(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】緩衝材供給装置
(51)【国際特許分類】
B31D 5/00 20170101AFI20240527BHJP
【FI】
B31D5/00
(21)【出願番号】P 2020108052
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514192756
【氏名又は名称】株式会社ネオックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】島 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-502410(JP,A)
【文献】特開平02-169449(JP,A)
【文献】特開平06-270297(JP,A)
【文献】特開平09-076378(JP,A)
【文献】実開昭53-086284(JP,U)
【文献】特開昭50-065388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0309125(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31D 5/00
B65H 45/00
B65H 23/00
B31D 3/00
B65D 57/00-59/08
B65D 81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる多数のスリット部が配設されたシート状の緩衝材を供給する緩衝材供給装置であって、
基材シートを供給する基材シート供給部と、
カッターローラを有し線状の前記スリット部と非スリット部が縦に並んだスリット線を引っ張りによって前記スリット部が開くように並べたスリット群を形成するスリット形成部を備え、
前記カッターローラのスリット形成刃の流れ方向が、前記基材シートの搬送方向に対して直交する前記基材シートの幅方向に対して傾斜しており、
前記スリット形成部の前段と後段にそれぞれ、前記スリット形成部における前記基材シートに張力を付与するローラが配設され、
これらローラのうち前記カッターローラ
の後段に備えられる排出側抱かせローラと
前記カッターローラとの間の距離が、前記緩衝材の幅方向の一側から他側まで斜めに延びる1本の前記スリット線を対角線とする平面視方形をなす仮想の単位領域における搬送方向の長さに相当する単位長さ以下に設定され、
前記排出側抱かせローラの後段に、前記緩衝材を引き伸ばす立体化部を備えた
緩衝材供給装置。
【請求項2】
前記立体化部が、前記排出側抱かせローラの後段に平行に備えられる引き伸ばしローラで構成され、
前記排出側抱かせローラと前記引き伸ばしローラとの間の距離が、前記単位長さより長く設定されるとともに、
前記引き伸ばしローラの周速を前記排出側抱かせローラの周速よりも速く設定した
請求項1に記載の緩衝材供給装置。
【請求項3】
前記立体化部が、搬送される緩衝材の幅よりも狭い通路を有する邪魔板を設けて構成された
請求項1または請求項2に記載の緩衝材供給装置。
【請求項4】
前記スリット形成部の前段に、搬送される基材シートを複数枚に重ね合わせる重ね部を備えた
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の緩衝材供給装置。
【請求項5】
前記カッターローラが、その軸方向を前記基材シートの搬送方向に対して傾斜している
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の緩衝材供給装置。
【請求項6】
供給される基材シートに対してカッターローラによって、線状のスリット部と非スリット部が縦に並んだスリット線を引っ張りによって前記スリット部が開くように並べたスリット群を形成したのち、前記スリット群が形成された緩衝材を搬送する緩衝材供給方法であって、
前記カッターローラの前段と後段にそれぞれローラを配設して、後段のローラが、前記カッターローラとの間の距離を前記緩衝材の幅方向の一側から他側まで斜めに延びる1本の前記スリット線を対角線とする平面視方形をなす仮想の単位領域における搬送方向の長さに相当する単位長さ以下
に設定して設けられて、
前記スリット線を、前記基材シートの搬送方向に対して直交する前記基材シートの幅方向に対して傾斜させ
、かつ基材シートに張力を付与しながら形成し
つつ前記スリット線が形成された前記緩衝材を搬送
し、
搬送される前記緩衝材を引き伸ばして立体化する
緩衝材供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梱包や包装等に際して使用される緩衝材に関し、より詳しくは、シート状であり、引き伸ばしてから用いられる緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
前述のような緩衝材として、下記特許文献1のようなものがある。この緩衝材は、紙製のシートに一方向に延びる多数のスリットを配設して形成されている。具体的には、スリット部と非スリット部を縦に交互にして一直線上に並べたスリット列が多数並設され、並設に際して一のスリット列におけるスリット部の中間位置と、その隣のスリット列における非スリット部の中間位置を並べている。つまり、引っ張りによってスリット列のスリット部が開く構成である。
【0003】
このような緩衝材には、縦スリット紙と横スリット紙の二種類がある。横スリット紙は、緩衝材の長手方向に対して直交する緩衝材の幅方向に延びるスリット線を有している。縦スリット紙は、横スリット紙とは逆に、緩衝材の長手方向に延びるスリット線を有している。
【0004】
これらいずれの緩衝材も、スリット列の法線方向に引っ張って伸ばし、スリット部をおおよそハニカム状に形成してから使用する。引っ張る作業は手で行い、丸めるなどして緩衝材として梱包等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、使用に供するために緩衝材を伸ばす作業は人の手で行うため、梱包等の自動化は行えなかった。
【0007】
そこで、この発明は、スリットが配設されてなる緩衝材について梱包等の自動化に資するようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、一方向に延びる多数のスリット部が配設されたシート状の緩衝材を供給する緩衝材供給装置であって、基材シートを供給する基材シート供給部と、カッターローラを有し線状のスリット部と非スリット部が縦に並んだスリット線を引っ張りによって前記スリット部が開くように並べたスリット群を形成するスリット形成部を備え、前記カッターローラのスリット形成刃の流れ方向が、前記基材シートの搬送方向に対して直交する前記基材シートの幅方向に対して傾斜しており、前記カッターローラと、前記カッターローラよりも後段に備えられる排出側抱かせローラとの間の距離が、前記緩衝材の幅方向の一側から他側まで斜めに延びる1本の前記スリット線を対角線とする平面視方形をなす仮想の単位領域における搬送方向の長さに相当する単位長さ以下に設定され、前記排出側抱かせローラの後段に、前記緩衝材を引き伸ばす立体化部を備えた緩衝材供給装置である。
【0009】
この構成では、カッターローラのスリット形成刃が基材シートに対して、その幅方向に対して傾斜したスリット部を形成する。スリット形成以降は、単位長さ以下の距離で離間配置された排出側抱かせローラが、緩衝材をスリット部の変形なしに基材シートの形態のまま搬送し、続いて立体化部において搬送される緩衝材を引き伸ばして立体化する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、斜めのスリット線を有するスリット群を形成するとともに、カッターローラと排出側抱かせローラとの間の距離を張力がかけられる距離に設定し、その後段に備えた立体化部で緩衝材を立体化する。このため、スリットが配設されてなる緩衝材について梱包等の自動化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図10】他の例に係るスリット形成部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0013】
図1に、緩衝材供給装置11の概略平面図を、
図2にその側面図を示す。これらに示すように緩衝材供給装置11は、
図3の(a)に示したようなシート状の緩衝材12を製造するとともに、そのまま使用できるように立体的形状に変形して供給する装置である。緩衝材供給装置11は、主に、基材シート供給部13と、スリット形成部14と、立体化部15を有している。
【0014】
まず先に、緩衝材12について説明し、続いて緩衝材供給装置11の構造を説明する。
【0015】
緩衝材12は、
図3の(a)に一部を拡大して示したように、一方向に延びる多数のスリット部21を千鳥状に配設して構成されている。スリット部21は厚さ方向に貫通する切り目である。スリット線23のスリット部21と非スリット部22は、それぞれ所定長さに形成され、スリット線23は一定の間隔をおいて多数並設されている。並設に際してスリット線23は、隣り合うスリット線23のスリット部21と非スリット部22の中間位置が互いにスリット線23の法線方向に並ぶように配置される。
【0016】
このような緩衝材12は、スリット部21を有するだけでは単なるシート状であるので緩衝作用はあまりない。しかし、スリット線23の長手方向と直交する方向(法線方向)で引き延ばしてスリット部21を広げて立体化済み緩衝材12bにすると、
図3の(b)に一部を拡大して示したように、おおよそハニカム形状の目24(開口)が形成される。
図4は、形状の変化を示す説明図である。この目24を形成する部分、つまりスリット部21以外の部分は、緩衝材12の面方向に対して斜めに傾いて、緩衝作用を発揮する構造となる。
【0017】
緩衝材供給装置11の基材シート供給部13は、緩衝材12の材料である基材シート12aを供給する部分であり、例えばクラフト紙や樹脂シートなど適宜の材料からなりロール状に巻かれた基材シート12aを、支持ローラ31で引き出し可能に保持している。基材シート12aの送り出し位置にはモータに接続された送りローラ32が備えられている。
【0018】
スリット形成部14は、カッターローラ41とアンビルローラ42を有し、カッターローラ41の外周面にはスリット形成刃41aが形成されている。カッターローラ41にはモータが接続される。
【0019】
スリット形成刃41aは、前述したようなスリット群を形成するものである。スリット群とは、直線状のスリット部21と非スリット部22が縦に並んだスリット線23を引っ張りによってスリット部21が開くように並べたものである。
【0020】
スリット形成部14の前段には受動ローラである供給側抱かせローラ43が、後段には同じく受動ローラである排出側抱かせローラ44が配設され、カッターローラ41によるスリット形成時に適切な張力を付与できるようにしている。供給側抱かせローラ43と排出側抱かせローラ44にはニップローラ45を対設して、基材シート12a又は緩衝材12を挟んでいる。
【0021】
立体化部15は、緩衝材12を引き伸ばす部分であり、搬送しながら緩衝材12の立体化を行う立体化手段51を備えている。立体化手段51は適宜構成し得る。
【0022】
このような概略構造の緩衝材供給装置11において、カッターローラ41のスリット形成刃41aの流れ方向Yは、
図1に示したように、基材シート12aの搬送方向(長手方向)Xに対して直交する基材シート12aの幅方向に対して適宜角度傾斜している。
【0023】
すなわち、カッターローラ41のスリット形成刃41aは、スリット部21を形成する個々の刃先が断続的に直線状に並んだものが多数並設された構造であり、このスリット形成刃41aの流れ方向Y、つまり刃先が連なり断続的に並んでいる方向が、搬送方向Xに対して直交する方向から所望の傾斜角度θ傾いている。この所望の傾斜角度θは、0°<θ<90°である。
【0024】
図1の例では、カッターローラ41の軸方向は、基材シート12aの搬送方向Xに対して直交する基材シート12aの幅方向と同一である。このため、スリット形成刃41aの流れ方向Yは、カッターローラ41の軸方向からも前述と同じ所望の傾斜角度θ傾いている。
【0025】
なお、スリット形成刃41aは、基材シート12aの幅以上の長さに形成して、基材シート12aの一側から他側に全体に亘ってスリット線23が形成されてスリット部21が端に露出するようにすることもできる。しかし、
図1に示したように、スリット形成刃41aの形成範囲を基材シート12aの幅以下の長さの範囲にして、一側と他側にスリット部21のない適宜幅の耳部25(
図3の(a)参照)を設けられる長さとするのが望ましい。巻取り後などの取り扱い時に端が破れたりすることを回避できるからである。
【0026】
また、緩衝材供給装置11においては、カッターローラ41から後段であって立体化部15以前に備えられるローラ間の距離(基材シート12a又は緩衝材12におけるローラに接触する点間の距離)は単位長さLs以下に設定される。
【0027】
単位長さLsとは、
図5に示したように、緩衝材12の幅方向の一側から他側まで斜めに延びる1本のスリット線23を対角線とする平面視方形をなす仮想の単位領域Sにおける搬送方向Xの長さに相当する長さである。これは、斜めに延びるスリット部21を有する緩衝材12における基準となる長さである。具体的には、緩衝材12に形成された複数のスリット線23のうち、幅方向の一側から他側に延びる1本のスリット線23に注目した場合に、そのスリット線23を対角線とする仮想線で挟まれた単位領域Sの搬送方向Xにおける長さW・tanθである。
【0028】
なお、前述した「緩衝材12の幅方向の一側から他側まで」とは、前述したような耳部25を有する緩衝材12の場合には端よりも内側の位置を意味することになる。このため、同じ傾斜のスリット線23を有する緩衝材12でもスリット線23の長さによって、厳密に言えば単位長さLsに差異が生じるが、緩衝材12のスリット部21が変形するか否かは、スリット線23の長さよりもスリット線23の傾斜角度に大きく依存するので、スリット線23の長さの厳密な違いは無視できる。
【0029】
カッターローラ41から後段であって立体化部15以前に備えられるローラは、
図1、
図2に示したように、排出側抱かせローラ44である。つまり、カッターローラ41と排出側抱かせローラ44の間の距離Loutは、単位長さLs以下である。
【0030】
具体的には、緩衝材12の幅がWであり、搬送方向Xと直交する方向とスリット線23との角度がθである場合に、単位長さは、W×tanθとなり、例えばθが45度であるときには、tanθが1であることから、単位長さLsは緩衝材12の幅Wと同じになる(
図5参照)。
【0031】
立体化手段51は、前述のように適宜構成し得るが、
図1、
図2の例では、排出側抱かせローラ44の後段に平行に備えられる引き伸ばしローラ52を設けて構成している。つまり、排出側抱かせローラ44の後段に引き伸ばしローラ52を備え、排出側抱かせローラ44との協働で立体化を行うように構成されている。
【0032】
引き伸ばしローラ52は、緩衝材12の幅よりも長く形成され、モータ(図示せず)に接続されて回転駆動可能であり、制御部(図示せず)の制御に基づいた周速やトルクなどの回転条件に従って回転する。
【0033】
また、引き伸ばしローラ52は、排出側抱かせローラ44との間の距離Lstrは、前述した単位長さLsより長く設定されている。
【0034】
制御部は、引き伸ばしローラ52の周速を排出側抱かせローラ44の周速よりも速く設定している。
【0035】
緩衝材12の引っ張りに対する挙動を確認するために引張試験を行った。引張試験は、JIS-P8113(紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法)に準拠したものである。
【0036】
使用した試験装置は、Shanghai Heng Yu Instrument Co.,Ltd社製のコンピュータ支援引張試験機で、モデルHY-205CSである。
【0037】
試験片は、70g/m
2、110μm厚のクラフト紙に、スリット部21の長さ10mm、非スリット部22の長さ3mm、スリット線23に沿う法線間隔が2mmのスリット群を形成したものである。スリット線23の傾斜角度については、9種類のものを用意した。すなわち、搬送方向Xと直交する方向とスリット線23との傾斜角度θが、
図6に示したように、90°であるものを試料<1>とし、以下同様に、71.6°のものを試料<2>、63.4°のものを試料<3>、56.3°のものを試料<4>、45°のものを試料<5>、26.6°のものを試料<6>、14°のものを試料<7>、5.7°のものを試料<8>、0°のものを試料<9>とした。試料<1>はいわゆる縦スリット紙であり、試料<9>は横スリット紙である。
【0038】
試験片の幅Wは、いずれも50mmであり、掴み間隔Lは50mmと100mmの2種類とした。掴み間隔Lが50mmであるのを[試験1]とし、掴み間隔Lが100mmであるのを[試験2]とした。
【0039】
引張速度は、20mm/分である。
【0040】
試験の結果を
図7の表に示す。表に示した結果は、各試験に用いる試験片を5点以上用意して複数回行った結果の平均値である。
【0041】
図7の表から判るように、W×tanθの値が単位長さLs以下となるものでは、降伏点は見られなかった。すなわち、[試験1]では、試料<1>~<5>について、[試験2]では試料<1>~<3>については、スリット部21は開かなかった。
【0042】
また、前述のようなクラフト紙からなり前述のようなスリット群を有する緩衝材12では、試料<9>の結果から、スリット部21が最初に開く引っ張り張力は、おおよそ0.85N/50mm(17N/m)と推定できる。
【0043】
さらに、傾斜角度が大きくなるに従って、スリット部21を開くために必要な引っ張り張力が大きくなることが判る。
【0044】
このため、制御部では、傾斜角度θの値に応じて、スリット部21を開く引っ張り力が得られるように回転条件を設定する。引っ張り力は、傾斜角度0°の横スリット紙の場合にスリット部21が最初に開く引っ張り張力(例えば0.85N/50mm(17N/m))に1/cosθを乗じた値を参考に設定するとよい。
【0045】
以上のように構成された緩衝材供給装置11では、スリット線23を、基材シート12aの搬送方向に対して直交する基材シート12aの幅方向に対して傾斜形成して緩衝材12を得て、緩衝材12を搬送しながら立体化部15で立体化を行う。
【0046】
スリット形成と搬送には、単位長さLs、つまり緩衝材12の幅方向の一側から他側まで斜めに延びる1本のスリット線23を対角線とする平面視方形をなす仮想の単位領域Sにおける搬送方向の長さに相当する長さ以下の間隔で離間配置されたローラを用いる。
【0047】
まず、基材シート供給部13から送り出された基材シート12aは、一定の周速で回転するカッターローラ41によってスリット形成がなされる。このとき基材シート12aには、供給側抱かせローラ43と排出側抱かせローラ44によって張力がかけられている。スリット部21は、カッターローラ41のスリット形成刃41aの傾斜角度θに応じて、基材シート12a(緩衝材12)の幅方向に対して所望の角度傾けて形成される(
図3の(a)、
図5参照)。
【0048】
このスリット形成において、カッターローラ41のスリット形成刃41aは、横スリット紙を形成する場合のようにアンビルローラ42に対して線で当たるのではなく、点で当たる。このため、必要な切断圧を低下させることができるとともに、スリット形成作業を高速で行っても、安定した切断性能を得られる。
【0049】
安定した切断は、カッターローラ41と排出側抱かせローラ44との間の配設間隔を単位長さLs以下としたことによっても実現できる。つまり、緩衝材12の強度限界に近いような高い張力をかけた状態でスリット形成が行えるので、スリット部21が適切に形成される。
【0050】
スリット部21が形成された緩衝材12は、立体化部15に搬送されて立体化がなされる。つまり、カッターローラ41と排出側抱かせローラ44との間の距離が単位長さLs以下であるのに対して、排出側抱かせローラ44と引き伸ばしローラ52との間の距離は単位長さLsより長い。そして、引き伸ばしローラ52の周速は排出側抱かせローラ44のそれよりも速く、引き伸ばしローラ52による引っ張り力はスリット部21を変形させて開くように設定されている。このため、緩衝材12は引き伸ばしローラ52の回転に伴ってスリット部21を開き、引き伸ばしローラ52によって圧縮されるものの、引き伸ばしローラ52を通過するとスリット部21を開いた立体形状に復元する。
【0051】
立体化された緩衝材12は、適宜の切断装置(図示せず)により自動的に又は手動で切断され、使用に供される。
【0052】
このように、スリット形成部14におけるカッターローラ41と排出側抱かせローラ44との間の距離を単位長さLs以下にして、張力をかけてもスリット部21を変形させることなく搬送できるようにするとともに、スリット形成を確実に行えるようにしている。一方、立体化部15における排出側抱かせローラ44と引き伸ばしローラ52との間の距離は、単位長さLsよりも長くして搬送しながら立体化できるようにしている。
【0053】
このように緩衝材12の製造から、使用に供するための立体化までを自動的に行えるので、スリットが配設されてなる緩衝材12について梱包等の自動化に貢献できる。
【0054】
また、立体化手段51は引き伸ばしローラ52で構成し、引き伸ばしローラ52の位置と回転の制御によって立体化を行う構成であるので、搬送しながらの立体化がより簡素な構成で実現できる。
【0055】
以下、その他の例について説明する。この説明において前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0056】
図8は、立体化手段51の他の例を示している。この立体化手段51は、邪魔板53を設けて構成されている。
【0057】
つまり、排出側抱かせローラ44の後段に邪魔板53を設けるとともに、邪魔板53の後段に、緩衝材12を引き出すための引き出しローラ54を設けている。邪魔板53は、搬送される緩衝材12の幅よりも狭い通路53aを有している。具体的には、邪魔板53は板材の中央に緩衝材12の幅方向を狭めて絞った状態で通過させる通路53aを有し、通路53aよりも搬送上流側に下流側ほど幅狭になり通路53aに連続する傾斜面部53bを有している。
【0058】
邪魔板53の設置位置は、排出側抱かせローラ44の直後でも、適宜の間隔を隔てた位置でもいずれでもよい。引き出しローラ54は、通路53aの後段に設けられる。引き出しローラ54と排出側抱かせローラ44との間の距離Lstrは、単位長さより長くする。
【0059】
このような立体化手段51を有する緩衝材供給装置11では、邪魔板53の通路53aを通過する際の絞り込み抵抗によって、緩衝材12は立体化される。引き出しローラ54を通過した立体化済み緩衝材12は、引き出しローラ54によって圧縮されるものの、引き伸ばしローラ54から出た時点でスリット部21を開いた立体形状に復元する。
【0060】
このような邪魔板53を備える構成においては、引き出しローラ54を省略して手で引き出して立体化するようにして、半自動の緩衝材供給装置11とすることもできる。邪魔板53をも省略して、立体化部15を完全な手動で行うようにしてもよい。
【0061】
図9は、基材シート供給部13の後段の他の例を示している。すなわち、スリット形成部14の前段に、搬送される基材シート12aを複数枚に重ね合わせる重ね部16を備えている。
【0062】
前述したようにカッターローラ41のスリット形成刃41aによる切断は点当たりで行えるので、横スリット紙を形成する場合よりも切断圧を低減できるが、ある程度の切断圧は必要である。そのため、スリット形成時に基材シート12aに張力をかける必要があり、引張強度の低い基材シート12aでは、スリット形成時やその後の搬送時に破断してしまうおそれがある。
【0063】
そこで、
図9に示した例では、基材シート12aを搬送方向に延びる折り線で折って重ね合わせて、スリット形成時やその後の搬送時に強度を維持できるようにしている。
【0064】
重ね部16は、一般的な三角板61を配置して構成できる。緩衝材12は縦に半分に折って二重にしたり、更に縦に半分に折って四重にしたりなされる。
【0065】
このような重ね部16を有する緩衝材供給装置11では、強度の高くない基材シート12aに対しても、スリット形成と搬送が確実に行える。
【0066】
図10は、スリット形成部14の他の例を示している。すなわち、スリット形成部14のカッターローラ41は、その軸方向を基材シート12aの搬送方向Xに対して直角ではなく適宜角度Φ傾斜している。具体的には、軸方向に対して傾斜角度θ傾いているスリット形成刃41aを有したカッターローラ41を、搬送方向Xに対して適宜角度Φ傾けている。
【0067】
前述したようにカッターローラ41のスリット形成刃41aの角度の違い、つまりスリット線23の傾斜角度θの違いによって緩衝材12にかけられる張力が異なる。このため、基材シート12aの幅Wや、カッターローラ41と排出側抱かせローラ44との間の距離Lout、排出側抱かせローラ44と引き伸ばしローラ52との間の距離Lstrが固定の場合、カッターローラ41を適宜角度Φ傾けることで、引き伸ばしのために必要な張力を調整することができる。また、基材シート12aの幅Wや、カッターローラ41と排出側抱かせローラ44との間の距離Lout、排出側抱かせローラ44と引き伸ばしローラ52との間の距離Lstrを変化させた場合には、カッターローラ41を適宜角度Φ傾けることで、引き伸ばしのために必要な張力を維持することができる。
【0068】
前述の例では、供給側抱かせローラ43と排出側抱かせローラ44を受動ローラとしたが、駆動ローラであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
11…緩衝材供給装置
12…緩衝材
12a…基材シート
12b…立体化済み緩衝材
13…基材シート供給部
14…スリット形成部
15…立体化部
16…重ね部
21…スリット部
22…非スリット部
23…スリット線
41…カッターローラ
41a…スリット形成刃
44…排出側抱かせローラ
51…立体化手段
52…引き伸ばしローラ
53…邪魔板
53a…通路
Ls…単位長さ
X…搬送方向
Y…スリット形成刃の流れ方向