(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】協働的なバルブ作動運動間のハンドオフ制御によるエンジンバルブ作動
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
F01L13/00 301V
(21)【出願番号】P 2022549625
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 IB2021051446
(87)【国際公開番号】W WO2021165919
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュウォーラー、ジョン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】バルトラッキ、ジャスティン、ディー.
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0308055(US,A1)
【文献】特開平7-133708(JP,A)
【文献】特開2005-233031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0005796(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
F01L 1/16
F01L 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエンジンバルブを作動させるためのバルブ作動システムであって、前記バルブ作動システムが、
第1のバルブ作動運動源と、前記少なくとも1つのエンジンバルブとに動作可能に接続されている第1の運動伝達機構と、
第2のバルブ作動運動源に動作可能に接続されている第2の運動伝達機構と、
前記第1の運動伝達機構と、前記第2の運動伝達機構との間に配設されている、選択可能な連結機構と、を備え、
前記選択可能な連結機構が第1の状態で動作されるとき、前記第1のバルブ作動運動源によって提供される第1のバルブ作動運動が、前記第1の運動伝達機構を介して、前記少なくとも1つのエンジンバルブに伝達され、前記選択可能な連結機構が第2の状態で動作されるとき、前記第1の運動伝達機構を介して伝達される前記第1のバルブ作動運動に加えて、前記第2のバルブ作動運動源によって提供される第2のバルブ作動運動が、前記第2の運動伝達機構、前記連結機構、及び前記第1の運動伝達機構を介して、前記少なくとも1つのエンジンバルブに伝達され、
前記第1のバルブ作動運動
と前記第2のバルブ作動運動との間
、又は前記第2のバルブ作動運動と前記第1のバルブ作動運動との間のハンドオフの
際中に、前記第1のバルブ作動運動及び前記第2のバルブ作動運動のバルブ作動速度の差
が閾値を超過しない
ことにより、前記第1の運動伝達機構又は前記第2の運動伝達機構への過度の衝撃を回避する、バルブ作動システム。
【請求項2】
前記選択可能な連結機構が、選択的に伸長可能なアクチュエータを備え、前記アクチュエータが、前記第1の状態の間、退縮され、前記第2の状態の間、伸長される、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項3】
前記バルブ作動速度の差が、前記アクチュエータの前記第1の状態から前記第2の状態への移行中に前記閾値を超過しない、請求項2に記載のバルブ作動システム。
【請求項4】
前記第1のバルブ作動運動が、主イベントプロファイルを含む、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項5】
前記ハンドオフが、前記第1のバルブ作動運動の開放セグメント中に起こる、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項6】
前記第2のバルブ作動運動が、早期バルブ開放プロファイルを含む、請求項5に記載のバルブ作動システム。
【請求項7】
前記第2のバルブ作動運動が、前記第1のバルブ作動運動とのハンドオフを生じさせないバルブ作動運動を更に含む、請求項6に記載のバルブ作動システム。
【請求項8】
前記ハンドオフが、前記第1のバルブ作動運動の閉鎖セグメント中に起こる、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項9】
前記第2のバルブ作動運動が、後期バルブ閉鎖プロファイルを含む、請求項8に記載のバルブ作動システム。
【請求項10】
前記第2のバルブ作動運動が、前記第1のバルブ作動運動とのハンドオフを生じさせないバルブ作動運動を更に含む、請求項9に記載のバルブ作動システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのエンジンバルブが、吸気バルブを備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのエンジンバルブが、排気バルブを備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項13】
前記第1及び第2のバルブ作動運動源が、カムプロファイルである、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項14】
前記第2のバルブ作動カムプロファイルの開放又は閉鎖部分が、非ゼロ速度と、ゼロ加速度と、ジャークと、を有する、ドエル又は単一点を含む、請求項13に記載のバルブ作動システム。
【請求項15】
請求項1に記載のバルブ作動システムを備える、内燃機関。
【請求項16】
第1のバルブ作動運動源と、少なくとも1つのエンジンバルブとに動作可能に接続されている第1の運動伝達機構と、第2のバルブ作動運動源に動作可能に接続されている第2の運動伝達機構と、前記第1の運動伝達機構と、前記第2の運動伝達機構との間に配設された選択可能な連結機構と、を備える、内燃機関において、前記少なくとも1つのエンジンバルブを作動させるための方法であって、
前記選択可能な連結機構を、前記第1のバルブ作動運動源によって提供される第1のバルブ作動運動が、前記第1の運動伝達機構を介して前記少なくとも1つのエンジンバルブに伝達される第1の状態で動作させることと、
前記選択可能な連結機構を、前記第1の運動伝達機構を介して伝達される前記第1のバルブ作動運動に加えて、前記第2のバルブ作動運動源によって提供される第2のバルブ作動運動が、前記第2の運動伝達機構、前記連結機構、及び前記第1の運動伝達機構を介して、前記少なくとも1つのエンジンバルブに伝達される第2の状態で動作させることと、を含み、
前記第1のバルブ作動運動
と前記第2のバルブ作動運動との間
、又は前記第2のバルブ作動運動と前記第1のバルブ作動運動との間のハンドオフの
際中に、前記第1のバルブ作動運動及び前記第2のバルブ作動運動のバルブ作動速度の差
が閾値を超過しない
ことにより、前記第1の運動伝達機構又は前記第2の運動伝達機構への過度の衝撃を回避する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、内燃機関のバルブ作動システム、特に、協働的な主及び補助バルブ作動運動を有し、それらの間のハンドオフ制御を伴うバルブ作動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ作動システムは、当該技術分野で既知であり、ここでは、主運動伝達機構及び主バルブ作動運動源、並びに補助ロッカーアーム及び補助作動運動源が提供される。主バルブ作動運動は、選択可能な連結機構が無効にされたときに、エンジンバルブに伝送される。主バルブ作動運動と補助バルブ作動運動との組み合わせは、連結機構が有効にされたときに、エンジンバルブに伝送される。主バルブ作動運動は、従来の主イベントプロファイルを含み得る。補助バルブ作動運動は、圧縮解放エンジンブレーキ、ブレーキガス再循環、内部排気ガス再循環(IEGR)のための補助イベントを含み得るか、又は以下に限定されないが、後期吸気バルブ閉鎖(late intake valve closing)(LIVC)及び早期排気バルブ開放(EIVC)などの早期開放又は後期閉鎖を提供し得る。
【0003】
図1を参照すると、上で説明されるタイプのバルブ作動システム101の概略図が、示されている。バルブ作動システム101は、第1のバルブ作動運動源102に動作可能に接続され、第1のバルブ作動運動源102から第1のバルブ作動運動を受容するように構成されている第1の運動伝達機構104を備える。第1の運動伝達機構104はまた、(内燃機関100のシリンダ108に関連付けられている)1つ以上のエンジンバルブ106に動作可能に接続され、第1のバルブ作動運動を少なくとも1つのエンジンバルブ106に伝達するように構成されている。更に示されるように、バルブ作動システム101はまた、第2のバルブ作動運動源112に動作可能に接続され、第2のバルブ作動運動源112から第2のバルブ作動運動を受容するように構成されている第2の運動伝達機構110を備える。第2のバルブ作動運動が、第2の運動伝達機構110、選択可能な連結機構114、及び第1の運動伝達機構104を介して少なくとも1つのエンジンバルブ106に適用され得るように、制御システム116の制御下で、第1の運動伝達機構110の第1の運動伝達機構104への選択可能な連結を可能にする選択可能な連結機構114が提供される。
【0004】
当技術分野で既知のように、エンジンバルブ108は、吸気バルブ又は排気バルブを備え得、一実施形態では、別個のバルブ作動システム101が、単一のシリンダに関連付けられた異なるエンジンバルブタイプのために別個に、例えば、シリンダ108の吸気バルブのためにバルブ作動システム101のあるインスタンス、及びシリンダ108の排気バルブのためにバルブ作動システム101の別のインスタンスが、提供され得る。説明を簡単にするために、
図1には単一のシリンダ108が示されているが、内燃機関100は、そのようなシリンダを2つ以上備え得、典型的には備えるであろうことが理解される。更に、バルブ作動運動源102、112及び運動伝達機構104、110の実装は、当技術分野で既知であるように、変化し得る。例えば、第1及び第2の運動伝達機構104、110は、カムローラ又はタペットが装備されており、かつ対応するカムに動作可能に接続されている、タイプIII(センターピボット)ロッカーアームを備え得る。代替的に、運動源102、112が、1つ以上のオーバーヘッドカムによって提供される場合、第1及び第2の運動伝達機構104、110は、対応するオーバーヘッドカムに接触するカムローラが装備されている、タイプII(エンドピボット)フィンガーフォロワを備え得る。好ましくは、選択可能な連結機構114は、第2の運動伝達機構110に適用されるバルブ作動運動が、第1の運動伝達機構104に選択的に伝達されることを可能にするが、第1の運動伝達機構104に適用されるバルブ作動運動が、第2の運動伝達機構110に伝達されることは可能にしない、油圧作動式一方向結合機構を備え得る。なお更に、連結機構114が油圧制御される場合、連結機構114の動作状態を制御する制御システム114は、当技術分野で既知の1つ以上の高速ソレノイドと通信する、同様に当技術分野で既知の好適なエンジン制御ユニット(ECU)を備え得る。この場合、ECUは、ソレノイドバルブを制御して、連結機構に作動流体を提供するか、又は連結機構への作動流体の流れを制限し、それにより、連結機構の動作状態を制御し得る。
【0005】
そのようなシステムの例が、米国特許第7,392,772号に見出され、
図2は、‘772号特許に説明されているシステムを示す。
図2に示されるように、第1の/主ロッカーアーム200は、主バルブイベント、例えば、第1の/主バルブ作動運動源(カム)202から受容される主排気又は吸気バルブイベントを提供するために提供される。この実施形態では、連結機構114は、第1のロッカーアーム200内に統合され、すなわち、第1のロッカーアーム200はまた、油圧作動式アクチュエータ206の形態の連結機構を収容する横方向に延在するボス204を備える。システムは、第2の/補助バルブ作動運動源(カム)212からのバルブ作動運動を受容するように整列されている第2の/補助ロッカーアーム210を更に備える。第2のロッカーアーム210はまた、第1のロッカーアーム200から延在するボス204と整列される。ばね214は、第2のロッカーアーム200の運動付与端に配設されたボス204と、ラッシュ調整ねじ216との間にラッシュ又はクリアランス空間が提供されるように、第2のロッカーアーム210を第2のバルブ作動運動源212と接触させ、かつボス204から離れて付勢するように提供される。エンジンの通常の主イベントモードの動作の間、アクチュエータ206は、ボス204内に退縮され、それにより、第1及び第2のロッカーアーム200、210の間のラッシュを維持する。このようにして、第2のバルブ作動運動は、第2のロッカーアーム210から第1のロッカーアーム200に伝達されず、すなわち、第2のバルブ作動運動は「失われる」。一方、第2のバルブ作動運動を第1のバルブ作動運動に追加することが所望される場合、アクチュエータ206は、ボス204から伸長して、第2のロッカーアーム210がアクチュエータ206に接触し、それにより、第2のバルブ作動運動を第1のロッカーアーム200に伝達するように、ラッシュ空間を除くように油圧制御される。
【0006】
そのような動作の一例が、
図3に更に示されており、主排気イベント300は、主バルブ作動運動源202によって提供され、図示された第2の/補助バルブイベント310、330、340のうちの1つ以上は、補助バルブ作動運動源212によって提供される。上で説明されるように、正動力動作中、主排気イベント300のみが、第1のロッカーアーム200を介して、
図2の例では、単一のエンジンバルブ220に伝達される。アクチュエータ206が伸長されると、1つ以上の第2のバルブイベント310、330、340もまた、第1のロッカーアーム200を介してエンジンバルブ220に、すなわち主排気イベント300に加えて伝達される。
図3の先行技術の欠点は、エンジンバルブの作動が、主排気イベント300から補助バルブイベント340へハンドオフされる時点で(
図3に示されるように、約380度のクランク角度において)、主排気イベント300と、補助バルブイベント340との間の大きい速度ミスマッチに起因して、アクチュエータと、第1のロッカーアームとの間に衝撃があることである。
【0007】
図4は、
図1に示されるタイプのシステムの別の例を示す。特に、例示されたバルブ作動システムは、そのシステムが、第1の/主ロッカーアーム400と、第2の/補助ロッカーアーム402とを備える点で、実質的に‘772号特許の教示に従っている。
図4に示されるように、第1のロッカーアーム400は、その運動付与端で、バルブブリッジ420に接触する。更に、第1及び第2のロッカーアーム400、402は各々、それらの運動受容端に配設されているそれぞれのローラフォロワ(図示せず)を備え、これらのローラフォロワは、この場合、カムシャフト(図示せず)上のカムとして実装されるそれぞれの第1及び第2のバルブ作動運動源からバルブ作動運動を受容する。‘772特許からの上で説明される実施形態と同様に、第1及び第2のロッカーアーム400、402は、バルブ作動運動が、第2のロッカーアーム402から第1のロッカーアーム400に伝達されない退縮された位置か、又はバルブ作動運動が、第2のロッカーアーム402から第1のロッカーアーム400に伝達される伸長された位置に制御され得る、油圧作動式アクチュエータ406を有する。しかしながら、
図2に示される実施形態とは異なり、アクチュエータ406は、第1のロッカーアーム400内に収容されておらず、第2のロッカーアーム402の運動付与端に形成されたボス404内には収容されている。バルブ作動運動をアクチュエータ406から受容するために、第1のロッカーアーム400は、ボス404及びアクチュエータ406と整列する横方向延長部412を備える。
【0008】
図2及び
図4に示されるタイプの専用の第2の/補助ロッカー/第2の/補助運動源システムは、上で説明されるタイプのVVA運動を実装するために使用され得る。一般に、本明細書で使用される場合、そのようなVVA運動は、それらが本質的に主バルブ作動運動の修正であることを特徴とする。結果として、そのようなVVA運動は、第1及び第2のバルブ作動運動が互いに協働する様式で提供され得、すなわち、別個の運動源によって提供される別個の実質的に重複しないバルブイベントとは対照的に、別個の運動源によって提供されるバルブ作動運動が重なり合って、単一の所望のバルブイベントを提供する。別の言い方をすれば、別個のバルブ作動運動源は、第1のバルブ作動運動源がすでにエンジンバルブにリフトを提供しているか、又はその逆の場合のような時間において、第2のバルブ作動運動源によって提供されるバルブ作動運動が、エンジンバルブの作動の制御を引き継ぐことができる程度に、互いに協働するか、又は本明細書で使用されるようなハンドオフを提供する。このようにして、第2のバルブ作動運動源は、主バルブイベントにバルブ作動運動を追加して、主イベントから離散した別個のイベントを必要とすることなく、主バルブイベントのタイミング、リフト、又は持続時間を変更し得る。
【0009】
例えば、
図5は、主バルブ作動運動源が、主排気イベント500を提供し、補助運動源が、排気早期バルブ開放(EEVO)イベント502を提供する、起こり得る排気バルブイベントを示す。この場合、EEVOイベント502が主排気イベント500に追加される場合、主排気イベント500によって提供されるより高いリフトが、エンジンバルブの制御を引き継ぐであろう時間(示されるように、約150°のクランク角度)まで、バルブは、当初はEEVOイベント502によって開放され(示されるように、約0°のクランク角度から始まる)、その後エンジンバルブの制御は、主排気イベント500のメインローブに追従するであろう。しかしながら、配置に伴う問題は、主排気イベント500がEEVOイベント502を上回るハンドオフ点504で起こるであろう急激な移行である。この場合、第1の/主ロッカーアーム200、400は、EEVOイベント502の相対的に低速の部分から主排気イベント500の相対的に高速の部分に速やかに移行するときに、速度の突然の変化(本質的に高い衝撃)を経験するであろう。そのような衝撃は、バルブトレイン、特に、この場合、第1の/主ロッカーアーム200、400の摩耗、疲労、及び起こり得る故障を加速する可能性が高い。
【0010】
更に、
図3及び
図5は、比較的低リフトの第2の/補助バルブ作動運動310、330、340、502を示しているが、場合によっては、相対的に高リフトの第2の/補助バルブ作動運動源を組み込むことが望ましいことがある。しかしながら、所与のエンジンの物理的制約が、例えば、比較的より大きい第2の/補助カムを補助作動運動源として含めることを妨げる可能性がある。
【0011】
したがって、上記の欠点を伴わずに協働的なバルブ作動運動を実装するシステムは、当該技術分野の進歩を象徴するであろう。
【発明の概要】
【0012】
先行技術の解決策の上記の欠点は、少なくとも1つのエンジンバルブを作動させるためのバルブ作動システムの提供を通して対処され、バルブ作動システムは、第1のバルブ作動運動源と、少なくとも1つのエンジンバルブとに動作可能に接続されている第1の運動伝達機構と、第2のバルブ作動運動源に動作可能に接続されている第2の運動伝達機構と、第1の運動伝達機構と、第2の運動伝達機構との間に配設された選択可能な連結機構と、を備える。選択可能な連結機構は、第1のバルブ作動運動源によって提供される第1のバルブ作動運動が、第1の運動伝達機構を介して、少なくとも1つのエンジンバルブに伝達される第1の状態で動作可能であり、選択可能な連結機構が第2の状態で動作されるとき、第1の運動伝達機構を介して伝達される第1のバルブ作動運動に加えて、第2のバルブ作動運動源によって提供される第2のバルブ作動運動が、第2の運動伝達機構、連結機構、及び第1の運動伝達機構を介して、少なくとも1つのエンジンバルブに伝達される。第1のバルブ作動運動と、第2のバルブ作動運動との間のハンドオフの間、又はその逆の場合、第1のバルブ作動運動及び第2のバルブ作動運動のバルブ作動速度の差は、閾値を超過しない。
【0013】
一実施形態では、選択可能な連結機構は、選択的に伸長可能なアクチュエータを備え、アクチュエータは、第1の状態の間、退縮され、第2の状態の間、伸長される。この実施形態では、バルブ作動速度の差は、アクチュエータの第1の状態から第2の状態への移行中、閾値を超過しない。
【0014】
第1のバルブ作動運動は、主イベントプロファイルを含み得る。ハンドオフは、例えば、第2のバルブ作動運動が早期バルブ開放プロファイルを含む、第1のバルブ作動運動の開放セグメント中に起こり得るか、又はハンドオフは、例えば、第2のバルブ作動運動が後期バルブ閉鎖(late valve closing)プロファイルを含む、第1のバルブ作動運動の閉鎖セグメント中に起こり得る。第2のバルブ作動運動は、第1のバルブ作動運動、例えば、内部排気ガス再循環(IEGR)を提供するための補助イベントとのハンドオフを生じさせないバルブ作動運動を更に含み得る。
【0015】
少なくとも1つのエンジンバルブは、吸気バルブ又は排気バルブを備える。更に、一実施形態では、第1及び第2のバルブ作動運動源は、カムプロファイルである。本明細書において説明される実施形態は、内燃機関に組み込まれ得る。なお更に、対応する方法が説明されている。
【0016】
本開示において説明される特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。これらの特徴及び付随する利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することから明らかになるであろう。ここで、単なる例として、同様の参照番号が同様の要素を表す添付の図面を参照して、1つ以上の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示による技術を実装するために使用され得る、先行技術のバルブ作動システムの一般的例示である。
【
図2】本開示による技術を実装するために使用され得る、
図1のシステムによるバルブ作動システムの実装を示す。
【
図3】先行技術の主及び補助バルブのイベントの例を示す。
【
図4】本開示による技術を実装するために使用され得る、
図1のシステムによるバルブ作動システムの別の実装例を示す。
【
図5】第1の/主バルブ作動運動と、第2の/補助バルブ作動運動との組み合わせによって実施される可変バルブ作動イベントの先行技術の例を示す。
【
図6】後期吸気バルブ閉鎖を提供するように協働する、第1の/主バルブ作動運動及び第2の/補助バルブ作動運動の例を示す。
【
図7】後期吸気バルブ閉鎖を提供するように協働する、第1の/主バルブ作動運動及び第2の/補助バルブ作動運動の例を示す。
【
図8】本開示による、第1の/主バルブ作動運動源によって、及び後期吸気バルブ閉鎖を提供するように協働する第2の/補助バルブ作動運動源によって提供されるバルブリフト及びその微分係数の第1の例を示す。
【
図9】本開示による、協働的な第1の/主バルブ作動運動源及び第2の/補助バルブ作動運動源によって作動されるバルブトレイン構成要素間の、アクチュエータピストン伸長の関数としての衝撃速度を示す。
【
図10】本開示による、第1の/主バルブ作動運動源によって、及び後期吸気バルブ閉鎖を提供するように協働する第2の/補助バルブ作動運動源によって提供されるバルブリフト及びその微分係数の第2の例を示す。
【
図11】本開示による、バルブ作動システムの動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図6及び
図7は、後期吸気バルブ閉鎖を提供するように協働する、第1の/主バルブ作動運動及び第2の/補助バルブ作動運動の例を示す。
【0019】
図6は、本開示による、第1の/主バルブ作動運動及び第2の/補助バルブ作動運動の一部分の第1の例を示す。特に、
図6は、後期吸気バルブ閉鎖イベントを提供するように協働する、第1の/主作動運動源及び第2の/補助作動運動源によってそれぞれ提供される主吸気バルブリフト650及び後期吸気バルブ閉鎖リフト652を示す。この例では、主吸気バルブリフト650のより大きいローブと重なり合う後期吸気バルブ閉鎖リフト652の一部分は、主吸気バルブリフト650によって「隠されている」という範囲内で示されていない。
図1、
図2、及び
図4を参照して上で説明されるように、第2の/補助バルブ作動運動652が(例えば、アクチュエータ206、406の退縮によって)失われると、主吸気バルブリフト650のみがエンジンバルブに伝達されるであろう一方、補助バルブ作動運動652が(アクチュエータ206、406の伸長によって)主ロッカーアームに伝達されると、主吸気バルブリフト650及び後期吸気バルブ閉鎖リフト652の両方が、エンジンバルブに伝達されるであろう。後者の場合、主吸気バルブリフト650のみが、移行点又はハンドオフ654に到達するまで、エンジンバルブに適用される作動運動に寄与し、移行点又はハンドオフ654に到達する時点で、後期吸気バルブ閉鎖リフト652によって提供されるより高いリフトのみが、エンジンバルブに適用される作動運動に寄与するであろう。
【0020】
本開示によるリフト曲線650、652の特定の特徴は、ハンドオフ654におけるそれぞれの曲線の勾配(すなわち、その点で発生する相対速度を表す一次微分係数又はタンジェント)が、勾配/速度間の差が閾値最大値未満であるように選択されることである。例えば、
図6に示されるように、リフト曲線650、652のそれぞれの勾配は、ハンドオフ654において非常にほぼ同一であり、第1の/主バルブトレイン及び第2の/補助バルブトレイン内の構成要素(例えば、それぞれの第1の/主ロッカーアーム及び第2の/補助ロッカーアーム)の速度が、ハンドオフ654において非常にほぼ同一であることを意味する。その結果、主バルブトレイン及び補助バルブトレインの構成要素のそのが、ハンドオフ654に対応する時点で接触すると、そのような構成要素間の衝撃が、最小限に抑えられるであろう。
【0021】
しかしながら、当該技術分野で既知であるように、油圧作動式構成要素(例えば、アクチュエータ)を備えるバルブトレインは、そのような油圧作動式構成要素が完全に伸長される(又は退縮される)のにかかる時間のばらつきに左右される。更に、そのようなバルブトレイン内のコンプライアンスが、それぞれのバルブトレイン構成要素間の最適でない距離をもたらし得、これがひいては、協働的な第1の/主バルブリフトと、第2の/補助バルブリフトとの間のハンドオフが実際にいつ起こるかに影響を及ぼし得る。この例が、
図7に示されている。特に、
図7は、
図6の後期吸気バルブ閉鎖リフト652が(例えば、アクチュエータの遅い油圧充填又はバルブトレインのコンプライアンスにより)完全には実現されず、遅延した後期吸気バルブ閉鎖リフト652’をもたらす状況を示す。示されるように、結果として生じるハンドオフ654’は、
図6に示されるシナリオに対してより遅れて起こり、その結果、ハンドオフ654’におけるリフト曲線650、652’の速度/勾配の値の差が、より大きい。この差が十分に大きい、すなわち、最大閾値よりも大きい場合、望ましくないほど大きい衝撃が発生する可能性がある。更により極端であるが、それにもかかわらず可能なシナリオもまた、
図7に示されており、後期吸気バルブ閉鎖リフト652’’の更なる遅延が、速度/勾配の差が更により大きいハンドオフ654’’をもたらす。
【0022】
移行点のこの起こり得るばらつきに対処するために、それぞれの第1の/主バルブリフト及び第2の/補助バルブリフトを、理想的なハンドオフの領域内のそれらのそれぞれの速度/勾配の差が、選択された最大閾値以下であるように、設計することが望ましい。この第1の例が、後期吸気バルブ閉鎖イベントの文脈で再び、
図8に示されている。特に、主吸気バルブリフト802が、後期吸気バルブ閉鎖リフト804及び理想的なハンドオフ810と共に示されている。バルブリフトグラフの下に、それぞれのリフト802、804の一次微分係数806、808(すなわち、速度)を示す更なるグラフが示されている。リフト曲線のより高次の微分係数(加速度及びジャーク)を示す追加の角度で整列されたグラフも示されていることに留意されたい。ハンドオフ810における(図示された例では、約510°のクランク角度における)垂直破線によって示されるように、移行点810における速度の差812は、所望の閾値未満であり、それにより、移行点810で過剰な衝撃が生じないことを確実にする。
【0023】
図7に関連して上で説明されるアクチュエータ伸長及び/又はバルブトレインコンプライアンスの起こり得る遅延に対応するために、後期吸気バルブ閉鎖リフト804の速度808は、例えば、約490°~約550°の大きい範囲のクランク角度にわたって、主イベントリフト802の速度806に対して、実質的に一定の差に維持されていることに留意されたい。このようにして、相対的に広い領域のアクチュエータ展開位置にわたって、過剰な衝撃速度が、回避され得る。特に、これは、閉鎖速度が、ピーク閉鎖速度の近くでは、クランク角度によって相対的にほとんど変化しないので、主吸気バルブ閉鎖リフト曲線及び後期吸気バルブ閉鎖リフト曲線802、804の両方のピーク閉鎖速度に近い移行点810を選択することによって達成される。可変アクチュエータ伸長にかかわらないこの衝撃速度の最小化が、アクチュエータピストン及び接触パッドの衝撃速度の計算値を、アクチュエータピストンの部分的伸長から生じるアクチュエータピストンと、接触パッドとの間のラッシュの関数として示す
図9に示されている。示されるように、
図9の横座標は、バルブ作動運動ハンドオフ時にアクチュエータピストンと、接触パッドとの間に残るラッシュの量を示し、
図9の縦座標は、ハンドオフ時に発生する、結果として生じる衝撃速度を示す。この例では、LIVCモードにおける定常状態条件下では、アクチュエータピストン-接触パッドラッシュは、±0.1mmであり、運動学的衝撃速度は、0.57~0.70m/秒であり、すなわち、第1の/主ロッカーアーム及び第2の/補助ロッカーアームは、通常のLIVCモード動作中この範囲の運動学的衝撃速度に対応するように設計される。更にこの例、第2の/補助ロッカーアームは、2.4mmより大きいアクチュエータピストン-接触パッドラッシュに対しては、第1の/主ロッカーアームと相互作用しない。この場合、それゆえ、主イベントリフト802及び後期吸気バルブ閉鎖リフト804の設計が、この特定の例では許容可能と思われる0.88m/秒以下の、部分的アクチュエータ伸長から生じる最悪ケースの運動学的衝撃速度をもたらす。バルブ作動運動速度の許容可能最大差を指定するために使用される特定の閾値は、典型的には、様々なシステム特異的要因に依存し、その選択は、必然的に設計上の選択の問題であることに留意されたい。したがって、例えば、
図9を提供するために使用される計算を生じさせるシステムの特定のパラメータは、最悪ケースの運動学的衝撃速度が、定常状態のLIVC動作中の最大衝撃速度の1.5倍、すなわち1.5
*0.70m/s≒1.0m/秒未満である閾値を受け入れることが可能であり得る。この場合、それゆえ、0.88m/sの最悪ケースの運動学的衝撃速度は、選択された閾値を十分に下回る。
【0024】
更に、高い衝撃速度の発生数は、ハンドオフにおける定常状態の速度デルタと比較して、作動の小さいパーセンテージ、例えば、約2%で発生する過渡的なターンオン/オフ状態に限定されるであろうことを、経験が示している。したがって、0ラッシュ位置における速度デルタを最適化することが望ましい。しかしながら、バルブ作動システムは、より大きいラッシュ値において結果として生じる最悪ケースの運動学的衝撃速度が低減され得るように、0ラッシュでの速度デルタが増大され得るように設計され得ることが理解される。
【0025】
図10は、主吸気リフトよりも30°~60°クランク角度分遅い、一連のLIVC閉鎖クランク角度を提供し、かつ後期又は早期バルブ閉鎖のための第2の/補助カム設計方法を示す、一群の第2の/補助カムプロファイルの閉鎖部分を示す、
図8と実質的に同様の一連のグラフを示す。
図10では、より遅いLIVC閉鎖角度のための第2の/補助カムプロファイル、具体的には50°(1002)及び60°(1000)のプロファイルは、「バックポーチ」ドエルの長さを変化させて、目標の閉鎖角度を達成することによって実装される。単一点までの「バックポーチ」ドエルを低減すること、及びその点におけるドエルを小さな閉鎖速度で置き換えることによって実施された、より早期のLIVC閉鎖角度のための第2の/補助カムプロファイル、具体的には30°(1006)及び40°(1004)プロファイル、すなわち、この単一点では、非ゼロ速度と、ゼロ加速度と、ジャークとが存在し、この速度を変化させて、目標の閉鎖角度を達成する。この方法は、これらの第2の/補助カムプロファイルが、530°のクランク角度より前では実質的に同一であり、第1の/主カムプロファイルとのハンドオフが510°のクランク角度で起こるため、実質的に同じハンドオフ相対速度を提供する。この方法はまた、
図10に示されるように、実質的に同じバックポーチドエル開始時の加速度、バックポーチドエル終了時の減速度、及びバルブシーティングランプ(valve seating ramp)を提供する。このようにして、そのようなプロファイルは、ほぼ同じ負荷及び補助ロッカーバイアスばねの要件を有すると予想されるであろう。
【0026】
図11は、本開示による、バルブ作動システムの動作のフローチャートを示す。本好ましい実施形態では、処理は、
図11に示し、
図1の制御システム116、又はシステム設計に依存するその等価物によって実行される。したがって、ブロック1102を参照すると、バルブ作動システムは、第1のバルブ作動運動源によって提供される第1のバルブ作動運動が、第1の運動伝達機構を介して少なくとも1つのエンジンバルブに伝達される第1の状態で、連結機構が動作されるように、あるモード(例えば、通常の正動力生成)で動作される。例えば、連結機構が、伸長可能なアクチュエータによって具体化される場合、第1の状態は、第2の運動伝達機構に適用された運動が第1の運動伝達機構に伝達されないように、アクチュエータピストンが退縮していることに対応する。この状態で動作している間、第2の/補助バルブ作動運動が必要とされるようにバルブ作動システムを動作させる必要があるかどうかの判定が、ブロック1104でなされる。そのような判定は、例えば、ユーザが、そのような動作を要求する入力を(アクセラレータ位置、好適なスイッチ、ボタンなどを介して)制御システム116に提供する場合、肯定要求に基づいて、又はそのような動作が有益であろう場合、エンジン動作条件に基づいて(オイル温度、エンジン速度、車両速度などの、制御システムへの好適なセンサ入力を介して)なされ得る。ブロック1104において、第2の/補助バルブ作動運動が必要とされないと判定される場合、処理は、ブロック1102に続く。
【0027】
一方、ブロック1104において、第2の/補助バルブ作動運動が必要とされると判定される場合、処理は、ブロック1106に続き、バルブ作動システムは、第1の運動伝達機構を介して伝達される第1のバルブ作動運動に加えて、第2のバルブ作動運動源によって提供される第2のバルブ作動運動が、第2の運動伝達機構、連結機構、及び第1の運動伝達機構を介して、少なくとも1つのエンジンバルブに伝達され、そのような第1及び第2の作動運動が、ハンドオフの点におけるそれらのそれぞれの速度の差が閾値未満であるように構成される第2のモードで連結機構が動作されるように、あるモード(例えば、EEVO、LIVCなど)で動作される。例えば、前と同じように、連結機構が、伸長可能なアクチュエータによって具体化される場合、第2の状態は、第2の運動伝達機構に適用された運動が、第1の運動伝達機構に伝達されるように、アクチュエータピストンが伸長されていることに対応する。この状態で動作している間、ブロック1108において、第1の/主バルブ作動運動のみが必要とされるようにバルブ作動システムを動作させる必要があるかどうかの判定がなされる。前と同じように、そのような判定は、肯定要求に基づいてか、又は上で説明されるような好適なエンジン動作条件を識別することに基づいてなされ得る。ブロック1108において、第1の/主バルブ作動運動が必要とされないと判定される場合、処理は、ブロック1106に続く。さもなければ、ブロック1108において、第1の/主バルブ作動運動が必要とされると判定される場合、処理は、前と同様にブロック1102に続く。
【0028】
特定の好ましい実施形態が図示及び説明されてきたが、当業者は、本教示から逸脱することなく、変更及び修正が行われ得ることを理解するであろう。例えば、本明細書において説明される第2の/補助バルブ作動運動の実施形態及び実装例は、第1の/主バルブ作動運動と、第2の/補助バルブ作動運動との間でハンドオフが達成される特定のバルブ作動に基づいている。しかしながら、これらの第2の/補助バルブ作動運動は、この点で限定される必要はなく、非ゼロリフトハンドオフの点をもたらさない他のバルブ作動運動を含み得る。例えば、
図6を参照すると、第2の/補助バルブリフトは、主イベント650とのハンドオフをもたらす後期吸気バルブ閉鎖イベント652に加えて、主イベントとの任意のハンドオフをもたらさないであろう(主イベント650及び第2の/補助バルブリフト310の両方がゼロリフト値にある期間を超える)他の第2の/補助バルブリフト310のうちの1つを含み得る。したがって、上で説明される教示のありとあらゆる修正、変形、又は同等物は、上記に開示され、本明細書で特許請求される基本的な根本原理の範囲内にあると考えられる。