(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光学物品、眼鏡及びフォトクロミック化合物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/23 20060101AFI20240524BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G02B5/23
G02C7/10
(21)【出願番号】P 2022555514
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036860
(87)【国際公開番号】W WO2022075330
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-14
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】川上 宏典
(72)【発明者】
【氏名】松江 葵
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0185268(US,A1)
【文献】米国特許第5891368(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/23
G02C 7/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表される化合物及び下記一般式2で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のフォトクロミック化合物を含む光学物品。
【化1】
【化2】
(一般式1中、R
1~R
8、B
1及びB
2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B
1及びB
2の少なくとも一方は下記一般式3で表される1価の基を表し、
一般式2中、R
9~R
16、B
3及びB
4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B
3及びB
4の少なくとも一方は下記一般式3で表される1価の基を表し、
【化3】
一般式3中、Ar
1はアリール基又はヘテロアリール基を表し、R
18は水素原子又は置換基を表し、Ar
1とR
18とが単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよく、*は隣り合う炭素原子との結合位置を表す。)
【請求項2】
一般式1で表される化合物の1種以上を少なくとも含み、
一般式1中、B
1及びB
2の一方は一般式3で表される1価の基であり且つ他方は下記一般式4で表される1価の基である、請求項1に記載の光学物品。
【化4】
(一般式4中、R
19~R
23は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【請求項3】
一般式1で表される化合物の1種以上を少なくとも含み、
一般式1中、一般式3で表される1価の基においてAr
1はアリール基を表す、請求項1又は2に記載の光学物品。
【請求項4】
一般式1で表される化合物の1種以上を少なくとも含み、
一般式1中、一般式3で表される1価の基においてR
18はアリール基を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項5】
一般式2で表される化合物の1種以上を少なくとも含み、
一般式2中、B
3及びB
4の一方は一般式3で表される1価の基であり且つ他方は下記一般式4で表される1価の基である、請求項1に記載の光学物品。
【化5】
(一般式4中、R
19~R
23は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【請求項6】
一般式2で表される化合物の1種以上を少なくとも含み、
一般式2中、一般式3で表される1価の基においてAr
1はアリール基を表す、請求項1又は5に記載の光学物品。
【請求項7】
一般式2で表される化合物の1種以上を少なくとも含み、
一般式2中、一般式3で表される1価の基においてR
18はアリール基を表す、請求項1、5又は6に記載の光学物品。
【請求項8】
基材と、前記フォトクロミック化合物を含むフォトクロミック層と、を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項9】
眼鏡レンズである、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項10】
ゴーグル用レンズである、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項11】
サンバイザーのバイザー部分である、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項12】
ヘルメットのシールド部材である、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学物品。
【請求項13】
請求項9に記載の眼鏡レンズを備えた眼鏡。
【請求項14】
下記一般式1で表されるフォトクロミック化合物。
【化6】
(一般式1中、R
1~R
8、B
1及びB
2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B
1及びB
2の少なくとも一方は下記一般式3で表される1価の基を表し、
【化7】
一般式3中、Ar
1はアリール基又はヘテロアリール基を表し、R
18は水素原子又は置換基を表し、Ar
1とR
18とが単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよく、*は隣り合う炭素原子との結合位置を表す。)
【請求項15】
一般式1中、B
1及びB
2の一方は一般式3で表される1価の基であり且つ他方は下記一般式4で表される1価の基である、請求項14に記載のフォトクロミック化合物。
【化8】
(一般式4中、R
19~R
23は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【請求項16】
一般式1中、一般式3で表される1価の基においてAr
1はアリール基を表す、請求項14又は15に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項17】
一般式1中、一般式3で表される1価の基においてR
18はアリール基を表す、請求項14~16のいずれか1項に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項18】
下記一般式2で表されるフォトクロミック化合物。
【化9】
(一般式2中、R
9~R
16、B
3及びB
4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B
3及びB
4の少なくとも一方は下記一般式3で表される1価の基を表し、
【化10】
一般式3中、Ar
1はアリール基又はヘテロアリール基を表し、R
18は水素原子又は置換基を表し、Ar
1とR
18とが単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよく、*は隣り合う炭素原子との結合位置を表す。)
【請求項19】
一般式2中、B
3及びB
4の一方は一般式3で表される1価の基であり且つ他方は下記一般式4で表される1価の基である、請求項18に記載のフォトクロミック化合物。
【化11】
(一般式4中、R
19~R
23は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【請求項20】
一般式2中、一般式3で表される1価の基においてAr
1はアリール基を表す、請求項18又は19に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項21】
一般式2中、一般式3で表される1価の基においてR
18はアリール基を表す、請求項18~20のいずれか1項に記載のフォトクロミック化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学物品、眼鏡及びフォトクロミック化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック化合物は、光応答性を有する波長域の光の照射下で着色し(coloring)、非照射下では退色する性質(フォトクロミック性)を有する化合物である。例えば特許文献1には、フォトクロミック性を有するナフトピラン系化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼鏡レンズ等の光学物品にフォトクロミック性を付与する方法としては、フォトクロミック化合物を基材に含有させる方法及びフォトクロミック化合物を含む層(フォトクロミック層)を形成する方法が挙げられる。このようにフォトクロミック性が付与された光学物品に望まれる性能としては、着色時の着色濃度が高いことが挙げられる。この点に関し、光応答性を有する波長域の光の照射を受けて着色した際に高いモル吸光係数を示すフォトクロミック化合物、即ち吸収強度が高いフォトクロミック化合物は、例えば少量添加によっても高濃度で着色し得るフォトクロミック性を光学物品に付与することができ、より多く添加することによって更に高濃度での着色を可能にすることができる。
【0005】
本発明の一態様は、吸収強度が高いフォトクロミック化合物を含む光学物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
下記一般式1で表される化合物及び下記一般式2で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のフォトクロミック化合物を含む光学物品、
に関する。
【0007】
【0008】
【0009】
一般式1中、R1~R8、B1及びB2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B1及びB2の少なくとも一方は下記一般式3で表される1価の基を表し、
一般式2中、R9~R16、B3及びB4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B3及びB4の少なくとも一方は下記一般式3で表される1価の基を表す。
【0010】
【0011】
一般式3中、Ar1はアリール基又はヘテロアリール基を表し、R18は水素原子又は置換基を表し、Ar1とR18とが単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよく、*は隣り合う炭素原子との結合位置を表す。
【0012】
本発明の一態様は、上記一般式1で表されるフォトクロミック化合物に関する。
【0013】
本発明の一態様は、上記一般式2で表されるフォトクロミック化合物に関する。
【0014】
上記一般式1で表されるフォトクロミック化合物及び上記一般式2で表されるフォトクロミック化合物は、光応答性を有する波長域の光の照射を受けて着色した際に高いモル吸光係数を示すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、吸収強度が高いフォトクロミック化合物を含む光学物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1の化合物(化合物A)のNMRチャートを示す。
【
図2】実施例1及び比較例1について、紫外線照射終了から10秒以内に計測して得られた溶液スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、上記光学物品及び上記フォトクロミック化合物について、更に詳細に説明する。
【0018】
フォトクロミック化合物は、一例として、太陽光等の光の照射を受けて励起状態を経て、着色体に構造変換する。光照射を経て構造変換した後の構造を「着色体」と呼ぶことができる。これに対し、光照射前の構造を「無色体」と呼ぶことができる。ただし、無色体について「無色」とは、完全な無色に限定されるものではなく、着色体に対して色が薄い場合も包含される。一般式1の構造及び一般式2の構造は、それぞれ無色体の構造である。
【0019】
本発明及び本明細書において、各種置換基、即ち、一般式1中のR1~R8、B1及びB2のいずかで表され得る置換基、一般式2中のR9~R16、B3及びB4のいずれかで表され得る置換基、一般式3中のR18で表され得る置換基、一般式4中のR19~R23のいずれかで表され得る置換基、更に、後述する各基が置換基を有する場合の置換基は、それぞれ独立に置換基Rmであることができる。
置換基Rmは、
ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5~18の単環若しくはビシクロ環等の複環の環状脂肪族アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の構成原子数1~24の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、構成原子数1~24の非芳香族環状置換基、トリフルオロメチル基等の炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のパーフルオロアルキル基、トリフルオロメトキシ基等の直鎖若しくは分岐のパーフルオロアルコキシ基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、ブチルスルフィド基等の構成原子数1~24の直鎖若しくは分岐のアルキルスルフィド基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、フェナントリル基、ピラニル基、ペリレニル基、スチリル基、フルオレニル基等のアリール基、フェニルオキシ基等のアリールオキシ基、フェニルスルフィド基等のアリールスルフィド基、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ジアゾリル基、トリアゾリル基、キノリニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、フェナジニル基、チアンスリル基、アクリジニル基等のヘテロアリール基、アミノ基(-NH2)、モノメチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、モノフェニルアミノ基等のモノアリールアミノ基、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、テトラヒドロキノリノ基、テトラヒドロイソキノリノ基等の環状アミノ基、エチニル基、メルカプト基、シリル基、スルホン酸基、アルキルスルホニル基、ホルミル基、カルボキシ基、シアノ基及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基;又は、
Rmに更に1つ以上の同一若しくは異なるRmが置換した置換基;
である。
【0020】
上記のRmに更に1つ以上の同一又は異なるRmが置換した置換基の一例としては、アルコキシ基の末端の炭素原子に更にアルコキシ基が置換し、このアルコキシ基の末端の炭素原子に更にアルコキシ基が置換した構造を挙げることができる。また、上記のRmに更に1つ以上の同一又は異なるRmが置換した置換基の他の一例としては、フェニル基の5つの置換可能位置の中の2つ以上の位置に、同一又は異なるRmが置換した構造を挙げることができる。ただし、かかる例に限定されるものではない。
【0021】
また、本発明及び本明細書において、各種置換基、即ち、一般式1中のR1~R8、B1及びB2のいずかで表され得る置換基、一般式2中のR9~R16、B3及びB4のいずれかで表され得る置換基、一般式3中のR18で表され得る置換基、更に、後述する各基が置換基を有する場合の置換基は、可溶化基であることもできる。本発明及び本明細書において、「可溶化基」とは、任意の液体又は特定の液体との相溶性を高めることに寄与し得る置換基を指す。可溶化基としては、炭素数4~50の直鎖、分岐又は環状構造を含むアルキル基、構成原子数4~50の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基、構成原子数4~50の直鎖、分岐又は環状のシリル基、上記の基の一部をケイ素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子等に置き換えたもの、上記の基の2つ以上を組み合わせたもの等の、この置換基を有することが化合物の分子の熱運動を促進することに寄与し得る置換基が好適である。置換基として可溶化基を有する化合物は、溶質分子間の距離が近づくことを阻害することで溶質の固体化を防いだり、溶質の融点及び/又はガラス転移温度を下げることで液体に近い分子集合状態を作ることができる。こうして、可溶性基は、溶質を液体化したり、この置換基を有する化合物の液体への溶解性を高めることができる。一形態では、可溶化基としては、直鎖アルキル基であるn-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、分岐アルキル基であるtert-ブチル基並びに環状アルキル基であるシクロペンチル基及びシクロヘキシル基が好ましい。
【0022】
上記光学物品は、一般式1で表される化合物を1種以上含むことができ、一般式2で表される化合物を1種以上含むこともできる。上記光学物品は、一般式1で表される化合物を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。上記光学物品は、一般式2で表される化合物を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。また、上記光学物品は、一般式1で表される化合物及び一般式2で表される化合物の中で、一般式1で表される化合物のみ又は一般式2で表される化合物のみを含んでもよく、一般式1で表される化合物の1種以上と一般式2で表される化合物の1種以上とを含んでもよい。
【0023】
以下に、上記化合物について、更に詳細に説明する。
【0024】
[一般式1で表されるフォトクロミック化合物]
【0025】
【0026】
一般式1中、R1~R8、B1及びB2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B1及びB2の少なくとも一方は下記一般式3で表される1価の基を表す。本発明者は、一般式1で表される化合物について、B1及びB2の少なくとも一方として、下記一般式3で表される1価の基を有することが、高いモル吸光係数を示し得ることに寄与すると推察している。この点は、後述する一般式2で表される化合物が、B3及びB4の少なくとも一方として、下記一般式3で表される1価の基を有することについても同様である。
【0027】
【0028】
一般式3中、Ar1はアリール基又はヘテロアリール基を表し、R18は水素原子又は置換基を表し、Ar1とR18とが単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよく、*は隣り合う炭素原子との結合位置を表す。
【0029】
一般式3で表される1価の基は、*において結合する隣り合う炭素原子と任意の位置で結合することができ、好ましくは、Ar1とR18とが結合する窒素原子に対してパラ位となる位置で結合することが好ましい。即ち、一般式3は、下記一般式3-1であることが好ましい。
【0030】
【0031】
Ar1で表されるアリール基は、芳香族環を有する1価の基であり、かかる芳香族環を構成する原子の数は、例えば6~60個であることができる。Ar1で表されるヘテロアリール基は、複素環式芳香族環を有する1価の基であり、かかる複素環式芳香族環を構成する原子の数は、例えば5~60個であることができ、それらのうちの少なくとも1個は、ヘテロ原子である。ヘテロ原子は、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる。
【0032】
上記の芳香族環及び複素環式芳香族環の具体例は以下の通りである。以下に記載の芳香族環及び複素環式芳香族環は、無置換であってもよく、任意の位置に任意の数の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ベンズアントラセン環、フェナントレン環、ベンズフェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ペリレン環、フルオランテン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、ビフェニル環、ビフェニレン環、テルフェニル環、テルフェニレン環、クアテルフェニル環、フルオレン環、スピロビフルオレン環、ジヒドロフェナントレン環、ジヒドロピレン環、テトラヒドロピレン環、cis-又はtrans-インデノフルオレン環、トルクキン環、イソトルキセン環、スピロトルキセン環、スピロイソトルキセン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、インドロカルバゾール環、インデノカルバゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、ベンゾ-5,6-キノリン環、ベンゾ-6,7-キノリン環、ベンゾ-7,8-キノリン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、ピラゾール環、インダゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、フェナンスリイミダゾール環、ピリドイミダゾール環、ピラジンイミダゾール環、キノキサリンイミダゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、アントロオキサゾール環、フェナンスリオキサゾール環、イソオキサゾール環、1,2-チアゾール環、1,3-チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピリダジン環、ベンゾピリダジン環、ピリミジン環、ベンゾピリミジン環、キノキサリン環、1,5-ジアザアントラセン環、2,7-ジアザピレン環、2,3-ジアザピレン環、1,6-ジアザピレン環、1,8-ジアザピレン環、4,5-ジアザピレン環、4,5,9,10-テトラアザペリレン環、ラジン環、フェナジン環、フルオルビン環、ナフチリジン環、アザカルバゾール環、ベンゾカルボリン環、フェナントロリン環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、1,2,3-オキサジアゾール環、1,2,4-オキサジアゾール環、1,2,5-オキサジアゾール環、1,3,4-オキサジアゾール環、1,2,3-チアジアゾール環、1,2,4-チアジアゾール環、1,2,5-チアジアゾール環、1,3,4-チアジアゾール環、1,3,5-トリアジン環、1,2,4-トリアジン環、1,2,3-トリアジン環、テトラゾール環、1,2,4,5-テトラジン環、1,2,3,4-テトラジン環、1,2,3,5-テトラジン環、プリン環、プテリジン環、インドリジン環及びベンゾチアジアゾール環;並びに上記の芳香族環及び複素環式芳香族環からなる群から選ばれる2種以上が縮環した芳香族環及び複素環式芳香族環。
【0033】
上記の芳香族環及び複素環式芳香族環の中で好ましいものは、以下の通りである。
ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオランテン環、ビフェニル環、フルオレン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、フェナジン環、アザカルバゾール環及びフェナントロリン環;並びに上記の芳香族環及び複素環式芳香族環からなる群から選ばれる2種以上が縮環した芳香族環及び複素環式芳香族環。
【0034】
上記の芳香族環及び複素環式芳香族環の中でより好ましいものは、以下の通りである。
ベンゼン環、ビフェニル環、フルオレン環、ジベンゾフラン環、及びフェナントロリン環、;並びに上記の芳香族環及び複素環式芳香族環からなる群から選ばれる2種以上が縮環した芳香族環及び複素環式芳香族環。
【0035】
Ar1は、アリール基を表すことが好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のビフェニル基又は置換若しくは無置換のフルオレニル基を表すことがより好ましい。
【0036】
例えば、光応答性を有する波長域の光(例えば紫外線)の照射により着色した際、400nm以上の波長域において、一般式1で表される化合物の吸収極大波長は、540~560nmの範囲にあることができる。このような吸収特性を有するフォトクロミック化合物は、明所視の比視感度の極大値である555nm付近の光を効果的に吸収することができるため、着色時の視感透過率が低くなる傾向があるため好ましい。この点から、Ar1が上記の各種の基であることは好ましい。以上の点は、一般式2で表される化合物についても当てはまる。
【0037】
一般式3中、R18は、水素原子又は置換基を表す。R18で表される置換基としては、アリール基又はヘテロアリール基を挙げることができ、それらについては、Ar1で表されるアリール基又はヘテロアリール基に関する先の記載を参照できる。R18はアリール基を表すことが好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のビフェニル基又は置換若しくは無置換のフルオレニル基を表すことがより好ましい。
【0038】
Ar1で表されるアリール基又はヘテロアリール基は、一般式3において窒素原子と結合しているベンゼン環と、単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよい。
上記の単結合又は2価の連結基をL1で表すと、一般式3で表される1価の基は、下記一般式3-2又は下記一般式3-3で表される1価の基であることができる。以下の一般式において、Ar1、R18及び*は、それぞれ一般式3と同義である。
【0039】
【0040】
【0041】
L1は、単結合、又は、炭素数1~10(好ましくは炭素数2以下)の置換若しくは無置換の直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基、炭素数1~20のアリーレン基(好ましくはフェニレン基)及び炭素数1~20のアルキルアリーレン基からなる群から選ばれる2価の連結基であることができる。また、L1で表される2価の連結基としては、上記の2価の連結基を構成する炭素原子の一部を窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子等の他の原子で置き換えたものを挙げることもできる。かかる基としては、例えば、エーテル基(-O-)、スルフィド基(-S-)、-NR100-等の2価の連結基を挙げることができる。R100は、水素原子又は置換基を表し、かかる置換基は、例えばアルキル基であり、好ましくは炭素数1~10(好ましくは2以下)の置換若しくは無置換の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基である。
【0042】
R18で表される置換基は、一般式3において窒素原子と結合しているベンゼン環と、単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよい。
上記の単結合又は2価の連結基をL3で表すと、一般式3で表される1価の基は、下記一般式3-4又は下記一般式3-5で表される1価の基であることができる。以下の一般式において、Ar1、R18及び*は、それぞれ一般式3と同義である。L3については、L1に関する先の記載を参照できる。
【0043】
【0044】
【0045】
一般式3中、Ar1とR18とが単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成することもできる。上記の単結合又は2価の連結基をL2で表すと、一般式3で表される1価の基は、下記一般式3-6又は下記一般式3-7で表される1価の基であることができる。以下の一般式において、Ar1、R18及び*は、それぞれ一般式3と同義である。L2については、L1に関する先の記載を参照できる。
【0046】
【0047】
【0048】
Ar1とR18とが単結合又は2価の連結基を介して結合して形成する環構造の具体例としては、後掲の例示化合物に含まれる各種環構造を挙げることができる。
【0049】
一般式1中、B1及びB2の少なくとも一方は、一般式3で表される1価の基を表す。B1及びB2のうち、一形態では一方のみが一般式3で表される1価の基を表すことができ、他の一形態では両方がそれぞれ独立に一般式3で表される1価の基を表すことができる。好ましくは、B1及びB2のうち、一方のみが一般式3で表される1価の基を表し、他方は水素原子又は一般式3で表される1価の基以外の置換基を表す。かかる置換基としては、下記一般式4で表される1価の基を挙げることができる。
【0050】
【0051】
一般式4中、R19~R23は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
【0052】
一般式1中、R1~R8は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
【0053】
B1若しくはB2として先に記載した基に含まれ得る置換基、又は、B1若しくはB2で表され得る置換基としては、
プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、フェナジニル基、アクリジニル基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、シアノ基、フッ素原子及び可溶化基が好ましく、
メトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、シアノ基、フッ素原子及び可溶化基がより好ましい。
【0054】
R1~R8のいずれかとして好ましい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、シアノ基、フッ素原子及び可溶化基を挙げることができる。
一形態では、R1~R8の中で、R8が置換基を表し且つ他は水素原子を表すことができる。また、他の一形態では、R1~R8の中で、R8と、R1及び/又はR6と、が置換基を表し、且つ他は水素原子を表すことができる。
R8として好ましい置換基としては、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を挙げることができ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はヘキシル基がより好ましい。
R6として好ましい置換基としては、メチル基、トリフルオロメチル基及びフッ素原子を挙げることができる。
R1として好ましい置換基としては、メチル基、トリフルオロメチル基及びフッ素原子を挙げることができる。
R1~R8の2つ以上が単結合又は2価の連結基を介して結合して環構造を形成してもよい。
【0055】
R19~R23のいずれかとして好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数5~18の単環若しくは複環の環状脂肪族アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の構成原子数1~24の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、ブチルスルフィド基等の構成原子数1~24の直鎖若しくは分岐のアルキルスルフィド基、フェニルオキシ基等のアリールオキシ基、フェニルスルフィド基等のアリールスルフィド基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びフッ素原子を挙げることができ、Rmに更に1つ以上の同一又は異なるRmが置換した置換基、例えば下記置換基を挙げることもできる。以下において、*は隣り合う炭素原子との結合位置を表す。一形態では、R19~R23の中で、少なくともR21が置換基であることが好ましく、R21が置換基であってその他は水素原子であることがより好ましい。また、一形態では、R19~R23がすべて水素原子であることが好ましい。
【0056】
【0057】
[一般式2で表されるフォトクロミック化合物]
【0058】
【0059】
一般式2中、R9~R16、B3及びB4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、B3及びB4の少なくとも一方は上記一般式3で表される1価の基を表す。一般式3については、先に記載した通りである。
【0060】
一般式2中、B3及びB4の少なくとも一方は、一般式3で表される1価の基を表す。B3及びB4のうち、一形態では一方のみが一般式3で表される1価の基を表すことができ、他の一形態では両方がそれぞれ独立に一般式3で表される1価の基を表すことができる。好ましくは、B3及びB4のうち、一方のみが一般式3で表される1価の基を表し、他方は水素原子又は一般式3で表される1価の基以外の置換基を表す。かかる置換基としては、上記一般式4で表される1価の基を挙げることができる。一般式4については、先に記載した通りである。
【0061】
B3若しくはB4として先に記載した基に含まれ得る置換基、又は、B3若しくはB4で表され得る置換基としては、
プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、フェナジニル基、アクリジニル基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、シアノ基、フッ素原子及び可溶化基が好ましく、
メトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、シアノ基、フッ素原子及び可溶化基がより好ましい。
【0062】
R9~R16のいずれかとして好ましい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、フェノキシ基、メチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、シアノ基、フッ素原子及び可溶化基を挙げることができる。
一形態では、R9~R16の中で、R9が置換基を表し且つ他は水素原子を表すことができる。また、他の一形態では、R9~R16の中で、R9と、R11及び/又はR16と、が置換基を表し、且つ他は水素原子を表すことができる。R9として好ましい置換基としては、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を挙げることができ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はヘキシル基がより好ましい。
R16として好ましい置換基としては、メチル基、トリフルオロメチル基及びフッ素原子を挙げることができる。
R11として好ましい置換基としては、メチル基、トリフルオロメチル基及びフッ素原子を挙げることができる。
【0063】
一般式1で表されるフォトクロミック化合物及び一般式2で表されるフォトクロミック化合物は、フォトクロミック性を有する物品(フォトクロミック物品)の作製のために使用することができる。かかる化合物の具体例としては、下記の化合物を例示できる。ただし、本発明は下記の例示化合物に限定されるものではない。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
一般式1で表される化合物及び一般式2で表される化合物は、公知の方法で合成することができる。
【0072】
例えば、一般式1で表される化合物は、以下のナフトール誘導体:
【0073】
【化23】
と、以下のプロパルギルアルコール誘導体:
【0074】
【化24】
とを反応させることによって合成することができる。上記のR
1~R
8、B
1及びB
2は、一般式1と同義である。
【0075】
また、例えば、一般式2で表される化合物は、以下のナフトール誘導体:
【0076】
【化25】
と、以下のプロパルギルアルコール誘導体:
【0077】
【化26】
とを反応させることによって合成することができる。上記のR
9~R
16、B
3及びB
4は、一般式2と同義である。
【0078】
一般式1で表される化合物及び一般式2で表される化合物を合成するための反応条件等の詳細については、公知技術を適用することができ、後述の実施例も参照できる。
【0079】
[光学物品]
一般式1で表される化合物及び一般式2で表される化合物は、いずれもフォトクロミック化合物である。上記フォトクロミック化合物は、光学物品の基材に含まれることができ、及び/又は、光学物品のフォトクロミック層に含まれることができる。上記光学物品は、一形態では、上記フォトクロミック化合物を1種のみ含むことができ、他の一形態では、上記フォトクロミック化合物を2種以上含むことができる。また、上記光学物品は、一形態では、上記フォトクロミック化合物の1種以上と、他のフォトクロミック化合物の1種以上と、を含むこともできる。他のフォトクロミック化合物としては、アゾベンゼン類、スピロピラン類、スピロオキサジン類、ナフトピラン類、インデノナフトピラン類、フェナントロピラン類、ヘキサアリルビスイミダゾール類、ドナー-アクセプターステンハウス付加物(DASA)類、サリシリデンアニリン類、ジヒドロピレン類、アントラセンダイマー類、フルギド類、ジアリールエテン類、フェノキシナフタセンキノン類、スチルベン類等を挙げることができる。
【0080】
上記光学物品は、光学物品の種類に応じて選択された基材を含むことができる。基材の一例として、眼鏡レンズ基材としては、プラスチックレンズ基材又はガラスレンズ基材が挙げられる。ガラスレンズ基材は、例えば無機ガラス製のレンズ基材であることができる。プラスチックレンズ基材としては、(メタ)アクリル樹脂をはじめとするスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR-39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコール等のヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する硬化性組成物を硬化した硬化物(一般に透明樹脂と呼ばれる。)を挙げることができる。レンズ基材としては、染色されていないもの(無色レンズ)を用いてもよく、染色されているもの(染色レンズ)を用いてもよい。レンズ基材の屈折率は、例えば、1.60~1.75程度であることができる。ただしレンズ基材の屈折率は、上記範囲に限定されるものではなく、上記の範囲内でも、上記の範囲から上下に離れていてもよい。ここで屈折率とは、波長500nmの光に対する屈折率をいうものとする。また、レンズ基材は、屈折力を有するレンズ(いわゆる度付レンズ)であってもよく、屈折力なしのレンズ(いわゆる度なしレンズ)であってもよい。
【0081】
例えば、上記フォトクロミック化合物の1種以上と重合性化合物の1種以上とを含む硬化性組成物を公知の成形方法によって成形することにより、かかる硬化性組成物の硬化物として、基材を作製することができる。上記硬化性組成物は、先に例示したような他のフォトクロミック化合物の1種以上を更に含むこともできる。硬化処理は、光照射及び/又は加熱処理であることができる。重合性化合物とは、重合性基を有する化合物であり、重合性化合物の重合反応が進行することによって硬化性組成物が硬化し硬化物が形成され得る。硬化性組成物は、1種以上の添加剤(例えば重合開始剤等)を更に含むことができる。
【0082】
眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等の各種レンズであることができる。レンズの種類は、レンズ基材の両面の面形状により決定される。また、レンズ基材表面は、凸面、凹面、平面のいずれであってもよい。通常のレンズ基材及び眼鏡レンズでは、物体側表面は凸面、眼球側表面は凹面である。ただし、これに限定されるものではない。フォトクロミック層は、通常、レンズ基材の物体側表面上に設けることができるが、眼球側表面上に設けてもよい。
【0083】
フォトクロミック層は、基材の表面上に直接又は一層以上の他の層を介して間接的に設けられた層であることができる。フォトクロミック層は、例えば、上記フォトクロミック化合物を含む硬化性組成物を硬化した硬化層であることができる。上記硬化性組成物は、先に例示したような他のフォトクロミック化合物の1種以上を更に含むこともできる。例えば、上記硬化性組成物を基材の表面上に直接塗布するか、又は基材上に設けられた層の表面に塗布し、塗布された硬化性組成物に硬化処理を施すことによって、上記フォトクロミック化合物を含む硬化層を形成することができる。塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法等の公知の塗布方法を採用することができる。硬化処理は、光照射及び/又は加熱処理であることができる。硬化性組成物は、重合性化合物を含むことができ、1種以上の添加剤(例えば重合開始剤等)を更に含むことができる。重合性化合物の重合反応が進行することによって硬化性組成物が硬化し硬化層が形成され得る。
【0084】
<重合性化合物>
本発明及び本明細書において、重合性化合物とは、1分子中に1つ以上の重合性基を有する化合物をいい、「重合性基」とは、重合反応し得る反応性基をいうものとする。重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、チオール基、オキセタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基等を挙げることができる。
【0085】
上記基材及び上記フォトクロミック層の形成のために使用可能な重合性化合物としては、以下の化合物を例示できる。
【0086】
(エピスルフィド系化合物)
エピスルフィド系化合物は、1分子内に2個以上のエピスルフィド基を有する化合物である。エピスルフィド基は、開環重合し得る重合性基である。エピスルフィド系化合物の具体例としては、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)スルフィド、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)ジスルフィド、1,4-ジチアン-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)-2-(2,3-エピチオプロピルジチオエチルチオ)-4-チアヘキサン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオ)プロパン、1,1,1,1-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)メタン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)-2-チアプロパン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)-2,3-ジチアブタン、1,1,1-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メタン、1,1,1-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)メタン、1,1,2,2-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)エタン、1,1,3,3-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオ)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)プロパン、2-[1,1-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メチル]-1,3-ジチエタン、2-[1,1-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)メチル]-1,3-ジチエタン等を挙げることができる。
【0087】
(チエタニル系化合物)
チエタニル系化合物は、1分子内に2個以上のチエタニル基を有するチエタン化合物である。チエタニル基は、開環重合し得る重合性基である。チエタニル系化合物の中には、複数のチエタニル基と共にエピスルフィド基を有するものがある。かかる化合物は、上記のエピスルフィド系化合物の例に挙げられている。その他のチエタニル系化合物には、分子内に金属原子を有している含金属チエタン化合物と、金属を含んでいない非金属系チエタン化合物とがある。
【0088】
非金属系チエタン化合物の具体例としては、ビス(3-チエタニル)ジスルフィド、ビス(3-チエタニル)スルフィド、ビス(3-チエタニル)トリスルフィド、ビス(3-チエタニル)テトラスルフィド、1,4-ビス(3-チエタニル)-1,3,4-トリチアブタン、1,5-ビス(3-チエタニル)-1,2,4,5-テトラチアペンタン、1,6-ビス(3-チエタニル)-1,3,4,6-テトラチアヘキサン、1,6-ビス(3-チエタニル)-1,3,5,6-テトラチアヘキサン、1,7-ビス(3-チエタニル)-1,2,4,5,7-ペンタチアヘプタン、1,7-ビス(3-チエタニルチオ)-1,2,4,6,7-ペンタチアヘプタン、1,1-ビス(3-チエタニルチオ)メタン、1,2-ビス(3-チエタニルチオ)エタン、1,2,3-トリス(3-チエタニルチオ)プロパン、1,8-ビス(3-チエタニルチオ)-4-(3-チエタニルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,11-ビス(3-チエタニルチオ)-4,8-ビス(3-チエタニルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(3-チエタニルチオ)-4,7-ビス(3-チエタニルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(3-チエタニルチオ)-5,7-ビス(3-チエタニルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ビス(3-チエタニルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[[2-(3-チエタニルチオ)エチル]チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-チエタニルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、ビスチエタニルスルフィド、ビス(チエタニルチオ)メタン、3-[<(チエタニルチオ)メチルチオ>メチルチオ]チエタン、ビスチエタニルジスルフィド、ビスチエタニルトリスルフィド、ビスチエタニルテトラスルフィド、ビスチエタニルペンタスルフィド、1,4-ビス(3-チエタニルジチオ)-2,3-ジチアブタン、1,1,1-トリス(3-チエタニルジチオ)メタン、1,1,1-トリス(3-チエタニルジチオメチルチオ)メタン、1,1,2,2-テトラキス(3-チエタニルジチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-チエタニルジチオメチルチオ)エタン等を挙げることができる。
【0089】
含金属チエタン化合物としては、分子内に、金属原子として、Sn原子、Si原子、Ge原子、Pb原子等の14族の原子、Zr原子、Ti原子等の4族の元素、Al原子等の13族の原子、Zn原子等の12族の原子等を含むものが挙げられる。具体例としては、アルキルチオ(チエタニルチオ)スズ、ビス(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、アルキルチオ(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(チエタニルチオ)環状ジチオスズ化合物、アルキル(チエタニルチオ)スズ化合物等が挙げられる。
【0090】
アルキルチオ(チエタニルチオ)スズの具体例としては、メチルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、プロピルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオトリス(チエタニルチオ)スズ等を例示できる。
【0091】
ビス(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズの具体例としては、ビス(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(エチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(イソプロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ等を例示できる。
【0092】
アルキルチオ(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズの具体例としては、エチルチオ(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、メチルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオ(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオ(イソプロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ等を例示できる。
【0093】
ビス(チエタニルチオ)環状ジチオスズ化合物の具体例としては、ビス(チエタニルチオ)ジチアスタンネタン、ビス(チエタニルチオ)ジチアスタンノラン、ビス(チエタニルチオ)ジチアスタンニナン、ビス(チエタニルチオ)トリチアスタンノカン等を例示できる。
【0094】
アルキル(チエタニルチオ)スズ化合物の具体例としては、メチルトリス(チエタニルチオ)スズ、ジメチルビス(チエタニルチオ)スズ、ブチルトリス(チエタニルチオ)スズ、テトラキス(チエタニルチオ)スズ、テトラキス(チエタニルチオ)ゲルマニウム、トリス(チエタニルチオ)ビスマス等を例示できる。
【0095】
(ポリアミン化合物)
ポリアミン化合物は、一分子中にNH2基を2つ以上有する化合物であり、ポリイソシアネートとの反応でウレア結合を形成することができ、ポリイソチオシアネートとの反応でチオウレア結合を形成することができる。ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、プトレシン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノ-ル、ジエチレントリアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、メラミン、1,3,5-ベンゼントリアミン等が挙げられる。
【0096】
(エポキシ系化合物)
エポキシ系化合物は、分子内にエポキシ基を有する化合物である。エポキシ基は、開環重合し得る重合性基である。エポキシ系化合物は、一般に、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物に分類される。
【0097】
脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、エチレンオキシド、2-エチルオキシラン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2,2’-メチレンビスオキシラン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0098】
脂環族エポキシ化合物の具体例としては、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス-2,2-ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0099】
芳香族エポキシ化合物の具体例としては、レゾールシンジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0100】
また、上記以外にも、エポキシ基と共に、分子内に硫黄原子を有するエポキシ系化合物も使用することができる。このような含硫黄原子エポキシ系化合物には、鎖状脂肪族系のものと環状脂肪族系のものとがある。
【0101】
鎖状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系化合物の具体例としては、ビス(2,3-エポキシプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-3,6-ジチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-1-(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタン等が挙げられる。
【0102】
環状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系化合物の具体例としては、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[<2-(2,3-エポキシプロピルチオ)エチル>チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン等が挙げられる。
【0103】
(ラジカル重合性基を有する化合物)
ラジカル重合性基を有する化合物は、ラジカル重合し得る重合性基である。ラジカル重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。
【0104】
以下において、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群から選ばれる重合性基を有する化合物を、「(メタ)アクリレート化合物」と呼ぶ。(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレ-ト、テトラエチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールビスグリシジル(メタ)アクリレ-ト、ビスフェノ-ルAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、ビスフェノ-ルFジ(メタ)アクリレート、1,1-ビス(4-(メタ)アクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-(メタ)アクロキシジエトキシフェニル)メタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト-ルテトラ(メタ)アクリレート、メチルチオ(メタ)アクリレート、フェニルチオ(メタ)アクリレート、ベンジルチオ(メタ)アクリレート、キシリレンジチオールジ(メタ)アクリレート、メルカプトエチルスルフィドジ(メタ)アクリレート、2官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0105】
アリル基を有する化合物(アリル化合物)の具体例としては、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレ-ト、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカ-ボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メタクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル等が挙げられる。
【0106】
ビニル基を有する化合物(ビニル化合物)としては、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9-ジビニルスピロビ(m-ジオキサン)等が挙げられる。
【0107】
上記光学物品は、光学物品の耐久性向上のための保護層、反射防止層、撥水性又は親水性の防汚層、防曇層、層間の密着性向上のためのプライマー層等の光学物品の機能性層として公知の層の1層以上を任意の位置に含むことができる。
【0108】
上記光学物品の一形態は、眼鏡レンズである。また、上記光学物品の一形態としては、ゴーグル用レンズ、サンバイザーのバイザー(ひさし)部分、ヘルメットのシールド部材等を挙げることもできる。これら光学物品用の基材上に上記硬化性組成物を塗布し、塗布された組成物に硬化処理を施すことによりフォトクロミック層を形成することによって、防眩機能を有する光学物品を得ることができる。
【0109】
[眼鏡]
本発明の一態様は、上記光学物品を備えた眼鏡に関する。この眼鏡に含まれる眼鏡レンズの詳細については、先に記載した通りである。上記眼鏡は、かかる眼鏡レンズを備えることにより、例えば屋外ではフォトクロミック化合物が太陽光の照射を受けて着色することでサングラスのように防眩効果を発揮することができ、屋内に戻るとフォトクロミック化合物が退色することで透過性を回復することができる。上記眼鏡について、フレーム等の構成については、公知技術を適用することができる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。以下に記載の「%」は、質量%を示す。
【0111】
以下において、分子構造の同定には核磁気共鳴装置(NMR)を用いた。NMRとしては、日本電子製ECS-400のプロトンNMRを使用した。測定溶媒としては、主に重クロロホルムを用い、重クロロホルムに難溶な場合に限り、重ジメチルスルホキシド、重アセトン、重アセトニトリル、重ベンゼン、重メタノール、重ピリジン等を適宜用いた。
純度の分析には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。HPLCとしては、島津製作所製LC-2040Cを用いた。カラムにはYMC-Triart C18を用い、測定温度を40℃に設定した。移動相はトリフルオロ酢酸を0.1%含んだ水とアセトニトリルの混合溶媒を用い、流速は0.4mL/min.とした。
質量分析には日本ウォーターズ製ACQUITY UPLC H-Classシステム(UPLC)に質量分析ユニットとしてSQD2を装備した装置を用いた。カラムはACQUITY UPLC BEH C18を用い、測定温度を40℃に設定した。移動相はギ酸を添加した水とアセトニトリルの混合溶媒を用い、濃度勾配を付けて流速0.61 mL/min.で流した。イオン化はエレクトロスプレーイオン化(ESI)法を用いた。
CHN(炭素・水素・窒素)元素分析は燃焼法により実施した。
【0112】
[実施例1]
<化合物Aの合成>
(第1工程)
【0113】
【0114】
アルゴン雰囲気下、化合物1(100g、0.60mol)のジエチルエーテル溶液(1000mL)にカリウムtert-ブトキシド(121g,1.08mol)を加え4時間還流した。
冷却後、2%酢酸水溶液(1000mL)を加え、10分間攪拌した。有機層と水層を分け、水層を酢酸エチル(500mL×2)で抽出し、併せた有機層を、水(1000mL)及び飽和食塩水(1000mL)で順次洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過及び濃縮を行った(150g)。得られた一部(50g)をカラムクロマトグラフィー(SiO2:400g、クロロホルム/ヘプタン(体積基準)=30/70~50/50)にて精製し、化合物2(38g)を得た。残り(100g)についてクロロホルム/ヘプタン(100mL、30/70(体積基準))で再結晶を行うことにより、黄色固体として化合物2(64g)を得た。
【0115】
(第2工程)
【0116】
【0117】
アルゴン雰囲気下、化合物2(100g,0.48mol)、シアノ酢酸エチル(54.9g,0.49mol)、酢酸(20mL,0.34mol)、酢酸アンモニウム(40.0g,0.52mol)のトルエン溶液(500mL)にディーン・スターク装置を取り付け5時間還流した。冷却後、水(400mL)、飽和炭酸水(200mL×2)及び飽和食塩水(200mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過及び濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2:1kg,クロロホルム/ヘプタン(体積基準)=50/50~75/25)で精製することにより褐色油状物として化合物3(84.5g)を得た。
【0118】
(第3工程)
【0119】
【0120】
アルゴン雰囲気下、化合物3(84.5g,0.28mol)、アセトアミド(90.9g,1.53mol)を200℃で4時間攪拌した。90℃程度まで冷却した反応液を、70℃程度の水(1.8L)に注ぎ入れ、クロロホルム(1.8L)で抽出した。水層をクロロホルム(0.6L×2)で抽出し、併せた有機層を水(0.6L×2)及び飽和食塩水(0.6L)で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過及び濃縮後、残渣についてクロロホルム/ヘプタン(210mL)で再結晶を行い黄色固体として化合物4(4.2g)を得た。
【0121】
(第4工程)
【0122】
【0123】
アルゴン雰囲気下、化合物4(3.7g,14.4mmol)のエチレングリコール溶液(80mL)に水酸化ナトリウム(7.4g,185mmol)を加え、5日間還流した。冷却後、塩酸(1.0M,190mL)を加え、約10分間攪拌した。析出した固体をろ過及び乾燥することにより、黄色固体として化合物5と化合物4との混合物(化合物4:化合物5(質量基準)=1:1,9.15g)を得た。
【0124】
(第5工程)
【0125】
【0126】
アルゴン雰囲気下、化合物7(22.2g,131mmol)、カリウムtert-ブトキシド(14.7g,131mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(420mL)に化合物8(25.0g,125mmol)を加え、120℃で2時間攪拌した。
冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液(130mL)を加え、クロロホルム(200mL×3)で抽出した。有機層を水(500mL)及び飽和食塩水(100mL)で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2:1kg,ヘプタン/クロロホルム(体積基準)=10/1~0/10)で精製し、黄色固体として化合物9(41.1g)を得た。
【0127】
(第6工程)
【0128】
【0129】
アルゴン雰囲気下、化合物9(5.00g,14.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(70mL)を氷冷し、エチニルマグネシウムブロミド(0.5M,42.9mL,21.5mmol)を滴下した。氷浴を取り外し、室温で2時間攪拌後、2時間還流した。
反応液を冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液(2mL)を加え、酢酸エチル(30mL×2)で抽出した。有機層を水(30mL)及び飽和食塩水(30mL)で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過及び濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2:60g,ヘプタン/酢酸エチル(体積基準)=90/10~80/20)で精製し、褐色油状物として化合物10(4.87g)を得た。
【0130】
(第7工程)
【0131】
【0132】
アルゴン雰囲気下、化合物5(4.60g,3.96mmol,約20%)、化合物10(2.97g,7.92mmol)のトルエン溶液(36mL)に、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.15g,0.80mmol)を添加し、室温で終夜攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液(1.0M,37mL)を添加し、約20分間攪拌した。不純物をろ過で取り除き、トルエン(30mL×2)で抽出後、併せた有機層を水(20mL×2)で洗浄し、濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2:200g,ヘプタン/クロロホルム(体積基準)=70/30~60/40)で精製した(1.53g,褐色固体)。得られた固体をヘプタン/酢酸エチル(2/1(体積基準),90mL)に懸濁させ、約30分間超音波処理を行い、ろ過及び乾燥することにより、最終生成物として薄黄緑色固体の化合物A(1.39g)を得た。
【0133】
得られた化合物Aの分析を、以下の方法によって行った。
核磁気共鳴装置(NMR)にて構造同定を行った。同定結果(NMRチャート)を
図1に示す。
HPLCにより純度を分析したところ面積比で98%であった。
質量分析の結果、計算値589.241に対し、実測値589.5(M+,相対強度100)であった。
燃焼法によるCHN元素分析の結果、計算値C:89.6%、H:5.3%、N:2.4%に対し、C:89.3%、H:6.6%、N:2.2%であった。
以上の分析結果より総合的に目的化合物である化合物Aが生成していることを確認した。
【0134】
[実施例2~15]
化合物Aの合成に使用した化合物5及び化合物10として、それぞれ表2に示す反応物を使用した点以外は上記と同様の操作により、化合物B~Oを得た。
得られた化合物の分析を、先に記載した方法によって行った。分析結果を表2に示す。
【0135】
[比較例1]
WO2000/15631(特許文献1)のExample 1の記載を参考にして、比較化合物1を合成した。得られた比較化合物1の分析を、先に記載した方法によって行った。分析結果を表2に示す。
【0136】
【0137】
[評価方法]
<溶液スペクトルの測定>
実施例及び比較例の各化合物を、安定剤を含有しないクロロホルムに溶解し、各化合物のクロロホルム溶液を調製した。
調製した溶液を入れた1cm角の石英分光セルに蓋をし、紫外線光源として浜松ホトニクス製UV-LED(LIGHTNINGCURE LC-L1V5及びL14310-120を組み合わせたもの、出力70%)を用いて紫外線を15秒間照射した。紫外線照射中は小型スターラーで溶液を撹拌した。
紫外線照射終了から10秒以内に紫外可視分光光度計(島津製作所製UV-1900i、測定波長700nm~350nm、波長2nm刻み、サーベイモード)で吸光度を計測した。一例として、実施例1及び比較例1について、紫外線照射終了から10秒以内に計測して得られた溶液スペクトルを
図2に示す。吸光度の計測は室温(20~25℃)で行った。なお、溶液の濃度は第一吸収波長(最も長波長に観察される吸収強度のピーク)の吸光度が0.95~1.05になるように調製した。石英分光セルはそのまま分光光度計内に光が当たらないように放置し、30分後に同様の条件で分光測定を行い、第一吸収波長を確認した。紫外線照射後の第一吸収波長の値とその吸収波長におけるモル吸光係数の値、及び、その吸収波長における30分放置後のモル吸光係数の値を表2に示す。分光光度計より石英分光セルを取り出し、再度同様の条件で紫外線を照射し分光測定を行ったところ、ほぼ同等のスペクトル変化を示すことが確認された。
以上の測定結果から、実施例1~15の各化合物が、紫外線の照射有無により明確なスペクトルの変化を示し、紫外線が照射されることで強い可視域の吸収を持つ分子構造へ構造転移するフォトクロミック性を示すことが確認できた。
【0138】
[フォトクロミックレンズ(眼鏡レンズ)の作製]
実施例1~15の各化合物を用いて、以下の方法によってフォトクロミックレンズ(眼鏡レンズ)を作製した。
【0139】
<フォトクロミック層用組成物の調製>
プラスチック製容器内で、(メタ)アクリレートの合計100質量%に対して、68質量%のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量508)、12質量%のトリメチロールプロパントリメタクリレート(非環状の3官能(メタ)アクリレート)、20質量%のネオペンチルグリコールジメタクリレートを混合し、(メタ)アクリレート混合物を調製した。この(メタ)アクリレート混合物に、実施例1~15の各化合物、光重合開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)、酸化防止剤[ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸)][エチレンビス(オキシエチレン)、光安定化剤(セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル))を混合し、十分に攪拌したのち、シランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を攪拌しながら滴下した。その後、自動公転方式攪拌脱泡装置で脱泡した。
以上の方法により、フォトクロック層用組成物を調製した。
【0140】
<プライマー層の成膜>
プラスチックレンズ基材(HOYA社製商品名EYAS:中心厚2.5mm、直径75mm、球面レンズ度数-4.00)を10質量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温60℃)に5分間親戚処理することでアルカリ洗浄し、更に純水で洗浄し乾燥させた。その後、このプラスチックレンズ基材の凸面に対して、水系ポリウレタン樹脂液(ポリカーボネートポリオール系ポリウレタンエマルジョン、粘度100cPs、固形分濃度38質量%)を室温かつ相対湿度40~60%の環境において、ミカサ社製スピンコーターMS-B150を用い、回転数1500rpmで1分間スピンコート法により塗布した後、15分間自然乾燥させることにより、厚さ5.5μmのプライマー層を形成した。
【0141】
<フォトクロミック層の成膜>
上記で調製したフォトクロミック層用組成物を、上記プライマー層の上に滴下し、ミカサ社製MS-B150を用い、回転数500rpmから1500rpmまで1分間かけてスロープモードで回転数を変化させ、更に1500rpmで5秒間回転させるプログラムを用いたスピンコート法により塗布した。その後、プラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層上に塗布された上記フォトクロミック層用組成物に対し、窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)で紫外線(主波長405nm)を40秒間照射し、この組成物を硬化させてフォトクロミック層を形成した。形成されたフォトクロミック層の厚さは45μmであった。
【0142】
[フォトクロミックレンズの評価]
【0143】
<退色速度>
退色速度は以下の方法により評価した。
上記で作製した各フォトクロミックレンズの光照射前(未着色状態)の透過率(測定波長:550nm)を大塚電子製分光光度計により測定した。ここで測定された透過率を「初期透過率」と呼ぶ。
各フォトクロミックレンズに対し、キセノンランプを光源に用い、エアロマスフィルターを介した光を15分間照射し、フォトクロミック層中の各フォトクロミック化合物)を着色させた。この照射光はJIS T7333:2005に規定されているように放射照度及び放射照度の許容差が表1に示す値となるように行った。この着色時の透過率を初期透過率と同様に測定した。ここで測定された透過率を「着色時透過率」と呼ぶ。
その後、光照射を止めた時間から透過率が、[(初期透過率-着色時透過率)/2]となるまでに要する時間を測定した。この時間を「半減時間」とする。半減時間が短いほど退色速度が速いということができる。求められた半減時間を表2に示す。
表2に示す半減時間から、実施例1~15の各フォトクロミック化合物を含む眼鏡レンズが、一般にフォトクロミックレンズとして市販されている眼鏡レンズと同等にフォトクロミックレンズとして機能することが確認できた。
【0144】
【0145】
以上の結果を、表2(表2-1~表2-5)に示す。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
最後に、前述の各態様を総括する。
【0152】
一態様によれば、上記一般式1で表される化合物及び上記一般式2で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上のフォトクロミック化合物を含む光学物品が提供される。
【0153】
また、一態様によれば、上記一般式1で表されるフォトクロミック化合物及び上記一般式2で表されるフォトクロミック化合物が提供される。
【0154】
上記フォトクロミック化合物は、高い吸収強度を示すことができる。
【0155】
一形態では、上記光学物品は、一般式1で表される化合物の1種以上を少なくとも含むことができ、一般式1中、B1及びB2の一方は一般式3で表される1価の基であり且つ他方は一般式4で表される1価の基であることができる。
【0156】
一形態では、上記光学物品は、一般式1で表される化合物の1種以上を少なくとも含むことができ、一般式1中、一般式3で表される1価の基においてAr1はアリール基を表すことができる。
【0157】
一形態では、上記光学物品は、一般式1で表される化合物の1種以上を少なくとも含むことができ、一般式1中、一般式3で表される1価の基においてR18はアリール基を表すとができる。
【0158】
一形態では、上記光学物品は、一般式2で表される化合物の1種以上を少なくとも含むことができ、一般式2中、B3及びB4の一方は一般式3で表される1価の基であり且つ他方は一般式4で表される1価の基であることができる。
【0159】
一形態では、上記光学物品は、一般式2で表される化合物の1種以上を少なくとも含むことができ、一般式2中、一般式3で表される1価の基においてAr1はアリール基を表すことができる。
【0160】
一形態では、上記光学物品は、一般式2で表される化合物の1種以上を少なくとも含むことができ、一般式2中、一般式3で表される1価の基においてR18はアリール基を表すことができる。
【0161】
一形態では、上記光学物品は、基材と、上記フォトクロミック化合物を含むフォトクロミック層と、を有することができる。
【0162】
一形態では、上記光学物品は、眼鏡レンズであることができる。
【0163】
一形態では、上記光学物品は、ゴーグル用レンズであることができる。
【0164】
一形態では、上記光学物品は、サンバイザーのバイザー部分であることができる。
【0165】
一形態では、上記光学物品は、ヘルメットのシールド部材であることができる。
【0166】
一態様によれば、上記眼鏡レンズを備えた眼鏡が提供される。
【0167】
本明細書に記載の各種態様および形態は、任意の組み合わせで2つ以上を組み合わせることができる。
【0168】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の一態様は、眼鏡、ゴーグル、サンバイザー、ヘルメット等の技術分野において有用である。