている(特許文献1参照)。また、欧州では試験運行中の電気自動車と充電所が目立ち始め、日本では自動車メーカーと電力会社が主導して電気自動車および充電所を試験的に運営している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第2011-0042403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気自動車のような移動手段に用いられる従来の無線充電装置は、
図6を参照すると、無線充電の効率向上のためにコイル200'に隣接して磁性パッド300'が配置され、遮蔽のためのシールド部400'が磁性パッド300'と一定間隔で離隔して配置される。
【0007】
無線充電装置は、無線充電動作中にコイルの抵抗と磁性パッドの磁気損失によって熱を発生する。特に、無線充電装置内の磁性パッドは、電磁波エネルギー密度の高いコイルに近い部分で熱を発生し、発生した熱は磁性パッドの磁気特性を変化させ、送信パッドと受信パッドとの間のインピーダンス不整合を引き起こして充電効率が低下し、これによって再び発熱現象が高じると言う問題があった。しかし、このような無線充電装置は、主に電気自動車のような移動手段の下部に設置されるため、防塵および防水と衝撃吸収とのために密閉構造を採用するため、放熱構造を実現することが困難であった。
【0008】
そこで、本発明者らが研究した結果、無線充電装置に用いられる磁性パッドの表面積を調節することにより、放熱および充電効率を向上させ得ることを見出した。
【0009】
したがって、実現例の課題は、放熱および充電効率が改善された無線充電装置およびそれを含む移動手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実現例によると、導電性ワイヤを含むコイルと、前記コイル上に配置されるシールド部と、前記コイルと前記シールド部との間に配置される磁性パッドとを含み、前記磁性パッドが下記式(1)を満足する、無線充電装置が提供される。
STOT/CMAX≧2.5 (1)
前記式において、CMAXは前記磁性パッドを水平方向に切断する際に導出可能な断面積の中で最大断面積であり、STOTは前記磁性パッドの全表面積である。
【0011】
他の実現例によると、前記実現例による無線充電装置を含む移動手段が提供される。
【発明の効果】
【0012】
前記実現例によると、無線充電装置に用いられる磁性パッドの表面積を調節することにより、放熱および充電効率を向上させ得る。
【0013】
具体的な実現例によると、前記磁性パッドは、平面シート構造ではなく表面に立体構造を有するように成形され、一般的な形状の磁性パッドの表面積よりも大きい表面積を有することにより、熱を容易に放出し得る。
【0014】
したがって、前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を必要とする電気自動車のような移動手段に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
【
図2A】
図2Aは、一実現例による磁性パッドおよびその断面を示すものである。
【
図2B】
図2Bは、一実現例による磁性パッドおよびその断面を示すものである。
【
図3】
図3は、一実現例による磁性パッドおよびその単位領域を示すものである。
【
図4】
図4は、モードにより磁性パッドを成形する工程を示すものである。
【
図5A】
図5Aは、一実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
【
図5B】
図5Bは、一実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
【
図6】
図6は、従来の無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
【
図7】
図7は、無線充電装置を備える移動手段を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実現例の説明において、1つの構成要素が他の構成要素の上/下に形成されるものと記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上/下に直接、またはさらに他の構成要素を介して間接的に形成されるものの全てを含む。また、各構成要素の上/下に関する基準は、対象を観察する方向によって異なり得るものと理解すべきである。図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張または省略されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0017】
本明細書において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反する記載がない限り、その他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0018】
また、本明細書に記載された構成要素の特性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0019】
本明細書において単数表現は、特に説明がなければ文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈されるべきである。
【0020】
(無線充電装置)
図1は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
【0021】
図1を参照して、一実現例による無線充電装置10は、導電性ワイヤを含むコイル200と、前記コイル200上に配置されるシールド部400と、前記コイル200と前記シールド部400との間に配置される磁性パッド300とを含む。
【0022】
前記実現例による無線充電装置は、磁性パッドの表面積を調節することにより、放熱および充電効率を向上させ得る。
【0023】
具体的な実現例によると、前記磁性パッドは、平面シート構造ではなく表面に立体構造を有するように成形され、一般的な寸法規格の磁性パッドの表面積よりも大きい表面積を有することにより、熱を容易に放出し得る。
【0024】
したがって、前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を必要とする電気自動車のような移動手段に有用に使用され得る。
【0025】
以下、前記無線充電装置の各構成要素別に具体的に説明する。
【0026】
[コイル]
前記コイルは、導電性ワイヤを含む。
【0027】
前記導電性ワイヤは導電性物質を含む。例えば、前記導電性ワイヤは導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電性ワイヤは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。
【0028】
また、前記導電性ワイヤは絶縁性外皮を備え得る。例えば、前記絶縁性外皮は絶縁性高分子樹脂を含み得る。具体的に、前記絶縁性外皮は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、テフロン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などを含み得る。
【0029】
前記導電性ワイヤの直径は、例えば、1mm~10mmの範囲、1mm~5mmの範囲、または1mm~3mmの範囲であり得る。
【0030】
前記導電性ワイヤは、平面コイル状で巻き付けられたものである。具体的に、前記平面コイルは、平面螺旋コイル(planar spiral coil)を含み得る。この際、前記平面コイルの形状は、楕円形、多角形、または角の丸い多角形の形状であり得るが、特に限定されない。
【0031】
前記平面コイルの外径は、5cm~100cm、10cm~50cm、10cm~30cm、20cm~80cm、または50cm~100cmであり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、10cm~50cmの外径を有し得る。
【0032】
また、前記平面コイルの内径は、0.5cm~30cm、1cm~20cm、または2cm~15cmであり得る。
【0033】
前記平面コイルの巻回数は、5回~50回、10回~30回、5回~30回、15回~50回、または20回~50回であり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、前記導電性ワイヤを10回~30回巻いて形成されたものであり得る。
【0034】
また、前記平面コイル形状内において、前記導電性ワイヤ間の間隔は、0.1cm~1cm、0.1cm~0.5cm、または0.5cm~1cmであり得る。
【0035】
前記のような好ましい平面コイル寸法および仕様範囲内であるとき、電気自動車のような大容量電力伝送を必要とする分野に好適であり得る。
【0036】
[シールド部]
前記シールド部は、前記コイル上に配置される。
【0037】
前記シールド部は、電磁波遮蔽により外部に電磁波が漏れて発生し得る電磁干渉(EMI、electromagnetic interference)を抑制する。
【0038】
前記シールド部の素材は例えば金属であっても良く、これにより前記シールド部は金属板であり得るが、特に限定されない。
【0039】
具体的な一例として、前記シールド部の素材はアルミニウムであり、その他電磁波遮蔽能を有する金属または合金素材が使用され得る。
【0040】
前記シールド部の厚さは、0.2mm~10mm、0.5mm~5mm、または1mm~3mmであり得る。
【0041】
また、前記シールド部の面積は、200cm2以上、400cm2以上、または600cm2以上であり得る。
【0042】
[磁性パッド]
本明細書において磁性パッドと言うのは、パッド形状を有する磁性素材のことを意味し、パッドという用語から自然に連想されるように、全体的に平坦または平べったい形状を有する磁性素材のことを意味する。したがって、前記磁性パッドは、水平方向の大きさに比べて垂直方向の大きさが小さい形状を有し得る。このような観点から見ると、球や立方体のように等方性の形状を有したり、水平方向の大きさと垂直方向の大きさが類似したりする磁性素材は、本明細書で言及される磁性パッドの範疇には含まれない。また、前記磁性パッドは、少なくとも一面に屈曲や凹凸を有し得るが、全体として直方体のような多面体の形状を有し得る。
【0043】
前記磁性パッドは、前記コイルと前記シールド部との間に配置される。
【0044】
前記磁性パッドは、前記シールド部と一定間隔で離隔して配置され得る。例えば、前記磁性パッドと前記シールド部との離隔距離は、3mm以上、5mm以上、3mm~10mm、または4mm~7mmであり得る。
【0045】
また前記磁性パッドは、前記コイルと一定間隔で離隔して配置され得る。例えば、前記磁性パッドと前記コイルとの離隔距離は、0.2mm以上、0.5mm以上、0.2mm~3mm、または0.5mm~1.5mmであり得る。
【0046】
<磁性パッドの組成>
前記磁性パッドは、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂内に分散された磁性粉末とを含み得る。これにより、前記磁性パッドは、バインダー樹脂によって磁性粉末が互いに結合されることによって、広い面積において全体的に欠陥が少なく、衝撃による損傷が少なくなり得る。
【0047】
前記磁性粉末は、フェライト(Ni-Zn系、Mg-Zn系、Mn-Zn系フェライト等)のような酸化物系磁性粉末;パーマロイ(permalloy)、センダスト(sendust)、ナノ結晶質(nanocrystalline)磁性体のような金属系磁性粉末;またはこれらの混合粉末であり得る。より具体的に、前記磁性粉末は、Fe-Si-Al合金組成を有するセンダスト粒子であり得る。
【0048】
一例として、前記磁性粉末は下記化学式1の組成を有し得る。
[化1]
Fe1-a-b-cSiaXbYc
前記式において、XはAl、Cr、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせであり、YはMn、B、Co、Mo、またはこれらの組み合わせであり、0.01≦a≦0.2、0.01≦b≦0.1、および0≦c≦0.05である。
【0049】
前記磁性粉末の平均粒径は、3nm~1mm、1μm~300μm、1μm~50μm、または1μm~10μmの範囲であり得る。
【0050】
前記磁性パッドは、前記磁性粉末を50重量%以上、70重量%以上、または85重量%以上の量で含み得る。例えば、前記磁性パッドは、前記磁性粉末を50重量%~99重量%、70重量%~95重量%、70重量%~90重量%、75重量%~90重量%、75重量%~95重量%、80重量%~95重量%、または80重量%~90重量%の量で含み得る。
【0051】
前記バインダー樹脂は硬化性樹脂であり、具体的に光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂であり得る。または、前記バインダー樹脂は、高耐熱熱可塑性樹脂を含み得る。
【0052】
このように、硬化して接着性を示し得る樹脂として、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミド基などのような、熱による硬化が可能な官能基または部位を1つ以上含むか、または、エポキシド(epoxide)基、環状エーテル(cyclic ether)基、スルフィド(sulfide)基、アセタール(acetal)基、またはラクトン(lactone)基などのような、活性エネルギーによって硬化可能な官能基または部位を1つ以上含む樹脂を使用し得る。このような官能基または部位は、例えばイソシアネート基(-NCO)、ヒドロキシ基(-OH)、またはカルボキシル基(-COOH)であり得る。
【0053】
具体的に、前記硬化性樹脂は、前述のような官能基または部位を少なくとも1つ以上有するポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、またはエポキシ樹脂などが例示され得るが、これに限定されるものではない。
【0054】
一例として、前記バインダー樹脂は、ポリウレタン系樹脂、イソシアネート系硬化剤およびエポキシ系樹脂を含み得る。
【0055】
前記磁性パッドは、前記バインダー樹脂を5重量%~40重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、または7重量%~15重量%の量で含有し得る。
【0056】
また、前記磁性パッドはその重量を基準に、前記バインダー樹脂として、6重量%~12重量%のポリウレタン系樹脂、0.5重量%~2重量%のイソシアネート系硬化剤、および0.3重量%~1.5重量%のエポキシ系樹脂を含み得る。
【0057】
<磁性パッドの表面積>
前記実現例によると、前記磁性パッドは下記式(1)を満足する。
STOT/CMAX≧2.5 (1)
前記式において、CMAXは前記磁性パッドを水平方向に切断する際に導出可能な断面積の中で最大断面積であり、STOTは前記磁性パッドの理論的な全表面積である。
【0058】
前記磁性パッドが前記式(1)を満足するとき、無線充電中に磁性パッドで発生する熱がより効果的に放出され得る。
【0059】
具体的に、前記STOT/CMAXの値は、2.5以上、2.7以上、3.0以上、5.0以上、または10.0以上であり得る。一方、前記STOT/CMAX値の範囲の上限値は特に限定されないが、例えば、20.0以下、15.0以下、10.0以下、5.0以下、または3.0以下であり得る。
【0060】
前記式(1)において、C
MAXは、前記磁性パッドを水平方向に切断する際に導出可能な断面積の中で最大断面積であって、一例として、
図2Aおよび
図2Bに示すように、前記磁性パッド300を水平方向に多数切断して得られた複数の断面、すなわち、第1断面(c1-1、c2-1)、第2断面(c1-2、c2-2)、第3断面(c1-3、c2-3)等の面積(すなわち断面積)を導出した後、これらの中で最も大きい面積をもってC
MAXを決定し得る。すなわち、
図2AにおいてC
MAXは第2断面(c1-2)の面積であり、
図2BにおいてC
MAXは第3断面(c2-3)の面積である。この際、前記断面積の導出は、断面を構成する図形の角の長さまたは直径を用いて数学的に計算するか積分して理論的な値で導出することができ、または、測定装置によって実際に測定して導出し得る。また、前記磁性パッドを実際に切断しなくても、前記磁性パッドの形状から理論的な数学的計算によってC
MAXを導出することができ、そのような作業にはCAD(computer aided design)のような補助手段が利用され得る。
【0061】
なお、前記磁性パッドの水平方向とは、前記磁性パッドの面方向(X軸およびY軸)に平行な方向のことを意味し、言い換えると、前記磁性パッドの高さまたは厚さ方向(Z軸)に垂直する方向のことを意味する。
【0062】
前記式(1)において、STOTは、前記磁性パッドの全表面積であり、例えば、前記磁性パッドの立体形状を構成する角の長さ等を用いて計算された全ての面の表面積の合計から得られた理論的な全表面積であり得る。前記理論的な全表面積は、前記磁性パッドに存在する角の長さを測定し、前記角からなる立体形状の高さと直径等を考慮して、前記磁性パッドを構成する全ての面の表面積を計算した後、これらすべての合計から導出され得る。前記実現例による磁性パッドは、規則的または再現可能な形態を有するものと仮定するので、このような理論的な全表面積は苦も無く計算され、必要あればCADのような補助手段を用いて行われても良い。
【0063】
このように計算された前記磁性パッドの理論的な全表面積は、周知の表面積測定方法(BET法等)により得られた表面積とほぼ同一であり、一部差があっても前記実現例が追求する目的から外れるとは予想されない。例えば、前記磁性パッドの表面に不規則的または微細な屈曲および凹凸が存在することがあり、これにより前記磁性パッドの実際の全表面積は、理論的な全表面積より大きいこともあり得る。しかし、理論的な値を用いて式(1)に適用することによっても、前記実現例による無線充電装置が求める目的を十分に達成し得るので、必ずしも磁性パッドの表面に存在する不規則的または微細な屈曲および凹凸まで勘案する必要はない。
【0064】
前記実現例による無線充電装置に採用される磁性パッドは、一般的な寸法仕様の磁性パッドよりも大きい表面積を有することにより、熱を容易に放出し得る。
【0065】
前記磁性パッドは、一般的な平面シート構造ではなく立体構造を有し得る。例えば、前記磁性パッドは、表面に凹凸を有するように形成されたものであり得る。前記凹凸は、規則的なパターンで形成され得る。一例として、
図1および
図2Aに示すように、前記磁性パッド300の表面は、直方体形状の突起が規則的に配列された形状を有し得る。
【0066】
前記磁性パッドが、少なくとも一面に複数の突起を備える場合、前記複数の突起の表面積の和は、前記磁性パッドのCMAXに対して0.5倍以上であり得る。具体的に、前記複数の突起の表面積の和が、前記磁性パッドのCMAXよりも大きくても良い。より具体的に、前記複数の突起の表面積の和は、前記磁性パッドのCMAXに対して1.1倍以上、1.5倍以上、または2倍以上であり得る。また、前記複数の突起を備える一面の表面積(すなわち、前記面において、複数の突起の表面積の和と、その外の突起が形成されていない面積との総和)は、前記磁性パッドのCMAXに対して1.2倍以上であり得る。
【0067】
前記突起の高さは、0.1mm以上、0.5mm以上、または1mm以上であり得る。また、前記突起の高さは、10mm以下、5mm以下、または3mm以下であり得る。具体的に、前記突起の高さは、0.1mm~5mm、または0.5mm~3mmであり得る。また、前記突起の平面形状は、四角形を含む多面体形状または楕円を含む円形であり得る。このような多面体形状の一辺の長さまたは円形の直径は、0.1mm以上、0.5mm以上、または1mm以上であり、また、10mm以下、5mm以下または3mm以下であり得る。具体的に、0.1mm~5mmまたは0.5mm~3mmであり得る。
【0068】
この際、前記突起を含む磁性パッドの厚さは、1mm以上、2mm以上、3mm以上、または4mm以上であり得る。また、前記突起を含む磁性パッドの厚さは、20mm以下、10mm以下、または5mm以下であり得る。具体的に、前記突起を含む磁性パッドの厚さは、1mm~20mmまたは2mm~10mmであり得る。
【0069】
また、前記磁性パッドは、表面に屈曲を有し得る。前記屈曲は、緩やかな屈曲または急激な屈曲であり、多数の屈曲が形成されてもよい。
【0070】
また、前記磁性パッドは、下記式(2)をさらに満足し得る。
(Stop+Sbottom)/CMAX≧2.2 (2)
前記式において、CMAXは、前記磁性パッドを水平方向に切断する際に導出可能な断面積の中で最大断面積であり、StopおよびSbottomはそれぞれ前記磁性パッドの上面および下面の表面積である。
【0071】
前記磁性パッドが前記式(2)を満足するとき、無線充電中に磁性パッドで発生する熱がより効果的に放出され得る。
【0072】
具体的に、前記(Stop+Sbottom)/CMAXの値は、2.2以上、2.5以上、2.7以上、3.0以上、または5.0以上であり得る。一方、前記(Stop+Sbottom)/CMAX値の範囲の上限値は特に限定されないが、例えば15.0以下、10.0以下、5.0以下、または3.0以下であり得る。
【0073】
前記式(2)において、CMAXに関する説明は、前記式(1)においてCMAXについて説明したものと同一である。
【0074】
前記式(2)において、Stopは前記磁性パッドの上面の表面積である。なお、前記磁性パッドの上面とは、平べったい形状のパッドにおいて上の部分に存在する面のことを意味し、一例として、前記磁性パッドにおいて最大断面積を有する断面よりも上部に形成された面のことを意味し得る。同様に、前記式(2)において、Sbottomは前記磁性パッドの下面、すなわち磁性パッドにおいて下部に存在する面の表面積である。
【0075】
前記磁性パッドの上面および下面の表面積は、前述の式(1)でSTOTを導出する方式と同様、理論的計算または実際の測定によって導出され得る。また、前記磁性パッドは、前記で例示したように、少なくとも一面に複数の突起や屈曲を有することができ、この場合、前記磁性パッドの上面および下面の表面積は、これら複数の突起や屈曲の表面積まで含んで導出され得る。
【0076】
また、
図3に示すように、前記磁性パッド300を水平方向で格子状に分割して特定の寸法の単位領域に区分する際、前記磁性パッドの少なくとも1つの単位領域310の上面または下面の表面積が、一定の面積以上であり得る。例えば、単位領域310は、正方形の領域であって良く、その辺の長さ(m)の二乗で計算される面積に対して、前記単位領域の上面の表面(陰影部分)の面積(すなわち、上面の立体構造まで含む表面積)が1.2倍以上であり、具体的に1.2倍~5倍、または1.5倍~3倍であり得る。
【0077】
一例として、前記磁性パッドを水平方向にて1辺が1cmの正方形の単位領域に区分する際、これらのうち少なくとも1つの単位領域の一面(すなわち上面または下面)の表面積が1.2cm2以上であり得る。他の例として、前記磁性パッドを水平方向にて1辺が2cmの正方形の単位領域に区分する際、前記磁性パッドの少なくとも1つの単位領域の一面の表面積が2.4cm2以上または4.8cm2以上であり得る。また他の例として、前記磁性パッドを水平方向にて一辺が3cmの正方形の単位領域に区分する際、前記磁性パッドの少なくとも1つの単位領域の一面の表面積が3.6cm2以上、7.2cm2以上、または10.8cm2以上であり得る。
【0078】
このように、前記磁性パッドは、立体構造を有するように成形されたものであり得る。例えば、前記磁性パッドは、モールドにより成形されたものであり得る。具体的に、前記成形は、射出成形により磁性パッドの原料をモールドに注入して行われ得る。より具体的に、前記磁性パッドは、磁性粉末と高分子樹脂組成物とを混合して原料組成物を得た後、
図4に示すように、前記原料組成物301を射出成形機2によりモールド3に注入して製造され得る。この際、モールド3の内部形状を立体構造に設計して、磁性パッドの立体構造を容易に実現し得る。このような工程は、既存の焼結フェライトシートを磁性パッドとして用いる場合には不可能なことである。
【0079】
<磁性パッドの磁性特性>
前記磁性パッドは、電気自動車の無線充電標準周波数近傍において一定レベルの磁性特性を有し得る。
【0080】
前記電気自動車の無線充電標準周波数は100kHz未満であり、例えば79kHz~90kHz、具体的に81kHz~90kHz、より具体的に約85kHzであり得る。これは携帯電話のようなモバイル電子機器に適用する周波数とは区別される帯域である。
【0081】
前記磁性パッドの85kHzの周波数帯域において、透磁率は素材によって異なり、広くは5~150000であり、具体的な素材によって5~300、500~3500、または10000~150000であり得る。また、前記磁性パッドの85kHzの周波数帯域において、透磁損失は素材によって異り、広くは0~50000であり、具体的な素材によって0~1000、1~100、100~1000、または5000~50000であり得る。
【0082】
具体的な一例として、前記磁性パッドが磁性粉末およびバインダー樹脂を含む高分子型磁性ブロックの場合、85kHzの周波数帯域における透磁率は、5~130、15~80、または10~50であり、透磁損失は、0~20、0~15、または0~5であり得る。
【0083】
<磁性パッドの特性>
前記磁性パッドは一定の比で伸長され得る。例えば、前記磁性パッドの伸び率は0.5%以上であり得る。前記伸長特性は、高分子を適用しないセラミック系磁性パッドでは得られ難いものであり、大面積の磁性パッドが衝撃により歪み等が発生しても損傷を減らし得る。具体的に、前記磁性パッドの伸び率は、0.5%以上、1%以上、または2.5%以上であり得る。前記伸び率の上限には特に制限はないが、伸び率向上のために高分子樹脂の含有量が多くなると、磁性パッドのインダクタンス等の特性が低下し得るので、前記伸び率は10%以下とすることが好ましい。
【0084】
前記磁性パッドは衝撃前後の特性変化率が少なく、一般的なフェライト磁性シートに比べて格段に優れる。
【0085】
本明細書において、ある特性の衝撃前後の特性変化率(%)は、下記式により算出され得る。
特性変化率(%)=|衝撃前特性値-衝撃後特性値|/衝撃前特性値×100
【0086】
例えば、前記磁性パッドは、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後のインダクタンス変化率が5%未満、または3%以下であり得る。より具体的に、前記インダクタンス変化率は、0%~3%、0.001%~2%、または0.01%~1.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後のインダクタンス変化率が相対的に少ないので、磁性パッドの安定性がより向上され得る。
【0087】
また、前記磁性パッドは、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の品質係数(Qファクタ)変化率が、0~5%、0.001%~4%、または0.01%~2.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後の特性変化が少ないので、磁性パッドの安定性と耐衝撃性がより向上され得る。
【0088】
また、前記磁性パッドは、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の抵抗変化率が、0~2.8%、0.001%~1.8%、または0.1%~1.0%であり得る。前記範囲内であるとき、実際の衝撃と振動が加わる環境において繰り返し適用しても、抵抗値が一定レベル以下に良好に維持され得る。
【0089】
また、前記磁性パッドは、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の充電効率変化率が、0~6.8%、0.001%~5.8%、または0.01%~3.4%であり得る。前記範囲内であるとき、大面積の磁性パッドが衝撃や歪みが繰り返し発生しても、特性をより安定的に維持し得る。
【0090】
[ハウジング]
前記実現例による無線充電装置は、前述の構成要素を収容するハウジングをさらに含み得る。
【0091】
前記ハウジングは、前記コイル、シールド部、磁性パッドなどの構成要素が適切に配置され組み立てられ得るようにする。前記ハウジングの材質および構造は、無線充電装置に使用される通常のハウジングの材質および構造を採用することができ、その内部に含まれる構成要素に応じて適切に設計され得る。
【0092】
図5Aおよび
図5Bを参照して、一実現例による無線充電装置10は、ハウジング600と、前記ハウジング600内に配置され導電性ワイヤを含むコイル200と、前記コイル200上に配置されたシールド部400と、前記コイル200と前記シールド部400との間に配置された磁性パッド300とを含み、前記磁性パッド300が前記式(1)を満足する。
【0093】
[支持部]
前記無線充電装置10は、前記コイルを支持する支持部100をさらに含み得る。前記支持部の材質および構造は、無線充電装置に使用される通常の支持部の材質および構造を採用し得る。前記支持部は、平板構造またはコイルを固定できるように、コイル形状に沿って溝が掘られた構造を有し得る。
【0094】
[スペーサ]
また、前記実現例による無線充電装置は、前記シールド部と前記磁性パッドとの間の空間を確保するためのスペーサをさらに含み得る。前記スペーサの材質および構造は、無線充電装置に用いられる通常のスペーサの材質および構造を採用し得る。
【0095】
(移動手段)
図7は、無線充電装置が適用された移動手段、具体的に電気自動車を示すものであり、下部に無線充電装置を備え、電気自動車用無線充電システムが設けられた駐車区域において無線で充電され得る。
【0096】
図7を参照して、一実現例による移動手段1は、前記実現例による無線充電装置を受信機21として含む。前記無線充電装置は、移動手段1の無線充電の受信機21として機能し、無線充電システムの送信機22から電力供給を受け得る。
【0097】
具体的に、前記移動手段は無線充電装置を含み、前記無線充電装置が、導電性ワイヤを含むコイルと、前記コイル上に配置されるシールド部と、前記コイルと前記シールド部との間に配置される磁性パッドとを含み、前記磁性パッドが前述の式(1)を満足する。
【0098】
前記移動手段に含まれる無線充電装置の各構成要素の構成および特徴は、前述の通りである。
【0099】
前記移動手段は、前記無線充電装置から電力伝送を受けるバッテリーをさらに含み得る。前記無線充電装置は、無線で電力伝送を受けて前記バッテリーに伝達し、前記バッテリーは前記移動手段の駆動系に電力を供給し得る。前記バッテリーは、前記無線充電装置またはその他追加の有線充電装置から伝達される電力によって充電され得る。
【0100】
また、前記移動手段は、充電に関する情報を無線充電システムの送信機に伝達する信号伝送機をさらに含み得る。このような充電に関する情報は、充電速度のような充電効率、充電の程度などであり得る。
【符号の説明】
【0101】
1:移動手段
2:射出成形機
3:モールド
301:原料組成物
10:一実現例による無線充電装置
10':従来の無線充電装置
21:受信機
22:送信機
100、100':支持部
200、200':コイル
300、300':磁性パッド
310:単位領域
400、400':シールド部
600:ハウジング
c1-1、c2-1:第1断面
c1-2、c2-2:第2断面
c1-3、c2-3:第3断面
m:単位領域の辺の長さ