(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】支持構造及びそれに用いられる連結部材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20240527BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20240527BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20240527BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240527BHJP
F16M 13/00 20060101ALI20240527BHJP
F16M 13/02 20060101ALI20240527BHJP
F24F 1/0047 20190101ALI20240527BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E04B9/00 F
E04B9/18 F
F16B1/00 A
F16B5/06 A
F16M13/00 N
F16M13/02 C
F24F1/0047
F24F13/32
(21)【出願番号】P 2020039620
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2020021237
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-040701(JP,A)
【文献】特開平05-156744(JP,A)
【文献】特開2018-165539(JP,A)
【文献】特開2014-012974(JP,A)
【文献】国際公開第2001/069043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
F16B 1/00
F16B 5/06
F16M 13/00
F16M 13/02
F24F 1/0047
F24F 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井空間に存在する障害物を跨ぐ状態で複数の吊りボルトを天井構造に取り付け、前記複数の吊りボルトの下端部に天井吊り下げ物を接続することにより、前記障害物の下方において前記天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持構造であって、
両端が、前記複数の吊りボルトのうち、前記障害物を挟んで配置される一対の吊りボルトの前記下端部よりも上方位置に固定されることにより、前記障害物の下方位置又は上方位置であって前記下端部よりも上方において前記一対の吊りボルトを相互に連結する連結部材と、
一端が前記一対の吊りボルト間において前記連結部材に接続され、所定角度範囲内の角度で斜め方向に配設されるブレース部材と、
を備えることを特徴とする支持構造。
【請求項2】
前記連結部材は、前記障害物の下方位置で前記一対の吊りボルトを相互に連結するように配置され、
前記ブレース部材は、前記連結部材よりも上側の領域において、一端が前記連結部材に取り付けられ、他端が前記天井構造の近傍位置に取り付けられることにより、前記障害物を避けた状態で前記所定角度範囲内の角度を保持しつつ斜め方向に配設されることを特徴とする請求項1に記載の支持構造。
【請求項3】
天井空間に存在する障害物を跨ぐ状態で複数の吊りボルトを天井構造に取り付け、前記障害物の下方において天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持構造であって、
前記複数の吊りボルトのうち、前記障害物を挟んで配置される一対の吊りボルトに取り付けられ、前記障害物の下方位置又は上方位置において前記一対の吊りボルトを相互に連結する連結部材と、
一端が前記一対の吊りボルト間において前記連結部材に接続され、所定角度範囲内の角度で斜め方向に配設されるブレース部材と、
を備え、
前記ブレース部材は、前記連結部材よりも下側の領域において、一端が前記連結部材に取り付けられ、他端が前記吊りボルトの下端部が接続される接続部の近傍位置に取り付けられることを特徴とする支持構造。
【請求項4】
前記連結部材は、
前記一対の吊りボルトと平行な面内に配置され、前記一対の吊りボルト間を横断する平板部と、
前記平板部との間に前記ブレース部材を挟み込むことによって前記ブレース部材を前記平板部に固定する固定金具と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の支持構造。
【請求項5】
前記平板部は、前記一対の吊りボルト間を横断する方向に設けられるレール部を有し、
前記固定金具は、前記レール部に係合する締着部材を有し、前記締着部材が仮止め状態のときに前記レール部に沿ってスライド可能であり、前記締着部材が締め付けられることにより前記レール部に沿ってスライド不可能な状態に固定されることを特徴とする請求項4に記載の支持構造。
【請求項6】
天井空間に存在する障害物を跨ぐ状態で複数の吊りボルトを天井構造に取り付け、前記複数の吊りボルトの下端部に天井吊り下げ物を接続することにより、前記障害物の下方において前記天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持構造において、前記複数の吊りボルトのうち、前記障害物を挟んで配置される一対の吊りボルトに取り付けられ、前記一対の吊りボルト間において所定角度範囲内の角度で斜め方向に配設されるブレース部材の一端を連結する連結部材であって、
前記下端部よりも上方の位置で、前記一対の吊りボルト間を横断するように配置され、
表面にレール溝が形成された平板部を有するレール部材と、
前記レール部材の両端に取り付けられ、前記レール溝に係合して前記平板部の長手方向に沿ってスライド可能であり、前記平板部との間に前記一対の吊りボルトを挟み込むことによって前記レール部材を前記一対の吊りボルトに固定する第1固定金具と、
前記レール部材に取り付けられ、前記レール
溝に係合して前記平板部の長手方向に沿ってスライド可能であり、前記平板部との間に前記ブレース部材を挟み込むことによって前記ブレース部材の一端を前記平板部に固定する
第2固定金具と、
を備えることを特徴とする連結部材。
【請求項7】
前記
第1固定金具
及び第2固定金具のそれぞれは、前記レール
溝に係合する締着部材を有し、前記締着部材が仮止め状態のときに前記レール
溝に沿ってスライド可能であり、前記締着部材が締め付けられることにより前記レール
溝に沿ってスライド不可能な状態に固定されることを特徴とする請求項6に記載の連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機などの天井吊り下げ物を天井空間に吊り下げた状態で支持する支持構造及びその支持構造に用いられる連結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井空間において空気調和機などの天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持構造が知られている(例えば、特許文献1)。この従来の支持構造は、天井スラブなどの天井構造に4本の吊りボルトを取り付け、その4本の吊りボルトの下端部に天井吊り下げ物を接続して支持するように構成される。また、吊りボルトは撓みやすいため、地震が発生すると、大きく振動する。そのため、地震が発生すると、吊りボルトによって支持されている天井吊り下げ物も大きく振動する。そのような天井吊り下げ物の振動を抑制するため、従来の支持構造は、互いに隣接する2本の吊りボルト間に、吊りボルトと同様のボルト部材で構成されるブレース部材を斜め補強材として配置し、吊りボルトの振動を抑制している。例えば、互いに隣接する一対の吊りボルト間に2本のブレース部材を交差配置することにより、吊りボルトの振動を抑制している。
【0003】
上記のようなブレース部材は、一対の吊りボルト間において45度±15度の範囲内の角度で配設されることが好ましい。この角度範囲を外れると、ブレース部材による振動抑制効果が低下し、地震発生時において天井吊り下げ物の振動を効果的に低減することが難しくなる。
【0004】
ところが、天井吊り下げ物が設置される天井空間には、梁や既設配管などの障害物が存在することがあり、そのような障害物の下方に天井吊り下げ物が吊りボルトによって吊り下げられた状態に設置されることがある。そのような場合、天井吊り下げ物を支持する4本の吊りボルトは、障害物を跨いだ位置に設置される。つまり、4本の吊りボルトのうちの少なくとも2本の吊りボルトの間に障害物が存在することになる。2本の吊りボルトの間に障害物が存在すると、その障害物が邪魔になり、ブレース部材を上述した所定角度範囲内の角度で取り付けることが困難なケースが発生する。そのような場合、ブレース部材の配設角度が上述した所定角度範囲を外れてしまい、地震発生時における天井吊り下げ物の振動を効果的に低減させることができなくなる。
【0005】
そのため、従来は、例えば
図13に示すような手法でブレース部材204が取り付けられる。
図13に示す従来の支持構造200は、天井スラブなどの天井構造100から垂下する吊りボルト101の下端部に、天井吊り下げ物300を支持するフレーム枠体202が取り付けられ、そのフレーム枠体202が天井吊り下げ物300を支持するように構成される。フレーム枠体202は、複数のフレーム材201が井桁状に組み付けられた枠体である。
図13に示すように、天井吊り下げ物300を支持する4本の吊りボルト101の間には、梁などの障害物110がX方向に沿って延在している。そのため、Y方向に隣接している2本の吊りボルト101の間のブレース部材を配置すべきYZ平面内に障害物110が存在することになり、ブレース部材を2本の吊りボルト101の間で上述した所定角度範囲内で配置することができない。そこで、従来は、天井構造100に取り付けられた2本の吊りボルト101よりも更に外側の位置にアンカーボルトなどのボルト部材205などを取り付け、2本の吊りボルト101の外側においてブレース部材204が所定角度範囲内となるように配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図13に示すように2本の吊りボルト101の外側にブレース部材204を配置すると、天井吊り下げ物300を支持するための占有スペースSが大きくなってしまい、天井吊り下げ物300の近傍位置において他の天井吊り下げ物を吊り下げるためのスペースが小さくなり、天井空間の有効利用に支障を来すという問題がある。そのため、天井吊り下げ物300を支持するための占有スペースはなるべく小さくすることが望まれている。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、天井空間に存在する障害物を跨ぐ状態で複数の吊りボルトが取り付けられる場合であっても、天井吊り下げ物の振動を効果的に低減でき、しかも占有スペースを従来よりも小さくできるようにした支持構造及びその支持構造に用いられる連結部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井空間に存在する障害物を跨ぐ状態で複数の吊りボルトを天井構造に取り付け、前記複数の吊りボルトの下端部に天井吊り下げ物を接続することにより、前記障害物の下方において前記天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持構造であって、両端が、前記複数の吊りボルトのうち、前記障害物を挟んで配置される一対の吊りボルトの前記下端部よりも上方位置に固定されることにより、前記障害物の下方位置又は上方位置であって前記下端部よりも上方において前記一対の吊りボルトを相互に連結する連結部材と、一端が前記一対の吊りボルト間において前記連結部材に接続され、所定角度範囲内の角度で斜め方向に配設されるブレース部材と、を備えることを特徴とする構成である。
【0010】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する支持構造において、前記連結部材は、前記障害物の下方位置で前記一対の吊りボルトを相互に連結するように配置され、前記ブレース部材は、前記連結部材よりも上側の領域において、一端が前記連結部材に取り付けられ、他端が前記天井構造の近傍位置に取り付けられることにより、前記障害物を避けた状態で前記所定角度範囲内の角度を保持しつつ斜め方向に配設されることを特徴とする構成である。
【0011】
第3に、本発明は、天井空間に存在する障害物を跨ぐ状態で複数の吊りボルトを天井構造に取り付け、前記障害物の下方において天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持構造であって、前記複数の吊りボルトのうち、前記障害物を挟んで配置される一対の吊りボルトに取り付けられ、前記障害物の下方位置又は上方位置において前記一対の吊りボルトを相互に連結する連結部材と、一端が前記一対の吊りボルト間において前記連結部材に接続され、所定角度範囲内の角度で斜め方向に配設されるブレース部材と、を備え、前記ブレース部材は、前記連結部材よりも下側の領域において、一端が前記連結部材に取り付けられ、他端が前記吊りボルトの下端部が接続される接続部の近傍位置に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0012】
第4に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの構成を有する支持構造において、前記連結部材は、前記一対の吊りボルトと平行な面内に配置され、前記一対の吊りボルト間を横断する平板部と、前記平板部との間に前記ブレース部材を挟み込むことによって前記ブレース部材を前記平板部に固定する固定金具と、を備えることを特徴とする構成である。
【0013】
第5に、本発明は、上記第4の構成を有する支持構造において、前記平板部は、前記一対の吊りボルト間を横断する方向に設けられるレール部を有し、前記固定金具は、前記レール部に係合する締着部材を有し、前記締着部材が仮止め状態のときに前記レール部に沿ってスライド可能であり、前記締着部材が締め付けられることにより前記レール部に沿ってスライド不可能な状態に固定されることを特徴とする構成である。
【0014】
第6に、本発明は、天井空間に存在する障害物を跨ぐ状態で複数の吊りボルトを天井構造に取り付け、前記複数の吊りボルトの下端部に天井吊り下げ物を接続することにより、前記障害物の下方において前記天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持構造において、前記複数の吊りボルトのうち、前記障害物を挟んで配置される一対の吊りボルトに取り付けられ、前記一対の吊りボルト間において所定角度範囲内の角度で斜め方向に配設されるブレース部材の一端を連結する連結部材であって、前記下端部よりも上方の位置で、前記一対の吊りボルト間を横断するように配置され、表面にレール溝が形成された平板部を有するレール部材と、前記レール部材の両端に取り付けられ、前記レール溝に係合して前記平板部の長手方向に沿ってスライド可能であり、前記平板部との間に前記一対の吊りボルトを挟み込むことによって前記レール部材を前記一対の吊りボルトに固定する第1固定金具と、前記レール部材に取り付けられ、前記レール溝に係合して前記平板部の長手方向に沿ってスライド可能であり、前記平板部との間に前記ブレース部材を挟み込むことによって前記ブレース部材の一端を前記平板部に固定する第2固定金具と、を備えることを特徴とする構成である。
【0015】
第7に、本発明は、上記第6の構成を有する連結部材において、前記第1固定金具及び第2固定金具のそれぞれは、前記レール溝に係合する締着部材を有し、前記締着部材が仮止め状態のときに前記レール溝に沿ってスライド可能であり、前記締着部材が締め付けられることにより前記レール溝に沿ってスライド不可能な状態に固定されることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の支持装置によれば、ブレース部材の一端を連結部材に連結することにより、ブレース部材の一端を一対の吊りボルト間の内側に配置することが可能であり、天井吊り下げ物の振動を効果的に低減できると共に、ブレース部材による占有スペースを従来よりも小さくすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における天井吊り下げ物の支持構造の一例を示す側面図である。
【
図3】第2実施形態における天井吊り下げ物の支持構造を示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態における天井吊り下げ物の支持構造を示す側面図である。
【
図7】レール部を有する連結部材を備える支持構造を示す側面図である。
【
図8】第4実施形態における支持構造を示す斜視図である。
【
図9】第4実施形態における支持構造を示す側面図である。
【
図10】第5実施形態における支持構造の一例を示す図である。
【
図11】第6実施形態における支持構造を示す斜視図である。
【
図12】第6実施形態における支持構造を示す側面図である。
【
図13】一対に吊りボルト間に障害物が存在する場合の従来の支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における支持構造1を示す側面図である。この支持構造1は、天井吊り下げ物300を天井スラブなどの天井構造100に吊り下げた状態で支持する構造である。
図1では、一例として、パッケージエアコンなどのように天井パネルから室内に対して露出して設置されるタイプの空気調和機が天井吊り下げ物300である場合を例示する。
【0020】
図1に示すように、天井吊り下げ物300を設置すべき天井空間には、梁などの障害物110が存在している。本実施形態の支持構造1は、そのような障害物110の下方において天井吊り下げ物300を吊り下げた状態で支持する。すなわち、支持構造1は、複数の吊りボルト7を天井構造100に取り付ける際に、天井空間に存在する障害物110を跨ぐ状態で取り付け、それら複数の吊りボルト7の下部で天井吊り下げ物300を支持する。ここで、複数の吊りボルト7が障害物110を跨ぐとは、天井構造100に取り付けられた複数の吊りボルト7の間に障害物110が存在する状態をいう。また、本実施形態では、例えば平面視矩形領域を成す4つの頂点に配置した4本の吊りボルト7で天井吊り下げ物300を支持する例を説明するが、吊りボルト7の数は4本に限られるものではない。
【0021】
この支持構造1は、4本の吊りボルト7の上端部に天井取付金具2を備えている。支持構造1は、天井取付金具2が天井構造100に固定されたアンカーボルトなどのボルト部材に固定されることにより、天井構造100に取り付けられる。吊りボルト7の上端部に対して天井取付金具2を装着することにより、天井吊り下げ物300を支持する支持構造1を床面作業で組み立てることができるという利点がある。
【0022】
吊りボルト7の下端部には、例えば従来と同様のフレーム枠体202が装着される。フレーム枠体202は、複数のフレーム材201が井桁状に組み付けられた枠体である。フレーム枠体202は、天井吊り下げ物300の四隅に対応する位置で下方に延びるボルト部材203を備えており、そのボルト部材203の下端部が天井吊り下げ物300の四隅に連結されている。つまり、この支持構造1は、4本の吊りボルト7と、4本の吊りボルト7の下部に取り付けたフレーム枠体202と、フレーム枠体202から垂下する4本のボルト部材203とによって天井吊り下げ物300を支持する構造である。
【0023】
フレーム枠体202においてボルト部材203が垂下する位置は、フレーム材201の長手方向に沿って調整可能であるため、天井吊り下げ物300のサイズが変われば、そのサイズに応じた位置にボルト部材203を設置することができる。そのため、この支持構造1は、天井構造100に対する吊りボルト7の取付位置を変更することなく、様々なサイズの天井吊り下げ物300を支持することができる構造である。
【0024】
また、この支持構造1は、4本の吊りボルト7のうち、互いに隣接する一対の吊りボルト7,7間に、斜め補強材となるブレース部材8,9を配置し、地震発生時における吊りボルト7の振動を抑制する。例えば、
図1においてXZ平面に平行に配置される一対の吊りボルト7,7間には障害物が存在しない。そのため、XZ平面と平行に配置される一対の吊りボルト7,7間には、従来と同様に2本のブレース部材8を交差させた状態で配置することができる。例えば、XZ平面と平行に配置される一対の吊りボルト7,7の上端近傍位置及び下端近傍位置には公知のブレース連結金具3が取り付けられ、それらブレース連結金具3にブレース部材8の両端部が接続される。つまり、XZ平面に配置されるブレース部材8は、一端が一方の吊りボルト7の上端近傍位置に設けられたブレース連結金具3に接続され、他端が他方の吊りボルトの下端近傍位置に設けられたブレース連結金具3に接続される。そしてブレース部材8の配設角度を、45度±15度の範囲内の角度とすることで、十分な振動抑制効果を得ることができる。
【0025】
一方、
図1においてYZ平面に平行に配置される一対の吊りボルト7,7間には障害物110が存在しており、XZ平面と同様にブレース部材9を上述した所定角度の範囲内で配置することができない。そのため、支持構造1は、障害物110の下方位置に、障害物110を挟んで配置される一対の吊りボルト7,7を相互に連結する金属製の連結部材10を備えている。この連結部材10は、一対の吊りボルト7,7を相互に連結すると共に、それら吊りボルト7,7とブレース部材9とを連結する機能を有している。
【0026】
図2は、連結部材10の一構成例を示す図である。
図2(a)に示すように、連結部材10は、平板部11aを有する金属製の板状体11と、吊りボルト7及びブレース部材9を平板部11aに固定する固定金具13,14とを備えている。連結部材10の板状体11の幅(Z方向の幅寸法)は、例えば吊りボルト7の直径よりも3倍以上であることが好ましい。吊りボルト7の直径よりも3倍以上の幅を有する板状体11を使用することにより、例えば地震発生時に強い剛性を発揮し、板状体11の撓みを抑えることができる。固定金具13は、吊りボルト7を板状体11に固定するための金具であり、固定金具14は、ブレース部材9を板状体11に固定するための金具である。板状体11には、その長手方向に複数の孔12が形成されている。固定金具13,14は、板状体11に形成された孔12に対し、ボルト18とナット19とにより固定される。ボルト18とナット19は、固定金具13,14を板状体11に固定するための締着部材である。
【0027】
固定金具13,14は、同一部材によって構成される。例えば、
図2(b)に示すように、固定金具13,14は、金属板を折り曲げて形成される六角の箱形部材であり、互いに対向する側面に吊りボルト7やブレース部材9の外周面に係合するようにU字状に切り欠いた係合部15が形成され、底面にボルト18の先端を貫通させる孔16が形成されている。本実施形態におけるブレース部材9は、吊りボルト7と同様の長尺雄螺子部材によって構成される。係合部15の切欠深さDは、ブレース部材9の直径よりも小さくなるように形成される。この固定金具13,14は、係合部15を吊りボルト7やブレース部材9の外周面に嵌め込んだ状態でボルト18の先端が孔16,12に対して挿通され、さらにその先端にナット19が装着されることにより、板状体11に取り付けられる。ボルト18とナット19とが仮止め状態のとき、固定金具13,14は、ボルト18の軸周りに回動可能である。これに対し、ボルト18とナット19とが互いに締着されると、固定金具13,14は、板状体11の平板部11aとの間に吊りボルト7又はブレース部材9を挟み込んだ状態で固定される。
【0028】
図2(a)では、板状体11の両端部に固定金具14が取り付けられ、鉛直方向に配置される吊りボルト7を板状体11に固定している。また、板状体11の中央の2箇所の位置に固定金具13が取り付けられ、斜め方向に配置されるブレース部材9を板状体11に固定している。これら固定金具13,14の取付位置の近傍には、板状体11の長手方向に沿って所定間隔で複数の孔12が形成されているため、固定金具13,14の取付位置をそれら複数の孔12の中から適宜選択することができる。
【0029】
支持構造1は、障害物110の下方位置において一対の吊りボルト7,7間を横断するように連結部材10を取り付けており、その連結部材10を利用してブレース部材9を所定角度の範囲内で取り付けることができる。すなわち、YX平面に取り付けられるブレース部材9は、連結部材10よりも上側の領域において、一端が連結部材10に取り付けられ、他端が天井構造100の近傍位置に取り付けられる。このとき、障害物110が邪魔になり、ブレース部材9の他端を吊りボルト7の上端近傍位置に取り付けることができないことがある。そのため、例えば
図1に示すように、吊りボルト7よりも外側となる天井構造100にアンカーボルトなどのボルト部材205を取り付け、そのボルト部材205に対してブレース連結金具4などを用いてブレース部材9の他端を天井構造100の近傍位置に取り付ける。尚、この場合のブレース連結金具4としては公知のものを利用すれば良い。このようにしてXY平面内に配置するブレース部材9を所定角度の範囲内に設置することができる。連結部材10は、一対のブレース部材9によってYZ平面内において変位しないように固定されるため、吊りボルト7もまたYZ平面内において変位しないように固定される。したがって、連結部材10及びブレース部材9は、YZ平面内における吊りボルト7の振動を抑制することができる。
【0030】
また、ブレース部材9の他端を、吊りボルト7の上端近傍位置に取り付けられたブレース連結金具3に接続することができる場合には、そのブレース連結金具3に接続することでブレース部材9を所定角度の範囲内となるように配置しても構わない。この場合であっても、ブレース部材9の他端が天井構造100の近傍位置に取り付けられる点に変わりはない。
【0031】
上記のような支持構造1は、障害物110を避けるために一対の吊りボルト7,7の外側に配置していた従来のブレース部材204(
図13参照)を、連結部材10を設けることによって一対の吊りボルト7,7の内側に移動させた配置態様となっている。そのため、ブレース部材9による占有スペースSは、従来の占有スペース(
図13参照)よりも小さくなり、天井吊り下げ物300の近傍位置において他の天井吊り下げ物を吊り下げるためのスペースを大きく確保することができるようになる。
【0032】
また、連結部材10は、板状体11を一対の吊りボルト7,7の裏面側(4本の吊りボルト7で形成される矩形領域の内側)に配置し、固定金具13,14を前面側(4本の吊りボルト7で形成される矩形領域の外側)に配置すれば、ナット19に対するボルト18の締め付け作業を外側から行うことができるため、連結部材10に対して吊りボルト7やブレース部材9を取り付ける作業を簡単且つ効率的に行うことができるという利点がある。
【0033】
また、連結部材10の板状体11には、その長手方向に沿って固定金具13の取付位置を調整するための複数の孔12が設けられているため、ブレース部材9を上述した所定角度範囲内の角度となる取付位置に簡単に変更することができ、作業性に優れている。ただし、これに限られるものではなく、連結部材10の高さ位置を調整することでもブレース部材9の配設角度を調整することが可能である。この場合、ボルト18とナット19とを緩めて仮止め状態としておけば、固定金具14がボルト18を中心に回動するので、ブレース部材9の角度調整を行いやすいという利点がある。
【0034】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図3及び
図4は、第2実施形態における支持構造1を示す図である。本実施形態の支持構造1が第1実施形態と異なる点は、連結部材10よりも下側の領域にある。第1実施形態の支持構造1では、フレーム枠体202から垂下するボルト部材203が固定されていないため地震発生時にボルト部材203が振動してしまう可能性がある。本実施形態の支持構造1は、第1実施形態よりも優れた制震機能を発揮するものである。
【0035】
図3及び
図4に示すように、支持構造1は、吊りボルト7と、ブレース部材8,9と、連結部材10と、フレーム部材20と、ボルト部材309とを備えて構成される。天井吊り下げ物300は、その四隅の位置に、ボルト部材309を取り付けるための取付片301が設けられている。ボルト部材309は、その下部が取付片301に接続され、天井吊り下げ物300を支持する。ボルト部材309の上部はフレーム部材20に接続される。
【0036】
フレーム部材20は、例えば障害物110を挟んで配置される一対の吊りボルト7,7の下部に取り付けられる。つまり、フレーム部材20は、連結部材10と同一のYZ平面において連結部材10と略平行な状態に取り付けられる。このフレーム部材20は、例えば断面L型のアングル鋼材によって構成され、互いに直角を成す横板部21と縦板部22とを有している。横板部21は、天井吊り下げ物300の上面に接合するように配置される。横板部21にはボルト部材309を挿通する孔が設けられており、その孔にボルト部材309の上部が挿通され、ボルト部材309の先端にナットが締着されることにより、フレーム部材20が天井吊り下げ物300の上面を押圧した状態に固定される。これにより、ボルト部材309には軸力が作用し、その軸力により、ボルト部材309は、取付片311とフレーム部材20との間で振動しない状態に固定される。
【0037】
また、フレーム部材20の横板部21には、吊りボルト7の下部を挿通する孔も設けられている。その孔に吊りボルト7の下部が挿通され、2つのナットで横板部21を挟み込むように締め付けることで吊りボルト7の下端部がフレーム部材20に固定される。フレーム部材20の横板部21に設けられる孔の位置は、吊りボルト7を接続するための接続部20aとなる。このようなフレーム部材20は、障害物110を挟んで配置される一対の吊りボルト7,7の下部を相互に連結するものであり、連結部材10と同様の機能を有しており、いわば第2の連結部材としても機能するものである。
【0038】
一方、フレーム部材20の縦板部22には、ブレース部材9を固定する固定金具14を装着するための孔が設けられている。その孔に固定金具14のボルト18を挿通することにより、フレーム部材20の縦板部22に対して固定金具14を取り付けることができる。この点においても、フレーム部材20は、連結部材10と同様の機能を有し、いわば第2の連結部材として機能する。
【0039】
この支持構造1において、連結部材10は第1実施形態で説明したものと同様の構成である。この連結部材10は、
図4に示すように、第1実施形態と同様、障害物110の下方において一対の吊りボルト7,7間を横断するように配置される。すなわち、連結部材10は、固定金具13によって一対の吊りボルト7,7の所定高さ位置に取り付けられ、一対の吊りボルト7,7の間においてブレース部材9の一端を接続する。
【0040】
本実施形態の支持構造1は、連結部材10よりも上側の領域と、連結部材10の下側の領域との2つの領域にブレース部材9を配置することができる。連結部材10よりも上側の領域では、ブレース部材9は、第1実施形態と同様に、一端が連結部材10に取り付けられ、他端が天井構造100の近傍位置に取り付けられる。ブレース部材9の他端を天井構造100の近傍位置に取り付けるときには、吊りボルト7よりも外側となる天井構造100にアンカーボルトなどのボルト部材205を取り付け、そのボルト部材205に対してブレース部材9の他端を接続すれば良い。
【0041】
ブレース部材9の他端をボルト部材205に接続する接続金具5としては、例えば2つの固定金具13を使用しても良い。
図5は、そのような接続金具5の例を示す図である。
図5に示すように、接続金具5は、2つの固定金具13を互いに対向するように配置し、一方の固定金具13の係合部15をボルト部材205の外周面に係合させ、他方の固定金具13の係合部15をブレース部材9の外周面に係合させるように配置される。そして2つの固定金具13の孔16に対してボルト18を挿入し、そのボルト18の先端にナット19を締着することにより、ブレース部材9とボルト部材205とを相互に連結した状態で固定することができる。このとき、そして1つのボルト18を締め付けるだけでブレース部材9をボルト部材205に固定することができるので、作業効率が良い。また、2つの固定金具13を向かい合わせに配置してボルト18とナット19を仮止め状態にすると、2つの固定金具13はボルト18を軸として相対回転するため、ブレース部材9の配設角度を調整しやすいという利点もある。尚、このような接続金具5は、ブレース部材9とボルト部材205との接続だけでなく、例えば、吊りボルト7の下端部と、XZ平面に配置されるブレース部材8とを交差させた状態で接続する際にも使用することができる。
【0042】
尚、ブレース部材9の他端を吊りボルト7の上端近傍位置に取り付けられたブレース連結金具3に接続することが可能な場合には、ブレース部材9の他端をブレース連結金具3に接続することで天井構造100の近傍位置に取り付けるようにしても良い。
【0043】
一方、連結部材10の下側の領域では、ブレース部材9は、一端が連結部材10に取り付けられ、他端が吊りボルト7の下端部が接続される接続部20aの近傍位置に取り付けられる。具体的には、ブレース部材9の他端は、フレーム部材20の接続部20aの近傍の縦板部22に取り付けられる。例えば、ブレース部材9の両端部は、上述した固定金具14を用いて連結部材10又はフレーム部材20に固定することができる。この場合においても、固定金具14は、1つのボルト18を締め付けるだけでブレース部材9を固定することができるため、作業効率が良い。
【0044】
このように本実施形態の支持構造1は、障害物110を挟んで配置される一対の吊りボルト7,7間において、障害物110の下方位置に連結部材10を配置して一対の吊りボルト7,7の中間位置を相互に連結し、その連結部材10に対してブレース部材9の端部を接続することで、ブレース部材9を所定角度の範囲内で配設できるようにしている。特に、本実施形態の支持構造1は、天井吊り下げ物300の上面に接合する状態で連結部材10と略平行に配置されるフレーム部材20を備えている。フレーム部材20は、ボルト部材309が締め付けられることによって天井吊り下げ物300の上面を押圧する状態となり、ボルト部材309の振動を抑制することができる。また、フレーム部材20を設けることにより、連結部材10とフレーム部材20との間にもブレース部材9を簡単に配置することができるので、優れた制震機能を発揮する。
【0045】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、連結部材10の他の構成例について説明する。
図6は、本実施形態における連結部材10の構成例を示す図である。この連結部材10は、レール部材30と、固定金具13,14と、スライドボルト33と、ナット19とを備えて構成される。レール部材30は、断面C字状に構成される金属製の長尺部材であり、その表面の平板部30bの中央にレール溝32が形成されている。レール溝32は、レール部材30の長手方向に沿って形成され、レール部31を形成する。スライドボルト33は、ボルト34の一端に矩形状の係合板35が取り付けられ、レール部材30の端部開口30aから係合板35がレール部材30の内側に収容されることにより、レール部材30に保持される。レール溝32の幅はボルト34よりも若干大きく、係合板35のサイズよりも小さい幅として形成される。そのため、係合板35がレール部材30の内側に収容されると、ボルト34はレール溝32を介してレール部材30の表面から突出した状態となる。そのため、スライドボルト33は、レール部31の長手方向に沿ってスライド可能である。固定金具13,14は、レール部材30に装着されるスライドボルト33のボルト34に対して装着され、ボルト34の先端にナット19が装着されることにより、レール部材30に取り付けられる。スライドボルト33とナット19は、固定金具13,14をレール部材30に固定するための締着部材36である。締着部材36が仮止め状態のとき、固定金具13,14はレール部材30のレール部31に沿ってスライド可能であり、締着部材36が締着されることにより、固定金具13,14はレール部31に沿ってスライド不可能な状態に固定される。このような連結部材10を用いることにより、連結部材10に対する吊りボルト7,7の取付位置やブレース部材9の取付位置を簡単に調整することが可能であり、作業効率を更に向上させることができる。特に、締着部材36を仮止め状態にすれば、固定金具13,14をスライドさせることによって無段階に取付位置を調整することが可能であり、ナット19をボルト34から取り外すことなく取付位置を調整できるという利点がある。
【0046】
図7は、レール部材30によって構成される連結部材10を備える支持構造1を示す側面図である。この支持構造1は、障害物110を跨ぐ一対の吊りボルト7の下方にレール溝32を有する連結部材10を備えている。そのため、固定金具13を用いて吊りボルト7を連結部材10に固定する場合や、固定金具14を用いてブレース部材9を連結部材10に固定するとき、固定金具13,14を仮止め状態にしてスライドさせることにより、吊りボルト7及びブレース部材9を適切な位置に調整して取り付けることができる。特に、ブレース部材9を取り付けるときには、固定金具14を仮止め状態にしてスライドさせることにより、ブレース部材9の角度を所定角度範囲内となるように簡単に調整することができるので、作業効率に優れている。また締着部材36を締着することにより、吊りボルト7やブレース部材9を固定金具13,14と平板部30bとの間に挟み込んだ状態で固定することができる。したがって、本実施形態のようなレール部31を有する連結部材10を用いれば、作業効率をより一層向上させることができる。
【0047】
尚、本実施形態における連結部材10は、第1実施形態及び第2実施形態における支持構造1の連結部材10にも適用可能であることは勿論である。
【0048】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態について説明する。上記各実施形態では、天井吊り下げ物300として、パッケージエアコンなどのように天井パネルから室内に対して露出して設置されるタイプの空気調和機を例示した。しかし、本発明の支持構造1を適用可能な空気調和機は、上述のようなものに限られず、例えば天井空間に隠蔽した状態で取り付けられる空気調和機であっても構わない。本実施形態では、天井吊り下げ物300が隠蔽式の空気調和機である場合を例示して説明する。
【0049】
図8及び
図9は、本実施形態における支持構造1を示す図であり、
図8はその斜視図を、
図9はその側面図を示している。天井吊り下げ物300は、空気調和機本体310と、フィルタユニット320と、吹出ユニット340と、吸気ユニット330とがY方向に沿って直列に組み付けられる構成である。具体的に説明すると、空気調和機本体310の吸気側(後方側)にはフィルタユニット320が接続され、フィルタユニット320は空気調和機本体310と一体構造となる。尚、空気調和機本体310は、予めフィルタユニット320が一体形成されたものであっても構わない。また、フィルタユニット320の更に吸気側(後方側)には、吸気ユニット330が接続される。また、空気調和機本体310の吹出側(前方側)には吹出ユニット340が接続される。つまり、この空気調和機は、後方側に設けられている吸気ユニット330から空気を吸い込み、空気調和機本体310の内部の熱交換機で熱交換を行ってから前方側に設けられている吹出ユニット340から熱交換された空気を吹き出すように構成される。ただし、フィルタユニット320の吸気側には、吸気ユニット330が接続されないこともある。その場合、空気調和機は、フィルタユニット320から空気を吸い込み、空気調和機本体310の内部の熱交換機で熱交換を行ってから前方側に設けられている吹出ユニット340から熱交換された空気を吹き出す。尚、吹出ユニット340の吹出口には、図示を省略する送風ダクトなどが接続される。
【0050】
空気調和機本体310の内部には上述した熱交換機やファンなどが設けられる。そのため、空気調和機全体における空気調和機本体310の重量割合が大きい。そこで空気調和機本体310の側面には、前後方向両端の下部近傍位置に、吊りボルトなどのボルト部材41の下端部を接続するための一対の取付片311,311が設けられている。例えば、空気調和機本体310の左右両側面のそれぞれに設けられる一対の取付片311,311は、空気調和機本体310の前後方向(Y方向)において互いに同じ位置に設けられる。
【0051】
本実施形態の支持構造1は、上記のような概略箱形形状を成す天井吊り下げ物300を支持する。以下、この支持構造1について説明する。
【0052】
図8及び
図9に示すように、この支持構造1は、天井吊り下げ物300の外面に装着されるフレーム構造50と、そのフレーム構造50に接続される吊りボルト7と、連結部材10と、ブレース部材9とを備えて構成される。
【0053】
フレーム構造50は、天井吊り下げ物300(空気調和機本体310)の上面を左右方向(X方向)に横断するように配置される一対の第1フレーム部材40と、第1フレーム部材40の上方位置において天井吊り下げ物300の上面を前後方向(Y方向)に横断するように配置される一対の第2フレーム部材51と、第1フレーム部材40及び第2フレーム部材51が互いに直交した状態で、且つ、第1フレーム部材40及び第2フレーム部材51を互いに上下方向に所定間隔を隔てた状態となるように第1フレーム部材40と第2フレーム部材51とを相互に連結するフレーム連結部材44と、を備えている。
【0054】
一対の第1フレーム部材40は、その左右両端部が空気調和機本体310の左右両側面において取付片311の上方位置となるように設置される。そのため、一対の第1フレーム部材40は、Y方向に所定間隔を隔てて互いに平行な状態で空気調和機本体310の上面に配置される。例えば、第1フレーム部材40は、例えば断面L型のアングル鋼材によって構成され、その両端部において取付片311に取り付けられたボルト部材41の上端部を接続する。ボルト部材41の上端部に装着するナットをきつく締め付けることにより、第1フレーム部材40は、空気調和機本体310の上面を押圧するように空気調和機本体310の上面に固定される。このとき、ボルト部材41には軸力が作用し、取付片311を第1フレーム部材40との間でボルト部材41は振動しないように固定される。
【0055】
また、一対の第1フレーム部材40は、Y方向に沿って配置されるボルト部材42により相互に連結され、相対変位しないように固定される。尚、ボルト部材42の両端部には、空気調和機本体310及びフィルタユニット320の上面に係合する係合部材を配置し、ボルト部材42がY方向に変位しないように固定しておくことが好ましい。
【0056】
また、第1フレーム部材40のX方向所定位置に、フレーム連結部材44が取り付けられる。フレーム連結部材44は、バネなどで構成される防振部材43を備えている。防振部材43は、空気調和機本体310の稼働中における空気調和機本体310の振動が吊りボルト7などに伝わらないようにするためのものである。
【0057】
第2フレーム部材51は、フレーム連結部材44によって第1フレーム部材40に連結され、第1フレーム部材40と直交する状態で天井吊り下げ物300の上方位置に設置される。この第2フレーム部材51も例えば断面L型のアングル鋼材によって構成され、その両端部が天井吊り下げ物300の前後方向(Y方向)の両端近傍位置まで延設される。すなわち、第2フレーム部材51の前方側端部は、吹出ユニット340の前方側端面よりも長くなるように延設され、後方側端部は、吸気ユニット330の後方側端面よりも長くなるように延設される。尚、空気調和機本体310に対して吸気ユニット330が装着されていない場合、第2フレーム部材51の後方側端部は、フィルタユニット320の後方側端面と同程度まで延設されたものであれば良い。
【0058】
また一対の第2フレーム部材51は、互いに所定間隔を隔てて互いに平行な状態となるように設置される。例えば、一対の第2フレーム部材51の間隔は、天井構造100に予め取り付けられるアンカーボルトなどのボルト部材のX方向の設置間隔と略一致するように設置される。
【0059】
第2フレーム部材51の前後方向両端部には、ボルト部材49が取り付けられ、吸気ユニット330及び吹出ユニット340の端部を支持するように構成される。
【0060】
一方、吊りボルト7の下端部は、第2フレーム部材51に接続される。例えば、吊りボルト7の下端部は、第2フレーム部材51を貫通し、第2フレーム部材51を挟んで2つのナットが締着されることにより、第2フレーム部材51に固定される。
【0061】
連結部材10は、障害物110を跨ぐ一対の吊りボルト7,7間において障害物110の下方位置に取り付けられ、第2フレーム部材51よりも上方の位置で一対の吊りボルト7,7を相互に連結する。そして連結部材10よりも上側の領域では、ブレース部材9は、一端が連結部材10に取り付けられ、他端が天井構造100の近傍位置に取り付けられる。このとき、上述した固定金具14が用いられる。
【0062】
一方、連結部材10の下側の領域では、ブレース部材9は、一端が連結部材10に取り付けられ、他端が第2フレーム部材51に取り付けられる。このときも、上述した固定金具14が用いられる。
【0063】
そして本実施形態においても、第3実施形態で説明したようなレール部31を有する連結部材10を用いることにより、固定金具14をレール部31に沿ってスライドさせながら取付位置を調整することができるため、作業効率に優れている。
【0064】
また、本実施形態においても、
図9に示すようにブレース部材9を配置するスペースを一対の吊りボルト7,7の内側の領域に設けることができるため、ブレース部材9を配置するための占有スペースを小さくすることができる。そのため、例えば、吸気ユニット330の上方空間や吹出ユニット340の上方空間を有効活用することが可能である。
【0065】
尚、本実施形態では、空気調和機本体310の上方を左右方向(X方向)に横切るように障害物110が存在する場合を例示した。しかし、障害物110が空気調和機本体310の上方を前後方向(Y方向)に横切る場合であっても適用可能である。その場合において、連結部材10よりも下側の領域にブレース部材9を設ける際には、障害物110を跨ぐ一対の吊りボルト7,7の下端近傍位置に別途金属製のプレート部材などを配置し、ブレース部材9の一端をそのプレート部材に固定する構成を採用すれば良い。
【0066】
(第5実施形態)
次に本発明の第5実施形態について説明する。例えば天井空間に配管やダクト、ケーブルなどが吊り下げられている場合、それらが天井吊り下げ物300を設置する際の障害物110となる。ただし、配管やダクト、ケーブルなどの障害物110は、所定間隔(例えば数メートル間隔)で吊りボルトによって天井空間に支持されていることが多く、障害物110の上方に連結部材10を配置することが可能なこともある。本実施形態では、障害物110の上方に連結部材10を設けてブレース部材9を配置する一構成例について説明する。
【0067】
図10は、本実施形態における支持構造1の一例を示す図である。
図10に示すように、この天井空間には吊りボルト7aによって吊り下げられた配管が障害物110として存在している。この障害物110は、X方向に延在する。支持構造1は、その障害物110の下方位置において天井吊り下げ物300を支持する。この支持構造1は、障害物110の上方位置に連結部材10を設けた構成である。すなわち、連結部材10は、障害物110を跨で配置される一対の吊りボルト7,7を相互に連結するように障害物110の上方位置に配置される。尚、連結部材10は、第3実施形態で説明したようにレール溝32を有する形態を例示している。ただし、連結部材10は、レール溝32を備えていないものであっても構わない。
【0068】
支持構造1は、障害物110の上方に配置された連結部材10から下方に向かって斜め方向にブレース部材9を配置している。すなわち、ブレース部材9は、一端が固定金具14で連結部材10に固定され、他端が吊りボルト7の下端近傍位置に固定される。本実施形態では、第2実施形態と同様に、天井吊り下げ物300の上面に接合するようにフレーム部材20が配置されており、ブレース部材9の他端は、そのフレーム部材20に固定される。このとき、ブレース部材9の他端は、吊りボルト7の下端部が接続されている接続部20aの近傍位置に固定されることが好ましい。
【0069】
このように支持構造1では、連結部材10を障害物110の上方位置に配置した場合であっても、一対の吊りボルト7,7の内側にブレース部材9の一端を接続することができるため、ブレース部材9を配置するときの専有スペースを小さくすることが可能である。
【0070】
(第6実施形態)
次に本発明の第6実施形態について説明する。例えば第2実施形態では、連結部材10の下方にフレーム部材20を備える支持構造1を例示した。本実施形態では、フレーム部材20を単独で使用し、そのフレーム部材20を上述した連結部材10として利用する形態について説明する。
【0071】
図11及び
図12は、第6実施形態における支持構造1を示す図である。本実施形態の支持構造1が第2実施形態と異なる点は、吊りボルト7の高さ方向中間位置に連結部材10を有しておらず、天井吊り下げ物300の上面に接合するフレーム部材20を上述した連結部材10として利用する点にある。すなわち、第2実施形態ではフレーム部材20が第2の連結部材として機能するのに対し、本実施形態ではフレーム部材20が唯一の連結部材10として機能する。
【0072】
この支持構造1において、フレーム部材20は、
図11及び
図12に示すように、障害物110の下方において一対の吊りボルト7,7間を横断するように配置され、一対の吊りボルト7,7を相互に連結する。また、フレーム部材20は、第2実施形態で説明したように、横板部21が天井吊り下げ物300の上面を押圧するように取り付けられるため、ボルト部材309の振動を抑制することができる。
【0073】
このような支持構造1は、連結部材10として機能するフレーム部材20よりも上側の領域にブレース部材9を配置することができる。フレーム部材20よりも上側の領域では、ブレース部材9は、第1実施形態と同様に、一端がフレーム部材20に取り付けられ、他端が天井構造100の近傍位置に取り付けられる。ブレース部材9の他端を天井構造100の近傍位置に取り付けるときには、吊りボルト7よりも外側となる天井構造100にアンカーボルトなどのボルト部材205を取り付け、そのボルト部材205に対してブレース部材9の他端を接続すれば良い。また、ブレース部材9の配設角度を45度±15度の範囲内に保持しつつ、ブレース部材9の他端を吊りボルト7の上端近傍位置に取り付けられたブレース連結金具3に接続することが可能な場合には、ブレース部材9の他端をブレース連結金具3に接続することで天井構造100の近傍位置に取り付けるようにしても良い。
【0074】
一方、フレーム部材20に連結されるブレース部材9の一端は、第2実施形態と同様に、固定金具14を用いてフレーム部材20の縦板部22に固定される。固定金具14を用いてブレース部材9の一端を固定する位置を、一対の吊りボルト7,7の間の領域に設けることにより、ブレース部材9を配置する占有スペースを小さくすることができる。また、本実施形態の支持構造1は、天井吊り下げ物300と天井構造100との間隔が狭い場合でも有効に適用可能であるという利点もある。
【0075】
尚、本実施形態では、天井吊り下げ物300の上面に接合するフレーム部材20にブレース部材9の一端を固定する場合を例示したが、これに限らず、例えば、第1実施形態又は第3実施形態で説明した連結部材10を天井吊り下げ物300の上面近傍位置に取り付け、その連結部材10に対してブレース部材9の一端を固定するようにしても構わない。ただし、この場合は、ボルト部材309の振動を抑制する効果が低減するため、それに対する対策を別途講じることが好ましい。
【0076】
(変形例)
以上、本発明に関する幾つかの実施形態を説明したが、本発明は、上記各実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものの含まれる。
【0077】
例えば、上記実施形態では、天井吊り下げ物300の一例として空気調和機を例示した。しかし、上述した支持構造1を使用して吊り下げ可能な物体は、必ずしも空気調和機に限られない。すなわち、上述した支持構造1は、概略箱形形状を有する物体であれば、どのような物体であっても天井構造100に吊り下げた状態で良好に支持することができる構造である。
【0078】
また、上記実施形態では、障害物110の下方位置と上方位置とのいずれか一方に連結部材10を配置し、その連結部材10に対してブレース部材9の一端を接続する例を説明した。しかし、本発明は、それに限られるものではなく、一対の吊りボルト7,7間に2つの連結部材10を配置するようにしても良い。そしてブレース部材9を配置するときには、一端を一方の連結部材10に接続し、他端を他方の連結部材10に接続するようにしても構わない。この場合、2つの連結部材10は、障害物110の下方又は上方のいずれか一方に設けられていても良いし、障害物110の下方と上方のそれぞれに1つずつ設けられていても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、障害物110を跨いで配置される一対の吊りボルト7,7間において連結部材10に複数のブレース部材9の一端が接続される場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、連結部材10に接続されるブレース部材9は、少なくとも1本であれば良い。
【0080】
また、上記実施形態では、連結部材10の長手方向の長さが、障害物110を跨いで配置される一対の吊りボルト7,7よりも若干長い程度である場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、連結部材10は、一対の吊りボルト7,7の外側にむかって更に延設されたものであっても構わない。この場合、一対の吊りボルト7,7の片側だけに延設されたものであっても良いし、両側に延設されたものであっても良い。そして延設された部分に少なくとも1つのブレース部材9の一端が接続される構造を採用しても良い。
【符号の説明】
【0081】
1…支持構造、7…吊りボルト、8,9…ブレース部材、10…連結部材、13,14…固定金具、300…天井吊り下げ物。