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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】内装織物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20240527BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20240527BHJP
   D03D 15/513 20210101ALI20240527BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20240527BHJP
【FI】
D03D1/00 Z
D03D15/20 100
D03D15/513
D03D15/283
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019011494
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2019131944
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018011918
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517091403
【氏名又は名称】合名会社安田商店
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-262940(JP,A)
【文献】特開平08-260286(JP,A)
【文献】特開2002-061047(JP,A)
【文献】特開平11-293542(JP,A)
【文献】特開2017-179632(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176859(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/116938(WO,A1)
【文献】特表2010-527825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00 - 7/74
A47C 31/10 - 31/11
B32B 1/00 - 43/00
B60R 13/02
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
D03D 1/00 - 27/18
D06M 13/00 - 15/715
D06N 1/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
27.2~50.5重量%のモダクリル繊維と72.8~49.5重量%の難燃性ポリエステル繊維とを交織した織物を用いた内装織物の製造方法であって
前記モダクリル繊維は、カネカロン繊維であり、
前記織物に対して、フッ素系撥水剤を塗布した後に、120~150℃で1~2分乾燥させる撥水処理を施すことによって撥水層を形成する
ことを特徴とする内装織物の製造方法
【請求項2】
請求項1に記載の内装織物の製造方法において、
前記織物は、2.0%owfの抗菌剤を吸着させた前記難燃性ポリエステル繊維を交織したことを特徴とする内装織物の製造方法
【請求項3】
50.5~66.0重量%のモダクリル繊維と49.5~34.0重量%の非難燃性ポリエステル繊維とを交織した織物を用いた内装織物の製造方法であって
前記モダクリル繊維は、カネカロン繊維であり、
前記織物に対して、フッ素系撥水剤を塗布した後に、120~150℃で1~2分乾燥させる撥水処理を施すことによって撥水層を形成する
ことを特徴とする内装織物の製造方法
【請求項4】
請求項3に記載の内装織物の製造方法において、
前記織物は、2.0%owfの抗菌剤を吸着させた前記非難燃性ポリエステル繊維を交織したことを特徴とする内装織物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内用のカーテンや壁などに張り付ける、難燃性、撥水性あるいは抗菌性、防臭性を有する内装織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリカーボネートを主材料として構成される基材層と、この基材層の一方の面側に積層して設けられた被覆層とからなる積層体を備え、ASTM E906に規定されたヒートリリース試験に準拠して、積層体を燃焼させた際に、着火から5分以内で測定された最大発熱速度が65kW/m以下となるようにした航空機用内装材がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-078708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の航空機用内装材は、強度を確保しつつ、軽量化がなされ、かつ難燃性を有する内装材であるが、基材層及び被覆層からなる積層体を備えているため、柔軟性に欠け、また、撥水性を有しないという問題がある。
【0005】
また、航空機、特に旅客機内には旅客が搭乗しており、衛生面や防臭面からも抗菌性や防臭性のある内装材が求められているが、従来の航空機用内装材には、難燃性、抗菌性及び防臭性を有するものはないという問題もあった。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、柔軟性を有し、さらに難燃性、撥水性あるいは抗菌性、防臭性を有する内装織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
[適用例1]
適用例1の内装織物は、27.2~50.5重量%のモダクリル繊維と72.8~49.5重量%の難燃性ポリエステル繊維とを交織した織物と、フッ素系撥水剤を塗布した前記織物を、120~150℃で1~2分乾燥させる撥水処理を施した撥水層と、を備え、前記モダクリル繊維は、カネカロン繊維であることを要旨とする。
【0009】
このような内装織物では、モダクリル繊維とポリエステル繊維とを用いることにより難燃性を有する織物とすることができる。
さらに、モダクリル繊維とポリエステル繊維と用いた織物をフッ素系撥水剤により撥水処理してあるため、撥水性を有する内装織物とすることができる。また、難燃性や撥水性を得るために、基材層や被覆層などを積層する必要がないため、柔軟性も得ることができる。
【0010】
[適用例2]
適用例2の内装織物は、適用例1に記載の内装織物において、前記織物は、2.0%owfの抗菌剤を吸着させた前記難燃性ポリエステル繊維を交織したことを要旨とする。
【0011】
このような内装織物では、ポリエステル繊維に抗菌剤を吸着させてあるため、内装織物に抗菌性及び防臭性を与えることができる。
【0013】
このような内装織物では、難燃性ポリエステル繊維を用いることにより、モダクリル繊維の含有率を低減しても難燃性を確保することができる。
なお、「モダクリル繊維が30重量%以上、難燃性ポリエステル繊維が70重量%以下の組み合わせとなっている」とは、モダクリル繊維が30重量%のときは難燃性ポリエステル繊維が30重量%、モダクリル繊維が50重量%のときは難燃性ポリエステル繊維が50重量%というように、モダクリル繊維と難燃ポリエステル繊維とを合わせて100重量%となる中でモダクリル繊維を30重量%以上、難燃性ポリエステル繊維を70重量%以下となる割合で組みあわせるという意味である。
【0014】
[適用例
適用例3の内装織物は、50.5~66.0重量%のモダクリル繊維と49.5~34.0重量%の非難燃性ポリエステル繊維とを交織した織物と、フッ素系撥水剤を塗布した前記織物を、120~150℃で1~2分乾燥させる撥水処理を施した撥水層と、を備え、前記モダクリル繊維は、カネカロン繊維であることを要旨とする内装織物である。
[適用例4]
適用例4の内装織物は、適用例3に記載の内装織物において、前記織物は、2.0%owfの抗菌剤を吸着させた前記非難燃性ポリエステル繊維を交織したことを要旨とする
【0015】
このような内装織物では、非難燃性ポリエステル繊維を用いても難燃性のある織物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】内装織物の撥水性能及び防炎性能を示す図である。
図2】防炎試験時の試験体の燃焼状態を示す図である。
図3】第2実施形態における内装織物の撥水性能及び防炎性能を示す図である。
図4】その他の実施形態における内装織物の撥水性能及び防炎性能を示す図である。
図5】第3実施形態において、内装織物に対して抗菌性試験を行った結果を示す図である。
図6】第3実施形態及び第4実施形態において、内装織物を洗濯した後の抗菌剤の残留量を測定した結果を示す図である。
図7】第3実施形態及び第4実施形態において、内装織物に対して防炎試験を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0018】
[第1実施形態]
(内装織物1の製法)
まず、織物を下記(1)~(3)の工程により製造する。
【0019】
(1)交織
モダクリル繊維の横糸と難燃性ポリエステル繊維の縦糸とを交織して織物を製作する。モダクリル繊維は、アクリル繊維のうち、アクリロニトリルの重量割合が 85%より少なく,35%以上のものをいう。主にアクリロニトリルと塩化ビニルを共重合してつくる合成繊維である。
【0020】
本実施形態では、モダクリル繊維として、株式会社カネカ製のカネカロン(登録商標)を50.5重量%使用し、難燃性ポリエステル繊維として帝人株式会社製のスーパーエクスター(登録商標)を49.5重量%使用している。
【0021】
また、交織方法としては、従来行われている種々の方法を用いればよいため、その方法についての説明は省略する。
なお、難燃性ポリエステル繊維としては、スーパーエクスター以外にも、東レ株式会社製のアンフラ(登録商標)、カワボウテキスチャード株式会社製のクリスタル難燃糸、山越株式会社製の難燃BRなどを使用してもよい。
【0022】
(2)前精練
前精練は、織物の不純物を落として後述する撥水処理を可能とする工程である。前精練では、織物を常温の精練液に浸した後、精練開始後5分~10分の間、精練液を80~90℃に加熱する。その後、60℃のお湯で1~2分洗浄する。
【0023】
精練液としては、織物量の20倍の水に、織物量の3%の苛性ソーダ及び織物量の1%中性洗剤を混ぜたものを使用する。
【0024】
(3)撥水処理
撥水処理では、フッ素系撥水剤を塗布し、120~150℃の熱風で1~2分乾燥させ内装織物1とした。本実施形態では、フッ素系撥水剤として、ダイキン工業株式会社のユニダイン(登録商標)を使用している。また、本実施形態では、モダクリル繊維としてカネカロンを用いているため、乾燥温度を120~130℃として内装織物1の風合いを確保した。
【0025】
また、乾燥温度を150℃よりも高くすると、モダクリル繊維が熱硬化を起こしてしまうため、乾燥温度は150℃以下にする。
【0026】
(内装織物1の性能)
内装織物1は撥水性と難燃性を備えており、その性能を判定するために性能確認試験を実施した。その試験内容及び試験結果を下記(1)、(2)に示す。
【0027】
(1)撥水性能
まず、内装織物1の撥水性能について説明する。撥水試験は、JIS L 1092(繊維製品の防水試験方法)に規定される撥水度試験(スプレー試験)により行った。撥水試験の具体的な内容を下記(a)、(b)に示す。
(a)45°に傾けた試験体(内装織物1)に水250mlをスプレーで散布する。
(b)余分な水滴を落とした後、湿潤状態を比較見本と比較して判定する。この場合、初期状態と、試験体(内装織物1)を5回洗濯した後の性能値をJIS L 1092で規定された等級で示す。
(c)撥水性としては、4級以上(4級又は5級)を合格とする。
【0028】
この撥水試験を複数の組成の試験体について実施した結果、図1に示すように、内装織物1は、カネカロン繊維27.2重量%~50.5重量%、難燃性ポリエステル72.8重量%~49.5重量%の組み合わせにおいて、初期及び5回洗濯後のいずれにおいても4級以上を確保している。
【0029】
(2)防炎性能
次に、内装織物1の防炎性能について説明する。防炎試験は、公益財団法人日本防炎協会が定める防炎物品の防炎性能基準(根拠法令:消防法施行規則第4条の3第3項から第7項)の規定により行った。
【0030】
内装織物1の防炎試験は、45°コイル法と称される方法で行った。防炎試験の具体的内容は、下記(a)~(e)に示す。
【0031】
(a)試験体:幅10cm、質量が1になる長さ(20cmを超える場合は1gに満たなくても20cmとする)の試験体(内装織物1)を5体(1種類の組成の内装織物1について5体)とする。
【0032】
(b)洗濯方法:水洗い洗濯又はドライクリーニング、温水浸漬50±2℃×30分で洗濯する。
(c)状態調節:50±2℃恒温乾燥機中24時間の後、シリカゲル入りデシケータ中2時間以上、又は、105±2℃恒温乾燥機中1時間の後シリカゲル入りデシケータ中2時間以上
【0033】
(d)燃焼方法:図2に示すように試験体を45°に傾けた状態で保持し、接炎バーナー10の炎の長さが45mmとなるように調整して、試験体に接炎させる。
(e)評価基準:接炎回数3回以上で発火しないこと
【0034】
この防炎試験を複数の組成の試験体(内装織物1)について実施した結果、図1に示すように、内装織物1は、カネカロン繊維27.2重量%~50.5重量%、難燃性ポリエステル72.8重量%~49.5重量%の組み合わせにおいて防炎性能を満たしていることが確認できた。
【0035】
(内装織物1の特徴)
上記の撥水試験及び防炎試験の結果から、内装織物1が撥水性能判定基準の撥水性及び防炎性能の基準を満たしており、撥水性と防炎性を有するものである。
また、縦糸に難燃性ポリエステル繊維を使用しているため、内装織物1が織りやすい(製織性がよい)ものとなる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、ポリエステル繊維として非難燃性ポリエステル繊維を用いた内装織物2について説明する。第2実施形態では、内装織物2の製法及び試験方法の手順は第1実施形態の手順と同じであり、使用している素材、試験条件が異なるだけであるため、異なる箇所の説明を行い、同じ箇所の説明は省略する。
【0037】
(1)交織
第2実施形態における内装織物2は、横糸のモダクリル繊維として、株式会社カネカ製のカネカロン(登録商標)を54.5重量%使用し、非難燃性ポリエステル繊維として帝人株式会社製のセミダルSRを45.5重量%使用している。なお、非難燃性ポリエステルとして、セミダルSRの代わりに、山越株式会社のインターSDなどを使用してもよい。
【0038】
(2)撥水性能
第1実施形態と同様の撥水試験を複数の組成の試験体(内装織物2)について実施した結果、図3に示すように、内装織物2は、カネカロン繊維50.5重量%~66.0重量%、非難燃性ポリエステル49.5重量%~34.0重量%の組み合わせにおいて、初期及び5回洗濯後のいずれにおいても4級以上を確保しており、撥水性能を満たしていることが確認できた。
【0039】
(3)防炎性能
第1実施形態と同様の防炎試験を複数の組成の試験体(内装織物2)について実施した結果、図3に示すように、内装織物2は、カネカロン繊維50.5重量%~66.0重量%、非難燃性ポリエステル49.5重量%~34.0重量%の組み合わせにおいて防炎性能を満たしていることが確認できた。
【0040】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態として、内装織物2に抗菌性及び防臭性を持たせた内装織物3について説明する。
【0041】
(内装織物3の製法)
内装織物3では、第1実施形態における内装織物2と同様の素材、つまり、モダクリル繊維の横糸と非難燃性ポリエステル繊維の横糸とを用いる、
【0042】
また、製法においては、(1)交織の前工程として、非難燃性ポリエステル繊維への抗菌剤を吸着させる。つまり、非難燃性ポリエステル繊維の生地総重量の1%分の抗菌剤を浴中に投入して染液を作り、その染液を用いて、高圧チーズ染色により、湿熱130~135℃の条件で染色する。これにより、非難燃性ポリエステル繊維に対して、抗菌剤2.0[%owf」を吸着させることができる。
【0043】
以降、第1実施形態における内装織物1と同じように(1)交織、(2)前精練及び(3)撥水処理を行う。
【0044】
このように、非難燃性ポリエステル繊維に抗菌剤を吸着させた後に交織、前精錬及び撥水処理を行う理由は、モダクリル繊維と非難燃性ポリエステル繊維との耐熱温度が異なるため、モダクリル繊維と非難燃性ポリエステル繊維を交織した後では、染色時の温度を十分に上げることができない。つまり、交織後では、非難燃性ポリエステル繊維に対して抗菌剤を十分に吸着させることができない。したがって、交織する前の糸染の段階(工程)で、染色温度を上げることにより、非難燃性ポリエステル繊維に抗菌剤を十分に吸着させ、必要な抗菌性を確保するためである。これは、難燃性ポリエステル繊維についても同様である。
【0045】
(内装織物3の性能)
(1)抗菌性及び防臭性
抗菌性試験は、JIS L 1092:2015(菌液吸収法(定量試験))に規定される混釈平板培養法により行った。菌液吸収法では、対象となる抗菌加工試料と標準布の両方に菌液を接種し培養する。同じ条件下で一定時間経過後、抗菌加工試料と標準布の菌数を測定し、比較するという方法で試験が行われる。なお、試験菌としては、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)を用いた。
【0046】
試験成立判定の条件としては、
・接種菌濃度(CFU/mL):1×10~3×10
・増殖値[F]:1.0以上
・対照試料における3検体の最大最小差(Log):1以下
・試験試料における3検体の最大最小差(Log):2以下
【0047】
JISの抗菌効果としては、
・抗菌活性値[A]≧2.0
【0048】
SEK(Sen-i Evaluation Kinoの略)マーク認定基準としては、
・抗菌防臭加工:抗菌活性値[A]≧2.2
・制菌加工(一般用途):抗菌活性値[A]≧増殖値[F]
・制菌加工(特殊用途):抗菌活性値[A]>増殖値[F]
となっている。
【0049】
内装織物3に対して上記抗菌性試験を行った結果を図5に示す。図5(a)に示すように、試験菌濃度:1.6×10の試験菌を用いた。なお、試験菌液には界面活性剤(Tween80)を0.05%添加してある。
【0050】
また、図5(b)に示すように標準布として標準綿布を用い、図5(c)に示すように、試験試料として内装織物3をSEK高温加速洗濯法(JAFET標準配合洗剤を使用)により5回洗濯を行ったものを使用した。
【0051】
図5に示すように、試験菌液濃度(図5(a)参照)、増殖値[F]及び対象試料における3検体の最大最小差(図5(b)参照)、試験試料における3検体の最大最小差(図5(c)参照)のいずれもが試験成立判定条件を満たし、抗菌活性値[A](図5(c)参照)もJIS抗菌効果がある数値を満たしている。
【0052】
さらに、抗菌防臭加工、制菌加工(一般用途)及び制菌加工(特殊用途)のいずれもがSEKマーク認定基準を満たしており、十分な抗菌性と防臭性が得られていることが分かる。
【0053】
さらに、図6(a)に、内装織物3を洗濯した後の抗菌剤の残留量を測定した結果を示す。図6(a)の中で洗濯回数のL0は、洗濯を行わない状態、L5とL10は、それぞれ、SEK高温加速洗濯法により、5回と10回の洗濯を行った状態を示している。
【0054】
図6(a)に示すように、内装織物3を洗濯しない状態(L0の状態)では、抗菌剤残留量は、0.12[%owf]であり、洗濯回数が5回(L5の状態)、10回(L10の状態)の場合、抗菌剤残留量は、それぞれ、0.13[%owf]、0.12[%owf]であり、洗濯回数が10回となった場合でも、抗菌剤が十分に残留していることが分かる。
【0055】
(防炎試験)
また、図7(a)に、内装織物3に対して防炎試験を行った結果を示す。図7(a)において、内装織物3_1は、モダクリルを48.3%、非難燃ポリエステルを51.7%交織した207[g/m]の織物であり、内装織物3_2は、モダクリルを43.0%、非難燃ポリエステルを57.0%交織した188[g/m]の織物である。
【0056】
図7(a)に示すように、試験は、1分間加熱時と着荷後3秒加熱時において、残炎時間、残塵時間及び炭化面積を計測した。試験の結果、日本防炎協会の防炎(イ)ラベルの合格基準を達成していることが分かった。
【0057】
(内装織物3の特徴)
内装織物3では、難燃性ポリエステルの分子構造において非結晶の部分があり、温度を上げると、非結晶の部分に隙間が空き、その隙間に染料や防炎剤、抗菌剤などの薬剤が浸透する。
【0058】
難燃性ポリエステルの場合、抗菌剤の染液を130~135℃の温度としているが、この温度で難燃性ポリエステルの非結晶部分の隙間が空いて、その隙間に抗菌剤が浸透する。したがって、その難燃性ポリエステルをカネカロン繊維と交織した内装織物3に、難燃性、撥水性に加え抗菌性及び防臭性を与えることができる。
【0059】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態として、内装織物2に抗菌性及び防臭性を持たせた内装織物4について説明する。
【0060】
(内装織物4の製法)
内装織物4では、第2実施形態における内装織物1と同様の素材、つまり、モダクリル繊維の横糸と難燃性ポリエステル繊維の横糸とを用いる、また、第3実施形態と同様にして、難燃性ポリエステル繊維への抗菌剤を吸着させる。これにより、難燃性ポリエステル繊維に対して、抗菌剤2.0[%owf]を吸着させることができる。
以降、第1実施形態における内装織物2と同じように(1)交織、(2)前精練及び(3)撥水処理を行う。
【0061】
(内装織物4の性能)
(抗菌性及び防臭性)
図6(b)に、内装織物4を洗濯した後の抗菌剤の残留量を測定した結果を示す。図6(b)に示すように、内装織物4を洗濯しない状態(L0の状態)、洗濯回数が5回(L5の状態)、10回(L10の状態)のいずれの場合においても、抗菌剤残留量は、0.01[%owf]以下であり、洗濯回数が10回となった場合でも、抗菌剤残留量に変化がないことが分かる。
【0062】
(防炎試験)
また、図7(b)に、内装織物4に対して防炎試験を行った結果を示す。図7(b)において、内装織物4_1は、モダクリルを62.9」%、難燃ポリエステルを37.1%交織した151[g/m]の織物である。
【0063】
図7(b)に示すように、試験は、1分間加熱時と着荷後3秒加熱時において、残炎時間、残塵時間及び炭化面積を計測した。試験の結果、日本防炎協会の防炎(イ)ラベルの合格基準を達成していることが分かった。
【0064】
(内装織物4の特徴)
内装織物4においても第3実施形態における難燃性ポリエステルと同様に、温度を上げると分子構造の非結晶の部分に隙間が空き、その隙間に染料や防炎剤、抗菌剤などの薬剤が浸透する。
【0065】
ただし、温度上昇による非結晶部分の隙間の空き量が非難燃性ポリエステルよりも大きいため、隙間に対する抗菌剤の浸透量が大きい。したがって、非難燃性ポリエステルをカネカロン繊維と交織した内装織物3に比べ、抗菌性及び防臭性は大きくなる。
【0066】
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、難燃性ポリエステル繊維及び非難燃性ポリエステル繊維を縦糸とし、モダクリル繊維を横糸として製織性を高めていたが、それらを逆、つまり、難燃性ポリエステル繊維及び非難燃性ポリエステル繊維を横糸とし、モダクリル繊維を縦糸として交織しても、撥水性能や防炎性能は同じ結果となる。
【0067】
(2)上記実施形態では、難燃性ポリエステル繊維又は非難燃性ポリエステル繊維のいずれか一方とモダクリル繊維とを交織して内装織物1,2としていたが、難燃性ポリエステル繊維、非難燃性ポリエステル繊維及びモダクリル繊維の3種の繊維を交織して内装織物5としてもよい。
【0068】
内装織物5に対して、上記実施形態と同じ撥水試験及び防炎試験を実施した結果を図4に示す。図4に示すように、3種の繊維を交織させた場合でも撥水性能及び防炎性能を満たすことが確認できた。
【0069】
(3)上記実施形態では、横糸にモダクリル繊維、縦糸にポリエステル繊維(難燃性ポリエステル繊維及び/又は非難燃性ポリエステル繊維)を使用していたが、下記(a)~(b)に示すようにしてもよい。
【0070】
(a)横糸にポリエステル繊維、縦糸にモダクリル繊維を使用する。
(b)横糸にモダクリル繊維とポリエステル繊維(難燃性ポリエステル繊維及び/又は非難燃性ポリエステル繊維)を所定の割合で混ぜて使用し、縦糸にもモダクリル繊維とポリエステル繊維(難燃性ポリエステル繊維及び/又は非難燃性ポリエステル繊維)を所定の割合で混ぜたものを使用する。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3,4,5… 内装織物 10… 接炎バーナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7