IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

<>
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図1
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図2
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図3
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図4
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図5
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図6
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図7
  • 特許-磁気共鳴撮像における画像強度補正 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像における画像強度補正
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023501841
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2021068731
(87)【国際公開番号】W WO2022013023
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】20185454.4
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス ヨハネス マルティヌス
(72)【発明者】
【氏名】チャン シュオ
(72)【発明者】
【氏名】セリッセン ギヨーム ルドルフ ペトリュス
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-100955(JP,A)
【文献】特開2004-187743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシン実行可能命令及び画像セグメンテーションアルゴリズムを記憶したメモリであって、前記画像セグメンテーションアルゴリズムが被験者の予め定められた視野を描く初期磁気共鳴撮像データ内の1以上の予め定められた解剖学的領域を出力するメモリと、計算システムとを有する医療システムであって、
前記マシン実行可能命令の実行が前記計算システムに、
前記初期磁気共鳴撮像データを受信させ、
該初期磁気共鳴撮像データを前記画像セグメンテーションアルゴリズムに入力することに応答して、前記磁気共鳴撮像データ内の前記1以上の解剖学的領域を含む画像セグメンテーションを受信させ、
予め定められた基準を使用して、前記1以上の解剖学的領域のうちの少なくとも1つを、選択された画像部分として選択させ、
前記選択された画像部分内の解剖学的構造が依然として見えるように、該選択された画像部分内の輝度を低減して、輝度補正された磁気共鳴撮像データを生成させる、
医療システム。
【請求項2】
前記選択された画像部分内の前記輝度は空間的に変化する重み付け係数を使用して低減され、該空間的に変化する重み付け係数が滑らかである、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記空間的に変化する重み付け係数が、前記選択された画像部分の境界において滑らかな遷移を有する、請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記マシン実行可能命令の実行が前記計算システムに、少なくとも前記選択された画像部分内の輝度を低減する前に前記初期磁気共鳴撮像データに対して均一性補正を実行する動作及び前記輝度補正された磁気共鳴撮像データに対して均一性補正を実行する動作のうちの少なくとも一方を更に実行させる、請求項1から3の何れか一項に記載の医療システム。
【請求項5】
前記輝度補正された磁気共鳴撮像データは前記初期磁気共鳴撮像データの加重均一性補正の間に生成され、前記選択された画像部分内の前記輝度が、前記加重均一性補正のために、該選択された画像部分を空間的に変化する重み付け係数で下方加重することにより低減される、請求項1から4の何れか一項に記載の医療システム。
【請求項6】
前記初期磁気共鳴撮像データは磁気共鳴画像の時系列を含む動的磁気共鳴撮像データであり、前記輝度補正された磁気共鳴撮像データは前記磁気共鳴画像の時系列における各磁気共鳴画像について前記選択された画像部分内の輝度を低減することにより生成され、前記マシン実行可能命令の実行が、更に、前記計算システムに前記輝度補正された磁気共鳴撮像データを使用して動的磁気共鳴画像を計算させる、請求項1から5の何れか一項に記載の医療システム。
【請求項7】
前記動的加重磁気共鳴撮像データが動的コントラスト強調磁気共鳴撮像データである、請求項6に記載の医療システム。
【請求項8】
前記選択された画像部分が心臓の解剖学的領域を含む、請求項7に記載の医療システム。
【請求項9】
少なくとも前記選択された画像部分内の前記輝度が、
予め定められた係数を適用することと、
前記選択された画像部分内のノイズレベル及び/又はコイル感度により決定されるコントラストの低下を制限するための最適化を使用することと
のうちの何れか1つにより決定される係数を使用して低減される、請求項1から8の何れか一項に記載の医療システム。
【請求項10】
前記選択された画像部分を選択するための前記予め定められた基準が、
平均輝度が予め定められた輝度閾値を超える解剖学的領域の選択と、
前記選択された画像部分内のノイズレベルを予め定められたノイズ閾値未満に維持することと、
前記1以上の解剖学的領域の予め定められた選択と、
これらの組み合わせと
のうちの何れか1つである、請求項9に記載の医療システム。
【請求項11】
当該医療システムは撮像ゾーンからk空間データを取得する磁気共鳴撮像システムを更に備え、前記メモリは該磁気共鳴撮像システムを制御して前記撮像ゾーン内の予め定められた視野からk空間データを取得させるパルスシーケンスコマンドを更に含み、前記マシン実行可能命令の実行が、更に前記計算システムに、
前記磁気共鳴撮像システムを前記パルスシーケンスコマンドで制御して前記k空間データを取得させ、
該k空間データから前記初期磁気共鳴撮像データを再構成させる、
請求項1から10の何れか一項に記載の医療システム。
【請求項12】
医療撮像のための方法であって、前記方法は、
初期磁気共鳴撮像データを受信するステップと、
前記初期磁気共鳴撮像データを画像セグメンテーションアルゴリズムに入力することに応答して前記磁気共鳴撮像データ内の1以上の解剖学的領域を含む画像セグメンテーションを受信するステップであって、前記画像セグメンテーションアルゴリズムが被験者の予め定められた視野を描く初期磁気共鳴撮像データ内の1以上の予め定められた解剖学的領域を出力する、当該受信するステップと、
予め定められた基準を使用して、前記1以上の解剖学的領域のうちの少なくとも1つを、選択された画像部分として選択するステップと、
前記選択された画像部分内の解剖学的構造が依然として見えるように、前記選択された画像部分内の輝度を低減して、輝度補正された磁気共鳴撮像データを生成するステップと
を有する、医療撮像のための方法。
【請求項13】
計算システムによる実行のためのマシン実行可能命令を含むコンピュータプログラムであって、前記マシン実行可能命令の実行が、前記計算システムに、
初期磁気共鳴撮像データを受信させ、
前記初期磁気共鳴撮像データを画像セグメンテーションアルゴリズムに入力することに応答して前記磁気共鳴撮像データ内の1以上の解剖学的領域を含む画像セグメンテーションを受信させ、ここで、前記画像セグメンテーションアルゴリズムは被験者の予め定められた視野を描く初期磁気共鳴撮像データに関して1以上の予め定められた解剖学的領域を出力し、
予め定められた基準を使用して、前記1以上の解剖学的領域のうちの少なくとも1つを、選択された画像部分として選択させ、
前記選択された画像部分内の解剖学的構造が依然として見えるように、前記選択された画像部分内の輝度を低減して、輝度補正された磁気共鳴撮像データを生成させる、
コンピュータプログラム。
【請求項14】
前記選択された画像部分内の前記輝度は空間的に変化する重み付け係数を使用して低減され、前記空間的に変化する重み付け係数は滑らかであり、該空間的に変化する重み付け係数が前記選択された画像部分の境界に滑らかな遷移を有する、請求項13に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像に係り、特には磁気共鳴撮像における画像強度補正に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)スキャナによっては、患者の身体内の画像を生成する手順の一部として原子の核スピンを整列させるために大きな静磁場が使用される。この大きな静磁場は、B0磁場又は主磁場と呼ばれる。被験者のさまざまな量又は特性を、MRIを使用して空間的に測定できる。
【0003】
国際特許出願公開第WO2010079519A1号は、患者の胸部領域の断層撮影画像のデータセットから乳房の可能性のある病変を識別する方法を開示している。上記データセットは各々が強度値を有する複数のボクセルを含み、これら画像は少なくとも1つの乳房を含んだ関心領域を含む。この方法は、患者への造影剤の投与後に一連の画像を取得するステップ;取得された画像の関心領域に属するボクセルの強度を、少なくとも1つの正規化係数に従って正規化するステップ;及び正規化されたボクセルの各々を、可能性のある病変を表す領域を識別するように、或る分類基準に基づいて分類するステップ;を有する。該方法は、上記正規化係数が解剖学的構造に対応する正規化ボクセルに基づくことを特徴とするもので、これら正規化ボクセルは造影剤の投与により増強された強度値を有する。Medical Imaging 2009;Computer-Aided Diagnosis,Proc.SPIE7260,726026におけるA.Vignatiによる論文“A fully automatic lesion detection method for DCR-MRI fat suppressed breast images”は、DCE-MRIベースの自動病変検出についてレポートしている。該既知のアプローチは、造影前画像と造影画像との間の動きを補正するために、造影前画像と造影画像との間の画像位置合わせを伴う。次いで、解剖学的セグメンテーションが行われて、関心のない造影解剖学的領域が破棄され、該選択された(すなわち、破棄されなかった)臨床的関心領域に病変決定アルゴリズムが適用される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、独立請求項における医療システム、コンピュータプログラム及び方法を提供する。実施形態は、従属請求項に示される。
【0005】
磁気共鳴撮像においては、特定の解剖学的構造が明るくなりすぎる場合がある。このことは、磁気共鳴画像の他の部分の強度を、比較して過度に暗くさせ得る。この結果、例えば、磁気共鳴画像の一部が不明瞭になることがあり得る。この困難さを克服するために、幾つかの実施形態は、セグメンテーション(セグメント化)アルゴリズムを使用して初期磁気共鳴撮像データを1以上の解剖学的領域に分割し得る。次いで、予め定められた基準が使用され、上記1以上の解剖学的領域の幾つかを選択画像部分として選択する。解剖学的領域内の該選択された画像部分内の強度は次いで低減され、強度補正された磁気共鳴撮像データを生成する。更に、初期磁気共鳴画像に対して均一性補正を実行することができる。
【0006】
一態様において、本発明は、マシン実行可能命令及び画像セグメンテーションアルゴリズムを記憶したメモリを備える医療システムを提供する。画像セグメンテーションアルゴリズムは、被験者の予め定められた視野を描く初期磁気共鳴撮像データに関する1以上の予め定められた解剖学的領域を出力するように構成される。
【0007】
初期磁気共鳴撮像データにおける「初期」という用語は、特定の磁気共鳴撮像データを識別するためのラベルである。したがって、該初期磁気共鳴撮像データは磁気共鳴撮像データである。
【0008】
画像セグメンテーションアルゴリズムは、磁気共鳴撮像データを分割(セグメント化)するために使用される標準的な画像セグメンテーションアルゴリズムのいずれかであり得る。使用される実際の画像セグメンテーションアルゴリズムは、撮像される被験者の特定の視野又は解剖学的部分に対して選択される。通常、画像セグメンテーションアルゴリズムは、被験者の或る領域又は視野内の特定の解剖学的領域を認識するように特別に設計される。
【0009】
画像セグメンテーションアルゴリズムは、例えば、テンプレートベースの画像セグメンテーションアルゴリズム、解剖学的アトラスベースの画像セグメンテーションアルゴリズム、変形可能な形状の画像セグメンテーション若しくは他のモデルベースのセグメンテーション、ニューラルネットワークベースの画像セグメンテーションアルゴリズム、又は他のアルゴリズムとすることができる。
【0010】
当該医療システムは、計算システムを更に備える。該計算システムは、異なる例では異なる形態をとり得る。一例において、計算システムは、医療専門家により磁気共鳴画像を検査又はレンダリングするために使用されるプロセッサを備えたワークステーションであり得る。他の例において、計算システムは磁気共鳴撮像システムの一部であり得る。更に他の例において、計算システムは、例えば、医療画像化処理を提供するクラウドベースのサービスであり得る。
【0011】
前記マシン実行可能命令の実行は、計算システムに初期磁気共鳴撮像データを受信させる。初期磁気共鳴撮像データは、例えば、該データを記憶装置又はメモリから取り出すことによっても受信され得る。他の例において、初期磁気共鳴撮像データは、磁気共鳴撮像システムを制御して初期磁気共鳴撮像データを取得し、次いで再構成することにより受信することができる。更に他の例において、初期磁気共鳴撮像データは、例えば、ネットワーク又はインターネット接続を介して受信できる。前記マシン実行可能命令の実行は更に計算システムに、初期磁気共鳴撮像データを画像セグメンテーションアルゴリズムに入力することに応答して、該磁気共鳴撮像データ内の1以上の解剖学的領域を含む画像セグメンテーションを受信させる。このステップでは、初期磁気共鳴撮像データが画像セグメンテーションアルゴリズムに入力され、画像セグメンテーションが出力される。
【0012】
前記マシン実行可能命令の実行は、更に、計算システムに、予め定められた基準を使用して、少なくとも1以上の解剖学的領域を選択された画像部分として選択させる。マシン実行可能命令の実行は、更に、計算システムに、該選択された画像部分内の画像強度を低減して、強度補正された磁気共鳴撮像データを生成させる。この実施形態は、放射線専門医又は他の医療専門家にとって理解しやすく解読しやすい磁気共鳴撮像データを生成できるので、有益であり得る。
【0013】
しばしば、磁気共鳴画像には、画像の極端に明るい領域が存在する場合がある。このことは、画像の他の領域内のコントラストを、放射線科医が一層微細な構造を識別するのを困難にさせる程度まで減少させ得る。幾つかの従来の解決策は、これらの明るい領域を除去するためにマスクを使用する。この方策は、これらの領域を完全に削除することが、放射線科医が画像の残りの部分を解釈することを一層困難にさせ得るので不利であり得る。また、マスクの使用により画像の一部が除去され又は欠落したりすると、放射線医は画像に余り信頼を持てなくなり得る。
【0014】
一実施形態において、前記選択された画像部分内の画像強度はゼロでない値まで低減され、したがって、該画像強度は低減されるが、マスクと同等ではないことに留意されたい。他の実施形態において、画像強度は、選択された画像部分内の解剖学的構造が依然として見えるように低減される。
【0015】
他の実施形態において、前記選択された画像部分内の画像強度は、空間的に変化する重み付け係数を使用して低減される。該空間的に変化する重み付け係数は滑らかなものである。この実施形態は、強度を低下させるが、それは段状又は非常に急激となる態様では行わないので、有益であり得る。この結果、画像上の特に明るい部分を低減させながら自然に見える外観を維持すると共に、暗い領域及び明るい領域の両方からの構造を含む強度補正された磁気共鳴撮像データが得られる。
【0016】
他の実施形態において、前記空間的に変化する重み付け係数は、前記選択された画像部分の境界に滑らかな遷移を有する。例えば、幾つかの場合では、選択された画像部分を越えて広がる小さな又は限られた遷移領域が存在し得る。この実施形態は、より自然に見えると共に、放射線医が解釈し易い、強度補正された磁気共鳴撮像データを提供することもできる。
【0017】
他の実施形態において、前記空間的に変化する重み付け係数は多項式である。
【0018】
他の実施形態において、該空間的に変化する重み付け係数は指数関数である。
【0019】
他の実施形態において、該空間的に変化する重み付け係数は巾関数である。
【0020】
他の実施形態において、前記マシン実行可能命令の実行は前記計算システムに、更に、少なくとも前記選択された画像部分内の画像強度を低減する前に前記初期磁気共鳴撮像データに対して均一性補正を実行させる。他の実施形態において、前記マシン実行可能命令の実行は前記計算システムに、更に、前記強度補正された磁気共鳴撮像データに対して均一性補正を実行させる。この実施形態及び前の実施形態の両方において、均一性補正は、前記強度補正とは別に実行される。このことは、選択された画像部分の外側の領域において一層良好な均一性補正をもたらすという利点を有し得る。
【0021】
他の実施形態において、前記強度補正された磁気共鳴撮像データは、前記初期磁気共鳴撮像データの加重均一性補正の間に生成される。前記選択された画像部分内の画像強度は、加重均一性補正のために、該選択された画像部分を空間的に変化する重み付け係数で下方加重する(重み付けを減少させる)ことにより低減される。この実施形態は、強度補正及び均一性補正を同時に実行する結果として、優れた画像強度及び均一性補正を有する画像が得られるため、有益であり得る。強度の補正は、画像の特定の領域の信号対雑音比に対して影響を有し得る。これらの両方を、重み付け係数を使用して同時に実行することは、磁気共鳴画像を適切に解釈する能力を確保するような態様で、均一性の補正と強度の補正との間のトレードオフのバランスが得られるような強度補正及び均一性補正の両方の性能を可能にする。
【0022】
他の実施形態において、前記初期磁気共鳴撮像データは磁気共鳴画像の時系列を含む動的磁気共鳴撮像データである。前記強度補正された磁気共鳴撮像データは、該磁気共鳴画像の時系列における各磁気共鳴画像について前記選択された画像部分内の画像強度を低減することにより生成される。前記マシン実行可能命令の実行は、更に、前記計算システムに、前記強度補正された磁気共鳴撮像データを使用して動的磁気共鳴画像を計算させる。動的磁気共鳴撮像データは、経時的に変化するプロセスを記述する磁気共鳴撮像データである。
【0023】
強度補正された磁気共鳴撮像データが動的磁気共鳴画像の再構成に役立つようにするために、前記選択された画像部分は、磁気共鳴画像の時系列の各磁気共鳴画像に対して一様に処理される。例えば、選択された画像部分内の強度は、磁気共鳴画像の時系列全体にわたって同じ係数により低減され得る。選択された画像部分の識別又は位置は、磁気共鳴画像の時系列の各磁気共鳴画像内の同一のボクセルであり得る。
【0024】
他の実施形態において、前記動的加重磁気共鳴撮像データは、動的コントラスト強調磁気共鳴撮像データである。この実施形態は、通常、動的コントラスト強調磁気共鳴撮像データのために造影剤が被験者に注入されるので、特に有益であり得る。このことは、心臓等の領域が磁気共鳴画像の残りの部分よりも遙かに大きな強度を有するようにさせ得る。心臓により送り出される嵩張った血液量が造影剤を含むからである。強度補正された磁気共鳴撮像データは、この場合、解釈がはるかに容易な動的磁気共鳴画像(この場合は、動的コントラスト強調磁気共鳴画像)をもたらし得る。
【0025】
他の実施形態において、前記選択された画像部分は心臓の解剖学的領域を含む。上述したように、動的コントラスト強調撮像を実行する場合、心臓は磁気共鳴画像の残りの部分に対して特に大きな強度を有し得る。
【0026】
他の実施形態において、少なくとも前記選択された画像部分内の画像強度は、予め定められた係数を適用することにより決定された係数により低減される。例えば、該予め定められた係数は、特定の関心領域又は使用された磁気共鳴撮像プロトコルに対して決定され得る。
【0027】
他の実施形態において、前記選択された画像部分内の画像強度は、該選択された画像部分内のノイズレベル及び/又はコイル感度により決定されるコントラストの減少を制限するための最適化を使用することにより決定された係数により減少された。コイル感度及びノイズレベルは、磁気共鳴画像の領域がどの様に解読可能かに影響し得る。選択された画像部分内の強度が過度に低減された場合、信号対雑音レベルにより、該選択された画像部分内の構造がノイズにより不明瞭にされ得る。したがって、この実施形態は、ノイズレベル又はコイル感度が選択された画像部分を解読不能にさせないように低減される量を制限することにより、選択された画像部分内の強度を低減することと、可読性を維持することとの間のトレードオフを有する手段を提供する。
【0028】
他の実施形態において、前記選択された画像部分を選択するための予め定められた基準は、予め定められた強度閾値を超える平均画像強度を有する解剖学的領域の選択である。この実施形態において、画像強度が大きすぎる場合、これは低減されるように選択される。
【0029】
他の実施形態において、前記選択された画像部分を選択するための予め定められた基準は、該選択された画像部分内のノイズレベルを予め定められたノイズ閾値未満に維持することである。ノイズレベルを予め定められたノイズ閾値未満に制限することは、ノイズが該選択された画像部分内の情報を不明瞭にしないことを保証するために使用できる。
【0030】
他の実施形態において、前記選択された画像部分を選択するための予め定められた基準は、前記1以上の解剖学的領域の予め定められた選択である。例えば、特定の磁気共鳴撮像プロトコルが実行されている場合、この領域が明るすぎる、又は強度が大きすぎることは前もって分かり得る。先に示された例は、造影剤が最初に心臓に進む動的コントラスト強調磁気共鳴撮像プロトコルである。この場合、心臓の解剖学的領域が明る過ぎるであろうことが前もって分かる。この場合、これを前記予め定められた選択に追加することができる。
【0031】
他の実施形態において、当該医療システムは撮像ゾーンからk空間データを取得するように構成された磁気共鳴撮像システムを更に有する。前記メモリは、該磁気共鳴撮像システムを制御して前記撮像ゾーン内の予め定められた視野からk空間データを取得させるパルスシーケンスコマンドを更に含む。前記マシン実行可能命令の実行は、更に、前記計算システムに、前記磁気共鳴撮像システムを前記パルスシーケンスコマンドで制御して前記k空間データを取得させる。前記マシン実行可能命令の実行は、更に、前記計算システムに、該k空間データから前記初期磁気共鳴撮像データを再構成させる。
【0032】
他の態様において、本発明は医療撮像のための方法を提供する。該方法は、初期磁気共鳴撮像データを受信するステップを有する。該方法は、前記初期磁気共鳴撮像データを画像セグメンテーションアルゴリズムに入力することに応答して前記磁気共鳴撮像データ内の1以上の解剖学的領域を含む画像セグメンテーションを受信するステップを更に有する。前記画像セグメンテーションアルゴリズムは、被験者の予め定められた視野を描く初期磁気共鳴撮像データ内の1以上の予め定められた解剖学的領域を出力するように構成される。該方法は、予め定められた基準を使用して、前記1以上の解剖学的領域のうちの少なくとも1つを、選択された画像部分として選択するステップを更に有する。該方法は、前記選択された画像部分内の画像強度を低減して、強度補正された磁気共鳴撮像データを生成するステップを更に有する。
【0033】
他の態様において、本発明は、計算システムによる実行のためのマシン実行可能命令を含むコンピュータプログラムを提供する。該コンピュータプログラムは、例えば、非一時的記憶部又はメモリ装置等の、メモリ又は記憶装置に記憶されるコンピュータプログラム製品であり得る。前記マシン実行可能命令の実行は前記計算システムに初期磁気共鳴撮像データを受信させる。前記マシン実行可能命令の実行は、更に、前記計算システムに、前記初期磁気共鳴撮像データを画像セグメンテーションアルゴリズムに入力することに応答して前記磁気共鳴撮像データ内の1以上の解剖学的領域を含む画像セグメンテーションを受信させる。
【0034】
前記画像セグメンテーションアルゴリズムは、被験者の予め定められた視野を描く初期磁気共鳴撮像データに関する又は該データ内の1以上の予め定められた解剖学的領域を出力するように構成される。前記マシン実行可能命令の実行は、更に、前記計算システムに、予め定められた基準を使用して、前記1以上の解剖学的領域のうちの少なくとも1つを、選択された画像部分として選択させる。前記マシン実行可能命令の実行は、更に、前記計算システムに、前記選択された画像部分内の画像強度を低減して、強度補正された磁気共鳴撮像データを生成させる。
【0035】
他の実施形態において、前記選択された画像部分内の画像強度は空間的に変化する重み付け係数を使用して低減される。該空間的に変化する重み付け係数は滑らかなものである。該空間的に変化する重み付け係数は、前記選択された画像部分の境界に滑らかな遷移を有する。
【0036】
本発明の上述した実施形態の1以上は、組み合わされる実施形態が相互に排他的でない限り、組み合わせることができることが理解される。
【0037】
当業者により理解されるように、本発明の態様は、装置、方法又はコンピュータプログラム製品として具現化できる。したがって、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、又は本明細書では一般的に「回路」、「モジュール」若しくは「システム」として参照され得るソフトウェア及びハードウェア態様を組み合わせた実施形態の形をとることができる。更に、本発明の態様は、コンピュータ実行可能コードが具現化された1以上のコンピュータ可読媒体で実施化されたコンピュータプログラム製品の形をとることができる。
【0038】
1以上のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせを利用することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体であり得る。本明細書で使用される「コンピュータ可読記憶媒体」とは、計算装置のプロセッサ又は計算システムにより実行可能な命令を格納できる任意の有形の記憶媒体を含む。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読非一時的記憶媒体と呼ぶことができる。コンピュータ可読記憶媒体は、有形コンピュータ可読媒体と呼ぶこともできる。幾つかの実施形態において、コンピュータ可読記憶媒体は、計算装置の計算システムによりアクセスできるデータを記憶することもできる。コンピュータ可読記憶媒体の例は、これらに限定されるものではないが、フロッピーディスク、磁気ハードディスクドライブ、ソリッドステートハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク及び計算システムのレジスタファイルを含む。光ディスクの例は、例えばCD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW又はDVD-Rディスク等のコンパクトディスク(CD)及びデジタル多目的ディスク(DVD)を含む。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、ネットワーク又は通信リンクを介してコンピュータ装置によりアクセス可能な様々なタイプの記録媒体も指す。例えば、データは、モデムを介して、インターネットを介して、又はローカルエリアネットワークを介して取得できる。コンピュータ可読媒体上に具現化されたコンピュータ実行可能コードは、これらに限定されるものではないが、無線、有線、光ファイバーケーブル、RF等、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む任意の適切な媒体を使用して送信できる。
【0039】
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンドに又は搬送波の一部としてコンピュータ実行可能コードが具現化された伝播されるデータ信号を含み得る。このような伝搬される信号は、これらに限定されるものではないが、電磁的、光学的又はこれらの任意の適切な組み合わせを含む様々な形態のいずれかを取ることができる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、機器又は装置により、又はこれらに関連して使用するためのプログラムを通知、伝搬又は伝送できる任意のコンピュータ可読媒体であり得る。
【0040】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、計算システムに直接アクセスできるメモリである。「コンピュータ記憶部」又は「記憶部」は、コンピュータ可読記憶媒体の他の一例である。コンピュータ記憶部は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。幾つかの実施形態において、コンピュータ記憶部はコンピュータメモリであってもよく、その逆であってもよい。
【0041】
本明細書で使用される「計算システム」は、プログラム、マシン実行可能命令又はコンピュータ実行可能コードを実行できる電子部品を含む。「計算システム」の例を含む計算システムへの言及は、2以上の計算システム又は処理コアを含み得ると解釈されるべきである。計算システムは、例えば、マルチコアプロセッサであり得る。計算システムとは、単一のコンピュータシステム内の又は複数のコンピュータシステムに分散された計算システムの集合も指し得る。計算システムという用語は、各々がプロセッサ又は計算システムを含む計算装置の集合又はネットワークを指す場合もあると解釈されるべきである。マシン実行可能コード又は命令は、同じ計算装置内にあり得る、又は複数の計算装置に分散され得る複数の計算システム又はプロセッサにより実行され得る。
【0042】
マシン実行可能命令又はコンピュータ実行可能コードは、プロセッサ又は他の計算システムに本発明の態様を実行させる命令又はプログラムを含み得る。本発明の態様のための処理を実行するためのコンピュータ実行可能コードは、Java、Smalltalk(登録商標)、C++等のオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語であり、マシン実行可能命令にコンパイルされる従来の手順型プログラミング言語を含む1以上のプログラミング言語の任意の組合せで書くことができる。場合により、コンピュータ実行可能コードは、高級言語の形式又は事前にコンパイルされた形式であり得、マシン実行可能命令をオンザフライで生成するインタープリタと組み合わせて使用できる。他の事例において、マシン実行可能命令又はコンピュータ実行可能コードは、プログラマブル論理ゲートアレイのためのプログラミングの形式であり得る。
【0043】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、独立型のソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上及び部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータ若しくはサーバー上で実行することができる。後者のシナリオにおいて、リモートコンピュータはローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続でき、又は該接続は外部コンピュータに対して実施することができる(例えば、インターネットサービスプロバイダーを使用してインターネット経由で)。
【0044】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して説明される。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック又はブロックの一部は、適用可能な場合、コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータプログラム命令により実施化できることが理解される。更に、相互に排他的でない場合、異なるフローチャート、図及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせを組み合わせてもよいことが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置の計算システムに供給され、該コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置の計算システムを介して実行する命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロック若しくは複数のブロックで指定された機能/動作を実施するための手段を作成するようにできる。
【0045】
これらのマシン実行可能命令又はコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置又は他の装置を特定の態様で機能させることができるコンピュータ可読媒体に記憶することもでき、該コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又は複数のブロックで指定された機能/動作を実施させる命令を含む製品を生成するようにする。
【0046】
マシン実行可能命令又はコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置又は他の装置にロードされて、一連の処理ステップが該コンピュータ、他のプログラム可能な装置又は他の装置上で実行されるようにすることもでき、該コンピュータ又は他のプログラム可能な装置上で実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又は複数のブロックで指定された機能/動作を実施するためのプロセスを提供するようなコンピュータ実施プロセスを生成するようにする。
【0047】
本明細書で使用される「ユーザインターフェース」は、ユーザ又は操作者がコンピュータ又はコンピュータシステムと対話できるようにするインターフェースである。「ユーザインターフェース」は、「ヒューマンインターフェース装置」とも呼ばれ得る。ユーザインターフェースは、操作者に情報又はデータを提供し、及び/又は操作者から情報又はデータを受け取ることができる。ユーザインターフェースは、操作者からの入力がコンピュータにより受信されることを可能にでき、コンピュータからユーザに出力を供給できる。言い換えると、ユーザインターフェースは操作者がコンピュータを制御又は操作することを可能にし得、該インターフェースはコンピュータが操作者の制御又は操作の効果を示すことを可能にし得る。ディスプレイ又はグラフィックユーザインターフェース上でのデータ又は情報の表示は、操作者へ情報を提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックスタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウエブカム、ヘッドセット、ペダル、有線グローブ、リモコン、加速度計を介したデータの受信は、全て、操作者から情報又はデータを受信することを可能にするユーザインターフェース部品の例である。
【0048】
本明細書で使用される「ハードウェアインターフェース」は、コンピュータシステムの計算システムが外部計算装置及び/又は機器と対話する、及び/又は該装置及び/又は機器を制御することを可能にするインターフェースを含む。ハードウェアインターフェースは、計算システムが制御信号又は命令を外部の計算装置及び/又は機器に送信することを可能にし得る。ハードウェアインターフェースは、計算システムが外部の計算装置及び/又は機器とデータを交換することも可能にし得る。ハードウェアインターフェースの例は、これらに限られるものではないが、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS-232ポート、IEEE-488ポート、Bluetooth(登録商標)接続、無線ローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、制御電圧インターフェース、MIDIインターフェース、アナログ入力インターフェース及びデジタル入力インターフェースを含む。
【0049】
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「表示装置」は、画像又はデータを表示するように適合された出力装置又はユーザインターフェースを含む。ディスプレイは、視覚、聴覚及び/又は触覚データを出力し得る。ディスプレイの例は、これらに限られるものではないが、コンピュータモニタ、テレビ画面、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、陰極線管(CRT)、蓄電管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクトルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイを含む。
【0050】
本明細書において、k空間データは、磁気共鳴撮像スキャンの間に磁気共鳴装置のアンテナを使用した、原子スピンにより放出されるラジオ波信号の記録された測定値であると定義される。
【0051】
磁気共鳴イメージング(MRI)の撮像データ又はMR画像は、本明細書では、磁気共鳴撮像データ内に含まれる解剖学的データの再構成された二次元又は三次元視覚化であると定義される。この視覚化は、コンピュータを使用して実行できる。
【0052】
以下では、本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して例示のみとして説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、医療システムの一例を示す。
図2図2は、図1の医療システムを使用する方法を示すフローチャートである。
図3図3は、医療システムの他の例を示す。
図4図4は、図3の医療システムを使用する方法を示すフローチャートである。
図5図5は、幾つかの磁気共鳴画像を示す。
図6図6は、空間的に変化する重み付け係数の一例を示す。
図7図7は、空間的に変化する重み付け係数の他の例を示す。
図8図8は、空間的に変化する重み付け係数の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
各図における同じ番号の要素は、同等の要素であるか、又は同じ機能を果たす。前に述べられた要素は、機能が同等であるならば、後の図では必ずしも説明されるとは限らない。
【0055】
図1は、医療システム100の一例を示す。この例における医療システム100は、コンピュータ102を備えるものとして示されている。コンピュータ102は、1つの場所にあるか又は分散された1以上のコンピュータシステムを表し得る。コンピュータ102は、計算システム104を含むものとして示されている。計算システム104は、例えば、1以上の場所に配置された1以上の処理コアであり得る。計算システム104は、オプションのハードウェアインターフェース106に接続されるものとして示されている。ハードウェアインターフェース106は、例えば、計算システム104を医療システム100の他の構成要素(もし存在するなら)と接続するために使用され得る。ハードウェアインターフェース106は、このような構成要素を計算システム104が制御することを可能にできる。
【0056】
コンピュータ102は、更に、オプションとしてのユーザインターフェース108を備えるものとして示されている。ユーザインターフェース108は、例えば、操作者により医療システム100の動作及び機能を制御するために使用され得る。医療システム100は、独立型コンピュータシステムであってもよいが、磁気共鳴画像システムに統合することもできる。
【0057】
コンピュータ102は、更に、メモリ110を備えるものとして示されている。メモリ110は、計算システム104によりアクセス可能なメモリ又は記憶装置の任意の組み合わせを表すことを意図している。メモリ110は、揮発性及び不揮発性メモリ記憶手段及び構成要素を含み得る。
【0058】
メモリ110は、マシン実行可能命令120を含むものとして示されている。マシン実行可能命令120は、計算システム104が磁気共鳴画像の再構成等の基本的なデータ及び画像処理タスクを実行できるように構成され得る。マシン実行可能命令120は、幾つかの例においては、上記計算システムがオプションのハードウェアインターフェース106を介して他の構成要素を制御できるようにするコードも含み得る。
【0059】
メモリ110は、更に、画像セグメンテーションアルゴリズム122を含むものとして示されている。画像セグメンテーションアルゴリズム122は、初期磁気共鳴撮像データに関する1以上の予め定められた解剖学的領域を出力するように構成された標準的な磁気共鳴撮像画像セグメンテーションアルゴリズムであり得る。これは、被験者の特定の視野又は解剖学的領域に対するものであり得る。
【0060】
メモリ110は、更に、初期磁気共鳴撮像データ124を含むものとして示されている。メモリ110は、更に、初期磁気共鳴撮像データ124を入力することにより画像セグメンテーションアルゴリズム122から受信された画像セグメンテーション126を含むものとして示されている。メモリ110は、更に、選択された画像部分128を含むものとして示されている。これは、画像セグメンテーション126において識別された1以上の領域又は解剖学的領域である。選択された画像部分(選択画像部分)128は、例えば、画像セグメンテーション126に適用される予め定められた基準を用いて選択され得る。メモリ110は、更に、初期磁気共鳴撮像データ124に対して選択画像部分128内の画像強度を低減することにより形成された強度補正された磁気共鳴撮像データ130を含むものとして示されている。
【0061】
図2は、図1の医療システム100を動作させる方法を示したフローチャートを示す。最初に、ステップ200において、初期磁気共鳴撮像データ124が受信される。次に、ステップ202において、画像セグメンテーション126が受信される。該画像セグメンテーションは、初期磁気共鳴撮像データ124を入力した後に画像セグメンテーションアルゴリズム122から受信されたものである。次に、ステップ204において、選択画像部分128が、画像セグメンテーション126に予め定められた基準を適用することにより決定される。最後に、ステップ206において、強度補正された磁気共鳴撮像データ130が、選択画像部分128に関して初期磁気共鳴撮像データ124内の画像強度を低減することによりもたらされる。
【0062】
図3は、医療システムの他の例300を示す。医療システム300は、計算システム104により制御される磁気共鳴撮像システム302を更に備えることを除いて、図1の医療システム100と同様である。
【0063】
磁気共鳴撮像システム302は磁石304を備える。磁石304は、貫通するボア306を備えた超伝導円筒状磁石である。異なるタイプの磁石の使用も可能である。例えば、分割円筒状磁石及びいわゆる開放型磁石の両方を使用することもできる。分割円筒状磁石は、クライオスタットが該磁石の等平面にアクセスできるように2つの区域に分割されていることを除いて、標準的な円筒状磁石と類似している。このような磁石は、例えば、荷電粒子ビーム治療と組み合わせて使用できる。開放型磁石は、間に被験者を受け入れるのに十分なスペースを備えた上下2つの磁石区域を有する。該2つの区域の配置は、ヘルムホルツコイルの配置に類似する。被験者が余り拘束されないため、開放型磁石に人気がある。円筒状磁石のクライオスタットの内部には、超電導コイルの集合が存在する。
【0064】
円筒状磁石304のボア306内には、磁気共鳴撮像を実行するのに十分に磁場が強く且つ均一である撮像ゾーン308が存在する。撮像ゾーン308内には関心領域309が示されている。取得される磁気共鳴データは、通常、該関心領域に関して取得される。被験者318が、被験者318の少なくとも一部が撮像ゾーン308及び関心領域309内にあるようにして被験者支持体320により支持されているように示されている。
【0065】
上記磁石のボア306内には一群の勾配磁場コイル310も存在し、これら勾配磁場コイルは磁石304の撮像ゾーン308内の磁気スピンを空間的に符号化するための予備的な磁気共鳴データの取得に使用される。勾配磁場コイル310は勾配磁場コイル電源312に接続される。勾配磁場コイル310は、代表的なものであることを意図している。通常、勾配磁場コイル310は、3つの直交する空間方向において空間的に符号化するための3つの別個の組のコイルを含む。勾配磁場コイル電源が、該勾配磁場コイルに電流を供給する。勾配磁場コイル310に供給される電流は、時間の関数として制御され、ランプ状又はパルス状であり得る。
【0066】
撮像ゾーン308に隣接して、撮像ゾーン308内の磁気スピンの向きを操作すると共に、該撮像ゾーン308内のスピンからのラジオ波伝送を受信するためのラジオ波コイル314が存在する。該ラジオ波アンテナ(ラジオ波コイル)は、複数のコイル要素を含み得る。該ラジオ波アンテナは、チャネル又はアンテナとも呼ばれる。ラジオ波コイル314は、ラジオ波送受信機316に接続される。ラジオ波コイル314及びラジオ波送受信機316は、別個の送信及び受信コイル並びに別個の送信機及び受信機に置換できる。ラジオ波コイル314及びラジオ波送受信機316は代表的なものであることが理解される。ラジオ波コイル314は、専用の送信アンテナ及び専用の受信アンテナも表すことも意図している。同様に、送受信機316も別個の送信機及び受信機を表し得る。ラジオ波コイル314も複数の受信/送信エレメントを有することができ、ラジオ波送受信機316も複数の受信/送信チャネルを有することができる。例えば、SENSE等の並列撮像技術が実行される場合、ラジオ波コイル314は複数のコイル要素を有するであろう。
【0067】
送受信機316及び勾配磁場コントローラ312は、コンピュータシステム102のハードウェアインターフェース106に接続されるものとして示されている。
【0068】
メモリ110は、パルスシーケンスコマンド330を含むものとして示されている。該パルスシーケンスコマンドは、磁気共鳴撮像システム302を、k空間データ332を取得するように制御するために使用され得るコマンド又はコマンドに変換できるコマンド又はデータである。メモリ110は、更に、磁気共鳴撮像システム302をパルスシーケンスコマンド330で制御することにより取得されたk空間データ332を含むものとして示されている。計算システム104は、k空間データ332から初期磁気共鳴撮像データ124を再構成することもできる。
【0069】
図4は、図3の医療システム300を動作させる方法を示したフローチャートを示す。図4に示される方法は、図2に示された方法と同様である。該方法は幾つかの追加のステップを含む。該方法はステップ400で開始する。ステップ400において、磁気共鳴撮像システム302はパルスシーケンスコマンド330で制御され、k空間データ332を取得する。ステップ400の後、ステップ402において、初期磁気共鳴撮像データ124が再構成される。ステップ402の後、当該方法は、図2に示されたように、ステップ200、202、204及び206を実行するように進行する。
【0070】
基本的な観点から言えば、MRI画像は、組織及び可能性のある病変を分離するために可能な限り均一であべきであると言える。しかしながら、特定の構造が背景に対して明るくなり過ぎると、これらの構造は病変の可検出性を不明瞭にさせ得る。例えば、乳房の動的コントラスト強調撮像において、造影剤は最初に心臓に到達する。画像が完全に均一にされる場合、心臓が画像の残りの部分を圧倒し、画像から全ての情報を推測することを非常に困難にさせる。例として挙げられるものは、セグメント構造(画像セグメンテーション126の選択された画像部分126)が画像の残りを不明瞭にさせることであり得る。画像の残りの部分は完全に均一にされる一方、セグメント化された部分(選択された画像部分126)は低減されるか、又は幾つかの例では完全に除去され、当該構造が、最早、不明瞭にしないようにする。低減は、関連する情報を依然として含み得るので、完全な解剖学的構造が依然として認識できるという利点を有する。
【0071】
この構成は、関連性の低い構造を依然として見ることができながら、最も関連性の高い構造にわたり最適な均一性を有することにより、画像の可読性を向上させるという利点を有し得る。この構成は、最適なワークフローにより余りウィンドウ操作を必要としないシステムを提供するという利点を更に有し、一層容易な診断を提供することができる。
【0072】
病変は、周囲と比較した構造及びコントラストの違いに基づいて検出され、特徴付けられる。画像全体にわたりコントラストが等しい均一な画像は、画像内の最適な比較にとり有益であろう。しかしながら、MRIにおいて、不均一性は、組織間のコントラストの違いによるだけでなく、取得方法及び受信コイルのような使用される取得ハードウェアに固有のものとしても存在する。受信コイルの痕跡は、例えば、CLEAR法を介して補正できる。CLEARは「Constant Level Appearance」の頭字語であり、以前に取得されたコイル感度マップを使用することによりMRI画像における均一性補正を実現する。PUREという用語は、CLEARに相当する他の頭字語である。
【0073】
上述したように、完全に均一なコントラストは常に有益であるとは限らない。特定の構造は圧倒的過ぎるものになり、これにより画像の解読の容易さを損ない得る。前記動的コントラスト強調乳房撮像の例を挙げよう。この撮像は、ほとんどの場合、軸方向の向きで実行される。造影剤は最初に心臓に到達する。心臓は大量の血液を含むので、非常に明るくなり、当該所与の画像のコントラスト及びウィンドウ設定を決定する。過度に明るい心臓を避けるために、ユーザは如何なる均一性補正も行わないと決定する。このことは、心臓を遙かに低い明るさになるようにさせるであろう。乳房コイルは当該領域では敏感ではないからである。そのマイナス面は、乳房が不均一になり、乳房を該透視図から評価することを困難にさせることである。
【0074】
例となるものは、心臓及び/又は如何なる他の妨害となる組織もセグメント化し、これを均一性補正において重みを軽減させることであり得る。これを画像から完全に削除して、当該画像を原則として非長方形にさせることさえできる。完全な除去は常に最適な結果とは限らない。依然として関連性のある情報が、セグメント化された構造から取り出されることを要するからである。乳房の場合において、造影剤が心臓に到達する時点は、造影剤が心臓及び可能性のある病変に到達する時間差を注意するために依然として関連性のあるものである。
【0075】
最終的な画像において不明瞭にさせる構造をセグメント化すると共に重みを減少させることにより、画像の可読性が改善される。このことは、可能性として:
- より高い信頼性;
- より短い解読時間;
- ウィンドウ操作がはるかに容易になることによる、より少ないマウスのクリック/移動;
という利点を有し得る。
【0076】
例となるものは可能性として:
- (オプションとして)均一性補正を適用する;
- 過度に目立ち可読性を妨害する構造をセグメント化する;
- これら構造が目立たなくなるようにこれら構造の重みを減少させるか、又はこれらを完全に除去する;
ステップの1以上を組み合わせることができる。
【0077】
これは例示的な順序に過ぎず、均一性補正は重みの低減後に適用することもできる。
【0078】
図5は、4つの異なる磁気共鳴画像を示している。画像500は、動的コントラスト強調磁気共鳴画像である。画像502は、画像500と同じデータから再構成されたものであるが、強度補正された動的コントラスト強調磁気共鳴画像502である。画像504は、軸方向磁気共鳴画像における最大強度投影である。画像506は、画像504と同じデータから再構成されているが、強度補正されており、したがって、画像506は軸方向磁気共鳴画像における強度補正された最大強度投影である。
【0079】
図6は、乳房ケースが提供される一例であり、明るい心臓(選択された画像部分128)を示している。画像500及び504は、ほとんど如何なる補正もされていない。画像502及び506はCLEAR補正を使用している。どちらの場合も、病変は明るくて大きく、明瞭に見える。それにもかかわらず、CLEAR画像は、明るい心臓128、及びこの高信号によるウィンドウ操作の困難さを明確に示している。
【0080】
画像500及び504は、良好なコントラストをもたらしているが、これらは不均一である。この場合、4チャンネルのコイルが使用されているため、該不均一性は実際には明らかではない。7of16チャネルコイルでは、固有の不均一性がはるかに大きく、取得される画像は均一性補正なしでは使用できない。
【0081】
図6は、画像500、502、504及び506のいずれかに対して行うことができるような画像セグメンテーション126の理想化を示す。画像セグメンテーション126内には、選択された画像部分128の識別情報がある。A-A間には、断面線600がある。セグメンテーション126の下にあるのは、A-Aに沿う位置602対強度低減係数604のプロットである。選択された画像部分128の境界606の間における線608は、空間的に変化する重み付け係数608を表す。図6の例において、該空間的に変化する重み付け係数608は、選択された画像部分128内のみにある。空間的に変化する重み付け係数の変形608’、608”は、下記の図6及び図7に示されている。これら空間的に変化する重み付け係数は、値が正の重み付け係数として示されている。どの様に使用されるかに依存して、これら係数は負に変換できる。これら係数は、強度を低減するために使用されるスケーリング係数に変換することもできる。この場合、該スケーリング係数は、例えば、表示された空間的に変化する重み付け係数608、608’、608”を1から減算したものであり得る。
【0082】
図7は、図6に示されたものと同じ画像セグメンテーション126のプロットを示す。しかしながら、図7の例において、空間的に変化する重み付け係数608’は異なる。この例において、選択された画像部分128の境界606には、滑らかな遷移700が存在する。図7の利点は、滑らかな遷移700の結果、一層自然に見える強度補正された磁気共鳴撮像データ130が得られ得るということである。
【0083】
図8は、図7及び図8に示した画像セグメンテーション126の他の図を示す。図8において、空間的に変化する重み付け係数608”は、図6及び図7に示されるものとは異なる。該係数は、この場合も選択された画像部分128の境界606に滑らかな遷移700が存在するという点で、図7に示される空間的に変化する重み付け係数608’と類似している。しかしながら、この例においては、選択された画像部分128を取り囲む遷移ゾーン800が存在する。空間的に変化する重み付け係数608”は、遷移ゾーンの境界802と、選択された画像部分128の境界606との間に遷移部分を有する。
【0084】
遷移ゾーンの境界802は、選択された画像部分の境界606から選択された距離又は選択された数のボクセルだけ離れていると定義できる。通常、該選択された数のボクセルは、10個以下のボクセル等のように相対的に小さいであろう。上記の選択された距離は、1cm未満又は0.5cm未満に対応するボクセルの選択であり得る。
【0085】
以上、本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、このような図示及び説明は、例示的又は例示的なものであり、限定するものではないと見なされるべきである。すなわち、本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。
【0086】
開示された実施形態に対する他の変形は、請求項に記載の発明を実施する際に、図面、本開示及び添付請求項の精査から当業者により理解され、実行され得る。請求項において、「有する(含む)」という文言は他の要素又はステップを除外するものではなく、単数形は複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載された幾つかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に、又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体により記憶/配布することができるのみならず、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように、他の形態で配布することもできる。請求項における参照記号は、当該範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0087】
100 医療システム
102 コンピュータ
104 計算システム
106 オプションのハードウェアインターフェース
108 オプションのユーザインターフェース
110 メモリ
120 マシン実行可能命令
122 画像セグメンテーションアルゴリズム
124 初期磁気共鳴撮像データ
126 画像セグメンテーション
128 選択された画像部分
130 強度補正された磁気共鳴撮像データ
200 初期磁気共鳴撮像データを受信する
202 初期磁気共鳴撮像データを画像セグメンテーションアルゴリズムに入力することに応答して、磁気共鳴撮像データ内の1以上の解剖学的領域を含む画像セグメンテーションを受信する
204 予め定められた基準を使用して、1以上の解剖学的領域のうちの少なくとも1つを、選択された画像部分として選択する
206 強度補正された磁気共鳴撮像データを供給するために、選択された画像部分内の画像強度を低減する
300 医療システム
302 磁気共鳴撮像システム
304 磁石
306 磁石のボア
308 撮像ゾーン
309 関心領域
310 勾配磁場コイル
312 勾配磁場コイル電源
314 ラジオ波コイル
316 送受信機
318 被験者
320 被験者支持体
330 パルスシーケンスコマンド
332 k空間データ
400 k空間データを取得するためにパルスシーケンスコマンドで磁気共鳴撮像 システムを制御する
402 k空間データから初期磁気共鳴撮像データを再構成する
500 ダイナミックコントラスト強調磁気共鳴画像
502 強度補正されたダイナミックコントラスト強調磁気共鳴画像
504 軸方向磁気共鳴画像の最大強度投影
506 強度補正された軸方向磁気共鳴画像の最大強度投影
600 断面線A-A
602 A-Aに沿う位置
604 強度低減係数
606 選択された画像部分の境界
608 空間的に変化する重み付け係数
608’ 空間的に変化する重み付け係数
608” 空間的に変化する重み付け係数
700 滑らかな遷移
800 遷移ゾーン
802 遷移ゾーンの境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8