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特許7493683超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機
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  • 特許-超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機 図1
  • 特許-超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機 図2A
  • 特許-超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機 図2B
  • 特許-超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機 図3
  • 特許-超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機 図4
  • 特許-超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段を有するCO2サイクル用圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 25/16 20060101AFI20240524BHJP
   F04D 17/10 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F04D25/16
F04D17/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023530938
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021025459
(87)【国際公開番号】W WO2022111852
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】102020000028685
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベロブオノ、エルマニ フルヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】トニ、ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】グリマルディ、アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】リッツォ、エマヌエレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンテ、ロベルト
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145092(JP,A)
【文献】特開昭51-087609(JP,A)
【文献】特開2016-075184(JP,A)
【文献】米国特許第04375937(US,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第02658412(CA,A1)
【文献】特開昭51-058705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
17/00-19/02
21/00-25/16
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2流を処理するように構成された圧縮機(1000)であって、
1のブレード数の第1の回転ブレード列(250)を備える第1の圧縮機段(200)と、
2のブレード数の第2の回転ブレード列(350)を備える第2の圧縮機段(300)であって、前記第1の圧縮機段(200)の下流に流体接続されている、第2の圧縮機段(300)と、を備え、
前記第1のブレード数が、前記第2のブレード数未満であり、
前記第1の圧縮機段(200)が、出口において超臨界状態のCO2流を提供するように構成されており、
前記第1の回転ブレード列(250)が、前記第2の回転ブレード列(350)に直接CO2流を提供するように構成されており、
前記第2の回転ブレード列(350)は、環状ギャップ(400)が、前記第1の回転ブレード列(250)と前記第2の回転ブレード列(350)との間に位置するように、前記第1の回転ブレード列(250)から軸方向に離間し
前記環状ギャップ(400)が、前記第1の回転ブレード列(250)の後縁高さの1倍~2倍の軸方向長さを有し、
前記第2の回転ブレード列(350)の前縁の少なくともいくつかが、前記第1の回転ブレード列(250)の後縁に対して異なる円周方向位置を有し、
前記第1の回転ブレード列(250)が、主にCO2流が軸方向に流れるように軸方向の展開を有し、
前記第2の回転ブレード列(350)が、前記第2の圧縮機段(300)が遠心圧縮機段を構成するように、軸方向と半径方向の両方の展開を有する、圧縮機(1000)。
【請求項2】
前記第1の圧縮機段(200)の圧力比が、前記第2の圧縮機段(300)の圧力比よりも小さい、請求項1に記載の圧縮機(1000)。
【請求項3】
前記第1の圧縮機段(200)の圧力比が、1.0超かつ1.2未満である、請求項1又は2に記載の圧縮機(1000)。
【請求項4】
前記第1の圧縮機段(200)の圧力比は、前記第2の圧縮機段(300)の圧力比の70%未満である、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮機(1000)。
【請求項5】
前記第2のブレード数と前記第1のブレード数との間の比は、1よりも大きく2よりも小さい、又は2よりも大きく3よりも小さい数である、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機(1000)。
【請求項6】
前記第1の回転ブレード列(250)の上流に入口ガイドベーン(100)を更に備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧縮機(1000)。
【請求項7】
前記第1の回転ブレード列(250)と前記第2の回転ブレード列(350)が同じ角速度で回転するように構成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の圧縮機(1000)。
【請求項8】
第1のロータ及び第2のロータを備え、前記第1の回転ブレード列(250)が、前記第1のロータの一部であり、前記第2の回転ブレード列(350)が、前記第2のロータの一部である、請求項1から7のいずれか1項に記載の圧縮機(1000)。
【請求項9】
ロータを備え、前記第1の回転ブレード列(250)及び前記第2の回転ブレード列(350)が、前記ロータの一部である、請求項1から7のいずれか1項に記載の圧縮機(1000)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載の圧縮機を使用してCO2流を圧縮する方法であって、
臨界CO2流を生成するように、第1の圧縮機段(200)を通して、前記CO2流を超臨界条件に圧縮するための第1の圧縮ステップと、
2の圧縮機段(300)を通して、前記超臨界CO2流を圧縮するための第2の圧縮ステップと、を含み、
前記第1の圧縮ステップが、圧縮の終わりに、CO2が臨界点(Pc、Tc)に近くなるようなステップであり、
前記第1の圧縮ステップと前記第2の圧縮ステップとの間に、全圧と静圧との両方を実質的に一定に維持する、等エンタルピーステップがある、方法。
【請求項11】
前記第1の圧縮ステップが、圧縮の終わりに、T-s線図上のCO2の熱力学的状態点が飽和ドームの外側でCO2臨界点(Pc、Tc)のほぼ近くに位置するようなステップである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の圧縮ステップの終わりに、前記第1の圧縮機段(200)の出口における圧力が、飽和圧力に所定の圧力マージンを加えたもの以上であり、前記圧力マージンが、前記第2の圧縮機段(300)の内部の圧力降下に関連する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の圧縮ステップの後に、CO2流を圧縮する1つ以上の圧縮ステップが続く、請求項10から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の圧縮ステップが、前記第2の圧縮ステップよりも小さい圧力比を有する、請求項10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
超臨界CO2サイクルに基づくエネルギー生成システムであって、2つの熱交換器と、膨張機と、少なくとも1つの圧縮機と、を備え、前記少なくとも1つの圧縮機が、請求項1から9のいずれか項に記載の圧縮機である、エネルギー生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、CO2流圧縮機、CO2サイクルエネルギー生成システム、及びCO2流を圧縮する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州連合(略してEU)は、温室効果ガス排出を1990年のレベルと比較して2050年までに80-95%削減することを長期的目標としている。したがって、EU2050エネルギー戦略は、我々のエネルギーシステムに対して重大な意味を有し、新しい課題及び機会を含んでいる。これは、世界中で一般的な傾向である。
【0003】
再生可能エネルギー(風力及び太陽光など)は、欧州におけるエネルギーミックスの中心に移っており、大きな電力出力変動が起きた際のグリッド安定性の問題を提起している。これに関連して、従来の発電プラントの柔軟性及び性能を向上させることは、環境への影響を低減しながらエネルギーグリッドを確保するための良好な機会と考えられる。
【0004】
sCO2-flexコンソーシアムは、5つの異なるEU加盟国からの10人の経験を積んだキープレーヤーから構成されており、既存及び将来の石炭及び褐炭発電プラントの運用柔軟性(高速負荷変化、高速始動及び停止)及び効率を増加させ、したがって、EU目標に沿って、それらの環境影響を低減しようとしている。
【0005】
超臨界二酸化炭素(sCO2)は、その臨界温度及び臨界圧力以上に保持された二酸化炭素の流体状態である。この流体は、従来の発電プラントシステムの効率の実質的な改善を約束する興味深い特性を示す。
【0006】
sCO2ベースの技術は、非常に柔軟で効率的な従来の発電プラントに対するEUの目標を満たす可能性を有する一方で、温室効果ガス排出、残留物処分、更には水消費率低減を低減する。
【0007】
sCO2サイクルは、閉サイクルであり、流体が1つ以上の圧縮機によって圧縮され、熱が第1の熱交換器によってサイクルに導入され、流体が1つ以上の膨張機によって膨張され、熱が第2の熱交換器を通して環境に放出される。有利には、膨張の後であってかつ環境への熱の放出の前に、流体は、サイクルの効率を改善するために、第3の熱交換器、すなわち回収熱交換器を通過する。
【発明の概要】
【0008】
通常、sCO2サイクルの第1の圧縮機は、臨界点に近いCO2流で作動する。次いで、sCO2サイクルは、臨界点付近の作動流体の実際のガス挙動から利点を得る、CO2圧縮機の低減された作動を提示する。この特徴は、sCO2サイクルの全体的な熱効率の増加を高める。しかしながら、臨界点に非常に近いCO2特性には大きな変動があり、ターボ機械及び熱交換器の設計に技術的な影響を及ぼす。
【0009】
特に、CO2流は、インペラのブレードチャネルのサイズに起因して、圧縮機インペラ前縁の上流及びそれを横切る局所加速のために、多相状態で第1の圧縮機のインペラに到達する。多相領域、すなわち飽和ドームの下では、音速が急激に減少し、音速領域が形成され、その結果、圧縮機の動作範囲が制限される。
【0010】
所与の圧力及び温度で流れる流体が狭窄部を通過すると、流体速度が増加する。同時に、ベンチュリ効果により、静圧、したがって密度が狭窄部で減少する。これは、圧縮機動作範囲を制限する音波領域の形成をもたらし得る。
【0011】
この問題は、多数の圧縮機ブレードが存在する場合、すなわちブレードチャネルに起因して圧縮機入口に多数の狭窄部が存在する場合に大きくなる。
【0012】
ベンチュリ効果に起因して、段の入口における多数のブレードは、局所流動加速を増加させ、臨界点に近づく理想的なガス挙動からの大きな逸脱と組み合わされて、CO2の相変化現象を促進し、圧縮機効率及びサイクル効率を低下させ得る。
【0013】
一態様によれば、本明細書に開示される主題は、第1の圧縮機段と、第1の圧縮機段の下流にある第2の圧縮機段と、を備える、CO2流を処理するように構成された圧縮機であって、第1の圧縮機段が、第1のブレード数の第1の回転ブレード列を備え、第2の圧縮機段は、第2のブレード数の第2の回転ブレード列を備え、第1のブレード数が、第2のブレード数未満であり、CO2流が、第1の圧縮機段の出口において超臨界条件にある、圧縮機に関する。
【0014】
特に、第1段のブレードの後縁が、CO2流を環状ギャップに直接排出し、第2段のブレードの前縁が、環状ギャップから直接CO2流を受け取り、第1の圧縮機段の後縁におけるCO2圧力は、飽和圧力に所定の圧力マージンを加えたもの以上であり、当該圧力マージンが、第2の圧縮機段の内部の圧力降下に関連する。
【0015】
別の態様によれば、本明細書に開示される主題は、超臨界CO2サイクルに基づき、超臨界条件を保証するための少なくとも2つのカスケード圧縮段と、その間の環状ギャップと、を有する圧縮機を含むエネルギー生成システムに関する。
【0016】
別の態様によれば、本明細書に開示される主題は、CO2流を圧縮するための方法であって、第1の圧縮ステップは、超臨界CO2流を生成するように第1の圧縮機段(200)を通して当該CO2流を超臨界条件に圧縮するために使用され、かつ第2の圧縮ステップは、第2の圧縮機段(300)を通して当該超臨界CO2流を圧縮するために使用され、第1の圧縮ステップが、圧縮の終わりに、CO2が臨界点に近くなるようなステップであり、第1の圧縮ステップと第2の圧縮ステップとの間に、全圧と静圧との両方を実質的に一定に維持する、換言すれば、全圧に対して損失が低く、かつ静圧に対して回復が少ない、等エンタルピーステップがある、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
開示された実施形態の、及びその付随する利点のより完全な理解は、添付図面と関連して考慮されるときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より良く理解されるように、容易に取得されるであろう。
図1】CO2システムの概略図を示す。
図2A図1の圧縮機の斜視図を示す。
図2B図1の圧縮機の側面図を示す。
図3図2Aの一部の拡大図を示す。
図4】CO2流サイクルのための圧縮システムの概略断面図を示す。
図5】T-s線図上のCO2圧縮の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示される主題は、CO2流で作動する圧縮機及びCO2システム、CO2流を圧縮するための方法、及びCO2流サイクルのための圧縮機アセンブリに関する。
【0019】
ガスタービンサイクルの効率は、主に、その圧力比(すなわち、圧縮機入口におけるガス流の圧力と圧縮機出口におけるガス流の圧力との間の比)に依存する。最大圧力は、配管系及び測定系に関連するコストのために制限され、それにより、sCO2サイクルの最小圧力がサイクル効率に大きく影響する。
【0020】
同時に、サイクルの効率は、特に圧縮機の入口におけるガス流の状態によっても影響を受ける。実際に、コストのために最大サイクル圧力を固定して、臨界点近くで作動させることは、圧縮作動を減少させ、結果としてサイクル効率を改善することが可能になるので、有利である。
【0021】
しかしながら、臨界点付近のCO2条件では、衝撃波が発生し得、圧縮機の動作領域が制限され、効率が低下する。
【0022】
これを克服するために、本明細書で開示される圧縮システムは、高い圧力比を維持しながら、圧縮機インペラが臨界点から離れて作動することを可能にするのに過不足なく流体の圧力を増加させることによってサイクル効率を増加させることを目的とする。
【0023】
これは、小さな圧力比で流体を圧縮し、性能の崩壊を引き起こす衝撃波の問題を制限するために少数のブレードで設計されたインデューサ段を有することによって達成される。有利には、少数のブレードを有するインデューサ段を有することにより、圧縮機入口が構成要素の音波口(sonic throat)になることが回避される。
【0024】
次に、本開示の実施形態を詳述し、その例が図面に例示される。
【0025】
本例は、本開示を限定するものではなく、本開示の説明として提供するものである。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱しない限り、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には明らかであろう。
【0026】
一態様によれば、図1を参照すると、本明細書に開示される主題は、超臨界CO2サイクルに基づくエネルギー生成システム、すなわち、主に超臨界条件で作動流体としてCO2を用いて作動するガスタービンプラントを提供する。典型的には、このタイプのサイクルでは、最小サイクル圧力の作動流体は超臨界条件にあるが、臨界圧力の80~100%の最小サイクル圧力を有する亜臨界多相条件の作動流体も許容される。
【0027】
図1のCO2システムは、2つの熱交換器2000A、2000Bと、膨張機3000と、圧縮機1000と、を備え、有利には、圧縮機及びタービンは、同じシャフト1010上で駆動される。シャフト1010は、シャフト1010の主展開方向に対応する軸Aを決定する。本明細書で使用される場合、「軸方向」及び「半径方向」という用語は、それぞれ、軸Aに平行及び垂直な方向を指す。
【0028】
図1を参照すると、CO2流は、時計回り方向に流れ、圧縮機1000によって圧縮され、第1の熱交換器2000A内で加熱され、膨張機3000によって膨張され、第2の熱交換器2000B内で冷却され、最終的にサイクルを再開する。換言すれば、CO2システムは、閉サイクルガスタービンである。
【0029】
好ましい実施形態によれば、CO2システムは、「回収熱交換器(recuperator)」とも呼ばれる第3の熱交換器2000Cを備え、第3の熱交換器2000Cは、サイクルの熱効率を高めるのに好適であり、圧縮機1000の出口におけるCO2流を低温流体として受け入れ、膨張機3000の出口におけるCO2流を高温流体として受け入れる。回収熱交換器2000Cは、膨張機排気CO2流から廃熱を回収し、熱交換器2000A内で圧縮CO2流を更に加熱する前に圧縮機1000からの圧縮CO2流を予熱するためにそれを使用することを可能にし、必要な外部熱を低減する。
【0030】
図1の例では、膨張機3000、特に膨張機3000を駆動するシャフト1010は、発電機4000、特にオルタネータに結合されている。代替的に、膨張機3000は、図示しない外部負荷に接続されてもよい。
【0031】
サイクルの設計に応じて、機械及び熱交換器の数、並びに機械を駆動するシャフトの数を変更してもよいことに留意されたい。
【0032】
一態様によれば、図2及び図3を参照すると、本明細書に開示される主題は、例えば電気エネルギーを生成するための、又は外部負荷に供給するための超臨界CO2システムにおいて使用される圧縮機1000を提供する。
【0033】
圧縮機1000は、第1の圧縮機段200と、第1の圧縮機段200の下流にある少なくとも第2の圧縮機段300と、を備える。「段」は、本明細書では、固定式又は回転式とすることができる単一のブレード列を指すことに留意されたい。例えば、第1の回転ブレード列及び第2の静止ブレード列がある場合、第1の回転ブレード列は、第1の段であり、第2の静止ブレード列は、第2の段である。
【0034】
第1の圧縮機段200は、第1の回転ブレード列250を備える。第2の圧縮機段300は、第2の回転ブレード列350を備える。好ましくは、第1のブレード列250は、インデューサタイプのブレードを有し、第2のブレード列350は、エクスデューサタイプのブレードを有する。図2及び図3に示される好ましい実施形態では、第1のブレード数は、第2のブレード数よりも少ない。
【0035】
第1のブレード数は、第2のブレード数の約2分の1又は約3分の1であることが好ましい。例えば、第2のブレード列350が、18に等しい数のブレードを有する場合、第1のブレード列250のブレード数は、例えば、11又は10又は9又は8又は7又は6であってもよい。これらの2つの数の比は、典型的には整数とは異なる任意の数であってもよく、例えば、1よりも大きく2よりも小さくてもよいし、2よりも大きく3よりも小さくてもよいことに留意されたい。したがって、ブレード数は、2つの圧縮段に望まれる機械的設計及び性能に応じて独立して自由に選択してもよい。
【0036】
圧縮機100は、典型的にはCO2流で作動し、第1の圧縮機段200は、出口において超臨界条件のCO2流を提供し、「超臨界条件流体」とは、その臨界点を上回る圧力を有する、すなわちその臨界圧力よりも高い圧力を有する流体と定義される。
【0037】
換言すれば、第1の圧縮機段200の出口において、CO2流は、約7.37MPaより高い圧力を有する。
【0038】
具体的には、図3を参照すると、第1の圧縮機段200は、第1のブレード列250の前縁210と後縁220との間に圧力増加をもたらすように構成されており、このような圧力上昇は、後縁220でのCO2流が超臨界条件に達するのに十分である。
【0039】
好ましくは、CO2流は、前縁210での圧力に対して後縁220でより高い圧力を有する。圧縮機段を通過する流れの出口圧力と入口圧力との間の比は、「圧力比」又は「圧縮比」として知られている。
【0040】
好ましくは、第1のブレード列250の前縁210は、圧縮機1000の入口部分に対応しており、当該入口部分は、吸引CO2流を受け入れる。次いで、CO2流は、第1のブレード列250の後縁220に対応して排出される。
【0041】
好ましくは、第1のブレード列250は、軸Aによって決定される方向に対して主に軸方向の展開を有する。具体的には、第1のブレード列250の軸方向の展開は、CO2流が主に軸方向に流れるようなものである。
【0042】
図2及び図3を参照すると、圧縮機1000は、第1の圧縮機段200の下流に第2の圧縮機段300を備える。具体的には、第2の圧縮機段300は、第2のブレード列350の前縁310と後縁320との間に圧力増加をもたらすように構成されており、そのような圧力増加は、第1の圧縮機段200の前縁210と後縁220との間にもたらされる圧力増加よりもはるかに高い。
【0043】
換言すれば、第1の圧縮機段200の圧力比は、第2の圧縮機段300の圧力比よりもはるかに小さく、すなわち、第2の圧縮機段300は、CO2サイクルの全圧力比の主圧力比を提供する。好ましくは、第1の圧縮機段200の圧力比は、第2の圧縮機段300の圧力比の70%未満であり、場合によっては第2の圧縮機段300の圧力比の3%超である。例えば、第1の圧力比は、約1.1に等しくてもよく、第2の圧力比は、約1.7に等しくてもよい。
【0044】
好ましい実施形態では、図2図3及び図4を参照すると、第2の圧縮機段300は、軸Aによって決定される方向に対して軸方向と半径方向との両方の展開を有する遠心圧縮機段である。特に、前縁310と後縁320との間の流路は、軸Aによって決定される方向に対して実質的にねじれた表面を画定する。具体的には、前縁310及び後縁320は、軸Aから異なる半径方向距離に位置する。
【0045】
第1の圧縮機段200(特に、第1のブレード列250)は、CO2流を第2の圧縮機段300(特に、第2のブレード列350)に、直接提供するように構成されており、その間にいかなる固定構成要素もなく、特に、いかなるステータブレードもなく、中空軸方向環状ギャップを通過する。具体的には、CO2流は、例えば、後縁220と前縁310との間のステータブレードによる圧力(静圧と全圧との両方)の(実質的な)変化なしに、第1のブレード列250から第2のブレード列350に流れる。本出願人は、ターボ機械において非常に一般的である、2つの連続するロータブレード列の間のステータブレードが有益であると考えられることを認識した。しかしながら、この場合、システムスロート(system throat)を回避するために、「ブレードソリディティ(blade solidity)」は低くなければならず、静圧回復に対する利益は無視できる。
【0046】
第2のブレード列350は、当該第1のブレード列250から軸方向に離間している。具体的には、軸方向環状ギャップ(軸Aの周りに展開する)が、第1のブレード列350の後縁220と第2のブレード列250の前縁310との間に位置する。このようにして、2つの列の間の強い空気力学的相互作用が回避されるように、伴流(wake)が緩和する。
【0047】
好ましくは、後縁220と前縁310との間の軸方向ギャップは、第1のブレード列250の後縁220の高さの1~2倍の長さを有する。
【0048】
図2及び図3を参照すると、第1のブレード列350の後縁220及び第2のブレード列250の前縁310は、軸方向に沿って位置合わせされなくてもよい。特に、第2のブレード列250の前縁310は、第1のブレード列350の後縁220に対して異なる円周方向位置を有することができる(この構成は、「クロッキング効果(clocking effect)」として知られている)。
【0049】
好ましい実施形態では、圧縮機1000は、ロータを備え、第1のブレード列250及び第2のブレード列350は、そのロータの一部である。
【0050】
図4を参照すると、ロータは、好ましくは、シャフト1010によって駆動され、その結果、第1のブレード列250及び第2のブレード列350は、同じ角速度で回転する。
【0051】
代替実施形態では、圧縮機1000は、第1のロータ及び第2のロータを備え、第1のブレード列250は、第1のロータの一部であり、第2のブレード列350は、第2のロータの一部である。
【0052】
有利には、第1のロータは、第1のシャフトによって駆動され、第2のロータは、第2のシャフトによって駆動され、第1のシャフト及び第2のシャフトは、異なる角速度で回転する。
【0053】
図4を参照すると、圧縮機1000は、第1のブレード列250の上流に入口ガイドベーン100を更に備えてもよい。有利には、入口ガイドベーン100は、ステータのブレード列を備え、ステータのブレード列は、固定することができ、又はブレード迎え角を変化させることができ、圧縮機1000によって吸引されるCO2流を調節する。
【0054】
別の態様によれば、本明細書に開示される主題は、例えば、上述の圧縮機1000と同様又は同一の遠心圧縮機を使用してCO2を圧縮するための方法に関し、このような方法は、上述のエネルギー生成システムと同様又は同一の超臨界CO2サイクルに基づくエネルギー生成システムにおいて実施されてもよい。
【0055】
この方法は、第1の圧縮機段200を通してCO2流を超臨界条件に圧縮する初期ステップと、少なくとも第2の圧縮機段300を通して超臨界CO2流を圧縮する後続ステップと、を含み、第1の圧縮ステップと第2の圧縮ステップとの間に、全圧と静圧との両方を実質的に一定に維持する低損失等エンタルピーステップ(特に、中空軸方向環状ギャップ内)がある。
【0056】
CO2流を超臨界状態に圧縮する初期ステップは、圧縮の終わりに、CO2の熱力学状態点が、T-s線図又は同等物上で、飽和ドームの外側で、CO2臨界点(Pc、Tc)のほぼ近くに位置するようなステップである。
【0057】
図5を参照すると、CO2温度-エントロピー線図が示されており、CO2臨界点(Pc、Tc)が飽和ドームの上部の黒点として強調されている。本明細書に開示される方法によれば、CO2流を圧縮する初期ステップの後に、CO2の熱力学的状態点、すなわち、少なくとも2つの状態変数(例えば、温度と圧力)によって定義されるCO2の熱力学的状態を表す点は、飽和ドームの外側で、特に、CO2臨界点(Pc、Tc)より上の強調表示された領域800の周囲に位置する。
【0058】
好ましい実施形態では、第1の圧縮機段200の出口における圧力は、飽和圧力に所定の圧力マージンを加えたもの以上であり、当該圧力マージンは、第2の圧縮機段300の内部の圧力降下に関連する。
【0059】
CO2流を超臨界条件に圧縮する初期ステップの後に、超臨界CO2流を圧縮する1つ以上の後続のステップを続けることができ、好ましくは、CO2流を圧縮する初期ステップは、後続の各ステップよりもはるかに小さい圧力比を有する、ということに留意しなければならない。
【0060】
別の態様によれば、本明細書に開示される主題は、CO2流を処理するように構成された圧縮機であって、
・第1のインデューサブレード列を備える第1の回転圧縮機段であって、当該インデューサブレードが主に軸方向に延在し、前縁(210)及び後縁(220)を有する、第1の回転圧縮機段と、
・主に軸方向若しくは主に半径方向、又は軸方向と半径方向との両方に延在し、前縁(310)及び後縁(320)を有する第2のエクスデューサブレード列を備える第2の回転圧縮機段と、
・第1の回転圧縮機段と第2の回転圧縮機段との間の環状ギャップと、を備える、圧縮機に関する。
【0061】
好ましい実施形態では、インデューサの後縁(220)は、CO2流を環状ギャップに直接排出し、エクスデューサの前縁(310)は、CO2流を環状ギャップから直接受け入れる。好ましくは、インデューサの後縁(220)におけるCO2流圧力は、インデューサの前縁(210)におけるCO2流圧力よりも高い。特に、後縁(220)におけるCO2流圧力は、飽和圧力に所定の圧力マージンを加えたもの以上であり、当該圧力マージンは、第2の回転圧縮機段の内部の圧力降下に関連する。
【0062】
上述の圧力マージンは、第2の圧縮機段の内部のCO2流によって飽和状態に達することを回避することを目的とする。理論的には、圧縮機段内で圧力降下はない。しかしながら、実際には、第2のエクスデューサブレード列の前縁(310)の直後にいくらかの圧力降下が存在し得、この観点から最も危険な領域は、前縁(310)の近くの、エクスデューサブレードの負圧側にある。
【0063】
第2のエクスデューサブレード列の内側の最小圧力値は、設計選択に強く依存し、典型的には、第2の回転圧縮機段、すなわち前縁(310)における総入口圧力の90%~50%である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5