(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】横スリットシート
(51)【国際特許分類】
B65D 81/03 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
B65D81/03 100Z
(21)【出願番号】P 2021008110
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】514192756
【氏名又は名称】株式会社ネオックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-050647(JP,U)
【文献】特公昭36-004149(JP,B1)
【文献】特表2020-516550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延び
るスリットが千鳥状に
複数配置され、縦方向への引き伸ばしによって
複数の前記スリットが開いて立体化する横スリットシートであって、
前記スリットが、
開くときに破断される繋ぎ部を介在させたスリット部分体で構成され、
前記スリット部分体
における前記繋ぎ部を有する側の端である分断側端点が、前記スリットの延びる方向と交差する方向において相対的にずれた位置に配置された
横スリットシート。
【請求項2】
前記スリット部分体が曲線を有する形状である
請求項1に記載の横スリットシート。
【請求項3】
前記スリット部分体における前記分断側端点に連なる端点連続部が縦方向に傾いている
請求項1または請求項2に記載の横スリットシート。
【請求項4】
前記スリット部分体における前記端点連続部から前記分断側端点と反対方向に延びる本体部が、前記端点連続部の傾きに則した曲線で構成された
請求項
3に記載の横スリットシート。
【請求項5】
前記端点連続部が、前記スリットの延びる方向と交差する方向において隙間をあけて重なっている
請求項
3または請求項4に記載の横スリットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梱包や包装などにおいて例えば緩衝材等として使用される、引き伸ばして立体化できる横スリットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
スリットシートは、下記特許文献1に開示されているように、紙などのシート材に一方向に延びる多数のスリットを千鳥状に配設して形成されている。具体的には、スリットと連続部を交互に一直線上に並べたスリット列が多数並設され、並設に際して一のスリット列におけるスリットの中間位置と、その隣のスリット列における連続部の中間位置を並べている。つまり、引っ張りによってスリット列のスリットが開き、スリットの周囲が起伏して立体化する構成である。
【0003】
このようなスリットシートには、縦スリットシートと、横スリットシートの二種類がある。縦スリットシートは、横スリットシートとは逆に、シート材の長手方向に延びるスリットを有している。
【0004】
これらいずれのタイプのスリットシートも、緩衝材として使用する場合には、スリット列の法線方向に引っ張って伸ばし、スリットをおおよそハニカム状に変形してから使用される。引っ張る作業は主に手で行う。
【0005】
また、スリットシートの製造は次のように行われる。すなわち、原反ロールからシート材を引き出して、スリットを形成するためのスリット形成刃を周面に備えたカッターローラを押し付けてシート材にスリットを形成する。スリットが形成されたスリットシートは、通常ロール状に巻き取られて使用に供される。
【0006】
ロール状に巻き取るときの作業性と巻取り状態は、縦スリットシートであるか横スリットシートであるかによって大きく相違する。
【0007】
つまり、特許文献1のような縦スリットシートであると、巻き取り方向はスリット列の法線方向とは90度異なるので、張力が掛かってもスリットが開くことはなく、速く、しかも硬く巻き取ることができる。しかし、横スリットシートであると巻き取り方向とスリットの法線方向が同一であるので、スリットが開かないように巻くためには、速度を遅くしなければならず、巻き取った状態が緩く、柔らかいうえにロール径が大きくなってしまう。
【0008】
この点、下記特許文献2に開示された横スリットシートは、スリットの一部に補強つなぎを設けており、ロール状に巻き取るときにスリットの開放が最小限になるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平1-226574号公報
【文献】特表2020-516550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2の横スリットシートは、使用前に補強つなぎを破断する必要がある。補強つなぎの破断は、スリットの開放と共に、回転するローラに挟んで行われる。つまり、引っ張るだけでは横スリットシートを立体化できない。
【0011】
そこで、この発明は、巻き取り等の取り扱い性がよいうえに、一定以上のテンションをかけることで立体化できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、横方向に延びる複数のスリットが千鳥状に配置され、縦方向への引き伸ばしによって前記スリットが開いて立体化する横スリットシートであって、前記スリットが、前記スリットの延びる方向で分断された複数のスリット部分体で構成され、前記スリット部分体の分断側端点が、前記スリットの延びる方向と交差する方向において相対的にずれた位置に配置された横スリットシートである。
【0013】
この構成では、スリットを構成するスリット部分体は、スリットよりも短く、そのスリットと同じ長さのスリットを開くよりも大きな張力をかけなければ開かない状態となる。また、スリット部分体同士の間の部分は、スリット部分体同士がつながって一つのスリットとなることを抑制する。これらによって、スリットを開くために要する張力を高める。この一方で、スリット部分体におけるスリット部分体同士の間を区画する分断側端点の相対的な位置ずれが、縦方向にかけられた一定以上の張力をねじれの力に変換し、スリット部分体同士の間の部分の破断を行わせる。
【発明の効果】
【0014】
以上のようにこの発明によれば、スリット部分体とスリット部分体同士の間の部分によって、従来よりも強い引っ張り力を作用させてもスリットが開かないようにできる。この結果、横スリットシートの高速で硬い巻取りが可能になる。しかも、スリットを構成するスリット部分体における分断側端点の相対的な位置ずれによって、一定以上の引っ張り力をスリット部分体同士の間の部分に対する破断に積極的に作用させることができる。このため、引っ張るだけでスリットを開く立体化を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】横スリットシートの断面構造と立体化を示す断面図。
【
図10】他の例に係るスリットの構造を示す平面図。
【
図11】スリットシート製造装置の概略構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0017】
図1に、横スリットシート11の平面図を示す。横スリットシート11は、横方向Xに延びる複数のスリット12が千鳥状に配置され、縦方向Yの引き伸ばしによって、
図2に示したようにスリット12が開いて、スリット12の周囲が隆起又は倒伏して、立体化するものである。スリット12は、シートの厚み方向に貫通しており、平面視において線状に延びている。
【0018】
この横スリットシート11のスリット12は、横方向Xに一直線に延びる形状ではなく、次のように構成されている。
【0019】
すなわちスリット12は、
図1に一部を拡大して示したように、スリット12の延びる方向で分断された複数のスリット部分体13で構成されている。そしてこれらスリット部分体13の分断側端点14は、スリット12の延びる方向と交差する方向において相対的にずれた位置に配置されている。
【0020】
なお、シートの材料については、紙や樹脂フィルム・シート、不織布、布帛など、用途に応じて必要な素材のものが選択される。
【0021】
また、前述の「横方向X」とは、シートの流れ方向(縦方向Y)に対して90度の方向のみを指すのではなく、例えば15度程度の傾きを包含する意味である。
【0022】
スリット12の長さは、横スリットシート11の用途に応じて適宜の規模に設定される。
【0023】
スリット12の具体的構成について説明する。平面図である
図3に示したように、この例のスリット12は2本のスリット部分体13で構成されている。
【0024】
スリット部分体13は分断側の一端、すなわち前述の分断側端点14が互いに近接した状態であり、それぞれ横方向Xに延びている。スリット部分体13は全体として円弧状である。また2本のスリット部分体13は、スリット12の中心点Pを中心に点対称の位置関係にあり、形状は共に同一である。
【0025】
スリット部分体13の分断側端点14は、スリット12の中心点Pから縦方向Yに等距離離れている。
図3において中央に例示したスリット12は、図面左側のスリット部分体13aの分断側端点14が中心点Pよりも上に、図面右側のスリット部分体13bの分断側端点14が中心点Pよりも下に位置している。
【0026】
分断側端点14から横方向X外側に延びるスリット部分体13は、縦方向Yにおける中心点Pを有する側に凸の円弧状である。つまり
図3の中央に例示したスリット12の場合、図面左側のスリット部分体13aは下に凸、図面右側のスリット部分体13bは上に凸に湾曲している。
【0027】
2本のスリット部分体13における分断側端点14とは反対側の端末端点15は、縦方向Yにおける略同じ位置にある。スリット部分体13を構成する円弧は、
図3に細線の破線からなる横方向Xに延びる補助線Aで示したように、端末端点15よりも延びた先に分断側端点14を有している。
【0028】
スリット部分体13における分断側端点14に連なる部分は端点連続部16であり、端点連続部16から分断側端点14と反対側、つまり端末側端点に向けて延びる部分は本体部17である。端点連続部16も本体部17も一連の円弧状であり、端点連続部16と本体部17との明確な区分はなく、本体部17は端点連続部16の傾きに則した曲線で構成されている。
【0029】
スリット部分体13が前述のような曲線を有する形状であるので、端点連続部16は縦方向Yに傾いている。
【0030】
また、スリット部分体13の分断側端点14は、前述のようにスリット12の延びる方向と交差する方向において相対的にずれた位置に配置されているので、対をなす分断側端点14の位置ずれの態様には方向性がある。
図3の中央に例示したスリット12の場合、左側のスリット部分体13aの分断側端点14のほうが右側のスリット部分体13bの分断側端点14よりも上である。またスリット12は前述のような曲線からなるので、位置ずれの態様が有する方向性は矢印Bで示したようにおおよそ左上右下の傾きとなる。このため、分断側端点14同士の間の繋ぎ部18は、右上がり左下がりの方向に連続した形態である。
【0031】
このような位置ずれの態様が有する方向性は、横方向Xに並ぶ複数のスリット12からなるスリット列19について、縦方向Yに並ぶスリット列19ごとに互い違いに設定されている。つまり、
図3に示したように、中央に例示したスリット列19aにおける位置ずれの態様が有する方向性と、このスリット列19aの上下に隣接するスリット列19bにおける位置ずれの態様が有する方向性は、縦方向Yを軸に反対向きである。
【0032】
前述のようにスリット12の長さは横スリットシート11の用途に応じて適宜の規模に設定される。一方で、スリット12の延びる方向と交差する方向において相対的にずらした互いに近接する分断側端点14の具体的間隔は、主に、スリット12を開かせない引張力と開かせる引張力を考慮して設定される。
【0033】
図3に例示したスリット12では、左右のスリット部分体13の分断側端点14は中心点Pの直上と直下に配設している。つまり2本のスリット部分体13の分断側端点14は縦方向Yの一直線上に位置しており、端点連続部16は縦方向Yにおいて重なっていない。スリット部分体13間の間隔W1、つまり繋ぎ部18の大きさは、小さいほど繋ぎ部18を破断するための引張力が小さくなる。
【0034】
スリット12パターンの他の例について、
図4~
図10を用いて説明する。この説明において前述の構成と同一の構成については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0035】
図4の(a)は、
図3に示したスリット12の配置についての変形例である。つまり、スリット12の構成は同一であるが、スリット列19ごとに分断側端点14の位置ずれ態様の方向性を変えずに、すべての方向性を同一にしている。
【0036】
図4の(b)のスリット12は、
図3に示したスリット12と同様のスリット部分体13からなるものであるが、スリット部分体13同士の位置関係について変更した例である。つまり、スリット部分体13の端点連続部16の少なくとも一部が、スリット12の延びる方向と交差する縦方向Yにおいて隙間をあけて重なっている。
【0037】
縦方向Yにおける端点連続部16同士の重なり幅W2は、主に、スリット12を開かせない引張力と開かせる引張力を考慮して設定される。重なり幅W2は端点連続部16間の間隔W1よりも長い方が、繋ぎ部18を破断のための力を作用させやすい。また重なり幅W2が広いほど繋ぎ部18を破断するための引張力が小さくなるとともに、スリット12を開く立体化時に容易に伸び切らないようになる。
【0038】
図5の(a)は、
図3に示したスリット12について、本体部17を曲線ではなく一直線に構成した変形例である。本体部17と端点連続部16の間は円弧状の曲線で接続されている。
【0039】
図5の(b)は、
図5の(a)のスリット部分体13同士の位置関係についての変形例である。つまり、スリット部分体13の端点連続部16の少なくとも一部が、スリット12の延びる方向と交差する縦方向Yにおいて隙間をあけて重なっている。縦方向Yにおける端点連続部16同士の重なり幅W2は端点連続部16同士の間隔W1と共に、前述と同様に設定される。
【0040】
図6の(a)は、
図3に示したスリット12について、スリット部分体13の全体を曲線ではなく一直線に構成した変形例である。すなわち、スリット部分体13における分断側端点14に連なる端点連続部16が本体部17と共に、縦方向Yにおいて段違いに配置されている。
【0041】
具体的には、
図6の(a)の中央に例示したスリット12は、図面右側のスリット部分体13bの分断側端点14が図面左側のスリット部分体13aの分断側端点14よりも縦方向Y上側に位置している。このため、分断側端点14の位置ずれ態様の方向性は矢印Bに示したようにおおよそ右上左下の傾きとなる。
【0042】
図6の(b)は、
図6の(a)のスリット12の配置についての変形例である。つまりスリット12の構成は同一であるが、スリット列19ごとに分断側端点14の位置ずれ態様の方向性を交互に変更している。
【0043】
図7は、
図6の(b)に示したスリット12と同様のスリット部分体13からなるものであるが、スリット部分体13同士の位置関係について変更した例である。つまり、スリット部分体13の端点連続部16の少なくとも一部が、スリット12の延びる方向と交差する縦方向Yにおいて隙間をあけて重なっている。縦方向Yにおける端点連続部16同士の重なり幅W2は端点連続部16同士の間隔W1と共に、前述と同様に設定される。
【0044】
図8の(a)は、
図6の(a)に示したスリット12について、スリット部分体13の全体を一直線ではなく単なる円弧からなる曲線で構成した変形例である。つまり、細線からなる破線の補助線Aからもわかるように、スリット部分体13の分断側端点14と端末端点15は縦方向Yにおける同じ高さにあり、左右のスリット部分体13でそれぞれ縦方向Yの上又は下に凸に湾曲している。
【0045】
図8の(a)の中心に例示したスリット12では、分断側端点14の位置が下にある左側のスリット部分体13aは下に凸に湾曲し、それよりも分断側端点14の位置が上にある右側のスリット部分体13bは上に凸に湾曲している。
【0046】
図8の(b)は、
図8の(a)のスリット12の配置について変更した例である。つまり、スリット12の構成は同一であるが、スリット列19ごとに分断側端点14の位置ずれ態様の方向性を交互に変更している。
【0047】
図9は、
図8の(b)に示したスリット12と同様のスリット部分体13からなるものであるが、スリット部分体13同士の位置関係について変更した例である。つまり、スリット部分体13の端点連続部16の少なくとも一部が、スリット12の延びる方向と交差する縦方向Yにおいて隙間をあけて重なっている。縦方向Yにおける端点連続部16同士の重なり幅W2は端点連続部16同士の間隔W1と共に、前述と同様に設定される。
【0048】
図10の(a)は、
図8の(b)に示したスリット12と同様のスリット部分体13からなるものであるが、スリット部分体13同士の位置関係について変更した例である。つまり、スリット部分体13の分断側端点14の位置ずれ態様の方向性が、おおよそ矢印Bで示したように左上がり右下がりの斜め方向に離反するものであり、分断側端点14同士は横方向Xで離反している。離反する距離などは、スリット12を開かせない引張力と開かせる引張力を考慮して設定される。
【0049】
図10の(b)は、
図10の(a)のスリット12の配置についての変形例である。つまり、スリット12の構成は同一であるが、スリット列19ごとに分断側端点14の位置ずれ態様の方向性を交互に変更している。
【0050】
以上のようなスリット12を有する横スリットシート11は、
図11に示したようなスリットシート製造装置31を用いて製造される。スリットシート製造装置31は、基材シート供給部32と、スリット形成部33と、巻き上げ部34を有している。
【0051】
基材シート供給部32は、横スリットシート11の材料である基材シート11aを供給する部分であり、例えばクラフト紙や樹脂シートなど適宜の材料からなりロール状に巻かれた基材シート11aを、支持ローラ35で引き出し可能に保持している。基材シート11aの送り出し位置にはモータに接続された送りローラ36が備えられている。
【0052】
スリット形成部33は、カッターローラ37とアンビルローラ38を有し、カッターローラ37の外周面にはスリット形成刃37aが形成されている。カッターローラ37にはモータが接続される。
【0053】
スリット形成刃37aは、前述したようなスリット12を形成するものであり、スリット12の形状とその配置に合わせ形成されている。スリット形成刃37aはアンビルローラ38に当たって基材シート11aを押し切る。
【0054】
スリット形成部33の前段には受動ローラである供給側抱かせローラ39が、後段には同じく受動ローラである排出側抱かせローラ40が配設され、カッターローラ37によるスリット形成時に適切な張力を付与できるようにしている。供給側抱かせローラ39と排出側抱かせローラ40にはニップローラ41を対設して、基材シート11a又は横スリットシート11を挟んでいる。
【0055】
巻き上げ部34は、モータに接続された巻き上げローラ42と、その前段に備えられた張力制御装置43を有している。張力制御装置43は、予め設定された所定の張力での巻取りを可能にする。
【0056】
横スリットシート11は、複数のスリット部分体13で構成されたスリット12を有し、それらスリット部分体13の分断側端点14はスリット12の延びる方向と交差する方向において相対的に位置ずれしている。このため、スリット12を構成するスリット部分体13は、スリット12よりも短く、そのスリット12と同じ長さのスリットを開くよりも大きな張力をかけなければ開かない状態である。また、スリット部分体13同士の間の部分は、破断しない限りスリット部分体13同士がつながって一つのスリット12となること、つまりスリット12が開くことを抑制する。
【0057】
この結果、横スリットシート11の巻き上げに際して、従来の横スリットシートを巻き取る場合よりも高いテンションをかけてもスリット12が開かないようにできる。つまり、横スリットシート11の高速で硬い巻取りが可能である。
【0058】
このため、横スリットシート11の生産性が良く、ロール状に巻き取られた横スリットシート11は、従来に比べて巻径の小径化ができるうえ、取り扱い性や、横スリットシート11を使用するときの引き出し操作性も良好になる。
【0059】
横スリットシート11を使用する際、特に緩衝材して使用する場合には、横スリットシート11を縦方向Yに引き伸ばして、スリット12を開いて立体化を行う。この立体化は手作業で行うほか、
図12に示したような、立体化装置51を用いて行ってもよい。
【0060】
立体化装置51は、横スリットシート11を縦方向Y、つまり搬送方向に引き伸ばす装置であり、送りローラ52と引き伸ばしローラ53が所定間隔を隔てて上流側と下流側に配置されている。引き伸ばしローラ53は、送りローラ52との協働で立体化を行う部分であり、引き伸ばしローラ53の周速を送りローラ52の周速よりも速く駆動制御され、横スリットシート11に所定の引張力をかける。この引張力は横スリットシート11の巻き上げるときの引張力よりも大きい。
【0061】
所定の引張力が作用すると、横スリットシート11のスリット12におけるスリット部分体13の分断側端点14が相対的に位置ずれしているため、縦方向Yにかけられた一定以上の張力はねじれの力に変換されて分断側端点14間の繋ぎ部18に作用する。この結果、繋ぎ部18が破断する。繋ぎ部18が破断してスリット部分体13同士が連続すると、スリット12は開き、スリット12の周囲は起伏して立体化がなされる。つまり、所定の引張力以上の力で引っ張るだけでスリット12を開いて立体化を行うことができる。
【0062】
このため、梱包や包装等の自動化に寄与することができる。
【0063】
なお、前述のスリットシート製造装置31と立体化装置51を一つの装置にまとめることも可能である。
【0064】
前述のように製造された横スリットシート11は、対をなすスリット部分体13の分断側端点14の位置及び間隔とスリット部分体13の形状によって、縦方向Yにある程度の引張力をかけてもスリット12が開かないようにできる。その一方で、それより大きい引っ張り力で引っ張って、繋ぎ部18を破断してその流れでスリット12を開くようにできる。
【0065】
特に、
図3、
図4、
図5、
図9、
図10に示したスリット12のように、スリット部分体13が曲線を有する形状であり、なかでも
図3、
図4、
図9、
図10のようにスリット部分体13の全体が曲線で構成されると、スリット形成刃37aの耐久性を向上できる。すなわち、スリット形成刃37aは基材シート11aを押し切ってアンビルローラ38に当たるが、基材シート11aをひっかくように断続的に当たる直線状のスリット形成刃とは異なり連続的に柔らかく当たり、高い切断圧力を得られる。このため、切断不良の無いきれいなスリット12が形成できるという利点もある。きれいなスリット12を有する横スリットシート11では、前述の作用を確実なものとすることができる。
【0066】
しかも、
図3、
図4、
図9、
図10のスリット12は、スリット部分体13における本体部17の曲線は端点連続部16の傾きに則した曲線で構成されているので、スリット部分体13において鋭角になる部分は存在しない。この点からもスリット形成刃37aの長寿命化をはかれる。そのうえ、製品としての横スリットシート11は、表面が滑らかで引っかかりのない状態となり、取り扱い時の破れなど、不測の損傷のおそれを低減できる。
【0067】
また
図3、
図4、
図5、
図9、
図10に示したスリット12は、スリット部分体13における分断側端点14に連なる端点連続部16が縦方向Yに傾いている。このため、縦方向Yに一定以上の引張力をかけたときに、分断側端点14同士の間の繋ぎ部18に、ねじれの力を生じさせやすい。
図6~
図9に示したスリット12のように、スリット部分体13の本体部17を縦方向Yにおいて段違いに配置した場合も同様に、繋ぎ部18にねじれの力を生じさせやすい。
【0068】
図3、
図5、
図6(b)、
図10(b)等に示したように、対をなす分断側端点14における位置ずれ態様の方向性がスリット列19ごとに互い違いに設定された横スリットシート11であると、機械での立体化に際して横方向Xにおいて均等に引き伸ばすことができる。つまり分断側端点14の位置ずれ態様に方向性があるため、その方向性に沿った部分で先にスリット12が開きやすい傾向にあるが、引張力が掛かる方向に並ぶスリット列19ごとにその方向性が交互に振られているので、横方向Xで均等な立体化ができる。この結果、部分的にスリット12が開かなかったり、位置ずれ態様の方向性に沿った方向のスリット12だけが過剰に開いて横スリットシート11自体が裂けてしまったりするような不都合の発生を回避して、所望の立体化が行える。このため前述した立体化装置51のような装置を用いての機械による立体化に大いに貢献する。
【0069】
図4(a)、
図5(b)、
図7、
図9に示したスリット12のように、スリット部分体13の端点連続部16がスリット12の延びる方向と交差する方向において隙間をあけて重なっている場合には、重なり幅W2も引張力の設定のための一つの要素となる。適切な引張力の設定がしやすいうえに、立体化した時の多様な外観も得られる。しかも、繋ぎ部18における重なり幅W2に相当する部分はスリット12が開いても容易に伸び切らないようになり、立体化の制御が可能である。
【0070】
以上の構成は、この発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0071】
例えば1本のスリット12に3本以上のスリット部分体13を設けてもよい。
【0072】
スリット12を2本のスリット部分体13で構成する場合でも、対をなすスリット部分体13の形状を相違させたり、繋ぎ部18の位置をスリット12の横方向Xにおいて偏らせたりしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
11…横スリットシート
12…スリット
13…スリット部分体
14…分断側端点
16…端点連続部
17…本体部
19…スリット列
X…横方向
Y…縦方向