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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】車両制御装置、コード更新方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20240524BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20240524BHJP
【FI】
E05B49/00 J
B60R25/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023179647
(22)【出願日】2023-10-18
【審査請求日】2023-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和弥
(72)【発明者】
【氏名】本間 一匡
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-224292(JP,A)
【文献】特開平10-061278(JP,A)
【文献】特開2020-026672(JP,A)
【文献】特開平11-336394(JP,A)
【文献】特開平11-117587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
E06B 9/00,9/02,9/06-9/18,
9/40-9/50,9/56-9/92
B60R 25/00-25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のユーザが所持する携帯機と無線で通信を行い、前記携帯機において送信のたびに更新されるローリングコードを含む送信信号を、前記携帯機から受信したことに基づいて、車両に対し所定の制御を行う車両制御装置であって
受信した前記ローリングコードの正否を判定するための基準コードを記憶したコード記憶部と、
前記携帯機から前記ローリングコードを受信した場合に、前記コード記憶部に記憶されている前記基準コードを更新し、当該更新された基準コードと、受信した前記ローリングコードとの比較結果が正常な場合に、車両に対し所定の制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記携帯機から今回受信したローリングコードと、前記携帯機から前回受信したローリングコードとの差分を算出し、
前記差分の大きさに応じて個別に設定された所定の更新条件が満たされる場合に、前記基準コードを更新する車両制御装置において
前記制御部は、
前記差分があらかじめ設定された第1閾値を超え、かつ前記第1閾値より大きい第2閾値以下である場合は、前記携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したことを前記更新条件とし、
当該更新条件が満たされる場合は、前記基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、
当該更新条件が満たされない場合は、前記基準コードを更新せず、
前記差分が前記第2閾値を超え、かつ前記第2閾値より大きい第3閾値以下である場合は、前記携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したこと、および、前記車両に対して所定の操作が行われたことを前記更新条件とし、
当該更新条件が満たされる場合は、前記基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、
当該更新条件が満たされない場合は、前記基準コードを更新しない、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両制御装置において、
前記制御部は、
前記差分が前記第3閾値を超える場合は、前記携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したこと、前記車両に対して所定の操作が行われたこと、および、所定時間が経過したことを前記更新条件とし、
当該更新条件が満たされる場合は、前記基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、
当該更新条件が満たされない場合は、前記基準コードを更新しない、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
車両のユーザが所持する携帯機と無線で通信を行い、前記携帯機において送信のたびに更新されるローリングコードを含む送信信号を前記携帯機から受信し、前記携帯機から前記ローリングコードを受信した場合に更新される基準コードと、受信した前記ローリングコードとの比較結果が正常な場合に、車両に対し所定の制御を行う車両制御装置におけるコード更新方法であって、
前記携帯機から今回受信したローリングコードと、前記携帯機から前回受信したローリングコードとの差分を算出するステップと、
前記差分の大きさに応じて個別に設定された所定の更新条件が満たされるか否かを判定するステップと、
前記所定の更新条件が満たされる場合に、前記基準コードを更新するステップと、を含むコード更新方法において
前記差分があらかじめ設定された第1閾値を超え、かつ前記第1閾値より大きい第2閾値以下である場合は、前記携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したことを前記更新条件とし、
当該更新条件が満たされる場合は、前記基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、
当該更新条件が満たされない場合は、前記基準コードを更新せず、
前記差分が前記第2閾値を超え、かつ前記第2閾値より大きい第3閾値以下である場合は、前記携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したこと、および、前記車両に対して所定の操作が行われたことを前記更新条件とし、
当該更新条件が満たされる場合は、前記基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、
当該更新条件が満たされない場合は、前記基準コードを更新しない、ことを特徴とするコード更新方法。
【請求項4】
請求項3に記載のコード更新方法において、
前記差分が前記第3閾値を超える場合は、前記携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したこと、前記車両に対して所定の操作が行われたこと、および、所定時間が経過したことを前記更新条件とし、
当該更新条件が満たされる場合は、前記基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、
当該更新条件が満たされない場合は、前記基準コードを更新しない、ことを特徴とするコード更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機との間で行われる無線通信に基づいて、車両の動作を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のユーザが所持する携帯機と、車両に搭載された車両制御装置との間の無線通信に基づいて、車両のドアの施錠および解錠を制御するキーレスエントリーシステムが知られている。このシステムにおいては、携帯機と車両制御装置との間の通信のセキュリティを高めるために、携帯機から送信されるキーレス信号に含まれる暗証コードとして、ローリングコードが用いられている。
【0003】
ローリングコードは、通信が行われる都度、所定の法則に従って更新される暗証コードである。送信側の携帯機は、キーレス信号を送信するたびに、ローリングコードを更新する。受信側の車両制御装置は、キーレス信号を受信するたびに、受信したローリングコードの正否判定の基準となるローリングコード(以下、「基準コード」という。)を更新する。後掲の特許文献1~6には、このようなローリングコードを用いたキーレスエントリーシステムが開示されている。
【0004】
図7は、ローリングコードの更新を説明する図であって、携帯機が正常に操作された場合の例を示している。ここでは、簡単のために、ローリングコードを2桁の数字で表している。ユーザが携帯機においてドアの解錠操作を行うと、図7(a)のように、携帯機からローリングコード「11」が今回送信値として送信される。この場合、携帯機におけるローリングコードの前回送信値は「10」であり、これが更新されることで、今回送信値は「11」となる。ローリングコードは、解錠を指令するキーレス信号に含まれている。
【0005】
ローリングコード「11」が車両で受信されると、車両側の今回受信値は「11」となる。また、車両側の基準コードが、前回の「10」から、今回受信値と同じ「11」に更新される。車両では、携帯機から受信したローリングコードの今回受信値「11」が、更新された基準コード「11」と一致することから、携帯機から受信したキーレス信号は正常と判断され、ドアが解錠される。このため、ユーザは、車両に搭乗してエンジンを始動し、車両を走行させることができる。ユーザは、車両の利用が終了するとドアを施錠する。
【0006】
その後、ユーザが再び車両を利用するために携帯機を操作すると、更新されたローリングコードが携帯機から送信される。すなわち、図7(b)のように、携帯機では、前回送信したローリングコード「11」が「12」に更新されており、この「12」が今回送信値として送信される。一方、車両では、今回送信値「12」を受信すると、基準コードが、前回の「11」から「12」に更新される。そして、携帯機から受信したローリングコードの今回受信値「12」が、更新された基準コード「12」と一致することから、車両では、携帯機が送信したキーレス信号は正常と判断され、ドアが解錠される。これにより、ユーザは車両を利用することができる。
【0007】
さらにその後、ユーザが再び車両を利用するために携帯機を操作すると、更新されたローリングコードが携帯機から送信される。すなわち、図7(c)のように、携帯機では、前回送信したローリングコード「12」が「13」に更新されており、この「13」が今回送信値として送信される。一方、車両では、今回送信値「13」を受信すると、基準コードが、前回の「12」から「13」に更新される。そして、携帯機から受信したローリングコードの今回受信値「13」が、更新された基準コード「13」と一致することから、車両では、携帯機が送信したキーレス信号は正常と判断され、ドアが解錠される。これにより、ユーザは車両を利用することができる。以下、同様の動作が繰り返される。
【0008】
このようにして、ユーザにより正常な操作が行われた場合は、携帯機側のローリングコードと、車両側の基準コードとが同期して更新されるため、携帯機と車両との間でローリングコードにずれが発生することはない。
【0009】
しかしながら、携帯機と車両とが一定距離以上離れていると、携帯機から送信された信号が車両に届かず、ドアが解錠されないことがある。また、携帯機が車両の近くにあっても、偶発的な通信エラーなどが発生したために、携帯機から送信した信号が車両で受信されず、ドアが解錠されないことがある。こうした場合の携帯機の操作は、信号の送信はできても車両が信号を受信できなかった点で、結果的には誤操作となる。
【0010】
しかるに、誤操作であっても、携帯機から信号は送信されているので、携帯機側ではローリングコードの更新が行われる。一方、車両側では、携帯機から信号を受信できなかったため、基準コードの更新は行われない。したがって、誤操作が発生した場合は、携帯機と車両との間でローリングコードにずれが生じる。その結果、携帯機からの信号送信を繰り返しても、送信されたローリングコードと基準コードが一致しないので、ドアの解錠が不可能となる。これを図8Aおよび図8Bを参照しながら具体的に説明する。
【0011】
図8A(a)は、携帯機で誤操作が行われた場合を示している。この場合、携帯機から車両へローリングコード「11」が送信されるが、このコードは車両で受信されない。したがって、車両では基準コードの更新は行われない。また、携帯機からの信号が受信されないため、ドアは解錠されず、エンジンも始動されない。
【0012】
そこで、ユーザは再度携帯機を操作して、ドアの解錠を試みる。この場合、携帯機の操作が誤操作でなければ、図8A(b)のように、携帯機から車両へ、更新されたローリングコード「12」が送信される。一方、車両では、携帯機から信号を受信すると、基準コードが更新される。しかるに、図8A(a)において基準コードが更新されなかったことから、図8A(b)では、基準コードが「10」から「11」へ更新される。その結果、携帯機から受信したローリングコードが「12」であるにもかかわらず、基準コードは「11」であり、両者の間にずれが生じる。すなわち、今回受信値「12」が基準コード「11」と一致しないため、ドアは解錠されない。
【0013】
そこで、ユーザはさらに携帯機を操作して、ドアの解錠を試みる。そして、携帯機の操作が誤操作でなければ、図8A(c)のように、携帯機から車両へ、更新されたローリングコード「13」が送信される。一方、車両では、携帯機から信号を受信すると、基準コードが「11」から「12」へ更新される。したがって、この場合も、携帯機と車両との間でローリングコードにずれが生じているため、ドアは解錠されない。
【0014】
以下同様に、図8A(d)および図8B(e)に示したように、ユーザは携帯機を繰り返し再操作するが、ローリングコードのずれは解消されない。したがって、ドアが解錠されない状態が継続することになる。
【0015】
そこで、このような事態に対処するために、ローリングコードの「再同期」という処理が行われる。再同期は、携帯機と車両との間でローリングコードにずれが発生した場合、ユーザの所定の操作に基づいて、両者間でローリングコードが一致するように、車両側の基準コードを修正する処理である。以下、再同期の具体例について説明する。
【0016】
たとえば、携帯機と車両とが離れすぎているために誤操作が発生した場合、図8A(a)で説明したように、携帯機から送信された信号が車両で受信されず、ドアが解錠されない。しかし、ユーザが車両に接近して携帯機を再操作すると、図8A(b)以下に示すように、携帯機の送信信号を車両で受信できるようになる。ただし、この再操作が図8A(b)~図8B(e)のように4回連続して行われた段階では、まだ携帯機と車両との間のローリングコードのずれは解消されない。したがって、ドアは解錠されない。
【0017】
しかるに、図8B(f)のように、再操作が5回連続して行われた時点、すなわち、車両が携帯機からローリングコードを5回連続して受信した時点で、車両側の基準コードが、前回の「14」から、最後に受信した5回目のローリングコード「16」に更新される。その結果、携帯機側のローリングコードと車両側の基準コードは、共に「16」となって一致し、ローリングコードの再同期が行われたことになる。この再同期によって、携帯機と車両との間のローリングコードのずれが解消されるので、車両のドアを解錠することができる。
【0018】
再同期が行われた後は、携帯機側のローリングコードと車両側の基準コードは、双方が同じ値となるように同期して更新される。そして、誤操作が行われない限り、携帯機と車両との間でローリングコードのずれは生じないので、たとえば図8B(g)に示したような、図7と同様の正常動作が行われる。
【0019】
以上のようにして、誤操作が原因で車両のドアが解錠されない場合でも、ユーザが携帯機で所定の操作を行うことによって、ローリングコードの再同期が行われるので、ドアが解錠されない状態が継続する事態を回避することができる。
【0020】
その一方で、キーレスエントリーシステムにおいては、正規のユーザの携帯機から送信されたローリングコードが、悪意の第三者によって窃取されることがある。たとえば、第三者が、携帯機から送信された連続するローリングコードを自己の無線装置に取り込むことが考えられる。この場合、第三者は、窃取したローリングコードを無線装置から送信して、車両側の基準コードを再同期させることで、車両のドアを不正に解錠することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特開平8-120987号公報
【文献】特開2002-47838号公報
【文献】特開2000-314252号公報
【文献】特開2012-57368号公報
【文献】特開2017-128912号公報
【文献】国際公開第2018/066244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、正規のユーザに対する操作の利便性を維持しながら、第三者の不正行為に対するセキュリティを高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る車両制御装置は、受信したローリングコードの正否を判定するための基準コードを記憶したコード記憶部と、携帯機からローリングコードを受信した場合に、コード記憶部に記憶されている基準コードを更新し、当該更新された基準コードと、受信したローリングコードとの比較結果が正常な場合に、車両に対し所定の制御を行う制御部とを備えている。制御部は、携帯機から今回受信したローリングコードと、携帯機から前回受信したローリングコードとの差分を算出し、この差分の大きさに応じて個別に設定された所定の更新条件が満たされる場合に、基準コードを更新する。この更新条件においては、ローリングコードの差分が大きくなるほど、満たすべき条件の数が多くなっている。具体的には、ローリングコードの差分があらかじめ設定された第1閾値を超え、かつ第1閾値より大きい第2閾値以下である場合は、携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したことを更新条件とする。そして、制御部は、当該更新条件が満たされる場合は、基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、当該更新条件が満たされない場合は、基準コードを更新しない。また、ローリングコードの差分が第2閾値を超え、かつ第2閾値より大きい第3閾値以下である場合は、携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したこと、および、車両に対して所定の操作が行われたことを更新条件とする。そして、制御部は、当該更新条件が満たされる場合は、基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、当該更新条件が満たされない場合は、基準コードを更新しない。さらに、ローリングコードの差分が第3閾値を超える場合は、携帯機からローリングコードを所定回数連続して受信したこと、車両に対して所定の操作が行われたこと、および、所定時間が経過したことを更新条件とし、制御部は、当該更新条件が満たされる場合は、基準コードを最後に受信したローリングコードに更新し、当該更新条件が満たされない場合は、基準コードを更新しないようにしてもよい。
【0024】
上記のような車両制御装置によると、ユーザが携帯機を誤操作した場合でも、ローリングコードの差分が小さければ、再同期によって基準コードが更新されるので、ユーザの利便性を維持することができる。一方、ローリングコードの差分が大きい場合は、差分の大きさに応じた更新条件を満たさない限り、基準コードは更新されない。したがって、第三者が不正操作を行ったとしても、再同期によって基準コードが更新されるリスクを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、正規のユーザに対する操作の利便性を維持しながら、第三者の不正行為に対するセキュリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両制御システムの一例を示す図である。
図2】携帯機の一例を示す図である。
図3】キーレス信号のフォーマットを示す図である。
図4】携帯機の動作を示すフローチャートである。
図5】タイマの動作を示すフローチャートである。
図6】車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
図7】正常操作の場合のローリングコードの更新を説明する図である。
図8A】誤操作があった場合のローリングコードの更新を説明する図である。
図8B図8Aの続きの図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図を通して、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0028】
図1は、本発明による車両制御装置を備えた車両制御システムを示している。車両制御システム100は、車両制御装置1と携帯機2から構成される。車両制御装置1は、車両50に搭載される車載機であって、携帯機2と無線通信を行う。携帯機2は、車両50のドア4の施錠および解錠を行う際に操作される電子キーであり、車両50のユーザによって所持される。ユーザが携帯機2を操作すると、携帯機2から車両制御装置1へキーレス信号Kが送信される。車両制御装置1は、受信したキーレス信号Kに基づいて、ドア4の施錠および解錠を制御する。
【0029】
図1において、車両制御装置1は、制御部11、コード記憶部12、ROM13、タイマ14、受信部15、およびインタフェース16を備えている。
【0030】
制御部11はCPUからなり、車両制御装置1の動作を制御する。コード記憶部12は、不揮発性メモリからなり、基準コードであるローリングコード12aと、IDコード12bと、機能コード12cを記憶している。ROM13は、制御部11の動作プログラムや制御パラメータなどを記憶している。タイマ14は、カウンタから構成されており、あらかじめ設定された時間を計時する。受信部15は、アンテナと受信回路から構成されており、携帯機2から送信されたキーレス信号Kを受信する。インタフェース16は、ドアコントローラ3が接続されるコネクタなどから構成されており、制御部11とドアコントローラ3との間に設けられている。ドアコントローラ3は、制御部11からの指令に基づいて、ドア4を施錠するための施錠信号、またはドア4を解錠するための解錠信号を出力する。
【0031】
図1において、携帯機2は、制御部21、操作部22、送信部23、ROM24、RAM25、およびコード記憶部26を備えている。
【0032】
制御部21はCPUからなり、携帯機2の動作を制御する。操作部22は、車両50のドア4を施錠する場合に操作される施錠スイッチ22aと、ドア4を解錠する場合に操作される解錠スイッチ22bを備えている。送信部23は、アンテナと送信回路から構成されており、操作部22の操作に基づいて、車両制御装置1へキーレス信号Kを送信する。ROM24は、制御部21の動作プログラムや制御パラメータなどを記憶している。RAM25は、図3に示したような、各種のコードを含むキーレス信号Kのフォーマット25aを記憶している。コード記憶部26は、不揮発性メモリからなり、携帯機2が送信するローリングコード26aと、IDコード26bと、機能コード26cを記憶している。
【0033】
図2は、携帯機2の一例を示している。携帯機2は、上述した操作部22のほかに、メカニカルキー27を備えている。ユーザは、操作部22を操作してもドアが施錠または解錠されない場合、メカニカルキー27をドアのキー穴に差し込んで機械的な操作を行うことにより、ドアを施錠または解錠することができる。
【0034】
図4は、携帯機2の動作を示したフローチャートである。図4における各ステップは、制御部21によって実行される。
【0035】
ステップS101において、操作部22の施錠スイッチ22aまたは解錠スイッチ22bが操作されると、ステップS102において、制御部21は、コード記憶部26からローリングコード26aとIDコード26bを読み出す。このときのローリングコード26aは、前回送信されたローリングコードである。続いてステップS103において、制御部21は、読み出したローリングコード26aに1を加算するインクリメント演算によって、ローリングコード26aを更新する。この更新されたローリングコードが、今回送信されるローリングコードとなる。
【0036】
次に、ステップS104において、制御部21は、施錠スイッチ22aと解錠スイッチ22bのそれぞれの操作に対応する機能コードと、ステップS103で更新されたローリングコードと、携帯機2のIDコードとをRAM25に格納して、キーレス信号Kのフォーマット25aの内容を更新する。その後、ステップS105において、制御部21は、施錠指令または解錠指令を含むキーレス信号Kを、送信部23から送信する。キーレス信号Kの送信が終わると、制御部21は、ステップS106において、RAM25に格納されているローリングコードを、コード記憶部26へ書き込む。これにより、コード記憶部26のローリングコード26aは、今回送信されたローリングコードに書き換えられる。
【0037】
図5は、車両制御装置1に設けられているタイマ14の動作を示したフローチャートである。このタイマ14により計時される時間は、図6のステップS11において用いられるが、その詳細については後述する。
【0038】
最初に、ステップS201において、タイマカウンタ値Tの初期値が設定される。本例では、初期値はT=10(単位:分)に設定される。タイマ14は、動作を開始してからタイマカウンタ値Tがゼロになるまで、1分が経過するごとに、タイマカウンタ値Tを1ずつ減算してゆく。
【0039】
詳しくは、ステップS202において1分が経過すると、タイマ14は、ステップS203において、タイマカウンタ値Tを1だけ減算するデクリメント演算によって、T=T-1とする。次に、タイマ14は、ステップS204において、タイマカウンタ値Tがゼロであるか否かを判定し、タイマカウンタ値Tがゼロでなければ、ステップS202に戻って、再び1分が経過するのを待つ。そして、1分が経過すると、タイマ14は、ステップS203においてタイマカウンタ値Tをさらに1だけ減算し、ステップS204においてタイマカウンタ値Tがゼロであるか否かを判定する。以下同様にして、タイマカウンタ値Tがゼロになるまで、ステップS202~S204の動作が繰り返される。そして、ステップS204においてタイマカウンタ値Tがゼロになると、タイマ14の動作が終了する。
【0040】
図6は、車両制御装置1の動作を示したフローチャートである。図6における各ステップは、制御部11によって実行される。
【0041】
車両制御装置1が携帯機2からキーレス信号Kを受信すると、制御部11は、ステップS1において、携帯機2から受信したIDコード26b(図1参照)が、コード記憶部12に記憶されているIDコード12b(図1参照)と一致するか否かを判定する。両者が一致する場合、制御部11は、ステップS2において、携帯機2から受信した機能コード26c(図1参照)が有効か否かを判定する。機能コード26cが、コード記憶部12に記憶されている機能コード12c(図1参照)に該当するコードであれば、機能コード26cは有効と判定される。
【0042】
機能コード26cが有効であれば、制御部11は、ステップS3において、ローリングコードの差分を算出する。詳しくは、車両制御装置1が携帯機2から今回受信したローリングコード(以下、「今回受信値」という。)と、車両制御装置1が携帯機2から前回受信したローリングコード(以下、「前回受信値」という。)との差分が算出される。そして、算出されたローリングコードの差分の大きさに応じて、制御部11は以下のような処理を行う。
【0043】
まず、ローリングコードの差分が1~30の範囲にあれば(1≦差分≦30)、ステップS4の判定がYESとなる。そして、ステップS5において、制御部11は、コード記憶部12の基準コード12aを、前回受信値から今回受信値に更新する。ここで、差分範囲の上限値である「30」は、本発明における「第1閾値」に相当する。
【0044】
また、ローリングコードの差分が31~60の範囲にあれば(31≦差分≦60)、ステップS6の判定がYESとなる。そして、ステップS7において、制御部11は、更新条件テーブルZを参照して、ローリングコードを5回連続して受信したことを規定した、更新条件(a)が成立するか否かを判定する。判定の結果、更新条件(a)が成立すれば、ステップS7の判定がYESとなる。そして、ステップS8において、制御部11は、コード記憶部12の基準コード12aを、5回連続で受信したローリングコードのうち、5回目に受信したローリングコードに更新する。ここで、差分範囲の上限値である「60」は、本発明における「第2閾値」に相当する。
【0045】
また、ローリングコードの差分が61~100の範囲にあれば(61≦差分≦100)、ステップS9の判定がYESとなる。そして、ステップS10において、制御部11は、更新条件テーブルZを参照して、前記の更新条件(a)と、車両50のドア4が解錠状態であることを規定した更新条件(b)とが共に成立するか否かを判定する。判定の結果、更新条件(a)、(b)が共に成立すれば、ステップS10の判定がYESとなり、ステップS8において、前述したような基準コードの更新が行われる。ここで、差分範囲の上限値である「100」は、本発明における「第3閾値」に相当する。
【0046】
さらに、ローリングコードの差分が101以上である場合は(差分≧101)、ステップS9の判定がNOとなる。そして、ステップS11において、制御部11は、更新条件テーブルZを参照して、前記の更新条件(a)と、前記の更新条件(b)と、ローリングコードの差分が101以上と判定されてから10分以上が経過したことを規定した更新条件(c)とが全て成立するか否かを判定する。なお、更新条件(c)は、前述したタイマ14のタイマカウンタ値T(図5参照)に基づいて判断される。判定の結果、更新条件(a)、(b)、(c)が全て成立すれば、ステップS11の判定はYESとなる。そして、ステップS8において、前述した基準コードの更新が行われる。
【0047】
図6に示した実施形態では、携帯機2から受信したローリングコードの今回受信値と前回受信値との差分の大きさに応じて、基準コードを更新する条件が個別に設定されている(ステップS7、S10、S11)。そして、差分が第1閾値である30を超えない場合は、更新条件が満たされるか否かにかかわらず、基準コードが今回受信したローリングコードに更新される(ステップS5)。また、差分が第1閾値を超える場合は、差分の大きさに応じたそれぞれの更新条件が満たされることで、基準コードが、5回目に受信したローリングコードに更新される(ステップS8)。このようにした理由は、以下のとおりである。
【0048】
ローリングコードの差分が第1閾値(=30)を超えない場合は、正規のユーザによる誤操作の可能性があることを考慮して、更新条件(a)~(c)にかかわらず、コード記憶部12の基準コード12aを、前回受信したローリングコードから、今回受信したローリングコードに更新する。このため、ユーザが特別な操作をしなくても、基準コードを正常に更新することができる。
【0049】
これに対し、ローリングコードの差分が第1閾値を超える場合は、正規のユーザによる誤操作の可能性は低く、むしろ第三者による不正操作の可能性のほうが高くなる。なぜなら、正規のユーザの場合は、誤操作が行われたとしても、それが何回か繰り返された時点で、ユーザは携帯機による解錠を断念し、図2で述べたメカニカルキー27でドアを解錠するのが普通であるから、ローリングコードの差分が大きくなることはない。一方、第三者が不正操作を行う場合は、メカニカルキーによるドアの解錠が不可能なため、第三者は、ローリングコードの窃取と送信を繰り返すこととなり、その結果ローリングコードの差分が大きくなる。そこで、差分の大きさに応じて異なる更新条件を設定し、差分が大きくなるほど第三者の不正操作の可能性が高まることから、満たすべき条件の数を多くして更新条件を厳しくしている。
【0050】
たとえば、ステップS7では、ローリングコードを5回連続して受信すれば(更新条件(a))、基準コードが更新される。これは、正規のユーザによって、図8A(b)~図8B(f)と同様の、5回の連続操作が行われたと推定されるからである。一方、ステップS10では、上記条件に加えて、車両のドアが解錠状態であることが要求される(更新条件(b))。これは、携帯機に代えてメカニカルキーによりドアが解錠されたことが想定されるからであり、この場合はメカニカルキーを所持した正規のユーザによる操作であるため、基準コードの更新が許容される。
【0051】
また、ステップS11では、上記2つの条件に加えて、さらに、10分以上の時間経過が要求される(更新条件(c))。このようにしたのは、10分が経過するまで、基準コードが再同期により更新されるのを禁止することで、その間に第三者が不正操作によりドアを解錠して、車両を盗難するのを防止するためである。
【0052】
以上述べたように、本実施形態によれば、ローリングコードの差分の大きさに応じて、基準コードの更新に必要な更新条件が個別に設定されている。そして、差分が大きくなるほど、この更新条件の満たすべき条件の数が多くなっている。また、その一方で、差分が第1閾値を超えない場合は、設定された更新条件が満たされるか否かにかかわらず、基準コードが、今回受信したローリングコードに更新される。
【0053】
このため、ユーザが携帯機2を数回にわたって誤操作した場合でも、ローリングコードの差分が小さければ、再同期によって基準コードが更新されるので、ユーザの利便性を維持することができる。一方、ローリングコードの差分が大きい場合は、差分の大きさに応じた更新条件を満たさない限り、基準コードは更新されない。したがって、第三者が不正操作を行ったとしても、再同期によって基準コードが更新されドアが解錠されるリスクを低減することができる。その結果、本実施形態によれば、ユーザの利便性の維持と、第三者の不正行為に対するセキュリティの向上という、2つの課題を同時に解決することができる。
【0054】
本発明は、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0055】
図6のステップS4、S6、S9においては、第1閾値、第2閾値、第3閾値をそれぞれ30、60、100に設定しているが、これは一例であって、各閾値は他の数値であってもよい。
【0056】
図6のステップS8においては、ローリングコードの連続受信回数を5回に設定しているが、これは一例であって、連続受信回数は他の数値であってもよい。
【0057】
図6のステップS11においては、更新条件(c)の経過時間を10分としているが、これは一例であって、経過時間は他の数値であってもよい。この場合は、図5のステップS201におけるタイマカウンタ値Tの初期値が変更される。
【0058】
図6では、ステップS7、S10、S11で更新条件が成立した場合、ステップS8で同一の処理が行われるが、ステップS7、S10、S11のそれぞれについて、異なる処理が行われるようにしてもよい。たとえば、ステップS10については、更新条件(a)における5回を7回に変更し、ステップS8における5回を7回に変更してもよい。同様に、ステップS11については、更新条件(a)における5回を10回に変更し、ステップS8における5回を10回に変更してもよい。
【0059】
図6では、車両のドアが解錠状態であることを更新条件(b)としたが、これに代えて、またはこれに加えて、車両のエンジンが始動状態であることを更新条件(b)としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両制御装置
2 携帯機
4 ドア
11 制御部
12 コード記憶部
12a ローリングコード(基準コード)
21 制御部
22 操作部
22a 施錠スイッチ
22b 解錠スイッチ
26 コード記憶部
26a ローリングコード
27 メカニカルキー
50 車両
100 車両制御システム
K キーレス信号
Z 更新条件テーブル
【要約】
【課題】正規のユーザに対する操作の利便性を維持しながら、第三者の不正行為に対するセキュリティを高める。
【解決手段】車両制御装置1は、携帯機2から受信したローリングコードの正否を判定するための基準コード12aを記憶したコード記憶部12と、携帯機2からローリングコードを受信した場合にコード記憶部12に記憶されている基準コード12aを更新し、当該更新された基準コードと、受信したローリングコードとの比較結果が正常な場合に、車両50に対し所定の制御を行う制御部11とを備えている。制御部11は、携帯機2から今回受信したローリングコードと、携帯機2から前回受信したローリングコードとの差分を算出し、この差分の大きさに応じて個別に設定された所定の更新条件が満たされる場合に、基準コード12aを更新する。更新条件においては、ローリングコードの差分が大きくなるほど、満たすべき条件の数が多くなっている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B