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特許7493633磁気共鳴コイルアレイ及び自己補償型無線周波数チョーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】磁気共鳴コイルアレイ及び自己補償型無線周波数チョーク
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
A61B5/055 355
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022580514
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021066582
(87)【国際公開番号】W WO2022002635
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】20183168.2
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リュースラ クリストフ ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】リップス オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルニッケル ペーター
(72)【発明者】
【氏名】マズルケウィッツ ピーター シーザー
(72)【発明者】
【氏名】ファインデクリー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュメール インゴ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05450011(US,A)
【文献】特開平07-162257(JP,A)
【文献】特開2001-149331(JP,A)
【文献】実開平07-029815(JP,U)
【文献】特開2017-005572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴システム用の無線周波数チョークであって、
トロイド形態を有するチョークハウジングと、
第1の端部及び第2の端部を有し、B1励起場を有する前記磁気共鳴システムの磁気共鳴無線周波数信号を運ぶ、同軸ケーブルと、を備え、
前記同軸ケーブルの前記第1の端部と前記第2の端部との間にある部分は、前記B1励起場を補償する高いインピーダンスが得られる共振周波数で前記無線周波数チョークが自己共振するインダクタンス及び浮遊容量を形成するような自己補償型巻線パターンで前記チョークハウジングの周囲に巻かれている、無線周波数チョークにおいて、前記自己補償型巻線パターンは、前記同軸ケーブルが前記トロイド形態の回転面の周囲にある第1の巻線パターンと、前記同軸ケーブルが回転軸の周囲にあり前記トロイド形態の外周に沿っている対抗巻線パターンと、を備えることを特徴とする、無線周波数チョーク。
【請求項2】
前記チョークハウジングは第1の切欠き構造と第2の切欠き構造とを備え、
前記第1の切欠き構造は、前記自己補償型巻線パターンの前記第1の巻線パターンを案内するための複数の切欠きを備え、各切欠きは前記トロイド形態の回転軸を含む平面内に位置しており、
前記第2の切欠き構造は、前記自己補償型巻線パターンの前記対抗巻線パターンを案内するための更なる切欠きを備え、前記更なる切欠きは前記トロイド形態の前記回転軸に対して垂直な平面内に前記トロイド形態の外周に沿って位置している、請求項1に記載の無線周波数チョーク。
【請求項3】
前記チョークハウジングは開放された切除部及び/又は円形の中空開口部を備える、請求項1又は2に記載の無線周波数チョーク。
【請求項4】
前記同軸ケーブルはマイクロ同軸ケーブルである、並びに/又は、前記トロイド形態は12mm+/-25%の直径及び5mm+/-25%の厚さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線周波数チョーク。
【請求項5】
磁気共鳴無線周波数信号を出力する複数の磁気共鳴受信コイルと、
前記磁気共鳴無線周波数信号を受信する入力-出力ユニットと、
前記磁気共鳴受信コイルを前記入力-出力ユニットと相互接続する複数の同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルは、前記磁気共鳴無線周波数信号を運び、且つ請求項1から4のいずれか一項に記載の無線周波数チョークを備える、複数の同軸ケーブルと、
を備える、B励起場を有する磁気共鳴システム用の磁気共鳴コイルアレイ。
【請求項6】
前記無線周波数チョークはマイクロ無線周波数チョークであり、前記同軸ケーブルはマイクロ同軸ケーブルである、請求項5に記載の磁気共鳴コイルアレイ。
【請求項7】
前記同軸ケーブル及び/又は前記無線周波数チョークは高インピーダンスである、請求項5又は6に記載の磁気共鳴コイルアレイ。
【請求項8】
直流信号を運ぶ直流ケーブルを備え、前記直流ケーブルは直流チョークを備え、前記直流チョークは前記無線周波数チョークの前記チョークハウジングの前記トロイド形態の内側に設置されている、請求項5から7のいずれか一項に記載の磁気共鳴コイルアレイ。
【請求項9】
可撓性支持構造を備え、前記複数の磁気共鳴受信コイルは前記可撓性支持構造の表面及び/又は中に二次元アレイとして配置されており、自己補償型の前記無線周波数チョーク及び/又は前記同軸ケーブルの重量、並びに任意選択的に直流ケーブル及び/又は直流チョークの重量が、前記可撓性支持構造の表面及び/又は中に前記可撓性支持構造にわたって均一に分散されるという点において、前記無線周波数チョーク及び/又は同軸ケーブルは一様に配置されている、請求項5から8のいずれか一項に記載の磁気共鳴コイルアレイ。
【請求項10】
前記複数の磁気共鳴受信コイル、前記無線周波数チョーク、及び/又は前記同軸ケーブルは、縫着、糊着、クランプ、及び/又は付加プリント工程によって前記可撓性支持構造に固定されている、請求項9に記載の磁気共鳴コイルアレイ。
【請求項11】
前記無線周波数チョークは、前記無線周波数チョークが前記可撓性支持構造に対して回転可能及び/又は傾斜可能となるように、前記可撓性支持構造に固定されている、請求項9又は10に記載の磁気共鳴コイルアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴(MR)の分野に関し、特に、自己補償型無線周波数チョークによって実現される分散されたケーブル配線を有する磁気共鳴コイルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴(MR)システムに関して、特に磁気共鳴画像化(MRI)システムに関して、画像取得の速さを高める目的で、使用される無線周波数(RF)受信コイルの数を増やすための取り組みが絶えず行われている。磁気共鳴コイルアレイ中に最大64個のRF受信コイルを有するのは珍しいことではない。RF受信コイルは典型的には、受信したRF信号をサンプリング及びデジタル化するRF受信器に、同軸ケーブルによって接続される。RFチャネル数のこれらの増加に起因して、MRIシステムの設計者は、RF受信コイルに関して採用される構成要素及びサブアセンブリのサイズを低減すべきという圧力を常に受けている。
【0003】
国際公開第2018/077679A1号は小型の同軸ケーブルと共に使用するのに適したバランを提供し、このバランによってバランを設置するためにケーブルを切断する必要がなくなる。各同軸ケーブルのRF受信コイルからRF受信器まで延びている部分がデバイスの周囲に複数回巻かれて、インダクタが形成される。
【0004】
米国特許出願第2012/0079944号は、多重共鳴MRIシステム用のケーブル配線構成に関する。結合されている電気ケーブルのインピーダンスを規定するトロイドコイル導体を含む、好適な共鳴回路の実施形態が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気共鳴画像法(MRI)は、核磁気共鳴の原理、すなわち非ゼロのスピンを有する原子核が磁気モーメントを有することに基づく画像化技術である。医用MRIでは、非ゼロのスピンを有する原子核は通常は水素原子の核であり、これは人体又は動物の体の中に存在する。B励起場を形成する無線周波数(RF)波は外部磁場内でそれらの核に向けられ、陽子の励起及び続く陽子の緩和の過程をもたらす。陽子の緩和の結果核によってRF信号が出射され、それを検出及び処理して画像を形成することができる。
【0006】
典型的なMRIシステムは一般に、磁石、例えば強力な静磁場を生み出す超電導電磁石と、静磁場の直線的な変動を生み出す傾斜磁場コイルと、B励起場を生み出すRF送信コイルと、緩和中の核によって出射された磁気共鳴RF信号を検出するRF受信コイルと、を備える。一般に、MRIシステムでは、コイル内でのRF信号の制御された送信のために同軸ケーブルが使用される。同軸ケーブルは外部シールドと内部導体とを有し、これらは誘電体材料によって互いから分離されている。外部シールドは望まれない周波数を拾わないように内部導体を保護するという目的を有する。
【0007】
しかしながら、同軸ケーブルの外部にあるソースが外部シールド内に意図しない電流を誘起し、この結果、RF受信コイルアレイの信号対ノイズ比に悪影響を与える意図しない磁場が生成される可能性がある。この理由から、MRIシステムでは同軸ケーブルと共に、バラン又はRFチョークなどのRFトラップが使用される。
【0008】
典型的には、MRIシステムでは、受信コイルアレイを形成する複数のRF受信コイルが使用される。従来のRF受信コイル及びRF受信コイルアレイは嵩張る及び/又は剛直となる傾向があり、コイルアレイ内の他のRF受信コイルに対して、及び画像化対象者に対して、それぞれ固定された位置に維持されるように構成されている。嵩張り及び可撓性の欠如によって多くの場合、RF受信コイルと画像化対象者の所望の解剖学的構造の最も効率的な結合が妨げられると共に、画像化対象者にとって画像化の過程が快適でないものになる。
【0009】
コイルアレイ中のRF受信コイルの数を増やすことによって、画像取得のための時間を短くすることができる。しかしながら、RF受信コイルの数を増やすことは、RF受信コイルに関して採用される構成要素、すなわちRFケーブル、RFチョークなどのRFトラップ、前置増幅器、及びプリント回路基板(PCB)を小型化する必要性を要求する。RF受信コイルアレイを小型化するという目標に伴い、RF受信コイル及び電子部品は従来のRF受信コイルと比較して画像化対象者のより近くにくることになり、画像化対象者の体験及び操作者の取り扱い体験にとって、受信コイル及びコイル電子部品の形態、サイズ、及び重量がより一層重要になる。しかしながら、病院内のMRIシステムに関する環境が厳しいことに起因して、RF受信コイル及び構成要素は依然として、システムが日々の臨床ルーチンに耐えるように堅牢に設計される必要がある。
【0010】
したがって、画像化対象者及び操作者の体験を向上させる、堅牢で可撓性を有するRF受信コイルアレイを提供することが、本発明の目的である。本発明の更なる目的は、堅牢で薄型の可撓性を有するRF受信コイルアレイの実現を可能にするRFチョークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は独立請求項の主題によって対処される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【0012】
したがって、本発明によれば、トロイド形態を有するチョークハウジングと同軸ケーブルとを備える磁気共鳴システム用の無線周波数チョークであって、同軸ケーブルは第1の端部と第2の端部とを有し、B励起場を有する磁気共鳴システムの磁気共鳴無線周波数信号を運ぶように構成されており、同軸ケーブルの第1の端部と第2の端部との間にある部分は、チョークハウジングの周囲に、無線周波数チョークがB励起場を補償するような自己補償型巻線パターンで巻かれており、自己補償型巻線パターンは、巻線がトロイド形態の回転面の周囲にある第1の巻線パターン(20)と、少なくとも1本の巻線が回転軸(24)の周囲にありトロイド形態の外周に沿っている、対抗巻線パターン(22)とを備える、無線周波数チョークが提供される。
【0013】
また更に、本発明によれば、磁気共鳴無線周波数信号を出力するように構成されている複数の磁気共鳴受信コイルと、磁気共鳴無線周波数信号を受信するように構成されている入力-出力ユニットと、磁気共鳴受信コイルを入力-出力ユニットと相互接続する複数の同軸ケーブルであって、同軸ケーブルは、磁気共鳴無線周波数信号を運ぶように構成されており、且つ上記の無線周波数チョークを備える、複数の同軸ケーブルとを備える、B励起場を有する磁気共鳴システム用の磁気共鳴コイルアレイが提供される。
【0014】
本発明の基本的な発想は、自己補償型巻線パターンを有するRFチョークを使用することであり、これは自己補償型RFチョークとも呼ばれる。自己補償型巻線パターンは、MRIシステムのB励起場の補償を提供し、近くにある局所的なコイルへの結合を排除する。自己補償型巻線パターンが理想的なインダクタとしての自己補償型RFチョークの挙動を担うのが好ましい。自己補償型巻線パターンの浮遊容量に起因して、自己補償型RFチョークは自己共振周波数で自己共振する。一般に、インダクタの自己共振周波数とは、インダクタの浮遊容量がインダクタの理想的なインダクタンスと共振し、結果的に非常に高いインピーダンスが得られる周波数である。したがって、自己補償型RFチョークの自己共振は、自己補償型RFチョークのインピーダンスを大きくするのを助ける。自己補償型RFチョークの自己共振周波数は好ましくは、チョークハウジングの特定の幾何形状、自己補償型巻線パターン、及び同軸ケーブルの直径に依存する。自己共振周波数が同じ周波数ではないか又はMRIシステムのB励起場の周波数に近い場合でも、自己補償型RFチョークは依然として高インピーダンスを実現する。したがって、従来の共振RFトラップの場合に必要であるようにB励起場に等しいか又は近い共振周波数を有するようにRFチョークを設計する必要なく、MRIシステムの信号対ノイズ比が改善される。また更に、従来の共振RFトラップは自己誘導率が低いので、高インピーダンスを有する共振トラップを実現するために追加のコンデンサを必要とする。
【0015】
磁気共鳴受信コイルアレイに関して、自己補償型RFチョークは、従来の受信コイルアレイにおいて使用される従来の嵩張る共振RFトラップを置き換えることを可能にし、よって、分散されたケーブル配線の実装を可能にするが、その場合好ましくは、各磁気共鳴受信コイルが、自己補償型RFチョークを備える同軸ケーブルによって入力-出力ユニットに接続される。魚骨形構造に沿って同軸ケーブルが配線される、及び、同軸ケーブルの平行配線が太く可撓性のないケーブル束及び大型のRFトラップをもたらす、従来のケーブル配線とは対照的に、本発明の分散されたケーブル配線には可撓性がある。言い換えれば、各磁気共鳴受信コイルを入力-出力ユニットと相互接続する同軸ケーブルは予め定められた剛直な構造を有さず、ケーブル配線は好ましくは可撓性があり、その結果特定の状況に適合可能である。
【0016】
自己補償型RFチョークは、トロイド形態を有するチョークハウジングを備える。数学上は、トロイドは二次元物体、例えば円、長方形、又は正方形を三次元空間内でその二次元物体と同一平面上にある回転軸を中心にして回転させることによって生成される三次元物体であり、この場合回転軸は二次元物体とは接触しない。言い換えれば、トロイドは、中央に円形の穴を有するドーナツに似た三次元物体である。回転軸は円形の穴の中心を通過する。自己補償型RFチョークのチョークハウジングはトロイド形態を有するが、このことはチョークハウジングの形状が本質的にトロイドであることを意味する。ただし上記の数学的定義からの小さな逸脱を許容することができ、例えばチョークハウジングは穴又は溝などの追加の特徴を備えてもよく、その場合チョークハウジング自体は回転対称とはならない場合がある。チョークハウジングが、トーラスの形態をいくつかの多角形面によって近似した穿孔多面体の形態を有する場合もあり得る。
【0017】
好ましくは、チョークハウジングのトロイド形態を形成する二次元物体は長方形、より好ましくは角を丸めた長方形である。より一層好ましくは、長方形の長辺はトロイド形態の回転軸と平行である。
【0018】
自己補償型RFチョークは、第1及び第2の端部を有する同軸ケーブルを更に備える。好ましくは、同軸ケーブルは外部シールドと内部導体とを有し、これらは誘電体材料によって互いから分離されている。典型的には、同軸ケーブルはMRIシステムにおいてRF信号の制御された送信のために使用されるが、その理由は、内部導体が望まれない周波数を拾わないように、外部シールドが保護する目的を有するからである。同軸ケーブルは2つの端部、第1の端部及び第2の端部を有する。好ましくは、同軸ケーブルは、同軸ケーブルの第1の端部から同軸ケーブルの第2の端部へと、磁気共鳴システムの磁気共鳴RF信号を運ぶように構成されている。同軸ケーブルの第1の端部と第2の端部との間にある部分は、チョークハウジングの周囲に自己補償型巻線パターンで巻かれている。チョークハウジングの周囲に巻かれることは好ましくは、同軸ケーブルがチョークハウジングのトロイド形態に沿って巻かれることを意味する。自己補償型巻線パターンにおける同軸ケーブルの巻線が自己補償型RFチョークの特性を担っている、すなわち、自己補償型RFチョークがB励起場と共振する必要なくB1励起場を補償するのが好ましい。
【0019】
自己補償型RFチョークは磁気共鳴システムでの、特に磁気共鳴画像化システムでの使用に適している。自己補償型RFチョークは好ましくは磁気共鳴コイルアレイ内で使用され得る。自己補償型RFチョークの更に好ましい用途は、磁気共鳴画像化システム内の能動又は受動センサにおけるものであり、そこには放射線センサ、超音波センサ、光センサ、及び/又はRADARセンサが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
自己補償型RFチョークの自己補償型巻線パターンに関して、本発明の好ましい実施形態によれば、自己補償型巻線パターンは、巻線がトロイド形態の回転面の周囲にある第1の巻線パターンと、少なくとも1本の巻線が回転軸の周囲にありトロイド形態の外周に沿っている対抗巻線パターンとを備える。第1の巻線パターンはトロイド形態の回転面の周囲に巻線を備える。言い換えれば、このことは、同軸ケーブルが回転面に沿って巻かれて、第1の巻線パターンの巻線の形状が、トロイド形態を生成するために使用される二次元物体の形状に本質的に一致するようになることを意味する。好ましくは、第1の巻線パターンは、同軸ケーブルを第1の方向においてトロイド形態の円形の穴を回転軸に沿って通過するように案内することによって、次いで、同軸ケーブルをトロイド形態の外周に向けて外向きに回転軸から離れる方へと案内することによって、次いで、同軸ケーブルを回転軸と平行であるが第1の方向とは反対の方向に案内することによって、及び、次いで、同軸ケーブルをこの案内手順が再び開始できるように回転軸に向けて案内することによって、生成される。このようにして回転面に沿ったらせん形が形成されて、第1の巻線パターンが構成される。好ましくは、第1の巻線パターンの個々の巻きの間隔は一定であり、更に好ましくは、第1の巻線パターンは、チョークハウジングに沿って均等に分散される。このことは、自己補償型RFチョークのチョーキング機能の全体にわたって一定の特性インピーダンスを維持するのを助ける。
【0021】
自己補償型巻線パターンは、少なくとも1本の巻線が回転軸の周囲にありトロイド形態の外周に沿っている、対抗巻線パターンを更に備える。言い換えれば、対抗巻線パターンは円の形態を有する。好ましくは、対抗巻線パターンは第1の巻線パターン内に配置される、言い換えれば、第1の巻線パターンのらせん形は好ましくは、対抗巻線パターンの周囲に形成される。好ましくは、対抗巻線パターンはB励起場補償を提供する。より好ましくは、自己補償型RFチョークは、同軸ケーブルのシールドに>20dBのアイソレーションをもたらす。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の巻線パターンにおける一定の間隔形成を容易にするために、及び良好に画定された対抗巻線パターンを実現するために、チョークハウジングは、第1の切欠き構造と第2の切欠き構造とを備え、第1の切欠き構造は、自己補償型巻線パターンの第1の巻線パターンを案内するための複数の切欠きを備え、各切欠きはトロイド形態の回転軸を含む平面内に位置しており、第2の切欠き構造は、自己補償型巻線パターンの対抗巻線パターンを案内するための更なる切欠きを備え、更なる切欠きはトロイド形態の回転軸に対して垂直な平面内にトロイド形態の外周に沿って位置している。言い換えれば、チョークハウジングは平坦な表面を有さず、同軸ケーブルを案内する溝の形態の切欠きを備える。
【0023】
第1の巻線パターンを形成するべく同軸ケーブルを案内するために、チョークハウジングは、複数の切欠きを有する第1の切欠き構造を備える。第1の切欠き構造の切欠きの各々は、回転軸を含む平面内に位置している。第1の切欠き構造の各切欠きは、チョークハウジングの表面上でのその経路が、トロイド形態を生成するために使用される二次元物体の外側形状の一部に対応し得る。例えば、トロイド形態が、長方形をその長方形の長辺を回転軸と平行にして回転軸を中心に回転させることによって生成される場合、切欠きの経路は、長方形のそれらの辺の一部に対応し得る。例えば、表面上の切欠きの経路は、長方形の2つの長辺に、長方形の2つの短辺に、又は長方形のある角で接続しているその長方形の長辺及び短辺の一部に、対応し得る。好ましくは、第1の切欠き構造の複数の切欠きは互いから均等に離間され、更に好ましくは、チョークハウジングにわたって均等に分散される。
【0024】
対抗巻線パターンを形成するべく同軸ケーブルを案内するために、チョークハウジングは、更なる切除部を有する第2の切欠き構造を備える。更なる切欠きは、回転軸に対して垂直な平面内に、トロイド形態の外周に沿って位置している。言い換えれば、更なる切欠きは円の形態を有する。トロイド形態が、長方形をその長方形の一辺を回転軸と平行にして回転軸を中心に回転させることによって生成される場合、更なる切欠きは、長方形のその辺の高さの半分のところに位置するのが好ましい。
【0025】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、チョークハウジングは開放された切除部及び/又は円形の中空開口部を備える。既に述べたように、第1の巻線パターンを形成するためには、同軸ケーブルをトロイド形態の円形の穴を通過するように案内し、その後何度か方向を変更してからこの工程を繰り返す必要があり、このため同軸ケーブルの巻線はかなり面倒なものになる。チョークハウジングに開口を設けることによって、第1の巻線パターンの形成に関して方向の変更を省略できるので、巻線工程が簡単になる。開放された切除部は回転軸を含む平面内に位置するのが好ましい。この結果、チョークハウジングの開放された切除部によって、チョークハウジングの周囲に同軸ケーブルを自動的に巻回する巻線機を使用することが可能になる。開放された切除部に対する代替又は追加として、チョークハウジングは円形の中空開口部を備え得る。これは自己補償型RFチョークが3Dプリント及び/又は付加製造工程によって製造される場合に特に好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、同軸ケーブルはマイクロ同軸ケーブルである、並びに/又は、トロイド形態は12mm+/-25%の直径及び5mm+/-25%の厚さを有する。マイクロ同軸ケーブルは好ましくは、1ミリメートル未満の直径を有する。マイクロ同軸ケーブルは、自己補償型RFチョークを小型且つ軽量にできるという利点を有する。また更に、他の電子的構成要素への同軸ケーブルの近接に起因する寄生容量が、従来の同軸ケーブルの場合よりもマイクロ同軸ケーブルの場合により顕著でなくなる。マイクロ同軸ケーブルを使用することによってまた、チョークハウジングが小寸法を有することも可能になる。好ましくは、トロイド形態の外径は12mm+/-25%、内径は5+/-25%である。厚さ、すなわちトロイド形態の回転軸と平行な寸法に関して、厚さは好ましくは5mm+/-25%である。これらの小さい寸法を有する自己補償型RFチョークは自己補償型マイクロRFチョークとも呼ばれる。
【0027】
既に述べたように、本発明の更なる態様は、磁気共鳴RF信号を出力するように構成されている複数の磁気共鳴受信コイルと、磁気共鳴RF信号を受信するように構成されている入力-出力ユニットと、磁気共鳴受信コイルを入力-出力ユニットと相互接続する複数の同軸ケーブルであって、同軸ケーブルは、磁気共鳴RF信号を運ぶように構成されており、且つ自己補償型RFチョークを備える、複数の同軸ケーブルと、を備える、磁気共鳴コイルアレイである。RF受信コイルとも呼ばれる複数の磁気共鳴受信コイルが、二次元アレイとして配置されるのが好ましい。RF受信コイルとしては、平面状のコイル及び/又は薄型の可撓性ヘッドコイルが使用され得る。また更に、各RF受信コイルは同軸ケーブルによって、入力-出力ユニットに直接的に接続されるのが好ましい。直接的に接続されるとは、同軸ケーブルが予め定められた構造に沿って配線されないことを意味し、この場合いくつかの同軸ケーブルが組み合わされてケーブル束となるが、個々の同軸ケーブルがRF受信コイルから入力-出力ユニットまで、各々個別に配線されるのが好ましい。好ましくは、同軸ケーブルはRF受信コイルの二次元アレイによって画定されるエリア内でケーブル束を形成しない。同軸ケーブルの配線が可撓性を有することの利点は、RF受信コイルのハウジングの及び/又は磁気共鳴コイルアレイの穴、開口部、及び/又は凹部の周囲に同軸ケーブルを配線することを選べることである。これらの穴、開口部、及び/又は凹部は画像化対象者の満足にとって重要であるが、その理由は、それらが加熱を低減し、バイタルサインをモニタする又は画像化対象者に末梢静脈カテーテルなどの介入的アクセスを提供するという選択肢などの更なる機能性を提供するからである。同軸ケーブルは第1の端部と第2の端部とを備え、第1の端部又は第2の端部の一方が入力-出力ユニットに接続され、同軸ケーブルの他端、すなわち第2の端部又は第1の端部の一方が、RF受信コイルに接続される。同軸ケーブルの第1の端部と第2の端部との間にある部分は、自己補償型RFチョークを形成するために、トロイド形態を有するチョークハウジングの周囲に自己補償型巻線パターンで巻かれている。自己補償型RFチョークによって、磁気共鳴コイルアレイにおいて嵩張る共振RFトラップを省略することが可能になり、この結果、各RF受信コイルを入力-出力ユニットと相互接続する同軸ケーブルが、予め定められた剛直な構造を有さないことが可能になる。このようにして、RF受信コイルをより恣意的に位置付けることを可能にし、RF受信コイルの設置及び/又はサイズを画像化対象者の所望の解剖学的構造の対象範囲に基づかせることを可能にする、可撓性を有する磁気共鳴コイルアレイが提供される。この結果、磁気共鳴コイルアレイは、比較的容易に画像化対象者の解剖学的構造に追随し得る。更に、より少ない材料、集中したコンデンサを含む従来の共振RFトラップの放棄に起因して、磁気共鳴コイルアレイのコスト及び重量が大きく低減され得る。また更に、自己補償型RFチョークを使用することによって太いケーブル束が回避されるので、大型の及び/又は嵩張るRFトラップは必要ない。磁気共鳴コイルアレイの低い重量及び高い可撓性によって、画像化対象者の及び操作者の体験が更に向上する。
【0028】
既に述べたように、各RF受信コイルは、同軸ケーブルによって入力-出力ユニットに直接的に接続されるのが好ましい。しかしながらこのことは、磁気共鳴コイルアレイが追加の電子的構成要素、例えば無線周波数増幅器を備え得ることを除外しない。これらの追加の構成要素も同軸ケーブルに接続され得る。言い換えれば、同軸ケーブルの第1の端部と第2の端部との間で、同軸ケーブルに更なる電子部品が接続されることが可能であり得る。
【0029】
小型化に関して、本発明の好ましい実施形態によれば、自己補償型RFチョークが自己補償型マイクロRFチョークであり、同軸ケーブルがマイクロ同軸ケーブルである、磁気共鳴コイルアレイが提供される。上記したような自己補償型マイクロRFチョーク及びマイクロ同軸ケーブルの小さい寸法によって、磁気共鳴コイルアレイが特に薄型で、可撓性を有し、軽量となることが可能になる。この結果、画像化対象者及び操作者にとっての快適さが大きく向上する。また更に、構成要素の小型化によって、磁気共鳴コイルアレイ内でより多数のRF受信コイルを実装することが可能になり、取得時間の短縮につながる。また更に、太い同軸ケーブルと比べてマイクロ同軸ケーブルは寄生容量がより低い。
【0030】
磁気共鳴コイルアレイの高い信号対ノイズ比に関連して、本発明の別の好ましい実施形態によれば、同軸ケーブル及び/又は自己補償型RFチョークは高インピーダンスである。この文脈では、高インピーダンスであることは、自己補償型RFチョークが、B励起場によって同軸ケーブルのシールド内に誘起されるRF電流の、好ましくは>20dBの高い抑制をもたらすことを意味する。更に、自己補償型RFチョークの高いインピーダンスは、磁気共鳴コイルアレイ中の個々のRF受信コイル同士の間の結合を低減するべく、同軸ケーブルの内部導体に沿った伝播及び共振の効果を抑制する。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、直流信号を運ぶように構成されている直流ケーブルを備える磁気共鳴コイルアレイであって、直流ケーブルは直流チョークを備え、直流チョークは自己補償型RFチョークのチョークハウジングのトロイド形態の内側に設置されている、磁気共鳴コイルアレイ、が提供される。好ましくは、DCチョークはトロイド形態の円形の穴の中に設置される。直流ケーブル、短縮してDCケーブルは、磁気共鳴コイルアレイのRF受信コイルを操作するために使用され得るDC信号を運ぶように構成されている。好ましくは、各RF受信コイルはDCケーブルに接続される。DCケーブル上に誘起されるRF信号を抑制するために、DCケーブルはDCチョークを備える。好ましくはDCチョークはインダクタである。しかしながら、DCケーブル上にDCチョークを設置することによってDCケーブルの局所重量が増加し、DCケーブル及びしたがって磁気共鳴コイルアレイが、機械的応力をより受け易くなる。DCチョークを自己補償型RFチョークのチョークハウジングのトロイド形態の内側に設置することによって、機械的安定性及び堅牢性を高めることができる。この場合、自己補償型RFチョークは機械的支持部として機能し、磁気共鳴コイルアレイに追加の機械的支持構成要素を追加する必要なく、DCチョーク及びDCケーブルを保護する。また更に、RFチョークを自己補償型RFチョークのトロイド形態の内側に設置することによって、自己補償型RFチョークとDCチョークとの間の望まれないクロストークが低減される。この結果、磁気共鳴コイルアレイの信号対ノイズが向上する。
【0032】
この点に関して、本発明の好ましい実施形態によれば、同軸ケーブルのシールドは、DC回路における電線として使用され得る磁気共鳴RF信号を運ぶように構成される。この場合磁気共鳴コイルアレイは、RF受信コイルごとに、DCチョークを備える1つのDCケーブルを備える。この場合、自己補償型RFチョークのチョークハウジングのトロイド形態の内側に、1つのDCチョークが設置されるのが好ましい。
【0033】
しかしながら、DC回路が磁気共鳴RF信号を運ぶ同軸ケーブルから独立している場合もあり得る。この場合好ましくは、RF受信コイルごとに2つのDCケーブルが必要となる。この場合には、磁気共鳴コイルアレイがRF受信コイルごとに2つのDCケーブルを備え、各DCケーブルがDCチョークを備えるのが好ましい。この場合、自己補償型RFチョークのチョークハウジングのトロイド形態の内側に、2つのDCチョークが設置されるのが好ましい。また更に、同軸ケーブルがDCケーブルとして使用され得る。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、磁気共鳴コイルアレイは可撓性支持構造を備え、複数の磁気共鳴受信コイルは支持構造の表面及び/又は中に二次元アレイとして配置されており、自己補償型RFチョーク及び/又は同軸ケーブルは支持構造の表面及び/又は中に一様に配置されている。一様に配置されることは好ましくは、自己補償型RFチョーク及び/又は同軸ケーブルの、並びに任意選択的にDCケーブル及び/又はDCチョークの重量が、可撓性支持構造にわたって均一に分散されることを意味する。この結果、画像化対象者の快適さが向上する。支持構造は好ましくは、可撓性を有する布材(garment)及び/又はフォームである。支持構造は、支持構造の可撓性を更に高め支持構造の重量を低減するための、穴、細孔、及び/又は切欠きを備え得る。RF受信コイル並びに更なる電気構成要素、すなわち同軸ケーブル、自己補償型RFチョーク、DCケーブル、及び/又はDCチョークは、支持構造の中及び/又は表面に配置されるのが好ましい。例えば、支持構造は布材のいくつかの層を備えてもよく、RF受信コイルは布材の2つの層の間に配置されてもよい。
【0035】
また更に、自己補償型RFチョークの可撓性に関して、チョークハウジングは可撓性材料で製作されるのが好ましくい。多くのRFチョークは鉄粉又はフェライトのコアを有するが、自己補償型RFチョークのチョークハウジングは好ましくは磁性を有さず、可撓性を有する好ましくは軽量の材料で製作される。このことによって、画像化対象者の形状に適合するための磁気共鳴コイルアレイの適合性が更に高まる。
【0036】
好ましくは、支持構造を備える磁気共鳴コイルアレイは20mm未満の厚さを有する。また更に、支持構造を備える磁気共鳴コイルアレイの重量は、RF受信コイルあたり20g未満であるのが好ましい。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、複数のRF受信コイル、自己補償型RFチョーク、及び/又は同軸ケーブルは、縫着、糊着、クランプ、及び/又は付加プリント工程によって、支持構造に固定される。磁気共鳴コイルアレイについて可撓性を更に改善する及び低い重量を更に軽くするために、RF受信コイル並びに更なる電気構成要素、すなわち同軸ケーブル、自己補償型RFチョーク、DCケーブル、及び/又はDCチョークを支持構造に取り付ける様式は、軽量であると共に可撓性も有するものであり得る。この要件は、構成要素を糊着、縫着によって、及び/又は付加プリント工程によって取り付けることによって満たされる。
【0038】
この点に関して、本発明の別の好ましい実施形態によれば、支持構造への自己補償型RFチョークの固定は、支持構造に対する自己補償型RFチョークの回転及び/又は角度形成を可能にする。このようにして、自己補償型RFチョークをより恣意的に位置付けることを可能にし、設置を特定の状況、例えば画像化対象者の外形に基づかせることを可能にする、可撓性を有する磁気共鳴コイルアレイが提供され得る。自己補償型RFチョークの固定は、自己補償型RFチョークの回転及び/又は支持構造に対する+/-30度の角度形成を可能にするのが好ましい。
【0039】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかになり、これらを参照して説明されることになる。ただしそのような実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を表しているとは限らず、したがって本発明の範囲を解釈するために、特許請求の範囲に対して及び本明細書において参照される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】磁気共鳴受信コイルアレイを概略的に描いた図であり、ケーブル配線は先行技術で知られているような魚骨形構造を有する。
図2】本発明の1つの可能な実施形態に係る磁気共鳴コイルアレイを概略的に描いた図であり、複数の同軸ケーブルが磁気共鳴受信コイルを入力-出力ユニットと相互接続しており、同軸ケーブルは無線周波数チョークを備える。
図3図2の磁気共鳴受信コイルのうちの1つ及び無線周波数チョークを備える同軸ケーブルのうちの1つを概略的に描いた図である。
図4】本発明の可能な実施形態に係る無線周波数チョークのチョークハウジングを概略的に描いた図である。
図5】本発明の別の可能な実施形態に係る磁気共鳴コイルアレイの無線周波数チョークを通る断面を概略的に描いた図である。
図6】本発明の別の可能な実施形態に係る磁気共鳴コイルアレイを通る断面を概略的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1には、先行技術において知られている磁気共鳴受信コイルアレイ1が概略的に描かれている。受信コイルアレイ1は、二次元アレイとして配置されるいくつかの受信コイル2を備える。受信コイル2の各々は、受信コイル2を入力-出力ユニット6と相互接続する同軸ケーブル4に接続されている。いくつかの受信コイル2の個々の同軸ケーブル4は1つに束ねられて、魚骨形構造5を成して入力-出力ユニット6へと配線されている。ケーブル束にはいくつかの嵩張る共振RFトラップ3が取り付けられており、この結果、高い重量を有する可撓性を有さない磁気共鳴受信コイルアレイ1となる。
【0042】
図2には、本発明の好ましい実施形態に係る磁気共鳴コイルアレイ30が概略的に描かれている。磁気共鳴コイルアレイ30は、二次元アレイとして配置される複数のRF受信コイル32を備える。RF受信コイル32の各々は、RF受信コイル32を入力-出力ユニット34と相互接続する同軸ケーブル14に接続されている。個々の同軸ケーブル14は、RF受信コイル32を入力-出力ユニット34と直接的に接続するが、このことは、同軸ケーブル14が、複数のRF受信コイル32の二次元アレイによって画定されるエリア内で、1つに束ねられてケーブル束を形成することのないことを意味する。また更に、同軸ケーブル14は、自己補償型RFチョーク10を備える。同軸ケーブル14及び自己補償型RFチョーク10は、二次元アレイによって画定されるエリアにわたって均一に配置される、すなわち、同軸ケーブル14及び自己補償型RFチョーク10の重量は、二次元アレイによって画定されるエリアにわたって本質的に均等に分散される。
【0043】
この実施形態では、磁気共鳴コイルアレイ30は支持構造40を更に備え、この実施形態では、可撓性を有する布材が、複数のRF受信コイル32の二次元アレイによって画定されるエリアを覆うだけでなく、対称な様式でこのエリアと重なり合う。二次元アレイによって画定されるエリアの外側であるが支持構造のエリアの依然として内側において、複数の同軸ケーブル14が1つに束ねられてケーブル束を形成し、これが入力-出力ユニット34とつながる。この実施形態では、磁気共鳴コイルアレイ30は、B励起場を有する磁気共鳴画像化システムの受信コイルアレイ30として使用される。
【0044】
図3には、図2のRF受信コイル32のうちの1つ及び自己補償型RFチョーク10を備える同軸ケーブル14のうちの1つが、概略的に描かれている。図3において見て取れるように、同軸ケーブル14は、RF受信コイル32に接続されている第1の端部16と、第2の端部18と、を備える。同軸ケーブル14の第1の端部16と第2の端部18との間にある部分は、自己補償型RFチョーク10を形成するために、トロイド形態を有するチョークハウジング12(図4に描かれている)の周囲に巻かれている。同軸ケーブル14は、チョークハウジング12の周囲に、自己補償型RFチョーク10が磁気共鳴システムのB励起場を補償するような、自己補償型巻線パターンで巻かれている。
【0045】
図4には、本発明の別の可能な実施形態に係る自己補償型RFチョーク10のチョークハウジング12が、概略的に描かれている。チョークハウジング12はトロイド形態を有し、この実施形態では、トロイドは角を丸めた長方形を、回転軸24を中心に回転させることによって形成され、長方形の長辺は回転軸24と平行である。既に述べたように、同軸ケーブル14は、チョークハウジング12の周囲に自己補償型巻線パターンで巻かれている。同軸ケーブル14の巻線をチョークハウジング12の周囲に案内するために、チョークハウジング12は、第1の切欠き構造26と第2の切欠き構造28とを備える。第1の切欠き構造26は、自己補償型巻線パターンの第1の巻線パターン20(図5に描かれている)を案内するための複数の切欠き26a、26b、26cを備え、各切欠き26a、26b、26cは、トロイド形態の回転軸24を含む平面内に位置している。この実施形態では、第1の切欠き構造26の切欠き26a、26b、26cは、長方形の2つの長辺に対応するトロイド形態の表面上に位置している。第2の切欠き構造28に関して、第2の切欠き構造28は、自己補償型巻線パターンの対抗巻線パターン22(図5に描かれている)を案内するための更なる切欠き28を備え、更なる切欠き28はトロイド形態の回転軸24に対して垂直な平面内にトロイド形態の外周に沿って位置している。図4において更に見て取れるように、チョークハウジング12は、第1の巻線パターン20から対抗巻線パターン22への同軸ケーブル14の移行を案内するために、3つの小穴44を更に備える。
【0046】
図5には、本発明の別の可能な実施形態に係る、磁気共鳴コイルアレイ30の自己補償型RFチョーク10を通る断面が、概略的に描かれている。図5において見て取れるように、自己補償型巻線パターンは、巻線がトロイド形態の回転面の周囲にある第1の巻線パターン20と、1本の巻線が回転軸24の周囲にありトロイド形態の外周に沿っている対抗巻線パターン22と、を備える。第1の巻線パターン20は、同軸ケーブル14を第1の方向においてトロイド形態の円形の穴を回転軸24に沿って通過するように案内することによって、次いで、同軸ケーブル14をトロイド形態の外周に向けて外向きに回転軸24から離れる方へと案内することによって、次いで、同軸ケーブル14を回転軸24と平行であるが第1の方向とは反対の方向に案内することによって、及び、次いで、同軸ケーブル14をこの案内手順が再び開始できるように回転軸24に向けて案内することによって、生成される。このようにして回転面に沿ったらせん形が形成されて、第1の巻線パターン20が構成される。図5にも見られるように、第1の巻線パターン20の個々の巻き同士の間の間隔46は、巻線パターン20の全体を通して一定である。対抗巻線パターン22に関して、図5は、本発明のこの実施形態では、対抗巻線パターン22が第1の巻線パターン20内に配置されており、長方形の長辺の高さの半分のところに位置していることを示している。
【0047】
同じく図5において見ることができるように、磁気共鳴コイルアレイ30のこの実施形態では、磁気共鳴コイルアレイ30は、DCケーブル36を更に備える。DCケーブル36はDC信号を運ぶように構成されており、DCチョーク38を備える。この場合インダクタであるDCチョーク38は、自己補償型RFチョーク10のチョークハウジング12のトロイド形態の内側に設置される。
【0048】
図6には、本発明の別の可能な実施形態に係る磁気共鳴コイルアレイ30を通る断面が概略的に描かれている。図6において見て取れるように、磁気共鳴コイルアレイ30は、磁気共鳴画像化を行うために画像化対象者42に近付けられる。図2にも描かれているように、磁気共鳴コイルアレイ30の可能な実施形態は、支持構造40を備える。図6に示す実施形態では、支持構造40は可撓性フォームで製作されており、2層化構造を有する。磁気共鳴コイルアレイ30のRF受信コイル32は、フォームの2つの層の間に配置されている。自己補償型RFチョーク10は、画像化対象者から遠くに離れている方のフォームの層内に配置されている。この実施形態では、RF受信コイル32、並びに自己補償型RFチョーク10及び同軸ケーブル14(図示せず)は、支持構造40のフォームに縫着によって取り付けられている。自己補償型RFチョーク10は支持構造40に、支持構造40に対する自己補償型RFチョーク10の回転及び+/-30度の角度形成を可能にする緩い様式で縫着される。この実施形態では、磁気共鳴コイルアレイ30の厚さ48は12mmである。
【0049】
本発明について図面及び前述の説明において詳しく図示し説明してきたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的であって制限的ではないと見なすべきであり、本発明は開示されている実施形態に限定されない。特許請求される本発明の実施に際して、当業者は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、開示されている実施形態の他の変形形態を理解及び実現することができる。請求項において、単語「備える、含む」は他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。特定の手法が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手法の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、明確さのために、図面中の全ての要素に参照符号を付してあるとは限らない場合がある。
【符号の説明】
【0050】
1 受信コイルアレイ(先行技術)
2 受信コイル(先行技術)
3 共振RFトラップ(先行技術)
4 同軸ケーブル(先行技術)
5 魚骨形構造(先行技術)
6 入力-出力ユニット(先行技術)
10 自己補償型無線周波数チョーク
12 チョークハウジング
14 同軸ケーブル
16 第1の端部
18 第2の端部
20 第1の巻線パターン
22 対抗巻線パターン
24 回転軸
26 第1の切欠き構造
28 第2の切欠き構造
30 磁気共鳴コイルアレイ
32 受信コイル
34 入力-出力ユニット
36 直流ケーブル
38 直流チョーク
40 支持構造
42 画像化対象者
44 小穴
46 間隔
48 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6