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特許7493716ロボット制御装置、ロボット制御方法及びロボット制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ロボット制御装置、ロボット制御方法及びロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020106345
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001386
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】517135833
【氏名又は名称】Telexistence株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134094
【弁理士】
【氏名又は名称】倉持 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐野 元紀
(72)【発明者】
【氏名】水品 友祐
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196054(JP,A)
【文献】特開2005-186650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0102965(US,A1)
【文献】特開平05-162856(JP,A)
【文献】特開平10-156775(JP,A)
【文献】特開2012-000692(JP,A)
【文献】特開2018-147138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保持する保持手段を含む腕部を有するロボットを制御するロボット制御装置であって、
前記ロボットの操作者の動作に応じた動作情報を受信する動作情報受信部と、
前記動作情報受信部が受信した前記動作情報に基づいて、前記操作者の動作に追従した動作を行うように前記ロボットを制御する動作制御部と、
を有し、
前記動作制御部は、前記保持手段の向きを変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信したとしても、前記保持手段の向きを変更しないように前記腕部を制御
前記ロボットは、前記保持手段として前記物品を吸着する吸着部を有し、前記物品を挟持するための挟持部を有しない第1腕部と、前記吸着部を有さずに前記挟持部を有する第2腕部と、を有し、
前記動作制御部は、前記保持手段の向きを変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信したとしても、前記第1腕部の前記吸着部の向きを変更しないように前記第1腕部を制御し、前記保持手段の向きを変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信した場合に、前記動作情報に基づいて前記第2腕部の前記挟持部の向きを変更するように前記第2腕部を制御する、
ロボット制御装置。
【請求項2】
前記保持手段の角度である保持角度を決定する角度決定部をさらに有し、
前記動作制御部は、前記保持角度を変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信したとしても、決定された前記保持角度を維持するように前記腕部を制御する、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記ロボットが実行する作業の内容又は前記ロボットが前記保持手段で保持する前記物品を特定する特定部をさらに有し、
前記角度決定部は、前記特定部が特定した前記作業の内容又は前記物品に関連付けて記憶部に記憶された基準保持角度に基づいて前記保持角度を決定する、
請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記ロボットが実行する作業の内容又は前記ロボットが前記保持手段で保持する前記物品を特定する特定部をさらに有し、
前記動作制御部は、前記作業の内容又は前記物品に関連付けて記憶部に記憶された基準関節角度に基づいて、前記保持手段の角度を変化させるための前記ロボットの関節部の角度を変化させる、
請求項1又は2に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記ロボットが実行する作業の内容又は前記ロボットが前記保持手段で吸着する前記物品を特定する特定部をさらに有し、
前記動作制御部は、前記作業の内容又は前記物品に基づいて前記保持手段を介して前記物品を吸着する際の吸引力を制御する、
請求項1又は2に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けた場合に、前記動作情報に基づいて前記保持手段の向きを変更せず、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けていない場合に前記動作情報に基づいて前記保持手段の向き
を変更する、
請求項1からのいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けた場合に、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けていない場合よりも遅い速度で前記腕部を動かす、
請求項1からのいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項8】
前記保持手段と前記物品との位置関係を特定する位置特定部をさらに有し、
前記動作制御部は、前記位置特定部が特定した前記位置関係に基づいて、前記保持手段を介して前記物品を保持するか否かを決定する、
請求項1からのいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項9】
前記保持手段と前記物品との位置関係を特定する位置特定部をさらに有し、
前記動作制御部は、前記位置関係に基づいて前記保持手段と前記物品が有する平面との方向差が閾値未満である場合に前記保持手段の向きを変更せず、前記方向差が前記閾値以上である場合に前記動作情報に基づいて前記保持手段の向きを変更するように前記腕部を制御する、
請求項1からのいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項10】
前記保持手段が、前記物品を吸着する吸着部を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項11】
前記吸着部における空気流入量に基づいて前記物品を吸着できたか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を前記操作者が視認可能な表示部に表示させる表示処理部と、
をさらに有する、
請求項10に記載のロボット制御装置。
【請求項12】
前記保持手段の向きの変更ができない間、前記保持手段の向きの変更ができないことを、前記操作者が視認可能な表示部に表示させる表示処理部をさらに有する、
請求項1から11のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項13】
物品を保持する保持手段を含む腕部を有するロボットを制御するロボット制御方法であって、
前記ロボットは、前記保持手段として前記物品を吸着する吸着部を有し、前記物品を挟持するための挟持部を有しない第1腕部と、前記吸着部を有さずに前記挟持部を有する第2腕部と、を有し、
前記ロボットの操作者の動作に応じた動作情報を作成するステップと、
前記動作情報が前記保持手段の向きを変更させるための情報であるか否かを判定するステップと、
前記動作情報が前記保持手段の向きを変更させるための情報でない場合に前記動作情報に従って前記第1腕部及び第2腕部を制御し、前記動作情報が前記保持手段の向きを変更させるための情報である場合に前記第1腕部の前記吸着部の向きを変更しないように前記第1腕部を制御し、かつ前記動作情報に基づいて前記第2腕部の前記挟持部の向きを変更するように前記第2腕部を制御するステップと、
を有するロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを制御するためのロボット制御装置、ロボット制御方法及びロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等の作業場において、ロボットを用いて商品の陳列等の作業を行うシステムの導入が進められている。特許文献1には、ロボットが商品棚に商品を配置する作業を行うためのシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-147138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットが商品を配置する作業を行う際に、ロボットの手に商品を吸着させたりロボットの手で商品を挟持させたりすることにより、ロボットが商品を保持する場合がある。操作者の動きに追従してロボットが動作する場合、ロボットの手に商品を保持させるために操作者が手の向きを商品の向きに合わせるための作業に時間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、遠隔操作をするロボットに物品を保持させる作業の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のロボット制御装置は、物品を保持する保持手段を含む腕部を有するロボットを制御するロボット制御装置であって、前記ロボットの操作者の動作に応じた動作情報を受信する動作情報受信部と、前記動作情報受信部が受信した前記動作情報に基づいて、前記操作者の動作に追従した動作を行うように前記ロボットを制御する動作制御部と、を有し、前記動作制御部は、前記保持手段の向きを変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信したとしても、前記保持手段の向きを変更しないように前記腕部を制御する。
【0007】
前記ロボット制御装置は、前記保持手段の角度である保持角度を決定する角度決定部をさらに有し、前記動作制御部は、前記保持角度を変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信したとしても、決定された前記保持角度を維持するように前記腕部を制御してもよい。
【0008】
前記ロボット制御装置は、前記ロボットが実行する作業の内容又は前記ロボットが前記保持手段で保持する前記物品を特定する特定部をさらに有し、前記角度決定部は、前記特定部が特定した前記作業の内容又は前記物品に関連付けて記憶部に記憶された基準保持角度に基づいて前記保持角度を決定してもよい。
【0009】
前記ロボット制御装置は、前記ロボットが実行する作業の内容又は前記ロボットが前記保持手段で保持する前記物品を特定する特定部をさらに有し、前記動作制御部は、前記作業の内容又は前記物品に関連付けて記憶部に記憶された基準関節角度に基づいて、前記保持手段の角度を変化させるための前記ロボットの関節部の角度を変化させてもよい。
【0010】
前記ロボット制御装置は、前記ロボットが実行する作業の内容又は前記ロボットが前記保持手段で吸着する前記物品を特定する特定部をさらに有し、前記動作制御部は、前記作業の内容又は前記物品に基づいて前記保持手段を介して前記物品を吸着する際の吸引力を制御してもよい。
【0011】
前記ロボットは、前記保持手段として前記物品を吸着する吸着部を有し、前記物品を挟持するための挟持部を有しない第1腕部と、前記吸着部を有さずに前記挟持部を有する第2腕部と、を有し、前記動作制御部は、前記保持手段の向きを変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信したとしても、前記第1腕部の前記吸着部の向きを変更しないように前記第1腕部を制御し、前記保持手段の向きを変更させるための前記動作情報を前記動作情報受信部が受信した場合に、前記動作情報に基づいて前記第2腕部の前記挟持部の向きを変更するように前記第2腕部を制御してもよい。
【0012】
前記動作制御部は、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けた場合に、前記動作情報に基づいて前記保持手段の向きを変更せず、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けていない場合に前記動作情報に基づいて前記保持手段の向きを変更してもよい。
【0013】
前記動作制御部は、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けた場合に、前記保持手段により前記物品を保持するための指示を受けていない場合よりも遅い速度で前記腕部を動かしてもよい。
【0014】
前記ロボット制御装置は、前記保持手段と前記物品との位置関係を特定する位置特定部をさらに有し、前記動作制御部は、前記位置特定部が特定した前記位置関係に基づいて、前記保持手段を介して前記物品を保持するか否かを決定してもよい。
【0015】
前記ロボット制御装置は、前記保持手段と前記物品との位置関係を特定する位置特定部をさらに有し、前記動作制御部は、前記位置関係に基づいて前記保持手段と前記物品が有する平面との方向差が閾値未満である場合に前記保持手段の向きを変更せず、前記方向差が前記閾値以上である場合に前記動作情報に基づいて前記保持手段の向きを変更するように前記腕部を制御してもよい。
【0016】
前記保持手段が、前記物品を吸着する吸着部を有してもよい。
【0017】
前記ロボット制御装置は、前記吸着部における空気流入量に基づいて前記物品を吸着できたか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果を前記操作者が視認可能な表示部に表示させる表示処理部と、をさらに有してもよい。
【0018】
前記ロボット制御装置は、前記保持手段の向きの変更ができない間、前記保持手段の向きの変更ができないことを、前記操作者が視認可能な表示部に表示させる表示処理部をさらに有してもよい。
【0019】
本発明の第2の態様のロボット制御システムは、物品を保持する保持手段を含む腕部を有するロボットを操作するための操作装置と、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、を備え、前記操作装置又は前記ロボット制御装置が、前記ロボットの操作者の動作に応じた動作情報を作成する動作情報作成部と、前記動作情報に基づいて、前記操作者の動作に追従した動作を行うように前記ロボットを制御する動作制御部と、を有し、前記動作情報作成部は、前記保持手段の向きを変更させるための操作が前記操作装置で行われた場合に、当該操作に対応する前記動作情報を作成しない。
【0020】
本発明の第3の態様のロボット制御方法は、物品を保持する保持手段を含む腕部を有するロボットを制御するロボット制御方法であって、前記ロボットの操作者の動作に応じた動作情報を作成するステップと、前記動作情報が前記保持手段の向きを変更させるための情報であるか否かを判定するステップと、前記動作情報が前記保持手段の向きを変更させるための情報でない場合に前記動作情報に従って前記腕部を制御し、前記動作情報が前記保持手段の向きを変更させるための情報である場合に前記保持手段の向きを変更しないように前記腕部を制御するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、遠隔操作をするロボットに物品を保持させる作業の効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ロボット制御システムの概要を示す図である。
図2】ロボットの保持手段の角度を調節する処理について説明するための図である。
図3】ロボット制御装置の機能構成を示す図である。
図4】記憶部が記憶しているデータの一例を示す図である。
図5】記憶部が記憶しているデータの一例を示す図である。
図6】制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[ロボット制御システムSの概要]
図1は、ロボット制御システムSの概要を示す図である。ロボット制御システムSは、遠隔地にある物が近くにあるかのように操作者Uに感じさせながら、操作者Uが物に対する操作をリアルタイムに行うことができるテレイグジスタンス環境を提供するシステムである。
【0024】
ロボット制御システムSは、ロボット制御装置1と、操作装置2と、ロボット3とを有する。ロボット制御装置1は、操作者Uの操作に応じてロボット3を制御するためのコックピット機能を有する装置であり、例えばコンピュータである。操作装置2は、操作者Uが装着するデバイスであり、表示デバイス21及び操作デバイス22を含む。表示デバイス21は、操作者Uが視認可能なディスプレイを有しており、例えばゴーグル型の表示装置である。
【0025】
操作デバイス22は、操作者Uがロボット3を操作するために用いるデバイスであり、操作者Uの動作に応じた動作情報を作成する動作情報作成部を有する。操作デバイス22は、例えば、操作者Uの身体の部位(例えば手及び腕)の動きをロボット制御装置1が検出できるようにするために、ロボット制御装置1から照射された赤外光を反射する反射部材を有する。操作デバイス22は、操作者Uの動きを検出する加速度センサーを有していてもよい。操作デバイス22は、ロボット3の状態を操作者Uが感知することができるように、ロボット3の状態に対応する熱、圧力又は振動等を発生するための素子も有する。操作デバイス22は、受けた赤外光をロボット制御装置1に向けて反射させたり、加速度センサーが検出した信号をロボット制御装置1に送信したりすることにより、操作者Uの動きをロボット制御装置1に通知する。
【0026】
ロボット3は、ネットワークNを介してロボット制御装置1から受信する制御データに基づいて動作する。また、ロボット3は、周辺を撮影可能なカメラを有しており、カメラにより生成した撮像画像データをロボット制御装置1に送信する。さらに、ロボット3は、ロボット3が検知した触覚を示す触覚データ、ロボット3が収集した音を示す音データ、又はロボット3の関節の状態を示す関節状態データの少なくともいずれかのロボット状態データをロボット制御装置1に送信する。なお、本実施の形態に係るロボット3は、一例として、多数の商品が棚に並べられた状態で販売される店舗内で、商品を棚に並べる作業を行うが、ロボット3が設けられている場所及び作業の内容は任意である。
【0027】
ロボット3は、商品を保持するために使用する保持手段として複数種類の機構を有している。ロボット3は、保持手段として物品を吸着する吸着部を有し、物品を挟持するための挟持部を有しない第1腕部(例えば右腕)と、吸着部を有さずに挟持部を有する第2腕部(例えば左腕)と、を有する。具体的には、ロボット3は、第1腕部の先に、商品を吸着させることにより商品を保持するための吸着部を有している。吸着部には、空気を吸引するための開口が形成されている。また、ロボット3は、第2腕部の先に、物品Bを挟むことにより物品Bを保持するための挟持部を有している。挟持部は、例えば人間の指のように角度が可変の複数のアクチュエータを含む。
【0028】
なお、ロボット3が有する保持手段の数、及び保持手段が装着されている部位は任意である。例えば、ロボット3が1本の腕だけを有しており、この腕に保持手段が設けられていてもよい。また、ロボット3が複数の腕のそれぞれに吸着部を有していたり、複数の腕のそれぞれに挟持部を有したりしていてもよい。
【0029】
ロボット制御装置1は、ロボット3から受信した撮像画像データに基づく画像を表示デバイス21に表示させる。また、ロボット制御装置1は、ロボット3から受信したロボット状態データに基づいて操作デバイス22を加熱したり振動させたりする。これらの構成により、操作者Uは、ロボット3から離れた場所において、あたかもロボット3に入っているかのような感覚でロボット3の周辺の環境を体感することができる。
【0030】
また、ロボット制御装置1は、操作デバイス22から送信される操作者Uの動作内容を示す動作情報に基づいて、操作者Uの動作内容を特定する。動作情報は、例えば、操作者Uの各部の動きを示す情報である。ロボット制御装置1は、例えば、赤外光を操作者Uに向けて照射し、照射した赤外光が操作デバイス22において反射した光を動作情報として用いて操作者Uの動作内容を特定する。ロボット制御装置1は、操作デバイス22が有するセンサーが検出した信号を動作情報として用いて操作者Uの動作内容を特定してもよい。ロボット制御装置1は、特定した動作内容に基づいて、ロボット3を動作させるための制御データを作成し、作成した制御データをロボット3に送信することによりロボット3の動作を制御する。なお、ロボット制御装置1が、操作デバイス22から送信されるデータに基づいて動作情報を作成する動作情報作成部を有しており、作成した動作情報に基づいてロボット3を制御してもよい。
【0031】
ところで、操作者Uがロボット3を操作して物品(例えば店舗の棚に並べる商品)を保持する必要がある場合、ロボット3が物品を保持しやすい角度に操作者Uの手の角度を調節する必要がある。表示デバイス21に表示された物品の画像を視認しながら、商品の保持に適した角度に手の角度を調節することは容易ではない。
【0032】
そこで、本実施形態に係るロボット制御装置1は、操作者Uの手の角度によらず、ロボット3が商品を保持するための保持手段の角度を、商品の保持に適した角度に固定できることを特徴としている。具体的には、ロボット制御装置1は、動作情報が示す操作者Uの手の角度によらず、ロボット3の保持手段の角度を一定の角度にするための制御データをロボット3に送信する。ロボット制御装置1がこのように動作することで、操作者Uが手の角度に要する時間がかからないので、遠隔操作をするロボットに商品を保持させる作業の効率を向上させることができる。
【0033】
図2は、ロボット3の保持手段の角度(以下、「保持角度」という場合がある)を調節する処理について説明するための図である。ロボット3は、腕本体部311と、関節部312と、保持手段313とを含む腕部31を有する。
【0034】
腕本体部311は、ロボット3の胴体に結合されている棒状の部材であり、制御データに基づいて胴体に対する角度を変化させることができる。関節部312は、腕本体部311と保持手段313との間に設けられており、角度を変化させることにより保持手段313の向き(角度)を変化させる。保持手段313は、物品Bを保持する部位である。保持手段313は、例えば、空気を吸引することにより保持手段313の表面に物品Bを保持することを可能にする吸着部、又は複数の指状のアクチュエータにより物品Bを挟持することを可能にする挟持部を有する。
【0035】
図2(a)は、保持手段313の角度が固定されておらず、操作者Uが手の角度を調節する必要がある場合を示している。操作者Uは、物品Bの表面の角度と保持手段313の表面の角度とが一致するように手の角度を調節する必要がある。
【0036】
図2(b)は、保持手段313の角度が固定されている場合を示している。このように保持手段313の角度が固定されている場合、操作者Uは、保持手段313が物品Bの上方に位置するように手を動かすだけでよいので、保持手段313の角度を調節する場合に比べて短時間で物品Bを保持することができる。
【0037】
なお、本明細書においては、図2(b)に示すように、保持手段313が鉛直方向の下方を向いている場合の保持角度を0°とし、保持手段313がロボット3の前方を向いている場合の保持角度を90°として説明する。
以下、ロボット制御装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0038】
[ロボット制御装置1の構成]
図3は、ロボット制御装置1の機能構成を示す図である。ロボット制御装置1は、第1通信部11と、第2通信部12と、動き検出部13と、操作部14と、記憶部15と、制御部16とを有する。制御部16は、データ受信部161と、表示処理部162と、状態データ処理部163と、判定部164と、動作情報受信部165と、特定部166と、角度決定部167と、位置特定部168と、動作制御部169とを有する。
【0039】
第1通信部11は、ロボット3との間で各種のデータを送受信するための通信コントローラを有する。第1通信部11は、ロボット3が送信した撮像画像データを受信し、受信した撮像画像データをデータ受信部161に入力する。また、第1通信部11は、動作制御部169から入力された制御データをロボット3に送信する。
【0040】
第2通信部12は、表示処理部162から入力された撮像画像データを表示デバイス21に送信し、状態データ処理部163から入力されたロボット状態データを操作デバイス22に送信するための通信コントローラを有する。第2通信部12は、例えばWi-Fi(登録商標)若しくはBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式、移動体通信方式、又は有線通信方式を用いて、ロボット3から受信した撮像画像データを表示デバイス21に送信し、ロボット3から受信したロボット状態データを操作デバイス22に送信する。
【0041】
動き検出部13は、操作デバイス22を装着した操作者Uの動きを検出し、検出した動きを示すデータを動作情報受信部165に入力する。動き検出部13は、例えば赤外光を発する光源と、操作デバイス22で反射した光を検出する光センサーとを有しており、光センサーから出力されるデータを動作情報受信部165に入力する。動き検出部13は、第2通信部12を介して、操作デバイス22が送信したセンサーの検出信号を取得し、取得した検出信号が示すデータを動作情報受信部165に入力してもよい。
【0042】
操作部14は、操作者U又は操作者Uの補助者による設定操作を受け付けるためのデバイスとして、ディスプレイ、マウス、キーボード又はタッチパネルを含む。操作部14は、仮想現実画像を表示するヘッドマウントディスプレイや足で操作が可能なデバイス等の他の態様のデバイスであってもよい。操作部14は、入力された設定の内容を示すデータを特定部166に入力する。なお、操作者Uは、操作部14を用いて各種の設定をするだけでなく、表示デバイス21に操作用のメニューが表示された状態で、操作内容を選択する動作をすることにより各種の設定をしてもよい。
【0043】
記憶部15は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部15は、制御部16が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部15は、制御部16がロボット3を動作させるために必要な各種のデータを記憶している。
【0044】
図4及び図5は、記憶部15が記憶しているデータの一例を示す図である。図4は、作業内容と、ロボット3が使用する保持手段313の種別、保持手段313の基準保持角度、基準吸引力、指の基準間隔及び基準握力との関係を示すデータの一例を示す図である。基準保持角度は、物品Bに対する作業を実行する際に設定される保持手段313の角度であり、保持手段313の角度を調節するための関節部312の角度(基準関節角度)に対応する。基準吸引力は、物品Bに対する作業を実行する際に設定される吸引力である。指の基準間隔は、物品Bに対する作業を実行する際に設定される挟持部の複数の指の間隔である。基準握力は、物品Bに対する作業を実行する際に設定される挟持部の指に加わる力の大きさである。
【0045】
ロボット3が、保持手段として1つの腕に複数の吸着部を有している場合、記憶部15は、作業内容と、複数の吸着部の間の基準間隔とを関連付けて記憶していてもよい。記憶部15は、作業内容と、保持手段313の角度と、複数の指の間隔又は複数の吸着部の間隔とを関連付けて記憶していてもよい。一例として、複数の吸着部を用いてサンドイッチを吸引する際に適した複数の吸着部の間隔が5cmである場合、記憶部15は、サンドイッチに関連付けて、複数の吸着部の基準間隔が5cmであることを記憶する。
【0046】
図4に示す例においては、缶飲料又はサンドイッチを補充する作業には吸着部が使用され、ペットボトル又は瓶飲料を商品棚に補充する作業には挟持部が使用されることが想定されている。缶飲料を補充する作業に対しては、図2(b)に示したように、基準保持角度が0°に設定されており、基準吸引力が「大」に設定されている。表面が斜めに傾斜しており、缶飲料よりも軽量のサンドイッチを補充する作業に対しては、基準保持角度が45°に設定されており、基準吸引力が「小」に設定されている。
【0047】
作業内容又は保持する対象の物品Bごとに、基準吸引力が数値により設定されていてもよい。缶飲料は容量によって大きさ又は重量が異なるので、缶飲料を補充する作業において、作業の対象となる缶飲料の品名又は容量に応じて異なる吸引力が設定されていてもよい。
【0048】
ペットボトルを補充する作業に対しては、指の基準間隔が「小」、基準握力が「小」に設定されており、ペットボトルよりもサイズが大きくて重い瓶飲料を補充する作業に対しては、指の基準間隔が「大」、基準握力が「大」に設定されている。ペットボトル又は瓶飲料は容量によって大きさ又は重量が異なるので、ペットボトル又は瓶飲料を補充する作業において、作業の対象となるペットボトル又は瓶飲料の品名又は容量に応じて異なる基準間隔又は基準握力が設定されていてもよい。
【0049】
図5は、ロボット3の保持手段313がどちらの腕に設けられているかを示すデータの一例を示す図である。ロボット3を識別するための情報であるロボットIDが「A-01」(例えば店舗Aの1台目)のロボット3は、挟持部が右腕に設けられており、吸着部が左腕に設けられている。ロボットIDが「B-01」(例えば店舗Bの1台目)のロボット3は、挟持部が左腕に設けられており、吸着部が右腕に設けられている。
【0050】
続いて、図3を参照しながら制御部16の詳細を説明する。制御部16は、記憶部15に記憶されたプログラムを実行することにより、データ受信部161、表示処理部162、状態データ処理部163、判定部164、動作情報受信部165、特定部166、角度決定部167、位置特定部168、及び動作制御部169して機能する。
【0051】
データ受信部161は、第1通信部11を介して、ロボット3に設けられた撮像部で生成された撮像画像データを受信する。データ受信部161は、受信した撮像画像データを表示処理部162に入力する。
【0052】
また、データ受信部161は、ロボット3が検知した触覚を示す触覚データ、ロボット3が収集した音を示す音データ、又はロボット3の関節の状態を示す関節状態データの少なくともいずれかのロボット状態データを受信する。データ受信部161は、受信したロボット状態データを状態データ処理部163に入力する。
【0053】
表示処理部162は、第2通信部12を介して、各種の情報を表示デバイス21に表示させる。表示処理部162は、例えば、データ受信部161から入力された撮像画像データに基づく画像を表示デバイス21に表示させる。
【0054】
また、表示処理部162は、保持手段313の状態に関する情報を表示デバイス21に表示させる。表示処理部162は、例えば、保持手段313の向き(すなわち角度)の変更ができない間、保持手段313の向きの変更ができないことを表示デバイス21に表示させる。表示処理部162がこのような情報を表示デバイス21に表示させることで、操作者Uが、手の角度を動かしても保持手段313の角度が変化しないために戸惑うことを防止できる。
【0055】
表示処理部162は、動作制御部169の指示に基づいて、保持手段313の角度を変更しないと物品Bを保持できないということを表示デバイス21に表示させてもよい。表示処理部162は、例えば、保持手段313が有する吸着面と物品Bの表面とが平行でない場合に、「保持手段の角度を変更する必要があります」と表示し、操作者Uが手の角度を動かして保持手段313の角度を調節するように促す。
【0056】
また、表示処理部162は、状態データ処理部163から入力された、保持手段313が適切に動作しているかに関する判定結果を表示デバイス21に表示させてもよい。表示処理部162は、例えば、保持手段313が吸着部である場合に、物品Bが適切に吸着できているか否かを表示し、保持手段313が挟持部である場合に、挟持部が適切な握力で物品Bを挟持できているか否かを表示する。
【0057】
状態データ処理部163は、第2通信部12を介して、データ受信部161から入力されたロボット状態データを操作デバイス22に送信する。状態データ処理部163は、データ受信部161から入力されたロボット状態データを操作デバイス22に送信することで、ロボット3で感知された触覚、音、関節の状態を、操作者Uが感じることを可能にする。また、状態データ処理部163は、ロボット状態データを判定部164に通知する。
【0058】
判定部164は、ロボット3から送信されたロボット状態データに基づいて、保持手段313により物品Bを適切に保持できているか否かを判定する。判定部164は、例えば、保持手段313が吸着部である場合に、吸着部における空気流入量に基づいて物品Bを吸着できたか否かを判定する。判定部164は、保持手段313が挟持部である場合に、挟持部が適切な握力で物品Bを挟持できているか否かを判定してもよい。判定部164は、判定した結果を操作者Uが確認できるように表示処理部162に通知する。判定部164は、判定した結果に基づいて保持手段313の動作を変更可能にするために、判定した結果を動作制御部169に通知してもよい。
【0059】
動作情報受信部165は、ロボット3の操作者Uの動作に応じた動作情報を受信する。動作情報受信部165は、例えば動き検出部13が赤外光を照射するように動き検出部13を制御し、動き検出部13から入力された反射光に基づくデータを動作情報として受信する。動作情報受信部165は、操作デバイス22が有するセンサーの値を示すデータを動作情報として受信してもよい。
【0060】
動作情報受信部165は、受信した動作情報に基づいて、操作者Uの指、手、腕、頭、若しくは足等の各部の基準位置に対する相対位置を示す位置情報、各部の速度を示す速度情報、又は各部の加速度を示す加速度情報等を作成し、作成した情報を動作制御部169に通知する。基準位置は、例えば、操作者Uがロボット3の操作を開始する時点に所定の姿勢(例えば、腕を伸ばして胴体の両側につけた姿勢)をした状態における各部の位置である。
【0061】
特定部166は、ロボット3が実行する作業の内容又はロボット3が保持手段313で吸着したり挟持したりして保持する物品Bを特定する。特定部166は、例えば操作部14において入力された作業内容名又は物品名に基づいて、ロボット3が行う作業の内容又は保持手段313で保持する物品Bを特定する。特定部166は、データ受信部161を介して受信した撮像画像データが示す物品Bの画像に基づいて作業の対象となる物品Bを特定し、特定した物品Bの種別に基づいて作業の内容を特定してもよい。例えば、特定部166は、撮像画像データに缶飲料の画像データが含まれている場合に、物品Bが缶飲料であり、作業内容が缶飲料の補充であることを特定する。
【0062】
角度決定部167は、保持手段313の角度である保持角度を決定する。角度決定部167は、保持手段313が吸着部である場合に、物品Bを吸着する面の角度を決定し、保持手段313が挟持部である場合に、挟持部が有するアクチュエータの角度を決定する。角度決定部167は、例えば、特定部166が特定した作業の内容又は物品Bに関連付けて記憶部15に記憶された、図4に示した基準保持角度に基づいて保持角度を決定する。
【0063】
図4及び図5に示す例において、例えばロボットIDがA-01のロボット3を用いてサンドイッチを補充する作業をすることを特定部166が特定した場合、角度決定部167は、吸着部の角度を45°にすることを決定する。図5によれば、ロボットIDがA-01のロボット3の吸着部は左腕に設けられているので、角度決定部167は、左腕の吸着部の角度を45°にすることを決定する。このように、角度決定部167は、ロボット3が作業に使用する保持手段313が設けられている側の腕の保持手段313の角度を基準保持角度に決定する。
【0064】
位置特定部168は、保持手段313と物品Bとの位置関係を特定する。位置関係は、保持手段313の角度と物品Bの表面の角度との角度差、又は保持手段313と物品Bとの距離により表される。位置特定部168は、例えば、データ受信部161から取得した撮像画像データに基づいて、作業に使用する保持手段313と物品Bとの位置関係を特定する。ロボット3が保持手段313の近傍に測距センサーを有しており、位置特定部168は、測距センサーにおける測定結果を示すロボット状態データに基づいて、位置関係を特定してもよい。位置特定部168は、特定した位置関係を動作制御部169に通知する。
【0065】
動作制御部169は、動作情報受信部165から入力される動作情報に基づいて、操作者Uの動作に追従した動作を行うようにロボット3を制御するための制御データを作成し、第1通信部11を介して、作成した制御データをロボット3に送信する。動作制御部169は、例えば、動作情報とともに、角度決定部167から通知された保持角度、又は位置特定部168から通知された位置関係の少なくともいずれかに基づいて制御データを作成する。動作制御部169は、例えば、保持手段313の角度が角度決定部167から通知された保持角度になるようにロボット3を制御するための制御データを作成する。また、動作制御部169は、保持手段313と物品Bとの位置関係が、保持手段313が物品Bを保持できる位置であることを条件として、保持手段313が物体Bを保持する動作をするための制御データを作成する。
【0066】
動作制御部169は、保持手段313の向きを変更させるための動作情報を動作情報受信部165が受信したとしても、保持手段313の向きを変更しないようにロボット3の腕部を制御する。具体的には、動作制御部169は、角度決定部167から通知された保持角度に保持手段313の角度を固定した状態でロボット3が動作している場合、操作者Uが手の角度を動かしたことにより、角度決定部167が決定した保持角度と異なる角度を動作情報が示しているとしても、保持角度でロボット3を動作させるための制御データを作成する。動作制御部169は、保持角度を変更させるための動作情報(すなわち操作者Uが手の角度を動かしたことを示す動作情報)を動作情報受信部165が受信したとしても、角度決定部167により決定された保持角度を維持するように腕本体部311を制御する。
【0067】
動作制御部169は、作業の内容又は物品Bに関連付けて記憶部15に記憶された基準関節角度に基づいて、保持手段313の角度を変化させるためのロボットの関節部312の角度を変化させてもよい。動作制御部169は、例えば図4に示したテーブルを参照することにより、特定部166が特定した作業内容に対応する基準保持角度に保持手段313の角度がなるようにするための基準関節角度を示す制御データを作成することにより、関節部312の角度を変化させる。
【0068】
動作制御部169は、作業の内容又は物品Bに基づいて、保持手段313を介して物品を吸着する際の吸着部の吸引力、挟持部の指の間隔、及び挟持部の握力を変化させてもよい。動作制御部169は、例えば図4において作業内容に関連付けられた基準吸引力、指の基準間隔、又は基準握力を特定し、特定した値を含む制御データを作成することにより、吸着部の吸引力、挟持部の指の間隔、及び挟持部の握力を制御する。動作制御部169がこのように動作することで、ロボット3が、作業の内容又は物品Bに適した状態で保持手段313を動作させることができる。
【0069】
動作制御部169は、保持手段313により物品Bを保持するための指示を受けた場合には、動作情報に基づいて保持手段313の向きを変更せず、保持手段313により物品Bを保持するための指示を受けていない場合には、動作情報に基づいて保持手段313の向きを変更してもよい。動作制御部169は、例えば操作部14を介して、物品Bを保持する作業を開始するという操作者Uによる指示を受けた場合、指示を受けた後に、操作者Uの手の角度が変化したことを示す動作情報を動作情報受信部165が受信したとしても保持手段313の角度を変化させるための制御データを作成しない。
【0070】
一方、動作制御部169は、初期状態において、又は物品Bを保持する動作を終了するという操作者Uによる指示を受けた後において、操作者Uの手の角度が変化したことを示す動作情報に基づいて、ロボット3の保持手段313の角度を変化させるための制御データを作成する。動作制御部169がこのように動作することで、作業中には操作者Uが保持手段313の調節をする必要がなく、かつ作業の内容を変更してロボット3の位置を移動する必要があるような場合に、操作者Uは、ロボット3の移動時に適した角度に保持手段313の角度を容易に変更することができる。
【0071】
動作制御部169は、保持手段313により物品Bを保持するための指示を受けた場合に、保持手段313により物品Bを保持するための指示を受けていない場合よりも遅い速度でロボット3の腕本体部311を動かしてもよい。動作制御部169は、初期状態において、又は物品Bを保持する動作を終了するという操作者Uによる指示を受けた後において、動作情報が示す操作者Uの腕の移動速度と同等の速度でロボット3の腕を動かすための制御データを作成する。一方、物品Bを保持する作業を開始するという操作者Uによる指示を受けた場合に、操作者Uの腕の移動速度よりも遅い速度でロボット3の腕を動かすための制御データを作成する。
【0072】
動作制御部169は、操作者Uの腕の移動速度よりも遅い速度でロボット3の腕を動かす際に、作業の内容又は物品Bの種類に基づいて速度を決定してもよい。動作制御部169は、例えば、重量が大きい物品Bを保持する作業が行われる場合に、重量が小さい物品Bを保持する作業が行われる場合よりも小さな速度に決定する。動作制御部169は、操作者Uの腕の移動速度が閾値以下である場合には操作者Uの移動速度と同等の速度でロボット3の腕部を動かし、操作者Uの腕の移動速度が閾値よりも大きい場合に、操作者Uの移動速度よりも小さい基準速度でロボット3の腕部を動かしてもよい。動作制御部169が、このように、物品Bを保持する間のロボット3の腕部の移動速度を小さくすることで、ロボット3が物品Bを落下させづらくなる。
【0073】
動作制御部169は、位置特定部168が特定した保持手段313と物品Bとの位置関係に基づいて、保持手段313を介して物品Bを保持するか否かを決定してもよい。動作制御部169は、例えば、保持手段313の角度と物品Bが有する平面の角度との関係に基づいて、吸着部として機能する保持手段313により物品Bを保持するか否かを決定する。具体的には、動作制御部169は、位置関係に基づいて保持手段313と物品Bが有する平面との方向差が閾値未満である場合に保持手段313の向きを変更せず、方向差が閾値以上である場合に動作情報に基づいて保持手段313の向きを変更するように腕本体部311又は関節部312の少なくとも一方を制御する。動作制御部169がこのように動作することで、保持手段313が有する吸着面と物品Bの平面とが平行でなく、物品Bを適切に吸着できない状態で物品Bを移動させることにより物品Bが落下してしまうことを予防できる。
【0074】
動作制御部169は、位置関係に基づいて保持手段313と物品Bが有する平面との方向差が閾値以上である場合に、表示処理部162を介して、手の角度を変化させて保持手段313の角度を調節するように操作者Uに促すメッセージを表示デバイス21に表示させてもよい。動作制御部169がこのように動作することで、例えば物品Bの形状が標準的な形状と異なっていたり、物品Bが載置されている台が傾いていたりして、基準保持角度に保持手段313の角度を設定した場合に保持手段313が物品Bを保持できない場合であっても、操作者Uが保持手段313の角度を適切な角度に調節することができる。動作制御部169は、操作者Uの操作を簡便にするために、保持手段313の角度を調節するように操作者Uに促すメッセージを表示デバイス21に表示させた後に所定の時間にわたって維持された操作者Uの手の角度に対応する角度になるように保持手段313を制御してもよい。
【0075】
ところで、図5に示した例のように、ロボット3の第1腕部(右腕)と第2腕部(左腕)に、それぞれ異なる種類の保持手段313が設けられている場合がある。このような場合、動作制御部169は、保持手段313の種類に基づいて、動作情報に基づいて動かす腕本体部311と、基準保持角度に保持手段313を固定する腕本体部311とを決定してもよい。
【0076】
第1腕部に吸着部が設けられており、第2腕部に挟持部が設けられている場合、動作制御部169は、保持手段313の向きを変更させるための動作情報を動作情報受信部165が受信したとしても、第1腕部の吸着部の向きを変更しないように第1腕部を制御する。一方、挟持部は吸着部に比べて角度の影響を受けづらいので、保持手段313の向きを変更させるための動作情報を動作情報受信部165が受信した場合に、動作情報に基づいて第2腕部の挟持部の向きを変更するように第2腕部を制御してもよい。
【0077】
動作制御部169は、作業の内容又は物品Bの種類、及びそれぞれの腕本体部311に設けられた保持手段313の種別に基づいて、それぞれの腕本体部311を動作情報に基づいて動かすか否かを決定してもよい。動作制御部169は、作業に用いる種類の保持手段313が設けられている腕本体部311を動作情報に基づいて動かさず、作業に用いない種類の保持手段313が設けられている腕本体部311を動作情報に基づいて動かす。
【0078】
図4及び図5に示した例の場合、ロボットIDがA-01のロボット3を用いてサンドイッチを補充する作業が行われる場合、動作制御部169は、ロボット3の左腕を動作情報に基づいて動かさずに吸着部の角度を基準保持角度に維持し、ロボット3の右腕を動作情報に基づいて動かせるようにする。動作制御部169がこのように動作することで、物品Bの保持に用いられる保持手段313の角度を操作者Uが調節する必要がなく、かつ操作者Uが他の腕を自由に用いて、保持手段313の角度が固定された腕を補助することができるので、作業効率が向上する。
【0079】
動作制御部169は、保持手段313が物品Bを保持した後に保持角度を変化させてもよい。動作制御部169は、例えば、保持手段313が物品Bを保持した後に操作者Uが所定の操作をした場合に、操作者Uの手の動き又は角度を設定する操作に基づいて保持角度を変化させる。動作制御部169は、保持手段313が物品を保持したことを検出した後に、操作者Uの手の動き又は角度を設定する操作に基づいて保持角度を変化させてもよい。動作制御部169がこのように動作することで、保持した物品Bを運ぶ際に適した角度で保持手段313が物品Bを保持できるので作業効率が向上する。
【0080】
この場合、保持手段313が物品Bを離した後に、動作制御部169が、角度決定部167が決定した保持角度に保持手段313の角度を戻すように関節部312を制御してもよい。動作制御部169がこのように動作することで、次の物品Bを保持手段313が保持する動作をする際に保持手段313の角度が保持角度になるので、さらに作業効率が向上する。
【0081】
さらに、動作制御部169は、例えば保持手段313の近傍に設けられた撮像装置が作成した撮像画像又は測距センサーの検出結果に基づいて、物品Bが所定の位置に載置されたことを検出した時点で保持手段313が物品Bの保持を停止するように保持手段313を制御してもよい。動作制御部169は、保持手段313が物品Bを保持した後に操作者Uが所定の操作(例えば手を開く操作)をした場合に、保持手段313が物品Bの保持を停止するように保持手段313を制御してもよい。動作制御部169がこのように動作することで、物品Bが所定の位置に載置された後に速やかに保持手段313から物品Bが離れるので、作業効率が向上する。
【0082】
動作制御部169は、判定部164から通知された保持手段313の物品Bの保持状態を示す判定結果に基づいて、保持手段313を制御してもよい。動作制御部169は、吸着部を有する保持手段313の吸引力が不足しているという判定結果を受けた場合に、吸引力を増加させるように保持手段313を制御する。また、動作制御部169は、挟持部を有する保持手段313の握力が不足しているという判定結果を受けた場合に、握力を増加させるように保持手段313を制御する。動作制御部169がこのように動作することで、保持手段313が適切に物品Bを保持できるようになる。
【0083】
[制御部16の処理の流れ]
図6は、制御部16の処理の流れを示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、例えば操作部14を介して、作業を開始する指示を操作者Uが行った時点から開始している。
【0084】
特定部166は、例えば操作者Uが入力した指示に基づいて作業内容を特定する(S11)。特定部166は、特定した作業内容を角度決定部167に通知し、角度決定部167は、例えば図4に示したデータを参照することにより、作業内容に基づいて、保持角度を決定する(S12)。
【0085】
その後、動作情報受信部165は、動き検出部13を介して動作情報を受信し(S13)、受信した動作情報を動作制御部169に通知する。動作制御部169は、動作情報に基づいて制御データを作成する(S14)。動作制御部169は、上述した各種の情報に基づいて、動作情報が示す操作者Uの手の角度に基づいて保持手段313の角度を変化させるための制御データを作成するか、操作者Uの手の角度によらず保持手段313の角度を所定の保持角度にするための制御データを作成するかを決定する。動作制御部169は、作成した制御データを、第1通信部11を介してロボット3に送信する(S15)。
【0086】
制御部16は、操作者Uから作業を終了する指示を受けるまでの間(S16においてNO)、S11からS15までの処理を繰り返す。制御部16は、操作者Uから作業を終了する指示を受けた場合に(S16においてYES)、処理を終了する。
【0087】
[変形例]
以上の説明においては、ロボット3の保持手段313の水平方向の位置の制御が操作者Uの操作によって行われる場合を例示したが、保持手段313の水平方向の位置の制御は他の方法により実現されてもよい。例えば、保持手段313の近傍に撮像装置又は測距センサーが設けられており、動作制御部169は、撮像装置が作成した撮像画像又は測距センサーによる検出結果を用いて特定した保持手段313の周辺状況に基づいて保持手段313の位置を制御してもよい。
【0088】
また、以上の説明においては、ロボット制御装置1とロボット3とが、ネットワークNを介して撮像画像データ、ロボット状態データ及び制御データを直接通信する場合を例示したが、ロボット制御装置1とロボット3とが、他の装置(例えばサーバ)を介して撮像画像データ、ロボット状態データ及び制御データを送受信してもよい。また、以上の説明においては、ロボット制御装置1が、操作装置2と異なる装置である場合を例示したが、ロボット制御装置1が表示デバイス21又は操作デバイス22に内蔵されていてもよい。すなわち、操作装置2が、ロボット制御装置1が有する機能の一部を有していてもよい。
【0089】
また、以上の説明においては、ロボット制御装置1が、ネットワークNに対して操作装置2の側に設けられている場合を例示したが、ロボット制御装置1が、ネットワークNに対してロボット3の側(例えばロボット3の内部)に設けられていてもよい。すなわち、ロボット制御装置1が、ネットワークNを介して、撮像画像データを表示デバイス21に送信したり、操作者Uの動作を示す動作情報を操作デバイス22から取得したりしてもよい。
【0090】
[ロボット制御装置1による効果]
以上説明したように、動作制御部169は、保持手段313の向きを変更させるための動作情報を動作情報受信部165が受信したとしても、保持手段313の向きを変更しないように腕本体部311を制御する。動作制御部169がこのように動作することで、保持手段313の角度が一度決定してから複数の物品Bを保持する必要がある場合に、一つの物品Bを保持する作業が終了した後に操作者Uが保持手段313の角度を再調節する必要がないので、作業効率が向上する。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0092】
1 ロボット制御装置
2 操作装置
3 ロボット
11 第1通信部
12 第2通信部
13 動き検出部
14 操作部
15 記憶部
16 制御部
21 表示デバイス
22 操作デバイス
31 腕部
311 腕本体部
312 関節部
313 保持手段
161 データ受信部
162 表示処理部
163 状態データ処理部
164 判定部
165 動作情報受信部
166 特定部
167 角度決定部
168 位置特定部
169 動作制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6