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  • 特許-超圧縮医薬製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】超圧縮医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20240527BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240527BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K9/52
A61K9/14
A61K38/02
A61K39/395 N
A61K39/395 M
A61K39/395 D
A61K39/00 H
A61K39/00 G
A61K38/19
A61P37/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020523681
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018041530
(87)【国際公開番号】W WO2019014280
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/531,264
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520011164
【氏名又は名称】サステインドナノシステムズエルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SUSTAINED NANO SYSTEMS LLC
【住所又は居所原語表記】4 Howell Lane, Westhampton Beach, NY 11978 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】リビン バリー エム
(72)【発明者】
【氏名】リーブマン ジェフリー エム
(72)【発明者】
【氏名】チェン ワイリアム
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524779(JP,A)
【文献】特開2001-187749(JP,A)
【文献】特表2015-532284(JP,A)
【文献】特開2016-028081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-33/44
A61K47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50,000から350,000 psiの圧力で圧縮されたマイクロ粒子形状のペプチドまたはプロテイン治療薬と化合されたエステル封鎖ラクチドポリマー、エステル封鎖グリコリドポリマー、エステル封鎖ラクチド-グリコリドコポリマー、またはエステル封鎖ポリカプロラクトンポリマー、を含む医薬製剤。
【請求項2】
請求項1に記載された医薬製剤であって、
ペプチドまたはプロテイン治療薬は、組換えプロテイン、治療のための抗体、免疫毒素、サイトカインおよびECMプロテインからなるグループから選択される医薬製剤。
【請求項3】
請求項1に記載された医薬製剤であって、
マイクロ粒子は、50K psiから170K psiが付与されて圧縮されている医薬製剤。
【請求項4】
請求項1に記載された医薬製剤であって、
マイクロ粒子は、100K psiから300K psiが付与されて圧縮されている医薬製剤。
【請求項5】
請求項1に記載された医薬製剤であって、
マイクロ粒子は、60K psiから170K psiが付与されて圧縮されている医薬製剤。
【請求項6】
請求項1に記載された医薬製剤であって、
ペプチドまたはプロテイン治療薬は、組換えプロテインである医薬製剤。
【請求項7】
請求項1に記載された医薬製剤であって、
ペプチドまたはプロテイン治療薬は、ベバシズマブである医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超圧縮生体適合性ポリマーによって形成されたポリペプチドおよびプロテイン制御放出製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの領域における多くの困難性のうちの一つは、長期間持続的なプロテインの送達を技術的に実行可能な方法を確立することである。これはしばしば、プロテインが容易に加水分解して変性するという所見による。長期放出のために吸収性高分子マイクロ粒子内のカプセル化プロテインが広く研究されている。大きな分子の持続性放出を構成する問題、例えば、容易に注射可能な投薬手段は、マイクロ粒子の高多孔性によるものであり、完全には解決されていない2つの主要な問題に帰着する。1)プロテインペイロードを周囲の水に曝すことで生じる加水分解、2)ポリマー分解から生じる酸が引き起こす変性である。
【0003】
製剤を含んだ超圧縮ポリマーおよびコポリマーが知られている。しかしながら、分子量の大きなペプチドまたはプロテインが制御放出製剤になる場合、超圧縮に対するペプチドおよびプロテインの安定性は事前に測定されていない。
【0004】
担体ポリマーと分解されたペプチドおよびプロテインの反応種との相互作用に影響を及ぼす重要な要素は、両者の近接性である。超圧縮は反応種を互いに近接配置するため、超圧縮は実際にさらなる分解を促進し、貯蔵寿命が短いより不安定な製品が生じる。
【0005】
一日の最大投与量1.0 mgに対して、医薬品有効成分に関する医薬品中の物質の量が、1.0重量%または5 μg TDI(一日の合計摂取量)のいずれか低い値以下に制限されるという現在の医薬の規定が米国と欧州で存在する。この規定は制御放出製品の調合者にとって課題となる。
【0006】
あるペプチドおよび組換えプロテインが、短い生物学的半減期および、製剤製造者に対して注射可能な製剤のみを提供することを強いて、その製剤を必要とする治療を複雑にする低い経口バイオアベイラビリティを有することが知られている。これは、患者にとって不快であり感染症や他の合併症のリスクを伴うプロテインの常習的な眼内注射を時々必要とする眼に対して、プロテイン系製剤が投与される時の特別な懸念事項である。
【0007】
製剤は、移植によって投与されるプロテインの制御放出製剤を提供する技術または直接注射を必要としない他の技術として、プロテインがエステル末端ポリ(DL、ラクチド-CO-グリコール酸)(封鎖PLGA)と化合されて調合されている。超圧縮されないこれらの製剤の制御放出は、異なるサイズのプロテイン含有PLGA粒子の選択および、グリコール酸に対する乳酸の異なる重量比の選択によって調整される。PLGAプロテイン含有粒子の小さい粒子(0.3 μm)の利用は、同じ構成を有する大きい粒子(1.0~20 μm)よりプロテインの放出を遅くする(リン酸緩衝食塩水、pH 7.4)ことが分かっている。PLGA封鎖プロテイン含有粒子の小さい粒子および大きい粒子の両粒子の利用は、制御放出性能を分析したときに明白なバースト作用を備えた制御放出製品を生じる。一時的な持続的な送達を増加させるために、プロテインまたは媒体への分散性(ヒドロゲル)の物理的/化学的な改良が行われる。
【0008】
PLGAポリマーに分散されたプロテインの組成物が超圧縮によって高密度化された場合、PLGAポリマー製剤に見られる(持続時間を損なう薬物の毒性、または過剰消費を生じる)バースト作用が弱められる、または避けられることが分かっている。バースト作用の減少はまた、非圧縮製品よりも長時間の治療上の効果を送達する製剤を生じる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ラクチドポリマー、グリコリドポリマー、またはラクチド-グリコリドコポリマーと化合され超圧縮されたペプチドまたはプロテイン含有制御放出医薬品の製造方法を提供する。好ましいポリマーおよびコポリマーは、酸末端基がアルコール、好ましくは非毒性脂肪酸アルコールなどのエステル形成剤と反応したエステル封鎖ポリマーおよびコポリマーである。
【0010】
本発明の目的は、バースト作用低減効果およびペプチドまたはプロテイン系製剤の投与間隔を延伸することができる制御放出の優れた有効期間を有する、分散ペプチドまたはプロテイン治療薬を備えた、酸封鎖またはエステル封鎖ポリマーまたはコポリマーのいずれかであるラクチド、グリコリド、またはグリコラクチドポリマーの改良された制御放出製剤を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、粘膜に接触する制御放出製剤の導入による外傷を最小限にするためにバースト作用低減効果および薬物含有量に対するサイズを低減させる、分散ペプチドまたはプロテイン治療薬を備えた、酸封鎖またはエステル封鎖ポリマーまたはコポリマーであるラクチド、グリコリド、またはグリコラクチドポリマーの改良された制御放出製剤を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、電子ビームによる殺菌に安定であり、ペプチドまたはプロテインをエステル封鎖ラクチドポリマー、グリコリドポリマー、またはラクチド-グリコリドコポリマーと化合させて超圧縮した、ペプチドまたはプロテインの改良された超圧縮制御放出製剤を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、複合高分子におけるペプチドの重量平均分子量の最小分子量が250,000またはそれ以上までの量である分散ペプチドまたはプロテイン治療薬を備えた、酸封鎖またはエステル封鎖ポリマーまたはコポリマーであるラクチド、グリコリド、またはラクチド-グリコリドポリマーの超圧縮眼科用インサートを備えた、改良された制御放出製剤および眼科治療薬を投与する方法を提供することである。好ましくは、重量平均分子量は、10,000~250,000である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ベバシズマブの圧縮製剤の放出率を示すグラフであり、実施例1(55K psi)と、制御が大凡1K psiで手動にて圧縮されたこと以外は、同じ構成を備えた実施例3(135K psi)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリ(L-ラクチド)(PLLA)やポリ(ラクチド-CO-グリコリド)(PLGA)のような生分解性ポリマーがよく知られている。それらは、その優れた毒性プロファイルおよび調製可能な生分解性のため、ナノ粒子、マイクロ粒子、注射用デポ、フィルム、足場材、および薬物送達用のバルクインプラントとして処方される。制御薬物送達システムは、治療および患者コンプライアンスを改良するため重要であり、現場において長期にわたり最適な薬物濃度を提供し、薬物の好ましくない副作用を低減する。
【0016】
PLGA、PLAおよび他のポリマーから形成される薬物送達デバイスは、眼や他の部位の疾患を治療するために研究されており、その加水分解性、薬物放出性、および機械的健全性は様々なものに適用するべく最適化されている。
【0017】
本発明は、酸封鎖および/またはエステル封鎖ラクチド、グリコリド、またはラクチド-グリコリドポリマーまたはコポリマーを利用する。これらは、化学文献に開示された材料として知られている。エステル封鎖ポリマーが好ましく、エステル封鎖ポリマーまたはコポリマーを形成するためにPLA、PLGAまたはPGの酸末端基と反応するアルコールなどのエステル形成先行核を用いた、PLA、PLGAポリマーまたはコポリマーのエステル化またはエステル交換反応によって形成される。エステル基は、ベンジルやフェニルなどの芳香族エステルも採用されるが、直鎖および分岐のアルキル基などの炭素原子が1~20のアルキル基を有するエステル基を含む。好ましいエステル封鎖剤は、ラウリルアルコールである。本発明の超圧縮組成物は、制御放出分配ユニットを形成するためにペプチドまたはプロテイン治療薬と化合されたエステル封鎖ラクチド、グリコリド、またはラクチド-グリコリドポリマーまたはコポリマーを含む。当該治療薬は、第VIII因子、インシュリン、エリスロポエチン、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、グルコセレブロシダーゼを含む組換えプロテイン;アブシキシマブ、ベバシズマブ、プリツムバブ、オクレリズマブ、インフリキシマブ、サリルマブを含む治療のための抗体;デニロイキン・ディフティトクス、モキセツモマブパスードトクス、LMB-2、オポルツズマブモナトクス、HuM195-ゲロニン、A-dmDT390-bisFv(UCHT1)を含む免疫毒素;顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン、腫瘍壊死因子、インターロイキン、およびトランスフォーミング増殖因子-βを含むサイトカイン;エラスチン、コラーゲン、フィブロネクチン、およびピカチュリンを含むECMプロテインを含むポリマーまたはコポリマーと調合されてもよい。
【0018】
超圧縮に先立って、酸封鎖またはエステル封鎖ラクチドまたはグリコリドポリマーまたはコポリマーおよび医薬品有効成分は、本発明の実施のために、典型的には直径が約2 μm~約50 μm、好ましくは約2 μm~約25 μm、より好ましくは約5 μm~約20 μmのマイクロスフェア、またはマイクロカプセルとして知られているマイクロ粒子に形成されてもよい。
【0019】
マイクロスフェアという用語は、最終製品がマイクロスフェアとして形作られたポリマーマトリクス内に均等に分散した薬物を備えるように、活性薬物と適切な溶剤およびポリマーを混合させて得られる実質的均質構造を説明するために用いられる。マイクロ粒子の選択されたサイズ範囲によって、ナノ粒子という用語は、1~1000ナノメータのサイズの構造を説明するために用いられる。ナノメータ(nm)は、1メータの百万分の一もしくは、およそ水素分子10個分の大きさである。
【0020】
一般に、ナノ粒子薬物キャリアは、主として50~500 nmの大きさの生分解性固体粒子で構成される。一般に、粒子サイズは、粒子が容易に測定され、必要に応じて圧縮剤形を形成するための超圧縮力の適用に最適な圧縮機に粒子を配置するための目的で運ばれるように、選択される。圧縮粒子はマトリクスと呼ばれ、マトリクスは水中に置かれるか、真皮、肺や腸などの水性の体液と接触した時に、圧縮粒子を分解し、マトリクスを形成するように圧縮されたそれぞれの粒子を形成する。
【0021】
本発明のさらなる態様は、一旦これらのマイクロスフェアが超圧縮されると、それらは長尺状、円環状および凸状の程度、または超圧縮力の適用により生じた表面粗さのばらつき範囲の改変された粒子形状または歪んだ粒子形状を生じる。超圧縮粒子は注射用の適切な水性媒体内に再分散可能である。無菌生理食塩水または他の等張液がこの目的のために用いられてもよい。超圧縮されたそれぞれのマイクロスフェアの粒子サイズが低減されているため、同一体積のマイクロスフェアを利用した場合に実質的により多くの薬物が送達される。
【0022】
ナノ粒子は例えば、ポリマーまたはコポリマー溶液を、選択した治療薬の存在下で2重量%のポリビニルアルコール溶液を含むクロロホルム中で10分間、超音波処理機(Misonix XL-2020)を用いて超音波処理(50~55Wのパワー出力)して得られる。その後、エマルションは4℃で一晩中撹拌され、クロロホルムを蒸発させて、ポリマーと治療薬のナノ粒子を得る。
【0023】
マイクロカプセルは好ましくは、本発明の圧縮剤形を形成するために用いられる。マイクロカプセルという用語は、好ましくは非球形の剤形であり、活性薬物および添加された上記のサイズ範囲の賦形剤を有するコアの周りに配置されるポリマーシェルを有する剤形を説明するために用いられる。一般に、マイクロカプセルは、以下の手法のいずれかを用いて形成される。
(1)水相および有機相分離プロセス、溶融分散および噴霧乾燥を含む相分離法
(2)界面重合、本来の場所での重合および化学蒸着を含む界面反応
(3)流動層スプレーコーティング、静電コーティング、および物理蒸着を含む物理的方法
(4)溶媒蒸発法またはアンチソルベントとともにエマルションを用いる
【0024】
一般に、マイクロ粒子は、治療薬およびポリマーの合計重量の100重量部に対して、約0.00001~約50重量部の治療薬とされ、さらに約50~約99.99999重量部のポリマーとされる。好ましい範囲は、治療薬が1~50重量部、5~40重量部、および5~20重量部であり、その残りはポリマーとされる。所望により、1~5重量%のポリビニルピロリドンなどのバインダが、圧縮工程に先立って、マイクロ粒子に均一に混合されてもよい。
【0025】
埋め込み超圧縮剤形に存在する薬物の量は変わるが、一般的には薬物の通常の経口投与量または静注投与量の約0.5~約20重量%、好ましくは約3~約5重量%とされ、溶解性、埋め込み領域、患者、および治療される状況によって変化する。マイクロカプセル内の薬物の合計重量は変わるが、マイクロスフェアの合計重量の約1~約5%とされる。マイクロスフェアは、ここに記載された典型的なエマルション溶媒蒸発技術によって形成される。
【0026】
病理の治療のために治療薬が放出される場所に配置するために適切な制御放出剤形用の生分解性ポリマーマトリクスを形成するために、酸封鎖またはエステル封鎖ポリ(l-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(グリコリド-co-ラクチド)、ポリ(グリコリド-co-dl-ラクチド)、ポリグリコリド、およびトリメチレンカーボネイトのブロックポリマー、およびポリカプロラクトンおよびトリメチレンカーボネイトまたはポリエチレンオキサイドのブロックポリマー、またはそれらの混合物のいずれかのポリマーを選択することが好ましい。合成ポリマーは、任意の分子量(重量平均)または任意の分子量多分散度,乳酸(LA)とグリコール酸(GA)の間の全ての比率および、全ての結晶化度を備えたポリラクチドまたはポリ(ラクチド-co-グリコリド)とされる。一般に、分子量範囲は、約500~約10,000,000 Da、好ましくは約2,000~約1,000,000 Da、より好ましくは約500~約5,000 Daとされる。LA:GAの比率が約75:25~約85:15(mol:mol)であり分子量が約5,000~約500,000のp(LGA)が用いられる。ラクチド/グリコリドポリマーはバルク浸食性ポリマー(表面浸食性ポリマーではない)であり、ポリマーはマイクロ粒子マトリクスになったときに水がマトリクスに侵入しポリマーは分子量が減少するため、加水分解する。ポリマー分子量を増加させ、L-ポリマーを使用し、マイクロ粒子のサイズまたは剤形のサイズを増加することで表面積を減少させることで、再吸収曲線を長時間にシフトすることができる。ラクチド/グリコリドコポリマーは、固有粘度が最大で6.5 dl/g、最小で0.15 dl/gとして利用される。低分子量コポリマーは、本発明に好ましい。グリコリドのラクチドに対するモル比が50:50であれば、最も早い分解と薬物の対応する放出を生じることが分かっている。ポリマー骨格中のラクチドの比率を50モル%から100モル%に増加させることで、一回あたりの投薬量から治療効果を延伸させるために放出率を減少させることができる。
【0027】
好ましいカプセル化ポリマーは、投与デバイス用の制御放出送達システムとしてのラウリルアルコール封鎖ポリ(グリコリド-co-dl-ラクチド)である。ポリマーキャリアは治療薬の持続性放出送達システムとされる。ポリマーは、そのエステル結合が通常の代謝化合物、乳酸、およびグリコール酸を形成し治療薬を放出するために加水分解されるプロセスを通じて生分解される。
【0028】
様々な比率の乳酸とグリコール酸からなるコポリマーは、分解率における違いについて研究されている。生分解率はコポリマー中のグリコール酸に対する乳酸の比率に依存し、比率が50:50のコポリマーが最も早く分解することが知られている。生分解性ポリマーシステムの選択は、排出された非生分解性構造を、外傷を伴う眼や他の組織から除去することを必要としない。
【0029】
マイクロスフェアを形成した後、それらは非常に大きい力で圧縮され、本発明の投与デバイスを形成する。超圧縮は50,000~350,000 psi(以降、1,000の代わりにKが用いられる)の圧力、または100K psi~300K psi、または200K psi~300K psi、または50または60K psi~160または170K psi、または特に60K psi~170K psiの圧力をマイクロ粒子またはナノ粒子に付与することができる装置で実施される。psi(ポンド毎平方インチ)という用語は、粒子剤形に付与されるポンド単位の力を用いるとともに、剤形または型の上面の面積を平方インチにて測定または計算することで決定され、剤形へpsi単位で付与される圧力を表わすために変換される。
【0030】
超圧縮投与デバイスは完全回転楕円体でもよいが、平円板、ロッド、丸み付きまたはスムーズな縁部を備えたペレットであって、皮膚下の膝、踵、肘、臀部、肩などの骨や関節;脳下垂体、甲状腺、前立腺、卵巣、膵臓などの腺;または肝臓、脳、心臓、腎臓などの臓器に置かれるために十分に小さいペレットなど、の歪んだ回転楕円体が好ましい。より具体的には、本発明の投与デバイスは病理を治療するためにデバイスを病理の場所またはその近くに埋め込むように使用されるか、または人間、動物、魚または他の生物の体などの部位の病理に影響を及ぼす方法で使用される。そのような部位は、細胞の内容物、頭部、首、背中、胸部、腹部、会陰部、上肢または下肢の任意の部位、を含む。骨学の任意の部位は、特に限られないが、脊柱、頭蓋骨、胸骨または肋骨を含む胸部、顔面骨、鎖骨や肩甲骨や上腕骨などの上肢骨;手首の骨などの手骨;腸骨や大腿骨などの下肢骨;足根骨などの足部;関節または靱帯;筋肉および筋膜;心臓、動脈、静脈、毛細血管または血液などの心血管系;胸管、胸腺または脾臓などのリンパ系;中枢神経系または末梢神経系;眼、耳、鼻などの感覚器官;皮膚;肺、喉頭、気管および気管支などの呼吸系;食道、胃または肝臓などの消化器系;膀胱、前立腺または卵巣などの泌尿生殖器系;甲状腺、副甲状腺または副腎などの内分泌腺である。
実施例1
【0031】
市販のベバシズマブ(Avastin(登録商標))溶液であって、50 mgのベバシズマブ(固体合計重量が希釈剤/添加剤を含んで186 mg以下)を含有する2 mlのアリコートを凍結乾燥する。ケーキ状に凍結乾燥された製品は、ヘラで粉体の1.25 gの酸末端PLGA(Purasorb PDLG7507、25℃における0.1重量%のクロロホルム中の固有粘度が0.56~0.84 dl/g、グリコライドに対するラクチドの重量比率が75:25)とされ、塩化メチレンに溶解されてPLGA/MeCl2溶液(合計5 ml)を形成する。粉末化され凍結乾燥されたAvastin(登録商標)がPLGA/MeCl2溶液に添加され、その中で徐々に分散する。ホモジナイザーに連結されたジェネレーターの先端を、凍結乾燥されたAvastin(登録商標)粉末およびPLGA/MeCl2分散体に浸し、ホモジナイザーを7200 rpmで60秒間駆動してs/oサスペンションを形成する。そして、20 mlの水溶性1%ポリビニルアルコールをAvastin(登録商標)およびPLGA/MeCl2 のソリッド・イン・オイル(s/o)サスペンションに添加する。ホモジナイザーを7200 rpmで60秒間駆動してソリッド・イン・オイル・イン・ウォーター(s/o/w)エマルションを形成し、撹拌機で650 rpmで撹拌しながら300 mlの水溶性0.1%ポリビニルアルコールに素早く注ぎ、30分後に撹拌速度を600 rpmに下げる。3時間後、サスペンションが2500 rpmで5分間遠心分離され、形成されたマイクロスフェアは濃縮され50 mlの再蒸留水に分散される。サスペンションは2500 rpmで遠心分離されてマイクロスフェアを再生し、これを2回以上繰り返す。最後に、マイクロスフェアは5 mlの再蒸留水に分散され、-70℃で凍らせて凍結乾燥される。
【0032】
マイクロスフェアは、直径7.8 mm深さ15.87 mmの円筒形の型を使って、55,000 psiの圧力で室温で超圧縮されて超圧縮ペレットを形成する。そして、超圧縮ペレットは2 mlのリン酸緩衝食塩水を入れた5 mlのエッペンドルフチューブに入れられる。アリコート1.5 mlが周期的にチューブから取り出され(および同体積のリン酸緩衝食塩水が補充され)、アリコートは存在する総ベバシズマブについて分析される。分離制御が最小限にコンパクト化されたマイクロスフェアで実行される。このデータは、図1の55K psiで表された、酸封鎖PLGAからのベバシズマブの放出率および持続期間を示す曲線を形成するために用いられる。
実施例2
【0033】
市販のベバシズマブ(Avastin(登録商標))溶液であって、50 mgのベバシズマブ(固体合計重量が希釈剤/添加剤を含んで186 mg以下)を含有する2 mlのアリコートを凍結乾燥する。ケーキ状に凍結乾燥された製品は、ヘラで粉体の1.1 gのエステル末端PLGAe(Resomer RG755S、25℃における0.1重量%のクロロホルム中の固有粘度が0.5~0.7 dl/g、グリコライドに対するラクチドの重量比率が75:25)とされ、塩化メチレンに溶解されてPLGAe/MeCl2溶液(合計5 ml以下)を形成する。粉末化され凍結乾燥されたAvastin(登録商標)がPLGAe/MeCl2溶液に添加され、その中で徐々に分散する。ホモジナイザーに連結されたジェネレーターの先端を、凍結乾燥されたAvastin(登録商標)粉末およびPLGAe/MeCl2分散体に浸し、ホモジナイザーを10000 rpmで60秒間駆動してソリッド・イン・オイル(s/o)サスペンションを形成する。そして、20 mlの水溶性1%ポリビニルアルコールをAvastin(登録商標)およびPLGA/MeCl2 のs/oサスペンションに添加する。ホモジナイザーを10000 rpmで60秒間駆動してソリッド・イン・オイル・イン・ウォーター(s/o/w)エマルションを形成し、撹拌機で600 rpmで撹拌しながら300 mlの水溶性0.1%ポリビニルアルコールに素早く注ぐ。2時間半後、サスペンションが3000 rpmで5分間遠心分離され、形成されたマイクロスフェアは濃縮され50 mlの再蒸留水に分散される。サスペンションは3000 rpmで遠心分離されてマイクロスフェアを再生し、これを1回または2回以上繰り返す。最後に、マイクロスフェアは再蒸留水に分散され、-70℃で凍らせて凍結乾燥される。
【0034】
マイクロスフェアは、直径7.8 mm深さ15.875 mmの円筒形の型を使って、163000 psiの圧力で室温で超圧縮されて超圧縮ペレットを形成する。そして、超圧縮ペレットは2 mlのリン酸緩衝食塩水を入れた5 mlのエッペンドルフチューブに入れられる。アリコート1.5 mlが周期的にチューブ取り出され(および同体積のリン酸緩衝食塩水が補充され)、アリコートは存在する総ベバシズマブについて分析される。離散的で一貫性のある制御ペレットを形成する目的で、およそ1K psiで室温にて手動で圧縮されて同じく形成されたマイクロスフェアにおいて分離制御が実行される。
実施例3
【0035】
135,000 psiの圧力で超圧縮マイクロスフェアを形成する以外は実施例2の手順を使った追加サンプルが形成された。
図1