(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】最適のハブ直径比を有する可変ピッチプロペラ
(51)【国際特許分類】
B63H 1/20 20060101AFI20240524BHJP
B63H 3/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B63H1/20 A
B63H3/00 Z
(21)【出願番号】P 2022570398
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2021006123
(87)【国際公開番号】W WO2021235790
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061136
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0096303
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513235337
【氏名又は名称】エイチディー コリア シップビルディング アンド オフショア エンジニアリング カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】512070698
【氏名又は名称】ヒョンデ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェブ
(72)【発明者】
【氏名】チョエ チャンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】ムン ギルファン
(72)【発明者】
【氏名】キム ドワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン グァンヒ
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-522155(JP,A)
【文献】特開平02-063994(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193149(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 1/20
B63H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の推進軸に装着されたハブと、
前記ハブの周りに装着され、ピッチが可変する羽根とを含む可変ピッチプロペラであって、
前記羽根は、羽根シャンクと、当該羽根シャンクに固定され前記ハブに対して回転する羽根キャリアと、を含み、
前記ハブの内部には、前記ハブの長手方向に移動可能なクロスヘッドが組み込まれ、前記クロスヘッドの各側面には、当該クロスヘッドの移動方向に対して斜めに延びるガイドスロットが形成され、
前記ガイドスロットには、前記羽根キャリアに形成されたピンが挿入され、前記クロスヘッドが前記ハブの長手方向に移動すると当該ガイドスロットに沿って前記ピンが移動し、
前記ガイドスロットに沿って移動する前記ピンによって前記羽根キャリアが回転し、当該羽根キャリアの回転に伴い前記ピッチが可変するように構成され、かつ、プロペラの直径
Dと前記ハブの直径
HとのH/D比が0.170~0.2であることを特徴とする可変ピッチプロペラ。
【請求項2】
低速肥大船であるタンカー(Tanker)の場合、前記H/D比が0.170~0.190であることを特徴とする請求項1に記載の可変ピッチプロペラ。
【請求項3】
低速肥大船であるバルクキャリア(Bulk Carrier)の場合、前記H/D比が0.185~0.20であることを特徴とする請求項1に記載の可変ピッチプロペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の運航条件に応じて羽根ピッチを変更可能な可変ピッチプロペラに係り、特に、固定ピッチプロペラ(fixed pitch propeller;FPP)の推進効率に近い高効率を有するようにハブのサイズを低減することができる最適のハブ直径比を有する可変ピッチプロペラに関する。
【背景技術】
【0002】
プロペラは、軸系を介して伝達されてきた推進機関の動力を推進力に変化させて船舶を推進させる装置である。船舶用プロペラには、スクリュープロペラ(screw propeller)、ウォータジェット推進装置(jet propeller)、外輪車、フォイドシュナイダプロペラなどがある。これらのうちスクリュープロペラが他種の推進装置に比べて推進効率が高く、且つ構造が簡単であり、しかも製作コストが安価であることから最も多用されている。
【0003】
スクリュープロペラは性能別にも区分できるが、プロペラの羽根が回転軸に連結されたハブに固定された固定ピッチプロペラ(fixed pitch propeller;FPP)、プロペラの羽根が回転軸に連結されたハブで動くことがあるためピッチ角を調節可能な可変ピッチプロペラ(controllable pitch propeller;CPP)、フロントプロペラ(front propeller)から流出する回転エネルギーをフロントプロペラとは逆方向に回転するリアプロペラ(rear propeller)で回収して推進力に変換する二重反転プロペラ(contra-rotating propeller;CRP)などがある。
【0004】
大型商船、油槽船などのような低速肥大船は、プロペラの効率と燃費が重要な要素である。このため、通常、低速肥大船には一定の船速で運航が可能な固定ピッチプロペラが装着される。
【0005】
近年、環境汚染などの問題点を解決するための各種の海洋環境規制が強化されており、燃費効率の増大を目的に設計された固定ピッチプロペラでは、その船舶の運航にあたって各種の海洋環境規制を満たすことができないという問題点がある。
【0006】
一方、船舶の運航条件に応じて羽根のピッチを可変可能な従来の可変ピッチプロペラの場合には、羽根の角度を変更するための設備及び装備がハブ内に設置される必要がある。そのため、ハブの大きさが固定ピッチプロペラのハブの大きさより大きくなるという短所がある。また、多様なピッチで運用される必要があるため、特定のピッチに対して翼型が最適化されていない。そのため、従来の可変ピッチプロペラは固定ピッチプロペラの推進効率に比べて4~8%低下するという問題点を有する。また、可変ピッチプロペラの複雑な加工による製造コストのアップのため、可変ピッチプロペラを低速肥大船に適用するには実効性が落ちる。
【0007】
一方、低速肥大船が各種の海洋環境規制に対処して適合した運航をするためには運航条件の変更が必要になる。また、このような運航条件の変更に応じて効率的に羽根のピッチを変更する必要があるが、コストアップ及び推進効率の低下といった短所のため、適用が容易ではないという問題点がある。
【0008】
以下では、従来の可変ピッチプロペラの駆動メカニズムについて具体的に説明する。
【0009】
図1は、従来技術に係る可変ピッチプロペラの駆動メカニズムを示した概念図である。
図2は、
図1に示された可変ピッチプロペラの分解図である。
図3A乃至
図3Cは、油圧によって羽根のピッチが変化する関係を示した概念図である。
【0010】
図1に示されたように、可変ピッチプロペラ10は、複数の羽根20がハブ30の周りに等角で装着され、ハブ30内部に延在した油圧ラインを介して供給される作動油の流動によってクロスヘッド(Cross Head)31がハブ30の長手方向に移動する。
【0011】
クロスヘッド31は、羽根20の個数分の側面を有する柱構造である。一例示として、ハブ30に装着される羽根20が4個である場合は、四角柱構造のクロスヘッド31が備えられる。また、羽根20が5個である場合は、クロスヘッドは五角柱構造を有してよい。
【0012】
一方、羽根シャンク(blade shank)21には、羽根キャリア(blade carrier)23が固定される。羽根キャリア23に設けられたピン25がクロスヘッド31と整合した状態で、油圧によってクロスヘッド31がハブ30の長手方向に前後移動する。それにより、クロスヘッド31とピン25との整合構造によって羽根ピッチが変化する。
【0013】
図2に示されたように、クロスヘッド31の側面にはハブ30の長手方向の推進軸1の中心線に対して垂直方向にスライド溝33が形成される。
【0014】
スライド溝33にはスライドシュー(sliding shoe)35が位置し、スライドシュー35にピン25が挿入される。
【0015】
このような従来技術に係る可変ピッチプロペラ10の場合、油圧によってクロスヘッド31がハブ30の長手方向、すなわち、推進軸1の中心線に沿って前後移動する。この場合、
図3A乃至
図3Cに示されたように、スライドシュー35がスライド溝33の長手方向の推進軸1の中心線に対して垂直方向に移動するようになる。これと同時にクロスヘッド31が推進軸1の中心線に沿って移動するに伴い、ピン25は羽根キャリア23の中心点を原点として回転する。
【0016】
すなわち、ピン25がクロスヘッド31の前後移動とともにスライド溝33の垂直方向に移動しながら、ハブ30の周りに回転可能に装着された羽根20を回転させて羽根ピッチが調節される。
【0017】
このように、従来の可変ピッチプロペラ10の駆動メカニズムの場合、ピン25が推進軸1の中心線に沿って前後移動するクロスヘッド31とともに推進軸1の中心線に対して垂直方向に形成されたスライド溝33に沿って移動しながら羽根ピッチを調節する。この場合、羽根ピッチの調節可能な範囲を十分に確保するためには、垂直方向のスライド溝33の長さを十分に確保する必要がある。そのため、クロスヘッド31が大きくならざるを得ず、且つ、クロスヘッド31が大きくなるに伴いプロペラのハブ30もまた大きくなるという問題点がある。
【0018】
また、可変ピッチプロペラ10の回転方向にスライド溝33が形成されることにより、プロペラ10の回転によって発生する抵抗の方向とスライド溝33の長手方向とがほぼ同一である。
【0019】
したがって、羽根ピッチを維持するためには、クロスヘッド31が推進軸の方向に移動しないように油圧で固定しなければならない。このようにクロスヘッド31の移動を油圧で固定するためには、油圧システムの要求性能(流量及び圧力)が高くなければならないことから、油圧システムのコストがアップするという問題点がある。
【0020】
一方、従来の可変ピッチプロペラ10のピン25は約70度程度回転可能である。したがって、羽根ピッチの可変範囲も約±35度であることから、ピッチ角の調節範囲が広いという長所がある。しかし、船舶の種類によっては、必要以上に広い可変範囲を有するようになることから、必要以上の大きいハブを備えた可変ピッチプロペラが装着されるという短所がある。
【0021】
従来の可変ピッチプロペラは、前述したようにスライド溝の構造によるクロスヘッドの大きさの増大、油圧システムの容量増大に伴いハブがプロペラの直径に比べて大きいものが設けられる。
【0022】
一例として、
図10に示された左側プロペラは従来の可変ピッチプロペラの構造のものであって、H/D値が0.206である。ここで、Hはハブの直径であり、Dはプロペラの直径である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】特開2020-0015347号公報
【文献】特開2017-190020号公報
【文献】韓国公開特許第10-2016-0116224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、プロペラの羽根を2ピッチ範囲に可変可能に構成することで、運航条件に応じた羽根ピッチの変更が可能な可変ピッチプロペラを提供することにその目的がある。また、本発明は、ハブの大きさの増大を最小化し且つ固定ピッチプロペラの推進効率に近い高効率を発現することができる最適のハブ直径比を有する可変ピッチプロペラを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記のような目的を達成するための本発明は、船舶の推進軸に装着されたハブと、ハブの周りに装着され、ピッチが可変する羽根とを含む可変ピッチプロペラであって、プロペラの直径Hとハブの直径DとのH/D比が0.170~0.2であることを技術的特徴とする。
【0026】
また、本発明の好適な実施例によれば、低速肥大船であるタンカー(Tanker)の場合、H/D比が0.170~0.190である。
【0027】
また、本発明の好適な実施例によれば、低速肥大船であるバルクキャリア(Bulk Carrier)の場合、H/D比が0.185~0.20である。
【発明の効果】
【0028】
前述したように、本発明に係る最適のハブ直径比を有する可変ピッチプロペラは、各種の海洋環境規制などによって運航条件を変更しなければならない場合、運航条件に適合した羽根ピッチに可変可能に構成したものであって、推進軸の長手方向に対して斜め方向に形成されたガイドスロットに沿ってピンが移動することによって羽根のピッチ変更に必要な油圧を低減することができる。このように小さい油圧でも羽根ピッチを変更可能になることによって油圧システムの容量が低減し、それに伴いハブの大きさも減縮することができる。
【0029】
また、ガイドスロットが推進軸の斜め方向に形成されることによってクロスヘッドの大きさを低減することができ、ハブの大きさを従来の可変ピッチプロペラのハブよりも小さく構成することができる。
【0030】
このように、可変ピッチプロペラの駆動メカニズムを変更してハブの大きさ(H/D)を従来の可変ピッチプロペラのハブの大きさに比べて5~15%減縮することができるという長所があり、且つ、プロペラの材質を変更代替する場合は、約25%まで減縮可能な構造を有するという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来技術に係る可変ピッチプロペラの駆動メカニズムを示した概念図である。
【
図2】
図1に示された可変ピッチプロペラの分解図である。
【
図3A-C】油圧によって羽根のピッチが変化する関係を示した概念図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラを示した斜視図である。
【
図5】
図4に示された可変ピッチプロペラの分解斜視図である。
【
図6A-C】油圧によって羽根のピッチが変化する関係を示した概念図である。
【
図7】斜めガイドスロットに沿って移動するピンに作用する力を示した概念図である。
【
図8】クロスヘッドの移動に応じたピッチの変化及び油圧の大きさを示したグラフである。
【
図9】本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラのクロスヘッドの側面と従来の可変ピッチプロペラのクロスヘッドの側面とを比べた概念図である。
【
図10】従来技術に係る可変ピッチプロペラのハブと本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラのハブとを比べた比較図である。
【
図11】ガイドスロットの両端に形成されたエンドスロットを示した概念図である。
【
図12】エンドスロット及びガイドスロットに沿って移動するピンに作用する力を示した概念図である。
【
図13】
図12に示されたピンにスライドシューを装着した例を示した分解斜視図である。
【
図14】
図13に示されたスライドシューがピンに沿って第2ガイドスロットに沿って移動する関係を示した概念図である。
【
図15】本発明の一実施例に係るスライドロックブロックを備えた可変ピッチプロペラを示した概念図である。
【
図16】
図15に示されたスライドロックブロックの断面図である。
【
図17】
図15に示されたスライドロックブロックの分解斜視図である。
【
図18】スライドロックブロックの作動関係を示した概念図である。
【
図19】本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラを示した概念図である。
【
図20】
図19に示されたオイルダンパボックスに装着された油圧ロック部を示した概念図である。
【
図21】
図20に油圧ロック部の作動を説明した概念図である。
【
図22】死点でのピストンとクロスヘッド及び油圧ロック部の作動関係を示した概念図である。
【
図23】本発明の一実施例に係るロッキングシューを備えた可変ピッチプロペラを示した概念図である。
【
図24】クロスヘッドの前後移動に伴うピンの移動経路に応じたロッキングシューのロック及びロック解除関係を示した概念図である。
【
図25】ロッキングブロックとロッキングシューとの結合に伴うロッキングシューの変形関係を示した詳細図である。
【
図26】本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラの油圧システムの作動によってピストンが後方に移動した状態を示した断面図である。
【
図27】油圧が解除された状態でコイルばねの付勢力によってピストンが前方に移動した状態を示した断面図である。
【
図28】本発明の一実施例に係るサーバ油圧シリンダを備えた油圧回路と従来の油圧回路とを比べた概念図である。
【
図29】
図26に示された油圧システムの変形例を示した概念図である。
【
図30】本発明の一実施例に係るオンオフ弁を備えた油圧システムを示した概念図である。
【
図31】
図26に示されたようにシリンダの内部にコイルばねが装着された状態でオンオフ弁を備えた油圧システムを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明に係る可変ピッチプロペラの好適な実施例について、可変ピッチプロペラの駆動メカニズム、ハブと羽根の直径比、各死点でのロック装置、油圧システムの順に添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0033】
[可変ピッチプロペラの駆動メカニズム]
図4は、本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラを示した斜視図である。
図5は、
図4に示された可変ピッチプロペラの分解斜視図である。
図6A乃至
図6Cは、油圧によって羽根のピッチが変化する関係を示した概念図である。
図7は、斜めガイドスロットに沿って移動するピンに作用する力を示した概念図である。
図8は、クロスヘッドの移動によるピッチの変化及び油圧の大きさを示したグラフである。
図9は、本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラのクロスヘッドの側面と従来の可変ピッチプロペラのクロスヘッドの側面とを比べた概念図である。
【0034】
図4に示されたように、船尾に延在した推進軸の末端に装着された可変ピッチプロペラ100は、推進軸に連結されたハブ130と、2ピッチ(pitch)角の調節が可能であり且つハブ130の周りに装着された複数の羽根120を含む。
【0035】
以下では、このように構成された可変ピッチプロペラの駆動メカニズムについて具体的に説明する。
【0036】
図4及び
図5に示されたように、ハブ130の内部には、ハブ130の長手方向に移動可能なクロスヘッド131が組み込まれる。クロスヘッド131の各側面には、クロスヘッド131の移動方向、すなわち、推進軸の中心線に対して斜めにガイドスロット133が形成される。ガイドスロット133にはピン125が挿入される。
【0037】
前述したように、羽根シャンク(blade shank)121には羽根キャリア(blade carrier)123が固定される。羽根キャリア123に設けられたピン125は、クロスヘッド131のガイドスロット133に挿入される。
【0038】
クロスヘッド131がハブ130の長手方向に移動すると、ピン125は斜めのガイドスロット133に沿って移動するようになる。ガイドスロット133の両端、すなわち、上死点133Hと下死点133Lとの間を移動するピン125によって羽根キャリア123が回転し、羽根キャリア123の回転に伴い羽根ピッチが可変する。
【0039】
図7に示されたように、クロスヘッド131の前後移動に伴いピン125もガイドスロット133に沿って移動することに応じた、羽根120のピッチ変更及び油圧の大きさは、下記の数学式1と数学式2にて求めることができる。
【0040】
【0041】
【0042】
ここで、Tsp:スピンドルトルク、F’cyl:油圧システムの油圧力、dstr:油圧システムのストローク、θs:ガイドスロット角度、θ’R:スピンドル角度範囲、θ:スピンドル角度、rp:ピンからスピンドル中心点までの距離を示す。
【0043】
数学式1と数学式2から分かるように、ピッチの可変角度範囲が小さいほど、且つクロスヘッド131の移動距離、すなわち、油圧システム140のストロークが長いほど、油圧システム140の荷重は減少するようになる。
【0044】
一方、クロスヘッド131の後端にはロッド141Rが連結されて後方に延在し、ロッド141Rの末端には油圧システム140のピストン141が固定される。ピストン141は、ハブ130の後端に設けられた油圧システム140のシリンダ143内部に位置する。
【0045】
そして、ハブ130内部に延在した油圧ライン145は、ピストン141を介してシリンダ143内側に連通する。このため、油圧ライン145を介してシリンダ143の内部に作動油が流入または流出する。作動油がピストン141を基準にシリンダ143の内側後方に流入するか、シリンダ143の内側前方に流入または流出することに応じてピストン141が前方または後方に移動する。それに伴い、ピストン141に連結されたクロスヘッド131もまた油圧によって前後移動する。
【0046】
下記では、
図6A乃至
図6Cを参照して油圧システムのストロークの伸縮による羽根ピッチの可変関係を説明する。
【0047】
図6Aに示されたように、油圧システムのストロークが伸長するように作動油をピストン141の後方に流入させると、油圧によってピストン141が前方、すなわち、船首方向に移動する。ピストン141の移動に伴い、クロスヘッド131もまた船首方向に移動するようになる。それに伴い、ピン125はガイドスロット133の上死点133Hに移動するようになり、ピン125の移動に伴い羽根120は
図6Aの図中の時計回りに回転する。ピン125が回転して上死点133Hに位置すると、羽根120は時計回りに最大に回転した状態になる。
【0048】
この状態でピストン141の後方に供給された作動油を排出させながら作動油をピストン141の前方に流入すると、ピストン141は後進する。ピストン141の後進に伴い、ピン125はガイドスロット133に沿って上死点133Hから下死点133Lに移動する。
【0049】
このとき、ピン125の移動に伴い、羽根120は
図6Bの図中に示されたように反時計回りに回転する。油圧システムのストロークが最大に収縮した状態、すなわち、ピストン141がシリンダ143内部で最大に後進した状態では、
図6Cに示されたように、ピン125はガイドスロット133の下死点133Lに位置する。このように、ピン125の移動に伴い、羽根120は反時計回りに最大に回転した地点に位置する。
【0050】
このように、羽根120に連結されたピン125が推進軸に対して斜め方向に設けられたガイドスロット133に沿って移動しながら、上死点133Hと下死点133Lに対応する2ピッチ可変が可能になる。
【0051】
このような駆動メカニズムによれば、ガイドスロット133の傾きが大きく且つ長さが長いほど羽根ピッチの可変範囲が広くなることが分かる。しかし、この場合、数学式2から分かるように、油圧が大きくならざるを得ず、それに伴い、油圧システムの規模が大きくなる。また、この場合、クロスヘッド131が大きくなりながらプロペラの推進効率が低下するという問題点が生じるようになる。
【0052】
そのため、本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラでは、羽根の2ピッチの可変範囲を10度以内に限定することが好ましい。
【0053】
図8は、可変ピッチプロペラの羽根角度に応じた必要油圧の大きさを相対的に示したグラフである。
【0054】
図8に示されたグラフによれば、本発明の実施例のように羽根ピッチの可変範囲が±10度範囲内である場合、必要な油圧は約100KNである。一方で、従来の可変ピッチプロペラ10のように羽根ピッチの可変範囲が±35度の範囲である場合、必要な油圧は580~720KNである。
【0055】
このように、本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラの場合、羽根ピッチの可変範囲を±10度内に制限して必要な油圧を低減することができる。また、クロスヘッド131のガイドスロット133を推進軸に対する斜め方向に位置させてハブ130の大きさを減縮することで、低速肥大船の2種類の運航条件に適合した羽根ピッチに可変することができる。
【0056】
このように構成された可変ピッチプロペラ100のクロスヘッド131の側面は、
図9の(a)に示されたように、ガイドスロット133が推進軸の長さに対する斜め方向にガイドスロット133が形成される。それに伴い、ガイドスロット133が形成された部位だけがピン125と整合できるように突出した構造を有する。クロスヘッド131は、羽根120の個数分の側方向に突出した構造を有する。したがって、クロスヘッド131は、その中心から最外郭までの距離D1が短いためクロスヘッド131の側断面が小さい。
図9の(b)に示されたように、従来のクロスヘッド31の側面は、推進軸の垂直方向にスライド溝33が形成される。そのため、クロスヘッド31の中心から最外郭までの距離D2の距離が本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラの距離に比べて長い。したがって、クロスヘッド31の側断面が大きくなる。
【0057】
このように、クロスヘッド31の断面積が大きくなるに伴いハブ30の直径も大きくなる。また、本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラのハブ直径は、相対的に従来の可変ピッチプロペラのハブ直径より小さいため、推進効率を固定ピッチプロペラにほぼ近い水準まで増大させることができる。
【0058】
[ハブと羽根の直径比]
図10は、従来技術に係る可変ピッチプロペラのハブと本発明の一実施例に係る可変ピッチプロペラのハブとを比べた比較図である。
【0059】
図10に示されたプロペラは、従来技術に係る垂直型スライド溝が形成されたクロスヘッドを備えた従来の可変ピッチプロペラ(左側プロペラ)と斜め型ガイドスロットが形成されたクロスヘッドを備えた本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラ(右側プロペラ)を示したものである。
【0060】
直径Dが8700mmである可変ピッチプロペラの場合、従来の可変ピッチプロペラのハブ直径Hは1,790mmで直径比(H/D)が0.206である。一方で、本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラのハブ直径Hは1,610mmで直径比(H/D)が0.185である。したがって、従来の可変ピッチプロペラの直径比に比べて約10%を減縮することができる。
【0061】
一方、ハブの直径が減少すると安全率も減少するようになる。特にハブの直径が10%減少すると安全率は約30%減少するようになり、ハブの直径が15%減少すると安全率は約40%減少するようになる。
【0062】
ここで安全率とは、プロペラとハブの構造特性上発生する繰り返し荷重による疲労強度評価値のことを意味する。
【0063】
通常、従来の可変ピッチプロペラの場合、安全率マージンを勘案して15%まで減少可能である。
【0064】
したがって、同一のプロペラの直径Dを有するとき、本発明に係る可変ピッチプロペラのハブ直径Hを、従来の可変ピッチプロペラのハブ直径Hに比べて5~15%減縮することができる。
【0065】
さらに、本発明に係るメカニズムを有する可変ピッチプロペラの場合、プロペラの適合した材質を選択して代替すると、従来の可変ピッチプロペラに比べて最大20%までハブ直径を減縮することもできる。
【0066】
下の表1は、低速肥大船の種類及び大きさに応じた固定ピッチプロペラ(FPP)と本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラのハブ直径/プロペラ直径の比率を示した表である。
【0067】
【0068】
このように、本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラは、40%の減少した安全率を考慮して、H/D比をタンカー(Tanker)の場合は0.165~0.190、そしてバルクキャリア(Bulk Carrier)の場合は0.180~0.200を有し得るようにハブの直径を減縮することができる。
【0069】
[各死点でのロック装置の第1実施例]
以下では、ロック装置について4種類の実施例を説明している。それらの中でも第1実施例に係るロック装置は、ガイドスロットの両端、すなわち、上死点と下死点で推進軸方向にピンが位置し得るエンドスロットが形成された構造に関するものである。
【0070】
図11は、ガイドスロットの両端に形成されたエンドスロットを示した概念図である。
図12は、エンドスロット及びガイドスロットに沿って移動するピンに作用する力を示した概念図である。
図13は、
図12に示されたピンにスライドシューを装着した例を示した分解斜視図である。
図14は、
図13に示されたスライドシューがピンに沿って第2ガイドスロットに沿って移動する関係を示した概念図である。
【0071】
図11に示されたように、ガイドスロット133の両端には、推進軸の中心線に沿ってガイドスロット133の外方向にエンドスロット135がさらに形成される。
【0072】
ガイドスロット133に沿って移動するピン125は、ガイドスロット133の上死点133Hまたは下死点133Lに達した状態で、クロスヘッド131の移動によって上死点133Hから延びたエンドスロット135または下死点133Lから延びたエンドスロット135に進入して位置するようになる。逆に、クロスヘッド131の移動によってエンドスロット135からガイドスロット133に進入して、反対側のエンドスロット135に向けて移動する。
【0073】
このために、エンドスロット135は、ガイドスロット133の両端で推進軸の中心線に沿ってピン125の半径以上の長さ(
図12のe)を有する溝構造にてガイドスロット133と連通するように形成される。エンドスロット135にピン125が位置する場合、ピン125の断面積の半分以上がエンドスロット135の内側に位置する。
【0074】
したがって、ピン125がエンドスロット135に進入して位置する場合、ピン125の外周面はガイドスロット133の内面に接することなく、エンドスロット135の内側面に接するようになる。
【0075】
この場合、可変ピッチプロペラ100が回転しながら発生する抵抗が羽根120を介してピン125に伝達されても、抵抗が作用する方向とエンドスロット135の長手方向とが相互垂直をなすことによって抵抗によりピン125がガイドスロット133に進入しガイドスロット133に沿って移動することを遮断することができる。このようにピン125をエンドスロット135に位置させてロックすることによって、羽根ピッチが抵抗により可変することを遮断することができる。また、それによってクロスヘッド131の流動を制限する油圧システム140の油圧を低減することができ、且つハブ130の大きさを減縮することができる。
【0076】
ガイドスロット133の両端にエンドスロット135がそれぞれ形成された場合、
図5乃至
図6Cに示されたエンドスロットが形成されていないガイドスロットに沿ってクロスヘッドが移動する移動距離よりもピン125の直径以上に移動距離がさらに増えるようになる。すなわち、ガイドスロット133の両端にエンドスロット135がそれぞれ形成されることで、油圧システム140のストロークがピン125の直径以上にさらに増加するようになる。
【0077】
図12に示されたように、クロスヘッド131の前後移動に伴いピン125もエンドスロット135及びガイドスロット133に沿って移動することに応じた、羽根120のピッチ変更及び油圧の大きさは、下記の数学式3にて求めることができる。
【0078】
【0079】
ここで、e:エンドスロットの長さ、Tsp:スピンドルトルク、F’cyl:油圧システムの油圧力、dstr:油圧システムの全体ストローク、dastr:ピッチ制御のための油圧システムのストローク、θs:ガイドスロット角度、θ’R:スピンドル角度範囲、rp:ピンからスピンドル中心点までの距離を示す。
【0080】
数学式3から分かるように、ピッチの可変角度範囲が小さいほど、且つクロスヘッド131の移動距離、すなわち、油圧システム140のストロークが長いほど、油圧システム140の荷重は減少するようになる。また、ガイドスロット133の上死点と下死点から延びて形成されたエンドスロット135にピン125が位置しロックされることによって抵抗に対応する油圧を大きく減らすことができ、油圧システム140の容量を大きく低減することができる。
【0081】
一方、ピン125は、
図11及び
図12に示されたように円柱構造である。このため、エンドスロット135に位置したピン125に不測に外部衝撃などが加えられた場合、エンドスロット135からガイドスロット133に移動して羽根ピッチが可変することがあるという問題点がある。
【0082】
このような問題点を解決するために、
図13及び
図14に示されたように、ピン125の周りにスライドシュー150を装着する。また、ピン125に沿って移動するスライドシュー150を案内する第2ガイドスロット137がクロスヘッド131に形成される。
【0083】
具体的に、スライドシュー150は、上部スライドシュー150と下部スライドシュー150とに分けられ、上部スライドシュー150と下部スライドシュー150との間にピン125が位置するように、上部スライドシュー150と下部スライドシュー150との向い合う面にはピン125の外周面に接する溝151が形成される。そして、溝151の外側には、スライドシュー150が第2ガイドスロット137に沿って移動するに際して第2ガイドスロット137の幅変化を補償できるように上部スライドシュー150と下部スライドシュー150との間にコイルばね153が位置する。
図13及び
図14には示されていないが、コイルばね153の位置を固定するためにコイルばねシートにコイルばね153の端部が挿入される溝またはコイルばねに挿入されるピンが形成され、コイルばねの位置を固定することができる。
【0084】
一方、クロスヘッド131の側面には第2ガイドスロット137が形成され、第2ガイドスロット137の底面には前述したガイドスロット133が形成される。そして、第2ガイドスロット137に位置したスライドシュー150にピン125が挿入された状態でピン125の末端はガイドスロット133に挿入される。
【0085】
ここで、第2ガイドスロット137は、ガイドスロット133の斜めと同じ傾きで形成された斜め部137Sと、ガイドスロット133の両端に形成されたエンドスロット135に対応する末端部137Eとに分けられる。末端部137Eはエンドスロット135と同様に推進軸の中心線に沿って形成される。
【0086】
このように、第2ガイドスロット137が形成され且つスライドシュー150が装着されたクロスヘッド131が油圧システム140の作動によって前後移動することに伴い、ピン125は、ガイドスロット133からエンドスロット135に、またはエンドスロット135からガイドスロット133に移動するようになる。ピン125の移動によってスライドシュー150も第2ガイドスロット137の斜め部137Sと末端部137Eに沿って移動するようになる。
【0087】
スライドシュー150はピン125を囲う構造であるため、第2ガイドスロット137の幅はガイドスロット133の幅に比べて広い。エンドスロット135に対応する第2ガイドスロット137の末端部137Eもまた、ピン125の半径以上の長さで形成されるエンドスロット135の長さ(
図12のe)よりも長く形成される。
【0088】
このような構造においてピン125がエンドスロット135に位置する場合、スライドシュー150は第2ガイドスロット137の両末端部137Eに位置するようになる。推進軸の中心線に沿って形成された第2ガイドスロット137の末端部137Eに位置するようになりながら、スライドシュー150と第2ガイドスロット137の末端部137Eとの接触面がプロペラ100の回転方向と垂直をなすようになる。
【0089】
スライドシュー150と第2ガイドスロット137の末端との接触面がプロペラ100の回転方向と垂直をなすようになることによって、外部から衝撃が加えられても、スライドシュー150が第2ガイドスロット137から衝撃によって外れなくなる。したがって、ピン125もまたエンドスロット135に安定して位置するようになる。
【0090】
一方、スライドシュー150が第2ガイドスロット137の末端部137Eから斜め部137Sに、または斜め部137Sから末端部137Eに移動する場合、末端部137Eと斜め部137Sとが会う折曲部で第2ガイドスロット137の幅が変わるようになる。それにより、スライドシュー150が折曲部を通りながら上部スライドシュー150と下部スライドシュー150との間に位置したコイルばね153が弾性変形しながら幅の変化を補償するようになる。したがって、スライドシュー150が滑らかに末端部137Eから斜め部137Sに、または斜め部137Sから末端部137Eに通り過ぎるようになる。
【0091】
このように、ガイドスロット133の両端にエンドスロット135を形成し、ピン125がエンドスロット135に位置しながらプロペラ100の回転による抵抗を減少させ、油圧システム140の容量を低減する。また、スライドシュー150を装着し、ピン125がエンドスロット135に位置する場合、スライドシュー150の外側面と第2ガイドスロット137の末端部の内側面とが面接触するようになることで、外部衝撃などによってピン125がエンドスロット135から外れることを効果的に抑えることができる。
【0092】
[各死点でのロック装置の第2実施例]
後述する第2実施例に係るロック装置は、クロスヘッドの前後移動において、ピンが上死点と下死点に位置したときにクロスヘッドの前後移動をロックして、外部の抵抗及び衝撃などによる羽根ピッチの可変を防止するためのものである。
【0093】
第2実施例に係るロック装置は、前述した第1実施例のロック装置(
図11乃至
図14)のロックメカニズムとは異なるメカニズムである。第2実施例のロック装置を説明するにあたって、第2実施例のロック装置に第1実施例のロック装置が追加されまたは追加されないように構成することもできる。後述する第2実施例のロック装置は、これに第1実施例のロック装置が追加された図面を参照して説明している。
【0094】
図面において、
図15は、本発明の実施例に係るロック装置を備えた可変ピッチプロペラを示した概念図である。
図16は、
図15に示されたスライダーの断面図である。
図17は、
図15に示されたスライダーの分解斜視図である。
図18は、スライダーの作動関係を示した概念図である。
【0095】
図15乃至
図17に示されたように、ピストン141の前方に延びたロッド141Rは、クロスヘッド131をその長手方向に貫通して位置する。すなわち、ロッド141Rの周りにクロスヘッド131が位置し、クロスヘッド131はロッドの長手方向に移動可能である。
【0096】
一方、スライダー160がロッド141Rに沿って移動可能に位置し且つスライダー160の内部にクロスヘッド131が位置するが、クロスヘッド131の長さよりもスライダー160の長さが長い。そのため、クロスヘッド131は、その長さの差分だけスライダー160の内部をロッド141Rに沿って移動可能である。クロスヘッド131が長さの差分だけ移動した状態では、クロスヘッド131とスライダー160とは相互に接するようになる。
【0097】
このように構成されたロック装置の構造において、油圧システム140の作動によってロッド141Rが移動する場合、スライダー160は前方ストッパ147Fと後方ストッパ147Bに接して位置する。そのため、スライダー160はロッド141Rとともに移動するようになる。スライダー160の内部に位置したクロスヘッド131は、スライダー160が前記長さの差分だけ移動した後にクロスヘッド131と接する瞬間からロッド141Rの移動とともに移動するようになる。
【0098】
一方、ピン125がガイドスロット133に挿入され、上死点133Hと下死点133Lとの間を移動できるように、スライダー160の側面には長手方向に開放部161が形成される。そのため、クロスヘッド131の周りをスライダー160が囲っても、ピン125はスライダー160の開放部161内を移動可能になることにより、前述したように羽根ピッチが可変する。
【0099】
また、スライダー160は、前方ストッパ147Fと後方ストッパ147Bに両端が接した状態でピストン141の移動と同様にロッド141Rに沿って移動する。すなわち、油圧システム140の作動によってピストン141の移動に伴いスライダー160がともに移動する。スライダー160の内部に位置したクロスヘッド131は、スライダー160との内部間隔Gが狭められて相互に接すると、スライダー160とともにロッド141Rに沿って移動する。
【0100】
ここで、クロスヘッドの前後移動に応じた羽根ピッチの可変についての説明は、前述したのと同様であるため省略する。
【0101】
図18に示されたように、第2実施例に係るロック装置は、スライダー160の長手方向に沿って開放部161の側部に形成された長溝163と、長溝163の両端に対応してクロスヘッド131に形成された2つのロックホール139と、ハブ130の内面に支持された状態で長溝163を貫通して対応するロックホール139に引き込まれてロックし且つ引き出されてロック解除するプラグ170を含む。プラグ170は、スライダー160の長溝163内側に形成されたレール165の長手方向への移動に伴いロックホール139に引き込みまたは引き出される。
【0102】
より具体的に、クロスヘッド131に形成されたロックホール139の間隔は、ピン125の上死点133Hと下死点133Lとの間の距離と同一である。そのため、ピン125が上死点133Hまたは下死点133Lに位置するとき、プラグ170は2つのロックホール139のいずれかに対応するようになる。また、プラグ170がロックホール139に挿入されてスライダー160とクロスヘッド131とを相互にロックする。
【0103】
一方、クロスヘッド131を囲うスライダー160の場合、プラグ170が挿入される長溝163がスライダー160の長手方向に形成される。また、プラグ170は、長溝163に挿入された状態でコイルばね171によって常にロックホール139に引き込まれる方向に付勢力を受ける。
【0104】
そして、長溝163には、プラグ170を上向きに誘導してプラグ170がクロスヘッド131のロックホール139から引き出されるように案内する一対のレール165が形成される。また、一対のレール165間には長溝163が形成される。レール165の両端部には外方へ行くほど次第に低くなる傾斜部165Sが形成される。そのため、傾斜部165Sに沿ってプラグ170が移動しながら上向きに移動するか、ロックホール139が位置する下向きに移動する。
【0105】
一対のレール165に収められるプラグ170の両端面には、レール165の傾斜部165Sに対応する傾斜面170Sが形成される。そのため、プラグ170がレール165の長さ中間に位置した状態でスライダー160が前後移動すると、プラグ170はレール165に沿って相対的に移動するようになる。また、レール165の傾斜部165Sに達すると、プラグ170は傾斜部165Sに沿ってコイルばね171の付勢力によって下向きに移動する。それにより、プラグ170は長溝163を介してクロスヘッド131のロックホール139に挿入される。その結果、クロスヘッド131はスライダー160にロックされる。
【0106】
前述したように、ロックホール139は、ピン125が上死点133Hと下死点133Lに位置するとき、プラグ170に対応する位置に形成されることで、プラグ170がロックホール139に引き込まれると、ピン125は上死点または下死点に位置した状態になる。この状態では、ピン125を介して抵抗または外部衝撃が伝達されてもピン125が上死点133Hまたは下死点133Lから外れることを抑えることができる。
【0107】
一方、プラグ170がロックホール139に引き込まれたロック状態で、スライダー160がクロスヘッド131の長さの差によって発生する内部間隔Gだけ移動すると、ロックホール139に挿入されたプラグ170がレール165の傾斜部165Sに沿って上向きに移動するようになる。また、プラグ170は、クロスヘッド131のロックホール139から引き出されてロック解除される。
【0108】
このようにプラグ170がロックホール139から引き出されてロック解除された状態でスライダー160が移動して内部間隔が狭められることでクロスヘッド131と接するようになると、ロッド141Rに沿ってスライダー160とクロスヘッド131とがともに移動する。すなわち、ロック解除された状態でクロスヘッド131がロッド141Rに沿って移動するに伴い羽根ピッチが可変する。
【0109】
この状態でレール165に沿って移動したプラグ170がレール165の反対側の端部に達すると、傾斜部165Sに沿って下向きに移動するようになる。プラグ170は、長溝163を介してクロスヘッド131の反対側のロックホール139に引き込まれてロック状態になる。
【0110】
前述したようにロックホール139は、クロスヘッド131が移動してピン125が上死点133Hと下死点133Lに位置したときにプラグ170に対応する地点に形成される。そのことから、プラグ170が長溝163を貫通してクロスヘッド131のロックホール139に挿入されると、上死点133Hまたは下死点133Lでロックされることを意味する。
【0111】
このように、ピン125が上死点133Hと下死点133Lに位置したときにプラグ170がスライダー160を貫通してクロスヘッド131のロックホール139に挿入されてロックする。それにより、クロスヘッド131はスライダー160に拘束され、スライダー160は前方ストッパ147Fと後方ストッパ147Bによってロッド141Rに拘束される。したがって、油圧システム140の油圧以外の力、すなわち、プロペラ100の回転によって発生する抵抗及び外部衝撃によってクロスヘッド131が移動することを抑えることができる。
【0112】
その結果、上死点133Hと下死点133Lによって設定された羽根ピッチが抵抗及び外部衝撃によって変位することを抑えることができる。
【0113】
[各死点でのロック装置の第3実施例]
後述する第3実施例に係るロック装置は、クロスヘッドの前後移動にあたって、ピンが上死点と下死点に位置したときにクロスヘッドの前後移動をロックして、外部の抵抗及び衝撃などによって羽根ピッチの可変を防止するためのものである。特に前述したロック装置の第1実施例、第2実施例、後述する第4実施例は、ハブの内部に装着される構成であるのに対し、後述するロック装置の第3実施例は推進軸に装着されることに特徴がある。
【0114】
図面において、
図19は、本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラを示した概念図である。
図20は、
図19に示されたオイル分配ボックスに装着された油圧ロック部を示した概念図である。
図21は、
図20に油圧ロック部の作動を説明した概念図である。
図22は、死点でのピストンとクロスヘッド及び油圧ロック部の作動関係を示した概念図である。
【0115】
図19に示されたように、可変ピッチプロペラ100は、ハブ130の周りに羽根120が装着される。ハブ130は推進軸1の末端に固定される。そして、推進軸1にはオイル分配ボックス(Oil Distribution Box)190が装着される。
【0116】
オイル分配ボックス190には、油圧システム140の作動油が流入及び流出するポート192A、192Bが形成される。ポート192A、192Bを介して流入及び流出する作動油によってピストン141が前進及び後進する。
【0117】
以下では、推進軸1の構造とオイル分配ボックス190の内部に装着されてピストン141の移動を油圧にてロックする油圧ロック部191について具体的に説明する。
【0118】
推進軸1の内部には中空が形成され、推進軸1の中空にはピストン141に連結される同心の中空軸211が位置する。そして、中空軸211の中心線に沿って第1油圧ライン145Aが形成され、中空軸211の外周面と推進軸1の中空内周面との間の間隔が第2油圧ライン145Bに該当する。第1油圧ライン145Aは、ピストン141の中心を貫通してシリンダ143内部の後方と連通する。第2油圧ライン145Bは、ピストン141の前方に延びてシリンダ143内部の前方と連通する。
【0119】
そのため、作動油が第1油圧ライン145Aを介してシリンダ143内部に流入すると、ピストン141は前進しながら油圧システム140のストロークは伸長する。また、シリンダ143内部の前方に満たされた作動油は、第2油圧ライン145Bを介してオイル分配ボックス190側に流動する。逆に作動油が第2油圧ライン145Bを介してシリンダ143内部に流入すると、ピストン141は後進しながら油圧システム140のストロークは収縮する。また、シリンダ143内部の後方に満たされた作動油は、第1油圧ライン145Aを介してオイル分配ボックス190側に流動する。
【0120】
ピストン141に連結された中空軸211は、ピストン141に沿ってともに前後移動する。
【0121】
一方、オイル分配ボックス190の内部には油圧ロック部191が装着され、中空軸211は油圧ロック部191を貫通して油圧ロック部191の前方に延びる。
【0122】
一方、オイル分配ボックス190の第1ポート192Aを介して流入する作動油は、
図20乃至
図22に示されたように油圧ロック部191の先端に流動し、中空軸211の末端に開放された第1油圧ライン145Aに流動可能である。第2ポート192Bを介して流入された作動油は、油圧ロック部191の後端に流動し、油圧ロック部191と推進軸1の間を通って第2油圧ライン145Bに流動可能である。
【0123】
したがって、第1ポート192Aから作動油が流入すると、ピストン141が前進しながら中空軸211は前進するようになる。このとき、中空軸211が油圧ロック部191を貫通することによって、中空軸211の先端は油圧ロック部191の前方に移動するようになる。
【0124】
逆に第2ポート192Bから作動油が流入すると、ピストン141は後進しながら中空軸211は後進するようになる。
【0125】
ここで、中空軸211の先端が移動可能になるように油圧ロック部191の内部船首側に形成された空間を第1チャンバ193Aという。また、油圧ロック部191の後端と推進軸1との間の空間を第2チャンバ193Bという。
【0126】
一方、油圧ロック部191の内部には、2つのロックリング194A、194Bが間隔D3を空けて位置する。2つのロックリング194A、194Bは、中空軸211を囲う。そして、ロックリング194A、194Bが整合する2本のグルーブ195A、195Bが中空軸211に間隔D4を空けて形成される。グルーブ195A、195Bの間隔D4は、ロックリング194A、194Bの間隔D3と上死点と下死点の距離を合わせた距離に相当する。ロックリング194A、194Bは、図示しないが一部が開放された構造にて弾性によって直径が拡張または収縮可能である。
【0127】
したがって、中空軸211がピストン141の移動とともに移動するにあたって、ピン125が上死点133Hに位置するとき(油圧システム140のストロークが最大に収縮したとき)に中空軸211の先端側に形成された第1グルーブ195Aが第1ロックリング194Aと整合するようになる。ピン125が下死点に位置するとき(油圧システムのストロークが最大に伸長したとき)に中空軸211の長さ内側に形成された第2グルーブ195Bが第2ロックリング194Bと整合するようになる。このようにロックリング194A、194Bのいずれか一方がグルーブ195A、195Bのいずれか一方に整合すると、ピストン141とともに移動する中空軸211の移動が停止するようになる。それにより、抵抗または外部衝撃によってプロペラピッチが可変しないようにロックするようになる。
【0128】
以下では、油圧ロック部191の構造について具体的に説明する。
【0129】
油圧ロック部191は推進軸1の内部に固定され、油圧ロック部191の先端には第1チャンバ193Aに通じる第1流路196Aが形成される。油圧ロック部191の後端には第2チャンバ193Bに通じる第2流路196Bが形成される。
【0130】
そして、第1ロックリング194Aは、中空軸211を囲った状態で中空軸211の先端側、すなわち、第1流路196Aに対応して位置する。第2ロックリング194Bは第2流路196Bに対応して位置する。
【0131】
また、油圧ロック部191には中空軸211に沿って移動するスライドロッカー213が装着される。2つのスライドロッカー213は、それぞれ第1流路196Aまたは第2流路196Bを介して油圧ロック部191の内部に流入する作動油の油圧とスライドロッカー213を支持する支持ばね215の付勢力との相互作用によって中空軸211の長手方向に移動する。
【0132】
スライドロッカー213は、ホルダー構造であって、中空軸211の長手方向に移動しながらグルーブ195A、195Bに整合されたロックリング194A、194Bを囲ってロックリング194A、194Bがグルーブ195A、195Bから外れないようにロックする。または、スライドロッカー213は、ロックリング194A、194Bから離れてロックリング194A、194Bがグルーブ195A、195Bから抜け出ることができるように位置する。2つのロックリング194A、194Bがいずれもグルーブ195A、195Bから外れた場合は、中空軸211が前後移動可能であってロック解除された状態になる。
【0133】
一方、油圧ロック部191の長さ中間には、ばねホルダー217が固定される。ばねホルダー217の両側に位置した支持ばね215の端部は、ばねホルダー217に挿入されて支持される。
【0134】
以下では、このように構成された油圧ロック部の作動に応じたロック及びロック解除関係について、
図20乃至
図22を参照して具体的に説明する。
【0135】
図20乃至
図22に示されたように、油圧システム140のストロークが最大に伸長した状態(ピンが上死点に位置した状態)ではシリンダ143内部後方に作動油が満たされた状態であり、ピストン141の前進状態、すなわち、中空軸211が前進状態である。このときは、中空軸211が第1チャンバ193Aの内方に前進して位置することによって第2ロックリング194Bが第2グルーブ195Bに整合された状態になり、スライドロッカー213が第2ロックリング194Bを囲んでロックが解除しないようにする。
【0136】
この状態で第2ポート192Bを介して作動油が流入すると、作動油は油圧ロック部191の後端側に移動して第2チャンバ193Bに流入しながら第2流路196B内をスライドロッカー213が前進するように油圧を発生させる。また、スライドロッカー213が前進して第2ロックリング194Bのロックを解除すると、中空軸211は移動可能な状態で、作動油が第2チャンバ193Bと第2油圧ライン145Bを介してシリンダ143内部の前方に満たされながら中空軸211が後進するようになる。これと同時にシリンダ143内部の後方に位置した作動油は、第1油圧ライン145A、第1チャンバ193A、第1流路196A、第1ポート192Aを介して流出する。
【0137】
このように、中空軸211が後進するに伴い、中空軸211の第1グルーブ195Aが第1ロックリング194A側に移動しながら第1グルーブ195Aに第1ロックリング194Aが整合してロックされると、この状態が、ピン125が下死点133Lに位置した状態で油圧システム140のストロークが最大に収縮した状態である。
【0138】
このように、第1グルーブ195Aに第1ロックリング194Aが整合すると、スライドロッカー213が支持ばね215の付勢力によって前進して整合された第1ロックリング194Aを囲うことでロック解除を防止する。
【0139】
このように、油圧ロック部191は、ピン125が上死点または下死点に位置したときにグルーブ195A、195Bとロックリング194A、194Bとの整合によるロック状態を維持することで、プロペラ100の回転によって発生する抵抗または外部衝撃によってプロペラピッチが可変しないように維持する。また、油圧ロック部191は、油圧システム140のストロークを伸縮するために流入及び流出する作動油の油圧によってロック解除がなされ、ピン125が上死点133Hから下死点133Lまたは下死点133Lから上死点133Hに移動可能になる。
【0140】
[各死点でのロック装置に関する第4実施例]
後述する第4実施例に係るロック装置は、ピンが上死点と下死点に位置したときに外部の抵抗及び衝撃などによって羽根ピッチの可変を防止するためにロックするものである。前述した第1実施例のロック装置(
図11~
図14)の構成を含んでいる。このため、第1実施例で説明した構成についての重複説明は省略する。
【0141】
図面において、
図23は、本発明の実施例に係るロッキングシューを備えた可変ピッチプロペラを示した概念図である。
図24は、クロスヘッドの前後移動に伴うピンの移動経路に応じたロッキングシューのロック及びロック解除関係を示した概念図である。
図25は、ロッキングブロックとロッキングシューとの結合に伴うロッキングシューの変形関係を示した詳細図である。
【0142】
図23に示されたように、クロスヘッド131にはガイドスロット133、エンドスロット135、第2ガイドスロット137が形成される。ガイドスロット133にはピン125が挿入され、クロスヘッド131の前後移動に伴い、ピン125はガイドスロット133の上死点133Hと下死点133Lとの間を移動する。各死点でピン125は、エンドスロット135に引き込みまたは引き出されるようになる。
【0143】
一方、第1実施例の第2ガイドスロット137の構成と同様に第2ガイドスロット137の底にガイドスロット133とエンドスロット135が形成される。第2ガイドスロット137の斜め部137Sはガイドスロット133に対応し、第2ガイドスロット137の末端部137Eはエンドスロット135に対応する。
【0144】
そして、第4実施例に係るロック装置は、第2ガイドスロット137の末端部137Eに形成された突起181と、ピン125を囲うロッキングシュー180を含む。ロック装置のロッキングシュー180は、第2ガイドスロット137の斜め部137Sと末端部137Eに沿って移動する。
【0145】
第4実施例のロック装置においてロッキングシュー180は、第1実施例で説明したスライドシュー(
図13の150)に代わる構成である。第1実施例では、スライドシュー150が第2ガイドスロット137の末端部137Eに位置して面接触することでピン125が抵抗及び衝撃によって移動することを防止する。第4実施例では、このような面接触の機能とともにロッキングシュー180と突起181とが整合することでピン125が抵抗及び衝撃によって移動することをより効果的に防止することができる。
【0146】
以下では、第2ガイドスロット137の末端部137Eに形成された突起181及びロッキングシュー180の構造及び有機的結合関係について説明する。
【0147】
図23~
図25に示されたように、第2ガイドスロット137の両端には推進軸1の中心線に沿って末端部137Eが形成され、末端部137Eの向い合う内側面には突起181がそれぞれ形成される。突起181の端部は半球状であってロッキングシュー180が乗り越えられるように構成される。
【0148】
一方、ピン125を囲うロッキングシュー180は、クロスヘッド131が油圧システム140の油圧によって前進または後進することに伴い、相対的にピン125とともに第2ガイドスロット137の末端部137Eと斜め部137Sに沿って移動する。
【0149】
ロッキングシュー180は、第1実施例で説明したスライドシュー150と同様な構造であって、上部ロッキングシュー180と下部ロッキングシュー180を備え、上部ロッキングシュー180と下部ロッキングシュー180との間にピン125が挿入される。このように、ピン125が上部ロッキングシュー180と下部ロッキングシュー180との間に挿入できるように、上部ロッキングシュー180と下部ロッキングシュー180との向い合う面には、ピン125の外周面と接する溝181Iが形成される。溝181Iの両側には、上部ロッキングシュー180と下部ロッキングシュー180を支持するコイルばね183が位置する。
【0150】
そして、第2ガイドスロット137の内側面と向い合う上部ロッキングシュー180の外側面と下部ロッキングシュー180の外側面には、突起181と整合する整合溝181Eが形成される。
【0151】
このように構成されたロッキングシュー180は、ピン125の移動とともに第2ガイドスロット137に沿って移動するようになる。このとき、第2ガイドスロット137の斜め部137Sと末端部137Eでは、上部ロッキングシュー180の外側面と下部ロッキングシュー180の外側面が第2ガイドスロット137の内側面と向い合った状態で位置する。ロッキングシュー180が末端部137Eと斜め部137S、そして突起181を通り過ぎるときは、その幅が狭くなるか広くなることによってコイルばね183が伸縮しながら上部ロッキングシュー180と下部ロッキングシュー180の傾きが変わるようになる。
【0152】
すなわち、第2ガイドスロット137に沿ってロッキングシュー180が移動するにあたって第2ガイドスロット137の構造及び突起181によってその幅が狭くなると、ピン125の前方または後方に位置したコイルばね183のうち幅が狭くなる側に位置したコイルばね183が収縮しながら幅が狭くなることを補償するとともに末端部137Eから斜め部137Sに、斜め部137Sから末端部137Eに移動するようになる。
【0153】
そして、ロッキングシュー180が第2ガイドスロット137の幅の変化に対応しながら移動する構造では、突起181が形成された末端部137Eに位置するときにも同様に突起181間の幅が第2ガイドスロット137の幅よりも狭くなることでコイルばね183が収縮して突起181を通り過ぎるようになり、突起181と整合溝181Eとが整合することでロックされる。
【0154】
この状態でクロスヘッド131が油圧システムの作動によって移動する場合、ピン125がガイドスロット133に沿って移動するにあたってピン125とともにロッキングシュー180も第2ガイドスロット137に沿って移動するようになる。突起181に整合されたロッキングシュー180が移動することで、整合溝181Eから突起181が外れるようになってロック解除される。
【0155】
このように第4実施例に係るロック装置は、第1実施例に係るロック装置に比べて面接触とともに突起181と整合溝181Eとの整合関係によってロックに対する信頼性を増大させることができる。
【0156】
[油圧システムに関する第1実施例]
通常、油圧システムのストロークを制御するためには、シリンダの前端と後端に油圧ポートを装着し、油圧ポートを介して作動油がシリンダの前方または後方に流入または流出することでピストンが移動してストロークが制御される。
【0157】
前述した可変ピッチプロペラは、ピストンを前後方向に移動させるためにロッドの内部に形成された複数の油圧ラインがピストンを基準にシリンダの前方または後方に流入または流出しながらピストンが移動するように構成されている。一方で、後述する油圧システムは、シリンダの内部にピストンを前方または後方に付勢するコイルばねが組み込まれて油圧を付勢力に代替した構成である。
【0158】
図面において、
図26は、本発明の実施例に係る可変ピッチプロペラの油圧システム作動によってピストンが後方に移動した状態を示した断面図である。
図27は、油圧が解除された状態でコイルばねの付勢力によってピストンが前方に移動した状態を示した断面図である。
図28は、本発明の実施例に係るサーバ油圧シリンダを備えた油圧回路と従来の油圧回路とを比べた概念図である。
図29は、
図26に示された油圧システムの変形例を示した概念図である。
【0159】
図26に示されたように、ハブ130の後端に連結された油圧システム140のシリンダ143にはその内部にピストン141が位置し、ピストン141から延びたロッド141Rはシリンダ143の外に延びてクロスヘッド131に連結される。
【0160】
シリンダ143内部をピストン141基準で区分するとき、ピストン141の前方に形成された空間を、以下「前方チャンバ149F」と称し、ピストン141の後方に形成された空間を、以下「後方チャンバ149B」と称す。ここで、後方チャンバ149Bには圧縮コイルばね185が位置し、コイルばね185は、油圧システム140のストロークが伸長する方向、すなわち、ピストン141が船首側に移動するようにピストン141を付勢する。
【0161】
そして、ロッド141Rの内部に形成された油圧ライン145のオリフィス145Oはピストン141の前方に形成される。これにより、油圧ライン145を介して供給される作動油は、前方チャンバ149Fに満たされながらピストン141が後方に移動するように油圧を発生させる。このようにしてピストン141が油圧によって後方に移動すると、後方チャンバ149Bに位置したコイルばね185はピストン141に押されて収縮する。
【0162】
一方、油圧ライン145を介して供給される作動油の供給が遮断されると、作動油の供給を制御する
図28に示された制御弁187によって油圧ライン145が開放しながらピストン141に加えられていた油圧が解除し、圧縮されたコイルばね185の付勢力によってピストン141は前方に前進するようになる。このようにピストン141が前方に前進しながら前方チャンバ149Fに満たされた作動油は油圧ライン145を介して排出される。
【0163】
このように、後方チャンバ149Bに延びた油圧ライン145を介して作動油を後方チャンバ149Bに供給することで、油圧システム140のストロークは収縮するようになり、それに伴い、クロスヘッド131が後進しながら羽根120を反時計回りに回転させる。また、制御弁187を介して油圧ライン145を開放すると、コイルばね185の付勢力によって油圧システム140のストロークが伸長し、それに伴い、クロスヘッド131が前進しながら羽根120を時計回りに回転させる。このように油圧システム140の油圧とコイルばね185の付勢力によって羽根ピッチを可変することができる。
【0164】
一方、
図29は、
図26~
図28に示された油圧システムの構造を変形したものであって、前方チャンバ149Fにコイルばね185が位置し且つ油圧ライン145がピストン141を貫通して後方チャンバ149Bに作動油を供給できるように構成したものである。
【0165】
この場合、作動油が後方チャンバ149Bに供給されると、油圧システム140のストロークは伸長するようになり、クロスヘッド131が前進しながら羽根120は時計回りに回転するようになる。そして、制御弁187を介して油圧ライン145を開放すると、コイルばね185の付勢力によって油圧システム140のストロークが収縮し、それに伴い、クロスヘッド131が後進しながら羽根120を反時計回りに回転させる。
【0166】
一方、
図28の(a)には作動油によって油圧システムのストロークを伸縮させる油圧回路が示され、
図28の(b)には作動油とコイルばねによって油圧システムのストロークを伸縮させる油圧回路が示されている。
【0167】
図28の(a)に示されたように、作動油によって油圧システム140のストロークを伸縮させるためには、前方チャンバ149Fと後方チャンバ149Bにそれぞれ油圧ライン145が連結される必要があるため、油圧システムの構成が複雑であった。これに対し、
図28の(b)に示されたように作動油とコイルばね185によって油圧システム140のストロークを伸縮させる構成では、前方チャンバ149Fと後方チャンバ149Bのいずれか一方のみに油圧ライン145が連結されることによって油圧システム140の構成が単純になるという長所がある。
【0168】
このように、ハブ130内部に装着される油圧システム140の構成が単純になることによってハブ130の大きさを減縮し、固定ピッチプロペラの推進効率に近い高効率を発現することができる。
【0169】
[油圧システムに関する第2実施例]
前述したように、本発明に係る可変ピッチプロペラは2ピッチに可変される。
【0170】
従来の可変ピッチプロペラの場合は、ピッチの可変範囲が広いことから通常5ステップでピッチを制御することに伴い、比例制御が可能な油圧システムが備えられる必要がある。これに対し、本発明のように2ピッチだけで羽根ピッチを可変する場合は、オンオフ弁を介して油圧システムの制御が可能になる。
【0171】
図面において、
図30は、本発明の実施例に係るオンオフ弁を備えた油圧システムを示した概念図である。
図31は、
図26に示されたようにシリンダの内部にコイルばねが装着された状態でオンオフ弁を備えた油圧システムを示した概念図である。
【0172】
図30に示されたように、ハブ130の後端に装着された油圧システム140のシリンダ143には2本の油圧ライン145A、145Bが連結され、第1油圧ライン145Aは分岐されて第1オンオフ弁187Aと第2オンオフ弁187Bに連結され、第2油圧ライン145Bもまた分岐されて第1オンオフ弁187Aと第2オンオフ弁187Bに連結される。ここで第2オンオフ弁187Bは非常制御弁に該当する。
【0173】
そして、第1オンオフ弁187Aと第2オンオフ弁187Bには、それぞれオイルポンプ221から延びた作動油供給ライン223とオイルタンカー220から延びたドレインライン225が連結される。
【0174】
したがって、オイルポンプ221の作動によって供給された作動油は、平常時は作動制御弁の第1オンオフ弁187Aを介してシリンダ143に供給される。シリンダ143から流出する作動油は、第1オンオフ弁187Aを介してオイルタンカー220に排出される。
【0175】
このように、第1オンオフ弁187Aまたは第2オンオフ弁187Bの作動によって作動油がシリンダ143の内部に流入または流出しながら、油圧システム140のストロークが伸長または収縮する2ステップ制御がなされる。
【0176】
油圧システム140のストロークが伸長すると、ピン125はガイドスロット133の上死点133Hに位置し、ストロークが収縮すると、ピン125はガイドスロット133の下死点133Lに位置して、羽根ピッチを2ピッチで制御するようになる。
【0177】
一方、
図31に示された油圧システムの回路図は、
図26に示されたようにシリンダ143の内部にコイルばね(
図26及び
図27の185)が装着されて、油圧ライン145が開放したとき、コイルばね185の付勢力によってピストン141が移動するように構成されたものである。この場合でも、シリンダ143から延びた1本の油圧ライン145に、前述した第1オンオフ弁187A、第2オンオフ弁187B、オイルポンプ221、オイルタンカー220、作動油供給ライン223、ドレインライン225が同様に設けられる。
【0178】
この場合、油圧ライン145を介して作動油が供給されると、ピストン141は、シリンダ143の内部に流入する作動油によってコイルばね185が圧縮される方向に移動する。それにより、油圧システム140のストロークは伸長または収縮し、油圧ライン145が開放されると、圧縮されていたコイルばね185が伸長する。それにより、ピストン141はコイルばね185の付勢力がかけられる方向に移動しながら開放された油圧ライン145を介してシリンダ内部の作動油をオイルタンカー220側に流出するようになる。
【0179】
図31に示された可変ピッチプロペラ100の油圧システム140もまた、ストロークが伸長すると、ピン125はガイドスロット133の上死点133Hに位置し、ストロークが収縮すると、ピン125はガイドスロット133の下死点133Lに位置して、羽根ピッチを2ピッチで制御するようになる。
【0180】
一方、オンオフ弁として、電磁弁で構成することもでき、その他、弁によって油圧ラインが開閉する2段制御が可能な弁であれば採択可能である。
【符号の説明】
【0181】
1 推進軸
100 可変ピッチプロペラ
120 羽根
121 羽根シャンク
123 羽根キャリア
124 ピン
130 ハブ
131 クロスヘッド
133 ガイドスロット
133H 上死点
133L 下死点
135 エンドスロット
137 第2ガイドスロット
137S 斜め部
137E 末端部
139 ロックホール
140 油圧システム
141 ピストン
141R ロッド
143 シリンダ
145 油圧ライン
145A 第1油圧ライン
145B 第2油圧ライン
147F 前方ストッパ
147B 後方ストッパ
150 スライドシュー
150M 上部スライドシュー
150L 下部スライドシュー
153 コイルばね
160 スライダー
161 開放部
163 長溝
165 レール
165S 傾斜部
170 プラグ
170S 傾斜面
171 コイルばね
180 ロッキングシュー
180H 上部ロッキングシュー
180L 下部ロッキングシュー
181 突起
183、185 コイルばね
187 制御弁
187A、187B オンオフ弁
190 オイルダンパボックス
191 油圧ロック部
192A、192B ポート
193A、193B チャンバ
194A、194B ロックリング
195A、195B グルーブ
196A、196B 流路
210 スライド軸
211 中空軸
213 スライドロッカー
215 支持ばね
217 ばねホルダー
220 オイルタンカー
221 オイルポンプ
223 供給ライン
225 ドレインライン