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7493616リチウム二次電池用セパレータ、及びそれを含むリチウム二次電池
<図面はありません>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用セパレータ、及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20240524BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240524BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240524BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/414
H01M50/426
H01M50/489
H01M50/446
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022563200
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2021008047
(87)【国際公開番号】W WO2021261967
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0078672
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-ジン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ミョン-ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン-ウー・ヘオ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051079(WO,A1)
【文献】特開2016-015268(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037552(WO,A1)
【文献】特表2017-510960(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0056337(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成された多孔性コーティング層と、を含み、
前記多孔性コーティング層は、難燃性粒子、高耐熱性バインダー高分子及びフッ素系バインダー高分子を含み、前記難燃性粒子は、金属水酸化物粒子を含み、且つ、150~250℃の吸熱反応温度を有し、前記高耐熱性バインダー高分子は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイドのうちのいずれかを含み、K値が120以上であって、且つ、ガラス転移温度が100℃以上であり、
前記K値はDIN EN ISO 1628-1の方法で測定されたフィケンチャーのK値であり、
前記難燃性粒子と前記高耐熱性バインダー高分子との重量比(R)は、下記の数式1を満足し、
前記フッ素系バインダー高分子の含量が前記高耐熱性バインダー高分子の含量よりも多い、リチウム二次電池用セパレータ。
[数式1]
5<R[(難燃性粒子の重量)/(高耐熱性バインダー高分子の重量)]≦10
【請求項2】
前記難燃性粒子が、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、水酸化カリウム粒子、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記高耐熱性バインダー高分子と前記フッ素系バインダー高分子との重量比が、20:80~40:60である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記高耐熱性バインダー高分子の重量平均分子量が、1,000K~4,000Kである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記高耐熱性バインダー高分子が、ポリビニルピロリドンを含む、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記フッ素系バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンコポリマー、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項7】
前記セパレータの厚さが、2μm~10μmである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項8】
前記セパレータが、下記の数式2のうちの少なくとも三つ以上を満足する、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
[数式2]
通気時間増加率≦500%
熱収縮率≦25%
破断温度≧300℃
破断面積≦10mm
(このとき、通気時間増加率は(セパレータの通気時間-多孔性高分子基材の通気時間)/(多孔性高分子基材の通気時間)×100であり、
熱収縮率は、MD方向及びTD方向のそれぞれに対して変化した長さを測定して、(最初長さ-150℃/30分間熱収縮処理した後の長さ)/(最初長さ)×100で算定した。)
【請求項9】
前記難燃性粒子と前記高耐熱性バインダー高分子との重量比が、6~10である、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用セパレータ。
【請求項10】
カソード、アノード、及び前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータを含み、前記セパレータは、請求項1からのいずれか一項に記載のセパレータである、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池などの電気化学素子に適用可能なセパレータ、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。より具体的には、難燃性粒子を含み、セパレータの熱的安全性及び機械的安全性が高いセパレータに関する。
【0002】
本出願は、2020年6月26日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0078672号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が益々具体化されている。電気化学素子はこのような面から最も注目されている分野であり、なかでも充放電可能な二次電池の開発には関心が集まっている。近年はこのような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
現在適用されている二次電池のうち1990年代初に開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの従来の電池に比べて、作動電圧が高くてエネルギー密度が格段に高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
上記のような電気化学素子は多くのメーカーで生産されているが、それらの安全特性はそれぞれ異なる様相を呈する。このような電気化学素子の安全性を評価及び確保することは非常に重要である。最も重要であるとして考慮すべき事項は、電気化学素子が誤作動してもユーザに傷害を負わせてはならないということであり、そのため安全規格では電気化学素子内の発火及び発煙などを厳しく規制している。電気化学素子の安全特性において、電気化学素子が過熱されて熱暴走が起きるか又はセパレータが貫通される場合は、爆発につながる恐れがある。特に、電気化学素子のセパレータとして通常使用されるポリオレフィン系多孔性高分子基材は、材料的特性及び延伸を含む製造工程上の特性によって、100℃以上の温度で甚だしい熱収縮挙動を見せ、カソードとアノードとの間の短絡を起こす。
【0006】
リチウム二次電池などの電気化学素子の安全性問題を解決するため、多数の気孔を有する多孔性高分子基材の少なくとも一面に、過量の無機物粒子とバインダー高分子との混合物をコーティングして多孔性コーティング層を形成したセパレータが提案されている。
【0007】
しかし、従来使用されているアルミナ、ベーマイト無機物粒子だけでは、相変らず多孔性高分子基材の熱収縮率が高いため、セパレータの安全性を高める必要がある。また、多孔性コーティング層の接着力を向上させようとしてフッ素系高分子のみを使用するだけでは、寸法及び容量が大きくなる電気化学素子の近年の安全性要件を満足し難い。このような問題は、薄膜セパレータにおいて特に深刻である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、機械的安全性が向上し、且つ、耐熱性が強化されたセパレータを提供することである。
【0009】
また、薄膜セパレータを適用することで、セパレータを含むリチウム二次電池のエネルギー密度を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、下記具現例によるリチウム二次電池用セパレータを提供する。
【0011】
第1具現例は、
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成された多孔性コーティング層と、を含み、
前記多孔性コーティング層は、難燃性粒子、高耐熱性バインダー高分子及びフッ素系バインダー高分子を含み、前記難燃性粒子は、150~250℃で吸熱反応温度を有し、前記高耐熱性バインダー高分子は、K値(K-value)が120以上であって、且つ、ガラス転移温度が100℃以上であり、
前記難燃性粒子と前記高耐熱性バインダー高分子との重量比(R)は、下記の数式1を満足し、
前記フッ素系バインダー高分子の含量が前記高耐熱性バインダー高分子の含量よりも多いことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
[数式1]
5<R[(難燃性粒子の重量)/(高耐熱性バインダー高分子の重量)]≦10
【0012】
第2具現例は、第1具現例において、
前記難燃性粒子が、金属水酸化物であることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0013】
第3具現例は、第2具現例において、
前記難燃性粒子が、水酸化アルミニウムであることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0014】
第4具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記高耐熱性バインダー高分子と前記フッ素系バインダー高分子との重量比が、20:80~40:60であることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0015】
第5具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記高耐熱性バインダー高分子の重量平均分子量が、1,000K~4,000Kであることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0016】
第6具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記高耐熱性バインダー高分子が、ポリビニルピロリドンであることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0017】
第7具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記フッ素系バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンコポリマー、またはこれらのうちの二つ以上を含むことを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0018】
第8具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記セパレータの厚さが、2μm~10μmであることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0019】
第9具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記セパレータが、下記の数式2のうちの少なくとも三つ以上を満足することを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
[数式2]
通気時間増加率≦500%
熱収縮率≦25%
破断温度≧300℃
破断面積≦10mm
(このとき、通気時間増加率は(セパレータの通気時間-多孔性高分子基材の通気時間)/(多孔性高分子基材の通気時間)×100であり、
熱収縮率は、MD(machine direction)方向及びTD(transverse direction)方向のそれぞれに対して変化した長さを測定して、(最初長さ-150℃/30分間熱収縮処理した後の長さ)/(最初長さ)×100で算定した。)
【0020】
第10具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記難燃性粒子と前記高耐熱性バインダー高分子との重量比が、6~10であることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータに関する。
【0021】
本発明の他の一態様は、下記具現例によるリチウム二次電池を提供する。
【0022】
第11具現例は、
カソード、アノード、及び前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータを含み、前記セパレータが上述した具現例のうちの一具現例によるセパレータであることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、機械的安全性が向上し、且つ、耐熱性が強化されたセパレータを提供することができる。
【0024】
また、薄膜セパレータを適用することで、セパレータを含むリチウム二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使われた用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0026】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0027】
また、本明細書で使用される場合、「含む(comprise、comprising)」は、言及した形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/またはこれら群の存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/または群の存在または付加を排除するものではない。
【0028】
本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0029】
本明細書の全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組合せ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組合せを意味し、上記の構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0030】
高分子素材を含む多孔性基材、及び前記基材の少なくとも一面に形成された多孔性コーティング層を含むセパレータは、カソードとアノードとの物理的接触を遮断して短絡を防止する。また、リチウムイオンの移動通路としての役割をする。このとき、多孔性コーティング層は、多孔性高分子基材の熱収縮率を下げてセパレータの安全性を向上させることができる。
【0031】
従来、多孔性コーティング層内の無機物粒子としてアルミナ、ベーマイトが使用されているが、電気化学素子の容量が大きくなるにつれてセパレータの安全性がさらに求められている。
【0032】
そのため、本発明では、従来のアルミナの代わりに難燃性粒子を使用する。すなわち、本発明の一態様では、難燃性粒子を投入することで、多孔性コーティング層の熱的安定性を改善することができる。
【0033】
ただし、本発明者等は、フッ素系バインダー高分子とともにこのような難燃性粒子で多孔性コーティング層を製造する場合、アルミナを使用した多孔性コーティング層と同一厚さで比べるとき、熱収縮率がかえって高くなる問題を見出した。これは、難燃性粒子がアルミナに比べて低い密度を有するからであると見られる。換言すると、難燃性粒子の質量当たりの体積が大きいため、これを使用して同一厚さで多孔性コーティング層を形成する場合、同一含量のアルミナに比べて、セパレータの機械的強度が低下し、セパレータの熱収縮率が増加する問題が発生することを見出した。
【0034】
そこで、本発明者等は、セパレータの安全性をさらに向上させるため、難燃性粒子を使用しながらも、セパレータの熱収縮率が改善されたセパレータの提供を図る。また、特に薄膜セパレータで機械的安全性が向上したセパレータの提供を図る。この場合、薄膜セパレータを適用することで、セパレータを含むリチウム二次電池のエネルギー密度も向上させることができる。具体的には、セパレータの厚さを減少させて同一容量に対するエネルギー密度を高めることができる。
【0035】
本発明者等は、このような問題を解決するため、多孔性コーティング層が難燃性粒子、高耐熱性バインダー高分子及びフッ素系バインダー高分子を含み、前記化学物質が所定の数値を満足することを発明の特徴とする。
【0036】
具体的には、本発明の一態様によるリチウム二次電池用セパレータは、
多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成された多孔性コーティング層と、を含み、前記多孔性コーティング層が難燃性粒子、高耐熱性バインダー高分子及びフッ素系バインダー高分子を含み、前記難燃性粒子が150~250℃で吸熱反応温度を有し、前記高耐熱性バインダー高分子のK値が120以上であって、ガラス転移温度が100℃以上であり、前記難燃性粒子と前記高耐熱性バインダー高分子との重量比が下記の数式1を満足し、前記フッ素系バインダー高分子の含量が前記高耐熱性バインダー高分子の含量よりも多いことを特徴とする。
[数式1]
5<難燃性無機物粒子/高耐熱性バインダー高分子≦10
【0037】
前記難燃性粒子は、150~250℃で吸熱反応温度を有する。
【0038】
本発明において、吸熱反応温度とは、その温度で吸熱反応が発生し、難燃性粒子内の水分を放出させる温度を意味する。本発明において、吸熱反応温度は、示差走査熱量計(DSC)または多目的熱量計(MMC-DSC)などを通じて測定し得る。具体的には、本発明では示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC、製品名:DSC 2920、TAインスツルメント社製)を用いて難燃性粒子の吸熱反応温度を測定した。難燃性粒子を150℃まで加熱した後、5分間維持し、-100℃まで温度を下げた後、再度加熱した。このとき、温度の上昇速度及び下降速度はそれぞれ10℃/分に調節した。吸熱反応温度は、二回目の温度上昇区間で測定した吸熱ピークの開始地点にした。
【0039】
前記難燃性粒子は、金属水酸化物粒子を含み得る。具体的には、陽イオンとして金属イオンを含み、陰イオンとして水酸基を含み、難燃性を有して、常温で固体状態である粒子であり得る。
【0040】
特に、前記難燃性粒子としては、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、水酸化カリウム粒子などを含み得、中でも水酸化アルミニウム粒子がより望ましい。水酸化アルミニウム粒子は、約200℃~250℃の温度で熱吸収を通じてアルミナ(Al)と水(HO)とに分解され、このとき約1000J/g程度の熱エネルギーを吸収するようになる。これにより、350℃以上の温度で熱吸収を通じて酸化マグネシウムと水とに分解される水酸化マグネシウムなどに比べて、リチウム二次電池などにおいて多孔性コーティング層内の無機物粒子として使用するのに一層望ましい。すなわち、水酸化アルミニウム粒子を使用する場合、電気化学素子における安全性をより増大させることができる。
【0041】
ただし、このような難燃性粒子は、密度が低い。換言すると、質量当たりの体積が大きい。これにより、薄膜構造でコーティングする場合、同一含量の他の無機物粒子に比べて熱収縮率が悪化する問題がある。
【0042】
本発明者等はこのような問題を解決しようとして、難燃性粒子とともに高耐熱性バインダー高分子を使用した。これにより、薄膜多孔性コーティング層を備えたセパレータの熱収縮率を改善することができる。
【0043】
前記高耐熱性バインダー高分子は、K値が120以上であり、ガラス転移温度が100℃以上である。
【0044】
本発明において、「K値(k-value)」とは、熱可塑性樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity)に関する値であって、フィケンチャーのK値(Fikentscher’s K-value)とも称する。前記K値はDIN EN ISO 1628-1の方法で測定し得る。
【0045】
K値が大きいとは、高耐熱性バインダー高分子の粘性が高いという意味であり、K値が大きい高耐熱性バインダー高分子を多孔性コーティング層に使用する場合、多孔性コーティング層を備えたセパレータの耐熱性及び機械的強度が高くなる。
【0046】
一方、前記高耐熱性バインダー高分子は、ガラス転移温度が100℃以上である。一般に、多孔性コーティング層に適用されるバインダー高分子には接着力が求められる。バインダー高分子が接着力を有するためには、ガラス転移温度が常温以下に適用されねばならない。一方、本発明で使用する高耐熱性バインダー高分子は、ガラス転移温度が100℃以上である。ガラス転移温度とは、高分子が温度によって分子活性を有しながら動き始める時点の温度を意味する。したがって、ガラス転移温度が高いほど高分子の構造が安定的である。すなわち、本発明では、従来と異なって、高耐熱性バインダー高分子を使用することでセパレータの熱的安定性を向上させることができる。
【0047】
前記高耐熱性バインダー高分子は、重量平均分子量が1,000K~4,000K、1,500K~4,000K、または2,000K~3、500Kであり得る。このような重量平均分子量を有することで、多孔性コーティング層の耐熱性及び機械的強度を改善する効果がある。本発明において、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography、PL GPC220、アジレント・テクノロジー社製)で、カラム:PL Olexis(Polymer Laboratories製)、溶媒:TCB(トリクロロベンゼン)、流速:1.0ml/分、試料濃度:1.0mg/ml、注入量:200ul、カラム温度:160℃、検出器:アジレント製の高温RI検出器、スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)の条件で測定し得る。
【0048】
前記高耐熱性バインダー高分子は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイドを含み得る。
【0049】
本発明の一具現例によれば、前記高耐熱性バインダー高分子は、ポリビニルピロリドンであり得、前記ポリビニルピロリドンは下記化学式1で表される繰り返し単位を含む。
【0050】
【化1】
【0051】
前記ポリビニルピロリドンバインダー高分子は、ガラス転移温度(Tg)が150~180℃と耐熱性が高く、ラクタム環(lactam ring)構造を有して化学的に安定している。また、カルボニル基(C=O)の高い極性のため、多孔性コーティング層形成用スラリーの分散性及び移動性(mobility)を向上できるという面で、多孔性コーティング層のバインダー高分子として好適である。
【0052】
一方、前記フッ素系バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンコポリマー、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。本発明において、前記フッ素系バインダー高分子は、電極とセパレータとの間の接着力を付与する。本発明の一実施形態において、前記フッ素系バインダー高分子は、電池を製作した後、バインダーが電解液中に溶解されないように重量平均分子量(Mw)100K以上のものを使用することが望ましい。一方、前記重量平均分子量は、高分子溶液を製造するときの溶解度を考慮して2,000K以下、1,800K以下、1,500K以下、または1,000K以下であり得る。
【0053】
一方、本発明において、前記難燃性粒子と前記高耐熱性バインダー高分子との重量比は、下記の数式1を満足する。
【0054】
本発明において、前記難燃性粒子と前記高耐熱性バインダー高分子との重量比(R)は、多孔性コーティング層に含まれた高耐熱性バインダー高分子の重量対比難燃性粒子の重量を示すものである。
[数式1]
5<R[(難燃性粒子の重量)/(高耐熱性バインダー高分子の重量)]≦10
【0055】
数式1の値が10を超えると、高耐熱性バインダー高分子の含量が少なくて所望の熱収縮率が得られない。これにより、セパレータの破断温度が300℃未満になり、破断面積も10mmよりも大きくなる。一方、数式1の値が5以下であると、通気時間が急激に増加する問題がある。これは、高耐熱性バインダー高分子の含量が増加することで気孔度が減少するからであると見られる。
【0056】
本発明の具体的な一実施形態において、数式1の値は6~10の範囲を有し得る。上記のような数値範囲内で本発明の所望の課題をより効果的に達成することができる。すなわち、上記のような数値範囲内で、通気時間増加率≦500%、熱収縮率≦25%、破断温度≧300℃、破断面積≦10mmのうちの三つ以上を満足するセパレータを得ることができる。
【0057】
また、本発明の一態様によるセパレータは、フッ素系バインダー高分子の含量が高耐熱性バインダー高分子の含量よりも多い。具体的には、前記高耐熱性バインダー高分子とフッ素系バインダー高分子との重量比は20:80~40:60であり得る。上記のような数値範囲を満足する場合、電極接着力が改善されて所望の効果を達成することができる。
【0058】
本発明において、前記高耐熱性バインダー高分子とフッ素系バインダー高分子との重量比は、多孔性コーティング層における高耐熱性バインダー高分子の重量とフッ素系バインダー高分子の重量との割合を示す。
【0059】
本発明の具体的な一実施形態において、多孔性高分子基材の一面または両面に多孔性コーティング層が形成され得る。
【0060】
本発明において、前記多孔性高分子基材は、多孔性膜であり、アノードとカソードとを電気的に絶縁させて短絡を防止するとともに、リチウムイオンの移動経路を提供するものであって、通常電気化学素子のセパレータ素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。
【0061】
前記多孔性高分子基材は、具体的には、多孔性高分子フィルム基材または多孔性高分子不織布基材であり得る。
【0062】
前記多孔性高分子フィルム基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンのようなポリオレフィンからなる多孔性高分子フィルムであり得、このようなポリオレフィン多孔性高分子フィルム基材は、例えば80℃~130℃の温度でシャットダウン機能を発現する。
【0063】
このとき、ポリオレフィン多孔性高分子フィルム基材は、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらの2種以上を混合した高分子から形成し得る。
【0064】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの他にポリエステルなどの多様な高分子を用いてフィルム状に成形して製造してもよい。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、2層以上のフィルム層が積層された構造で形成され得、それぞれのフィルム層は上述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子を単独でまたはこれらを2種以上混合した高分子から形成され得る。
【0065】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、上述したポリオレフィン系の他に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレートなどをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子から形成され得る。
【0066】
前記多孔性高分子基材の厚さは、特に制限されないが、詳しくは1~100μm、より詳しくは5~50μmであり、近年電池の高出力化/高容量化が進行しているため、多孔性高分子基材は薄膜を用いることが有利である。前記多孔性高分子基材に存在する気孔の直径は10nm~100nm、10nm~70nm、10nm~50nm、または10nm~35nmであり、気孔度は5%~90%、望ましくは20%~80%であり得る。ただし、本発明において、このような数値範囲は具体的な実施形態または必要に応じて容易に変形され得る。
【0067】
前記多孔性高分子基材の気孔は、多様な形態の気孔構造があり、ポロシメーター(porosimeter)を用いて測定されたか又はFE-SEM上で観察された気孔の平均サイズのうちのいずれか一つでも上述した条件を満足すれば、本発明に含まれる。
【0068】
ここで、一般に知られている一軸延伸乾式セパレータの場合は、FE-SEM上でMD方向の気孔サイズではなく、TD方向の気孔サイズで中央の気孔サイズを基準にし、その他に網構造を有する多孔性高分子基材(例えば、湿式PEセパレータ)はポロシメーターで測定した気孔径を基準にし得る。
【0069】
前記多孔性コーティング層の厚さは、特に制限されないが、詳しくは1~10μm、より詳しくは1.5~6μmであり、前記多孔性コーティング層の気孔度も特に制限されないが、35~65%であることが望ましい。
【0070】
本発明の一態様によるセパレータは、多孔性コーティング層の成分として、上述した無機物粒子及びバインダー高分子の外に、その他の添加剤をさらに含み得る。
【0071】
本発明の一態様によるセパレータは、次のような方法で製造され得る。しかし、これに制限されることはない。
【0072】
まず、多孔性高分子基材を用意する。多孔性高分子基材については上述した記載を参考する。
【0073】
その後、難燃性粒子、高耐熱性バインダー高分子、フッ素系バインダー、及び溶媒(難燃性粒子に対しては分散媒)を含む多孔性コーティング層形成用スラリーを用意した後、用意した多孔性高分子基材上にスラリーを塗布及び乾燥する。
【0074】
このとき、前記多孔性コーティング層形成用スラリーは、当分野の通常の方法で混合し得る。本発明の具体的な一実施形態において、高耐熱性バインダー高分子とフッ素系バインダー高分子とが溶媒に溶解された高分子溶液に、難燃性粒子を分散させた多孔性コーティング層形成用スラリーを用意し得る。
【0075】
このとき、使用可能な溶媒の非制限的な例としては、水、アセトン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサンの中から選択された1種の化合物または2種以上の混合物が挙げられる。望ましくは、アセトンであり得る。また、追加的にアルコールをさらに含み得、2種以上を混合してもよい。このとき、前記アルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0076】
その後、用意した前記多孔性コーティング層形成用スラリーを多孔性基材に塗布及び乾燥して多孔性コーティング層が形成されたセパレータを製造する。
【0077】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを前記多孔性高分子基材に塗布(コーティング)する方法は、特に限定されないが、スロットコーティングやディップコーティング方法を使用することが望ましい。スロットコーティングは、スロットダイを通じて供給されたスラリーが基材の全面に塗布される方式であって、定量ポンプから供給される流量によってコーティング層の厚さを調節可能である。また、ディップコーティングは、スラリーで満たされたタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であって、スラリー濃度及びスラリータンクから基材を引き上げる速度によってコーティング層の厚さを調節可能である。より正確にコーティング厚さを制御するため、浸漬した後、マイヤーバー(Mayer bar)などを用いて後計量してもよい。
【0078】
このように多孔性コーティング層形成用スラリーがコーティングされた多孔性高分子基材をオーブンのような乾燥器を用いて乾燥することで、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を形成する。
【0079】
前記多孔性コーティング層では、難燃性粒子が充填されて互いに接触した状態で前記高耐熱性バインダー高分子及びフッ素系バインダー高分子のバインダー高分子によって互いに結着し、これにより難燃性粒子同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記難燃性粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成し得る。
【0080】
すなわち、バインダー高分子は、難燃性粒子同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着、例えば、バインダー高分子が難燃性粒子同士の間を連結及び固定し得る。また、前記多孔性コーティング層の気孔は難燃性粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームが空き空間になって形成された気孔であり、これは難燃性粒子による充填構造(closely packed or densely packed)で実質的に接触する難燃性粒子によって限定される空間であり得る。
【0081】
前記乾燥は、乾燥チャンバ(drying chamber)で行われ得、このとき、非溶媒の塗布によって乾燥チャンバの条件は特に制限されない。
【0082】
本発明の一態様による多孔性コーティング層は、加湿条件で乾燥される。例えば、相対湿度30%以上、35%以上、または40%以上であり得、80%以下、75%以下、または70%以下で行われ得る。
【0083】
本発明の一態様による電気化学素子は、カソード、アノード、前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータを含み、前記セパレータが上述した本発明の一実施形態によるセパレータである。
【0084】
このような電気化学素子は、電気化学反応を行うあらゆる素子を含み、具体的には、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタなどが挙げられる。特に、前記二次電池のうちリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が望ましい。
【0085】
本発明のセパレータとともに適用されるカソードとアノードの両電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法で電極活物質を電極集電体に結着した形態で製造し得る。前記電極活物質のうちカソード活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子のカソードに使用される通常のカソード活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用することが望ましい。アノード活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子のアノードに使用される通常のアノード活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイトまたはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。カソード集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、アノード集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0086】
本発明の電気化学素子で使用される電解液は、Aのような構造の塩であり、AはLi、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、BはPF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものであるが、これらに限定されることはない。
【0087】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階において行えばよい。すなわち、電池組み立ての前または電池組み立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【0088】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0089】
実施例1~3
アセトンに、高耐熱性バインダー高分子であるポリビニルピロリドン(K値=120、重量平均分子量=2,500K)及びフッ素系バインダー高分子であるポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(重量平均分子量=400K)を投入し、50℃で約4時間溶解させてバインダー高分子溶液を製造した。その後、前記バインダー高分子溶液に難燃性粒子であるAl(OH)(粒子サイズ:700nm)を投入し、12時間ボールミル法を用いて難燃性粒子を破砕及び分散して多孔性コーティング層形成用スラリーを用意した。このとき、前記多孔性コーティング層形成用スラリーの組成は表1のように制御した。
【0090】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを、ディップコーティング方式、23℃、相対湿度40%の条件で、ローディング量の総含量が13.5g/mになるように厚さ9μmのポリエチレン多孔性基材(東レ社製、気孔度:45%、通気時間:171s/100cc)の両面に塗布及び乾燥して多孔性コーティング層が形成されたセパレータを製造した。
【0091】
比較例1~4
難燃性粒子、高耐熱性バインダー高分子、フッ素系バインダー高分子の含量を下記の表1のように制御したことを除き、実施例1と同一にセパレータを製造した。
【0092】
【表1】
【0093】
比較例5及び6
高耐熱性バインダー高分子のK値を下記の表2のように制御したことを除き、実施例2と同一にセパレータを製造した。
【0094】
【表2】
【0095】
評価結果
具体的な評価方法は、下記のようである。
【0096】
1)厚さ測定
セパレータ、多孔性基材及び多孔性コーティング層の厚さは、厚さ測定器(ミツトヨ社製、VL-50S-B)を用いて測定した。
【0097】
2)通気時間の測定
通気時間測定装置(旭精工製、製品名:EG01-55-1MR)を用いて一定の圧力(0.05MPa)で100mlの空気がセパレータを通過するのにかかる時間(秒)を測定した。サンプルの左側/中間/右側の1点ずつ総3点を測定して平均を記録した。
【0098】
3)熱収縮率の測定
セパレータの熱収縮率はMD方向及びTD方向のそれぞれに対して変化された長さを測定し、(最初長さ-150℃/30分間熱収縮処理した後の長さ)/(最初長さ)×100で算定した。
【0099】
4)破断温度の測定
破断温度は、動的機械分析機(Dynamic Mechanical Analyzer、TAインスツルメント社製、DMA850)を用いて測定した。具体的には、0.0025Nの一定の力でセパレータを固定した後、10℃/分で昇温しながらセパレータが切れる温度を破断温度とした。
【0100】
5)破断面積の測定
250℃で加熱された直径5mmΦの釘を25mm/秒の速度でセパレータに貫通させた。貫通した後、セパレータが破断される面積を定規で測定した。
【0101】
6)K値の測定
K値はDIN EN ISO 1628-1の方法で測定した。
【0102】
7)重量平均分子量の測定
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC、PL GPC220、アジレント・テクノロジー社製)で、カラム:PL Olexis(Polymer Laboratories製)、溶媒:TCB(トリクロロベンゼン)、流速:1.0ml/分、試料濃度:1.0mg/ml、注入量:200ul、カラム温度:160℃、検出器:アジレント製の高温RI検出器、スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)の条件で測定した。