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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】摩耗量推定装置および摩耗量推定方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/24 20060101AFI20240524BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240524BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B60C11/24 Z
B60C19/00 Z
B60C19/00 H
B60C19/00 B
G01M17/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023066302
(22)【出願日】2023-04-14
(62)【分割の表示】P 2019069250の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023095873
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】桑原 正
(72)【発明者】
【氏名】石坂 信吉
(72)【発明者】
【氏名】中島 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】吉成 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】目黒 聡
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0057877(US,A1)
【文献】特開2009-292434(JP,A)
【文献】特開2017-156295(JP,A)
【文献】特表2018-501466(JP,A)
【文献】特開2015-128940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159367(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154707(US,A1)
【文献】特開2018-158722(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108777067(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107505082(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/24
B60C 19/00
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から車両側データを取得する車両情報取得部と、
車両に装着された複数のタイヤに加わるタイヤ荷重を算出するタイヤ荷重算出部と、
入力データに基づいて前記タイヤの溝毎の摩耗量を出力する学習型の演算モデルを有し、前記車両側データ、前記タイヤ荷重、並びに前記タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを前記演算モデルに入力して前記演算モデルによって前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量算出部と、を備え、
前記摩耗量算出部は、学習済みの前記演算モデルによって前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出し、
前記タイヤ荷重算出部は、車両の荷台の監視装置によりタイヤ位置との関係から各タイヤに対してタイヤ荷重の重みづけを行うものであり、
前記摩耗量算出部は、前記タイヤ荷重の重みづけに基づいて、前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量推定装置。
【請求項2】
車両から車両側データを取得する車両情報取得部と、
車両に装着された複数のタイヤに加わるタイヤ荷重を算出するタイヤ荷重算出部と、
入力データに基づいて前記タイヤの溝毎の摩耗量を出力する学習型の演算モデルを有し、前記車両側データ、前記タイヤ荷重、並びに前記タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを前記演算モデルに入力して前記演算モデルによって前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量算出部と、を備え、
前記摩耗量算出部は、学習済みの前記演算モデルによって前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出し、
前記車両の位置データを取得する位置情報取得部を更に備え、
前記タイヤ荷重算出部は、前記位置情報取得部が取得した位置データによって算出される前記車両の前後方向の傾きに基づいて、前記タイヤ荷重を算出する摩耗量推定装置。
【請求項3】
現在のタイヤの摩耗量を報知する報知部を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の摩耗量推定装置。
【請求項4】
前記摩耗量算出部に、気象データ又は路面状況の少なくとも一方を入力する請求項1または2に記載の摩耗量推定装置。
【請求項5】
車両から車両側データを取得する車両情報取得ステップと、
車両に装着された複数のタイヤに加わるタイヤ荷重を算出するタイヤ荷重算出ステップと、
入力データに基づいて前記タイヤの溝毎の摩耗量を出力する学習型の演算モデルに基づいて、前記車両側データ、前記タイヤ荷重、並びに前記タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを用いて、前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、を備え、
前記摩耗量算出ステップは、学習済みの前記演算モデルによって前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出し、
前記タイヤ荷重算出ステップは、車両の荷台の監視装置によりタイヤ位置との関係から各タイヤに対してタイヤ荷重の重みづけを行うものであり、
前記摩耗量算出ステップは、前記タイヤ荷重の重みづけに基づいて、前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量推定方法。
【請求項6】
車両から車両側データを取得する車両情報取得ステップと、
車両に装着された複数のタイヤに加わるタイヤ荷重を算出するタイヤ荷重算出ステップと、
入力データに基づいて前記タイヤの溝毎の摩耗量を出力する学習型の演算モデルに基づいて、前記車両側データ、前記タイヤ荷重、並びに前記タイヤの温度および圧力を含むタイヤデータを用いて、前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、を備え、
前記摩耗量算出ステップは、学習済みの前記演算モデルによって前記タイヤの溝毎の摩耗量を算出し、
前記車両の位置データを取得する位置情報取得ステップを更に備え、
前記タイヤ荷重算出ステップは、前記位置情報取得ステップで取得した位置データによって算出される前記車両の前後方向の傾きに基づいて、前記タイヤ荷重を算出する摩耗量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ摩耗量の演算モデル生成システム、摩耗量推定システムおよび演算モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは走行状態や走行距離等に応じて摩耗が進行する。また昨今ではタイヤの圧力および温度を計測するセンサをタイヤに取り付け、計測した圧力および温度を表示する装置などが製品化されている。
【0003】
特許文献1には従来のタイヤ摩耗推定システムが記載されている。このタイヤ摩耗推定システムは、第1の予測変数を生成するためにタイヤに取り付けられた少なくとも1つのセンサと、第2の予測変数に関するデータを記憶するルックアップテーブルおよびデータベースの少なくとも一方と、少なくとも1つの乗物影響を含む予測変数のうちの一方と、予測変数を受け取り、少なくとも1つのタイヤに関する推定摩耗率を生成するモデルと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-158722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ摩耗推定システムは、例えばホイール位置およびドライブトレーンを乗物影響として用いてタイヤ摩耗を推定する。ホイール位置およびドライブトレーンによるタイヤ摩耗は、車両のタイプによって影響の多寡があり、例えばトラックなどの大型車両では必ずしも影響が大きい要因ではないことから、タイヤ摩耗の推定には改善の余地があることに本発明者は気づいた。すなわち、タイヤの摩耗量を推定する上で、車両における積荷重量の偏りなどの要因によって、個々のタイヤの負荷が大きく変わり摩耗量に影響を及ぼすことを考慮する必要があると考えた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤ摩耗量を正確に推定することができる演算モデル生成システム、摩耗量推定システムおよび演算モデル生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は演算モデル生成システムである。車両に装着された複数のタイヤに加わるタイヤ荷重を算出するタイヤ荷重算出部と、荷重に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルを有し、前記タイヤ荷重算出部により算出した前記タイヤ荷重を入力して前記演算モデルにより前記タイヤの摩耗量を算出する摩耗量算出部と、前記タイヤで計測される摩耗量と前記摩耗量算出部により算出された摩耗量とを比較し、前記演算モデルを更新する演算モデル更新部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は摩耗量推定システムである。車両に装着された複数のタイヤに加わるタイヤ荷重を算出するタイヤ荷重算出部と、荷重に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルを有し、前記タイヤ荷重算出部により算出した前記タイヤ荷重を入力して前記演算モデルにより前記タイヤの摩耗量を算出する摩耗量算出部と、を備える。
【0009】
本発明の別の態様は演算モデル生成方法である。演算モデル生成方法は、車両に装着された複数のタイヤに加わるタイヤ荷重を算出するタイヤ荷重算出ステップと、荷重に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデルに基づき、前記タイヤ荷重算出ステップにより算出した前記タイヤ荷重を入力して前記演算モデルにより前記タイヤの摩耗量を算出する摩耗量算出ステップと、前記タイヤで計測される摩耗量と前記摩耗量算出ステップにより算出された摩耗量とを比較し、前記演算モデルを更新する演算モデル更新ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タイヤ摩耗量を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】タイヤ摩耗量の演算モデル生成システムの概要を説明するための模式図である。
図2】実施形態1に係る演算モデル生成システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】演算モデルの学習について説明するための模式図である。
図4】演算モデル生成システムによる演算モデル生成の手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態2に係る摩耗量推定システムの機能構成を示すブロック図である。
図6】トラック等における積荷の偏りを計測する変形例について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図6を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、タイヤ摩耗量の演算モデル生成システム100の概要を説明するための模式図である。車両8には複数のタイヤ10が装着されており、演算モデル生成システム100は、車両8において計測される各種情報に基づいて、各タイヤ10におけるタイヤ摩耗量を算出する演算モデル34aを生成する。演算モデル生成システム100では、車両8に配設した複数の荷重センサによって計測される荷重データに基づいて各タイヤ10に加わるタイヤ荷重を求める。
【0014】
また演算モデル生成システム100は、車両8から提供される軸重および加速度等の車両側データや、タイヤに取り付けた加速度センサおよび圧力センサのタイヤ側データに基づいて各タイヤ10に加わるタイヤ荷重を求めてもよい。さらに、演算モデル生成システム100は、車両8の位置データによって得られる車両8の傾きを加味して各タイヤ10に加わるタイヤ荷重を求めるようにしてもよい。
【0015】
演算モデル生成システム100は、タイヤ荷重に基づいて演算モデル34aによってタイヤ摩耗量を算出する。演算モデル生成システム100は、演算モデルとして例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルを用い、タイヤ10において実際に計測したタイヤ摩耗量を教師データとし、演算の実行と演算モデルの更新による学習を繰り返すことによって演算モデル34aの精度を高める。摩耗量推定装置30は、演算モデルに学習させた後、タイヤ摩耗量を推定する装置として機能する。タイヤ摩耗量は、例えば、幅方向に4つの溝がある場合には、その溝数の溝深さ、さらにそれぞれの溝の周方向に120°間隔で3か所測定する。これにより、幅方向の偏摩耗だけでなく、周方向における偏摩耗のデータが教師データとして入力され、偏摩耗を推定する演算モデルを生成することができる。
【0016】
演算モデル生成システム100は、ある仕様のタイヤ10について、タイヤ10(ホイールを含む)を装着した車両の走行によって演算モデルの学習を実行することができる。タイヤの仕様には、例えばメーカー、商品名、タイヤサイズ、タイヤ幅、扁平率、タイヤ強度、静的剛性、動的剛性、タイヤ外径、ロードインデックス、製造年月日など、タイヤの性能に関する情報が含まれる。
【0017】
演算モデル生成システム100は、タイヤ10の空気圧、温度、およびタイヤ10で発生している加速度の計測データを入力とする演算モデル34aを構築するものであってもよい。タイヤ10で発生している加速度は、例えば、タイヤ10の径方向、軸方向および前後方向の3軸加速度であり、この3軸加速度を演算モデル34aに入力する。また、例えばタイヤ10の径方向および軸方向等の2軸加速度を演算モデル34aに入力するようにしてもよい。
【0018】
図2は、実施形態1に係る演算モデル生成システム100の機能構成を示すブロック図である。演算モデル生成システム100は、荷重センサ21、摩耗量推定装置30およびタイヤ計測装置40を備える。荷重センサ21は、例えばロードセル等であり、車両の複数個所に配置されている。荷重センサ21は、車両8がトラックである場合には車体と荷台との間などに設けるとよい。また荷重センサ21は、タイヤ10に加わるタイヤ荷重を求めるため、例えば車軸と車体との間に設けられるサスペンションに配置する。トラックに限らず多くの車両には、路面からの振動を低減すべくサスペンションが採用されており汎用性が高い。荷重センサ21は、サスペンションでの動的特性に基づいて荷重を演算する装置であってもよい。
【0019】
タイヤ計測装置40は、タイヤ10のトレッドに設けられた溝の深さを計測する。作業者が計測器具やカメラ、目視等によって溝の深さを計測し、タイヤ計測装置40は、作業者が入力する計測データを記憶するものであってもよい。また、タイヤ計測装置40は、機械的あるいは光学的な方法によって溝の深さを計測して記憶する専用の装置であってもよい。
【0020】
タイヤ10には、圧力ゲージ、温度センサおよび加速度センサ等のタイヤ取付センサ20が配設されている。圧力ゲージおよび温度センサは、例えばタイヤ10のエアバルブに配設されており、それぞれタイヤ10の空気圧および温度を計測する。温度センサは、タイヤ10の温度を正確に計測するために、タイヤ10のインナーライナー等に配設されていてもよい。加速度センサは、例えばタイヤ10およびホイール等に配設されており、タイヤ10で発生している加速度を計測する。尚、タイヤ10は、各タイヤを識別するために、例えば固有の識別情報が付与されたRFID等が取り付けられていてもよい。
【0021】
摩耗量推定装置30は、タイヤ荷重算出部31、車両情報取得部32、位置情報取得部33、摩耗量算出部34および演算モデル更新部35を有する。摩耗量推定装置30は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置である。摩耗量推定装置30における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0022】
タイヤ荷重算出部31は、荷重センサ21による計測データに基づいてタイヤ荷重を算出する。タイヤ荷重算出部31は、例えば、荷重センサ21における計測データに基づいて荷重分布の中心位置を求め、車両8に装着された各タイヤ10の位置において生じるタイヤ荷重を求める。
【0023】
また、タイヤ荷重算出部31は、荷重センサ21での計測データに拠らず、車両8から取得される軸重および3軸加速度等を含む車両側データに基づいてタイヤ荷重を算出するようにしてもよい。車両情報取得部32は、車両8に搭載されたデジタルタコグラフ23から車両8における軸重および3軸加速度等を含む車両側データを取得し、タイヤ荷重算出部31へ出力する。タイヤ荷重算出部31は、軸重および3軸加速度によって車両8の重心の動きを計算し、各タイヤ10で発生するタイヤ荷重を算出する。
【0024】
また、タイヤ荷重算出部31は、車両8の位置データによって算出される車両8の傾きを計算し、軸重および3軸加速度等の車両側データに加味して、各タイヤ10で発生するタイヤ荷重を算出するようにしてもよい。位置情報取得部33は、車両8に搭載されたGPS受信機24から位置データを取得し、タイヤ荷重算出部31へ出力する。タイヤ荷重算出部31は、例えば、位置データに含まれる高度の情報の時間変化によって車両8の傾きを求めることができる。
【0025】
摩耗量算出部34は、演算モデル34aを有し、タイヤ荷重算出部31によって算出されたタイヤ荷重等の入力データを演算モデル34aに入力してタイヤ摩耗量を算出する。図3は演算モデル34aの学習について説明するための模式図である。演算モデル34aへの入力データには、タイヤ荷重算出部31で算出されたタイヤ荷重データや、タイヤ10の空気圧、温度、および加速度を含むタイヤデータなどを用いる。入力データは、これらの他、気象データや、路面状況の情報を用いてもよい。気象データは、例えば走行地域の気温、降水量などを演算モデル34aへの入力データとして用いる。また路面状況の情報は、例えば車両が走行している路面の凹凸、温度および乾湿等の状況を演算モデル34aへの入力データとして用いる。
【0026】
演算モデル34aは、例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。演算モデル34aは、タイヤ荷重、およびタイヤデータ(タイヤの空気圧、温度および加速度など)等を入力層のノードへ入力し、中間層への重みづけを設けた入力層からのパスによって演算を実行する。演算モデル34aは、中間層から出力層への重みづけを設けたパスによって更に演算を行い、出力層のノードからタイヤ摩耗量を出力する。ニューラルネットワーク等の学習モデルでは、線形演算に加えて、活性化関数などを用いて非線形演算を実行するようにしてもよい。
【0027】
演算モデル更新部35は、演算結果としてのタイヤ摩耗量と教師データとを比較して演算モデル34aを更新する。演算モデル更新部35は、摩耗量比較部35aおよび更新処理部35bを有する。摩耗量比較部35aは、演算モデル34aによって算出されたタイヤ摩耗量を、タイヤ計測装置40によって計測された教師データとしてのタイヤ摩耗量と比較し、誤差を更新処理部35bへ出力する。
【0028】
更新処理部35bは、演算モデル34aによって算出された摩耗量の誤差に基づいて、演算モデル上のパスの重みづけを更新する。演算モデル34aによるタイヤ摩耗量の演算、摩耗量比較部35aによる教師データとの比較、および更新処理部35bでの演算モデルの更新を繰り返すことによって、演算モデルの精度が高められる。また、更新処理部35bは、タイヤ摩耗量の推定値と、教師データである計測されたタイヤ摩耗量とが所定の誤差の範囲内となったときに演算モデル34aの学習が完了したと判断し、演算モデル34aの更新を終了してもよい。例えば、タイヤ摩耗量としてのタイヤ10の溝深さの誤差が0.1mm以内となった場合や、タイヤ摩耗量の推定値が計測されたタイヤ摩耗量の上下10%以内となった場合などに学習が完了したと判断すればよいが、判断基準として誤差の範囲はこれらの数値に限られるものではない。
【0029】
次に演算モデル生成システム100の動作を説明する。図4は、演算モデル生成システム100による演算モデル生成の手順を示すフローチャートである。摩耗量推定装置30は、タイヤ荷重算出部31において、荷重センサ21からの荷重データ等の取得を開始する(S1)。尚、ステップS1において、タイヤ荷重算出部31は、荷重センサ21からの荷重データの代わりに、車両情報取得部32から軸重および3軸加速度等の車両側データを取得してもよく、さらに位置情報取得部33から位置データを取得するようにしてもよい。
【0030】
タイヤ荷重算出部31は、取得したデータに基づいて各タイヤ10に加わるタイヤ荷重を算出する(S2)。タイヤ荷重算出部31は、所定期間に亘ってタイヤ荷重を算出し、蓄積する(S3)。所定期間は例えば車両の1回の走行期間としてもよいし、数日または一週間などとするが、これらに限られるものではない。所定期間経過後、摩耗量算出部34は、蓄積されたタイヤ荷重を演算モデル34aへ入力し、タイヤ摩耗量を推定する(S4)。摩耗量比較部35aは、演算モデル34aによって算出されたタイヤ摩耗量と、タイヤ計測装置40によって計測された教師データとしてのタイヤ摩耗量とを比較する(S5)。摩耗量比較部35aは、比較の結果として演算モデル34aによって算出されたタイヤ摩耗量とタイヤ計測装置40によって計測されたタイヤ摩耗量との誤差を更新処理部35bへ出力する。
【0031】
更新処理部35bは、摩耗量比較部35aから入力されたタイヤ摩耗量の誤差に基づいて演算モデルを更新し(S6)、処理を終了する。摩耗量推定装置30は、これらの処理を繰り返すことによって、演算モデルを更新し、タイヤ摩耗量の推定の精度が高められる。
【0032】
演算モデル生成システム100は、車両8に装着された複数のタイヤ10に対して、各タイヤ10に加わるタイヤ荷重を入力データとする演算モデル34aを生成することができる。演算モデル生成システム100は、積荷の位置や重量の偏りおよび積荷の物理状態(固体、液体、粉体)、車両の走行状態、即ち3軸方向の加速度および傾きによって変化する各タイヤ10でのタイヤ荷重を考慮して、正確にタイヤ摩耗量を推定する演算モデルを生成することができる。
【0033】
また演算モデル生成システム100は、車両8の複数個所に荷重センサ21を配置することで、複数の荷重センサ21によって計測された荷重データに基づいて、精度良くタイヤ荷重を算出することができる。また演算モデル生成システム100は、サスペンションに荷重センサ21を配置することで、サスペンションを備える多くの車両について適用することができ、汎用性が高くなる。
【0034】
演算モデル生成システム100は、荷重センサ22からの荷重データの代わりに、車両情報取得部32から軸重および3軸加速度等の車両側データを取得することで、車両8の走行状態に応じた各タイヤ10でのタイヤ荷重を算出することができる。また、演算モデル生成システム100は、さらに位置情報取得部33から位置データを取得して、位置データによって算出される車両8の傾きを加味して、より精度よくタイヤ荷重を算出することができる。
【0035】
また、演算モデル生成システム100は、タイヤ荷重算出部31により算出するタイヤ荷重に加えて、図2に示したタイヤデータ(タイヤ10の空気圧、温度および加速度等)、気象データおよび路面状況等を演算モデル34aの入力データとすることで、より正確にタイヤ摩耗量を推定する演算モデルを生成することができる。尚、演算モデル生成システム100は、タイヤ荷重と同様に、車両の走行位置の気象データおよび路面状況等の演算モデル34aへの入力データを所定期間蓄積するようにしてもよい。
【0036】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る摩耗量推定システム110の機能構成を示すブロック図である。上述のように実施形態1に係る演算モデル生成システム100によってタイヤ摩耗量を推定する演算モデル34aが生成された後、演算モデル34aを備える摩耗量推定装置30を構成することができる。摩耗量推定システム110は、荷重センサ21等および摩耗量推定装置30を備え、演算モデル生成システム100によって生成された演算モデル34aを用いて、車両に装着されたタイヤ10の摩耗量を正確に推定する。
【0037】
摩耗量推定装置30は、タイヤ荷重算出部31、車両情報取得部32、位置情報取得部33、摩耗量算出部34および報知部36を備える。摩耗量推定装置30は、車両8に搭載して用いてもよいし、車両8には搭載せずに通信接続によって車両8から各種データを取得してタイヤ摩耗量を推定するようにしてもよい。タイヤ荷重算出部31車両情報取得部32および位置情報取得部33は、実施形態1における構成および作用と同等であり、簡潔化のため説明を省略する。
【0038】
摩耗量算出部34は、演算モデル34aとして実施形態1に係る演算モデル生成システム100によって生成された演算モデルを使用する。摩耗量算出部34は、タイヤ荷重算出部31によりタイヤ荷重を算出して所定期間蓄積した後、タイヤ摩耗量を算出してもよいし、取得したタイミングで時々刻々タイヤ摩耗量を算出するようにしてもよい。
【0039】
報知部36は、車両の運転者等の搭乗者や、運送業者などにおいて車両を管理している運行管理者等に対して、現在のタイヤ摩耗量を知得させるべく、表示装置51による表示やスピーカ52による音声出力等によって、タイヤ摩耗量を報知する。また、報知部36は車両に搭載された車両制御装置53に対して現在のタイヤ摩耗量を報知するようにしてもよい。車両制御装置53では、現在のタイヤ摩耗量に基づいて自動運転や衝突回避などの車両制御を行うことができる。
【0040】
(変形例)
図6はトラック等における積荷の偏りを計測する変形例について説明するための模式図である。この変形例では、車両8の荷台にカメラやレーダー等の荷物を監視する監視装置25を設ける。監視装置25によって荷物の配置をモニターし、摩耗量推定装置30において、積載している荷物の分布を求め、タイヤ位置との関係から各タイヤ10に対してタイヤ荷重の重みづけを行う。摩耗量推定装置30は、各タイヤ10における重みづけに応じて、タイヤ荷重を求めることができる。
【0041】
次に各実施形態および変形例に係る演算モデル生成システム100、摩耗量推定システム110および演算モデル生成方法の特徴について説明する。
演算モデル生成システム100は、タイヤ荷重算出部31、摩耗量算出部34および演算モデル更新部35を備える。タイヤ荷重算出部31は、車両8に装着された複数のタイヤ10に加わるタイヤ荷重を算出する。摩耗量算出部34は、荷重に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデル34aを有し、タイヤ荷重算出部31により算出したタイヤ荷重を入力して演算モデル34aによりタイヤ10の摩耗量を算出する。演算モデル更新部35は、タイヤ10で計測される摩耗量と摩耗量算出部34により算出された摩耗量とを比較し、演算モデル34aを更新する。これにより、演算モデル生成システム100は、タイヤ摩耗量を正確に推定する演算モデルを生成することができる。
【0042】
また演算モデル生成システム100は、車両8の複数個所に設けられた荷重センサ21を備える。タイヤ荷重算出部31は、荷重センサ21によって計測された荷重データに基づいて、タイヤ荷重を算出する。これにより、演算モデル生成システム100は、複数の荷重センサ21によって計測された荷重データに基づいて、精度良くタイヤ荷重を算出することができる。
【0043】
また荷重センサ21は、車両8のサスペンションに設けられている。これにより、演算モデル生成システム100は、サスペンションを備える多くの車両について適用することができ、汎用性が高くなる。
【0044】
また演算モデル生成システム100は、車両8から軸重および加速度を含む車両側データを取得する車両情報取得部32を備える。タイヤ荷重算出部31は、車両情報取得部32により取得した車両側データに基づいて、タイヤ荷重を算出する。これにより、演算モデル生成システム100は、車両8の走行状態に応じた各タイヤ10でのタイヤ荷重を算出することができる。
【0045】
また演算モデル生成システム100は、車両の位置データを取得する位置情報取得部33を備える。タイヤ荷重算出部31は、車両情報取得部32により取得した車両側データ、および位置情報取得部33が取得した位置データによって算出される車両8の傾きに基づいて、タイヤ荷重を算出する。これにより、演算モデル生成システム100は、位置データによって算出される車両8の傾きを加味して、より精度よくタイヤ荷重を算出することができる。
【0046】
また摩耗量算出部34に、気象データ又は路面状況の少なくとも一方を入力する。これにより、演算モデル生成システム100は、気象データ又は路面状況を加味してより精度よくタイヤ摩耗量を推定する演算モデルを生成することができる。
【0047】
摩耗量推定システム110は、タイヤ荷重算出部31および摩耗量算出部34を備える。タイヤ荷重算出部31は、車両8に装着された複数のタイヤ10に加わるタイヤ荷重を算出する。摩耗量算出部34は、荷重に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデル34aを有し、タイヤ荷重算出部31により算出したタイヤ荷重を入力して演算モデル34aによりタイヤ10の摩耗量を算出する。これにより、摩耗量推定システム110は、演算モデル生成システム100によって生成された演算モデル34aを用いて、車両に装着されたタイヤ10の摩耗量を正確に推定する。
【0048】
演算モデル生成方法は、タイヤ荷重算出ステップ、摩耗量算出ステップおよび演算モデル更新ステップを備える。タイヤ荷重算出ステップは、車両8に装着された複数のタイヤ10に加わるタイヤ荷重を算出する。摩耗量算出ステップは、荷重に基づいてタイヤ摩耗量を算出する演算モデル34aに基づき、タイヤ荷重算出ステップにより算出したタイヤ荷重を入力して演算モデル34aによりタイヤ10の摩耗量を算出する。演算モデル更新ステップは、タイヤ10で計測される摩耗量と摩耗量算出ステップにより算出された摩耗量とを比較し、演算モデル34aを更新する。この演算モデル生成方法によれば、タイヤ摩耗量を正確に推定する演算モデルを生成することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0050】
10 タイヤ、 31 タイヤ荷重算出部、 32 車両情報取得部、
33 位置情報取得部、 34 摩耗量算出部、 34a 演算モデル、
35 演算モデル更新部、 8 車両、
100 演算モデル生成システム、 110 摩耗量推定システム。
図1
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図5
図6