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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】管材の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/045 20110101AFI20240527BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20240527BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B21D26/045
H02K15/14 A
H02K15/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020162577
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055143
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000126894
【氏名又は名称】株式会社アミノ
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】和田 教之
(72)【発明者】
【氏名】寺内 祐二
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-158818(JP,A)
【文献】特開2004-202571(JP,A)
【文献】特開2011-45899(JP,A)
【文献】特開平10-225737(JP,A)
【文献】特許第7219189(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/045
H02K 15/14
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の管材において前記管材の軸方向に沿って延びる貫通孔の開口部を塞ぐパンチ部材を、前記管材に対して前記軸方向の少なくとも一方側に配置する配置工程と、
前記配置工程の後、前記管材に向かって前記軸方向に突出する前記パンチ部材の突出部を前記管材の前記軸方向の端面に押し込みながら、前記管材の前記貫通孔の内周面と前記端面とを接続するとともに前記軸方向に対して傾斜する第1傾斜面に沿うように延びる前記パンチ部材の第2傾斜面により、前記管材の前記第1傾斜面をシールすることによって、前記突出部と前記第2傾斜面との間に挟まれる前記管材の部分が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力を前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とのシール部に付与した状態で、前記管材の前記開口部をシールするシール工程と、
前記シール工程の後、前記管材の内部が密閉された状態で、前記管材の内部に流体を充填させるとともに前記流体による内圧によって前記管材を膨張させることにより、前記管材を変形させる変形工程と、を備える、管材の加工方法。
【請求項2】
前記シール工程において前記圧縮応力を前記シール部に付与することは、前記パンチ部材の前記第2傾斜面と前記管材の径方向に対向するとともに前記軸方向に対して傾斜する前記突出部の第3傾斜面と前記第2傾斜面との間に挟まれる前記管材の部分が圧縮されることに起因して生じる前記圧縮応力を、前記シール部に付与することである、請求項1に記載の管材の加工方法。
【請求項3】
前記シール工程において前記圧縮応力を前記シール部に付与することは、前記軸方向に沿った断面視において三角形形状を有する前記突出部の前記第3傾斜面と前記第2傾斜面との間に挟まれる前記管材の部分が圧縮されることに起因して生じる前記圧縮応力を、前記シール部に付与することである、請求項2に記載の管材の加工方法。
【請求項4】
前記シール工程は、前記シール部のみならず、前記突出部の前記第3傾斜面と前記管材とが接する部分、および、前記パンチ部材の前記突出部と前記パンチ部材の前記第2傾斜面との間に位置する前記パンチ部材の面と前記管材の前記端面とが接する部分をシールする工程である、請求項2または3に記載の管材の加工方法。
【請求項5】
前記シール工程において前記突出部を前記管材の前記端面に押し込むことは、前記管材の前記第1傾斜面の前記軸方向に沿った長さよりも前記軸方向に沿った長さが小さい前記突出部を、前記管材の前記端面に押し込むことである、請求項1~4のいずれか1項に記載の管材の加工方法。
【請求項6】
前記パンチ部材の前記第2傾斜面により前記管材の前記第1傾斜面をシールすることは、前記第1傾斜面のうち前記軸方向の一方側の一部を前記第2傾斜面によりシールすることである、請求項1~5のいずれか1項に記載の管材の加工方法。
【請求項7】
前記シール工程において前記突出部を前記管材の前記端面に押し込むことは、前記管材の径方向における前記端面の中心よりも前記開口部に寄った前記端面の部分に、前記突出部を押し込むことである、請求項1~6のいずれか1項に記載の管材の加工方法。
【請求項8】
前記配置工程は、前記パンチ部材を、前記管材に対して前記軸方向の両側に配置する工程であり、
前記シール工程は、前記管材の前記軸方向の両側において、前記パンチ部材の前記突出部と前記パンチ部材の前記第2傾斜面との間に挟まれる前記管材の部分が圧縮されることに起因して生じる前記圧縮応力を前記シール部に付与した状態で、前記管材の前記軸方向の両側に設けられる前記開口部をシールする工程である、請求項1~7のいずれか1項に記載の管材の加工方法。
【請求項9】
前記シール工程は、前記パンチ部材の前記第2傾斜面により、円筒形状を有する前記管材の前記第1傾斜面をシールすることによって、前記突出部と前記第2傾斜面との間に挟まれる前記管材の部分が圧縮されることに起因して生じる前記圧縮応力を前記シール部に付与した状態で、前記管材の前記開口部をシールする工程である、請求項1~8のいずれか1項に記載の管材の加工方法。
【請求項10】
前記変形工程は、挿入孔を有するロータコアの前記挿入孔に前記管材としてのシャフトを挿入した状態で、かつ、前記シャフトの内部が密閉された状態で、前記シャフトの内部に前記流体を充填させるとともに前記流体による内圧によって前記シャフトを膨張させることにより、前記挿入孔の内周面に前記シャフトを圧接させることによって、前記シャフトを前記ロータコアに固定する工程である、請求項1~9のいずれか1項に記載の管材の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管材の内部の流体による内圧によって管材を膨張させる管材の加工方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、アルミニウム管をバルジ加工用金型内に配置した後、シール金具を用いてアルミニウム管とシール金具との間を密封した状態でアルミニウム管の内部に導入された流体の圧力によってアルミニウム管を膨張させる手法が開示されている。具体的には、まず、シール金具の挿入部がアルミニウム管内に挿入される。シール金具の挿入部の直径はアルミニウム管の内径よりも小さく形成されており、挿入部のアルミニウム管への挿入をスムーズに行うことが可能である。そして、シール金具の環状突部の先端がアルミニウム管の端面に接した後、シール金具をさらにアルミニウム管の端部に向かって押圧することにより、環状突部がアルミニウム管の端面に押し込まれる。その結果、アルミニウム管の端面と、環状突部が設けられるシール金具の段部とが密着される。すなわち、アルミニウム管は、シール金具の環状突部および段部においてシールされている。そして、シール金具によりアルミニウム管を軸方向に圧縮(押圧)することによって、アルミニウム管の端面とシール金具とのシール性が確保される。この状態で、アルミニウム管内に流体が導入される。そして、シール金具によりアルミニウム管が軸方向に圧縮(押圧)された状態で、流体の圧力によるバルジ加工(管材の膨張加工)が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-229626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の管材の加工方法では、シール金具によりアルミニウム管を軸方向に圧縮(押圧)することによってアルミニウム管の端面とシール金具とのシール性が確保される。しかしながら、シール金具による圧縮力に起因してアルミニウム管が変形するのを防止するために、シール金具による軸方向の圧縮力は一定以下にする必要がある。この場合、アルミニウム管とシール金具とのシール性が確保できない場合がある。したがって、管材の内部の流体による内圧によって管材を膨張させる加工を行う場合に、管材の軸方向の変形を防止しながら管材のシール性を確保することが可能な管材の加工方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、管材の内部の流体による内圧によって管材を膨張させる加工を行う場合に、管材の軸方向の変形を防止しながら管材のシール性を確保することが可能な管材の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における管材の加工方法は、筒状の管材において管材の軸方向に沿って延びる貫通孔の開口部を塞ぐパンチ部材を、管材に対して軸方向の少なくとも一方側に配置する配置工程と、配置工程の後、管材に向かって軸方向に突出するパンチ部材の突出部を管材の軸方向の端面に押し込みながら、管材の貫通孔の内周面と端面とを接続するとともに軸方向に対して傾斜する第1傾斜面に沿うように延びるパンチ部材の第2傾斜面により、管材の第1傾斜面をシールすることによって、突出部と第2傾斜面との間に挟まれる管材の部分が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力を第1傾斜面と第2傾斜面とのシール部に付与した状態で、管材の開口部をシールするシール工程と、シール工程の後、管材の内部が密閉された状態で、管材の内部に流体を充填させるとともに流体による内圧によって管材を膨張させることにより、管材を変形させる変形工程と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面における管材の加工方法では、上記のように、突出部と第2傾斜面との間に挟まれる管材の部分が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力を第1傾斜面と第2傾斜面とのシール部に付与した状態で、管材の開口部をシールするシール工程が行われる。これにより、シール部に圧縮応力が付与されることにより、シール部に圧縮応力が付与されていない場合に比べて、シール部において、管材がパンチ部材に対してより密着される。その結果、パンチ部材の軸方向における圧縮力(押圧力)を過度に大きくしなくても、シール部におけるシール性を確保することができる。これにより、管材の内部の流体による内圧によって管材を膨張させる加工を行う場合に、管材の軸方向の変形を防止しながら管材のシール性を確保することができる。特に、モータのロータの製造時において、管材としてシャフトをロータコアに挿入して膨張させて固定する場合に、シャフトの軸方向の変形を防止しながらシャフトのシール性を確保することができる。その結果、シャフトのシール性が確保されることによって、シャフトの内部の流体の圧力が維持されるので、シャフトがロータコアに強固に固定される。その結果、モータが回転する時に、シャフトとロータコアとの相対的なずれ等に起因してロータの回転バランスが悪化するのを防止することができる。さらに、シャフトの軸方向の変形が防止されることによって、ロータの回転バランスが悪化するのが防止される。すなわち、圧縮応力をシール部に付与した状態で管材の開口部をシールすることは、ロータの回転バランスが悪化するのを防止する点で、効果が高い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、管材の内部の流体による内圧によって管材を膨張させる加工を行う場合に、管材の軸方向の変形を防止しながら管材のシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態によるロータの軸方向に沿った断面図である。
図2】一実施形態によるロータの構成を示す平面図である。
図3】一実施形態によるシャフトの貫通孔のZ1側の開口部近傍の構成を示す断面図である。
図4】一実施形態によるロータの製造装置の構成を示す断面図である。
図5】一実施形態によるパンチ部材を下方側から見た図である。
図6】一実施形態によるパンチ部材の構成を示す断面図である。
図7】一実施形態によるパンチ部材の突出部をシャフトの端面に押し込む工程を説明するための断面図である。
図8】一実施形態によるリフターの突出部をシャフトの端面に押し込む工程を説明するための断面図である。
図9】一実施形態によるロータの製造工程(シャフトの加工方法)を示すフロー図である。
図10】一実施形態によるパンチ部材の傾斜面と突出部とによる圧縮応力を説明するための図である。
図11】一実施形態の比較例による突出部が設けられないシール部材によりシールした場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[本実施形態のロータの構造]
図1図3を参照して、本実施形態によるロータ100の構造について説明する。ロータ100は、図示しないステータと組み合わせられることにより、回転電機を構成する。
【0013】
本願明細書では、「軸方向」とは、ロータ100の回転軸線(符号C1)(Z1方向、Z2方向)に沿った方向(図1参照)を意味する。また、「径方向内側」とは、ロータ100の回転軸線C1に向かう方向(R1方向)を意味する。また、「径方向外側」とは、ロータ100の外側に向かう方向(R2方向)を意味する。また、「周方向」とは、図2に示すように、ロータ100の周方向(A1方向、A2方向)を意味する。
【0014】
図1に示すように、ロータ100は、ロータコア10と、シャフト20と、軸受部材31および32とを備える。ロータコア10は、孔部11aを有する複数の電磁鋼板11が軸方向に沿って積層されることにより形成されている。たとえば、電磁鋼板11は、珪素鋼板により構成されている。また、ロータコア10は、中心軸が回転軸線C1と一致する円筒形状を有する。また、ロータコア10の内周面12は、たとえば、軸方向に沿って略面一状に形成されている。また、ロータコア10の外周面13は、軸方向に沿って略面一状に形成されている。なお、複数の孔部11aが軸方向に積層されることによってロータコア10の挿入孔10aが形成されている。また、シャフト20は、特許請求の範囲の「管材」の一例である。なお、図1では、簡略化のため、後述する逃がし痕部51bおよび逃がし痕部61bの図示が省略されている。
【0015】
図2に示すように、シャフト20は、中心軸が回転軸線C1と一致する円筒形状を有する。たとえば、シャフト20は、炭素鋼により構成されている。また、図1に示すように、シャフト20は、ロータコア10の内周面12に固定されている。具体的には、シャフト20は、ロータコア10(挿入孔10a)の内周面12にハイドロフォーミングにより圧接されることによって、ロータコア10に固定されている。また、シャフト20は、軸方向に沿って延びる貫通孔21を含む。貫通孔21の内周面21aは、後述する、第1部分40の内周面42と、第2部分50の内周面50aと、第3部分60の内周面60aとを含む。
【0016】
また、シャフト20は、第1部分40と、第2部分50と、第3部分60と、第1接続部分70と、第2接続部分80とを含む。また、第1部分40と、第2部分50と、第3部分60とは、それぞれ、回転軸線C1に沿って延びる円筒形状を有する。また、第3部分60は、ロータコア10のZ2方向側の端面14よりもZ2方向側に配置されている。また、第2部分50は、ロータコア10のZ1方向側の端面15よりもZ1方向側に配置されている。
【0017】
第1部分40は、シャフト20のうちの軸方向の中央部において、ロータコア10の内周面12に配置される部分である。詳細には、第1部分40の外周面41と、ロータコア10の内周面12とが当接している。本実施形態では、第1部分40は、ロータコア10(挿入孔10a)の内周面12に、ハイドロフォーミングを用いて、圧接されている。
【0018】
また、第1部分40の内径は、D1であり、第1部分40の外径は、D11である。また、第1部分40の内周面42は、第2部分50の内周面50aよりも径方向外側に設けられているとともに、第3部分60の内周面60aよりも径方向外側に設けられている。これにより、シャフト20の内部には、径方向外側に窪む凹部43が形成されている。
【0019】
第2部分50は、シャフト20のうちの第1部分40よりもZ1方向側の部分である。そして、第2部分50は、軸受部材31が配置される部分である。軸受部材31は、第2部分50の外周面50bに接するように設けられる。
【0020】
そして、第2部分50の内径は、D2であり、第2部分50の外径は、D12である。内径D2は、第1部分40の内径D1よりも小さい。外径D12は、第1部分40の外径D11よりも小さい。また、第2部分50の厚みは、t1である。
【0021】
シャフト20(第2部分50)は、軸方向の端面51を含む。端面51は、軸方向に略直交するように設けられている。端面51は、Z1方向側の端面である。
【0022】
シャフト20の端面51には、軸方向(Z2方向側)に窪む凹部52が設けられている。凹部52は、端面51のうちの径方向における中心C2(図3参照)よりも径方向内側(R1方向側)に設けられている。また、凹部52の径方向内側の内側面52a(図3参照)は、端面51に対して傾斜する傾斜面として形成されている。内側面52aの軸方向に対する傾斜角度は、θ1(図3参照)である。なお、凹部52は、Z1方向側から見て、円環状(図2参照)に形成されている。
【0023】
また、図3に示すように、シャフト20の端面51の径方向内側の端部51aには、逃がし痕部51bが設けられている。逃がし痕部51bは、後述する突出部212が端面51に押し込まれる工程(S5)において、シャフト20の傾斜面53側にシャフト20の材料(肉)が移動する(逃げる)ことにより、傾斜面53から径方向内側に盛り上がった(突出した)形状を有する部分である。なお、傾斜面53は、特許請求の範囲の「第1傾斜面」の一例である。
【0024】
なお、傾斜面53は、端面51(の端部51a)と貫通孔21の内周面21aとを接続する面である。また、傾斜面53は、軸方向に対して傾斜する面である。傾斜面53は、面取り加工されることにより形成されている。なお、傾斜面53は、Z1方向側から見て、円環状に形成されている。
【0025】
図1に示すように、第3部分60は、シャフト20のうちの第1部分40よりもZ2方向側に位置する部分である。また、第3部分60は、軸受部材32が配置される部分である。軸受部材32は、第3部分60の外周面60bに接するように設けられる。
【0026】
第3部分60の内径は、D3であり、第3部分60の外径は、D13である。内径D3は、第1部分40の内径D1よりも小さい。外径D13は、第1部分40の外径D11よりも小さい。また、第3部分60の厚みは、t2である。厚みt2は、第2部分50の厚みt1よりも大きい。
【0027】
また、シャフト20(第3部分60)は、軸方向の端面61を含む。端面61は、軸方向に略直交するように設けられている。シャフト20(第3部分60)の端面61は、Z2方向側の端面である。なお、端面61側の構成は、端面51側の構成と同様である。具体的には、端面61には、凹部62が設けられている。また、シャフト20は、端面61とシャフト20の貫通孔21の内周面21aとを接続する傾斜面63を含む。また、傾斜面63には、逃がし痕部61b(図8参照)が設けられている。凹部62、傾斜面63、および、逃がし痕部61bは、それぞれ、凹部52、傾斜面53、および、逃がし痕部51bと同様の構成を有している。
【0028】
第1接続部分70は、回転軸線C1に対して交差するように延びるとともに、第1部分40と第2部分50とを接続するように形成されている。
【0029】
図1に示すように、第2接続部分80は、回転軸線C1に対して交差するように延びるとともに、第1部分40と第3部分60とを接続するように形成されている。
【0030】
[本実施形態のロータの製造装置]
次に、図3図8を参照して、本実施形態によるロータ100の製造装置200について説明する。本実施形態では、製造装置200は、ハイドロフォーミング成形機として構成されている。すなわち、製造装置200は、シャフト20の内部が密閉された状態で、シャフト20の内部に流体Lを充填させるとともに流体Lによる内圧Pによってシャフト20を膨張させることにより、ロータコア10の挿入孔10aの内周面12に、シャフト20(第1部分40)を圧接させるハイドロフォーミングを行う装置である。
【0031】
図4に示すように、製造装置200は、シャフト20の貫通孔21のZ1方向側の開口部21b(図3参照)を塞ぐパンチ部材210を備える。パンチ部材210は、ハイドロフォーミングを行う際に、軸方向(Z2方向側)に沿って移動することにより、シャフト20の端面51をZ2方向に押圧する機能を有する。パンチ部材210は、シャフト20に向かって軸方向に突出する突出部212を含む。突出部212は、パンチ部材210のZ2方向側の下面211からZ2方向側に突出している。図5に示すように、突出部212は、下方側から見て、円環状に形成されている。なお、下面211は、特許請求の範囲の「パンチ部材の面」の一例である。
【0032】
図6に示すように、突出部212は、軸方向に沿った断面視において、三角形形状を有する。すなわち、突出部212は、軸方向に沿った断面視において、Z2方向に向かって先細る形状を有する。また、突出部212は、径方向内側の傾斜面212aを有する。傾斜面212aは、軸方向に沿った断面において、径方向内側を向くとともに、軸方向に対して傾斜する。なお、傾斜面212aは、パンチ部材210の後述する傾斜面213と径方向に対向するように設けられている。また、傾斜面212aは、特許請求の範囲の「第3傾斜面」の一例である。
【0033】
また、突出部212の傾斜面212aの軸方向に対する傾斜角度θ2は、凹部52の傾斜角度θ1(図3参照)と略同一である。なお、図6では、突出部212のZ2方向側の先端部212bが尖った形状を有するように図示されているが、R加工された弧状に形成されていてもよい。
【0034】
図7に示すように、製造装置200は、パンチ部材210の突出部212をシャフト20(第2部分50)の端面51に押し込むことにより、端面51に凹部52を形成するように構成されている。そして、突出部212は、凹部52とともに、ハイドロフォーミングを行う際のシール部材として機能する。
【0035】
図6に示すように、パンチ部材210には、突出部212よりも径方向内側の位置に傾斜面213が設けられている。傾斜面213は、軸方向に対して傾斜するように設けられている。また、傾斜面213は、ハイドロフォーミング前のシャフト20の傾斜面53に沿うように(たとえば平行に)延びる。傾斜面213は、パンチ部材210の下面211に対して傾斜角度θ3だけ傾斜している。なお、突出部212の傾斜面212aの軸方向に対する傾斜角度θ2は、傾斜面213の軸方向に対する傾斜角度θ3よりも小さい。傾斜面212aの傾斜角度θ2が比較的小さいことにより、突出部212が端面51に押し込まれる際に傾斜面53側に逃がされるシャフト20の材料(肉)の量を比較的少なくすることが可能である。その結果、シャフト20の変形を抑制することが可能である。なお、傾斜面213は、特許請求の範囲の「第2傾斜面」の一例である。
【0036】
また、パンチ部材210の傾斜面213の軸方向に沿った長さL213の大きさは、突出部212の軸方向に沿った長さL212よりも大きい。また、突出部212の長さL212は、シャフト20の傾斜面53の軸方向に沿った長さL53よりも小さい。
【0037】
また、図4に示すように、製造装置200は、リフター230を備える。リフター230は、上面231(突出部232の上部)にシャフト20を配置した状態で、軸方向(Z1方向側)に移動可能に構成されている。そして、図8に示すように、リフター230は、シャフト20に向かって軸方向に突出する突出部232を含む。突出部232は、リフター230の上面231からZ1方向側に突出している。突出部232は、Z1方向に先細る形状を有する。そして、製造装置200は、突出部232をシャフト20(第3部分60)の端面61に押し込むことにより、端面61に凹部62を形成するように構成されている。そして、ハイドロフォーミングを行う際に、突出部232および凹部62は、シール部材として機能する。なお、リフター230および上面231は、それぞれ、特許請求の範囲の「パンチ部材」および「パンチ部材の面」の一例である。
【0038】
また、端面51側と同様に、突出部232の軸方向に沿った長さL232は、シャフト20の傾斜面63の軸方向に沿った長さL63よりも小さい。
【0039】
[本実施形態のロータの製造方法]
次に、図1図3図4、および図6図10を参照して、本実施形態によるシャフト20の加工方法およびロータ100の製造方法を説明する。図9には、ロータ100の製造工程のフローチャートが示されている。なお、端面61側のシールについては端面51側と同様であるので、これ以降の説明において、端面51側のシールの説明のみを行っている箇所は、端面61側も同様であるとして説明を省略している。
【0040】
まず、図9に示すように、ステップS1において、ロータコア10が形成(準備)される。具体的には、順送プレス加工装置(図示せず)内において、帯状の電磁鋼板から、孔部11a(図1参照)を有する複数の円環状の電磁鋼板11が打ち抜かれ、図1に示すように、複数の電磁鋼板11が軸方向に沿って積層される。これにより、環状(円筒形状)を有するロータコア10が形成される。また、本実施形態では、互いに同一の複数の電磁鋼板11が積層されており、ロータコア10(挿入孔10a)の内周面12が、軸方向に沿って面一になる形状を有するように、ロータコア10が形成される。
【0041】
ステップS2において、シャフト20が形成される。具体的には、第1部分40と、第2部分50と、第3部分60と、を含むシャフト20が形成される。そして、回転軸線C1に対して交差するように延びるように形成され、第1部分40と第2部分50とを接続する第1接続部分70と、第1部分40と第3部分60とを接続する第2接続部分80とを含む、シャフト20が形成される。また、第2部分50は、径方向の厚みがt1となるように形成される。また、第3部分60は、径方向の厚みがt1よりも大きいt2となるように形成される。
【0042】
また、シャフト20において、傾斜面53(図6参照)および傾斜面63(図8参照)が面取り加工により形成される。
【0043】
次に、ステップS3において、シャフト20がロータコア10の挿入孔10aに挿入される。具体的には、ロータコア10の挿入孔10aの上方(Z1方向側)に、シャフト20が配置され、ロータコア10に対して、シャフト20が下方(Z2方向側)に移動されることにより、シャフト20がロータコア10の挿入孔10aに挿入される。その結果、シャフト20の第1部分40の外周面41と、ロータコア10の内周面12とが径方向に対向した状態となる。
【0044】
次に、ステップS4において、パンチ部材210およびリフター230を配置する工程が行われる。まず、シャフト20が、製造装置200のリフター230の上面231に配置される。詳細には、シャフト20の端面61と、上面231の突出部232とが接触する。これにより、リフター230が、シャフト20に対してZ2方向側に配置される。
【0045】
次に、パンチ部材210がシャフト20に対してZ1方向側に配置される。詳細には、図6に示すように、ロータコア10およびシャフト20よりも上方に、柱状のパンチ部材210が配置される。そして、パンチ部材210が、ロータコア10およびシャフト20に対して下方に移動され、パンチ部材210がロータコア10およびシャフト20の近傍に配置される。
【0046】
ステップS5において、シャフト20をシールする工程が行われる。この工程では、パンチ部材210の突出部212が、シャフト20(第2部分50)の端面51に押し込まれ、端面51に凹部52が形成される。また、リフター230の突出部232が、シャフト20(第3部分60)の端面61に押し込まれ、端面61に凹部62が形成される。
【0047】
詳細には、まず、パンチ部材210が、ロータコア10およびシャフト20に対して下方に移動される。本実施形態では、突出部212がシャフト20の端面51に押し込まれながら(押し込まれることにより)、パンチ部材210の傾斜面213により、シャフト20の傾斜面53がシールされる。そして、突出部212と傾斜面213との間に挟まれるシャフト20の部分20aが圧縮されることに起因して生じる圧縮応力が傾斜面53と傾斜面213とのシール部20bに付与された状態で、シャフト20(貫通孔21)の開口部21bがシールされる。具体的には、軸方向に沿った断面視において三角形形状を有する突出部212の傾斜面212aと傾斜面213との間に挟まれるシャフト20の部分20aが圧縮されることに起因して生じる圧縮応力が、シール部20bに付与される。
【0048】
詳細には、図10に示すように、部分20aは、パンチ部材210からZ2方向側に圧縮力(押圧力)を受ける。ここで、突出部212の傾斜面212aによる圧縮力(押圧力)は、径方向内側に向かう力成分F1を含む。また、パンチ部材210の傾斜面213による圧縮力(押圧力)は、径方向外側に向かう力成分F2を含む。すなわち、部分20aには、力成分F1と力成分F2とにより径方向に圧縮される力が作用する。その結果、シール部20bには、圧縮応力が付与される。
【0049】
これにより、シール部20bに圧縮応力が付与されることにより、シール部20bに圧縮応力が付与されていない場合に比べて、シール部20bにおいて、シャフト20がパンチ部材210に対してより密着される。その結果、パンチ部材210の軸方向における圧縮力(押圧力)を過度に大きくしなくても、シール部20bにおけるシール性を確保することができる。その結果、シャフト20の内部の流体Lによる内圧によってシャフト20を膨張させる加工(ハイドロフォーミング)を行う場合に、シャフト20の軸方向の変形を防止しながらシャフト20のシール性を確保することが可能である。
【0050】
また、シャフト20のシール性が確保されることによって、シャフト20の内部の流体Lの圧力が維持されるので、シャフト20がロータコア10に強固に固定される。その結果、モータが回転する時に、シャフト20とロータコア10との相対的なずれ等に起因してロータ100の回転バランスが悪化するのを防止することができる。さらに、シャフト20の軸方向の変形が防止されることによって、ロータ100の回転バランスが悪化するのが防止される。すなわち、圧縮応力をシール部20bに付与した状態でシャフト20の開口部21bをシールすることは、ロータ100の回転バランスが悪化するのを防止する点で、効果が高い。
【0051】
また、突出部212の傾斜面212aは軸方向に対して傾斜しているので、パンチ部材210による軸方向の圧縮力に基づいて、傾斜面212aに直交する方向に力成分(F1)が生じる。その結果、パンチ部材210に傾斜面が設けられていない場合に比べて、上記圧縮応力を増加させることが可能である。
【0052】
また、本実施形態では、シャフト20の端面61側においても、端面51側と同様にシールが施される。具体的には、図8に示すように、突出部232がシャフト20の端面61に押し込まれながら(押し込まれることにより)、リフター230の傾斜面233により、シャフト20の傾斜面63がシールされる。そして、突出部232の傾斜面232aと傾斜面233との間に挟まれるシャフト20の部分20cが圧縮されることに起因して生じる圧縮応力が、傾斜面63と傾斜面233とのシール部20dに付与された状態で、シャフト20(貫通孔21)の開口部21cがシールされる。また、傾斜面63および傾斜面233は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1傾斜面」および「第2傾斜面」の一例である。また、傾斜面232aは、特許請求の範囲の「第3傾斜面」の一例である。
【0053】
これにより、シャフト20の軸方向の両側の開口部21bおよび開口部21cのシール性を向上させることが可能である。
【0054】
また、本実施形態では、シール工程(S5)では、シール部20bのみならず、突出部212の傾斜面212aとシャフト20(凹部52)とが接する部分20e(図7参照)、および、パンチ部材210の突出部212とパンチ部材210の傾斜面213との間に位置するパンチ部材210の下面211とシャフト20の端面51とが接する部分20f(図7参照)がシールされる。具体的には、部分20aとパンチ部材210とは、間に隙間が設けられることなく密着している。
【0055】
これにより、シール部20bのみにおいてシールされる場合に比べて、シャフト20のシール性をより向上させることが可能である。
【0056】
また、本実施形態では、シール工程(S5)において突出部212をシャフト20の端面51に押し込むことは、シャフト20の傾斜面53の軸方向に沿った長さL53(図6参照)よりも軸方向に沿った長さL212が小さい突出部212を、シャフト20の端面51に押し込むことである。具体的には、突出部212の軸方向に沿った長さL212は、0.25mm~1mm程度である。
【0057】
これにより、突出部212により押し出されるシャフト20の材料(肉)の量を低減することができるので、シャフト20の変形量を極力小さくすることが可能である。
【0058】
また、本実施形態では、パンチ部材210の傾斜面213によりシャフト20の傾斜面53をシールすることは、傾斜面53のうち軸方向の一方側(Z1方向側、端面51側)の一部を傾斜面213によりシールすることである。具体的には、パンチ部材210の傾斜面213は、突出部212を端面51に押し込むことにより傾斜面53に形成された逃がし痕部51bに接触している。そして、傾斜面213は、逃がし痕部51bのZ1方向側の一部とのみ接触している。すなわち、傾斜面213と逃がし痕部51bのZ2方向側の一部との間には隙間C4(図10参照)が形成されている。
【0059】
これにより、傾斜面213によりシールされる面の面積を小さくすることができる。その結果、傾斜面53にかかる軸方向の力を低減することができる。これにより、シャフト20がパンチ部材210により軸方向に押圧されることに起因して変形するのを防止することができる。これにより、パンチ部材210とシャフト20との間に隙間が形成されてシール性が弱まるのをより確実に防止することが可能である。
【0060】
また、本実施形態では、シール工程(S5)において突出部212をシャフト20の端面51に押し込むことは、シャフト20の径方向(R方向)における端面51の中心C2(図3参照)よりも開口部21b(図3参照)に寄った端面51の部分に、突出部212を押し込むことである。すなわち、突出部212は、端面51の中心C2よりもR1方向側の端面51の部分に押し込まれる。具体的には、突出部212は、開口部21bの近傍の端面51の部分に押し込まれる。
【0061】
これにより、突出部212がシール部20b(傾斜面213)のより近傍に配置されるので、シャフト20においてパンチ部材210により圧縮される(圧縮応力がかかる)部分20aを比較的小さくすることが可能である。
【0062】
また、本実施形態では、シール工程は、パンチ部材210の傾斜面213により、円筒形状を有するシャフト20の傾斜面53をシールすることによって、突出部212と傾斜面213との間に挟まれるシャフト20の部分20aが圧縮されることに起因して生じる圧縮応力をシール部20bに付与した状態で、シャフト20の開口部21bをシールする工程である。
【0063】
これにより、ハイドロフォーミングにより円筒形状のシャフト20を加工する場合に、シール部20bに付与された圧縮応力により、シャフト20のシール性を容易に向上させることが可能である。
【0064】
具体的には、シャフト20の貫通孔21の開口部21bは、軸方向から見て、円形形状を有している。すなわち、シャフト20の傾斜面53は、円環形状を有している。また、パンチ部材210の突出部212および傾斜面213は、傾斜面53の同心円状の円環形状(図5参照)を有している。
【0065】
次に、ステップS6において、ハイドロフォーミングが行われる。この工程は、シャフト20の内部が密閉された状態で、シャフト20の内部に流体L(図4参照)を充填させるとともに流体Lによる内圧によってシャフト20を膨張させることにより、シャフト20を変形させる変形工程である。具体的には、この変形工程は、ロータコア10の挿入孔10aにシャフト20を挿入した状態で、かつ、シャフト20の内部が密閉された状態で、シャフト20の内部に流体Lを充填させるとともに流体Lによる内圧によってシャフト20を膨張させることにより、挿入孔10a(ロータコア10)の内周面12にシャフト20を圧接させることによって、シャフト20をロータコア10に固定する工程である。
【0066】
具体的には、図4に示すように、シャフト20の内部に流体Lを充填させるとともに流体Lによる内圧Pによってシャフト20を膨張させることにより、挿入孔10a(ロータコア10)の内周面12に第1部分40を圧接させるハイドロフォーミングによって、シャフト20がロータコア10に固定される。
【0067】
また、突出部212および突出部232の各々は、楔としての機能も有するので、シール性がより強固に維持された状態で、ハイドロフォーミングが行われる。すなわち、突出部212および突出部232の各々は、シャフト20が径方向内側から外側に広がるのを抑制するので、高圧のハイドロフォーミングの場合でもシール部(20b、20d)のシール性が弱くなるのを抑制することが可能である。
【0068】
これにより、ハイドロフォーミングによりシャフト20をロータコア10に固定する際のシャフト20のシール性を容易に確保することができるので、シャフト20をより強固にロータコア10に固定することが可能である。
【0069】
そして、流体Lの内圧が上昇されながら、パンチ部材210がZ2方向に移動される。これにより、シャフト20の内圧がPとなる。内圧Pは、たとえば、高圧(数百MPa)であり、シャフト20の第1部分40を塑性変形可能な圧力であるとともに、ロータコア10を弾性変形させる圧力である。言い換えると、内圧Pは、シャフト20をロータコア10に固定させることが可能な圧力である。これにより、第1部分40の外径がD11に拡大される。そして、シャフト20が径方向に膨張されることにより、挿入孔10a(ロータコア10)の内周面12に、シャフト20(第1部分40)が圧接され、シャフト20がロータコア10に固定される。
【0070】
また、第1部分40がロータコア10を径方向外側に押圧することにより、ロータコア10も、径方向外側に向かって広がるように弾性変形するとともに、第1部分40が径方向外側に向かって広がるように塑性変形する。その後、シャフト20の内部の流体Lが除去され、ロータコア10が径方向内側に縮み、ロータコア10が弾性変形する前の形状に戻ろうとする。そして、塑性変形した第1部分40が、径方向内側に縮んだロータコア10により圧接された状態(締り嵌めされた状態)になる。これにより、図1に示すように、シャフト20がロータコア10に固定された状態になる。
【0071】
また、ハイドロフォーミングの後では、シャフト20に凹部43が形成されている。その後、ロータコア10およびシャフト20は、製造装置200から取り外される。
【0072】
そして、ステップS7において、図1に示すように、軸受部材31および32がシャフト20に配置される。具体的には、軸受部材31が第2部分50を取り囲むように配置され、軸受部材32が第3部分60を取り囲むように配置される。これにより、ロータ100が製造される。その後、ロータ100の径方向外側にステータが配置されることにより、回転電機が製造される。なお、上記のステップS2~S6までが、シャフト20の加工方法の説明であり、ステップS1~S7までがロータ100の製造方法の説明である。
【0073】
(比較例)
ここで、比較例として、突出部が設けられていないシール部材310を用いてシャフト20をシールした場合の断面図を図11に示す。図11に示すように、シャフト20の傾斜面53とシール部材310の傾斜面313とが接触することによりシールされる。この場合、傾斜面53の近傍で、シャフト20の端面51とシール部材310の下面311との間に隙間C3が生じる。この隙間C3は、シャフト20の端面51の傾斜面53側の近傍が、シール部材310からの押圧力によって、Z2方向側に変形させられることによって形成されている。隙間C3が形成されることによって、隙間が形成されず密着している場合に比べてシール性が弱いため、ハイドロフォーミング時においてシャフト20の内部の圧力を確保しにくい。すなわち、本実施形態のようにパンチ部材210に突出部212を設けることによって、パンチ部材210とシャフト20とのシール性をより確実に確保することが可能である。
【0074】
[上記実施形態の効果]
上記実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
上記実施形態では、管材(20)の加工方法は、パンチ部材(210、230)の突出部(212、232)を管材(20)の軸方向の端面(51、61)に押し込みながら、管材(20)の貫通孔(21)の内周面(21a)と端面(51、61)とを接続するとともに軸方向に対して傾斜する第1傾斜面(53、63)に沿うように延びるパンチ部材(210、230)の第2傾斜面(213、233)により、管材(20)の第1傾斜面(53、63)をシールすることによって、突出部(212、232)と第2傾斜面(213、233)との間に挟まれる管材(20)の部分(20a、20c)が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力を第1傾斜面(53、63)と第2傾斜面(213、233)とのシール部(20b、20d)に付与した状態で、管材(20)の開口部(21b、21c)をシールするシール工程を備える。また、管材(20)の加工方法は、シール工程の後、管材(20)の内部が密閉された状態で、管材(20)の内部に流体(L)を充填させるとともに流体(L)による内圧によって管材(20)を膨張させることにより、管材(20)を変形させる変形工程を備える。
【0076】
これにより、シール部(20b、20d)に圧縮応力が付与されることにより、シール部(20b、20d)に圧縮応力が付与されていない場合に比べて、シール部(20b、20d)において、管材(20)がパンチ部材(210、230)に対してより密着される。その結果、パンチ部材(210、230)の軸方向における圧縮力(押圧力)を過度に大きくしなくても、シール部(20b、20d)におけるシール性を確保することができる。これにより、管材(20)の内部の流体(L)による内圧によって管材(20)を膨張させる加工を行う場合に、管材(20)の軸方向の変形を防止しながら管材(20)のシール性を確保することができる。特に、モータのロータ(100)の製造時において、管材(20)としてシャフト(20)をロータコア(10)に挿入して膨張させて固定する場合に、シャフト(20)の軸方向の変形を防止しながらシャフト(20)のシール性を確保することができる。その結果、シャフト(20)のシール性が確保されることによって、シャフト(20)の内部の流体(L)の圧力が維持されるので、シャフト(20)がロータコア(10)に強固に固定される。その結果、モータが回転する時に、シャフト(20)とロータコア(10)との相対的なずれ等に起因してロータ(100)の回転バランスが悪化するのを防止することができる。さらに、シャフト(20)の軸方向の変形が防止されることによって、ロータ(100)の回転バランスが悪化するのが防止される。すなわち、圧縮応力をシール部(20b、20d)に付与した状態で管材(20)の開口部(21b、21c)をシールすることは、ロータ(100)の回転バランスが悪化するのを防止する点で、効果が高い。
【0077】
また、上記実施形態では、シール工程において圧縮応力をシール部(20b、20d)に付与することは、パンチ部材(210、230)の第2傾斜面(213、233)と管材(20)の径方向に対向するとともに軸方向に対して傾斜する突出部(212、232)の第3傾斜面(212a、232a)と第2傾斜面(213、233)との間に挟まれる管材(20)の部分(20a、20c)が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力を、シール部(20b、20d)に付与することである。
【0078】
これにより、突出部(212、232)の第3傾斜面(212a、232a)は軸方向に対して傾斜しているので、パンチ部材(210、230)による軸方向の圧縮力に基づいて、第3傾斜面(212a、232a)に直交する方向に力成分が生じる。その結果、パンチ部材(210、230)に傾斜面が設けられていない場合に比べて、上記圧縮応力を増加させることができる。
【0079】
また、上記実施形態では、シール工程において圧縮応力をシール部(20b、20d)に付与することは、軸方向に沿った断面視において三角形形状を有する突出部(212、232)の第3傾斜面(212a、232a)と第2傾斜面(213、233)との間に挟まれる管材(20)の部分(20a、20c)が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力を、シール部(20b、20d)に付与することである。
【0080】
これにより、三角形形状を有する突出部(212、232)の第3傾斜面(212a、232a)に直交する方向に生じる力成分によって、パンチ部材(210、230)に傾斜面が設けられていない場合に比べて、上記圧縮応力を増加させることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、シール工程は、シール部(20b、20d)のみならず、突出部(212、232)の第3傾斜面(212a、232a)と管材(20)とが接する部分(20e)、および、パンチ部材(210、230)の突出部(212、232)とパンチ部材(210、230)の第2傾斜面(213、233)との間に位置するパンチ部材(210、230)の面(211、231)と管材(20)の端面(51、61)とが接する部分(20f)をシールする工程である。
【0082】
これにより、シール部(20b、20d)のみにおいてシールされる場合に比べて、管材(20)のシール性をより向上させることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、シール工程において突出部(212、232)を管材(20)の端面(51、61)に押し込むことは、管材(20)の第1傾斜面(53、63)の軸方向に沿った長さ(L53、L63)よりも軸方向に沿った長さ(L212、L232)が小さい突出部(212、232)を、管材(20)の端面(51、61)に押し込むことである。
【0084】
これにより、突出部(212、232)により押し出される管材(20)の材料(肉)の量を低減することができるので、管材(20)の変形量を極力小さくすることができる。
【0085】
また、上記実施形態では、パンチ部材(210、230)の第2傾斜面(213、233)により管材(20)の第1傾斜面(53、63)をシールすることは、第1傾斜面(53、63)のうち軸方向の一方側の一部を第2傾斜面(213、233)によりシールすることである。
【0086】
これにより、第2傾斜面(213、233)によりシールされる面の面積を小さくすることができる。その結果、第1傾斜面(53、63)にかかる軸方向の力を低減することができる。これにより、管材(20)がパンチ部材(210、230)により軸方向に押圧されることに起因して変形するのを防止することができる。これにより、パンチ部材(210、230)と管材(20)との間に隙間が形成されてシール性が弱まるのをより確実に防止することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、シール工程において突出部(212、232)を管材(20)の端面(51、61)に押し込むことは、管材(20)の径方向における端面(51、61)の中心(C2)よりも開口部(21b、21c)に寄った端面(51、61)の部分に、突出部(212、232)を押し込むことである。
【0088】
これにより、突出部(212、232)がシール部(20b、20d)(第2傾斜面(213、233))のより近傍に配置されるので、管材(20)においてパンチ部材(210、230)により圧縮される(圧縮応力がかかる)部分(20a、20c)を比較的小さくすることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、配置工程は、パンチ部材(210、230)を、管材(20)に対して軸方向の両側に配置する工程である。また、シール工程は、管材(20)の軸方向の両側において、パンチ部材(210、230)の突出部(212、232)とパンチ部材(210、230)の第2傾斜面(213、233)との間に挟まれる管材(20)の部分(20a、20c)が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力をシール部(20b、20d)に付与した状態で、管材(20)の軸方向の両側に設けられる開口部(21b、21c)をシールする工程である。
【0090】
これにより、管材(20)の軸方向の両側の開口部(21b、21c)のシール性を向上させることができる。
【0091】
また、上記実施形態では、シール工程は、パンチ部材(210、230)の第2傾斜面(213、233)により、円筒形状を有する管材(20)の第1傾斜面(53、63)をシールすることによって、突出部(212、232)と第2傾斜面(213、233)との間に挟まれる管材(20)の部分(20a、20c)が圧縮されることに起因して生じる圧縮応力をシール部(20b、20d)に付与した状態で、管材(20)の開口部(21b、21c)をシールする工程である。
【0092】
これにより、ハイドロフォーミングにより円筒形状の管材(20)を加工する場合に、管材(20)のシール性を容易に向上させることができる。
【0093】
また、上記実施形態では、変形工程は、挿入孔(10a)を有するロータコア(10)の挿入孔(10a)に管材(20)としてのシャフト(20)を挿入した状態で、かつ、シャフト(20)の内部が密閉された状態で、シャフト(20)の内部に流体(L)を充填させるとともに流体(L)による内圧によってシャフト(20)を膨張させることにより、挿入孔(10a)の内周面(12)にシャフト(20)を圧接させることによって、シャフト(20)をロータコア(10)に固定する工程である。
【0094】
これにより、ハイドロフォーミングによりシャフト(20)をロータコア(10)に固定する際のシャフト(20)のシール性を容易に確保することができるので、シャフト(20)をより強固にロータコア(10)に固定することができる。
【0095】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。なお、以下において、端面51側についてのみ記載している内容は端面61側についても同様であるので、記載を省略している。
【0096】
たとえば、上記実施形態では、パンチ部材210の傾斜面213(第2傾斜面)と突出部の傾斜面212a(第3傾斜面)とによりシャフト20(管材)の部分20aが圧縮される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、突出部に軸方向に沿った側面を形成して、この側面とパンチ部材210の傾斜面213とにより、部分20aが圧縮されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、突出部212が、軸方向に沿った断面視において三角形形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。突出部212は、上記断面視において、三角形以外の形状(たとえば四角形、円形、台形など)を有していてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、シャフト20(管材)の傾斜面53(第1傾斜面)の軸方向に沿った長さL53よりも、突出部212の軸方向に沿った長さL212が小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。突出部212の軸方向に沿った長さL212が、傾斜面53(第1傾斜面)の軸方向に沿った長さL53以上であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、パンチ部材210の傾斜面213(第2傾斜面)は、シャフト20(管材)の傾斜面53(第1傾斜面)のうち軸方向の一方側の一部をシールする例を示したが、本発明はこれに限られない。パンチ部材210の傾斜面213が、シャフト20の傾斜面53の全体をシールしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、突出部212が、シャフト20(管材)の径方向における端面51の中心C2よりも開口部21bに寄った端面51の部分に押し込まれる例を示したが、本発明はこれに限られない。突出部212が、中心C2の位置、または、中心C2よりも開口部21bとは反対側の部分に押し込まれてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、軸方向の両側において、上記圧縮応力を利用したシールが施される例を示したが、本発明はこれに限られない。軸方向の一方においてのみ上記圧縮応力を利用したシールが施されてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、シャフト20(管材)が円筒形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。シャフト20が円筒形状以外(たとえば筒状の角柱)の筒状形状を有していてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、ロータコア10にシャフト20を固定する場合のハイドロフォーミングを例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ロータ以外(たとえば組み立てカムシャフト)を製造する場合のハイドロフォーミングにおいて、上記実施形態に示したシールの方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10…ロータコア、10a…挿入孔、12…内周面(挿入孔の内周面)20…シャフト(管材)、20a、20c…部分(圧縮される部分)、20b、20d…シール部、20e…部分(第3傾斜面と管材とが接する部分)、20f…部分(パンチ部材の面と管材の端面とが接する部分)、21…貫通孔、21a…内周面(貫通孔の内周面)、21b、21c…開口部、51、61…端面、53、63…傾斜面(シャフトの第1傾斜面)、210…パンチ部材、211…下面(パンチ部材の面)、212、232…突出部、212a、232a…傾斜面(突出部の第3傾斜面)、213、233…傾斜面(パンチ部材の第2傾斜面)、230…リフター(パンチ部材)、231…上面(パンチ部材の面)、C2…中心(端面の径方向の中心)、L…流体、L53、L63…長さ(第1傾斜面の長さ)、L212、L232…長さ(突出部の長さ)
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