(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】絶対角度位置検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240527BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
G01D5/244 E
(21)【出願番号】P 2020158632
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕史
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第4709963(JP,B2)
【文献】特開昭63-214617(JP,A)
【文献】特開2005-043109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20
G01D 5/244
G01B 7/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相励磁/2相出力のレゾルバ(1)の2相のレゾルバ信号を使用して多回転検出を行う絶対角度位置検出方法であって、
通電時には、
切換部(120)が通電側に切り換えられ、
AC励磁部(132)において生成された互いに位相が90°ずれた2相AC励磁信号を、前記切換部(120)経由で前記レゾルバ(1)に入力して2相励磁し、前記レゾルバ(1)から前記2相のレゾルバ信号を得るステップと、
前記2相のレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部(131)において処理して1回転データを生成するステップと、
前記2相AC励磁信号からタイミング部(133)において2相のタイミング信号を生成するステップと、
前記2相のレゾルバ信号を回転数カウント部(142)において前記2相のタイミング信号によりカウントして通電時多回転カウントデータを生成するステップと、
前記1回転データと前記通電時多回転カウントデータとを演算部(150)において演算して絶対角度位置信号を生成するステップと、を有し、
停電時には、
前記切換部(120)が停電側に切り換えられ、
前記レゾルバ(1)、パルス励磁部(141)、前記回転数カウント部(142)及び前記演算部(150)にバックアップ電源から電力が供給され、
前記パルス励磁部(141)において生成された1相のパルス励磁信号を前記切換部(120)経由で前記レゾルバ(1)に入力して2相のうちのいずれか1相を励磁し、前記レゾルバ(1)から2相のレゾルバ信号を得るステップと、
前記2相のレゾルバ信号を前記回転数カウント部(142)において前記パルス励磁信号によりカウントし
て停電時多回転カウントデータを生成するステップと、
前記停電時多回転カウントデータを前記演算部(150)において演算して前記絶対角度位置信号を生成するステップと、を有する、
ことを特徴とする絶対角度位置検出方法。
【請求項2】
前記回転数カウント部(142)は、前記通電時と前記停電時とにおいて共用され、前記通電時及び前記停電時を通して連続した多回転検出を行う、
ことを特徴とする請求項
1に記載の絶対角度位置検出方法。
【請求項3】
2相励磁/2相出力のレゾルバ(1)の2相のレゾルバ信号を使用して多回転検出を行う絶対角度位置検出装置であって、
互いに位相が90°ずれた2相AC励磁信号を生成するAC励磁部(132)と、
前記2相AC励磁信号を2相のタイミング信号に変換するタイミング部(133)と、
前記レゾルバ(1)から供給された前記2相のレゾルバ信号をデジタル変換して1回転データを生成するレゾルバ/デジタル変換部(131)と、
1相のパルス励磁信号を生成するパルス励磁部(141)と、
前記2相のレゾルバ信号をカウントして通電時多回転カウントデータまたは停電時多回転カウントデータを生成する回転数カウント部(142)と、
前記2相AC励磁信号と前記パルス励磁信号との一方を切り換えて前記レゾルバ(1)に供給する切換部(120)と、
前記1回転データ、前記通電時多回転カウントデータ及び前記停電時多回転カウントデータを処理する演算部(150)と、を備え、
通電時には、
前記切換部(120)が通電側に切り換えられ、
前記2相AC励磁信号を前記レゾルバ(1)に入力して2相励磁し、前記レゾルバ(1)から前記2相のレゾルバ信号を得て、
前記2相のレゾルバ信号を前記レゾルバ/デジタル変換部(131)において処理して1回転データを生成し、
前記回転数カウント部(142)において前記2相のタイミング信号により前記2相のレゾルバ信号をカウントして前記通電時多回転カウントデータを生成し、
演算部(150)において前記1回転データと前記通電時多回転カウントデータとを演算し
て絶対角度位置信号を生成し、
停電時には、
前記切換部(120)が停電側に切り換えられ、
前記レゾルバ(1)、前記パルス励磁部(141)、前記回転数カウント部(142)及び前記演算部(150)にバックアップ電源から電力が供給され、
前記パルス励磁信号を前記レゾルバ(1)に入力して2相のうちのいずれか1相を励磁し、前記レゾルバ(1)から前記2相のレゾルバ信号を得て、
前記2相のレゾルバ信号と前記パルス励磁信号とを前記回転数カウント部(142)に入力し、前記パルス励磁信号と前記2相のレゾルバ信号より前記停電時多回転カウントデータを生成し、
前記演算部(150)において前記停電時多回転カウントデータを演算して前記絶対角度位置信号を生成する、
ことを特徴とする絶対角度位置検出装置。
【請求項4】
前記回転数カウント部(142)は、前記通電時と前記停電時とにおいて共用され、前記通電時及び前記停電時を通して連続した多回転検出を行う、
ことを特徴とする請求項
3に記載の絶対角度位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶対角度位置検出方法及び装置に関し、特に、2相励磁/2相出力のレゾルバを使用し、通電時は2相のAC励磁を行い、停電時は電池バックアップによるパルス励磁を行い、通電時及び停電時共連続して多回転カウントデータを検出するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルバを用いた絶対角度位置検出方法及び装置において、通電時はAC励磁による励磁を行い、停電時は電池バックアップによるパルス励磁を行うことが提案されている。
従来、用いられていたこの種の絶対角度位置検出方法及び装置としては、例えば、特許文献1に示される構成を挙げることができる。
【0003】
ここで、特許文献1に記載された絶対角度位置検出装置は、通電時には、レゾルバをAC励磁すると共に、レゾルバ/デジタル変換部からの1回転データと、回転数カウント部からの通電時多回転カウントデータとを演算回路にて演算し、多回転位置を示すアブソリュート検出信号を生成する。一方、絶対角度位置検出装置は、停電時には、レゾルバをパルス励磁すると共に、通電時と共通の回転数カウント部を用いて、停電時カウントデータを生成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の特許文献1記載の絶対位置検出装置は、通電時と停電時とで連続した多回転カウントデータを得ることができるものの、1相励磁/2相出力のレゾルバを使用しているために高精度の絶対角度検出を行えない問題があった。すなわち、1相励磁/2相出力のレゾルバは、出力信号の振幅のアンバランスがそのまま誤差になる。このため、1相励磁/2相出力のレゾルバを用いた場合、高精度な絶対角度検出を実現することは難しいという課題がある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために、1相励磁/2相出力のレゾルバに比べて高精度な2相励磁/2相出力のレゾルバを用いた多回転検出による絶対角度検出を実現し、通電時と停電時とで連続した多回転カウントデータを得ることが可能な絶対角度位置検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る絶対角度位置検出方法は、2相励磁/2相出力のレゾルバの2相のレゾルバ信号を使用して多回転検出を行う絶対角度位置検出方法であって、通電時には、切換部が通電側に切り換えられ、AC励磁部において生成された互いに位相が90°ずれた2相AC励磁信号を、切換部経由でレゾルバに入力して2相励磁し、レゾルバから2相のレゾルバ信号を得るステップと、2相のレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部において処理して1回転データを生成するステップと、2相AC励磁信号からタイミング部において2相のタイミング信号を生成するステップと、2相のレゾルバ信号を回転数カウント部において2相のタイミング信号によりカウントして通電時多回転カウントデータを生成するステップと、1回転データと通電時多回転カウントデータとを演算部において演算して絶対角度位置信号を生成するステップと、を有し、停電時には、切換部が停電側に切り換えられ、レゾルバ、パルス励磁部、回転数カウント部及び演算部にバックアップ電源から電力が供給され、パルス励磁部において生成された1相のパルス励磁信号を切換部経由でレゾルバに入力して2相のうちのいずれか1相を励磁し、レゾルバから2相のレゾルバ信号を得るステップと、2相のレゾルバ信号を回転数カウント部においてパルス励磁信号によりカウントして停電時多回転カウントデータを生成するステップと、停電時多回転カウントデータを演算部において演算して絶対角度位置信号を生成するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明に係る絶対角度位置検出方法において、停電時には、パルス励磁部と回転数カウント部とがバックアップ電源により駆動されることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る絶対角度位置検出方法において、回転数カウント部は、通電時と停電時とにおいて共用され、通電時及び停電時を通して連続した多回転検出を行うことを特徴とする。
【0010】
この発明に係る絶対角度位置検出装置は、2相励磁/2相出力のレゾルバの2相のレゾルバ信号を使用して多回転検出を行う絶対角度位置検出装置であって、互いに位相が90°ずれた2相AC励磁信号を生成するAC励磁部と、2相AC励磁信号を2相のタイミング信号に変換するタイミング部と、レゾルバから供給された2相のレゾルバ信号をデジタル変換して1回転データを生成するレゾルバ/デジタル変換部と、1相のパルス励磁信号を生成するパルス励磁部と、2相のレゾルバ信号をカウントして通電時多回転カウントデータまたは停電時多回転カウントデータを生成する回転数カウント部と、2相AC励磁信号とパルス励磁信号との一方を切り換えてレゾルバに供給する切換部と、1回転データ、通電時多回転カウントデータ及び停電時多回転カウントデータを処理する演算部と、を備え、通電時には、切換部が通電側に切り換えられ、2相AC励磁信号をレゾルバに入力して2相励磁し、レゾルバから2相のレゾルバ信号を得て、2相のレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部において処理して1回転データを生成し、回転数カウント部において2相のタイミング信号により2相のレゾルバ信号をカウントして通電時多回転カウントデータを生成し、演算部において1回転データと通電時多回転カウントデータとを演算して絶対角度位置信号を生成し、停電時には、切換部が停電側に切り換えられ、レゾルバ、パルス励磁部、回転数カウント部及び演算部にバックアップ電源から電力が供給され、パルス励磁信号をレゾルバに入力して2相のうちのいずれか1相を励磁し、レゾルバから2相のレゾルバ信号を得て、2相のレゾルバ信号とパルス励磁信号とを回転数カウント部に入力し、パルス励磁信号と2相のレゾルバ信号より停電時多回転カウントデータを生成し、演算部において停電時多回転カウントデータを演算して絶対角度位置信号を生成することを特徴とする。
【0011】
この発明に係る絶対角度位置検出装置において、パルス励磁部と回転数カウント部とは、停電時において、バックアップ電源により駆動されることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る絶対角度位置検出装置において、回転数カウント部は、通電時と停電時とにおいて共用され、通電時及び停電時を通して連続した多回転検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、1相励磁/2相出力のレゾルバに比べて高精度な2相励磁/2相出力のレゾルバを用いて、2相のレゾルバ信号を使用した多回転検出により高精度な絶対角度検出を実現し、通電時と停電時とで連続した多回転カウントデータを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1の絶対角度位置検出装置の構成を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態1の絶対角度位置検出処理時における励磁信号とレゾルバ信号の位相関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の絶対角度位置検出方法と絶対角度位置検出装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0016】
実施の形態1.
はじめに、本発明の実施の形態1における絶対角度位置検出装置100の基本的な構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の絶対角度位置検出装置100の構成を示す構成図である。なお、絶対角度位置検出装置100は、絶対角度位置検出方法の各処理ステップを実行する装置である。
【0017】
[絶対角度位置検出装置100の構成]
図1において、絶対角度位置検出方法を実行する絶対角度位置検出装置100は、主に、電源監視部110と、切換部120と、第1信号処理部130と、第2信号処理部140と、演算部150と有している。絶対角度位置検出装置100には、2相励磁/2相出力のレゾルバ1が接続されている。絶対角度位置検出装置100には、通電時には図示されない通電動作用電源から電力の供給を受け、停電時には図示されないバックアップ電源から電力の供給を受ける。なお、バックアップ電源は、電池などを供給源とする停電時等のための限定的な電源である。
【0018】
電源監視部110は、通電動作用電源の有無に応じて、切換部120の切り換え状態を変更する切換制御信号を生成する。切換部120は、電源監視部110からの切換制御信号に基づいて、通電動作用電源が有効な通電時には、第1信号処理部130からの2相励磁信号をレゾルバ1に供給する。また、切換部120は、電源監視部110からの切換制御信号に基づいて、通電動作用電源が無効であってバックアップ電源が有効な停電時には、第2信号処理部140からのパルス励磁信号をレゾルバ1に供給する。
【0019】
第1信号処理部130には、レゾルバ/デジタル変換部131と、AC励磁部132と、タイミング部133とが設けられている。ここで、第1信号処理部130は、通電動作用電源の供給を受け、通電時に動作する。なお、通電時とは、通電動作用電源から電源供給がなされている状態を意味する。
【0020】
レゾルバ/デジタル変換部131は、レゾルバ1から2相のレゾルバ信号を供給され、1回転データを生成し、生成した1回転データを演算部150に供給する。また、レゾルバ/デジタル変換部131は、2相励磁用データをAC励磁部132に供給する。AC励磁部132は、レゾルバ/デジタル変換部131から2相励磁用データの供給を受け、互いに位相が90°ずれた2相AC励磁信号を生成し、生成した2相AC励磁信号を切換部120経由でレゾルバ1に供給する。タイミング部133は、2相AC励磁信号を2相のタイミング信号に変換し、後述する第2信号処理部140内の回転数カウント部142に供給する。
【0021】
第2信号処理部140には、パルス励磁部141と、回転数カウント部142とが設けられている。なお、第2信号処理部140は、通電動作用電源とバックアップ電源との供給を受け、通電時と停電時とに動作する。
【0022】
パルス励磁部141は、停電時にバックアップ電源により駆動され、1相のパルス励磁信号を生成する。パルス励磁部141は、生成したパルス励磁信号を、切換部120経由でレゾルバ1に供給すると共に、回転数カウント部142に供給する。回転数カウント部142は、通電時と停電時とに、共に使用される。すなわち、回転数カウント部142は、通電時において、2相のタイミング信号により2相のレゾルバ信号をカウントし、通電時多回転カウントデータを生成する。また、回転数カウント部142は、停電時において、パルス励磁信号により2相のレゾルバ信号をカウントし、停電時多回転カウントデータを生成する。
【0023】
演算部150は、通電時において通電動作用電源を供給され、レゾルバ/デジタル変換部131からの1回転データと通電時多回転カウントデータとにより演算を行う。演算の結果、演算部150は、多回転位置を示す絶対角度位置信号を生成する。また、演算部150は、停電時においてバックアップ電源を供給され、回転数カウント部142からの停電時多回転カウントデータを受けて絶対角度位置信号を生成する。
【0024】
[絶対角度位置検出方法の説明]
次に、本発明の実施の形態1の絶対角度位置検出装置100において実行される絶対角度位置検出方法について説明する。
【0025】
実施の形態1において、絶対角度位置検出装置100は、2相励磁/2相出力のレゾルバ1を使用するものであり、通電時のみ動作する第1信号処理部130と、通電時と停電時の両方で動作する第2信号処理部140とのそれぞれの機能を、2相励磁/2相出力のレゾルバ1に対応させたことを特徴としている。
【0026】
2相励磁/2相出力のレゾルバ1について詳細に説明する。2相励磁/2相出力のレゾルバ1は、sinωtとcosωtの2相のAC励磁信号を用いて励磁されると、レゾルバ1の角度θに応じて位相の変化を有する位相変調信号を、レゾルバ信号として出力する。
そして、この2相励磁/2相出力のレゾルバ1は、出力信号の振幅のアンバランスがそのまま誤差になる1相励磁/2相出力のレゾルバと比較すると、ノイズの影響を受けにくい位相変調信号を用いるため高精度であるという特長を有している。
【0027】
レゾルバ1は、2相のAC励磁信号と2相のレゾルバ信号とについて、励磁相R1~R4と出力相S1~S4とにおいて、次のような出力電圧方程式を有している。ここで、Eは電圧、Kは電圧に関する定数、Nは倍角数、θはレゾルバ1の角度を意味している。
励磁相:ER1-R3=Ecosωt …(1)
ER2-R4=Esinωt …(2)
出力相:ES1-S3=K(ER2-R4・sinNθ+ER1-R3・cosNθ)
=KEcos(ωt-Nθ) …(3)
ES2-S4=K(ER2-R4・cosNθ-ER1-R3・sinNθ)
=KEsin(ωt-Nθ) …(4)
【0028】
以上の(3)式と(4)式が示すとおり、2相励磁/2相出力のレゾルバ1の出力信号は位相変調信号である。この位相変調信号は、それぞれの励磁信号の振幅変調信号が合成された結果として得られるものである。従って、いずれか一方の励磁相のみを用いてレゾルバ1を励磁した場合、1相励磁/2相出力のレゾルバ信号と同じ振幅変調信号が得られることになる。
【0029】
実施の形態1の絶対角度位置検出装置100において実行される絶対角度位置検出方法は、レゾルバ1についての2相励磁/2相出力と1相励磁/2相出力とを併用可能な特徴的な性質を、積極的に利用する。
【0030】
絶対角度位置検出装置100において、通電時にレゾルバ1を2相のAC励磁信号により励磁している場合、レゾルバ信号の各励磁相に対する出力相の位相関係を基に、通電時多回転カウントデータを生成可能である。
【0031】
ここで、
図2を参照してレゾルバ信号の位相関係を説明する。
図2は、本発明の実施の形態1の絶対角度位置検出処理時における励磁信号とレゾルバ信号の位相関係を示す説明図である。
図2において、2相励磁/2相出力のレゾルバ1を2相のAC励磁信号により励磁した際の、レゾルバ角度毎の励磁信号とレゾルバ信号の位相関係を示している。
【0032】
図2は、レゾルバ1の角度0~90°、90~180°、180~270°、270~360°の象限ごとに、各励磁信号に対するそれぞれのレゾルバ信号の位相が、4種類の組合せに分けられることを示している。ここで、基準となる励磁信号に対して、レゾルバ信号の位相が0~+180°を「進み」と定義している。また、基準となる励磁信号に対して、レゾルバ信号の位相が-180~0°を「遅れ」と定義している。
これら4種類の組み合わせの状態から、象限を判定することが可能になる。この結果、従来技術におけるA相信号、B相信号を生成できることが明らかである。従って、回転数カウント部142は、通電時において、2相のレゾルバ信号と、タイミング部133において2相のAC励磁信号から生成した2相のタイミング信号とから、A相/B相の通電時多回転カウントデータを生成することができる。
【0033】
[絶対角度位置検出装置100の動作]
次に、絶対角度位置検出装置100の動作である絶対角度位置検出方法について、通電時と停電時に分けて説明する。
【0034】
通電時には、切換部120が通電側に切り換えられる。AC励磁部132は、2相のAC励磁信号を生成し、生成した2相のAC励磁信号を切換部120経由でレゾルバ1に供給する。レゾルバ1は、2相励磁されて2相のレゾルバ信号を生成し、生成した2相のレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部131と回転数カウント部142とに供給する。
レゾルバ/デジタル変換部131は、レゾルバ1から供給された2相のレゾルバ信号をデジタル変換して1回転データを生成し、生成した1回転データを演算部150に供給する。回転数カウント部142は、レゾルバ1からの2相のレゾルバ信号と、タイミング部133からの2相のタイミング信号とを受け、2相のタイミング信号により2相のレゾルバ信号をカウントし、A相/B相の通電時多回転カウントデータを生成する。そして、演算部150は、レゾルバ/デジタル変換部131からの1回転データと、回転数カウント部142からのA相/B相の通電時多回転カウントデータとを受けて演算することで、従来の1相励磁/2相出力のレゾルバよりも高精度な絶対角度位置信号を生成することができる。
【0035】
一方、停電時には、切換部120が停電側に切り換えられる。パルス励磁部141は、バックアップ電源により駆動されて、パルス励磁信号を生成し、生成したパルス励磁信号を切換部120経由でレゾルバ1に供給する。これにより、レゾルバ1は、2相のうちのいずれか1相を励磁され、2相のレゾルバ信号を生成する。そして、回転数カウント部142は、バックアップ電源により駆動され、レゾルバ1において生成された1相励磁/2相出力のレゾルバ信号と、パルス励磁信号とを受け、2相のレゾルバ信号をパルス励磁信号のパルス幅によりカウントし、停電時多回転カウントデータを生成する。演算部150は、回転数カウント部142からの停電時多回転カウントデータを受けて絶対角度位置信号を出力する。すなわち、停電時においては、2相ある励磁相のうちの片側のみをパルス励磁すれば、レゾルバ1からのレゾルバ信号は振幅変調信号として出力される。このため、従来技術と同様の処理により、停電時多回転カウントデータを生成することができる。演算部150は、回転数カウント部142からの停電時多回転カウントデータを受けて演算することで、絶対角度位置信号を生成する。
【0036】
以上のように、回転数カウント部142は、通電時と停電時とにおいて共用されるため、通電時及び停電時を通して連続した多回転検出を行うことができる。また、停電時には、レゾルバ1の片側の励磁相のみをパルス励磁することで、停電時の消費電流を低減することができる。
【0037】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1に説明した絶対角度位置検出装置100及び絶対角度位置検出方法によれば、2相励磁/2相出力のレゾルバ1を用いて、以下のように、高精度な絶対角度検出を実現する。
【0038】
通電時には、切換部120が通電側に切り換えられ、AC励磁部132において生成された互いに位相が90°ずれた2相AC励磁信号を切換部120経由でレゾルバ1に入力して2相励磁し、レゾルバ1から2相のレゾルバ信号を得て、2相のレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換部131において処理して1回転データを生成し、2相AC励磁信号からタイミング部133において2相のタイミング信号を生成し、2相のレゾルバ信号を回転数カウント部142において2相のタイミング信号によりカウントして通電時多回転カウントデータを生成し、1回転データと通電時多回転カウントデータとを演算部150において演算して絶対角度位置信号を生成する。
一方、停電時には、切換部120が停電側に切り換えられ、パルス励磁部141において生成された1相のパルス励磁信号を切換部120経由でレゾルバ1に入力し、2相のうちのいずれか1相を励磁してレゾルバ1から2相のレゾルバ信号を得て、2相のレゾルバ信号を回転数カウント部142においてパルス励磁信号によりカウントして停電時多回転カウントデータを生成し、通電時多回転カウントデータを演算部150において演算して絶対角度位置信号を生成する。
【0039】
通電時には、2相励磁/2相出力のレゾルバ1を使用することで、1相励磁/2相出力のレゾルバに比べて高精度な絶対角度検出を実現することが可能になる。また、停電時には、レゾルバ1の片側の励磁相のみをパルス励磁することで、消費電流を低減することができる。そして、回転数カウント部142は、通電時には通電時多回転カウントデータを生成し、停電時には停電時多回転カウントデータを生成するため、通電時及び停電時を通して連続した多回転検出を行うことができる。
【0040】
停電時においてパルス励磁部141と回転数カウント部142とはバックアップ電源により駆動されるため、通電動作用電源からの電源供給が停止した場合であっても、レゾルバ1の励磁と回転数カウント部142でのカウントの動作を継続することができ、通電時及び停電時を通して連続した多回転検出を確実に行うことが可能になる。
【0041】
回転数カウント部142は、通電時と停電時とにおいて共用され、通電時及び停電時を通して連続した多回転検出を行うことにより、通電時及び停電時を通して、途切れることなく、連続した多回転検出を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1 レゾルバ、100 絶対角度位置検出装置、110 電源監視部、120 切換部、130 第1信号処理部、131 レゾルバ/デジタル変換部、132 AC励磁部、133 タイミング部、140 第2信号処理部、141 パルス励磁部、142 回転数カウント部、150 演算部。