IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 榎本金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-窓枠取付構造 図1
  • 特許-窓枠取付構造 図2
  • 特許-窓枠取付構造 図3
  • 特許-窓枠取付構造 図4
  • 特許-窓枠取付構造 図5
  • 特許-窓枠取付構造 図6
  • 特許-窓枠取付構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】窓枠取付構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/58 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
E06B3/58 C
E06B3/58 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020164325
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056529
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591145461
【氏名又は名称】榎本金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】親川 勝之
(72)【発明者】
【氏名】能勢 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亞希
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-192742(JP,A)
【文献】特開2000-303747(JP,A)
【文献】特開平10-196236(JP,A)
【文献】実開昭62-071283(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54-3/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉本体の窓用開孔部に窓本体を保持するための窓枠と、前記窓用開孔部の内周面に固定され、前記窓枠を係合固定する係合バネと、を備えてなり、
前記窓枠は、前記窓用開孔部に嵌合する枠体からなり、
前記枠体は、前記窓本体の外周部を保持するために溝状に形成された保持部と、前記保持部の下方に形成された前記扉本体の板面に当接する周縁部と、前記保持部から前記枠体の背面方向に形成された前記窓用開孔部に前記枠体を差し込むためのガイド部と、を有し、
前記ガイド部は、前記係合バネと係合するための被係合部を有することを特徴とする窓枠取付構造。
【請求項2】
ガイド部の被係合部は、扉本体の窓用開孔部の内周面に固定された係合バネに対向する外周面上に凸部及び凹部が隣接して形成され、前記凹部は、前記係合バネの先端を没入する程度の深さを有することを特徴とする請求項1記載の窓枠取付構造。
【請求項3】
係合バネは、板状の基部と、前記基部の中央付近から斜め上方に傾斜して形成されたバネ部と、前記バネ部の先端付近を下方に折曲形成した折曲片と、を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の窓枠取付構造。
【請求項4】
係合バネの折曲片は、バネ部に対して概ね直角をなすように折曲形成したこと特徴とする請求項1又は3のいずれか一項に記載の窓枠取付構造。
【請求項5】
係合バネは、扉本体の窓用開孔部の内周面の複数箇所に固定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の窓枠取付構造。
【請求項6】
係合バネは、前記係合バネを重ねられた状態で窓用開孔部の内周面に固定されていることを特徴する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の窓枠取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉本体に窓本体を保持する窓枠を取り付けるための窓枠取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扉本体の窓用開孔部に対して窓本体を保持するための窓枠を取り付ける際に、窓枠をビスで窓用開孔部に固定するため、扉本体の正面又は背面側の窓枠近傍にビス頭部を露出することが多く、使用者の視野に入りやすいため扉全体の意匠性を損なっていた。
【0003】
そこで、特許文献1に記載された考案には、意匠性を損なわないようにするため、扉本体の窓用開孔部において垂直方向に突設した係止ピンを設け、当該係止ピンに係止するように窓枠を嵌め込んで取り付けることが可能な丸窓の額縁構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平5-33674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に係る考案は、扉本体の窓用開孔部に対して窓枠を突設した係止ピンで係止しているため、窓本体及び窓枠を取り外すことが難しく、窓本体や窓枠を窓用開孔部から取り外して取付位置の調整や窓本体の清掃することが容易でなかった。
【0006】
また、一般的な建物内に設置された扉本体に設けられた窓は、窓本体と扉本体の板面との間に段差があるため、扉本体が引戸の場合には、扉本体を戸袋に引き込む際に手指を巻き込んでしまうおそれがあった。
【0007】
上述した欠点を鑑み、本発明は、引戸などの扉本体に窓及び窓枠を取り付ける際に扉本体の板面に対して窓枠をビスで固定する必要がなく、かつ、扉本体の窓用開孔部に対して窓枠を取付自在とすることができるとともに、手指の巻き込みを防止するために扉本体の板面と同一平面上に窓本体を取り付けることが可能な窓枠取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、扉本体の窓用開孔部に窓本体を保持するための窓枠と、前記窓用開孔部の内周面に固定され、前記窓枠を係合固定する係合バネと、を備えてなり、
前記窓枠は、前記窓用開孔部に嵌合する枠体からなり、
前記枠体は、前記窓本体の外周部を保持するために溝状に形成された保持部と、前記保持部の下方に形成された前記扉本体の板面に当接する周縁部と、前記保持部から前記枠体の背面方向に形成された前記窓用開孔部に前記枠体を差し込むためのガイド部と、を有し、
前記ガイド部は、前記係合バネと係合するための被係合部を有することを特徴とするものである。
【0009】
また、上述した構成に加え、ガイド部の被係合部は、扉本体の窓用開孔部の内周面に固定された係合バネに対向する外周面上に凸部及び凹部が隣接して形成され、前記凹部は、前記係合バネの先端を没入する程度の深さを有することが好ましい。
【0010】
また、上述した構成に加え、係合バネは、板状の基部と、前記基部の中央付近から斜め上方に傾斜して形成されたバネ部と、前記バネ部の先端付近を下方に折曲形成した折曲片と、を有することが好ましい。
【0011】
また、上述した構成に加え、係合バネの折曲片は、バネ部に対して概ね直角をなすように折曲形成したことが好ましい。
【0012】
また、上述した構成に加え、係合バネは、扉本体の窓用開孔部の内周面の複数箇所に固定されていることが好ましい。
【0013】
また、上述した構成に加え、係合バネは、前記係合バネを重ねられた状態で窓用開孔部の内周面に固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1-5記載の発明によれば、窓枠の周縁部にビス穴を設けることなく、取り付け及び取り外しを容易に行うことができ、窓本体の内部における結露による汚れの清掃を容易に行うことができる窓枠取付構造を提供することが可能である。
【0015】
請求項6記載の発明によれば、係合バネの固定位置が少ない場合でも、窓枠の枠体をしっかりと係合して保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の一例である窓枠取付構造を示す分解斜視図である。
図2図1の係合バネの(a)斜視図、及び、(b)側面図ある。
図3】扉本体の窓用開孔部に固定された係合バネに対して窓枠を取り付けた状態を示す正面図である。
図4図3の係合バネと枠体との係合状態を示すA-A線断面図である。
図5】窓枠を取り外したときの窓枠の被係合部周辺を示す部分拡大断面図である。
図6】扉本体の窓用開孔部に固定された二重の係合バネに対して窓枠を取り付けた状態を示す背面図である
図7図6の係合バネと枠体との係合状態を示すB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例について図1-5に基づいて詳細に説明する。
【0018】
窓枠取付構造は、図1に示すように、扉本体40の窓用開孔部41に窓本体30を保持するための窓枠10と、窓用開孔部41の内周面42に固定され、窓枠10を取付自在に係合固定する係合バネ20と、を備えてなるものである。
【0019】
窓本体30は、略円形状に切断して成形された2つの板材からなり、この窓本体30の外周部31は、後述する窓枠10の保持部12に対して密に嵌入するため樹脂材を主体として形成された断面略U字状のガスケット32を周囲に装着されている。なお、この板材は、従来の板ガラスや軽量のアクリル板を使用することが好適である。
【0020】
窓枠10は、扉本体40の窓用開孔部41に嵌合する枠体11、11からなり、この枠体11、11は、全体が略筒状体であり、窓本体30の外周部31を保持するために溝状に形成された保持部12と、この保持部12の下方に形成された扉本体40の板面に当接する周縁部13と、保持部12から枠体11の背面方向に形成された窓用開孔部41に枠体11、11を差し込むためのガイド部14と、を有する。また、この枠体11、11は、本実施形態で示すように、窓本体30が丸窓の場合など異なる窓本体30の形状や大きさに合わせるように、所定の断面形状でアルミニウム等の金属材を押出成形によって製造することが好適である。
【0021】
ガイド部14は、係合バネ20、20に係合するように凹凸状の被係合部15、15を有するものであり、この被係合部15、15は、扉本体40の窓用開孔部41の内周面42に固定された係合バネ20、20に対向する外周面上に凹部15a及び凸部15bが隣接して形成されている。
【0022】
また、このガイド部14は、図4に示すように、一対の枠体11、11同士で互い重なり合うように異なる高さで形成されることで、重なり幅を調整することで種々の扉本体40の板厚に対しても取り付けることができるとともに、係合バネ20、20を固定するためのビス23、23を被覆することが可能である。
【0023】
被係合部15、15の凹部15aは、図5に示すように、係合バネ20のバネ部22の先端付近(とくに折曲片22a全体)を没入する程度の深さdを備えて凹状に形成され、下方に拡開するように傾斜した2つの傾斜面を有する。周縁部13側に位置するこの傾斜面は、図4に示すように、少なくともバネ部22の先端から中間付近まで当接させ、バネ部22を数度程度の角度(概ね5度以下)で下方に弾性変形させるものである。
【0024】
被係合部15、15の凸部15bは、上方に向かって拡開するように傾斜した2つの傾斜面を備えた断面凸形状に形成されるものである。この傾斜面のうち枠体11、11の背面方向側の位置する傾斜面は、凹部15aの深さdよりも同程度からそれ以上の長さの高さhを有することで、枠体11、11を嵌め込んで取り付ける際に、バネ部22の弾性変形させていない状態から半分程度の角度まで弾性変形させ、バネ部22が凸部15bを乗り越えやすくすることで取付作業を容易にすることが可能である。また、他方の周縁部13側の傾斜面は、上述の凹部15aの背面方向側の傾斜面と共通するものであり、凸部15bの高さhに比べて低くすることで、窓枠10を取り外す際に折曲片22aが凸部15bを乗り越えやすくすることが可能である。
【0025】
次に、窓用開孔部41に固定する係合バネ20、20について説明する。この係合バネ20、20は、ステンレス鋼などの弾性を備えた金属材を主体として形成されるものであり、板状の基部21と、基部21の中央付近から斜め上方に傾斜して形成された板状のバネ部22と、バネ部22の先端付近を下方に折曲形成した折曲片22aと、が一体形成されるものである。
【0026】
基部21は、扉本体40の板厚の半分程度に横幅を備えた略倒U字状に形成され、窓用開孔部41の周囲の板面に当接して基部21の位置決めをするための断面略倒L字状の掛止部21aと、窓用開孔部41の内周面42にビス23、23で固定するためにバネ部22の両側に配置されたビス穴21b、21bと、を有する。
【0027】
バネ部22は、基部21の中央付近から延出し、基部21の上面に対して斜め上方に約60度程度の角度で傾斜するように形成され、基部21の長手方向の縦幅に比べておおよそ3分の2の程度の縦幅を備えた略平面形状の押圧面22bを有する。
【0028】
バネ部22の折曲片22aは、バネ部22の先端付近を斜め下方向に折曲形成されたものであり、バネ部22に対して概ね直角をなすように折曲形成したものである。
【0029】
次に、上述した窓枠取付構造によって、扉本体40の窓用開孔部41の窓本体30及び窓枠10の取り付け方法及び取り外し方法について説明する。
【0030】
扉本体40の窓用開孔部41の内周面42に対して複数の係合バネ20、20を固定する。この係合バネ20、20の内周面42における固定位置は、一つの枠体11、11に対して、係合バネ20、20同士が窓用開孔部41の中心位置を介して互いに対向し、かつ、複数箇所に等間隔で配置されることが好ましく、例えば丸窓の場合は、図3に示すように、窓本体30及び窓枠10の荷重を分散させて安定させるために、少なくとも上下方向の2箇所及び上下左右方向のそれぞれの中間位置の4箇所の計6箇所に固定する。また、本実施形態のように、2つの枠体11、11を窓用開孔部41に取り付けて二重窓とする場合も、それぞれの枠体11に対しても同様に、係合バネ20、20を配置して固定するものである。
【0031】
そして、枠体11、11の周縁部13を持ちながらガイド部14を窓用開孔部41に差し込んで、ガイド部14の被係合部15、15を係合バネ20、20のバネ部22に対して係合させることで、窓枠10を窓用開孔部41に係合保持させる。このとき、係合バネ20、20のバネ部22は、被係合部15、15の凸部15bを乗り越えた後、凹部15a内にバネ部22の先端付近を没入させるとともに、凹部15aにおける周縁部13側の傾斜面に対してバネ部22の復元力を窓本体30の中心方向、及び、扉本体40の板面方向に掛けることで、扉本体40の板面と同一平面上に窓本体30を取り付けることが可能である(特に図4参照)。
【0032】
また、窓本体30及び窓枠10を扉本体40から取り外すために、窓枠10の枠体11、11の周縁部13を摘みながら水平方向に引き抜いて、窓枠10の係合保持した状態を解除する。このとき、バネ部22の先端の折曲片22aは、凸部15bにおける背面方向側の傾斜面に摺接しながら下方に弾性変形させることで、凸部15bを乗り越えて係合状態を容易に解除することが可能である。そのため、本実施形態のような二重窓の場合、窓本体30、30間の結露によって汚れたとしても、ドライバ等の工具を使用せずに窓枠10を取り外して窓本体30、30を容易に清掃することが可能である。
【0033】
また、他の取り付け方法として、図6に示すように、扉本体40の窓用開孔部41の内周面42に対して複数の係合バネ20、20を固定する。この係合バネ20、20の固定位置は、係合バネ20、20同士が複数箇所に等間隔で配置され、少なくとも、下方向に1箇所、及び、上方向と左右方向との中間位置の2箇所の計3箇所に固定する。このとき、係合バネ20、20は、図7に示すように、係合バネ20、20を2つ重ねられた状態で窓用開孔部41の内周面42に固定することで、バネ部22の弾性をより一層強固にするものである。
【0034】
この取り付け方法は、係合バネ20、20の固定位置が少ない場合でも、窓枠10の枠体11、11を係合してしっかりと保持すること可能であり、窓用開孔部41が小さい採光窓や覗き窓などに適しているものである。
【符号の説明】
【0035】
10 窓枠、11 枠体、12 保持部、13 周縁部、14 ガイド部、
15 被係合部、15a 凹部、15b 凸部、
d 深さ、h 高さ、
20 係合バネ、21 基部、21a 掛止部、21b ビス穴、
22 バネ部、22a 折曲片、22b 押圧面、23 ビス、
30 窓本体、31 外周部、32 ガスケット、
40 扉本体、41 窓用開孔部、42 内周面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7