(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】軟磁性合金粉末
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20240527BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20240527BHJP
C22C 45/02 20060101ALI20240527BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20240527BHJP
H01F 1/24 20060101ALI20240527BHJP
H01F 1/33 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B22F1/00 Y
B22F1/16 100
C22C45/02 A
H01F1/153 108
H01F1/24
H01F1/33
(21)【出願番号】P 2020108512
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木野 泰志
(72)【発明者】
【氏名】水野 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】林 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 久也
(72)【発明者】
【氏名】飛世 正博
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 伸
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160945(JP,A)
【文献】特開2016-058732(JP,A)
【文献】特開2006-128663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
C22C 45/02
H01F 1/153
H01F 1/24
H01F 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄
、Si及びAlを含み、且つ軟磁性を有する合金粉末に絶縁被膜が被覆された軟磁性合金粉末であって、
前記合金粉末は、Si≧2重量%、Al≧1重量%、及びSi+Al≦12重量%の関係を満たすSi及びAlを含み、残部が鉄及び不可避不純物で構成され、且つアモルファス組織を有し、
前記絶縁被膜は、
B、Cr、Alのうち少なくとも1種以上を含み前記合金粉末の表面に接する第一の被膜と、
SiO
2
を含み前記第一の被膜に接する第二の被膜と、を含み、
前記第一の被膜の厚さに対する前記第二の被膜の厚さの比が0.02~300である、
軟磁性合金粉末。
【請求項2】
前記絶縁被膜の厚さに対する前記合金粉末の粒径(D50)の比が1.4~10,000である、請求項1に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項3】
前記合金粉末の粒径(D50)が0.5~20μmである、請求項1または2に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項4】
前記第一の被膜は、窒化物である、請求項
1乃至請求項3のいずれか一項に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項5】
前記第一の被膜及び/または第二の被膜は、MnまたはTiの少なくともいずれかを更に含む、請求項
1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項6】
前記軟磁性合金粉末は、25℃から150℃において、負のコアロス温度特性を有している、請求項
1に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項7】
前記軟磁性合金粉末を構成する合金粉末は、
鉄の一部がB、Cr、Alのうち少なくとも1種以上と置換される、請求項
1に記載の軟磁性合金粉末。
【請求項8】
前記合金粉末において、
鉄と置換されたB、Cr、Alの合計は、該合金粉末全体に対して1~10重量%である、請求項
7に記載の軟磁性合金粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性合金粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源回路で使用されるパワーインダクタは、小型化・低背化の要求から大電流・高周波数で使用できる軟磁性材料が望まれている。従来、インダクタの主材料として酸化物であるフェライト系材料が使用されてきたが、飽和磁化が低いため小型化には不利であり、近年、飽和磁化が高く小型・低背化に有利な合金系材料を使用したメタルインダクタが急増している。メタルインダクタには、鉄を主材料とした軟磁性合金粉末(以下、軟磁性合金粉末ともいう)が用いられ、軟磁性合金粉末と樹脂とを混合し、圧縮成形した圧粉磁心などが知られている。圧粉磁心の磁気特性(飽和磁化、透磁率、コアロス、周波数特性など)は、使用する軟磁性合金粉末の磁気特性や粒度分布、充填性、電気抵抗に依存する。
【0003】
エネルギー問題への関心が高まる中、自動車の電動化やエレクトロニクスの省電力化が推進されており、より小型化が可能であり、エネルギー損失が少ない圧粉磁心が求められている。例えば、自動車における、高い環境性能や運転性能を実現するための制御の高度化に対応するための「機電一体化」が挙げられる。ここでは、モーターやソレノイドなどのアクチュエータにECU(Electronic Control Unit)を実装するために、より高温環境であるエンジンルーム等にECUを設置したいという要望が高まってきている。従って、より高温環境で使用可能なECU向けの圧粉磁心等に用いられる磁性粉末が求められている。
【0004】
従来使用されてきたフェライト系材料は酸化物であることから、絶縁性や耐熱性などの信頼性が高かったが、合金系材料はこれらの信頼性がフェライト系材料と比較して低い。そこで、軟磁性合金粉末の絶縁性や耐熱性を向上させる手法として、軟磁性合金粉末に対して被膜を形成する手法が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、高絶縁性や高耐熱性を得るためには絶縁皮膜の厚を厚くする必要がある。そのため、絶縁性や耐熱性などの信頼性と磁気特性とを両立させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い磁気特性を有し、且つ絶縁性や耐熱性などの信頼性を兼ね備える軟磁性合金粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、鉄を主成分として、且つ軟磁性を有する合金粉末が絶縁性を有する絶縁被膜で被覆されている軟磁性合金粉末である。この絶縁皮膜は、軟磁性合金粉末を構成する合金粉末の表面に接する第一の被膜と、第一の皮膜に接する第二の被膜と、を含む。そして、第一の被膜の厚さ(t1)に対する第二の被膜の厚さ(t2)の比(t2/t1)が0.02~300である。
【0008】
本発明の一実施形態は、絶縁被膜の厚さ(T)に対する合金粉末の粒径(D50)(D)の比(D/T)が1.4~10,000であってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態は、合金粉末の粒径(D50)が0.5~20μmであってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態は、第一の被膜は,B、Cr、Alのうち少なくとも1種以上を含んでもよい。
【0011】
本発明の一実施形態は、第一の被膜は窒化物であってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態は、第二の被膜がSiO2を主成分としてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態は、第一の被膜及び/または第二の被膜は、MnまたはTiの少なくともいずれかを更に含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施形態は、合金粉末が、Si≧2重量%、Al≧1重量%、及びSi+Al≦12重量%の関係を満たすSi及びAlを含み、残部がFe及び不可避不純物で構成されていてもよい。そして、アモルファス組成を有していてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態は、軟磁性合金粉末が、25℃から150℃において、負のコアロス温度特性を有していてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態は、合金粉末において、Feの一部がB、Cr、Alのうち少なくとも1種以上と置換されていてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態では、合金粉末において、Feと置換されたB、Cr、Alの合計は、該合金粉末全体に対して1~10重量%としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い磁気特性と絶縁性や耐熱性などの信頼性とを兼ね備える鉄基の軟磁性合金粉末を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、鉄を主成分とする合金粉末の表面に、絶縁被膜が被覆されている。絶縁被膜は、合金粉末の表面を被覆する第一の被膜と、第一の被膜で被覆された粉末を被覆する第二の被膜と、で形成されている。絶縁被膜を厚くすることで高耐熱性が得られるが、例えば両者の熱膨張係数の違いなどから合金粉末から剥離しやすくなる。その為、第二の被膜の密着性を向上させるために、合金粉末の表面に第一の被膜を形成し、その上に第二の被膜を形成した。すなわち、第二の被膜で高耐熱性を担保し、第一の被膜によって第二の被膜が剥離しようとする衝撃を吸収することができる。ここで、第一の被膜の厚さt1に対する第二の被膜の厚さt2の比(t2/t1)が大きすぎると、第一の被膜による緩衝効果が十分に得られない。逆にこの比が小さすぎると、絶縁性が低下する。高絶縁性と高耐熱性を両立させるために、第一の被膜の厚さt1に対する第二の被膜の厚さt2の比(t2/t1)は、0.02~300の条件を満たすように構成される。
【0021】
[膜厚]
本実施形態に係る軟磁性合金粉末の絶縁被膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡等を用いて測定された膜厚の実測値を意味する。
【0022】
[絶縁被膜]
本明細書における「絶縁被膜」とは、軟磁性を有する合金粉末の表面に形成された、絶縁性を有する被膜を意味する。被膜が絶縁性を有する限り、材質は特に限定されない。
【0023】
[軟磁性合金粉末]
本明細書において、「軟磁性合金粉末」とは、鉄を主材料とした軟磁性を有する合金粉末(以降、単に「合金粉末」と記す)の表面に絶縁被膜が被覆された粉末を意味する。合金粉末は、磁気特性や生産性などを総合的に勘案して、アトマイズ法で製造された粉末であることが好ましい。軟磁性合金粉末の粒径は特に限定されず、所望の磁気特性に応じて調整される。
【0024】
[粒径(D50)/絶縁被膜の厚さ]
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、絶縁被膜の厚さTに対する合金粉末の粒径Dの比(D/T)が大きすぎると体積中の磁性成分割合が小さくなるので、十分な磁気特性が得られない。逆にこの比が小さすぎると、絶縁性が低いので、十分な磁気特性が得られない。優れた磁気特性を有し、且つ高絶縁性と高耐熱性とを両立させるために、絶縁被膜の厚さTに対する合金粉末の粒径Dの比(D/T)を1.4~10,000、好ましくは30~1,500、となるように構成した。ここで、「軟磁性合金粉末の粒径」とは、軟磁性合金粉末のメディアン径(D50)を指し、従来公知の方法、例えば、レーザー回折・散乱法により測定されるものである。また、「絶縁被膜の厚さに対する軟磁性合金粉末の粒径の比」とは、軟磁性合金粉末のメディアン径:D50の測定値と、絶縁被膜の膜厚の測定値との比であり、単位を有さない無次元量である。この比が上述の範囲であることにより、軟磁性合金粉末は、圧粉磁心の材料として優れた性能を有することができる。
【0025】
[粒径]
上述の軟磁性合金粉末の飽和磁束密度(Bs)、透磁率に関する効果、さらには、後述の負のコアロス温度特性、は幅広い粒径を有する軟磁性合金粉末において得られる。粒径(D50)が0.5~20μmであることにより、特に高い効果が得られる。
【0026】
[第一の被膜]
第一の被膜は、先述の通り第二の被膜が剥離するのを抑制する役割を担う。合金粉末及び第二の被膜と親和性が高く、または第二の被膜が剥離しようとする衝撃を吸収する効果を有していれば、第一の被膜の材質は特に限定されない。特に、B、Cr、Alのうち少なくとも1種以上を含むことで、第二の被膜の剥離を抑制するだけでなく、軟磁性合金粉末の高周波帯における磁気特性を改善できる。また、第一の被膜を窒化物としたことで、高周波帯における磁気特性をさらに改善できるここで、高周波帯とは1MHz以上の領域を指す。
【0027】
第一の被膜は、MnまたはTiの少なくともいずれかを更に含んだものとしてもよい。これらの元素を微量に添加することで、合金粉末及び第二の被膜との密着性のさらなる向上、第二の被膜が剥離しようとする衝撃の吸収力のさらなる向上、及び高周波帯における磁気特性のさらなる改善、の効果が得られる。
【0028】
[第二の被膜]
第二の被膜は、Al2O3、SiO2、MgOなど絶縁性が高い材料を選択することができる。本実施形態では、第二の被膜の主成分をSiO2とした。絶縁被膜が緻密で化学的に非常に安定であるSiO2被膜であることにより、剥がれ難く高い絶縁性及び耐熱性を有する軟磁性合金粉末が得られる。
【0029】
第二の被膜は、MnまたはTiの少なくともいずれかを更に含んだものとしてもよい。これらの元素を微量に添加することで、第一の被膜との密着性のさらなる向上、第二の剥離性の改善、第二の被膜の絶縁性及び耐熱性のさらなる向上、の効果が得られる。また、前述の第一の被膜において微量に添加された元素と同一の元素を含んでいた場合は、第一の被膜と第二の被膜との密着性はさらに向上する。
【0030】
[合金粉末]
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、合金粉末がSi≧2重量%、Al≧1重量%、及びSi+Al≦12重量%の関係を満たすSi及びAlを含み、残部がFe及び不可避不純物で構成されている。本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、好ましくは、Si≧3.5重量%、Al≧2.5重量%、及びSi+Al≦12重量%の関係を満たす量のSi及びAlを含む。上記の関係を満たす量のSi及びAlを含むアモルファス組成の粉末であることにより、軟磁性合金粉末の飽和磁束密度(Bs)及び透磁率が向上する。この効果により、本実施形態に係る軟磁性合金粉末は電子部品の小型化に有利である。
【0031】
さらに、この合金粉末は、アモルファス組成であることが好ましい。合金粉末が上記の組成を有するアモルファス組織の合金粉末であることにより、優れた軟磁気特性に加えて、難燃性も有する。
【0032】
本実施形態の軟磁性合金粉末における合金粉末は、Feの一部がB、Cr、Alのうち少なくとも1種以上と置換され得る。これらの元素で置換されることにより、軟磁気特性が向上し、且つ絶縁性と耐熱性の信頼性が向上する。しかし、これらの元素が多すぎるとFeの含有量が相対的に少なくなるので、軟磁性合金粉末の磁気特性が低下する。逆に少なすぎると、置換した効果が十分に得られない。Feと置換されるB、Cr、Alの合計を、該合金粉末全体に対して1~10重量%、好ましくは1.5~5重量%、となるように構成した。
【0033】
本実施形態に係る軟磁性合金粉末における合金粉末は、不可避的不純物として、N、S、O等の元素を目的とする特性に影響を与えない程度で含み得る。
【0034】
さらに、上記の関係を満たす量のSi及びAlを含み、残部がFe及び不可避的不純物である軟磁性合金粉末は、25℃から120℃において、負のコアロス温度特性を有する。Si≧3.5重量%、Al≧2.5重量%、及びSi+Al≦12重量%の関係を満たす量のSi及びAlを含む本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、更に、120℃から150℃においても負のコアロス温度特性を有する。
【0035】
[負のコアロス温度特性]
負のコアロス温度特性とは、軟磁性合金粉末のコアロスが温度に対して負の係数を有する、すなわち、軟磁性合金粉末のコアロスが温度の上昇とともに低下する特性を意味する。負のコアロス温度特性を有する本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、温度の上昇とともにコア損失が低下するため、使用時におけるコア損失による発熱によるコア自体の温度の上昇が抑えられ、従来困難であった高温環境下で使用される圧粉磁心等の電子部品の材料として好適な特性を有している。本実施形態に係る軟磁性合金粉末が、負のコアロス温度特性を有するのは、組成によって決定される磁歪定数が正の値を有することによるものと考えられる。
【0036】
[製造方法]
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、軟磁性を有する鉄基の合金粉末に絶縁被膜を形成することにより製造される。
【0037】
材料となる合金粉末は、金属粉末の製造方法として以下に例示する従来公知の方法により製造することができるが、本実施形態の組成を有すれば上述の磁気特性を有するため、製造方法は特に限定されない。
・アトマイズ法:水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、遠心力アトマイズ法、等
・機械的プロセス法:粉砕法、メカニカルアロイング法、等
・メルトスピニング法
・回転電解法(REP法):プラズマREP法、等
・化学的プロセス法:酸化物還元法、塩化物還元法、湿式冶金技術、カーボニル反応法、等
【0038】
上に例示した製造方法の中で、特にアトマイズ法は小径且つ球形の合金粉末を大気圧下で量産できる。中でも、水アトマイズ法を採用すると、安価に製造することができる。また、水アトマイズ法で製造することにより合金粉末が小径となることにより、渦電流損失を抑え、優れた磁気特性を有する圧粉磁心等を製造するができる。
水アトマイズ法を用いて合金粉末を製造する場合、所望の組成に調整した材料を溶解した溶湯に対して、所望の冷却条件や粒径となるようにパラメータを設定した高圧の水を吹き付けることで、溶湯を飛散及び凝固させて粉末が得られる。その後、得られた粉末を乾燥、分級し、必要に応じて、表面処理を行い、目的とする合金粉末を得ることができる。
【0039】
絶縁被膜の形成は、第一の被膜を形成する工程と、第二の被膜を形成する工程と、によって行われる。
【0040】
第一の被膜は、プラズマ処理、熱処理、ケミカル処理、スパッタリング、など公知の技術によって形成することができる。
【0041】
第二の被膜は、化学的蒸着法(CVD)及び物理的蒸着法(PVD)などの気相法や溶射法など、従来公知の方法により行うことができるが、特に、生産性やコストの観点から、ゾル-ゲル法により行うことが好ましい。ゾル-ゲル法では、被膜成分である酸化物の原料である金属アルコキシドや金属酢酸塩、加水分解のための水、溶媒としてのアルコール、触媒である酸又は塩基等を含む溶液と、上述のように得られた軟磁性合金粉末とを混合した後に、加熱して溶媒を除去することにより絶縁被膜が形成される。混合は、例えば、プラネタリーミキサー、ミックスマラー、らいかい機、リボンミキサー等を用いて行うことができ、粉末と溶液とを混ぜ合わせる機構を有する装置であれば、混合に用いる装置は特に限定されない。ゾル-ゲル法において、絶縁被膜の膜厚は、絶縁材料の配合量、混合時間、溶液の滴下方法、滴下量、温度等の条件を調整することにより、所望の膜厚に調製することができる。
【0042】
絶縁被膜の形成後、分級を行うことにより、所望の磁気特性に応じた目的の粒径を有する軟磁性合金粉末を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述の実施形態の軟磁性合金粉末で製造した圧粉磁心は、180℃で3000時間稼働させた結果、抵抗値及び耐電圧の低下がなかった。さらに、1MHz以上の高周波において、透磁率及びコアロスといった磁気特性が良好な結果が得られた。このことから、一実施形態の軟磁性合金粉末は、高温環境でも優れた特性を有する電子部品を製造することができる。