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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】誘導装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20240527BHJP
   A62B 3/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G08B27/00 A
A62B3/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021102317
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001532
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2024-01-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519097353
【氏名又は名称】パワーラインコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】719003569
【氏名又は名称】荒川 信也
(72)【発明者】
【氏名】荒川 信也
【審査官】小松崎 里沙
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-073300(JP,A)
【文献】特開2015-060338(JP,A)
【文献】特開2020-166727(JP,A)
【文献】特開平8-287370(JP,A)
【文献】特許第7324556(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00-31/00
A62B 1/00- 5/00
35/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非常口を有する同一階に居る複数の人を退避させるための報知装置において、
上記同一階に居る複数の人を撮像する撮像部と、
当該撮像部が撮像した映像にて人を検出する人検出部と、
当該人検出部が検出した上記複数の人を上記同一階上の現在の位置に基づいて複数のグループに分割するグループ化部と、
前記撮像部が撮像した映像に基づいて当該グループ内の各人の属性を認識する認識部と、
当該認識部の認識結果に基づいて上記グループ内の複数の人を複数のチームに振り分けるチーム化部と、
上記各チームの属性に基づいて上記各チームについて上記非常口を選定する非常口選定部と、
上記各チームを当該非常口選定部により選定された非常口に誘導する音声誘導部と、
を有する誘導装置。
【請求項2】
請求項1記載の誘導装置において、
上記属性が所定の年齢以上か否かに関するものであることを特徴とする誘導装置。
【請求項3】
請求項1記載の誘導装置において、
上記属性が年齢層に関するものであり、前記チーム化部は、上記グループを複数の年齢層を基に複数のチームに分割することを特徴とする誘導装置。
【請求項4】
請求項1記載の誘導装置において、
上記属性が年齢層に関するものであり、前記チーム化部は、上記グループを複数の年齢層を基に複数のチームに分割し、より高い年齢層のチームを優先して避難させるように、上記より高い年齢層のチームを他のチームより早期に避難誘導することを特徴とする誘導装置。
【請求項5】
請求項1記載の誘導装置において、
上記音声誘導の開始後所定時間内に各非常口に集まる各チームの人数を算出する人数算出部と、
前記人数算出部が算出した上記各非常口に集まる人の合計数がほぼ同一になるように上記各チームを退避させる非常口を変更する誘導変更部と、
を有する誘導装置。
【請求項6】
請求項1記載の誘導装置において、
上記音声誘導の開始後所定時間内に上記各非常口に集まる各チームの合計人数を算出する人数算出部と、
上記各非常口において人数算出部が算出した合計人数が所定数を超えているか否かを検出する密集検出部と、
当該密集検出部の判断結果に基づいて、上記各チームを退避させる非常口を変更する誘導変更部と、
を有する誘導装置。
【請求項7】
複数の非常口を有する同一階に居る複数の人を退避させるための報知装置において、
上記同一階に居る複数の人を撮像する撮像部と、
当該撮像部が撮像した映像にて人を検出する人検出部と、
当該人検出部が検出した上記複数の人を上記同一階上の現在の位置に基づいて複数のグループに分割するグループ化部と、
前記撮像部が撮像した映像に基づいて当該グループ内の各人の属性を認識する認識部と、
当該認識部の認識結果に基づいて上記グループ内の複数の人を複数のチームに振り分けるチーム化部と、
上記同一階の非常口の位置を検知する非常口検知部と、
発生した火災の位置を検出する火災検出部と、
上記各チームの属性及び当該火災検出部が検出した火災の位置に基づいて、上記各チームについて当該非常口検知部が検知した非常口を選定する非常口選定部と、
上記各チームを当該非常口選定部により選定された非常口に誘導する音声誘導部と、
を有する誘導装置。
【請求項8】
複数の非常口を有する同一階に居る複数の人を退避させるための報知装置において、
上記同一階に居る複数の人を撮像する撮像部と、
当該撮像部が撮像した映像にて人を検出する人検出部と、
当該人検出部が検出した上記複数の人を上記同一階上の現在の位置に基づいて複数のグループに分割するグループ化部と、
前記撮像部が撮像した映像に基づいて当該グループ内の各人の属性を認識する認識部と、
当該認識部の認識結果に基づいて上記グループ内の複数の人を複数のチームに振り分けるチーム化部と、
上記同一階の非常口の位置を検知する非常口検知部と、
上記各チームの属性に基づいて上記各チームについて当該非常口検知部が検知した非常口を選定する非常口選定部と、
上記各チームを当該非常口選定部により選定された非常口に誘導する音声誘導部と、
上記各非常口において人数算出部が算出した合計人数が所定数を超えているか否かを検出する密集検出部と、
当該密集検出部の検出結果に基づいて、上記各チームが誘導される非常口を変更する誘導変更部と、
前記音声誘導部による誘導の開始後、前記密集検出部が上記各非常口に集まっている人数が所定の数を超えていると検出した場合、当該非常口に集まった複数の人を上記チーム毎に新たな非常口を前記誘導変更部に設定させ、前記音声誘導部によって上記新たに設定された非常口を指示させる制御部と、
を有する誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型商業施設や高層ビルディングにおける避難誘導に関する技術に係り、特に、地震、火災等による避難者を誘導するための誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数の経路を有するビルにおいて、上記複数の経路で発生する事象の状態について各種の情報を収集し、火災の進展と人の配置とに基づき、各避難経路の安全度を算出し、最も安全性の高い避難経路を決定する技術が開示されている。よって、上記安全度には、経路の構造、煙の流れ方向、火炎の向き等を基に避難状況がシュミレーションされて、通路の安全性が評価されている。
【0003】
しかしながら、同一階の複数の避難口に対して、複数の避難者が適切に振り分けられ、避難者が安全かつ迅速に避難できるように、避難者を如何に誘導すべきかについてのシュミレーションはなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-309456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上、述べたように、上記特許文献の技術では、同一階の複数の避難口から如何に複数の避難者を振り分けて避難させるための報知が十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するために、以下の新たな発明を創作した。
【0007】
本発明の請求項1においては、複数の非常口を有する同一階に居る複数の人を退避させるための報知装置において、上記同一階に居る複数の人を撮像する撮像部と、当該撮像部が撮像した映像にて人を検出する人検出部と、当該人検出部が検出した上記複数の人を上記同一階上の現在の位置に基づいて複数のグループに分割するグループ化部と、上記撮像部が撮像した映像に基づいて当該グループ内の各人の属性を認識する認識部と、当該認識部の認識結果に基づいて上記グループ内の複数の人を複数のチームに振り分けるチーム化部と、上記同一階の非常口の位置を検知する非常口検知部と、上記各チームの属性に基づいて上記各チームについて当該非常口検知部が検知した非常口を選定する非常口選定部と、上記各チームを当該非常口選定部により選定された非常口に誘導する音声誘導部と、を有する。
【0008】
この構成により、グループ分け、更に、そのグループ内の細分化であるチーム分けが迅速にかつ的確に行われることにより、適切な避難誘導が早期に実現できる。
【0009】
また、本発明の請求項2においては、上記属性が所定の年齢以上か否かに関するものである。
【0010】
この構成により、年齢によって、避難における判断力の差による判断時間の差及び体力の差による退避時間の差が生じるために、年齢層に基づいてチーム分けがなされることにより、短時間における適切な避難口への誘導が可能となる。
【0011】
また、本発明の請求項3においては、上記属性が年齢層に関するものであり、上記チーム化部は、上記グループを複数の年齢層を基に複数のチームに分割する。
【0012】
この構成により、年齢層によって、避難における判断力の差による判断時間の差及び体力の差による退避時間の差が生じるために、年齢層に基づいて複数のチームへのチーム分けがなされることにより、短時間における適切な避難口への誘導が可能となる。
【0013】
本発明の請求項4においては、上記属性が年齢層に関するものであり、上記チーム化部は、上記グループを複数の年齢層を基に複数のチームに分割し、より高い年齢層のチームを優先して避難させるように、上記より高い年齢層のチームを他のチームより早期に避難誘導する。
【0014】
この構成により、年齢層によって、避難における判断力の差による判断時間の差及び体力の差による退避時間の差が生じるために、年齢層に基づいて複数のチームへのチーム分けがなされ、高い年齢層のチームを優先的に避難させることにより、避難者全員を短時間において適切な避難口へ誘導することが可能となる。
【0015】
また、本発明の請求項5においては、上記音声誘導の開始後所定時間内に各非常口に集まる各チームの人数を算出する人数算出部と、上記人数算出部が算出した上記各非常口に集まる人の合計数がほぼ同一になるように上記各チームを退避させる非常口を変更する誘導変更部と、を有する。
【0016】
この構成により、各非常口に集まる避難者の数を平滑化(平均化)することができ、短時間に避難者全員の避難を達成する可能性を高めることができる。
【0017】
本発明の請求項6においては、上記音声誘導の開始後所定時間内に上記各非常口に集まる各チームの合計人数を算出する人数算出部と、上記各非常口において人数算出部が算出した合計人数が所定数を超えているか否かを検出する密集検出部と、当該密集検出部の判断結果に基づいて、上記各チームを退避させる非常口を変更する誘導変更部と、を有する。
【0018】
この構成により、上記各非常口に集合した避難者の数が予め設定された合計人数を超えた場合には、その非常口における避難時間が想定より長くなる場合が多いために、そのような状況が発生することを防止することによって、短時間で多くの避難者の安全かつ迅速な避難誘導を達成することができる。
【0019】
また、本発明の請求項7においては、複数の非常口を有する同一階に居る複数の人を退避させるための報知装置において、上記同一階に居る複数の人を撮像する撮像部と、当該撮像部が撮像した映像にて人を検出する人検出部と、当該人検出部が検出した上記複数の人を上記同一階上の現在の位置に基づいて複数のグループに分割するグループ化部と、上記撮像部が撮像した映像に基づいて当該グループ内の各人の属性を認識する認識部と、当該認識部の認識結果に基づいて上記グループ内の複数の人を複数のチームに振り分けるチーム化部と、上記同一階の非常口の位置を検知する非常口検知部と、発生した火災の位置を検出する火災検出部と、上記各チームの属性及び当該火災検出部が検出した火災の位置に基づいて、上記各チームについて当該非常口検知部が検知した非常口を選定する非常口選定部と、上記各チームを当該非常口選定部により選定された非常口に誘導する音声誘導部と、を有する。
【0020】
この構成により、上記非常口選定部は、各チームの属性及び火災検出部が検出した火災の位置に基づいて、各チームについて非常口検知部が検知した非常口を選定するために、短時間で多くの避難者を安全に退避させるための避難誘導が可能となる。
【0021】
更に、本発明の請求項8においては、複数の非常口を有する同一階に居る複数の人を退避させるための報知装置において、上記同一階に居る複数の人を撮像する撮像部と、当該撮像部が撮像した映像にて人を検出する人検出部と、当該人検出部が検出した上記複数の人を上記同一階上の現在の位置に基づいて複数のグループに分割するグループ化部と、上記撮像部が撮像した映像に基づいて当該グループ内の各人の属性を認識する認識部と、当該認識部の認識結果に基づいて上記グループ内の複数の人を複数のチームに振り分けるチーム化部と、上記同一階の非常口の位置を検知する非常口検知部と、上記各チームの属性に基づいて上記各チームについて当該非常口検知部が検知した非常口を選定する非常口選定部と、上記各チームを当該非常口選定部により選定された非常口に誘導する音声誘導部と、上記各非常口において人数算出部が算出した合計人数が所定数を超えているか否かを検出する密集検出部と、当該密集検出部の検出結果に基づいて、上記各チームが誘導される非常口を変更する誘導変更部と、上記音声誘導部による誘導の開始後、上記密集検出部が上記各非常口に集まっている人数が所定の数を超えていると検出した場合、当該非常口に集まった複数の人を上記チーム毎に新たな非常口を上記誘導変更部に設定させ、上記音声誘導部によって上記新たに設定された非常口を指示させる制御部と、を有する。
【0022】
この構成により、例えば、上記属性を年齢とした場合には、年齢別の運動能力の相違に基づいて、避難するための非常口を選定することにより、避難する人達の円滑な流れを作り、安全にかつ短時間に避難者を非常口から避難させることができる。更に、誘導指示に従わない避難者によって、一部の非常口の避難の停滞が予想された場合であっても、新たな誘導指示が発せられることによって、事態を収拾し、迅速かつ的確な避難が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、特に、高層階のビルや大型商業施設において、火災や地震が発生した際に、同一の階の多数の避難者を迅速かつ安全に非常口に誘導し、避難させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態における誘導装置の構成ブロック図
図2】本発明の実施の形態における誘導装置の動作フローチャート
図3】本発明の実施の形態における誘導装置の動作フローチャート
図4】本発明の実施の形態における誘導装置の配置図
図5】本発明の実施の形態における各グループ内の各チーム編成を示す図表
図6】本発明の実施の形態における各非常口の避難者の集合人数を示す図表
図7】本発明の実施の形態におけるPLC端末の外観図
図8】本発明の実施の形態における別のPLC端末の外観図
図9】本発明の実施の形態における誘導経路を示す図
図10】本発明の実施の形態におけるPLC端末の表示を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の誘導装置の実施の形態に関して詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態)
図1は、本発明の誘導装置の実施例における構成ブロック図である。
また、図4では、本発明の誘導装置を配置した大型商業施設の4階の平面が示されている。尚、本発明は、その他高層ビル、大型総合病院、地下鉄の駅等の多くの人が集合する建物に適している。
先ず、図1の撮像部1は、カメラ機能を有し、分割された区画(図4参照:A1からA6)にそれぞれ2台(C1からC10)が設置されている。人検出部2は、撮像部1が撮像した映像を基に人の形状及び動きを検知して人を検出する。よって、人検出部2は、赤外線検知機能のカメラや人感センサーを用いてもよい。
【0027】
グループ化部3は、図4に示すように、同じ階のフロアが6つの区画(A1からA6)に分けられ、人検出部2が検出した同一区画の単一又は複数の人々を同一のグループのメンバーとする。認識部4は、各グループに割り当てられた人について、撮像部1の映像を基に各種の認識を行う。この認識では、顔認証によって年齢層が高いか低いか、具体的には、55歳程度以下か以上かによって分類する。更に、この認識は、人の顔認証及び身長によって大人又は子供に分類する。更に、この認識は、顔や体型から男女の分類も行う。尚、これらの認識には、AI(Artificial Intelligence)技術を用いている。
【0028】
チーム化部5は、上述の認識結果によって、グループ内の複数の人を上記各チームに分類する。この分類の方法では、子供チーム(12歳未満)、若年チーム(12歳以上55歳以下)、高齢チーム(55歳以上)、及び、親子チーム(上記子供を含むチーム)に分けることができ、更に、この認識技術では、補助具が必要な人も杖や車椅子を使用していることを検知することによって、要介護者又は非健常者を要介護チームとして分類する。
【0029】
非常口検出部6は、同一階のどの位置に非常口(E1からE4)が存在するかを記憶した記憶部13からフロア毎に検出する。本実施例における非常口(E1からE4)は、図4を参照して、フロアの中心から4方向に相互に離隔して各1つ設けてある。尚、記憶部13に格納された各非常口の情報については、当該非常口を出た後の階段の段数やその階段が急であるか又はなだらかであるかという階段の属性に基づく避難の容易性についての情報も格納されている。
【0030】
非常口選定部7は、非常口検出部6が検出した非常口から避難者の状況に応じた非常口を選定する(詳細は後述)。人数算出部8は、後述する誘導によって各非常口に集まる複数の人の数を事前に算出する。誘導変更部9は、人数算出部8の算出結果によって、例えば、1つの非常口から所定時間に脱出できない程度の複数の人が集まることが算出される場合等に、各チームの全体又は一部の誘導先を変更する。
【0031】
密集検知部10は、一旦、誘導指示が行われた後の所定時間内に所定人数以上の人が各非常口に集合しているか否かを検知する。
【0032】
音声誘導部(スピーカ部)11は、音声アナウンスによって避難者を非常口に誘導する。また、光誘導部(表示部)12は、光、文字記号、イラスト等によって避難者を非常口に誘導する。
【0033】
尚、本実施例では、上述の音声誘導部11及び光誘導部12を内蔵するPLC端末(PL1からPL20)を各区画にそれぞれ2台設置する。各PLC端末は、PLC(Power Line Communication)技術によって、この建物の管理センターに設置された制御部14に電力線を介して接続されている。よって、管理センター内の制御部14を内蔵する管理装置は、更に、グループ化部3、認識部4、チーム化部5、非常口検出部6、非常口選出部7、人数算出部8、そして記憶部13を内蔵している。従って、各フロアに管理装置から遠隔して設置されているPLC端末には、人検出部2、音声誘導部11及び光誘導部12が組み込まれている。尚、このPLC端末に撮像部1を組み込んでもよい。
火災地震検知部14は、熱検知による火災検知また振動による地震検知により火災や地震を検知するとその検知信号を制御部15に異常検知信号として送信する。また、上記検知の他に、他の外部の検知機からの異常検知情報を受信して制御部15に異常検知信号を送信することもできる。尚、制御部15は、上述の各部の制御を行う。
【0034】
以下、本発明の誘導装置の実施例の動作について、図2及び図3のフローチャートを参照しながら、詳細に説明する。
図4を参照して、建物の4階フロアには、その中央に店舗B1及びB2が設けられている。その店舗の北東方向に非常口E1、南西方向に非常口E2、北西方向に非常口E3、そして南東方向に非常口E4が設けられている。
【0035】
ここで、1つの区画については、例えば、区画A1には、非常口E3、カメラ(撮像部1:C1、C2)、PLC端末(音声誘導部11、光誘導部12:PL1からPL4)が設けられている。
本フロア(4階)の各カメラ(撮像部1)は、対応する各区画の撮像範囲内における複数の人を常時撮像し(ステップ1)、その映像を基に、上述のように、人検出部2は人を検出し、人検出部2が検出した人について区画毎にグループ化し(ステップ2)、認識部4は、その各グループ内における複数の人について認識を行い(ステップ3)、その結果によってチーム化部5が各チームに分類する(ステップ4)。尚、この分類は、所定時間経過毎に繰り返されている(ステップ6)。
【0036】
また、本実施例の避難誘導のための基本条件(以下、「誘導基本ルール」)として、以下の項目がある。尚、子供チームとは、子供のみのチームである。
(a) 要介護チームは、最も近い非常口へ。
(b) 子供チーム及び高齢チームは、次に近い非常口へ。
(c) 若年チームは、最も遠い非常口へ。
(d) 子供連れの親子は、子供チームと同等に扱う。
また、各チームの誘導における優先順位は、以下の通りである。
優先度が高い順に、(1)要介護チーム、(2)高齢チーム、(3)子供チーム、親子チーム、(4)若年チームとする。従って、最初に、上記(1)要介護チームを避難誘導し、次に、上記(2)高齢チーム、次に、上記(3)子供チーム及び親子チーム、そして最後に、上記(4)若年チームに対する誘導となる。
更に、記憶部13に格納されている誘導ルールには、「誘導サブルール」があり、詳細は、本実施例の動作に沿って説明する。
【0037】
上述のステップ1から5は、定期的に動作しており、各グループ内の各チームは、所定時間毎に編成される。よって、図5を参照して、定期的に各グループの総数及び各チームの総数が算出されて、記憶部13に格納される各チームの編成は、所定時間毎に更新される。また、記憶部13には、更に、各フロアの各非常口が使用可能か否かが登録されている(図示せず)。更に、各非常口には、フロア上の避難者全員が所定の時間内に避難できるように、集合する人数に対して所定人数以下のルールが設定される(詳細は後述)。この所定人数は、火災の出火地点Hを有する区画(火災の発生区画)、上記発生区画に隣接する区画、更に離隔する区画の順に多くなるように設定される。
【0038】
ここで、店舗B2内のH地点にて火災が発生して出火したとすると、火災地震報知部14やカメラC4が炎や煙を検知する(ステップ6)。
先ず、その検知結果を受けた制御部14は、非常口検出部6に使用可能な非常口を確認させ、かつ、各区画における各チームの編成状況を確認する。この場合、すべての非常口(E1からE4)が使用可能と判断されたとする(ステップ7)。ここで、上述の各非常口の所定人数は、非常口E1からE4について、それぞれ300名、500名、350名、350名に設定されている。
尚、これらの所定の人数は、出火地点Hの位置、各グループの各チーム編成状況により変更される。例えば、出火地点Hが両方の店舗(B1、B2)の中間地点であれば、各非常口の所定の人数は同数となり、チーム編成において、高齢チームの人数が多い場合には、避難に時間がかかることによって、所定の人数は少なくなる。
【0039】
次に、火災発生地点Hに近い区画A3及びA6について、各チームの避難のための非常口を選定する。以下に、その選定について詳細に説明する(ステップ8)。
【0040】
図5を参照して、現在、上記2つの区画A3及びA6の各チームの構成は、以下の通りとなっている。
(1)区画A3のグループG3
子供チーム28人、若年チーム92人、高齢チーム78人、親子チーム93名、及び、要介護チーム2人
(2)区画A6のグループG6
子供チーム30人、若年チーム169人、高齢チーム43名、親子チーム105名、及び要介護チーム0人
【0041】
上記チーム編成によって、上述の誘導方針に沿って各チームが避難する非常口が決定される。グループG3については、出火地点Hに隣接する区画A3内の非常口E1及び区画A3に隣接する区画A6の非常口E4が選定される。
本実施例では、1つのグループ内の複数の避難者を2つのチームに分け、2つの非常口を決定することにする。よって、1つのグループ内の複数の避難者を3以上のチームに分けて、3つの非常口に振り分けて避難させてもよい。
【0042】
ここで、図6には、各グループの各チームがそれぞれどの非常口に誘導されるかが示されている。
よって、グループG3については、要介護チーム2名、子供チーム28名、高齢チーム78名、及び、家族チーム93名の総勢201名は、非常口E1に誘導される(図6参照)。
また、若年チーム92名は、非常口E4に誘導される(図6参照)。
尚、要介護者には、通常1人の介護者が付いているが、まとめて1人と計算する。
【0043】
一方、グループG6については、区域A6内の非常口E4と、出火地点Hを含む区画A3から離隔する区画A4内の非常口E2が選定される。ここで、区画A6に隣接する区画A3の非常口E1が選定されないのは、グループG6の避難者を避難させる場合、区画A6には、非常口E4が有り、更に、出火地点Hから所定距離(50メートル)以上離隔した区画A4のE2の方が安全であるためである(誘導サブルール)。
よって、グループG6については、子供チーム30名、家族チーム105名、高齢チーム43名の総勢178名は、非常口E4に誘導される(図6参照)。
また、若年チーム169名は、非常口E2に誘導される(図6参照)。
【0044】
次に、区画A5のグループG5については、出火地点Hが区画A5に隣接しない区画A3であるために、区画A5に隣接する区画A6内の非常口E4及び区画A4内の非常口E2が選定候補として挙げられる。
そこで、現在、区画A5に居る避難者全員を出火地点Hから遠い非常口E2のみを選定するか、又は、出火地点Hは、非常口E4まで所定の距離(50メートル)以上離隔していることから、区画A5については、非常口E2及びE4を選定するかを判断する。
【0045】
本実施例では、非常口選定部7は、区域A5の避難者の総数が64名と少なく、区画A5から各非常口E2及びE4は、ほぼ同じ距離だけ離隔しており、かつ、非常口E4に集合する避難者数が避難者の所定人数より多いと判断して(図6参照)、非常口E2のみを選定したとする(誘導サブルール)。この場合の避難者の所定人数は、出火地点Hを含む区画に隣接する区画に設置された非常口に集合する人数は多いために、上記所定人数は300名と少なめに設定されている。
【0046】
よって、グループG5については、要介護チーム1名、高齢チーム15名、子供チーム2名、家族チーム25名、若年チーム21名の総勢64名は、非常口E2に誘導される(図6参照)。
【0047】
次に、区画A2のグループG2については、出火地点Hがある区画A3に隣接する区画であるために、区画A3から離隔する方向にある区画A1の非常口E3及び区画A4にある非常口E2が選定される(誘導サブルール)。
よって、グループG2については、要介護チーム1名、子供チーム43名、家族チーム7名、及び、高齢チーム34名を合わせた総勢85名は、非常口E3に誘導される。
また、若年チーム234名は、非常口E2に誘導される(図6参照)。
【0048】
次に、区画A4のグループG4については、区画A4には、非常口E2が配置されており、グループGの総人数も所定人数100名(全チーム同一基準)より45名と少ないために、グループG4の45名全員がこの非常口E2に誘導される(図6参照)(誘導サブルール)。
【0049】
また、区画A1のグループG1については、出火点Hの区画A3から1つの区画をおいて離隔しており、その出火点Hからの距離も所定距離(50メートル)より長く、グループ総勢の人数も189名と少ないために、避難時間も短いことが予想される(誘導サブルール)。
よって、グループA1については、総勢189名を非常口E3から脱出させることになる(図6参照)。
【0050】
しかし、ここで、図6を参照して、非常口E2に集合する総人数が所定人数500名を超えていることが分かる。よって、誘導変更部9は、各非常口の集合人数の平均化(又は平滑化)を図り、移動速度が最も速い若年チームを含むグループG2の若年チーム234名を2分割して、約半分の人数である120名を非常口E3に誘導することとする(誘導サブルール)。
【0051】
また、非常口E2について所定人数500名を超えていることから、密集検出部10は、それを検出した場合、グループG2の移動速度が最も速い若年チームを含むグループG2の若年チーム234名を3分割して、約80名の分割チームを非常口E2、E3及びE4にそれぞれ誘導することもできる(誘導サブルール)。この場合、1つの分割チームを出火地点Hの区画A3に隣接する区画A6に移動させる際には、出火地点Hからの延焼や有毒な煙が区画A6に及んでいないことが必要である。これらの検知には、撮像部1(カメラ)や火災地震検知部14又は煙検知機(図示せず)を用いることが有効である。
【0052】
以上のように、ステップ8において、各グループの各チームがどこの非常口に誘導されるかが決定された後、ステップ9にて、音声誘導部11及び光誘導部12が避難者全員を決定された各非常口に誘導を行う。
即ち、音声誘導部11は、要介護チーム、高齢チーム、親子チーム及び供チーム、若年チームの順に、音声アナウンスによって誘導を行う。
【0053】
例えば、図7(A)を参照して、PLC端末の音声誘導部11のスピーカ部11Sは、先ず、「火災が発生しました。これから、要介護の人を先頭に、55歳以上の高齢者の方々、子供達の後に親子連れの方、そして、55歳以下の若い方の順に、安全に出口まで誘導致します。」とアナウンスする。
また、PLC端末の光誘導部12の5個の誘導ランプは、要介護チームには青色、子供チームには緑色、高齢チームには赤色、親子連れチームには緑色、若年チームには黄色が割り当てられ、更に、各誘導ランプが3つに分割されて水平方向に並び、それぞれ決定された非常口に向けて順次点灯するように誘導する(図7の12A、12B、12C参照)。
更に、例えば、PLC端末が非常口まで水平方向に3体並んでいる場合、その3体のPLC端末の上記分割された9個の誘導ランプが非常口まで順次点滅するようにすることもできる。
また、例えば、図7(B)を参照して、水平に並んだ3体のPLC端末の矢印の誘導ランプを非常口まで順次点滅させてもよい。本PLC端末の光誘導部(表示部)は、上記(A)及び(B)の両方の表示が可能であり、任意に切換設定ができる。
よって、次の音声アナウンスは、「要介護の方は、青色の点滅ランプに沿って出口に向かって下さい。」等の誘導となる。また、次の音声アナウンスは、所定時間後に、「55歳以上の方々は、赤色の点滅ランプに沿って出口に向かって下さい。」となる。
ここで、上記所定の時間とは、各チームの避難する人々が出口に達するまでの距離の8割に達する時間であり、避難路毎に計算されて記憶部13に記録されている。また、上記8割の位置に人が達したことを検出するには、撮像部1の映像に基づいて又は人検出部2の検出結果に基づいて密集検出部10が行うことができる。
【0054】
ここで、人の防衛本能から、火事と聞いてパニックとなり、避難誘導を無視して、視野に入った非常口に殺到する避難者も想定され、その対処を説明する。
ステップ10において、本実施例では、火災を検知して避難者全員が非常口から脱出に要する時間を10分と設定している。そこで、火災検知から5分後に、密集検出部10は、人数算出部8が算出した上述の各非常口に集合した人数が所定人数(例えば、E4は350人)を超えたことを検出した場合、チーム化部5は、その非常口に集合した避難者のうちの若年者について若年チームを再編成し、出火地点Hから離れた最寄りの非常口に誘導する。
【0055】
この場合、音声誘導部11は、「この非常口は、大変混み合いました。若い方(又は、若い女性の方)は、左手奥の非常口に回って下さい。これから、光ランプのオレンジ色によって誘導致します。」と音声アナウンスする。
【0056】
ステップ11では、撮像部1(カメラ)が各区画に人が居ないか監視し、もし、人が居れば、その人に向けて、最も安全な非常口を選定して音声と光によって誘導することになる。
【0057】
また、図8を参照して、本実施の形態のPLC端末の別の形態として、略立方体形状のPLC端末を構成することができる。このPLC端末は、互いに電灯線通信により接続されており、制御部15からの信号により、上下、左右、左折、右折の矢印表示が可能である。その下面には、スピーカ部11の出力部が設けられ、その4つの側面には、表示部12(AからD)が設けられている。
図9を参照して、本PLC端末は、通路の分岐点の天井部分に取り付けられており、例えば、避難経路(避難ルート)が丸1から丸4までとすると、各分岐点に取り付けられたPLC端末の表示部には、図10に示すような矢印が点滅するようになっている。
【0058】
尚、上述の実施例では、火事の発生に対する避難誘導について説明したが、地震の発生の場合には、火事における出火地点Hを特定(検出)する必要がないために、火事発生よりも簡潔な避難誘導となるが、上述の各ルールは、その必要に応じて適用されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の誘導装置は、ビルディング、その他の施設等に配置され、安全かつ迅速に避難者を誘導することが出来る装置であるため、高い産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0060】
1 撮像部
2 人検出部
3 グループ化部
4 認識部
5 チーム化部
6 非常口検出部
7 非常口選定部
8 人数算出部
9 誘導変更部
10 密集検出部
11 音声誘導部(スピーカ部)
12 光誘導部(表示部)
13 記憶部
14 火災地震検知部
15 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10