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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】圧縮成形装置及び圧縮成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20240527BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20240527BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20240527BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/18
B29C43/58
H01L21/56 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021104015
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003073
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(72)【発明者】
【氏名】田上 秀作
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-134917(JP,A)
【文献】特開2019-145548(JP,A)
【文献】特開2003-231145(JP,A)
【文献】特開2000-171282(JP,A)
【文献】特開2009-139249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/18
B29C 43/58
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアに少なくとも1つの部品が搭載されたワークに対して樹脂を圧縮成形し、少なくとも1つのパッケージを製造する圧縮成形装置であって、
ワークの体積のうち少なくとも部品の体積を取得する取得部と、
前記部品の体積に基づき、樹脂の供給量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された供給量の樹脂を供給する供給部と、
前記供給部によって供給された樹脂を前記ワークに対して圧縮成形する樹脂封止金型と、
を備え、
前記取得部は、
前記ワークのうち少なくとも前記部品が収容される測定槽と、
前記測定槽に連結された基準槽と、
前記測定槽と前記基準槽とに等しい容積変化を与える振動素子と、
前記基準槽の圧力変化及び前記測定槽の圧力変化に基づき、前記ワークの体積のうち少なくとも前記部品の体積を算出する体積算出機構と、
を有する、
圧縮成形装置。
【請求項2】
前記測定槽には、キャリアを含む前記ワークの全体が収容され、
前記取得部は、前記ワークの体積を取得し、
前記算出部は、前記取得部で取得された前記ワークの体積から、前記キャリアの体積を減算し、前記部品の体積を算出する、
請求項1に記載の圧縮成形装置。
【請求項3】
前記測定槽には、前記ワークのうち前記キャリアを除く前記部品が収容され、
前記取得部は、前記部品の体積を取得する、
請求項1に記載の圧縮成形装置。
【請求項4】
前記算出部は、パッケージの目標体積と前記部品の体積との体積差分に基づき、前記樹脂の供給量を算出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮成形装置。
【請求項5】
前記樹脂封止金型は、前記ワークがセットされる上型と、リリースフィルムがセットされる下型と、を有し、
前記供給部は、前記リリースフィルムに樹脂を供給する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮成形装置。
【請求項6】
前記樹脂封止金型は、前記ワークがセットされる下型と、リリースフィルムがセットされる上型と、を有し、
前記供給部は、前記ワークに樹脂を供給する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮成形装置。
【請求項7】
キャリアに少なくとも1つの部品が搭載されたワークに対して樹脂を圧縮成形し、少なくとも1つのパッケージを製造する圧縮成形方法であって、
ワークの体積のうち少なくとも部品の体積を取得することと、
前記部品の体積に基づき、樹脂の供給量を算出することと、
算出された供給量の樹脂を供給することと、
供給された樹脂を前記ワークに対して圧縮成形することと、
を含み、
前記部品の体積を取得することは、
前記ワークのうち少なくとも前記部品が収容された測定槽と前記測定槽に連結された基準槽とに等しい容積変化を与えることと、
前記基準槽の圧力変化及び前記測定槽の圧力変化に基づき、前記ワークの体積のうち少なくとも前記部品の体積を算出することと、
を有する、
圧縮成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形装置及び圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の部品が樹脂封止されたパッケージを製造する方法として、キャリアに部品が搭載されたワークに対して樹脂を成形し、部品が樹脂封止されたパッケージを製造する方法が知られている。そのような樹脂封止方式の一つに、圧縮成形方式がある。
【0003】
特許文献1には、上型と下型とを備える樹脂封止金型を用いてワークを樹脂モールドして成形品に加工する樹脂モールド装置であって、レーザ変位計やカメラで構成されるワーク計測器を用いて計測したワークの厚みに基づいて電子部品の体積を算出し、モールド樹脂の供給量を調整する樹脂モールド装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-145548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂モールド装置では、電子部品等が積層されてた電子部品等の張り出した部分の下が陰になってワーク上に測定光が届かない場所がある場合や、基板が反っている場合などに、ワーク厚みの計測精度が低下し、算出される電子部品の体積に誤差が生じる場合がある。電子部品の体積の誤差によって樹脂が供給不足となった場合、成形品の厚みが許容範囲を下回った不良品が発生する場合があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、品質向上を図ることができる圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧縮成形装置は、キャリアに少なくとも1つの部品が搭載されたワークに対して樹脂を圧縮成形し、少なくとも1つのパッケージを製造する圧縮成形装置であって、ワークの体積のうち少なくとも部品の体積を取得する取得部と、部品の体積に基づき、樹脂の供給量を算出する算出部と、算出部によって算出された供給量の樹脂を供給する供給部と、供給部によって供給された樹脂をワークに対して圧縮成形する樹脂封止金型と、を備え、取得部は、ワークのうち少なくとも部品が収容される測定槽と、測定槽に連結された基準槽と、測定槽と基準槽とに等しい容積変化を与える振動素子と、基準槽の圧力変化及び測定槽の圧力変化に基づき、ワークの体積のうち少なくとも部品の体積を算出する体積算出機構と、を有する。
【0008】
この態様によれば、例えば部品によって陰になる空間が存在するワーク、キャリアが反っているワーク、キャリアに凹凸があるワーク、等であったとしても、ワークの形状に左右されずに部品の体積を取得し、樹脂の供給量を算出することができる。したがって、算出される樹脂の供給量において、ワークの形状に起因した誤差の発生を抑制することができ、品質向上を図ることができる。
【0009】
上記態様において、測定槽には、キャリアを含むワークの全体が収容され、取得部は、ワークの体積を取得し、算出部は、取得部で取得されたワークの体積から、キャリアの体積を減算し、部品の体積を算出してもよい。
【0010】
上記態様において、測定槽には、ワークのうちキャリアを除く部品が収容され、取得部は、部品の体積を取得してもよい。
【0011】
上記態様において、算出部は、パッケージの目標体積と部品の体積との体積差分に基づき、樹脂の供給量を算出してもよい。
【0012】
上記態様において、樹脂封止金型は、ワークがセットされる上型と、リリースフィルムがセットされる下型と、を有し、供給部は、リリースフィルムに樹脂を供給してもよい。
【0013】
上記態様において、樹脂封止金型は、ワークがセットされる下型と、リリースフィルムがセットされる上型と、を有し、供給部は、ワークに樹脂を供給してもよい。
【0014】
本発明の他の一態様に係る圧縮成形方法は、キャリアに少なくとも1つの部品が搭載されたワークに対して樹脂を圧縮成形し、少なくとも1つのパッケージを製造する圧縮成形方法であって、ワークの体積のうち少なくとも部品の体積を取得することと、部品の体積に基づき、樹脂の供給量を算出することと、算出された供給量の樹脂を供給することと、供給された樹脂をワークに対して圧縮成形することと、を含み、部品の体積を取得することは、ワークのうち少なくとも部品が収容された測定槽と測定槽に連結された基準槽とに等しい容積変化を与えることと、基準槽の圧力変化及び測定槽の圧力変化に基づき、ワークの体積のうち少なくとも部品の体積を算出することと、を有する。
【0015】
この態様によれば、例えば部品によって陰になる空間が存在するワーク、キャリアが反っているワーク、キャリアに凹凸があるワーク、等であったとしても、ワークの形状に左右されずに部品の体積を取得し、樹脂の供給量を算出することができる。したがって、算出される樹脂の供給量において、ワークの形状に起因した誤差の発生を抑制することができ、品質向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、品質向上を図ることができる圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る圧縮成形装置の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る取得部の構成を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る圧縮成形方法の一例を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る取得部の構成を概略的に示す図である。
図5】第3実施形態に係る圧縮成形装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0019】
<第1実施形態>
図1及び図2を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る圧縮成形装置1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。図2は、第1実施形態に係る取得部の構成を概略的に示す図である。
【0020】
圧縮成形装置1は、キャリア11に少なくとも1つの部品12が搭載されたワーク10に対して樹脂Rを圧縮成形し、部品12が樹脂封止されたパッケージを少なくとも1つ製造する樹脂封止装置である。圧縮成形装置1は、樹脂Rを供給する樹脂供給装置100と、樹脂Rを加熱圧縮する樹脂封止金型190とを備えている。
【0021】
一例として、キャリア11はインタポーザ基板であり、部品12は半導体素子(メモリ、プロセッサ、ダイオード、トランジスタ等)の積層体である。但し、キャリア11及び部品12は上記に限定されるものではない。例えば、キャリア11は、樹脂、ガラス、金属、半導体等を材料とする基板であり、リードフレーム、ウエハ、粘着シート付きキャリアプレートなどでもよい。例えば、部品12は、比較的小型のMEMSデバイスや電子デバイス(キャパシタ、インダクタ、レジスタ等)等であってもよく、比較的大型のECU(Electronic Control Unit)等であってもよい。部品12は、キャリア11にワイヤボンディング方式やフリップチップ方式によって実装されていてもよく、着脱可能に接着等で固定されていてもよい。部品12は、例えば、2種類以上の部品を含んでもよい。
【0022】
樹脂Rの形状は顆粒状である。但し、樹脂Rの形状は特に限定されるものではなく、粉末状、タブレット状、液状等であってもよい。樹脂Rは、例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を含んでおり、加熱圧縮によって任意の形状に成形し、硬化され得る。
【0023】
樹脂封止金型190によって成形されるパッケージには、高い厚み精度が求められる場合がある。所望の厚みのパッケージを製造するために必要な樹脂Rの供給量は部品12の体積に応じて変化するため、樹脂供給装置100は樹脂Rの供給量を高精度で算出可能に構成されるのが望ましい。
【0024】
ここで、ワーク10の状態と樹脂Rの供給量との関係について、図2に示したワーク10の一例を参照しつつ説明する。ワーク10には、複数のパッケージエリアPAが設けられている。パッケージエリアPAは樹脂封止後にダイサー等で切断され1つのパッケージとなる領域であり、複数のパッケージエリアPAはマトリクス状に並んでいる。パッケージエリアPAのうち第1のパッケージエリアPA1には、欠損のない部品12が配置されている。パッケージエリアPAのうち第2のパッケージエリアPA2には、一部が欠損した部品12が配置されている。第2のパッケージエリアPA2は、例えば、部品12の積層された半導体素子の少なくとも1層が落下衝撃等によって剥落することで発生する。パッケージエリアPAのうち第3のパッケージエリアPA3には、部品12が配置されていない。第3のパッケージエリアPA3は、例えば、部品12の損失を減らすため、キャリア11の配線不良等によって使用できない領域にそもそも部品12を搭載しないことで発生する。
【0025】
このように、第2のパッケージエリアPA2及び第3のパッケージエリアPA3が存在する場合、全てのパッケージエリアPAが第1のパッケージエリアPA1であることを前提に樹脂Rの供給量を決定すると、樹脂Rの不足によるパッケージの薄肉化によって規格外の不良品が発生する場合がある。不良品の発生を抑制するためには、第2のパッケージエリアPA2の部品12の欠損分の体積、及び第3のパッケージエリアPA3に搭載予定であった部品12の体積の分だけ樹脂Rの供給量を増やすことが望ましい。
【0026】
なお、キャリア11に搭載された部品12が1つの場合であっても、部品12の体積がばらつく場合には、部品12の体積を測定し、測定した体積に基づいて樹脂Rの供給量を調整することが望ましい。また、キャリア11に搭載された部品12が複数であっていずれも欠損していない場合も、部品12の体積がばらつく場合には、部品12の体積を測定し、測定した体積に基づいて樹脂Rの供給量を調整することが望ましい。
【0027】
樹脂供給装置100は、ワーク10の状態に基づいて樹脂Rの供給量を算出し、樹脂封止金型190に搬入される前のワーク10又はリリースフィルムRFに樹脂Rを供給する。図1に示した例では、樹脂供給装置100はワーク10に樹脂Rを供給している。樹脂供給装置100は、取得部110と、算出部120と、供給部130と、ステージ140とを備えている。
【0028】
取得部110は、ワーク10の体積のうち少なくとも部品12の体積を取得する。取得部110は、いわゆる音響式体積計である。図2に示すように、取得部110は、基準槽CH1と、測定槽CH2と、連通管PPと、ベース板BPと、ガイド棒GRと、スピーカSPと、マイクロホンMK1,MK2と、コントロールボックスCBと、コンピュータCOMとを備えている。
【0029】
基準槽CH1は、測定槽CH2に連結されている。測定槽CH2には、キャリア11を含むワーク10全体が収容される。基準槽CH1と測定槽CH2とは、スピーカSPによって区画されている。スピーカSPは、基準槽CH1と測定槽CH2とに絶対値が等しく符号が反対の容積変化を交番的に付与可能に設置されている。スピーカSPは、本発明に係る「振動素子」の一例に相当する。連通管PPは、基準槽CH1及び測定槽CH2のそれぞれの静圧を平衡させて気体成分を均一化させている。ベース板BPは、測定槽CH2に対して移動可能に構成されている。ベース板BPは、測定槽CH2の開口部に当接し測定槽CH2に蓋をする位置と、測定槽CH2の開口部から離間してワーク10をベース板BP上に設置又はベース板BP上から撤去する位置と、の間を移動する。ガイド棒GRは、ベース板BPから延出し、測定槽CH2の側壁に挿通されている。つまり、ガイド棒GRは、測定槽CH2に対するベース板BPの位置、及びベース板BPの移動方向を規定している。マイクロホンMK1は、基準槽CH1の圧力変化を検出する。マイクロホンMK2は、測定槽CH2の圧力変化を検出する。マイクロホンMK1,MK2は、本発明に係る「圧力センサ」の一例に相当する。コントロールボックスCBは、スピーカSPに駆動信号(例えば、正弦波信号)を送信し、マイクロホンMK1,MK2の出力信号を受信する。コンピュータCOMは、マイクロホンMK1,MK2の出力信号を処理し、ワーク10の体積を算出する。コンピュータCOMは、本発明に係る「体積算出機構」の一例に相当する。
【0030】
算出部120は、部品12の体積に基づき、樹脂Rの供給量を算出する。算出部120は、計算機のハードウェハ及びソフトウェハによって構成される。樹脂Rの供給量は、体積で特定されてもよく、重量で特定されてもよい。また、樹脂Rの供給量は、供給部130の制御パラメータによって特定されてもよい。取得部110がキャリア11を含むワーク10全体の体積を取得する場合、算出部120は、取得部110で取得された体積からキャリア11の体積を減算して部品12の体積を算出し、算出部120によって算出された部品12の体積に基づき樹脂Rの供給量を算出する。取得部110が部品12の体積を取得する場合、算出部120は、取得部110で取得された部品12の体積に基づき、樹脂Rの供給量を算出する。
【0031】
供給部130は、算出部120によって算出された供給量の樹脂Rを供給する。図1に示した例では供給部130はワーク10に樹脂Rを供給するように構成されている。供給部130は、ホッパ131と、制御部133と、リニアフィーダ135とを備えている。ホッパ131は、樹脂Rを収容する。制御部133は、算出部120からの入力される算出結果に基づき、樹脂Rの供給量、供給速度、供給タイミング等を制御する。リニアフィーダ135は、樹脂Rを送り出して先端から投下する。なお、供給部130の構成は上記に限定されるものではない。例えば樹脂Rの形状が液状であった場合、供給部130は、樹脂Rを貯留するシリンジと、樹脂Rを押し出すピストンと、シリンジの先端を開閉するピンチバルブとを有するディスペンサを備えてもよい。また、供給部130の構成として、リニアフィーダ135を用いた構成やシリンジを有するディスペンサ以外の構成を採用することもできる。
【0032】
ステージ140は、樹脂Rが供給されるワーク10を支持する土台である。ステージ140は、供給部130に対して相対的に移動可能に構成されている。具体的には、供給部130及びステージ140の少なくとも一方が、サーボモータ等の移動手段によってXY方向に移動可能に構成されている。
【0033】
樹脂封止金型190は、圧縮成形技術を用いてワーク10を樹脂封止するための一対の金型(下型191及び上型192)である。下型191及び上型192のうち、キャビティ199を有する方の金型にリリースフィルムRFがセットされ、もう一方の金型にワーク10がセットされる。また、リリースフィルムRF及びワーク10のうち下型191にセットされる方に樹脂Rが供給される。図1に示した樹脂封止金型190は、上型192にキャビティ199を有する上型キャビティ構造である。
【0034】
樹脂封止金型190は、樹脂封止金型190の内部(下型191と上型192との間の空間)をシールするシールリング193(例えばOリング)を備えている。なお、図示しないが、圧縮成形装置1は、樹脂封止金型190の内部圧力を調節する圧力調節部(例えば真空ポンプ)や、内部温度(成形温度)を調節する温度調節部(例えばヒータ)を備えている。
【0035】
上型192は、上型プレート19Aと、上型192の上型プレート19A下側に固定されたキャビティ駒19Bと、キャビティ駒19Bを囲むクランパ19Cと、間隔を空けてクランパ19Cを囲むチャンバブロック19Dとを備えている。クランパ19Cは、キャビティ駒19Bよりも下型191に向かって突出し、キャビティ駒19Bとともにキャビティ199を構成している。クランパ19Cは、スプリングを介して上型プレート19Aに接続され、キャビティ駒19Bに対して摺動可能に構成されている。上型192の金型下面にリリースフィルムRFがセットされるとき、まずリリースフィルムRFが上型192の金型下面の近傍まで移送され、次にクランパ19Cの下面に設けられた吸引孔によりリリースフィルムRFが吸着される。その後キャビティ駒19Bとクランパ19Cとの隙間に設けられた吸引孔によって吸引する事によりリリースフィルムRFはキャビティ199の凹部形状に沿って吸着される。これにより、圧縮成形時にキャビティ駒19Bとクランパ19Cの隙間への樹脂の侵入は阻止され、上型192の清掃の頻度が低下すると共に樹脂が硬化した後の離型が容易になる。なお、キャビティ駒19Bとクランパ19Cの隙間に樹脂が漏れない様にできれば、必ずしもリリースフィルムRFは必要ない。
【0036】
次に、図3を参照しつつ、第1実施形態に係る圧縮成形装置1を用いた圧縮成形方法について説明する。図3は、第1実施形態に係る圧縮成形方法の一例を示すフローチャートである。
【0037】
まず、ワーク10を測定槽CH2に収容する(S111)。工程S111では、まず、測定槽CH2から離間したベース板BPの上にワーク10をセットする。ワーク10は、ベース板BPの測定槽CH2との当接部よりも内側にセットされる。すなわち、キャリア11を含むワーク10の全体が測定槽CH2に収容される。次いで、空気漏れがないようにベース板BPを測定槽CH2に当接させ、測定槽CH2に蓋をする。このとき、測定槽CH2は、ベース板BPとの直接接触によって密閉されてもよく、ベース板BPとの間にOリング又はパッキン等を挟んで密閉されても良いし、グリスなどの潤滑油を挟んで密閉されてもよい。
【0038】
次に、測定槽CH2と基準槽CH1とに等しい容積変化を与える(S112)。例えば、スピーカSPを振動させることで、基準槽CH1に正の容積変化が与えられたとき、測定槽CH2には負の容積変化が与えられる。測定槽CH2と基準槽CH1とには、交互に逆符号の容積変化が交番的に与えられる。このとき、基準槽CH1の圧力変化をマイクロホンMK1によって検出し、測定槽CH2の圧力変化をマイクロホンMK2によって検出する。
【0039】
次に、測定槽CH2と基準槽CH1との圧力変化に基づき、ワーク10の体積を算出する(S113)。ワーク10の体積は、コンピュータCOMによって算出される。基準槽CH1の容積をV1、測定槽CH2のワーク10を収容していないときの容積(以下、「空容積」とする。)をV0、ワーク10が収容された測定槽CH2の容積をV2、ワークの体積をV、基準槽CH1及び測定槽CH2の静圧(大気圧)をP0、スピーカSPが容積変化ΔVを与えたときの基準槽CH1の微小圧力変化をΔP1、スピーカSPが容積変化ΔVを与えたときのワーク10が収容された測定槽CH2の微小圧力変化をΔP2、空気の比熱比(1.4)をγとする。
【0040】
(圧力)×(体積)γ=一定
これにより、次の2式が導かれる。
ΔP1/P0=γ×(ΔV/V1)
ΔP2/P0=γ×(ΔV/V2)
上記2式から、次の式が導かれる。
V2=V1×(ΔP1/ΔP2)
基準槽CH1の容積V1は一定であるため、基準槽CH1の圧力変化ΔP1及び測定槽CH2の圧力変化ΔP2が検出できれば、測定槽CH2の容積V2を算出することができる。
【0041】
V=V0-V2であり、測定槽CH2の空容積V0は一定であるため、測定槽CH2の容積V2が算出されれば、ワーク10の体積Vを算出することができる。すなわち、コンピュータCOMは、基準槽CH1の圧力変化ΔP1及び測定槽CH2の圧力変化ΔP2に基づいて、ワーク10の体積Vを取得する。工程S112及び工程S113は、本発明に係る「ワーク10の体積を取得する工程」の一例に相当する。
【0042】
次に、ワーク10の体積に基づき、部品12の体積を算出する(S114)。工程S113で求められた体積Vにはキャリア11の体積が含まれているため、算出部120で体積Vからキャリア11の体積を減算し、部品12の体積を算出する。なお、キャリア11の体積は、キャリア11の体積の設計値であってもよく、キャリア11の体積の実測値でもよい。キャリア11の体積の実測値を用いる場合、当該実測値は、例えば、取得部110によって取得された、部品12が搭載される前のキャリア11の体積でもよい。なお、実測値のキャリア11の体積は、例えば、工程S111よりも前に算出部120に登録されている。
【0043】
次に、部品12の体積に基づき、樹脂Rの供給量を算出する(S115)。工程S114で算出された部品12の体積に基づき、算出部120によって樹脂Rの供給量が算出される。算出部120は、設計寸法の空のパッケージの体積(以下、「目標体積」とする。)と部品12の体積との体積差分に基づき、樹脂Rの供給量を算出する。顆粒状の樹脂Rの場合、算出した体積差分を樹脂Rの比重に基づいて重量に変換し、樹脂Rの供給量を重量として特定する。樹脂Rの供給量は、例えば、供給部130の制御パラメータとして特定されてもよい。なお、パッケージの目標体積は、例えば、工程S111よりも前に算出部120に登録されている。
【0044】
次に、ワーク10に樹脂Rを供給する(S116)。算出部120によって算出された供給量の樹脂Rを、ステージ140上にセットされたワーク10の上に供給する。樹脂Rは、ワーク10の中央部に点状に供給されてもよく、ワーク10の全体に線状に供給されてもよい。第2のパッケージエリアPA2や第3のパッケージエリアPA3の位置が特定されている場合、当該特定された位置近辺の領域における樹脂Rの供給量を、それ以外の領域における樹脂Rの供給量よりも多めに設定してもよい。
【0045】
最後に、樹脂Rを圧縮成形する(S117)。樹脂Rは、ワーク10の上に乗った状態で樹脂封止金型190の内部に搬入される。下型191にワーク10及び樹脂Rがセットされ、上型192にリリースフィルムRFがセットされた樹脂封止金型190は、型締めされて、樹脂Rを加熱圧縮する。軟化した樹脂Rは、キャビティ199の形状に成形され、硬化する。
【0046】
以上のように、第1実施形態では、基準槽及び測定槽の容積変化に伴う圧力変化を検出してワーク10の体積を算出するため、例えば部品によって陰になる空間が存在するワーク、キャリアが反っているワーク、キャリアに凹凸があるワーク、等であったとしても、ワークの形状に左右されずに部品の体積を取得し、樹脂の供給量を算出することができる。したがって、算出される樹脂の供給量において、ワークの形状に起因した誤差の発生を抑制することができる。これによれば、樹脂の供給量が不足した場合に発生し得る不良品、例えば、パッケージ中の成形樹脂の厚みが許容範囲を下回った不良品等を削減し、品質向上を図ることができる。また、樹脂の供給量が過大な為に、樹脂が流出して樹脂封止金型の清掃が必要になるといった事態の発生を抑制することができる。したがって、生産性が向上した圧縮成形装置及び圧縮成形方法が提供される。なお、レーザ変位計を用いてワークの全ての部品の厚みを測定し、部品の厚みから体積を算出する構成と比較した場合、部品の体積算出に要する時間を短縮することができるため、生産性が向上する。
【0047】
以下に、本発明の他の実施形態に係る圧縮成形装置又は圧縮成形方法について説明する。なお、下記の実施形態では、上記の第1実施形態と共通の事柄については記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0048】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る取得部の構成を概略的に示す図である。第2実施形態に係る圧縮成形装置は、図4に示す取得部210の構成を除き、第1実施形態に係る圧縮成形装置と同様である。
【0049】
取得部210の測定槽CH2の開口部には、アダプタADが備えられている。アダプタADは、測定槽CH2の開口部の寸法を、ワーク10のキャリア11によって密閉可能な寸法に変換している。すなわち、アダプタADは、測定槽CH2に空気漏れがないように接続され、キャリア11の外縁部に空気漏れがないように接触可能に構成されている。この場合、キャリア11は測定槽CH2の壁面の一部を構成し、測定槽CH2にはワーク10のうちキャリア11を除く部品12のみが収容される。取得部210は、部品12の体積を取得し、取得部210によって取得された部品12の体積に基づいて算出部120が樹脂Rの供給量を算出する。これよれば、部品12の体積が直接取得できるため、キャリア11の体積のばらつきの影響を排除できる。
【0050】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る圧縮成形装置を概略的に示す図である。5に示す圧縮成形装置3は、樹脂封止金型390が下型391にキャビティ399を有する下型キャビティ構造である点を除き、第1実施形態に係る圧縮成形装置と同様である。
【0051】
取得部110によって少なくとも部品12の体積が測定されたワーク10は、上型392にセットされる。供給部130は、部品12の体積に基づいて算出部120によって算出された供給量の樹脂RをリリースフィルムRFに供給する。リリースフィルムRFは下型391にセットされ、樹脂RはリリースフィルムRFの上に乗った状態で樹脂封止金型390の内部に搬入される。樹脂供給装置100は、貫通孔を有する搬送枠体(不図示)をリリースフィルムRFに載せ、搬送枠体内の当該貫通孔の内部であってリリースフィルムRF上に樹脂Rを供給するように構成されてもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、品質向上を図ることができる圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供することができる。
【0053】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…圧縮成形装置、10…ワーク、11…キャリア、12…部品、100…樹脂供給装置、110…取得部、CH1…基準槽、CH2…測定槽、SP…スピーカ、MK1,MK2…マイクロホン、CB…コントロールボックス、COM…コンピュータ、120…算出部、130…供給部、140…ステージ、190…樹脂封止金型、191…下型、192…上型、199…キャビティ。
図1
図2
図3
図4
図5