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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】作業用ゴンドラ装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/30 20060101AFI20240527BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20240527BHJP
   E04G 5/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E04G3/30 301C
E04G21/32 A
E04G5/00 301E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019204588
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021075934
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507418474
【氏名又は名称】中日装業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】中村 ▲禊▼
(72)【発明者】
【氏名】中村 英士
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-123786(JP,A)
【文献】特開昭52-000037(JP,A)
【文献】特開2016-211185(JP,A)
【文献】特開2019-065573(JP,A)
【文献】特開2009-228358(JP,A)
【文献】特開平04-027074(JP,A)
【文献】登録実用新案第3009139(JP,U)
【文献】登録実用新案第3219090(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110409787(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/28- 3/34
E04G 5/00
E04G 21/32
A62B 1/00- 5/00
B66B 9/00- 9/193
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を施す建物の外壁面に取付金具を、上下方向に適宜間隔を有して複数取り付け、この取付金具に対して、ガイドワイヤを取付け、該ガイドワイヤに沿って昇降する作業用ゴンドラ装置であって、
作業者が搭乗できるゴンドラ本体部を有し、
前記ガイドワイヤに対して取り外し可能な係合部材を設け、前記ガイドワイヤに前記係合部材を係合した状態で、前記ガイドワイヤと前記ゴンドラ本体部との離間距離を変えることにより、前記ゴンドラ本体部に、前記建物の外壁面方向へ移動させる力を付与することができる距離調整部を設け、
前記ゴンドラ本体部に、ゴンドラ本体部の左右方向における外側に突出する上横拡張部材と下横拡張部材とを設け、この上横拡張部材と下横拡張部材に、
ゴンドラ本体部の外壁面側から前記外壁面方向に突出する突出部材を少なくとも4本設け、
前記ゴンドラ本体部に、その側部と後部に養生ネットを設けたことを特徴とする作業用ゴンドラ装置。
【請求項2】
前記突出部材を、前記ゴンドラ本体部の外側に突出した上横拡張部材と下横拡張部材におけるゴンドラ本体部の4隅に設け、前記ガイドワイヤは、前記突出部材の内側に位置するように設け、
前記上下に位置する突出部材に、前記側部に設けた養生ネットを取付け、前記ガイドワイヤと、前記側部に設けた養生ネットとの間に作業空間を形成したことを特徴とする請求項1記載の作業用ゴンドラ装置。
【請求項3】
前記ゴンドラ本体部の側部に設けた養生ネットにおける外壁面側端を、前記ゴンドラ本体部より前記外壁面側に突出させ、
前記突出部材を、そのゴンドラ本体部の外壁面側から前記外壁面方向に突出する突出量を変えることができるようにして、養生ネットにおける外壁面側端の前記ゴンドラ本体部に対する位置を変えることができるようにしたことを特徴とする請求項2記載の作業用ゴンドラ装置。
【請求項4】
前記下横拡張部材に設けられた突出部材に、可撓性を有して建物の外壁面に当接する弾性部材を固設し、
この弾性部材と前記ゴンドラ本体部の作業台との間に養生ネットを設けて、前記作業空間における建物の外壁面と作業台の間の空間を、養生ネットにより覆ったことを特徴とする請求項2又は3記載の作業用ゴンドラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用ゴンドラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁面に対して、洗浄、補修、塗装など(以下補修ともいう)を行う作業は、建物の上方から、支持ワイヤにより作業用ゴンドラを吊り下げて昇降させ、この作業用ゴンドラに搭乗した作業者により行われている。
【0003】
また、近年、超高層のマンションなどの建物が建設され、これら超高層の建物の外壁面に対しても、定期的に、洗浄、補修、塗装などのメンテンナンスを施す必要がある。
【0004】
上記のように支持ワイヤにより、作業用ゴンドラを吊り下げて昇降させると、超高層の建物の高層階において、風などにより、作業用ゴンドラが煽られ、その位置が安定しない恐れがある。
【0005】
そこで、支持ワイヤの他に作業用ゴンドラに対して、建物と反対側にサポートワイヤを上下方向に張設し、作業用ゴンドラをこのサポートワイヤに沿って昇降させるとともに、作業用ゴンドラをサポートワイヤより建物の外壁面側に押圧移動させ、作業用ゴンドラを安定させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-129742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の作業用ゴンドラにおいては、サポートワイヤは、その上端と下端が固設されているのみのため、建物が中層や高層のように高さが高くなると、サポートワイヤにおける支持間隔の長さも長くなり、作業用ゴンドラの保持力が低下し、作業用ゴンドラやサポートワイヤや支持ワイヤが風等に煽られて、作業用ゴンドラの支持が安定しない恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、建物の高さが高い場合や、ゴンドラ本体部が風で煽られた場合等においても、その位置を安定に保持できる作業用ゴンドラ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、作業を施す建物の外壁面に取付金具を、上下方向に適宜間隔を有して複数取り付け、この取付金具に対して、ガイドワイヤを取付け、該ガイドワイヤに沿って昇降する作業用ゴンドラ装置であって、
作業者が搭乗できるゴンドラ本体部を有し、
前記ガイドワイヤに対して取り外し可能な係合部材を設け、前記ガイドワイヤに前記係合部材を係合した状態で、前記ガイドワイヤと前記ゴンドラ本体部との離間距離を変えることにより、前記ゴンドラ本体部に、前記建物の外壁面方向へ移動させる力を付与することができる距離調整部を設け、
前記ゴンドラ本体部に、ゴンドラ本体部の左右方向における外側に突出する上横拡張部材と下横拡張部材とを設け、この上横拡張部材と下横拡張部材に、
ゴンドラ本体部の外壁面側から前記外壁面方向に突出する突出部材を少なくとも4本設け、
前記ゴンドラ本体部に、その側部と後部に養生ネットを設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、 前記突出部材を、前記ゴンドラ本体部の外側に突出した上横拡張部材と下横拡張部材におけるゴンドラ本体部の4隅に設け、前記ガイドワイヤは、前記突出部材の内側に位置するように設け、
前記上下に位置する突出部材に、前記側部に設けた養生ネットを取付け、前記ガイドワイヤと、前記側部に設けた養生ネットとの間に作業空間を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記ゴンドラ本体部の側部に設けた養生ネットにおける外壁面側端を、前記ゴンドラ本体部より前記外壁面側に突出させ、
前記突出部材を、そのゴンドラ本体部の外壁面側から前記外壁面方向に突出する突出量を変えることができるようにして、養生ネットにおける外壁面側端の前記ゴンドラ本体部に対する位置を変えることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記下横拡張部材に設けられた突出部材に、可撓性を有して建物の外壁面に当接する弾性部材を固設し、
この弾性部材と前記ゴンドラ本体部の作業台との間に養生ネットを設けて、前記作業空間における建物の外壁面と作業台の間の空間を、養生ネットにより覆ったことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建物の外壁面に、取付金具を上下方向に複数設け、該取付金具にガイドワイヤを取付け、ガイドワイヤに対して取り外し可能な係合部材を設け、ガイドワイヤに前記係合部材を係合した状態で、ガイドワイヤとゴンドラ本体部との離間距離を変えることにより、前記ゴンドラ本体部に、前記建物の外壁面方向へ移動させる力を付与することができる距離調整部を設け、ゴンドラ本体部に建物の外壁面側から前記外壁面方向に突出する突出部材を少なくとも4本設けたことにより、ゴンドラ本体部等が、風などで煽られた場合においても、建物の外壁面に対して固定されたガイドワイヤに対して、ゴンドラ本体部の距離を一定に保つことができ、建物の高さが高くなった場合においても、ゴンドラ本体部の位置を安定に保持できる。
【0015】
また、ゴンドラ本体部に、その側部と後部に養生ネットを設けたことにより、作業時における塗料等の飛散を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1の作業用ゴンドラ装置の斜視図。
図2】本発明の実施例1のゴンドラ本体部の一部を建物側より見た斜視図。なお、養生ネットの一部は省略されている。
図3図2の上面図。
図4図2の底面図。
図5図2のゴンドラ本体部を用いた作業状態示す側面図。なお、養生ネットは図示しない。
図6】(a)は本発明の実施例1に用いる伸縮部材の筒状部を示し、(b)はその伸縮部を示す図。
図7】本発明の実施例1に用いる係合部材のガイドワイヤに対する係合状態を示す図。
図8図7の状態から一方の係合部材を、ガイドワイヤから取り外した後に、ガイドワイヤにおける取付金具を跨いだ位置に再度取付けた状態の図。
図9】本発明の実施例1に用いる引掛部材と抜止部材とを閉口状態でガイドワイヤに係合させた状態の図。
図10図9の状態から抜止部材を引掛部材に対して回動させた開口状態の図。
図11】本発明の実施例1に用いる下側ストッパ部材の要部拡大斜視図。
図12】本発明の実施例2に用いるゴンドラ本体部の斜視図。
図13図12のゴンドラ本体部を用いた作業用ゴンドラ装置の斜視図。
図14】本発明のその他の実施例に係る作業用ゴンドラの作業状態示す側面図。なお、養生ネットは図示しない。
図15】本発明のその他の実施例に用いる係合部材とガイドワイヤとの係合状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0018】
[実施例1]
図1乃至図11は実施例1を示す。図1は、本発明の実施例1におけるゴンドラ本体部2を用いた作業用ゴンドラ装置1の斜視図であり、図2は、本実施例1に係るゴンドラ本体部2の一部の斜視図を示す。
【0019】
この作業用ゴンドラ装置1は、図5に示すように、建物11における略平面で垂直状に形成された外壁面11aにおいて、その洗浄、補修、塗装等の作業を行う場合に使用するものである。
【0020】
作業用ゴンドラ装置1は、図1図5に示すように、作業者10が乗降できるとともに、作業者10が搭乗して、建物11における外壁面11aの洗浄、補修、塗装等の作業を行うゴンドラ本体部2を有する。本実施例1では、ゴンドラ本体部2は、その内部に、複数の作業者10が搭乗して作業ができる作業空間が形成されている。
【0021】
以下、ゴンドラ本体部2において、図5に示すように、建物側を前側A、反対側を後側Bとし、建物11の上階側を上側C、下階側を下側Dとするとともに、図2のX-X方向を前後方向、Y-Y方向を左右方向として説明する。
【0022】
ゴンドラ本体部2は、作業者10が乗る作業台3を有し、作業台3の前側Aにおける左右両側部には、前側支柱4a,4aが並設され、その後側Bにおける左右両側部には、後側支柱4b,4bが並設されている。作業台3の下部の4隅にはキャスタ6が設けられている。
【0023】
図2図3に示すように、ゴンドラ本体部2の左右夫々において、前後に設けた支柱4a,4bの上端間には上横桟7aが架設され、左右の前側支柱4aと4aの間の上端間には上前桟7bが架設され、後側支柱4bと4bの間の上端間には上後桟7cが架設されている。
【0024】
ゴンドラ本体部2の左右夫々において、前後に設けた支柱4a,4bにおける上下方向の中央部間には中横桟8aが架設され、左右の前側支柱4aと4aにおける上下方向の中央部間には中前桟8bが架設され、左右の後側支柱4bと4bにおける上下方向中央部間には中後桟8cが架設されている。
【0025】
ゴンドラ本体部2は、図1図5に示すように、建物11の上部より垂設した昇降用ワイヤ15を駆動部14に係合して、駆動部14の回転で昇降用ワイヤ15の巻き取り、巻き戻しを行い昇降できるようになっている。
【0026】
作業を行う建物11における略平面で垂直状に形成された外壁面11aには、図1図3図5に示すように、上下方向に適宜間隔を有して、複数のアイボルトやフック等の取付金具16が、作業時においてゴンドラ本体部2における左右の前側支柱4a,4aより左右方向(Y-Y方向)の内側に位置するように、2列固設されている。取付金具16の上下方向の取付間隔は、任意に設定することができ、本実施例では、外壁面11aの上下方向において1階毎に等間隔で取付けた。
【0027】
また、外壁面11aに取付けた取付金具16には、図7に示すように、これに形成した挿通穴16aに対して、ガイドワイヤ17が挿通して取付けられている。取付金具16としては、例えば、図7図8に示すように、建物11の外壁面11aに取付け固定でき、かつ、ガイドワイヤ17を挿通保持できるものを使用する。このように、建物11の外壁面11aに対して、取付金具16を上下方向に適宜間隔で取り付け、この取付金具16の挿通穴16aにガイドワイヤ17を挿通して張設したことにより、ガイドワイヤ17は建物11に対して、所定の位置に位置決めして取り付けられる。
【0028】
ガイドワイヤ17の上端は、図1に示すように、建物11の屋上に固着され、その下端は、建物11の下部若しくは地上に固着されるとともに、上下の少なくとも一方からウィンチ等により引っ張ることにより、ガイドワイヤ17に張力を付与し、ガイドワイヤ17を外壁面11aに対して張設するようになっている。このガイドワイヤ17は、ゴンドラ本体部2と建物11の間に設けられる。
【0029】
上前桟7bからゴンドラ本体部2の左右方向(Y-Y方向)における外側に突出する上前拡張部材18aが、上前桟7bに対して左右方向(Y-Y方向)に摺動可能に設けられ、上後桟7cから左右方向(Y-Y方向)の外側に突出する上後拡張部材18bが、上後桟7cに対して左右方向(Y-Y方向)に摺動可能に設けられている。上前拡張部材18aと上後拡張部材18bの外側端部間には、上横拡張部材18cが架設されている。なお、上前拡張部材18aを、上前桟7bに対して固設し、上後拡張部材18bを、上後桟7cに対し固設してもよい。
【0030】
作業台3の前側には、その前面部から左右方向(Y-Y方向)の外側に突出する下前拡張部材19aが作業台3の前面部において左右方向(Y-Y方向)に摺動可能に設けられている。また、作業台3の後面部から左右方向(Y-Y方向)の外側方向に突出する下後拡張部材19bが作業台3の後面部において左右方向(Y-Y方向)に摺動可能に設けられている。また、下前拡張部材19aと下後拡張部材19bの外側端部間には、下横拡張部材19cが架設されている。なお、下前拡張部材19aと上後拡張部材18bを、作業台3に対し固設してもよい。
【0031】
前後方向(X-X方向)に設けられた上横拡張部材18cには、図2図3に示すように、上側伸縮部材20が、その軸芯が前後方向に位置するようにして取り外し可能に取り付けられている。上側伸縮部材20は、図2図3に示すように、ガイドワイヤ17より左右方向(Y-Y方向)の外側に所定距離離間して配置されている。
【0032】
上側伸縮部材20は、図2図6に示すように、筒状部21と伸縮部22を有する。
【0033】
筒状部21は、図2図6(a)に示すように、内部に中空部を有する円筒状に形成され、その軸方向に所定の長さの案内溝部21aが、外周面と内周面側が開口するように形成され、案内溝部21aの軸方向には、複数の係合溝21bが、案内溝部21aと略平行となるように適宜間隔で形成され、案内溝部21aと係合溝21bは移動溝21cで連通している。係合溝21bと移動溝21cは、図6(a)に示すように、L字状に形成されている。筒状部21は、図2に示すように、その軸芯が前後方向に位置するようにして、上横拡張部材18cに対して、カシメ等により取り外し可能に取り付けられている。
【0034】
伸縮部22は、図6(b)に示すように、円筒状に形成された伸縮本体部22aを有し、伸縮本体部22aは、図2に示すように、筒状部21の中空部内に、その軸方向に摺動可能に収納されている。伸縮部22の先部は、図5に示すように、ゴンドラ本体部2の前面から外壁面11a側に突出するように設けられている。
【0035】
また、伸縮本体部22aの後B側端部には、図6(b)に示すように、伸縮本体部22aの外周面から、その軸芯と直交する外側方向に突出する溝係合部22bが取り付けられている。この溝係合部22bは、例えば、図6(b)に示すように、ボルトを溶接等で固定して形成したり、伸縮本体部22aに雌ねじ穴を形成し、この雌ねじ穴に対し、蝶ねじを螺合して形成する。
【0036】
伸縮部22の溝係合部22bは、筒状部21の案内溝部21aと係合溝21bと移動溝21c内を移動できるようになっている。伸縮部22の溝係合部22bを、筒状部21に形成された複数の係合溝21bにおける所望の係合溝21bに係合させることにより、筒状部21に対する伸縮部22の突出量を変更できるとともに、その突出量を保持することができるようになっている。
【0037】
また、伸縮本体部22aの前側(A側)部には、図6(b)に示すように、伸縮本体部22aとは別体で構成された先端部材22eを前側(外壁面11a側)に付勢する付勢部22cを有する。本実施例では、この付勢部22cとしてコイルスプリングを用いた。付勢部22cの先部には、少なくともゴンドラ本体部2の昇降方向に回動できる回動部材22dが設けられ、本実施例では回動部材22dとしてキャスタを用いた。
【0038】
上記の構造により、筒状部21に対して伸縮部22を進退移動させて上側伸縮部材20を伸縮させ、伸縮部22を所定の位置で保持することができるようになっている。すなわち、上側伸縮部材20は、ゴンドラ本体部2の前面から外壁面11a側への突出量を変更することができるようになっている。この上側伸縮部材20は、図2に示すように、ゴンドラ本体部2の前面から、外壁面11a側に突出する突出部材65を構成する。
【0039】
また、前後方向(X-X方向)に設けられた下横拡張部材19cには、図2図5に示すように、上記上側伸縮部材20と同様の構造を有する下側伸縮部材24における筒状部21が、その軸芯が前後方向に位置するようにカシメ等により取り外し可能に取り付けられている。
【0040】
下側伸縮部材24は、上記上側伸縮部材20と同様に、図2図3に示すように、ガイドワイヤ17より左右方向(Y-Y方向)の外側に所定距離離間して配置されている。また、下側伸縮部材24は、ゴンドラ本体部2の前面から、外壁面11a側に突出する突出部材66を構成する。
【0041】
また、ゴンドラ本体部2は、図1図2図5に示すように、ガイドワイヤ17に対して、取り外し可能に係合する係合部材30を備えている。係合部材30は、図7図10に示すように、先部に引掛部31aが形成された引掛部材31と、先部に抜止部32aが形成された抜止部材32を備えている。
【0042】
引掛部31aは、図9図10に示すように、開口部31bを有する円弧状に形成されており、ガイドワイヤ17に引掛部31aを、開口部31bを通じて引っ掛け、ゴンドラ本体部2側から係合部材30を引っ張った際に、引掛部31aの一部がガイドワイヤ17より外壁面11a側に位置することにより、ガイドワイヤ17から係合部材30が容易に外れないようになっている。また、引掛部31aを斜め前方に移動させることで、開口部31bからガイドワイヤ17を容易に取り外すことができるようになっている。
【0043】
抜止部材32は、引掛部31aの基部に設けた回転軸31cを中心として、引掛部材31に対して回動可能に連結されている。
【0044】
抜止部32aは、図9図10に示すように、開口部を有する円弧状に形成されている。抜止部材32は、回転軸31cを中心として回動することにより、抜止部32aは、引掛部31aの開口部31bを、開閉することができるようになっている。抜止部32aは、図9に示すように、ガイドワイヤ17に引掛部31aを引っ掛け、開口部31bを閉状態とした状態において、引掛部31aのガイドワイヤ17からの抜け外れを抑制する。
【0045】
抜止部材32の軸方向における奥部側、すなわち、回転軸31cを中心とする抜止部32aの反対側には、その外面にのこぎり刃状の保持部32bが形成され、図9に示すように、抜止部32aにより引掛部31aの開口部31bを閉じた状態(閉口状態)で、引掛部材31のゴンドラ本体部2側部に回動可能に設けたコ字状のロック部31eを、抜止部材32の保持部32bに係合させることで、図9に示すように、その閉状態を保持することができるようになっている。
【0046】
また、図9に示すように、抜止部32aにより引掛部31aの開口部31bを閉じた状態では、ガイドワイヤ17は、その軸方向における一部の外周全体が、抜止部32aと引掛部31aで覆われているとともに、抜止部32aと引掛部31aにより挟圧保持されている。
【0047】
係合部材30は、図7図8に示すように、1本のガイドワイヤ17に対して2個設けられている。一の係合部材30における引掛部材31のゴンドラ本体部2側部と、他の係合部材30の引掛部材31のゴンドラ本体部2側部同士は、Y字状の第1連結部材35を介して連結され、第1連結部材35と引掛部材31は、少なくとも引掛部材31の軸芯を中心として回動可能に連結され、本実施例においては、いずれの方向にも回動可能な自在継手(ユニバーサルジョイント)36を用いて連結した。
【0048】
第1連結部材35は、いずれの方向にも回動可能な自在継手(ユニバーサルジョイント)37を介して第2連結部材38と連結されている。第2連結部材38は、先端部の連結部38a以外は、曲折可能なワイヤ39aで構成されている。このワイヤ39aは、図2図5に示すように、長さ調節部39bで、ワイヤ39aを巻き取ったり、緩めたりすることで、巻き取られていないワイヤ39aの長さを調節することができるようになっている。
【0049】
この長さ調節部39bはカシメ等により、左右夫々の中横桟8aに取り外し可能に取り付けられている。長さ調節部39bは、ワイヤ39aを巻き取ったり、緩めたりすることができれば任意の部材を用いることができ、例えば、ウィンチ、ラチェット付巻き取り器などを用いることができ、本実施例はウィンチを用いた。ワイヤ39aと長さ調節部39bで、ワイヤ39aの長さを変えることができる距離調整部40を構成する。
【0050】
このように、距離調整部40は、係合部材30がガイドワイヤ17に係合した状態で、ワイヤ39aの長さを変えることで、ガイドワイヤ17に対するゴンドラ本体部2の距離を変えて調節することができるとともに、ガイドワイヤ17に係合部材30を係合させた状態で、ワイヤ39aを巻き取ることにより、係合部材30に対して、ゴンドラ本体部2側へ引っ張る力を付与し、その反力によりゴンドラ本体部2をガイドワイヤ17側に引っ張り、ゴンドラ本体部2に対し、建物11側方向へ移動する力を常に付与し、すなわち、ゴンドラ本体部2は、建物11の外壁面11a側に付勢される。
【0051】
また、ゴンドラ本体部2には、図2図3図5に示すように、その前側の下部に位置し、かつ、その左右方向(Y-Y方向)全体に亘って下側飛散抑制部材41が配設されている。
【0052】
下側飛散抑制部材41は、図2図3に示すように、左右方向(Y-Y方向)に3つ以上に分割して形成され、本実施例においては、3分割の下側構成体41a,41b,41cで構成し、中央に位置する下側構成体41aの横方向の幅を、図3に示すように、左右の前側支柱4a,4a間の距離と略同じに設定した。
【0053】
各下側構成体41a,41b,41cは、夫々が任意の場所で曲折可能なシート状に形成されたシート状部材43を有する。左右両側部に位置する下側構成体41b,41cの左右方向(Y-Y方向)の両側部には、前後方向(X-X方向)に伸縮可能な伸縮部材42が固設されているとともに、その後側端部は、左右方向(Y-Y方向)に配置され、かつ、回転可能な回転軸44に固定され、ゴンドラ本体部2に対して上下方向に回動可能に取り付けられている。中央に位置する下側構成体41aの両側部には、その左右両側部に位置する下側構成体41b,41cの内側に設けた伸縮部材42が固設されている。
【0054】
伸縮部材42は、その軸方向に伸縮できれば任意の構造を用いることができ、本実施例では、上側伸縮部材20と同様の構造に構成し、その回動部材22dが外壁面11aに対して当接するようになっている。
【0055】
シート状部材43において、ガイドワイヤ17が位置する部分には、図3に示すように、切り欠き部43aが形成され、シート状部材43の上下方向の移動に対してガイドワイヤ17が干渉しないようになっている。
【0056】
分割された夫々の下側構成体41a,41b,41cの各伸縮部材42は、その後側端部が、左右方向(Y-Y方向)に設けられた同一の回転軸44に固定され、下側構成体41a,41b,41cのシート状部材43は、一体として回動し、ゴンドラ本体部2の前面に対する下側構成体41a,41b,41cの傾斜角度は、すべて同じになるとともに、下側構成体41a,41b,41cが一体として前後方向(X-X方向)に伸縮できるようになっている。
【0057】
ゴンドラ本体部2には、図2に示すように、下側ストッパ部52が設けられ、この下側ストッパ部52により、下側飛散抑制部材41の前端が、後端より上側に位置し、かつ、下側飛散抑制部材41が、そのゴンドラ本体部2の前面に対する傾斜角度が鋭角の所定角度より大きくなる方向へ回動することが抑制される。
【0058】
下側ストッパ部52は任意の構造を用いることができるが、本実施例では図2図11に示すように、ゴンドラ本体部2の前側の下部に取付支柱49を固設し、この取付支柱49に、左右方向(Y-Y方向)に軸受穴を有する軸受け49aが固定されている。この軸受け49aの軸受穴に、回転軸44が回転可能に挿通されている。軸受け49aには、その周方向に長孔49bが形成され、この長孔49b内には、回転軸44に固設した突出ピン49cが、周方向に移動可能に設けられている。これにより、下側飛散抑制部材41は、ゴンドラ本体部2の前面に対して所定の角度以上とならないように、すなわち、所定位置より下側方向へ回動することが抑制されている。回転軸44、軸受け49a、長孔49b、突出ピン49cで下側ストッパ部52を構成する。
【0059】
図5に示すように、ゴンドラ本体部2の前側の下部で、かつ、下側飛散抑制部材41よりも上側には、上側飛散抑制部材45が、図2に示すように、ゴンドラ本体部2の左右方向(Y-Y方向)の略全体に亘って配設されている。
【0060】
上側飛散抑制部材45は、左右方向(Y-Y方向)に複数配置された取付部材46を有する。この取付部材46は、ゴンドラ本体部2に対して回転可能に設けた同一の回転軸48に固定され、上側飛散抑制部材45は、一体としてゴンドラ本体部2に対して上下方向に回動でき、ゴンドラ本体部2の前面に対する傾斜角度は、すべて同じになるようになっている。
【0061】
夫々の取付部材46には、図2に示すように、軸方向に可撓性を有する多数の長尺の毛状部材47が、取り外し可能に取り付けられている。毛状部材47として任意の部材を用いることができるが、本実施例では、刷毛に用いられる毛状部材を用いた。
【0062】
毛状部材47として、その前後方向(軸方向)の長さが異なる複数種類を用意し、ゴンドラ本体部2と建物11の外壁面11a間の距離L1に応じて、所望の長さの毛状部材47を付け替えるようになっている。
【0063】
ゴンドラ本体部2には、図2に示すように、上側ストッパ部58が設けられ、この上側ストッパ部58により、取付部材46の前端が、後端より上側に位置し、かつ、取付部材46が、そのゴンドラ本体部2の前面に対する傾斜角度が鋭角の所定角度より大きくなる方向へ回動することを抑制するようになっている。上側ストッパ部58は、任意の構造を用いることができるが、本実施例では、下側飛散抑制部材41に設けた上記下側ストッパ部52と同様に構成した。
【0064】
ゴンドラ本体部2における左右の上側伸縮部材20には、図1図2に示すように、夫々、側部養生ネット53の上端部53aが摺動可能に取付けられ、その下端部53bが下側伸縮部材24に摺動可能に取付けられている。上側伸縮部材20と下側伸縮部材24の前端間にはワイヤ54が架設され、ワイヤ54に対して、側部養生ネット53の前端部53cが取付けられている。側部養生ネット53は、ゴンドラ本体部2の左右両側に設けられ、ゴンドラ本体部2の周方向の側面において、ゴンドラ本体部2の後端から伸縮部材20,24の前端に設けたワイヤ54にかけての開口部全体が覆われている。
【0065】
ゴンドラ本体部2の上後桟7cと上後拡張部材18bには、図1図2に示すように、後部養生ネット56の上端56aが固着され、その下端56bは作業台3の下端に固着され、その両側端は、側部養生ネット53の後端に連結されている。これにより、ゴンドラ本体部2の後側開口全体は、後部養生ネット56により覆われている。側部養生ネット53と後部養生ネット56を一枚の養生ネットで一体に形成してもよいし、別々の養生ネットで構成してもよい。
【0066】
左右の下側伸縮部材24の下部には、夫々、可撓性と復元性を有する樹脂部材、板バネ、金属製のワイヤなどの側部弾性部材61が固設されている。夫々の側部弾性部材61の前方への長さは、下側伸縮部材24の前方への長さより長く形成され、夫々のの先部は、左右方向の内側方向に曲折されている。
【0067】
左右の側部弾性部材61の先部には、夫々、上面形状がコ状の連結部材62aが連結されている。左右の連結部材62a,62a間には、可撓性と復元性を有する樹脂部材、板バネ、金属製のワイヤなどの前部弾性部材62が設けられている。前部弾性部材62は、前側方向に突出する付勢力を有するとともに、その形状を一定に保持できるようになっている。
【0068】
ゴンドラ本体部2の不使用時においては、側部弾性部材61と前部弾性部材62は、その復元力により、前方へ突出する円弧状となり、ゴンドラ本体部2の使用時において、側部弾性部材61と前部弾性部材62が、建物11の外壁面11aに当接した際には、変形して図2図4に示すような形状となり、その復元力により建物の外壁面11aに圧接するようになっている。
【0069】
前記コ字状の連結部材62aの凹部内には、前記ガイドワイヤ17が挿通され、取付金具16,ガイドワイヤ17と、側部弾性部材61,前部弾性部材62,下前部養生ネット57bが干渉しないようになっている。
【0070】
作業台3の下端部の両側と側部弾性部材61の間には、図4に示すように、下側部養生ネット57aが設けられている。また、作業台3の前面と前部弾性部材62、側部弾性部材61の間には、下前部養生ネット57bが設けられている。
【0071】
側部弾性部材61と前部弾性部材62により、下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57bの形状を一定に保持できるようになっている。
【0072】
下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57bは、作業台3の下部に設けたキャスタ6と干渉しないように設けられており、地上でキャスタ6を用いてゴンドラ本体部2を移動することができるようになっている。
【0073】
側部養生ネット53と後部養生ネット56と下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57bは、通気性を有し、塗料等の外部への飛散を抑制できるものであれば任意のものを用いることができる。
【0074】
また、側部養生ネット53,53と後部養生ネット56と下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57bと建物11の外壁面11aにより4方が囲まれた作業空間60が形成され、作業空間60内での外壁面11a等への洗浄、補修、塗装等の作業により発生した塗料等の外部への飛散は、側部養生ネット53,53と後部養生ネット56と下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57bにより抑制される。
【0075】
次に、ゴンドラ本体部2を用いた作業方法について説明する。
【0076】
先ず、図5,7,8に示すように、建物11の外壁面11aに対して、任意の方法により、取付金具16を取付けるとともに、取付金具16にガイドワイヤ17を挿通して取付ける。
【0077】
次に、ゴンドラ本体部2を作業を行う最も高い位置とした状態で、建物11の外壁面11aに対して、伸縮部材20,24の軸方向の長さを調節し、図5に示すように、伸縮部材20,24の回動部材22dを外壁面11aに当接させるとともに、ゴンドラ本体部2の外壁面11aに対する離間距離が所定距離L1となるように調節する。
【0078】
側部養生ネット53の前端53cは、図2に示すように、伸縮部材20,24の前端とともに前後方向に移動し、伸縮部材20,24の軸方向の長さを変えることにより、ゴンドラ本体部2に対する位置も変わり、伸縮部材20,24の回動部材22dを外壁面11aに当接させると、側部養生ネット53の前端は、建物11の外壁面11aの近傍に位置するようになる。
【0079】
また、ガイドワイヤ17に係合部材30を、図5に示すように係合させて、距離調整部40の巻き取り操作により、係合部材30に対して、ゴンドラ本体部2側への張力を付与し、その反力によりゴンドラ本体部2をガイドワイヤ17、すなわち、建物11の外壁面11a側に付勢する。
【0080】
これにより、側部弾性部材61の前部と前部弾性部材62は、建物11の外壁面11aに当接した後に図4に示すように外壁面11aに沿って変形し、下前部養生ネット57bと下側部養生ネット57aの前側部は、側部弾性部材61と前部弾性部材62により建物11の外壁面11aに押し付けられ、建物11の外壁面11aと作業台3の間は、下前部養生ネット57bと下側部養生ネット57aにより覆われる。
【0081】
また、下側飛散抑制部材41の前後方向の長さを調節するとともに、上側飛散抑制部材45に所望の長さの毛状部材47を取付け、下側飛散抑制部材41と上側飛散抑制部材45の先部を、外壁面11aに当接させる。
【0082】
次に、ゴンドラ本体部2の作業空間60内で、図5に示すように、作業者10が、建物11の外壁面11a等の洗浄、補修、塗装作業等を行う。
【0083】
この作業時において、左右のガイドワイヤ17,17の位置より左右方向(Y-Y方向)の外側に側部養生ネット53が設けられていることにより、ガイドワイヤ17と側部養生ネット53との間に作業空間ができ、作業者10は、ガイドワイヤ17より左右方向(Y-Y方向)の外側に位置する外壁面11aも、容易に、洗浄、補修、塗装作業等を行うことができる。
【0084】
次に、係合部材30における引掛部材31のロック部31eと、抜止部材32の保持部32bとの係合を図7図10に示すように解除し、抜止部材32を、回転軸31cを中心として、引掛部材31に対して回動させ、係合部材30とガイドワイヤ17の挟圧係合の保持状態を解除し、引掛部31aがガイドワイヤ17に対して、摺動可能に引っ掛かったままの状態で、駆動部14により、ゴンドラ本体部2を所定距離降下させた後に、上記と逆の操作で係合部材30とガイドワイヤ17を係合させ、ゴンドラ本体部2が下方に移動することを抑制する。そして、建物11の外壁面11a等の洗浄、補修、塗装作業等を行う。
【0085】
ゴンドラ本体部2の降下時においても、係合部材30に対して、ゴンドラ本体部2側への張力は付与され、ゴンドラ本体部2は建物11の外壁面11a側に付勢されるとともに、伸縮部材20,24により、ゴンドラ本体部2の外壁面11aに対する離間距離は所定の距離に保たれ、ゴンドラ本体部2は安定して降下させることができる。
【0086】
このように、ゴンドラ本体部2を順次降下させながら、建物11の外壁面11a等の洗浄、補修、塗装作業等を随時行う。
【0087】
ゴンドラ本体部2を降下させた際に、図7に示すように、係合部材30が、取付金具16の近傍に位置した際には、上方に位置する一方の係合部材30Aとガイドワイヤ17との挟圧保持を解除した後に、一方の係合部材30Aをガイドワイヤ17から取り外し、自在継手37を中心として、図8に示すように、一方の係合部材30Aを、取付金具16と他方の係合部材30Bより下側に位置するように回動させる。これにより、一方の係合部材30Aは取付金具16を乗り越えることができる。なお、一方の係合部材30Aとガイドワイヤ17との挟圧保持を解除している間は、他方の係合部材30Bがガイドワイヤ17を挟圧保持した状態を維持する。その後、一方の係合部材30Aを、ガイドワイヤ17に対して係合させる。
【0088】
また、ゴンドラ本体部2を降下させ、他方の係合部材30Bが、取付金具16の近傍に位置した際には、一方の係合部材30Aと同様に、他方の係合部材30Bとガイドワイヤ17との挟圧保持を解除した後に、他方の係合部材30Bをガイドワイヤ17から取り外し、自在継手37を中心として、他方の係合部材30Bを下方向に回動させ、取付金具16及び一方の係合部材30Aより下方に位置するガイドワイヤ17に対して係合させる。これにより、他方の係合部材30Bは取付金具16を乗り越えることができる。なお、他方の係合部材30Bとガイドワイヤ17との挟圧保持を解除している間は、一方の係合部材30Aとガイドワイヤ17は挟圧保持した状態を維持する。
【0089】
上記のように、一の係合部材30A(30B)とガイドワイヤ17との係合状態を解除している際には、他の係合部材30B(30A)がガイドワイヤ17を挟圧保持した状態を維持するようにしたことで、ゴンドラ本体部2が不用意に下方に移動したり、ゴンドラ本体部2が建物11の外壁面11aから離間したりすることを抑制することができる。
【0090】
また、上側飛散抑制部材45と下側飛散抑制部材41の夫々の先端部は、その自重で建物11の外壁面11aに当接し、両者間の隙間を少なくすることができ、建物11の外側の細かな凹凸や、風等の影響によりゴンドラ本体部2と外壁面11aとの距離が変化した場合には、上側飛散抑制部材45と下側飛散抑制部材41の先端部を、進退移動させて常に建物11の外壁面11aに当接させ、隙間を少なくし、下側飛散抑制部材41より下方に、塗料等が飛散することを抑制できるようになっている。
【0091】
ゴンドラ本体部2の上方以外は、側部養生ネット53と後部養生ネット56と下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57bと外壁面11aにより囲まれているため、塗料等の外部への飛散を抑制できる。
【0092】
ゴンドラ本体部2から下方への塗料等の飛散は、下側飛散抑制部材41、上側飛散抑制部材45、下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57bにより抑制される。
【0093】
このようにして、建物11の下端部まで塗装等を行う。
【0094】
次に、上記の塗装等の作業を終了した外壁面11aの隣に移動し、先に使用した左右の何れかの1本のガイドワイヤ17と、隣に移動した外壁面11aに設置されている他のガイドワイヤ17を用いて、上記と同様の作業を行う。
【0095】
この時、ガイドワイヤ17の外側に側部養生ネット53が位置するため、建物11の外壁面11aに対する作業、特にガイドワイヤ17の周辺に位置する外壁面11aにおいて、先の塗装等の作業及び隣に移動後の塗装等の作業の双方において重複する作業面が生じることから、外壁面11aに対する作業を容易、かつ、漏れなく行うことができる。
【0096】
本実施例1の作業用ゴンドラ装置1は、上記構造、構成を有することにより、上記の記載以外にも、以下の作用、効果を奏する。
【0097】
建物11の外壁面11aに対して、上下方向に適宜間隔で取付金具16を取り付け、この取付金具16の挿通穴16aにガイドワイヤ17を挿通して張設したことにより、このガイドワイヤ17に係合した係合部材30を、距離調整部40によりゴンドラ本体部2側に引っ張っても、建物11の下層から上層に至るすべてにおいて、ガイドワイヤ17の撓みは少なく、ガイドワイヤ17の位置が安定し、ゴンドラ本体部2を建物11側に安定して付勢し、ゴンドラ本体部2が風等で煽られることを抑制することができる。
【0098】
また、ゴンドラ本体部2の左右夫々において、係合部材30A,30Bを2本設け、ゴンドラ本体部2を昇降させるとき以外は、常に、何れかの係合部材30A(30B)でガイドワイヤ17を挟圧保持した状態を維持できようにしたことで、ゴンドラ本体部2が不用意に下方に移動したり、ゴンドラ本体部2が建物11の外壁面11aから離間したりすることを抑制することができる。
【0099】
また、距離調整部40の引き操作により、ゴンドラ本体部2を建物11の外壁面11a側に付勢するととともに、伸縮部材20,24を、回動部材22dが外壁面11aに当接し、かつ、伸縮部材20,24を伸縮させて、ゴンドラ本体部2の外壁面11aに対する離間距離L1を所定距離となるように調節することにより、ゴンドラ本体部2を建物11における外壁面11aに対して、略一定の押圧力に保つことができる。
【0100】
また、伸縮部材20,24は、その伸縮部22の先端部を前側(外壁面11a側)に付勢する付勢部22cを有するため、伸縮部材20,24を伸縮させて、外壁面11aに対する離間距離L1を所定距離となるように調節することにより、外壁面11aにおける小さな凹凸や、風等によりガイドワイヤ17が撓んだりした際には、付勢部22cによりその撓みを吸収し、ゴンドラ本体部2の外壁面11aに対する離間距離を略一定に保つことができる。
【0101】
また、伸縮部材20,24を、ゴンドラ本体部2の前側から見て4隅に設けたことにより、ゴンドラ本体部2の外壁面11aに対する位置を安定させることができる。
【0102】
また、伸縮部材20,24の先端部を、付勢部22cにより外壁面11a側に付勢するとともに、先部に回動部材22dを設けたことにより、ゴンドラ本体部2が、風で煽られるなどした際に、ゴンドラ本体部2が建物11を損傷させる恐れを低減することができるとともに、伸縮部材20の先端部を外壁面11aに当接させながら、ゴンドラ本体部2を昇降させることができる。
【0103】
なお、ゴンドラ本体部2と、ゴンドラ本体部2を建物11に対して昇降する方法は、上記実施例の構造、構成に限定されず、任意の構造、構成を用いることができる。
【0104】
また、ゴンドラ本体部2の側部、後部、底部からの飛散抑制方法として、側部養生ネット53、後部養生ネット56、下側部養生ネット57aと下前部養生ネット57b以外にも任意の方法を用いて行うことができる。
【0105】
また、下側飛散抑制部材41と上側飛散抑制部材45の両方若しくは何れか一方を設けなくてもよい。
【0106】
また、上記実施例においては、ゴンドラ本体部2の上部を開口するように形成したが、ゴンドラ本体部2の上部を、上側養生ネットで覆うとともに、その上側養生ネットに昇降用ワイヤ15が挿通できる穴を形成するようにしてもよい。
【0107】
また、上記実施例においては、上側伸縮部材20と下側伸縮部材24を伸縮させ、その先部におけるゴンドラ本体部2の前面から、外壁面11a側に突出する突出量を変えることができるようにしたが、上側伸縮部材20と下側伸縮部材24を伸縮させず、ゴンドラ本体部2の前面から、外壁面11a側に突出する突出量を一定にするようにしてもよい。
【0108】
また、上記実施例においては、上側伸縮部材20と下側伸縮部材24を夫々左右に1本ずつ計4本設けたが、少なくとも4本設けられていればよく、その数は任意に設定することができる。
【0109】
[実施例2]
図12図13は実施例2を示す。
【0110】
上記実施例1におけるゴンドラ本体部2は、その作業空間に複数人搭乗し作業を行うように構成したが、図12,13に示すように、ゴンドラ本体部70に、一人の作業者10が椅子71に座った状態で搭乗するとともに、シートベルトで取り外し可能にゴンドラ本体部70に固定し、この状態で作業を行うように作業空間を形成した、作業用ゴンドラ装置69を構成してもよい。
【0111】
上記実施例1においては、建物11の外壁面11aに、一つのゴンドラ本体部2に対して、2本のガイドワイヤ17,17を取付金具16を用いて固定したが、本実施利2においては、一つのゴンドラ本体部70に対して、1本のガイドワイヤ17を、取付金具16を用いて外壁面11aに取付けるようにしたものである。その取付方法は、上記実施例1と同様である。
【0112】
前記ゴンドラ本体部70は、作業者10が座る椅子71を有し、椅子71の両側部には一対の側フレーム72,72が設けられ、側フレーム72は下側から上側に向かう程、前方Aから後方Bに位置するようになっている。左右の側フレーム72,72の上端部間には背フレーム73が、椅子71の上方に位置するように設けられている。
【0113】
左右の側フレーム72,72には、夫々その上部に、上記実施例1の上側伸縮部材20から伸縮機能を除いた突出部材77が、ゴンドラ本体部70から前側A、すなわち、外壁面11a側に突出するように設けられている。また、椅子71の下部における左右には、夫々、上記突出部材77と同様の構造を有する突出部材78が、ゴンドラ本体部70から前側、すなわち、外壁面11a側に突出するように設けられている。
【0114】
このように、本実施例2においては、ゴンドラ本体部70に、4本の突出部材77,78を設けたが、この突出部材77,78の数は4本以上であれば任意に設定することができる。突出部材77と78の先端部間にはワイヤ79が上下方向に設けられている。
【0115】
左右の側フレーム72,72の前端部間には、上方フレーム76が、上方に突出するように円弧状に形成されている。上方フレーム76は、その中央部が、両端部より、上方で、かつ、後方に位置するように配置されている。
【0116】
椅子71の上面には、支柱74が立設され、昇降用ワイヤ15を介してゴンドラ本体部70を上下動するための昇降装置75が支柱74に固設されている。
【0117】
ゴンドラ本体部70の両側部と後部には、図12に示すように、養生ネット81がコ状に曲折して椅子71の側部と後部を覆うように設けられている。
【0118】
養生ネット81の後B端部は突出部材77,78の後端部に位置し、養生ネット81の前端部はワイヤ79に固定され、養生ネット81の下端部は突出部材78に固定されている。養生ネット81は、突出部材77より上方に突出するように形成され、上方に突出した部分の前端部は、上方フレーム76に固定されている。
【0119】
椅子71の下側には、下部養生ネット82が設けられ、下部養生ネット82の両側部は、突出部材78、78に固設されている。下部養生ネット82の前端部には、上記実施例1の前部弾性部材62と同様の前部弾性部材84が設けられている。下部養生ネット82の後部は、養生ネット81の後部に連結されている。
【0120】
前部弾性部材84において、ガイドワイヤ17が位置する左右方向(Y-Y方向)の中央部には、上面形状がコ状の連結部材84aが設けられ、軸方向に分割された前部弾性部材84は、連結部材84aにより連結されている。
【0121】
前部弾性部材84はその中央部が、突出部材78の前端より前方に突出し、ガイドワイヤ17の近傍に位置するように形成されている。
【0122】
養生ネット81と下部養生ネット82は、通気性を有し、塗料等の外部への飛散を抑制できるものであれば任意のものを用いることができる。
【0123】
支柱74には、上記実施例1の距離調整部40と同様の距離調整部40が固設されている。距離調整部40には、上記実施例1と同様に、ワイヤ39aが取付けられ、ワイヤ39aには、2個の係合部材30、第1連結部材35、自在継手36,37が設けられている。
【0124】
上記以外の構造は、上記実施例1と同様であるためその説明を省略する。
【0125】
また、本実施例2においても、上記実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【0126】
更に、本実施例2の作業用ゴンドラ装置69は、以下の効果を発揮できる。
【0127】
通常、建物11のベランダからでも手が届くような、建物11の外壁面11aにおける小範囲の補修作業においても、居住空間を通路等に利用して作業することは、居住者の了解を得ることが困難であることから、このような小範囲の補修作業であっても、建物11の外周に大がかりな足場を組付けるとともに、この足場の外周に塗料等の飛散防止用の養生ネットを張設して補修作業を行うようにしている。
【0128】
これに対し、本実施例2のものにおいては、大がかりな足場の組立てや養生ネットの張設が不要となり、かつ、複数の作業者が搭乗する大型のゴンドラ本体部を設置することなく、小範囲の補修作業において、より作業の低減化や工期の短縮を図ることができる。更に、上記従来の大型ゴンドラでは補修できない狭い補修部でも補修することができる。
【0129】
[その他の実施例]
上記実施例1,2においては、左右夫々において、係合部材30,30を2本設けたが、図14に示すように、作業者10が命綱90を建物11に対して固設するなどして、作業者10の安全を向上させている場合には、左右の係合部材30の数を1本としてもよい。
【0130】
上記実施例1,2においては、係合部材30Aを、ガイドワイヤ17に対して挟圧保持するように係合させたが、係合部材をガイドワイヤ17に対して係合した状態において、ガイドワイヤ17の軸方向における一部の外周全体を、引掛部と抜止部により覆われていれば、任意の構造とすることができ、例えば図15に示すような係合部材91としてもよい。
【0131】
図15に示す係合部材91は、上記実施例1の引掛部材31の引掛部31aと同様の構造を有する引掛部92aを有し、抜止部92bが、引掛部92aの開口部92cを開閉可能にして設けられ、開口部92cは閉方向に常に付勢されている。
【符号の説明】
【0132】
1,69 作業用ゴンドラ装置
2,70 ゴンドラ本体部
10 作業者
11 建物
11a 外壁面
15 昇降用ワイヤ
16 取付金具
17 ガイドワイヤ
30 係合部材
53,56,57a,57b,81,82 養生ネット
40 距離調整部
65,66,77,78 突出部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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図14
図15