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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】安全柵
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20240527BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20240527BHJP
   E04H 17/14 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E02D29/12 B
E04G21/32 C
E04H17/14 102Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020152535
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022046902
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】598118400
【氏名又は名称】スエヒロシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】末廣 盛男
(72)【発明者】
【氏名】朴 哲
(72)【発明者】
【氏名】宋 光弼
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125194(JP,A)
【文献】実開昭52-061238(JP,U)
【文献】特開2019-203321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0024820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
E04G 21/32
E04H 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脚部を有し、前記脚部間の上部脚部間に接続し2つ折り構造の上部横架材と、上端が前記上部横架材に接続し下端が下部脚部間に接続するX形リンクと、前記X形リンクの下方に接続し2つ折り構造の下部横架材からなるパンタグラフ機構が蛇腹状に伸長して開口部を囲む柵本体と、
前記開口部を囲む柵状に広げた前記柵本体の脚部を固定する下部補強枠と、
前記開口部を囲む柵状に広げた前記柵本体の上部横架材と交差するように固定する上部補強バーと、
を有し、
前記上部補強バー及び前記下部補強枠は、複数の棒状部材を折り畳み可能に連結した折り畳み構造であり、複数の棒状部材を連結した端部どうしを交差させて連結する仕口構造を前記端部に設けたことを特徴とする安全柵。
【請求項2】
請求項1に記載された安全柵であって、
前記上部補強バーは、前記上部横架材の固定時に対向する前記上部横架材に嵌めるクリップ又は締結手段を有することを特徴とする安全柵。
【請求項3】
請求項1に記載された安全柵であって、
前記柵本体は、いずれか1側面の前記パンタグラフ機構のX形リンクの上端及び上部横架材のジョイントを取り外し可能な着脱部を有することを特徴とする安全柵。
【請求項4】
請求項1に記載された安全柵であって、
前記柵本体を前記開口部を囲む柵状に広げたときに前記上部横架材の長さよりも前記X形リンクの下端間の長さを長く設定したことを特徴とする安全柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールなどの開口部の工事中に作業エリアと第三者通行エリアを区分けして双方の安全を確保する安全柵に関する。また建設現場での開口部の安全柵等に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホール工事中に歩行者の落下を防止する安全柵が利用されている(例えば、特許文献1に開示有り)。
図8は、従来の安全柵の説明図である。図示のように従来の安全柵1は、マンホールなどの開口部を囲む平面視で矩形の四隅に配置した4本の脚部2と、脚部2間に接続して複数のX形リンクが連結されたパンタグラフ機構3から構成されている。このような安全柵1は、脚部2間のパンタグラフ機構3が蛇腹状に伸縮して、伸長状態のときに開口部を囲む柵状に形成できる。一方、縮小状態のときに4本の脚部2どうしが接近して折り畳んだ状態で持ち運びが容易となる。
【0003】
しかしながら、従来の安全柵は、金属製で耐久性があるものの、物が接触するとパンタグラフ機構が伸縮して容易に脚部が傾いてしまい安定性が悪く、強度面で問題があった。また従来の安全柵は耐久性があるものの、重量物であり人力による持ち運びが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-36547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、簡易な構造で組立てが容易で設置時に安定性があり、持ち運びも容易な安全柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、複数の脚部を有し、前記脚部間の上部脚部間に接続し2つ折り構造の上部横架材と、上端が前記上部横架材に接続し下端が下部脚部間に接続するX形リンクと、前記X形リンクの下方に接続し2つ折り構造の下部横架材からなるパンタグラフ機構が蛇腹状に伸長して開口部を囲む柵本体と、
前記開口部を囲む柵状に広げた前記柵本体の脚部を固定する下部補強枠と、
前記開口部を囲む柵状に広げた前記柵本体の上部横架材と交差するように固定する上部補強バーと、
を有し、
前記上部補強バー及び前記下部補強枠は、複数の棒状部材を折り畳み可能に連結した折り畳み構造であり、複数の棒状部材を連結した端部どうしを交差させて連結する仕口構造を前記端部に設けたことを特徴とする安全柵を提供することにある。
上記第1の手段によれば、3つの部材の簡易な構造であっても設置時の安定性がある。また柵本体を上部補強バーで固定する際にトラス構造が形成されて所定の強度を確保できる。またいずれの部材も折り畳むことができ持ち運びが容易となる。また折り畳んだ上部補強バー及び下部補強枠を枠状に広げて連結した後に容易に撓むことがなく、所定の強度を保持できる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記上部補強バーは、前記上部横架材の固定時に対向する前記上部横架材に嵌めるクリップ又は締結手段を有することを特徴とする安全柵を提供することにある。
上記第2の手段によれば、柵本体に上部補強バーを容易に固定又は取り外しができ、所定の強度を保持できる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1の手段において、前記柵本体は、いずれか1側面の前記パンタグラフ機構のX形リンクの上端及び上部横架材のジョイントを取り外し可能な着脱部を有することを特徴とする安全柵を提供することにある。
上記第3の手段によれば、柵状に広げた柵本体の側面に、作業者用の出入口を容易に確保できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1の手段において、前記柵本体を前記開口部を囲む柵状に広げたときに前記上部横架材の長さよりも前記X形リンクの下端間の長さを長く設定したことを特徴とする安全柵を提供することにある。
上記第4の手段によれば、柵本体の下面よりも上面の開口面積が小さくなってピラミッド状又は四角錐状に形成することができ、トラス構造を形成して設置時の安定性を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構造で組立てが容易で、高強度で設置時の安定性が良く、軽量でコンパクトにまとまり持ち運びも容易な安全柵を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の安全柵の側面図である。
図2】本発明の安全柵の平面図である。
図3】仕口構造の説明図である。
図4】クリップの説明図である。
図5】柵本体を折り畳んだ状態の説明図である。
図6】柵本体を広げる途中の説明図である。
図7】安全柵の出入口の説明図である。
図8】従来の安全柵の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の安全柵の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
[安全柵10]
図1は安全柵の側面図である。図2は安全柵の平面図である。図3は仕口構造の説明図である。
安全柵10は、複数の脚部22を有し、前記脚部22間のパンタグラフ機構24が蛇腹状に伸長して開口部を囲む柵本体20と、前記開口部を囲む柵状に広げた前記柵本体20の脚部22を固定する下部補強枠30と、前記開口部を囲む柵状に広げた前記柵本体20の上部横架材26と交差するように固定する上部補強バー40と、を有している。
【0013】
柵本体20は、開口部を囲む(包囲する)柵であり、4本の脚部22と、脚部22間に配置して蛇腹状に伸縮するパンタグラフ機構24を有している。パンタグラフ機構24は、4本の脚部22間、換言すると4側面(正面、左右側面、背面)にそれぞれ配置される。パンタグラフ機構24の具体的な構造は、上部横架材26と、X形リンク27と、下部横架材28からなる。
【0014】
上部横架材26は、2枚のリンクをジョイントで回転自在に接続するリンク機構(2つ折り構造)を採用し、両端が脚部22の上方(上部脚部間)とジョイントを介して接続している。
X形リンク27は、2枚のリンクをX状に交差した筋交いであり、上端が上部横架材26(の2枚のリンクそれぞれ)にジョイントを介して回転自在に接続し、下端が脚部22の下方(下部脚部間)とジョイントを介して回転自在に接続している。
下部横架材28は、上部横架材26と同様に、2枚のリンクをジョイントで回転自在に接続するリンク機構(2つ折り構造)を採用し、X形リンク27の下方にジョイントを介して回転自在に接続している。
また柵本体20は、開口部を囲む柵状に広げたときに、上部横架材26の長さよりもX形リンク27の下端間の長さを長く設定している。
【0015】
このような構成の脚部22及びパンタグラフ機構24を有する柵本体20は、脚部22間のパンタグラフ機構24を伸長すると、上部横架材26及び下部横架材28が直線状に伸長し、X形リンク27も広がったときに脚部22の上端は下端よりも内側に傾き側面視で台形状に形成される。換言すると脚部22の下端を結ぶ四角形よりも、脚部22の上端を結ぶ四角形の方が小さくなりピラミッド状又は四角錐状に形成される。従って、パンタグラフ機構24内に複数のトラス構造が形成される。これにより強度が増して設置時の安定性も良くなる。
【0016】
下部補強枠30及び上部補強バー40は、複数の棒状部材がジョイントを介して回転自在に連結された折り畳み構造を採用している。
具体的な下部補強枠30の構成は、アングル材(等辺山形鋼)など地面又は床面に対して直交する(垂直方向に延びる)面を有する部材を用いている。この部材の長さは、柵本体20を広げたときの脚部22下端間の長さよりも僅かに長くなるように設定している。本実施形態の下部補強枠30は、脚部22と同数の4本のアングル材を平面視で四角形の枠状に配置する。このとき下部補強枠30の対角線上の隅部(対向する隅部)は、ジョイント30aと、仕口構造30bを用いている。ジョイント30aは、2つのアングル材が折り畳みできれば良く、例えば蝶番などを用いることができる。また仕口構造30bは、交差するアングル材どうしが直交した状態で接合できれば良い(図3(1)参照)。
このような下部補強枠30は、ジョイント30aで連結された2本のアングル材の両端に仕口構造30bが形成された2本の部材からなる。そして2本の部材を平面視で四角形に配置する。仕口構造30bを嵌め合わせると下部補強枠30の四隅が直角に保持される。このとき下部補強枠30の四隅内側に柵本体20を広げたときの脚部22下端が接触して強固に支持できる。
【0017】
具体的な上部補強バー40は平鋼を用いている。平鋼の長さは上部横架材28の長さ以上に設定している。本実施形態の上部補強バー40は、脚部22と同数の4本の平鋼を平面視で四角形の枠状に配置する。このとき上部補強バー40の対角線上の隅部(対向する隅部)は、ジョイント40aと、仕口構造40bを用いている。ジョイント40aは、2つの平鋼が折り畳みできれば良く、例えば蝶番などを用いることができる。また仕口構造40bは、交差する平鋼どうしが直交した状態で接合できれば良い(図3(2)参照)。
このような上部補強バー40は、ジョイント40aで連結された2本の平鋼の両端に仕口構造40bが形成された2本の部材からなる。そして2本の部材を平面視で四角形に配置する。仕口構造40bを嵌め合わせると上部補強バー40の四隅が直角に保持される。
上部補強バー40は、開口部を囲む柵状に広げた柵本体20の上部横架材26の上に固定する際に上部横架材26の長手方向と交差するように、換言すると脚部22と四隅が重ならないように固定している。このとき、上部補強バー40には上部横架材26と対向する箇所にクリップ50又は締結手段を設けている。図4はクリップの説明図である。クリップ50は、クサビ(逆U字)形状であり、上部横架材26に差し込んで嵌り固定できれば良く、グレーチングクリップ等を適用することができる。クリップ50の他にも、上部補強バー40を上部横架材26に固定することができる構成であれば良く、ボルト及びナットの締結手段、クランプ等を適用することもできる。
【0018】
[作用]
上記構成による本発明の安全柵10の作用について、以下説明する。
図5は柵本体を折り畳んだ状態の説明図である。図示のように柵本体20はパンタグラフ機構24を縮小すると脚部22どうしが中心に接近してまとまり、脚部22の中心に設けた付属のバンド23を外周に沿って巻き付けるとコンパクトにまとまり、上部横架材26に設けた取っ手25を使用すると持ち運びが容易となる。さらに収納が楽になる。同様に上部補強バー40及び下部補強枠30も折り畳んでバンドを巻き付けることによりコンパクトにまとまって持ち運びが容易となる。
図6は柵本体を広げる途中の説明図である。図示のように柵本体20の4側面に配置した各パンタグラフ機構24を伸長する。上部横架材26及び下部横架材28を直線状に伸長し、X形リンク27も広がったときに脚部22の上端は下端よりも内側に傾き側面視で台形状に形成される。
下部補強枠30は、ジョイント30aで連結された2本のアングル材の両端に仕口構造30bが形成された2本の部材からなり、この2本の部材を平面視で四角形に配置する。仕口構造30bを嵌め合わせると下部補強枠30の四隅が直角に保持される。このとき下部補強枠30の四隅内側に柵本体20を広げたときの脚部22下端が接触して強固に支持できる。
【0019】
上部補強バー40は、ジョイント40aで連結された2本の平鋼の両端に仕口構造40bが形成された2本の部材からなり、この2本の部材を平面視で四角形に配置する。仕口構造40bを嵌め合わせると上部補強バー40の四隅が直角に保持される。そして上部補強バー40を開口部を囲む柵状に広げた柵本体20の上部横架材26に固定する際、上部横架材26の長手方向と交差するように、換言すると脚部22と四隅が重ならないように固定している。
また上部補強バー40は、作業員の安全帯用フックを掛けて固定することができる。これにより安全帯を強固な安全柵に連結でき、作業員の安全を確保できる。さらに安全帯取付用のリングを取り付けても良い。
このような安全柵10は、側面視で台形状(ピラミッド形状又は四角錐体)の柵本体20のパンタグラフ機構24及び、上部補強バー40で固定された上部横架材26内に複数のトラス構造が形成される。これにより強度が増して設置時の安定性も良くなる。また簡易な構造で組立てが容易で、軽量でコンパクトにまとまり持ち運びも容易となる。
【0020】
図7は安全柵の出入口の説明図である。
柵本体20は、いずれか1側面のパンタグラフ機構24のX形リンク27の上端及び上部横架材26のジョイントに取り外し可能な着脱部60を有している。着脱部60は、回転自在なジョイントが取り外しできる構造であれば良く、一例として蝶ねじを用いることができる。このような着脱部60を備えた安全柵10の構成により、開口部を囲む安全柵10を設置した後に、着脱部60により上部横架材26及びX形リンク27の連結を解除することにより、作業を行う作業者の出入口を柵本体20の側面に容易に確保できる。
【0021】
本実施形態の柵本体20の形状は、脚部22が4本の四角形で説明したが、これに限らず脚部22が3本又は5本以上であっても良い。
また本発明の安全柵は、マンホール以外の他の開口部、接近禁止物にも適用できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 安全柵
2 脚部
3 パンタグラフ機構
10 安全柵
20 柵本体
22 脚部
23 バンド
24 パンタグラフ機構
25 取っ手
26 上部横架材
27 X形リンク
28 下部横架材
30 下部補強枠
30a ジョイント
30b 仕口構造
40 上部補強バー
40a ジョイント
40b 仕口構造
50 クリップ
60 着脱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8