(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】薬剤分包機
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240527BHJP
B65B 1/30 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61J3/00 310E
A61J3/00 310F
B65B1/30 A
(21)【出願番号】P 2021069338
(22)【出願日】2021-04-15
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
(72)【発明者】
【氏名】大ヶ谷 俊治
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-182890(JP,A)
【文献】特開2003-237707(JP,A)
【文献】国際公開第2021/033665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を収容して逐次排出する薬剤フィーダと、前記薬剤フィーダを複数装備しており筐体から引出可能な薬剤フィーダ格納庫を複数と、前記薬剤フィーダ格納庫それぞれに装備されていて前記薬剤フィーダから排出された薬剤を下方へ案内して落下させる上部薬剤収集機構と、前記薬剤フィーダ格納庫の下方に設けられていて前記上部薬剤収集機構から落下した薬剤を収集して下方へ投入する下部薬剤収集機構と、前記下部薬剤収集機構の下方に設けられていて前記下部薬剤収集機構から投入された薬剤を包装帯に区分包装する包装装置とを備えており、更に、前記薬剤フィーダ格納庫の何れかが上下に分かれて個別に引出可能な複数段のフィーダ格納部になっており、該フィーダ格納部に搭載された薬剤フィーダが容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダであり、前記の複数段のフィーダ格納部が何れも引き出されているときには前記上部薬剤収集機構のうち該当箇所のものも前記筐体からの引き出しが許容されるようになっている薬剤分包機において、
前記上部薬剤収集機構のうち前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダの排出薬剤の落下案内を行うものの下端部に当該上部薬剤収集機構から前記下部薬剤収集機構へ落下する薬剤を一時的に留め置き纏めて落下させる一時貯留機構が設けられており、
分包動作中に前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダから薬剤が過剰に排出されたことが検出されると、分包動作を一時停止して前記一時貯留機構に留め置き状態を維持させるとともに、該当する薬剤フィーダ格納庫のフィーダ格納部の引き出し操作を許容し、その後にそれらのフィーダ格納部が前記筐体から引き出されたことと押し戻されたこととが検出されると分包動作の再開が許容されるようになっている、ことを特徴とする薬剤分包機。
【請求項2】
表示部材を具備しており、前記の薬剤過剰排出が検出されると該当する多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを知らせる案内が前記表示部材に表示されるようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の薬剤分包機。
【請求項3】
動作電力投入時その他の初期動作時には、分包動作の指示を待つこと無く、前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダに薬剤排出動作を行わせるとともに、前記包装装置に包装動作を行わせるようになっている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された薬剤分包機。
【請求項4】
前記上部薬剤収集機構のうち前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ以外の排出薬剤の落下案内を行うものの下方にも当該上部薬剤収集機構から前記下部薬剤収集機構へ落下する薬剤を一時的に留め置き纏めて落下させる一時貯留機構が設けられており、
前記の複数の上部薬剤収集機構のうち何れか一つ又は複数の下端部の前寄り部分が当該上部薬剤収集機構の上端部の前寄り部分よりも後方に位置しており、前記一時貯留機構のうち当該上部薬剤収集機構に対応したものの前端が前記筐体の前面より後方に位置しており、当該一時貯留機構の駆動を担う電動モータが当該一時貯留機構の前方に位置している、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薬剤分包機。
【請求項5】
前記上部薬剤収集機構と前記一時貯留機構との組が複数設けられており、それら複数組のうち何れか一つの組について前記一時貯留機構に沿って前後に至る状態で伝動軸が設けられており、前記伝動軸の運動を前記複数組の前記一時貯留機構に伝達する伝動機構が前記筐体の内奥に設けられており、前記電動モータが前記伝動軸を駆動するようになっている、ことを特徴とする請求項4記載の薬剤分包機。
【請求項6】
前記複数組の前記一時貯留機構のうち前記筐体の中で最も側方に位置するものの前方に前記電動モータが位置している、ことを特徴とする請求項5記載の薬剤分包機。
【請求項7】
前記伝動軸が前記一時貯留機構における貯留状態切替用の開閉部材の支軸になっている、ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載された薬剤分包機。
【請求項8】
前記電動モータの出力軸の一回転運動を前記伝動軸の部分回転往復運動に変換するカム機構が前記電動モータと前記伝動軸とに介在させて設けられており、前記伝動機構がリンク機構にて構成されている、ことを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載された薬剤分包機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠剤など個々に排出しうる薬剤を種別毎に収容して逐次排出する薬剤フィーダを多数搭載していて処方箋や調剤指示に応じて所望の薬剤を自動排出して分包する薬剤分包機に関し、詳しくは、上部薬剤収集機構と下部薬剤収集機構との中間に一時貯留機構を備えている薬剤分包機に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤等の薬剤を一包分ずつ区分けして包装した長尺の分包帯を対象として、薬剤分包機による分包の完了後に分包内容の適否を一包分ずつ検査する錠剤計数監査装置が実用化されており、個々の分包の中の薬剤に過不足があったときには該当する分包体に対して不良印等がマーカーにて記されるようになっている(例えば特許文献1参照)。
また、薬剤分包機のなかには、次々に分包を行いながら分包完了直後の分包に対して無線タグを貼り付けるようになったものがあり(例えば特許文献2参照)、実際の投入薬剤が予定と異なる場合にはそれを反映した情報を無線タグに書き込むとともに無線タグの貼付部位を分包帯の印刷領域に重ねることで不良分包を明確にするようにもなっている。
【0003】
さらに、多くの薬剤分包機が(例えば特許文献3,4参照)、薬剤(錠剤)を収容して逐次排出する薬剤フィーダと、前記薬剤フィーダを複数装備しており筐体から引出可能な薬剤フィーダ格納庫を複数と、前記薬剤フィーダ格納庫に装備されていて前記薬剤フィーダから排出された薬剤を下方へ案内して落下させる上部薬剤収集機構と、前記薬剤フィーダ格納庫の下方に設けられていて前記上部薬剤収集機構から落下した薬剤を収集して下方へ投入する下部薬剤収集機構と、前記下部薬剤収集機構の下方に設けられていて前記下部薬剤収集機構から投入された薬剤を包装帯に区分包装する包装装置とを備えている。
【0004】
そして、そのような薬剤分包機は、調剤指示等に応じて、該当する薬剤が一種類であれ複数種類であれ一個だけであれ複数個であれ、該当する薬剤を収容している薬剤フィーダから排出させ、それ又はそれらの排出薬剤を該当箇所の上部薬剤収集機構にて下方へ導いてから複数の上部薬剤収集機構から落下した薬剤を下部薬剤収集機構にて纏めて下方の包装装置に投入することで、次から次へと処方薬剤を区分包装するようになっている。
【0005】
また、上部薬剤収集機構と下部薬剤収集機構との中間に一時貯留機構を備えた薬剤分包機も実用に供されている(例えば特許文献3参照)。
一時貯留機構は、薬剤フィーダ格納庫に装備されていて薬剤フィーダや上部薬剤収集機構と一緒に引出可能な従属タイプのものもあるが(例えば特許文献3参照)、薬剤フィーダ格納庫より下方に装備されていて薬剤フィーダや上部薬剤収集機構と一緒に引き出されるとは限らない独立タイプのものもある。
【0006】
何れのタイプにしろ、薬剤フィーダ格納庫における薬剤フィーダの段数を増やすと、薬剤フィーダから下部薬剤収集機構までの薬剤落下経路長ひいては排出薬剤の落下時間に関して上方の薬剤フィーダと下方の薬剤フィーダとでバラツキが拡大することから、包装装置の薬剤投入完了待ち時間が長くなりやすい、という共通の動作特性がある。
もっとも、それについては、上下の薬剤収集機構の間に一時貯留機構を介在させることで、上部薬剤収集機構における排出薬剤の落下時間のバラツキの影響を下部薬剤収集機構ひいては包装装置から遮断することができる。
【0007】
そのため、一時貯留機構を備えた薬剤分包機にあっては、包装装置の処理能力を阻害することなく薬剤フィーダ格納庫における薬剤フィーダの段数を増やすことができる。
なお、この一時貯留機構が既に装備されているのは、後述するカセット着脱式の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダを多段に搭載した薬剤フィーダ格納庫だけである。やはり後述する非カセット式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを少数段だけ搭載した薬剤フィーダ格納庫については、未だ、一時貯留機構が装備されていない。
【0008】
ところで、薬剤分包機に多数搭載される薬剤フィーダ(錠剤フィーダ)は、一種類の薬剤(錠剤)を大抵は多数個まとめて投入されて収容保持するとともに排出駆動されると薬剤を逐次落下させる容器部と、その容器部を支持するとともに排出駆動を行うベース部(駆動部)とを具備している。
そのような薬剤フィーダには、薬剤補充の作業場所が限定されないことを重視して、容器部がベース部に対して着脱しうる薬剤カセットになっている謂わば「特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダ」が、多用されていた(例えば特許文献3を参照)。
【0009】
これに対し、種々の形状やサイズの薬剤に対する共用範囲の広さや個々の薬剤に適合させる調整作業の容易さを重視した謂わば「多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ」も、改良を重ねるに連れて(例えば特許文献4,5を参照)、利用が増えている。この多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダは、容器部と駆動部とが一体化した固定式のものである。
多数の薬剤フィーダを装備した薬剤分包機に多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを搭載する場合、総てや多数の薬剤フィーダに多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを採用するのは稀であり、大抵は、一部の少数の薬剤フィーダにだけ多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを採用し、多数の薬剤フィーダには特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダが採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-069618号公報
【文献】特開2011-120847号公報
【文献】特開2013-078525号公報
【文献】特開2021-029378号公報
【文献】特許6736075号公報
【文献】特開2007-209600号公報
【文献】特開2017-012696号公報
【文献】特開2015-012893号公報
【文献】特開2020-099585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[第1技術課題]
このような多数の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダと少数の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダとを搭載した薬剤分包機にあっては、カセット着脱式の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダが使用できる薬剤の分包にはそれを優先的に使用し、特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダが使用できないときなど限定的な状況で非カセット式・容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを使用する、といった使い方が可能になる。
そして、そうすることにより、一般に手間も精神的負担も掛かる薬剤手撒き作業(例えば特許文献6,7参照)を回避したり減らしたりすることが出来るので、調剤作業の負担軽減や能率向上に役立つといった利点がある。
【0012】
もっとも、それら両タイプの薬剤フィーダには明確な相違が存在することから、上述のような使い分けが有益になる。
すなわち、従来から多用されているカセット着脱式の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダは、排出対象の薬剤を整列させる際に隔壁部材等の機械的手段にて前後の薬剤を明確に切り離して区画室に一個ずつ収容するようになっている(例えば恒久的に専用のものに係る特許文献8記載のものや,組み上げ状態では専用化されるものに係る特許文献9記載のものを参照)。このような特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダは「薬剤列前後分断式の薬剤フィーダ」と呼ぶこともできる。
【0013】
これに対し、近年に実用化された非カセット式・容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダは(例えば特許文献5参照)、既述したように容器部と駆動部とが一体化しているうえ、ランダム収容された固形の薬剤を内側の傾斜回転体から外側の環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を環状回転体の回転時に規制部材にて薬剤搬送経路の横幅などを規制することで一列に整列させてから落下排出口へ送り込むようになっている。このような非カセット式・固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダは、薬剤搬送経路の横幅を規制する部材は具備しているが、排出薬剤とその後に続く排出待ち薬剤との間を機械的手段にて明確に仕切る部材が存在せず区画室も無い。このような多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダは「薬剤列前後非分断式の薬剤フィーダ」とも呼べる。なお、このタイプの薬剤フィーダには、既述のように、未だ、一時貯留機構が組み合わせられていない。
【0014】
そして、かかる多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダについては、環状回転体の回転を止めても薬剤の転動が続いて薬剤の過剰排出が生じるのを防止するために、一包分の薬剤排出の完了接近時に環状回転体の回転速度を落としたり一包分の薬剤排出の完了時に環状回転体を逆回転させるといった対策や、環状回転体の上端周縁部に径方向に延びる溝などを形成して薬剤の不所望な転動を抑制するといった対策も講じられている(例えば特許文献5参照)。そのため、薬剤列前後非分断式であっても、過剰排出防止機能はカセット式と比べて遜色の無いところまで高められている。
【0015】
しかしながら、整列状態の薬剤の間に薬剤列前後分断用の仕切り部材が明確に存在することは、薬剤分包機を購入や使用する者に対して直感的な安心感を与えることができるのに対し、そのような仕切り部材を具備していない多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダは、直感的な安心感を与えるのが難しい。しかも、後発の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダは、先発の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダに比べて使用の経験や実績が少ないという観点からも、使用希望者等に安心感を与えるのが難しい。
そこで、後発の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを搭載していても十分な安心感を与えることができるように薬剤分包機を改良することが第1技術課題となる。
【0016】
[第2技術課題]
更に、既述したように上部薬剤収集機構と下部薬剤収集機構との中間に一時貯留機構を備えた薬剤分包機では、上方に装備された多数の薬剤フィーダに加え、それらの下方に位置する一時貯留機構についても、薬剤を保持し続ける状態・姿勢と、薬剤を落下させる状態・姿勢とを、制御装置の制御に従って切り替えなければならないことから、何れも電動モータの駆動にて状態・姿勢を切り替えるようになっている。
そして、その切り替え動作に関して、薬剤フィーダは調剤対象薬剤を収容しているものだけ動作し調剤対象外のものは動作不要なので、個々の薬剤フィーダは動作頻度があまり大きくないのに対し、一時貯留機構は薬剤の種類に関係なく分包装置と同様に分包の度に動作するので、動作頻度が大きい。
【0017】
ところで、電動モータは、動作頻度が大きいと点検や修理といった保守作業・メンテナンス作業も頻繁に行う必要がある。
そこで、複数の電動モータを有する分包装置の部分については、筐体の下段部分を概ね占有していることもあって、該装置を支持基盤ごと筐体から前方へ引き出すことで電動モータを露出させることができる構造が採用されている。
そのため、分包装置の電動モータに係るメンテナンスについては、前方からでも側方からでも行うことができるので、作業負担が軽い。
【0018】
これに対し、上部薬剤収集機構と下部薬剤収集機構との中間に組み込まれた一時貯留機構については、上部薬剤収集機構や下部薬剤収集機構を筐体から前方へ引き出して頻繁に而もユーザーによっても行われる薬剤粉塵等清掃作業が優先されることから、一時貯留機構の駆動系は、伝動部材も、電動モータも、筐体の内奥に配設されていた。一時貯留機構の要の開閉部材等を筐体から前方へ引き出せるようにした薬剤分包機でも(例えば特許文献3参照)、電動モータや伝動部材は、筐体の内奥にとどまるようになっていた。
そのため、一時貯留機構の電動モータに係る保守作業については、筐体の後方か後寄りの側方から行うことが、基本になる。
【0019】
しかしながら、薬剤分包機など大きめの装置は、薬局内で壁際に並べて設置されることや、壁から離れても背中合わせのように配置されることが多いため、筐体の後方から楽に保守作業を行える状況は少なく、筐体の後寄り側方から保守作業を行うにしても、窮屈であったり、近くに置かれた相対的に軽めの装置等を一時的に移動させたりしてから行うことが多く、保守作業の負担が重くなりがちである。
そこで、一時貯留機構の電動モータに係る保守作業が楽に行えるように薬剤分包機を改良することが第2技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の薬剤分包機は(解決手段1)、上述の第1技術課題を解決するために創案されたものであり、
薬剤を収容して逐次排出する薬剤フィーダと、前記薬剤フィーダを複数装備しており筐体から引出可能な薬剤フィーダ格納庫を複数と、前記薬剤フィーダ格納庫それぞれに装備されていて前記薬剤フィーダから排出された薬剤を下方へ案内して落下させる上部薬剤収集機構と、前記薬剤フィーダ格納庫の下方に設けられていて前記上部薬剤収集機構から落下した薬剤を収集して下方へ投入する下部薬剤収集機構と、前記下部薬剤収集機構の下方に設けられていて前記下部薬剤収集機構から投入された薬剤を包装帯に区分包装する包装装置とを備えており、更に、前記薬剤フィーダ格納庫の何れかが上下に分かれて個別に引出可能な複数段のフィーダ格納部になっており、該フィーダ格納部に搭載された薬剤フィーダが容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダであり、前記の複数段のフィーダ格納部が何れも引き出されているときには前記上部薬剤収集機構のうち該当箇所のものも前記筐体からの引き出しが許容されるようになっている薬剤分包機において、
前記上部薬剤収集機構のうち前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダの排出薬剤の落下案内を行うものの下端部に当該上部薬剤収集機構から前記下部薬剤収集機構へ落下する薬剤を一時的に留め置き纏めて落下させる一時貯留機構が設けられており、
分包動作中に前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダから薬剤が過剰に排出されたことが検出されると、分包動作を一時停止して前記一時貯留機構に留め置き状態を維持させるとともに、該当する薬剤フィーダ格納庫のフィーダ格納部の引き出し操作を許容し、その後にそれらのフィーダ格納部が前記筐体から引き出されたことと押し戻されたこととが検出されると分包動作の再開が許容されるようになっている、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の薬剤分包機は(解決手段2)、上記解決手段1の薬剤分包機であって、表示部材を具備しており、前記の薬剤過剰排出が検出されると該当する多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを知らせる案内が前記表示部材に表示されるようになっている、ことを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明の薬剤分包機は(解決手段3)、上記解決手段1,2の薬剤分包機であって、動作電力投入時その他の初期動作時には、分包動作の指示を待つこと無く、前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダに薬剤排出動作を行わせるとともに、前記包装装置に包装動作を行わせるようになっている、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の薬剤分包機は(解決手段4)、上記解決手段1~3の薬剤分包機であって、
前記上部薬剤収集機構のうち前記多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ以外の排出薬剤の落下案内を行うものの下方にも当該上部薬剤収集機構から前記下部薬剤収集機構へ落下する薬剤を一時的に留め置き纏めて落下させる一時貯留機構が設けられており、
前記の複数の上部薬剤収集機構のうち何れか一つ又は複数の下端部の前寄り部分が当該上部薬剤収集機構の上端部の前寄り部分よりも後方に位置しており、前記一時貯留機構のうち当該上部薬剤収集機構に対応したものの前端が前記筐体の前面より後方に位置しており、当該一時貯留機構の駆動を担う電動モータが当該一時貯留機構の前方に位置している、ことを特徴とする。
なお、上記の「上部薬剤収集機構の下方に設けられ」には、「上部薬剤収集機構の下端部に設けられ」も、「上部薬剤収集機構よりも下のところに設けられ」も、該当する。
【0024】
また、本発明の薬剤分包機は(解決手段5)、上記解決手段4の薬剤分包機であって、前記上部薬剤収集機構と前記一時貯留機構との組が複数設けられており、それら複数組のうち何れか一つの組について前記一時貯留機構に沿って前後に至る状態で伝動軸が設けられており、前記伝動軸の運動を前記複数組の前記一時貯留機構に伝達する伝動機構が前記筐体の内奥に設けられており、前記電動モータが前記伝動軸を駆動するようになっている、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の薬剤分包機は(解決手段6)、上記解決手段5の薬剤分包機であって、、前記複数組の前記一時貯留機構のうち前記筐体の中で最も側方に位置するものの前方に前記電動モータが位置している、ことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の薬剤分包機は(解決手段7)、上記解決手段5,6の薬剤分包機であって、前記伝動軸が前記一時貯留機構における貯留状態切替用の開閉部材の支軸になっている、ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の薬剤分包機は(解決手段8)、上記解決手段5~7の薬剤分包機であって、前記電動モータの出力軸の一回転運動を前記伝動軸の部分回転往復運動に変換するカム機構が前記電動モータと前記伝動軸とに介在させて設けられており、前記伝動機構がリンク機構にて構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
このような本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段1)、特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダなど使用実績を積んでいて調剤作業者等に馴染み深い先発の薬剤フィーダに加えて、駆動部だけでなく容器部まで固定式であるうえ逐次排出前の整列状態で前後の薬剤の間に明瞭な仕切り部材が存在しない後発の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを薬剤フィーダ格納庫に搭載するに際し、多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ搭載先の薬剤フィーダ格納庫を個別引出可能な複数段のフィーダ格納部に分割したうえでそれらに多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを分散搭載するとともに、それら複数段のフィーダ格納部に共用される上部薬剤収集機構の下端部に一時貯留機構を設けたうえで、薬剤過剰排出の検出時には分包動作を一時停止するだけでなく一時貯留機構に留め置き状態を維持させるようにもしたことにより、過剰排出薬剤が一時貯留機構に留め置かれることになる。
【0029】
さらに、そのような制御に加えて、多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダからの過剰排出薬剤を人手にて取り除く作業を可能かつ容易にするための制御も行われる。
具体的には、該当する薬剤フィーダ格納庫のフィーダ格納部の引き出し操作が許容される。そして、その後に、該当するフィーダ格納部を手作業で筐体から引き出し、それによって引出可能になった上部薬剤収集機構も手作業で筐体から引き出し、それに随伴して引き出された一時貯留機構から手作業で過剰排出薬剤を選別して取り出し、それから、引き出した各部等をやはり手作業により逆順で筐体に押し戻す。そうすると、該当するフィーダ格納部が筐体から引き出されたことと押し戻されたこととが自動検出され、それに応じて自動分包動作の再開が可能になる。
【0030】
このように、多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダから薬剤が過剰に排出されたときには、その検出に応じて過剰排出薬剤等が一時貯留機構に留め置かれるとともに、一時貯留機構を筐体から引き出して過剰排出薬剤を抜き取る手作業を許容する一連の制御が行われるようにしたことにより、一時的な自動調剤の停止はあっても、不所望な分包は容易かつ的確に回避することができる。しかも、そのときに抜き取った過剰排出薬剤は、フィーダ格納部を押し戻す前に元の薬剤フィーダに戻すことができるので、無駄にしないで済む。
したがって、この発明によれば、使い慣れた先発のカセット着脱式の薬剤フィーダに加えて後発で容器部まで固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダを搭載していても使用者等に十分な安心感を与えることができるので、上述の第1技術課題が解決される。
【0031】
また、本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段2)、多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダから薬剤が過剰に排出されると、その検出に応じて表示部材に過剰排出の薬剤フィーダを知らせる案内が表示されるようにもしたことにより、その案内を見ることで調剤作業者等が直ちに而も容易に一時貯留機構の中の過剰排出薬剤を特定することができ、更に、その過剰排出薬剤を適切な多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダへ戻すことまで迷うことなく速やかに行うことができる。
【0032】
さらに、本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段3)、初期動作時には、調剤指示等に従った本来の分包動作を行う前に、多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダの薬剤排出動作と包装装置の包装動作とが行われるようにしたことにより、自動で検出することができない過去の動作や操作などによって初期動作時に把握不能な残留薬剤が存在していたような場合でも、不所望な残留薬剤は、自動で排出され分包されるので、見落とすことなく確実に而も纏めて処分することができる。
【0033】
また、本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段4)、上部薬剤収集機構に係る前端面等の前寄り部分について上端部や中間部よりも下端部を後退させることで下部薬剤収集機構のサイズ抑制や手撒きユニットもあればその設置部位確保なども計るに際して、それにとどまらず電動モータが一時貯留機構の前方に配設されるようにもしたことにより、薬剤フィーダ格納空間の犠牲を払うことなく或いは犠牲を払うにしても僅少にとどめつつ、電動モータを筐体の内奥から前面寄り部位に移設することができる。そのため、一時貯留機構の電動モータに係る保守作業を行える箇所が薬剤分包機の後ろ寄りに限定されなくなり、保守作業の自由度が高まるので、上述の第2技術課題までも解決される。
【0034】
また、本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段5)、電動モータ設置部位を後から前へ移しても、電動モータの駆動が伝動軸を介して後方へ伝達されるようにして、複数の一時貯留機構で電動モータの駆動を共用するための従動機構は従前通り筐体の内奥に残存させたことにより、構造や部材の変更といった改造の負担が小さて済む。
【0035】
また、本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段6)、電動モータを前方に移設するに際して、一時貯留機構が複数の場合、最も側方の一時貯留機構の前方に電動モータが来るようにもしたことにより、一時貯留機構の電動モータに係る保守作業を容易に行える明確な箇所として、薬剤分包機の前方だけでなく、前寄りの側方も加わるため、保守作業の自由度が更に高まる。
【0036】
また、本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段7)、一時貯留機構の支軸に伝動軸を兼ねさせたことにより、伝動軸の追加が不要になって、費用や設計の負担増を招きがちな部材増加を回避することができる。
【0037】
また、本発明の薬剤分包機にあっては(解決手段8)、遊びを伴いがちなリンク機構にて従動機構が構成されていても、遊びを許容しやすいカム機構を伝動部に採用したことにより、電動モータが高精度のものでなくて済むばかりか電動モータの制御が緻密なものでなくても済むので、コストアップを回避・抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施例1について、薬剤分包機の構造を示し、(a)が外観斜視図、(b)が内部構造を示す模式図、(c)が右側の薬剤フィーダ格納庫のフィーダ格納部を引き出したところの外観斜視図、(d)が複段薬剤収集機構の外観斜視図である。
【
図2】(a)が薬剤分包機から最も左の薬剤フィーダ格納庫を引き出したところの外観斜視図、(b)が最も左の薬剤フィーダ格納庫の後寄り部位の内部構造を示す模式図、(c)が最も左の薬剤フィーダ格納庫の前寄り部位の内部構造を示す模式図、(d)が最も左の薬剤フィーダ格納庫を引き出すとともに薬品庫の左側板を取り外したところの外観斜視図である。
【
図3】特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダの構造を示し、(a)がカセット装着状態に係る側面図、(b)がカセット非装着状態に係る一部縦断の側面図、(c)がカセットの横断面図、(d)がカセット要部に係る一部縦断の側面図である。
【
図4】多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダの構造を示し、(a)が要部の平面図、(b)が要部の縦断面図である。
【
図5】(a)~(d)が薬剤分包機の左側面図、(e)が薬品庫の前面部の斜視図である。
【
図6】(a),(b)が薬剤分包機の左側面図、(c)~(e)が複段薬剤収集機構の外観斜視図である。
【
図7】(a)が薬剤フィーダ格納庫と一時貯留機構複列格納部とに係る左側面図、(b)が上部薬剤収集機構と一時貯留機構とに係る縦断左側面図である。
【
図8】(a)~(c)が、何れも、単列の一時貯留機構とその駆動機構とに係る平面図と正面図と縦断面図である。
【
図9】(a)が複列の一時貯留機構とその駆動機構と伝動用リンク機構とに係る平面図、(b),(c)がリンク機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
このような本発明の薬剤分包機について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1~
図9に示した実施例1は、上述した解決手段1~8(出願当初の請求項1~8)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0040】
本発明の薬剤分包機の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1,
図2は、薬剤分包機10の全体構造を示している。
【0041】
そのうち
図1(a)は、自動分包動作状態やその待機状態といった常態の薬剤分包機10に係る外観斜視図であり、
図1(b)は、薬剤分包機10の内部構造を示す模式図であり、
図1(c)は、右側の薬剤フィーダ格納庫12(D)のフィーダ格納部80,80を薬品庫11から手前に引き出した状態の薬剤分包機10に係る外観斜視図である。なお、
図1(d)は側板95を外した複段薬剤収集機構90に係る外観斜視図である。
図2(a)は、最も左の薬剤フィーダ格納庫12(B)を薬品庫11から手前に引き出した状態の薬剤分包機10に係る外観斜視図であり、
図2(b)は、最も左の薬剤フィーダ格納庫12(B)の後寄り部位の内部構造を示す模式図であり、
図2(c)は、最も左の薬剤フィーダ格納庫12(B)の前寄り部位の内部構造を示す模式図である。
【0042】
図3は、カセット着脱式の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダ13の構造を示し、(a)がカセット13bをベース部13aに装着したカセット装着状態の薬剤フィーダ13に係る側面図、(b)がカセット13bをベース部13aから取り外したカセット非装着状態の薬剤フィーダ13に係る一部縦断の側面図、(c)がカセット13bの横断面図、(d)がカセット13bの要部に係る一部縦断の側面図である。
図4は、非カセット式・容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ86の構造を示し、(a)が要部の平面図、(b)が要部の縦断面図である。
【0043】
図5は、フィーダ格納部80の構造と引出手順とを示しており、(a)~(d)が薬剤分包機10の左側面図、(e)が薬品庫11の前面部の斜視図である。
図6は、複段薬剤収集機構90の構造と筐体からの引出手順とを示しており、(a),(b)が薬剤分包機10の左側面図、(c)~(e)が複段薬剤収集機構90の外観斜視図である。上述した
図1(d)も複段薬剤収集機構90の外観斜視図である。
図7(a)は、薬剤フィーダ格納庫12(B)と一時貯留機構複列格納部50とに係る左側面図であり、
図7(b)は、上部薬剤収集機構20と一時貯留機構60とに係る縦断左側面図である。
【0044】
図8(a)~(c)は、何れも、上段から下段へ一組の平面図と正面図と縦断面図とを並べたものであり、上段の平面図は、最も左の薬剤フィーダ格納庫12(B)の下端部の一時貯留機構60とそれを直に駆動する駆動機構51~54とに係り、中段の正面図は、上記の一時貯留機構60と上記の駆動機構の一部53,54とに係り、下段の正面図は、上記の一時貯留機構60の縦断面図である。
図9は、(a)が複列の一時貯留機構60,60,97(60)とその駆動機構51~54と伝動用のリンク機構70とに係る平面図であり、(b),(c)がリンク機構70の正面図である。
【0045】
薬剤分包機10は(
図1,
図2参照)、既述した薬剤分包機の一部を改良したものなので、それらと同様に(特許文献3~5も参照)、筐体の上段部分に薬品庫11が設けられており、筐体の下段部分には、下部薬剤収集機構30と包装装置40とが上下配置で内蔵されている。それらの動作制御等を担う図示しないコントローラ(制御部)に対する調剤指示等は、図示しない調剤サーバ等から通信にて与えられる他、タッチパネル14(操作入力部,表示部)を介した手入力でも与えることも出来るようになっている。タッチパネル14にはコントローラによって薬剤分包機10の動作状態や調剤作業者への情報等が表示されるようにもなっている。
【0046】
本例の薬剤分包機10では(
図1,
図2参照)、一時貯留機構複列格納部50も、筐体の中段部分に配設されて下部薬剤収集機構30の上方に位置するとともに、薬品庫11の直ぐ下に位置している。薬品庫11には、複数(本例では三つ)の薬剤フィーダ格納庫12(B),12(C),12(D)が左右に横並び状態で配設されており、薬剤フィーダ格納庫12(B),12(C)はその単位で、薬剤フィーダ格納庫12(D)はフィーダ格納部80の単位で、薬剤補充時や保守作業時など必要に応じて個々に、薬品庫11から手前へ引き出せるようになっている(
図1(c),
図2(a)参照)。
【0047】
左側の薬剤フィーダ格納庫12(B)と中央の薬剤フィーダ格納庫12(C)には、多数の薬剤フィーダ13が搭載されており、図示の例では(
図1,
図2,
図7参照)、左側に6段6列で薬剤フィーダ13が配設され(
図7(a)の実線表示を参照)、右側にも6段6列で薬剤フィーダ13が配設されている(
図7(b)の破線表示を参照)。
もっとも、左右いずれの側の薬剤フィーダ13,13についても、下端部の前寄り部分22に設けられた傾斜板との干渉を避けるため、そこの薬剤フィーダ搭載回避部12aには薬剤フィーダ13が設けられていない(
図7参照)。
【0048】
薬剤フィーダ13は(
図3参照)、何れも、カセット着脱式の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダ(薬剤列前後分断式の薬剤フィーダ)であり、モータ駆動を担うベース部13aは薬剤フィーダ格納庫12の棚板等に固定されているが、多数個の薬剤をランダム投入して収容することができるカセット13bはベース部13aに対して着脱しうるようになっている(
図3(a),(b)参照)。薬剤補充作業等はカセット13bをベース部13aから取り外して行い、カセット13bをベース部13aに装着しておくとコントローラの制御に従って収容薬剤5を一個ずつ逐次排出することができるようになっている。
【0049】
この特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダ13の特質は、逐次排出に向けて薬剤5を一列に並べるための前後の区画室13c,13cが隔壁部材13dにて機械的に分離されていることである(
図3(c),(d)参照)。
上部薬剤収集機構20は(
図1,
図2,
図7参照)、左右に薄い箱状のものであり、それぞれの薬剤フィーダ格納庫12に一つずつ組み込まれており、左右に配置された多数の薬剤フィーダ13から排出された薬剤を薬剤案内路滑落口25から内部の中空に受け入れて下方へ案内して落下させるようになっている。
【0050】
薬剤分包機10の薬品庫11における右側の薬剤フィーダ格納庫12(D)には、上下2段のフィーダ格納部80,80と、それらに共用される複段薬剤収集機構90とが搭載されており、図示の例では(
図1,
図5,
図6参照)、右側にフィーダ格納部80,80が配設され、それらの左側に複段薬剤収集機構90が配設されている。
フィーダ格納部80は、薬品庫11(筐体)の薬剤フィーダ格納庫12(D)から手前へ個々に引き出せるようになっている(
図5(a)~(c)参照)。また、上下のフィーダ格納部80,80を総て引き出した状態であれば複段薬剤収集機構90も薬品庫11から手前に引き出すことができるようにもなっている(
図6(a),(b)参照)。
【0051】
また、フィーダ格納部80は、複数(
図1(b),
図5,
図6の例では4個)の薬剤フィーダ86を前後一列に並べた状態で引出部材82の上に搭載されており、前板84の前面には(
図5(d),(e)参照)、引き出し時や押し込み時に手指を掛けるための把手81と、コントローラ制御下の自動動作でもコントローラ制御外の手動操作でも引き出し操作の可否状態を切り替えることができる錠85と、調剤作業時に調剤指示箋などの小物を一時的に乗せて置く小物置きとして使える揺動板体83とが付設されている。図示は割愛したが、薬品庫11(筐体)に対してフィーダ格納部80が押し込まれているのか引き出されているのかを検出する手段や、薬剤フィーダ86に付設されている手動開閉式の蓋86fの開閉状態を検出するセンサも、付設されている。
【0052】
薬剤フィーダ86は(
図4参照)、何れも、非カセット式・一体型で固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ(薬剤列前後非分断式の薬剤フィーダ)であり、最上部に位置しており中央部分が円形に刳り抜かれて中空になっている周壁と、その中空に上端部が遊嵌された状態で設置されている又は上記周壁の中空の直下に設置されている環状回転体86bと、この環状回転体86bの中空内に設置されて中空の底部を塞いでいる傾斜回転体86aと、この内側の傾斜回転体86aとその外側の環状回転体86bとを何れも軸回転可能に支持する支承機構と、それらの回転の駆動を担う回転駆動機構と、周壁の上側に設けられた規制部材86cとを具えたものである。
【0053】
環状回転体86bの上端の環状面は、傾斜回転体86aの軸回転によって掬い上げられた薬剤5,5,…を並べて移送する薬剤搬送経路になっており、その経路上に外周側から規制部材86cが入り込んで薬剤搬送経路の横幅を規制することで余分な薬剤5を内側の傾斜回転体86aの上へ押し戻して薬剤搬送経路上の薬剤5,5,…を一列に整列させるようになっている。一列になった薬剤5は一つずつ落下排出口86dへ送り込まれ、その落下薬剤5は速やかにフォトセンサ86eにて検出されるようにもなっている。薬剤搬送経路上で前後になった薬剤5,5の間には上述の隔壁部材13dの如き機械的な分離部材が存在しないので、薬剤5の過剰排出を防止するために環状回転体86bの回転速度制御に際して排出完了前の減速や排出完了直後の逆回転も適宜行われるようになっている。
【0054】
このような多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ86への薬剤補充作業等は、搭載先のフィーダ格納部80の錠85をロック解除状態にしてから、把手81を引いてフィーダ格納部80を薬品庫11から引き出し、それで露出した目的の薬剤フィーダ86の蓋86fを開けて、そこへ薬剤を投入する、という遣り方で行うようになっている。
薬剤補充後は、蓋86fを閉めてからフィーダ格納部80を薬品庫11へ押し込むと、そのことが検出されて、後はコントローラの制御に従って、錠85がロック状態になり、施錠薬剤フィーダ86が収容薬剤5を一個ずつ逐次排出するようになっている。
【0055】
複段薬剤収集機構90は(
図1,
図6参照)、上述したように上下のフィーダ格納部80,80の前板84,84の奥に隠れた状態で薬剤フィーダ格納庫12(D)に装備されており、複段薬剤収集機構90の前面に装備された把手93も前板84の奥に隠れている。この複段薬剤収集機構90は、基本的には上部薬剤収集機構20の下部に一時貯留機構60を組み込んだものと同等であって、形状的には薬剤フィーダ格納庫12(D)に収まるよう小形化や変形を施したものであり、機能的には上部薬剤収集機構20と同様にフィーダ排出薬剤を下方の下部薬剤収集機構30へ導くものであるが、薬剤フィーダ格納庫12(B),12(C)の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダ13の排出薬剤でなく、薬剤フィーダ格納庫12(D)において上下に並んだフィーダ格納部80,80の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ86,86,…の排出薬剤を受け入れるようになっている。
【0056】
また、複段薬剤収集機構90は、複段引出機構96にて支持されていて(
図6(a)参照)、薬品庫11から手前に引き出せるようになっているが(
図6(b)参照)、前後方向の長さがフィーダ格納部80よりも短くて、何時も右側のフィーダ格納部80,80の前板84,84の左端部の後方に位置しているので(
図1(a),(c),
図5(a),(d)参照)、引き出せるのは上述したように上下のフィーダ格納部80,80を総て引き出したときに限られる(
図6(a),(b)参照)。
【0057】
この複段薬剤収集機構90は(
図6(c),
図6(d),
図1(d),
図6(e)参照)、薄い箱状の本体部91と、本体部91の両側面のうちフィーダ格納部80,80から遠い方に当たる左方の解放側面に配設されて装着時に該当側面を閉じる着脱可能な側板95とを主体としたものである。本体部91の右側板にはフィーダ格納部80,80から排出された薬剤を受け入れる薬剤受入口92,92が開口形成されており、本体部91の前端には把手93が装備されており、本体部91の下端部のうち解放側面の下に位置する所には、側板95の下端部を下から受け止める側板保持部材94が装備されている。
【0058】
側板95の上部には例えばレバー操作式の小さな掛止部材96が装備されており、側板95の下端部を側板保持部材94に載せて受け止めさせてから側板95を立てて掛止部材96を本体部91に掛止させると、本体部91の解放側面が閉じられるようになっている(
図6(c)参照)。また、掛止部材96,96を総て外すと、側板95の上部が本体部91の解放側面から離れるが(
図9(d)参照)、側板保持部材94が例えば引っ掛け部材からなり側板95の下端部を少しだけ遊びを伴って受け止めるので、側板95が少し傾いた状態で保持されるようになっている。
【0059】
さらに、複段薬剤収集機構90は、そのような側板95の例えば左右両端に手を掛けて側板95を持ち上げると、側板95が本体部31から完全に離れて(
図1(d)参照)、本体部31の内部が大きく露呈するようになっている(
図6(e)参照)。
しかも、このような複段薬剤収集機構90の下端部には一時貯留機構97が組み込まれている(
図1(d),
図6(e)参照)
一時貯留機構97は、複段薬剤収集機構90の下端部に組み込まれていて複段薬剤収集機構90と一緒に前方へ引き出されるようになっている点と、サイズが少し小さくなっている点で、後述する一時貯留機構60と相違するが、基本的な構造と機能が一時貯留機構60と共通なので、一時貯留機構60と纏めて後ほど詳述する。
【0060】
下部薬剤収集機構30は(
図1参照)、大きめの漏斗状部材からなり、薬品庫11の複数の薬剤フィーダ格納庫12の下方に位置していて、それらに搭載された多数の薬剤フィーダ13,…,13から上部薬剤収集機構20,20を経て更に複数の一時貯留機構60も経て落下してきた薬剤に加えて、フィーダ格納部80に搭載された薬剤フィーダ86,86から複段薬剤収集機構90を経て更に一時貯留機構97も経て落下してきた薬剤をも収集して、それらの薬剤を下方の包装装置40へ投入するようになっている。
【0061】
包装装置40は、上述の下部薬剤収集機構30の下方に設けられており、その下部薬剤収集機構30によって落下位置を絞られた薬剤が下部薬剤収集機構30から落下投入されると、その又はそれらの薬剤をコントローラの制御に従って包装帯にて区分包装するようになっている。
本例では、その包装装置40や上述した下部薬剤収集機構30を内蔵している筐体下部に一時貯留機構複列格納部50も組み込まれている(
図1(a),(b)参照)。しかも、一時貯留機列格納部50は、下部薬剤収集機構30の上方に配置されて、上部薬剤収集機構20及び複段薬剤収集機構90と下部薬剤収集機構30との中間に装備されたものになっている。
【0062】
一時貯留機構複列格納部50には、上部薬剤収集機構20と同数の一時貯留機構60が組み込まれており、それらの上部薬剤収集機構20と一時貯留機構60は一対一で上下に位置するように配設されている(
図1参照)。また、複段薬剤収集機構90と同数の一時貯留機構97も組み込まれており、それらの複段薬剤収集機構90と一時貯留機構97も一対一で上下に位置するように配設されている(
図1参照)。複段薬剤収集機構90が上部薬剤収集機構20を少し変形させたものであって、一時貯留機構97が一時貯留機構60を少し変形させたものであると見做すこともできるので、薬剤分包機10は、上部薬剤収集機構から下部薬剤収集機構へ落下する薬剤を一時的に留め置き纏めて落下させる一時貯留機構が総ての上部薬剤収集機構の下方に設けられている、ものであると言える。
【0063】
一時貯留機構60は(
図8,
図9参照)、前後に長い上面解放の箱枠61と、その一側に固定された斜板62と、この斜板62に対し逆向き斜めで向かいあっていて箱枠61の下面を開閉しうる開閉部材63と、この開閉部材63の上端に連結された支軸64とを具備したものであり、支軸64が限定範囲で軸回転駆動されると、開閉部材63を揺動させて、箱枠61の下面を閉じたり(
図8(a),
図9(a)参照)、箱枠61の下面を開いて開口63aを発現させたり(
図8(b)参照)、更には開口63aを大きくしたりもするようになっている(
図8(c)参照)。
一時貯留機構97も、小形ではあるが、同様のものである。
【0064】
このような一時貯留機構60は、多数の薬剤フィーダ13から排出された薬剤が上方の上部薬剤収集機構20に案内されて落下してくると、その薬剤を閉状態で受け入れて一時的に留め置き(
図8(a)参照)、適切な時期に下面を開けて開口63aから留置薬剤を纏めて放下することで下部薬剤収集機構30へ落下させるものであり(
図8(b),(c)参照)、そのような一時貯留にて、各薬剤フィーダ13の排出タイミングのバラツキや,各上部薬剤収集機構20での落下経路長の相違ひいては落下時間のバラツキなどに起因する薬剤の収集時刻のバラツキを解消し、一包分の薬剤を纏めて一斉に下部薬剤収集機構30へ落下させることで、包装装置40の投入待ち時間を短縮し、薬剤分包の高速化に役立つものとなっている。
【0065】
一時貯留機構97も、同様にして、薬剤フィーダ86から排出された薬剤が上方の複段薬剤収集機構90に案内されて落下してくると、その薬剤を閉状態で受け入れて一時的に留め置き、適切な時期に下面を開けて開口から留置薬剤を纏めて放下することで下部薬剤収集機構30へ落下させるものとなっている。
ただし、一時貯留機構97は、上述したように小形になっている点と、複段薬剤収集機構90が薬剤フィーダ格納庫12(D)から引き出されるとそれに随伴して筐体から引き出せるようになる点で、常時固定の一時貯留機構60と相違するものとなっている。
【0066】
このような一時貯留機構60や一時貯留機構97の基本的構成は概ね従来品を踏襲したものであるが、そのような基本的構成を前提としつつも、この薬剤分包機10にあっては、一時貯留機構60,97の駆動を担う電動モータ51が、一時貯留機構60,97の後方でなく、一時貯留機構60の前方に位置する態様で組み込まれている(
図2(c),
図7,
図8,
図9(a)参照)。
電動モータ51の組み込み箇所は筐体内で左右方向の端部が好ましく、本例では(
図9(a)参照)、左端に位置している一時貯留機構60の前方にだけ設置されている。
【0067】
この電動モータ51の回転出力軸とその後方の一時貯留機構60の支軸64(64a)の前端部との間に、伝動用のカム機構52が設けられている(
図9(a)参照)。
そして(
図8参照)、電動モータ51によってカム機構52の原節53が一回転させられると、その度にカム機構52の従節54が数十゜揺動し、それに従って支軸64が同角度だけ往復で軸回転し、それに従って開閉部材63が一時貯留機構60の底を開閉するので、一時貯留機構60の薬剤貯留状態が切り替わるようになっている。
【0068】
しかも、その支軸64は、前後に長い一時貯留機構60に沿って前後に至る状態で一時貯留機構60に組み込まれており、前端部が電動モータ51とカム機構52とによって限定範囲で軸回転させられると、その軸回転運動が後端部の後部カム機構64bに伝達され(
図8(a),
図9(a)参照)、更に後部カム機構64bとリンク機構70の揺動部材72の揺動端部72aにまで伝達されるので(
図9(b),(c)参照)、一時貯留機構60の後方のリンク機構70(伝動機構)へ伝達する伝動軸64aを兼ねるものとなっている。一方、他の一時貯留機構60,97の支軸64は、リンク機構70の駆動を受ける従動軸にとどまる(
図9参照)。このようなカム機構52は、電動モータ51の出力軸の一回転運動を伝動軸64aの部分回転往復運動に変換するものとなっている。
【0069】
さらに、上部薬剤収集機構20や複段薬剤収集機構90から落下した薬剤が下方の一時貯留機構60,97に確実に投入されるという基本的な要件を損なうことなく、上述の配置関係すなわち一時貯留機構60の前方に駆動機構51~54を位置させるという配置を可能とするために、少なくとも左端の薬剤フィーダ格納庫12すなわち電動モータ51配置側の薬剤フィーダ格納庫12(B)と、そこの上部薬剤収集機構20とについては(
図1,
図2参照)、電動モータ51非配置側の薬剤フィーダ格納庫12(C,D)やそこの上部薬剤収集機構20と複段薬剤収集機構90には必要とされない更なる要件も課されている。
【0070】
具体的には(
図2,
図7参照)、電動モータ51配置側の薬剤フィーダ格納庫12(B)に組み込まれている上部薬剤収集機構20の下端部の前寄り部分22(具体的には傾斜板)がその上部薬剤収集機構20の上端部や中間部の前寄り部分21よりも後方に位置している。上部薬剤収集機構20の下端部の前寄り部分22の上端は上部薬剤収集機構20の上端部や中間部の前寄り部分21の下端に繋がっており、上部薬剤収集機構20の下端部の前寄り部分22の下端は下方の一時貯留機構60の箱枠61の前端の直ぐ上まで後退しており、それによって上部薬剤収集機構20の下端部の前寄り部分22が傾斜しているので、上段の薬剤フィーダ13から排出された薬剤が、薬剤案内路滑落板24にて上部薬剤収集機構20の内部空間に導かれて薬剤フィーダ搭載回避部12aのところに落下すると、上部薬剤収集機構20の下端部の前寄り部分22の傾斜板の上面によって斜め後方へ落下方向を変えられて一時貯留機構60に入るようになっている。
【0071】
リンク機構70は(
図7,
図9参照)、電動モータ51の出力軸の一回転運動を揺動に変換する機構52によって駆動された伝動軸64aの限定的な角度の軸回転運動を後部カム機構64b経由で他の二組の一時貯留機構60(97)の支軸64に伝達するための伝動機構であり、筐体の内奥に設けられて、複数(本例では三つ)の一時貯留機構60(97)の後方に位置している。このリンク機構70は(
図9参照)、横に長い棒状の連結部材71と、複数の一時貯留機構60に一対一で配設された同数の短い揺動部材72と、複数の揺動部材72に一対一で配設された同数の付勢バネ74とを具備したものであり、揺動部材72の揺動端部72aが連結部材71に対して軸回転自在な状態で連結されるとともに、揺動部材72の揺動支点部72bが筐体の内奥の図示しない支持部材に対して軸回転自在な状態で連結されている(
図9(a)参照)。
【0072】
そして、付勢バネ74の反力に抗って伝動軸64a即ち最左の支軸64を限定範囲で軸回転させると、それに随伴して、他の支軸64,64も同様に軸回転するようになっている(
図9(c)参照)。また、伝動軸64aの回転駆動を止めると付勢バネ74の付勢力によって伝動軸64aを含む総ての支軸64,64,64が元の状態に戻るようにもなっている(
図9(b)参照)。そのため、電動モータ51の出力軸が一回転すると、その度に、カム機構52と伝動軸64aとリンク機構70とが作動して、総ての開閉部材63が揺動し、それによって総ての一時貯留機構60,60,97(60)において開閉動作が行われるようになっている。
【0073】
このような実施例1の薬剤分包機10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図2(d)は、三つの薬剤フィーダ格納庫12のうち一時貯留機構60の上方に位置する最も左の薬剤フィーダ格納庫12(B)を薬品庫11から手前へ引き出すとともに薬品庫11の左側板11aを取り外したところの外観斜視図である。
【0074】
図6(a)は、上下のフィーダ格納部80,80を総て薬品庫11から手前に引き出した薬剤分包機10の左側面図、同図(b)は、更に複段薬剤収集機構90も薬品庫11から手前に引き出した薬剤分包機10の左側面図である。また、
図6(c)は、引き出した複段薬剤収集機構90の外観斜視図、同図(d)は、本体部91から側板95を外しかけている複段薬剤収集機構90の外観斜視図である。さらに、
図1(d)と
図6(e)は、本体部91から側板95を取り外した複段薬剤収集機構90の外観斜視図である。
【0075】
この薬剤分包機10の大まかな使い方や調剤動作は、基本的に従来の薬剤分包機と同様であり、使用頻度の高い薬剤についてはカセット着脱式の特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダ13を利用するのが好ましく、その場合、薬剤フィーダ格納庫12(B),12(C)を薬品庫11から手前に引き出して、露出した多数の薬剤フィーダ13に所定の薬剤を充填し、それから薬剤フィーダ格納庫12を薬品庫11へ押し戻しておく。また、その他の薬剤については非カセット式・容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ86を利用するのが好ましく、その場合、薬品庫11の薬剤フィーダ格納庫12(D)からフィーダ格納部80を手前に引き出して、露出した薬剤フィーダ86に所定の薬剤を充填し、それからフィーダ格納部80を薬剤フィーダ格納庫12(D)へ押し戻しておく。
【0076】
何れの場合も、詳細な図示や説明は割愛するが、タッチパネル14に対して案内表示等を見ながら操作を行って、処方箋に基づく調剤指示を薬剤分包機10に与えると、指示された薬剤が収容先の薬剤フィーダ13,86から排出されて上部薬剤収集機構20や複段薬剤収集機構90により下方の一時貯留機構60,60,97(60)へ導かれ、一旦そこで溜め置かれる。それから、適宜な時間の経過後に電動モータ51が出力軸を一回転させるので、それに応じてカム機構52と伝動軸64aとリンク機構70とを介して総ての一時貯留機構60,60,97(60)が開閉部材63を揺動させるため、一時貯留機構60,60,97(60)によって溜め置かれていた総ての薬剤が、一斉に一時貯留機構複列格納部50から落下し、下部薬剤収集機構30によって包装装置40へ導かれる。
【0077】
こうして、次々に薬剤が分包体に区分包装される。しかも、その際、薬剤フィーダ13,86から一時貯留機構60,97までの薬剤落下経路と、一時貯留機構60,97から包装装置40までの薬剤落下経路とが、大半の時間で、一時貯留機構60,97の開閉動作によって分断されるため、上部薬剤収集機構20や複段薬剤収集機構90側の薬剤落下と下部薬剤収集機構30側の薬剤落下とについて大部分が並行動作可能になるので、分包時間が短縮される。
【0078】
そして、そのような薬剤分包動作を繰り返して、電動モータ51について定期点検や故障修理などが必要になったときには、電動モータ51配置側の薬剤フィーダ格納庫12(B)を薬品庫11から前方へ引き出すとともに、薬品庫11から左側板11aを取り外す(
図2(d)参照)。そうすると、薬剤分包機10の左側面の直ぐ内側であって手前寄りの所に設置されている電動モータ51が露わになるので、薬剤分包機10の側面の手前部分から電動モータ51に対する保守作業やメンテナンス作業を行う。
このように、本実施例の薬剤分包機10は、電動モータ51に係る人手作業が筐体の後ろ側へ行くまでもなく実施できるので、電動モータ51に係る保守作業が楽に行える。
【0079】
また、薬剤分包動作中に何れかの非カセット式・容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ86についてフォトセンサ86eの信号に基づいて薬剤の過剰排出が検出されたときには、一時貯留機構97を含む一時貯留機構60が開く前に速やかに薬剤分包動作が制御装置によって一時停止される。
その状態では、それらの一時貯留機構60が開閉部材63に対する付勢バネ74の作用によって閉状態を維持するので、過剰排出薬剤は適切な排出薬剤とともに複段薬剤収集機構90の一時貯留機構97にとどまる。
【0080】
また、薬剤の過剰排出が発生したことを示す案内に加えて、薬剤を過剰排出した薬剤フィーダ86及びフィーダ格納部80を特定する案内が、制御装置によってタッチパネル14に表示される。さらに、薬剤を過剰排出した薬剤フィーダ86を搭載しているフィーダ格納部80と、このフィーダ格納部80と複段薬剤収集機構90を共用する総てのフィーダ格納部80とについて、錠85のロックが制御装置によって解除される。
これにより、薬剤分包機10の状態が、過剰排出薬剤を複段薬剤収集機構90から人手で回収することができる状態になる。
【0081】
そこで、調剤作業者等は、タッチパネル14の表示を参照しながら、該当するフィーダ格納部80,80を筐体から手前に引き出し(
図6(a)参照)、該当する複段薬剤収集機構90も筐体から手前に引き出し(
図6(b)参照)、その複段薬剤収集機構90から側板95を取り外して(
図6(c),(d),
図1(d),
図6(e)参照)、複段薬剤収集機構90の下端部の一時貯留機構97を斜め上から覗き込み(
図6(e),
図9(a)参照)、ピンセット等にて過剰排出薬剤を一時貯留機構97から取り出し、薬剤を過剰排出した薬剤フィーダ86に対しその蓋86fを開閉して過剰排出薬剤を戻す(
図5(d),(e)参照)。
【0082】
それから、該当する複段薬剤収集機構90とフィーダ格納部80とを筐体内へ押し戻すと、人手による回収と復元の作業が完了して、薬剤分包機10が自動分包を再開することができる状態になる。
そこで、調剤作業者等がタッチパネル14の操作にて自動分包を再開する指示を与えると、薬剤分包機10では、制御装置が、該当するフィーダ格納部80が筐体内に収まっていることを確認してから、錠85をロック状態にする。
【0083】
これにより、フィーダ格納部80の不所望な引き出しが阻止される状態に薬剤フィーダ格納庫12(D)がなって、薬剤分包機10が一時停止を開始したときの状態に戻り、制御装置によって自動分包が再開される。
こうして、非カセット式・容器部固定式の多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ86から薬剤が過剰に排出された場合でも、過剰排出薬剤を無駄にすることなく而も簡便に、自動調剤を再開することができる。
【0084】
[その他]
上記の実施例では電動モータ51が最も左方の薬剤フィーダ格納庫12の下方にしか設けられていなかったが、電動モータ51の好適な設置箇所は、それに限られる訳でなく、最も右方の薬剤フィーダ格納庫12の下方でも良く、それら両箇所に設置して駆動対象を分担させても良い。
【0085】
上記実施例では、薬剤の過剰排出が発生した場合に過剰排出薬剤の抜き取りを行わないで自動分包を続行する遣り方を説明しなかったが、そうしたい場合、例えば、タッチパネル14にて即再開を指示すると、そのときの分包の遣り直しから自動分包動作を再開するとともに、過剰排出薬剤の分包体にはマーカーやタグ等にて不良の記録が付されるようにすると良い。
【産業上の利用可能性】
【0086】
上記実施例では薬剤分包機に薬剤手撒き装置(錠剤手撒き装置)が組み込まれていなかったが、本発明の薬剤分包機は、薬剤手撒き装置が組み込まれていても良い(例えば特許文献1参照)。その場合、必須ではないが、薬剤手撒き装置を一時貯留機構複列格納部50の横に並べると、前方引出可能条件下でもコンパクトに実装することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
5…薬剤(錠剤)、
10…薬剤分包機、
11…薬品庫、11a…側板、
12…薬剤フィーダ格納庫、12a…薬剤フィーダ搭載回避部、
12(B)…薬剤フィーダ格納庫(電動モータ配置側・カセット式フィーダ搭載)、
12(C)…薬剤フィーダ格納庫(電動モータ非配置側・カセット式フィーダ搭載)、
12(D)…薬剤フィーダ格納庫(電動モータ非配置側・固定式フィーダ搭載)、
13…薬剤フィーダ(カセット式フィーダ,特定薬剤専用タイプ薬剤フィーダ)、
13a…ベース部(駆動部)、13b…カセット、13c…区画室、
13d…隔壁部材、14…タッチパネル(操作入力部,表示部)、
20…上部薬剤収集機構、
21…上端部や中間部の前寄り部分、22…下端部の前寄り部分、
23…下端部の中央や後寄り部分、24…薬剤案内路滑落板、
25…薬剤案内路滑落口、26…薬剤フィーダ非装着部、
30…下部薬剤収集機構、40…包装装置、
50…一時貯留機構複列格納部、
51…電動モータ、52…カム機構、53…原節(駆動側)、54…従節(従動側)、
60…一時貯留機構(単列)、
61…箱枠、62…斜板、63…開閉部材、63a…開口、
64…支軸、64a…伝動軸(支軸)、64b…後部カム機構、
70…リンク機構(伝動機構)、
71…連結部材、72…揺動部材、
72a…揺動端部、72b…揺動支点部、74…付勢バネ、
80…フィーダ格納部(薬剤フィーダ列設棚)、
81…把手、82…引出部材(引出機構)、83…揺動板体、84…前板、85…錠、
86…薬剤フィーダ(容器部固定式フィーダ,多種薬剤適応タイプ薬剤フィーダ)、
86a…傾斜回転体、86b…環状回転体、
86c…規制部材、86d…落下排出口、86e…フォトセンサ、86f…蓋、
90…複段薬剤収集機構(上部薬剤収集機構+一時貯留機構)、
91…本体部、92…薬剤受入口、93…把手、94…側板保持部材、
95…側板、96…掛止部材、96…複段引出機構、97…一時貯留機構(単列)